JP4330048B2 - 船外機用多気筒４サイクルエンジン - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランク軸が縦方向に配置された船外機用エンジンの触媒装置の技術分野に属する。
【０００２】
【従来の技術】
一般に、小型船舶に搭載される船外機は、推進機が配設されたロアケースの上部にアッパケースおよびガイドエキゾーストが連結され、ガイドエキゾースト上にエンジンが支持、固定され、エンジンはカウリングで覆われ、エンジンにより推進機を回転駆動するように構成されている。そして、エンジンの排気は、エンジンボディの側面に縦方向に形成された排気通路を通ってアッパケース、ロアケースを経て海水中に排気させる構造となっている。近年、このような船外機用エンジンにおいて、排気ガスの浄化を図る観点から排気通路に触媒装置を設ける提案がなされている。例えば、特開平７−１８９６７１号公報においては、エンジン下方のアッパケース内に触媒装置を設け、また、特開平４−２６０８９３号公報においてはエンジンボディの側面の排気通路に触媒装置を設けている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記エンジン下方のアッパケース内に触媒装置を設ける方式においては、触媒が海水に接触しないように排気通路が海水面より高くなるように迂回通路を設けなければならず、制約されたカウリングスペース内に迂回通路を設けることは困難である。特に、４サイクルエンジンにおいては、動弁機構の存在からシリンダヘッド部が大きく迂回通路を設けることは困難である。
【０００４】
これを解消するために、上記エンジンボディの側面の排気通路に触媒装置を設ける方式においては、排気の流れに対して直角方向に触媒装置を設けているため、触媒装置が大型化するとともに、触媒装置が排気出口に近いので触媒の温度が上昇し、触媒が破壊されたり、触媒を指示する部材を溶かしてしまうという問題を有している。
【０００５】
本発明は、上記従来の問題を解決するものであって、触媒装置をコンパクトに装着できるとともに、触媒装置の冷却性能を向上させることができる船外機用エンジンの触媒装置を提供することを目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項１記載の発明は、排気ポート４２ａが形成されたシリンダヘッド４２と、前記シリンダヘッドに接合され、縦方向に配置されたクランク軸２１を支持するシリンダボディ４１と、を備えた船外機用多気筒４サイクルエンジンにおいて、前記シリンダボディに固定されるスペーサプレート４６と、前記スペーサプレートに固定されるインナカバー４７と、を有し、前記排気ポートは、前記シリンダボディとの合い面に開口し、前記シリンダボディの側面と前記スペーサプレートの側面で形成される排気集合部４１ｂに接続され、前記排気集合部は、前記スペーサプレートの側面と前記インナカバーの側面で形成される排気通路４５に接続され、前記排気通路には、縦方向視で、前記排気ポートの側方に位置する第１の触媒５３と、前記排気集合部の側方に位置する第２の触媒（５４）が設けられていることを特徴とし、請求項２記載の発明は、請求項１において、前記インナカバーに固定されるアウタカバー４９とを備え、前記インナカバーの側面と前記アウタカバーの側面で冷却水通路５０を形成したことを特徴とし、請求項３記載の発明は、排気ポート４２ａが形成されたシリンダヘッド４２と、前記シリンダヘッドに接合され、上下方向に配置されたクランク軸２１を支持するシリンダボディ４１と、を備えた船外機用多気筒４サイクルエンジンにおいて、上下方向視で、前記排気ポートに接続され、前記排気ポートの側方に設けられた形成した排気集合部材６５と、前記排気集合部材に接続され、前記シリンダボディの側方に設けられ、水平方向に延びる水平排気管６６と、前記水平排気管に接続され、前記シリンダボディの側方に設けられ、上下方向に延びる上下排気管６７と、前記水平排気管に設けられた第１の触媒５３と、前記上下排気管に設けられた第２の触媒５４と、を有し、前記第１の触媒および前記第２の触媒は、いずれも横方向の最大幅が、上下方向の最大幅より小さいことを特徴とし、請求項４記載の発明は、請求項３において、前記排気集合部材、前記水平排気管および前記上下排気管の外周に冷却水通路６９を形成したことを特徴とする。
以上
【０００７】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図１および図２は、本発明が適用される船外機の例を示し、図１は船外機の側面図、図２は図１のエンジンの平面図である。なお、以下の説明で各図面間で同一の構成については同一番号を付して説明を省略する場合がある。
【０００８】
図１において、船外機１は、船体２の後部（推進方向に対して）に着脱可能に取り付けられるクランプブラケット３と、クランプブラケット３に枢支軸４を介して上下方向に回動自在に枢支されるスイベルブラケット５と、このスイベルブラケット５を軸にして水平方向に回動させるステアリングブラケット６と、ステアリングブラケット６にマウント７を介して支持される推進ユニット９とを備えている。前記推進ユニット９は、ステアリングブラケット６に支持されるアッパケース１０を有し、アッパケース１０の上部にエンジン１１を支持する支持部材であるガイドエキゾースト１２とエンジンの下部を覆うボトムカウリング１３が取り付けられ、ボトムカウリング１３にエンジン１１の上部を覆うアッパカウリング（エンジンカバー）１４が着脱可能に取り付けられている。アッパケース１０の下部には、ロアケース１５が取り付けられ、全体としてケーシングを構成している。エンジンカバー１４の前部Ｆには、カバー部材１６が着脱自在に装着され、カバー部材１６の左右両側には空気取入口１７が開口され、また、エンジンカバー１４の後部Ｒにも空気取入口１９が形成されている。
【０００９】
図２において、エンジン１１は、水冷式４サイクル４気筒エンジンであり、エンジンボディ２０には、クランク軸２１、排気用カム軸２２、吸気用カム軸２３が縦方向に貫通するように配設されている。クランク軸２１の上部には駆動プーリ２４およびフライホイール２５が固定され、カム軸２２、２３には被駆動プーリ２６、２７が固定され、駆動プーリ２４の回転はベルト２９により被駆動プーリ２６、２７に伝達される。エンジンボディ２０には４つの気筒４１ａ（図３（Ｂ））が上下方向に並設されており、各気筒には４本の吸気管３０が連結され、それぞれスロットルボディ３１を経てエンジン１１前方に配設されたサイレンサ３２に合流、接続されている。なお、３３は燃料噴射弁、３５は燃料ポンプ、３６はサーモスタット、３７はスタータモータ、３８はフライホイールカバーである。そして、エンジンボディ２０の排気側の側面に、本発明に係わる触媒装置４０が設けられている。
【００１０】
図３〜図５は、本発明の１実施形態を示し、図３は図２の一部水平断面図であり、図４のＡ−Ａ線で切断し矢印方向に見た断面図、図４は図３のＢ−Ｂ線で切断し矢印方向に見た断面図、図５は図４においてガイド部材５５およびカバー４７、４９を取り外してＣ方向から見た側面図、図６は同様にＤ方向から見た底面図、図７は図５のＥ−Ｅ線で切断し矢印方向に見た一部断面図である。
【００１１】
図３において、図２のエンジンボディ２０は、シリンダボディ４１とシリンダヘッド４２が連結されて構成されている。シリンダボディ４１には、４つの気筒４１ａ、排気集合部４１ｂ、ウォータージャケット４１ｃが形成され、気筒４１ａ内にピストン４３が摺動自在に嵌合されている。また、シリンダヘッド４２には、４つの排気ポート４２ａ、ウォータージャケット４２ｃが形成され、排気ポート４２ａには排気用カム２２ａにより駆動される排気弁４４が装着されている。そして、各排気ポート４２ａの出口はシリンダボディ４１側の合い面に開口され、排気集合部４１ｂは、各排気ポート４２ａに連通する上下方向に縦長の排気入口部４１ｄと、シリンダボディ４１の側面上部に排気出口部４１ｅを有するように形成されている。
【００１２】
図４に示すように、シリンダボディ４１の下部には、排気をガイドエキゾースト１２（図１）側に導く第１排気通路４５が形成され、シリンダボディ４１の側面には、前記排気集合部４１ｂおよび第１排気通路４５を覆う２枚のスペーサプレート４６が固定されている。このスペーサプレート４６は、シリンダボディ４１からシリンダヘッド４２側に延設され、スペーサプレート４６には、排気出口部４１ｅおよび第１排気通路４５に連通する開口４６ａ、４６ｂが形成されている。また、スペーサプレート４６にはインナカバー４７が固定され、スペーサプレート４６との間に第２排気通路４８を形成し、さらに、インナカバー４７の上からアウタカバー４９を固定し、両者の間に冷却水通路５０を形成している。さらに、スペーサプレート４６には上下にブラケット５１、５２が取り付けられ、上下のブラケット５１、５２間に、筒状に成形された２つの触媒５３、５４が着脱自在に取り付けられている。図４に示すように、下方のブラケット５２には、開口４６ｂに向けて排気をガイドするためのガイド部材５５が取り付けられ、また、第２排気通路４８の上方には空燃比センサ５６が装着されている。さらに、スペーサプレート４６の下部には、触媒の温度を監視するための排気温度センサ５８が設けられている。
【００１３】
図５および図７に示すように、スペーサプレート４６には、シリンダボディ４１の下部に相当する位置に冷却水供給口５７と冷却水戻り口５９が形成され、また、シリンダボディ４１の上部に相当する位置にシリンダヘッド４２への冷却水出口６０とシリンダヘッド４２からの冷却水戻り口６１が形成されている。そして、冷却水供給口５７は、シリンダボディ４１の底部に形成された冷却水供給通路６２（図６）に連通され、冷却水戻り口５９は、冷却水戻り通路６３に連通されている。図７に示すように、インナカバー４７の底部には、アウタカバー４９との間に形成された冷却水通路５０と冷却水供給口５７とを連通させる冷却水通路４７ａが形成され、また、アウタカバー４９との間に形成された冷却水戻り通路６４と冷却水戻り口５９とを連通させる冷却水通路４７ｂが形成され、さらに、スペーサプレート４６、４６間には、冷却水供給口５７に連通する冷却水通路４６ａが形成されている。
【００１４】
上記構成からなる本実施形態の作用について説明する。各排気ポート４２ａからの排気は、入口部４１ｄから上方の排気集合部４１ｂに集合され、出口部４１ｅを経て第２排気通路４８内を上方から下方に流れ、開口４６ｂを経て第１排気通路４５から下方に排出される。このとき、排気の流れと平行に触媒５３、５４を配設しているので、排気の全量が触媒５３、５４の内部を流れ触媒により浄化される。
【００１５】
また、冷却水ポンプ（図示せず）により吸入された冷却水は、シリンダボディ４１の底部の冷却水供給通路６２からスペーサプレート４６の冷却水供給口５７、冷却水通路４７ａ、５０、冷却水出口６０を経てシリンダヘッド４２側に流れ、シリンダヘッド４２を冷却した冷却水は、冷却水戻り口６１、冷却水通路６４、４７ｂ、冷却水戻り口５９を経て冷却水戻り通路６３から下方に流れる。また、冷却水は、冷却水供給口５７から分岐してスペーサプレート４６に形成された冷却水通路４６ａにより下部から上部に向けて流れる。これにより、第２排気通路４８の両側から排気および触媒を冷却するので冷却性能を向上させることができる。
【００１６】
図８および図９は、本発明の他の実施形態を示し、図８は図１のエンジンの平面図、図９は図８の排気系の一部断面を示す側面図である。なお、前記実施形態と同一の構成については同一番号を付けて説明を省略する。
【００１７】
本実施形態においては、各排気ポート４２ａをシリンダヘッド４２の側面に開口させ、シリンダヘッド４２の側面上部に各排気ポート４２ａからの排気を集合させる上下方向に縦長の排気集合部材６５を取り付けている。排気集合部材６５の他端は、シリンダボディ４１側に曲折され、この排気集合部材６５に、シリンダボディ４１の側面に沿って水平排気管６６が連結されている。水平排気管６６の他端はカウリング１４内の前部Ｆ方向に延設された後、下方に曲折されており、水平排気管６６には、上下排気管６７が連結されている。さらに、上下排気管６７には、シリンダボディ４１の底部へ斜め下方に延びる排気管６８が連結されている。排気集合部材６５および各排気管６６、６７、６８の外周には、ウォータージャケット６９が形成されている。そして、水平排気管６６内に第１の触媒５３が配設され、上下排気管６７内に第２の触媒５４が配設されている。
【００１８】
各ウォータージャケット６９には、シリンダヘッド４２からの冷却水が供給されると共に、水平排気管６６、上下排気管６７のウォータージャケット６９には冷却水管７０からも冷却水が供給され、各排気管を冷却した冷却水は、エンジンの下方の冷却水戻り通路に流れる。第１および第２の触媒５３、５４内に充填される触媒は、同一仕様の触媒でもよいし、それぞれ通過する排気ガス温度が異なるので浄化したい成分に合わせて第１の触媒５３には三元触媒を、第２の触媒５４には、ＮＯx低減用触媒等とそれぞれ異なる仕様の触媒を設定することもできる。なお、本実施形態においては上下排気管６７を前部Ｆ方向に延設させているが、上下排気管６７を後部Ｒ方向に延設するようにしてもよい。
【００１９】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、４サイクルエンジンに適用した例について説明したが、２サイクルエンジンに適用するようにしてもよい。
【００２０】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、排気の流れと平行に触媒を配設するため、スペースを効率良く使うことができるとともに、触媒容量を大きくとれ、かつ、触媒装置のコンパクト化を図ることができ、また、スペーサプレートを設けることにより、シリンダボディの形状を変更することなく、スペーサプレートの大きさを変えることにより触媒装置の大きさを自在に変更することができ、また、触媒装置の冷却性能を向上させることができ、また、カウリング内のデッドスペース内に触媒装置をコンパクトに配設することができ、かつ、スペースの形状、大きさに合わせて触媒の配置、大きさを自由に設定することができ、また、スペースの制約がある４サイクルエンジンに効果的に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明が適用される船外機の例を示す側面図である。
【図２】図１のエンジンの平面図である。
【図３】本発明の１実施形態を示し、図２の一部水平断面図であり、図４のＡ−Ａ線で切断し矢印方向に見た断面図である。
【図４】図３のＢ−Ｂ線で切断し矢印方向に見た断面図である。
【図５】図４においてガイド部材５５およびカバー４７、４９を取り外してＣ方向から見た側面図である。
【図６】図４において同様にＤ方向から見た底面図である。
【図７】図５のＥ−Ｅ線で切断し矢印方向に見た一部断面図である。
【図８】本発明の他の実施形態を示し、図１のエンジンの平面図である。
【図９】図８の排気系の一部断面を示す側面図である。
【符号の説明】
２０：エンジンボディ、２１：クランク軸、４１：シリンダボディ、４１ｅ：排気出口部、４２：シリンダヘッド、４２ａ：排気ポート、４５：第１排気通路、４８：第２排気通路、４６：スペーサプレート、４７：カバー、４９：カバー、５３、５４：触媒、５０、４６ａ、６９：冷却水通路、６５：排気集合部材、６６：水平排気管、６７：上下排気管

Claims (4)

1. 排気ポート（４２ａ）が形成されたシリンダヘッド（４２）と、
   前記シリンダヘッドに接合され、縦方向に配置されたクランク軸（２１）を支持するシリンダボディ（４１）と、を備えた船外機用多気筒４サイクルエンジンにおいて、
   前記シリンダボディに固定されるスペーサプレート（４６）と、
   前記スペーサプレートに固定されるインナカバー（４７）と、
   を有し、
   前記排気ポートは、前記シリンダボディとの合い面に開口し、前記シリンダボディの側面と前記スペーサプレートの側面で形成される排気集合部（４１ｂ）に接続され、
   前記排気集合部は、前記スペーサプレートの側面と前記インナカバーの側面で形成される排気通路（４８）に接続され、
   前記排気通路には、縦方向視で、前記排気ポートの側方に位置する第１の触媒（５３）と、前記排気集合部の側方に位置する第２の触媒（５４）が設けられていることを特徴とする船外機用多気筒４サイクルエンジン。
2. 前記インナカバーに固定されるアウタカバー（４９）とを備え、
   前記インナカバーの側面と前記アウタカバーの側面で冷却水通路（５０）を形成したことを特徴とする請求項１記載の船外機用多気筒４サイクルエンジン。
3. 排気ポート（４２ａ）が形成されたシリンダヘッド（４２）と、
   前記シリンダヘッドに接合され、上下方向に配置されたクランク軸（２１）を支持するシリンダボディ（４１）と、
   を備えた船外機用多気筒４サイクルエンジンにおいて、
   上下方向視で、前記排気ポートに接続され、前記排気ポートの側方に設けられた形成した排気集合部材（６５）と、
   前記排気集合部材に接続され、前記シリンダボディの側方に設けられ、水平方向に延びる水平排気管（６６）と、
   前記水平排気管に接続され、前記シリンダボディの側方に設けられ、上下方向に延びる上下排気管（６７）と、
   前記水平排気管に設けられた第１の触媒（５３）と、
   前記上下排気管に設けられた第２の触媒（５４）と、
   を有し、
   前記第１の触媒および前記第２の触媒は、いずれも横方向の最大幅が、上下方向の最大幅より小さいことを特徴とする船外機用多気筒４サイクルエンジン。
4. 前記排気集合部材、前記水平排気管および前記上下排気管の外周に冷却水通路（６９）を形成したことを特徴とする請求項３記載の船外機用多気筒４サイクルエンジン。

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