JP4327292B2 - 鉄道車両の車軸ベアリングユニットにセンサーを装着するデバイス - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、鉄道車両の車軸ベアリングユニットの改良に関し、特に、温度センサーなどのセンサーの取付に好適な前記ベアリングユニットに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
よく知られているように、鉄道車両のボギーは、サドル形状の要素を介して車軸ベアリングの固定アウターレースに着座しており、前記要素は、車軸の外側面の下半部をカバーしていないもので、シーリングデバイスを用いて、車軸ベアリングのインナーレースとアウターレースとの間の環状のギャップを外部から閉止するようになっている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
このような車軸ベアリングユニットの動作状況、車軸の動作状況、例えば、温度や潤滑状況などを検知するセンサーを取り付ける必要があるが、従来の構造にこのようなセンサーを容易に取り付けられ、該センサーの動作が確実で、保守、点検が容易になる取り付け手段が要望されている。これが、本発明の解決課題である。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
本発明は、温度計測その他の計測機能を果たすセンサーを前記ベアリングユニットの上部に取り付けて、センサーが容易に取り付けられ、該センサーの動作が確実で、保守、点検が容易になる取付デバイスを提供し、前記課題を解決するものである。
【０００５】
本発明に係るデバイスは、鉄道車両の車軸ベアリングユニットに少なくとも一つのセンサーを装着するためのデバイスであって、
前記車軸ベアリングユニットのベアリングの固定アウターレースの外側の側面に装着された環状のシーリングインサート、すなわち、インサートを備えるものにおいて、
前記インサートのシリンドリカルの壁の外面に、付加して装着するための実質的に環状の形状をもつ装着手段を備え、
前記装着手段が、
前記インサートの上半部に位置する前記センサーと、
前記センサーに電気的に接続されている第１の電気導通手段と、前記インサートの下半部に配置されて、前記ベアリングから離れた位置にある要素と電気的に接続するための第２の電気導通手段とを電気的に接続するための電気接続手段と
を支持するように構成したものである。
【０００６】
さらに、本発明は、鉄道車両の車軸のベアリングユニットの構造をも要旨とするもので、このベアリングユニットは、少なくとも一つのセンサーを鉄道車両の車軸のベアリングユニットを装着するデバイスであり、このデバイスは、外周側面に前記ベアリングの固定アウターレースと一体の環状のシーリングインサートを備えるものにおいて、センサー装着デバイスが前記した構成をもつものである。
【０００７】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を記載し、本発明を詳細に説明する。
図１を参照すると、本発明の一つの好ましい実施の形態における鉄道車両の車軸ベアリングユニットは、放射状に配置された不動のアウターレース１、放射状に配置された回転する一対のインナーハーフレース２ａ，２ｂ及びアウターレース１とインナーハーフレース２ａ，２ｂそれぞれとの間に軸方向に間隔をおき、放射方向に介在している２セットの傾斜したローラー３ａ，３ｂを備えている。前記一対のインナーハーフレースは、既知の手段で回転する車軸４に取り付けらる。ボルトのようなねじがきってある取付要素６により車軸４に固定されたエンドキャップ５がシリンドリカルのスペーサー７を介在させてインナーハーフレース２ａ，２ｂを車軸４に対し正しい位置に保持するようになっている。
【０００８】
前記ベアリングのアウターレースの上には、コンベンショナルの鉄道ボギー（図を分かりやすするため図示せず）の凹んだ、サドル形状又は逆Ｕ字形状の要素８が搭載されている。図２に示すように、サドル要素８は、アウターレース１のセミシリンドリカルの上部及びラジアルアウター面にそう約１８０°に及ぶ周側面を有ている。サドル要素８の垂直方向の荷重がアウターレース１にかかるから、これによって、アウターレース１は、正しい位置に保持される。
【０００９】
図１において、符号９は、アウターレース１とインナーハーフレース２ｂの間の環状の間隙２０を前記ベアリングの軸方向外面からシールする通常の構造のシーリングデバイス全体を示す。このシーリングデバイス９は、不動のアウターレース１に装着された環状のシーリングインサート１０と、車軸４と前記ユニットの他の回転パーツと共に回転する部分と、固定された環状のインサート１１から構成されている。動かない環状のインサート１０は、金属又は他のリジッドなマテリアルから作られており、軸方向のシリンドリカルの壁１３に続くラジアル壁１２を形成する形状になっている。
【００１０】
この発明によれば、シリンドリカルの壁１３は、前記ベアリングユニットに設けられる少なくとも一つ又は複数のセンサーを取り付けるデバイスの支持面になる。この取付けデバイスは、外側からシリンドリカルの壁１３を囲む環状のストリップ１４を含む。そして、ストリップ１４は、締めつけデバイス１５により円周方向に締め付けられる。図示の好ましい実施の形態においては、ストリップ１４は、円形のリングであって、その両端部がボルト１５ａのような締め付け手段により緊締に結合されるようになっている。ストリップ１４を締め付ける手段は、他にも種々のものがあり、これらは、当業者にとって自明なことであるから、例示を省略する。
【００１１】
前記したストリップ１４の頂部において、ストリップ１４がセンサー本体又はセンサーハウジング１６を支持し、これにがっしり取り付けられている。前記のセンサー本体又はセンサーハウジング１６は、銅のような導電性のマテリアルから作られていることが好ましい。センサー本体１６に温度センサーのようなセンサー１７が装着されるもので、好ましい図示の実施の形態においては、センサー１７は、シリンドリカルの壁１３における開口１８を介して間隙２０内に突出している。この構成は、例えば温度センサー１７の設定位置としては絶好なものである。よく知られているように、ローリング摩擦により発生する熱の大部分は、ベアリングの上位部分に行き渡るもの、即ち、鉄道ボギーのサドル要素８の荷重を垂直方向で受ける部分に行き渡るものであるからである。
【００１２】
ストリップ１４の半円周下位位置にあっては、したがってサドル要素８が位置しない部分で、しかも容易にアクセスできる部分に前記ストリップと連結するコネクターブロック１９が設けられている。このコネクターブロック１９は、センサー１７から（及び／又は前記ストリップに取り付けられた他のセンサーから）の１本又は複数本のワイヤ２１をケーブル２２に接続し、このケーブルにより前記センサー又は複数のセンサーによって発生されたシグナルが例えば前記ボギーのボードなどの離れた位置に配置された処理ユニット（図示しない）へ送られる。また、場合により、前記コネクターブロック１９にコネクターなどを取り付けて、ケーブル２２を着脱自由に連結することもできる。
【００１３】
円弧状になったストリップ１４にそって設けられて、センサー本体１６とコネクターブロック１９とを電気的に結ぶワイヤなどの電気接続体２１を、前記ワイヤのアウターシース（外套体）を前記ストリップに一緒に成形するなどの手段で一体的に添わせることができる。センサー本体１６とコネクターブロック１９とを例えば溶接などの手段でストリップ１４に固定することも可能である。
【００１４】
添付の図面に示した好ましい実施例においては、センサー本体１６は、放射方向に外側へ突出した状態でサドル要素８の半円部頂部内側を穿って形成した凹所２３内に配置されている。したがって、センサー本体１６は、アウターレース１と前記ボギーとの円周方向の僅かな相対的なずれ（回転）を抑止するストッパーの機能を果たす。このようなずれは、例えば、列車がポイントを通過する際のガタガタした揺れによって発生する。実際にアウターレース１が回転すると、ケーブル２２に過度のストレスが作用し、前記ケーブルが破裂したり、特に、コネクターブロック１９が着脱自由のコネクターを備えている場合などにあっては、前記ケーブルが外れてしまうことになる。
【００１５】
ストリップ１４をシリンドリカルの壁１３の外面にしっかり保持するためには、特に、前記ストリップを前記壁に対しロックするためには、係合手段と該係合手段に対応する座とを設けることが好ましい。例えば、図４に示すようにストリップ１４の前記壁と対面する周側面に複数の突起２４を適当な間隔をおいて設け、これら突起２４が嵌合する座２５（孔又は凹部）を前記壁１３の対応する周側面に形成し、前記突起が前記座に着座又は嵌合することで、ストリイプ１４と壁１３とがぴったり当接し、相対的回転運動を阻止できる。このような手段をさらに図２の実施の形態について説明すると、図２において垂直軸Ｐを対称軸として前記係合手段と、これらに対応する座とが対称に設けられており、さらに、ケーブル２２を接続するコネクターブロック１９は、図の右側にある（設計条件に応じて、コネクターブロックを左側に設けてもよい）。また前記した座及び／又は前記突起には、ゴムその他の弾性ガスケットを嵌めておいてもよい。
【００１６】
図５には、本発明の別の実施の形態が図示されており、センサー１７の取付手段、コネクターブロック１９及び前記センサーと前記コネクターブロックとを結ぶ通電ワイヤ２１は、略Ω形状の下方が開放されている円弧状のリング体１４’に設けられている。このリング体１４’の頂部には、図示のように、センサーハウジング１６’が一体に形成されており、該リング体の一方（図では右側）の円弧状脚部の内部チャンネル又は背側面チャンネル内に通電ワイヤ２１が配置されている。リング体１４’は、環状のインサート１０に固定されるもので、この固定手段としては、リング体１４’に形成された３ケの挿通孔（１つが垂直軸にそい、他の２つが垂直軸に対称）に前記インサートに設けたボルト２４’を挿通し、ナット２５’止めする手段が採用されている。
【００１７】
本発明による取付デバイスは、種々の温度センサー（電子温度センサー、熱電対温度センサー、プラチナ温度センサー、磁気抵抗温度センサーなど）及びその他の各種センサー類の取付に適しており、例えば、前記ベアリングユニットの上位部分に取り付けた温度センサーの他に、ベアリングユニットのインナーハーフレースの回転速度又は角変位を測定するセンサーを設けることができる。図１に示されたセンサー１７は、回転速度計測のセンサーであり、車軸４と共に回転するインパルスリング２６と対面しているもので、前記リングには、円周方向に間隔をおいて磁化されたセクター又は金属歯が設けてある。
【００１８】
当業者もよく理解できるように、本発明は、速度計測センサー、位置計測センサー、変位計測センサー、振動測定センサーなどのセンサーや脱線又は車軸ロッキングなどの緊急事態発生を検知するセンサーなど種々のセンサーを装着できるものである。鉄道ボギーに搭載の処理ユニットへ送られたデータによりベアリングユニットの潤滑グリースの状態に関する情報が得られる。この発明のデバイスは、取り付けが容易であり、外部から容易に手が届くので、保守、点検などの作業がしやすく、接地のための電気的接続を行うブッシングが取り付けられている車軸へのセンサー取り付けに好適である。
【００１９】
前記した本発明の実施の形態は、本発明を理解するための例示であり、本発明を限定するものではない。当業者にとり種々のモディフィケーション，ヴァリエーションが前記実施の形態から行えるもので、これらは、すべて本発明の技術的範囲に含まれるものであり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲に記載の事項に基づいて決定される。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明による一つの好ましい実施の形態におけるデバイスを実装した鉄道車軸ベアリングユニットの軸方向断面図である。
【図２】図１の矢印IIの方向から見た一部切断側面図である。
【図３】図１の要部拡大断面図である。
【図４】図２の要部拡大断面図である。
【図５】本発明による他の好ましい実施の形態におけるデバイスを実装した鉄道車軸ベアリングユニットの展開斜視図である。
【符号の説明】
１ 車軸ベアリングユニットのアウターレース
４ 車軸
８ サドル
１０ 環状のシーリングインサート
１３ 環状のシーリングインサートの面
１４，１４’ 装着手段
１６ センサー本体
１７ センサー
１９ 電気接続手段
２１ 第１の電気導通手段
２２ 第２の電気導通手段

Claims (10)

1. 鉄道車両の車軸ベアリングユニットに少なくとも一つのセンサー（１７）を装着するためのデバイスであって、
   前記車軸ベアリングユニットのベアリングの固定アウターレース（１）の外側の側面に装着された環状のシーリングインサート（以下、インサートという）（１０）を備えるものにおいて、
   前記インサート（１０）のシリンドリカルの壁１３の外面に、付加して装着するための実質的に環状の形状をもつ装着手段（１４，１４′）を備え、
   前記装着手段（１４，１４’）が、
   前記インサート（１０）の上半部に位置する前記センサー（１７）と、
   前記センサー（１７）に電気的に接続されている第１の電気導通手段（２１）と、前記インサート（１０）の下半部に配置されて、前記ベアリングから離れた位置にある要素と電気的に接続するための第２の電気導通手段（２２）とを電気的に接続するための電気接続手段（１９）と
   を支持するように構成したことを特徴とするデバイス。
2. 前記センサー（１７）が前記インサート（１０）の実質的の頂部に配置されるように前記装着手段（１４，１４’）により支持されていることを特徴とする請求項１記載のデバイス。
3. 前記センサーは、温度計測センサー、車軸の回転速度又は角変位計測センサー、振動測定センサー、および、脱線又は車軸ロッキングなどの緊急事態発生を検知するセンサーからなるグループから選ばれるセンサーであることを特徴とする請求項１記載のデバイス。
4. 前記装着手段（１４，１４’）は、前記第１の電気導通手段（２１）を支持するようになっていることを特徴とする請求項１記載のデバイス。
5. 前記装着手段（１４，１４’）と前記インサート（１０）とは、係合手段（２４，２５）、または、固定手段（２４’，２５’）により装着されていることを特徴とする請求項１記載のデバイス。
6. 前記センサー（１７）は前記装着手段（１４）の上部に配置され、前記係合手段（２４，２５）、または、前記固定手段（２４′，２５′）は、前記装着手段（１４）における前記ベアリングユニットの車軸（４）の中心に垂直な軸（Ｐ）に対して対称な位置に配置されていることを特徴とする請求項５記載のデバイス。
7. 前記装着手段（１４）は、前記環状のインサート（１０）のシリンドリカルの壁（１３）に締め付け（１５）て結合される環状のストリップからなることを特徴とする請求項１記載のデバイス。
8. 前記装着手段（１４’）は、下端寄り部分が開放されているリング形状の要素からなることを特徴とする請求項１記載のデバイス。
9. 少なくとも一つのセンサー（１７）を鉄道車両の車軸（４）のベアリングユニットに装着するデバイスであり、このデバイスは、外周側面に前記ベアリングの固定アウターレース（１）と一体の環状のシーリングインサート（１０）を備えるものにおいて、
   前記センサーを装着するデバイスが請求項１から請求項８のいずれかに記載のデバイであることを特徴とするもの。
10. 前記センサー（１７）がセンサー本体（１６）に取り付けられており、このセンサー本体は、前記ベアリングのアウターレースに着座している鉄道ボギーのサドル形状又は逆Ｕ字形状の要素（８）の内側面に形成された凹部（２３）に嵌まりこむように突出している構造のものであることを特徴とする請求項９記載のデバイス。

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