JP4314700B2 - スイッチング電源回路 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電子機器に電源として備えられるスイッチング電源回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スイッチング電源回路として、例えばフライバックコンバータやフォワードコンバータなどの形式のスイッチングコンバータを採用したものが広く知られている。これらのスイッチングコンバータはスイッチング動作波形が矩形波状であることから、スイッチングノイズの抑制には限界がある。また、その動作特性上、電力変換効率の向上にも限界があることがわかっている。
そこで、先に本出願人により、各種共振形コンバータによるスイッチング電源回路が各種提案されている。共振形コンバータは容易に高電力変換効率が得られると共に、スイッチング動作波形が正弦波状となることで低ノイズが実現される。また、比較的少数の部品点数により構成することができるというメリットも有している。
【0003】
図5の回路図は、先に本出願人が提案した発明に基づいて構成することのできる、先行技術としてのスイッチング電源回路の一例を示している。この電源回路は、1石のスイッチング素子Q1 を備えて、いわゆるシングルエンド方式で自励式によりスイッチング動作を行う電圧共振形コンバータを備えて構成される。
【0004】
この図に示す電源回路においては、商用交流電源(交流入力電圧VAC)を入力して直流入力電圧を得るための整流平滑回路として、ブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiからなる全波整流回路が備えられ、交流入力電圧VACの1倍のレベルに対応する整流平滑電圧Eiを生成するようにされる。また、この整流平滑回路に対しては、その整流電流経路に対して突入電流制限抵抗Riが挿入されており、例えば電源投入時に平滑コンデンサCiに流入する突入電流を抑制するようにしている。
【0005】
この電源回路に備えられる電圧共振形のスイッチングコンバータは、1石のスイッチング素子Q1 を備えた自励式の構成を採っている。この場合、スイッチング素子Q1 には、高耐圧のバイポーラトランジスタ(BJT;接合型トランジスタ)が採用されている。
【0006】
スイッチング素子Q1 のベースは、起動抵抗RS を介して平滑コンデンサCi(整流平滑電圧Ei)の正極側に接続されて、起動時のベース電流を整流平滑ラインから得るようにしている。また、スイッチング素子Q1 のベースと一次側アース間には、検出駆動巻線NB ,共振コンデンサCB ,ベース電流制限抵抗RB の直列接続回路よりなる自励発振駆動用の直列共振回路が接続される。
また、スイッチング素子Q1 のベースと平滑コンデンサCiの負極(1次側アース)間に挿入されるクランプダイオードDD により、スイッチング素子Q1 のオフ時に流れるクランプ電流の経路を形成するようにされており、また、スイッチング素子Q1 のコレクタは、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 の一端と接続され、エミッタは接地される。
【0007】
また、上記スイッチング素子Q1 のコレクタ−エミッタ間に対しては、並列共振コンデンサCrが並列に接続されている。この並列共振コンデンサCrは、自身のキャパシタンスと、後述する絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 側のリーケージインダクタンスL1 とにより電圧共振形コンバータの一次側並列共振回路を形成する。そして、ここでは詳しい説明を省略するが、スイッチング素子Q1 のオフ時には、この並列共振回路の作用によって共振コンデンサCrの両端電圧Vcpは、実際には正弦波状のパルス波形となって電圧共振形の動作が得られるようになっている。
【0008】
この図に示す直交形制御トランスPRTは、共振電流検出巻線ND 、駆動巻線NB 、及び制御巻線NC が巻装された可飽和リアクトルである。この直交形制御トランスPRTは、スイッチング素子Q1 を駆動すると共に、定電圧制御のために設けられる。
この直交形制御トランスPRTの構造としては、図示は省略するが、4本の磁脚を有する2つのダブルコの字形コアの互いの磁脚の端部を接合するようにして立体型コアを形成する。そして、この立体型コアの所定の2本の磁脚に対して、同じ巻回方向に共振電流検出巻線ND 、駆動巻線NB を巻装し、更に制御巻線NC を、上記共振電流検出巻線ND 及び駆動巻線NB に対して直交する方向に巻装して構成される。
【0009】
この場合、直交形制御トランスPRTの共振電流検出巻線ND は、平滑コンデンサCiの正極と絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 との間に直列に挿入されることで、スイッチング素子Q1 のスイッチング出力は、一次巻線N1 を介して共振電流検出巻線ND に伝達される。直交形制御トランスPRTにおいては、共振電流検出巻線ND に得られたスイッチング出力がトランス結合を介して駆動巻線NB に励起されることで、駆動巻線NB にはドライブ電圧としての交番電圧が発生する。このドライブ電圧は、自励発振駆動回路を形成する直列共振回路(NB ,CB )からベース電流制限抵抗RB を介して、ドライブ電流としてスイッチング素子Q1 のベースに出力される。これにより、スイッチング素子Q1 は、直列共振回路の共振周波数により決定されるスイッチング周波数でスイッチング動作を行うことになる。
【0010】
絶縁コンバータトランスPITは、スイッチング素子Q1 のスイッチング出力を二次側に伝送する
絶縁コンバータトランスPITは、図16に示すように、例えばフェライト材によるE型コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コアが備えられ、このEE型コアの中央磁脚に対して、分割ボビンBを利用して一次巻線N1 と、二次巻線N2 をそれぞれ分割した状態で巻装している。そして、中央磁脚に対しては図のようにギャップGを形成するようにしている。これによって、所要の結合係数による疎結合が得られるようにしている。
ギャップGは、E型コアCR1,CR2の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成することが出来る。また、結合係数kとしては、例えばk≒0.85という疎結合の状態を得るようにしており、その分、飽和状態が得られにくいようにしている。
【0011】
上記絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 の一端は、図5に示すようにスイッチング素子Q1 のコレクタと接続され、他端側は共振電流検出巻線ND の直列接続を介して平滑コンデンサCiの正極(整流平滑電圧Ei)と接続されている。
【0012】
絶縁コンバータトランスPITの二次側では、一次巻線N1 により誘起された交番電圧が二次巻線N2 に発生する。この場合、二次巻線N2 に対しては、二次側並列共振コンデンサC2 が並列に接続されることで、二次巻線N2 のリーケージインダクタンスL2 と二次側並列共振コンデンサC2 のキャパシタンスとによって並列共振回路が形成される。この並列共振回路により、二次巻線N2 に励起される交番電圧は共振電圧となる。つまり二次側において電圧共振動作が得られる。
【0013】
即ち、この電源回路では、一次側にはスイッチング動作を電圧共振形とするための並列共振回路が備えられ、二次側には電圧共振動作を得るための並列共振回路が備えられる。なお、本明細書では、このように一次側及び二次側に対して共振回路が備えられて動作する構成のスイッチングコンバータについては、「複合共振形スイッチングコンバータ」ともいうことにする。
【0014】
上記ようにして、電源回路の二次側に対しては、ブリッジ整流回路DBR及び平滑コンデンサCO1から成る整流平滑回路を備えることで二次側直流出力電圧EO1を得るようにしている。つまり、この構成では二次側においてブリッジ整流回路DBRによって全波整流動作を得ている。この場合、ブリッジ整流回路DBRは二次側並列共振回路から供給される共振電圧を入力することで、二次巻線N2 に励起される交番電圧とほぼ等倍レベルに対応する直流出力電圧EO1を生成する。なお、この直流出力電圧EO1は制御回路1に対しても分岐して入力される。
制御回路1においては、直流出力電圧EO1を検出電圧及び制御回路1の動作電源として利用する。
【0015】
また、上記図5に示した電源回路の絶縁コンバータトランスPITの二次側としては、本出願人の提案に基づき図6に示すような回路構成も採用することができる。
この図に示す絶縁コンバータトランスPITの二次側では、二次巻線N2 に対して並列に二次側並列共振コンデンサC2 が接続される。そして、二次巻線N2 に対してセンタータップを設けたうえで、整流ダイオードDO1,DO2及び平滑コンデンサCO1を図のように接続することで全波整流回路を構成し、二次巻線N2 に励起される交番電圧のほぼ等倍レベルに対応する直流出力電圧EO1を生成するようにしている。
【0016】
ところで、絶縁コンバータトランスPITにおいては、一次巻線N1 、二次巻線N2 の極性(巻方向)と整流ダイオードDO (DO1,DO2)の接続との関係によって、一次巻線N1 のインダクタンスL1 と二次巻線N2 のインダクタンスL2 との相互インダクタンスMについて、+Mとなる場合と−Mとなる場合とがある。
例えば、図17(a)に示す接続形態を採る場合に相互インダクタンスは+Mとなり、図17(b)に示す接続形態を採る場合に相互インダクタンスは−Mとなる。
これを、図5及び図6に示す二次側の動作に対応させてみると、例えば図5に示す電源回路では、二次巻線N2 に得られる交番電圧が正極性のときにブリッジ整流回路DBRに整流電流I3 が流れる動作は+Mの動作モード(フォワード方式)と見ることができ、また逆に二次巻線N2 に得られる交番電圧が負極性のときにブリッジ整流ダイオードDBRに整流電流I4 が流れる動作は−Mの動作モード(フライバック方式)であると見ることができる。
また例えば図6に示す電源回路では、二次巻線N2 に得られる交番電圧が正極性のときに整流ダイオードDO1に整流電流が流れる動作は+Mの動作モード(フォワード方式)と見ることができ、逆に、二次巻線N2 に得られる交番電圧が負極性のときに整流ダイオードDO2に流れる整流電流は−Mの動作モード(フライバック方式)であると見ることができる。即ち、この図5及び図6に示す電源回路では、二次巻線N2 に得られる交番電圧が正/負となるごとに、相互インダクタンスが+M/−Mのモードで動作することになる。
【0017】
このような構成では、一次側並列共振回路と二次側並列共振回路の作用によって増加された電力が負荷側に供給され、それだけ負荷側に供給される電力も増加して、最大負荷電力の増加率も向上する。
これは、先に図16にて説明したように、絶縁コンバータトランスPITに対してギャップGを形成して所要の結合係数による疎結合としたことによって、更に飽和状態となりにくい状態を得たことで実現されるものである。例えば、絶縁コンバータトランスPITに対してギャップGが設けられない場合には、フライバック動作時において絶縁コンバータトランスPITが飽和状態となって動作が異常となる可能性が高く、上述した全波整流動作が適正に行われるのを望むのは難しい。
【0018】
制御回路1では、二次側の直流出力電圧レベルEO1の変化に応じて、制御巻線NC に流す制御電流(直流電流)レベルを可変することで、直交形制御トランスPRTに巻装された駆動巻線NB のインダクタンスLB を可変制御する。これにより、駆動巻線NB のインダクタンスLB を含んで形成されるスイッチング素子Q1 のための自励発振駆動回路内の直列共振回路の共振条件が変化する。これは、スイッチング素子Q1 のスイッチング周波数を可変する動作となり、この動作によって二次側の直流出力電圧を安定化する。
【0019】
図5に示した電源回路においては、駆動巻線NB のインダクタンスLB を可変制御する直交形制御トランスPRTが設けられる場合、スイッチング周波数を可変するのにあたり、スイッチング素子Q1 がオフとなる期間TOFF は一定とされたうえで、オンとなる期間TONを可変制御するようにされる。つまり、この電源回路では、定電圧制御動作として、スイッチング周波数を可変制御するように動作することで、スイッチング出力に対する共振インピーダンス制御を行い、これと同時に、スイッチング周期におけるスイッチング素子の導通角制御(PWM制御)も行っているものと見ることが出来る。そして、この複合的な制御動作を1組の制御回路系によって実現している。なお、本明細書では、このような複合的な制御を「複合制御方式」ともいう。
【0020】
ここで、例えば入力される交流入力電圧VACの変動が85V〜144V、対応可能な負荷電力Poが200W〜0W(無負荷)という入出力条件に対応する電源回路を、上記図5に示した直交形制御トランスPRTによる自励発振形スイッチング周波数制御方式によって構成する場合は、例えば絶縁コンバータトランスPITのフェライトコアEE−35、一次巻線N1 及び二次巻線N2 の巻線数をそれぞれ43T(ターン)、ギャップG=1mm、一次側共振コンデンサCr=6800pF、二次側並列共振コンデンサC2 =0.01μFに選定される。
【0021】
図7は上記のように各構成部品の値が設定された図5に示す構成の電源回路において、入力交流電圧VACを100Vとした時に得られる動作波形の一例を示した図である。
このような電源回路において、自励発振駆動回路としての直列共振回路(NB ,CB )によりスイッチング素子Q1 がスイッチング動作を行うことで、スイッチング素子Q1 //並列共振コンデンサCrの並列接続回路の両端には、並列共振回路の作用によって、図7(a)に示すような一次側並列共振電圧Vcpが得られる。この一次側並列共振電圧Vcpは、図示するようにスイッチング素子Q1 がオンとなる期間TONは0レベルで、オフとなる期間TOFF において正弦波状のパルスとなる波形が得られ、電圧共振形としての動作に対応している。
【0022】
そして、スイッチング素子Q1 のオン/オフ動作により、絶縁コンバータトランスPITの二次側にスイッチング出力が伝達される。この場合、絶縁コンバータトランスPITが+Mの動作モード(フォワード方式)になると、絶縁コンバータトランスPITはフォワードコンバータ動作となって、絶縁コンバータトランスPITの二次側に設けられているブリッジ整流回路DBRでは、図7(b)に示すような波形の整流電流I3 が流れる。また逆に、絶縁コンバータトランスPITが−Mの動作モード(フライバック方式)になると、絶縁コンバータトランスPITはフライバックコンバータ動作となって、図7(c)に示すような波形の整流電流I4 が流れることになる。
【0023】
また図8は、上記のように各構成部品の値が設定された図5に示す構成の電源回路において、負荷が変動した場合の定電圧制御特性を示した図である。なお、この場合も入力交流電圧VACは100Vとする。
この図に示されているように、上記図5に示した電源回路では、二次側から出力される直流出力電圧EO1の定電圧制御として、負荷電力Poが上昇するにしたがって、スイッチング素子Q1 のスイッチング周波数fsがほぼ一定の傾きを持って低くなるように制御され、また同時にスイッチング素子Q1 がオンとなる期間TONもほぼ一定の傾きを持って長くなるように制御されている。なお、スイッチング素子Q1 がオフとされる期間TOFF は、ほぼ一定とされるので図示は省略する。つまり、上記図5に示した電源回路では、定電圧制御動作として、スイッチング周波数を可変制御することで、スイッチング出力に対する共振インピーダンス制御を行い、これと同時にスイッチング素子Q1 のオン期間(導通角)を制御するという複合制御方式を採っている。
【0024】
また、図9は先に本出願人により提案された発明に基づいて構成することのできる先行技術としてのスイッチング電源回路の他の構成例を示した図である。
なお、上記図5と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0025】
この図に示す絶縁コンバータトランスPITの二次側に設けられている二次巻線N2 の一端は二次側アースに接続され、他端は直列共振コンデンサCsの直列接続を介して整流ダイオードDO1のアノードと整流ダイオードDO2のカソードの接続点に対して接続される。整流ダイオードDO1のカソードは平滑コンデンサCO1の正極と接続され、整流ダイオードDO2のアノードは二次側アースに対して接続される。平滑コンデンサCO1の負極側は二次側アースに対して接続される。
【0026】
このような接続形態では、[二次巻線N2 、直列共振コンデンサCs、整流ダイオードDO1,DO2、平滑コンデンサCO1]の組から成る倍電圧半波整流回路が設けられることになる。ここで、直列共振コンデンサCsは、自身のキャパシタンスと二次巻線N2 の漏洩インダクタンス成分L2 とによって、整流ダイオードDO1,DO2のオン/オフ動作に対応する直列共振回路を形成する。
また、一次側の並列共振回路(N1 ,Cr)の並列共振周波数をfo1とし、上記二次側の直列共振回路の直列共振周波数をfo2とすると、fo1≒fo2となるように、二次側の直列共振コンデンサCsのキャパシタンスが選定される。つまり、この図に示す電源回路も、一次側にスイッチング動作を電圧共振形とするための並列共振回路が備えられ、二次側に倍電圧半波整流動作を得るための直列共振回路が備えられた複合共振形スイッチングコンバータとして構成されているものである。
【0027】
上記[二次巻線N2 、直列共振コンデンサCs、整流ダイオードDO1,DO2,平滑コンデンサCO1]の組による倍電圧整流動作としては、一次側のスイッチング動作により一次巻線N1 にスイッチング出力が得られると、このスイッチング出力は二次巻線N2 に励起される。倍電圧整流回路は、この二次巻線N2 に得られた交番電圧を入力して整流動作を行う。
この場合、先ず、整流ダイオードDO1がオフとなり、整流ダイオードDO2がオンとなる期間においては、一次巻線N1 と二次巻線N2 との極性が−Mとなる減極性モードで動作して、二次巻線N2 の漏洩インダクタンスと直列共振コンデンサCsによる直列共振作用によって、整流ダイオードDO2により整流した整流電流を直列共振コンデンサCsに対して充電する動作が得られる。
そして、整流ダイオードDO2がオフとなり、整流ダイオードDO1がオンとなって整流動作を行う期間においては、一次巻線N1 と二次巻線N2 との極性が+Mとなる加極性モードとなり、二次巻線N2 に誘起された電圧に直列共振コンデンサCsの電位が加わるという直列共振が生じる状態で平滑コンデンサCO1に対して充電が行われる動作となる。
上記のように、絶縁コンバータトランスPITが加極性モードと減極性モードを交互に繰り返すことで、平滑コンデンサCO1には、二次巻線N2 の誘起電圧のほぼ2倍のレベルに対応した直流出力電圧(整流平滑電圧)が得られる。つまり、この図9に示す二次側においては、いわゆる倍電圧半波整流動作を行う倍電圧半波整流回路が設けられている。
【0028】
ここで、例えば入力される交流入力電圧VACの変動を85V〜144V、対応可能な負荷電力Poを200W〜0Wとした入出力条件に対応する電源回路を、図9に示した倍電圧半波整流回路を備えた電源回路によって構成する場合は、例えば絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 の巻線数を39T、二次巻線N2 の巻線数を23T、一次側共振コンデンサCr=4700pF、二次側直列共振コンデンサCs=0.1μFに選定される。
【0029】
図11は、図9に示したような絶縁コンバータトランスPITの二次側が倍電圧半波整流回路によって構成され、各構成部品の値が適正に選定された電源回路において、入力交流電圧VACを100Vとした時に得られる動作波形の一例である。
このような回路においても、自励発振駆動回路としての直列共振回路(NB ,CB )によりスイッチング素子Q1 がスイッチング動作を行うことで、スイッチング素子Q1 //並列共振コンデンサCrの並列接続回路の両端には、並列共振回路の作用によって、図11(a)に示すような一次側並列共振電圧Vcpが得られる。この並列共振電圧Vcpは、図示するように、スイッチング素子Q1 がオンとなる期間TONは0レベルで、オフとなる期間TOFF において正弦波状のパルスとなる波形が得られ、電圧共振形としての動作に対応することになる。
また、整流ダイオードDO1,DO2を流れる電流I3 ,I4 は、図11(b),図11(c)に示すように、二次巻線N2 を流れる直列共振電流が交互に連続して流れる波形となる。
【0030】
また図12は、上記のような設計により各構成部品の値が設定された図9に示した電源回路において、負荷を変動させた場合の定電圧制御特性を示した図である。なお、この場合の入力交流電圧VACは100V、二次側直流出力電圧EO1のレベルは135Vとされる。
この図12に示されているように、図9に示した電源回路では、負荷電力Poが変動した場合でも、スイッチング周波数fsは殆ど変化しておらず、二次側から出力される直流出力電圧EO1を定電圧化するための定電圧制御は、スイッチング素子Q1 がオンとされる期間TONと、オフとされる期間TOFF を制御することにより実現されている。即ち、図9に示した電源回路は、スイッチング周波数fsの可変制御は行われておらず、先に説明したような複合制御方式を採っていないものとなっている。
【0031】
また、上記図9に示した電源回路の絶縁コンバータトランスPITの二次側としては、本出願人からの提案に基づき図10に示すような回路構成とすることもできる。
この図に示す絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2 の一端は、直列共振コンデンサCs1 の直列接続を介して、整流ダイオードDO1のアノードと整流ダイオードDO2のカソードの接続点に対して接続されると共に、直列共振コンデンサCs2 の直列接続を介して整流ダイオードDO3のアノードと整流ダイオードDO4のカソードの接続点に対して接続される。
一方、二次巻線N2 の他端は、平滑コンデンサCO10 の負極と平滑コンデンサCO11 の正極の接続点に対して接続される。また、この平滑コンデンサCO10 の負極と平滑コンデンサCO11 の正極の接続点に対しては、整流ダイオードDO2のアノードと整流ダイオードDO3のカソードが接続される。
平滑コンデンサCO10 と平滑コンデンサCO11 は、平滑コンデンサCO10 の負極と平滑コンデンサCO11 の正極と接続して直列接続したうえで、平滑コンデンサCO10 の正極を整流ダイオードDO1のカソードに接続し、平滑コンデンサとCO11 の負極を二次側アースに対して接続するように設けられる。
【0032】
このような接続形態では、結果的には、[直列共振コンデンサCs1 、整流ダイオードDO1,DO2、平滑コンデンサCO10 ]の組から成る第1の倍電圧整流回路と、[直列共振コンデンサCs2 、整流ダイオードDO3,DO4、平滑コンデンサCO11 ]の組から成る第2の倍電圧整流回路とが形成され、これら第1及び第2の倍電圧整流回路の出力(平滑コンデンサCO10 ,CO11 )が直列に接続されて設けられることになる。そして、この第1及び第2の倍電圧整流回路を組み合わせた整流回路全体としては、直列接続された平滑コンデンサCO10 −平滑コンデンサCO11 の両端には、二次巻線N2 に得られた交番電圧の4倍に対応する二次側出力電圧が得られる。つまり、この第1及び第2の倍電圧整流回路を組み合わせた整流回路全体としては、4倍電圧全波整流回路を形成する。なお、この4倍電圧全波整流回路の整流動作については後述する。
【0033】
直列共振コンデンサCs1 は、自身のキャパシタンスと二次巻線N2 の漏洩インダクタンス成分L2 とによって、第1の倍電圧整流回路における整流ダイオードDO1,DO2のオン/オフ動作に対応する直列共振回路を形成する。
同様に、直列共振コンデンサCs2 は、自身のキャパシタンスと二次巻線N2 の漏洩インダクタンス成分L2 によって、第2の倍電圧整流回路における整流ダイオードDO3,DO4のオン/オフ動作に対応する直列共振回路を形成する。
【0034】
また、これら直列共振回路の共振周波数としては、一次側の並列共振回路(N1 ,Cr)の並列共振周波数をfo1とし、二次側の直列共振回路(N2 ,Cs1 )の直列共振周波数をfo2、同じ二次側の直列共振回路(N2 ,Cs2 )の直列共振周波数をfo3とすると、fo1≒fo2≒fo3となるように、二次側の直列共振コンデンサCs1 ,Cs2 のキャパシタンスが選定される。
【0035】
続いて、先に述べた4倍電圧全波整流回路の動作について説明する。
一次側のスイッチング動作により一次巻線N1 にスイッチング出力が得られると、このスイッチング出力は二次巻線N2 に励起される。4倍電圧整流回路は、この二次巻線N2 に得られた交番電圧を入力して整流動作を行うが、このときの[直列共振コンデンサCs1 、整流ダイオードDO1,DO2、平滑コンデンサCO10 ]から成る第1の倍電圧整流回路の動作を以下に記す。
先ず、整流ダイオードDO1がオフとなり、整流ダイオードDO2がオンとなる期間においては、一次巻線N1 と二次巻線N2 との極性が−Mとなる減極性モードで動作して、二次巻線N2 の漏洩インダクタンスと直列共振コンデンサCs1 による直列共振作用によって、整流ダイオードDO2により整流した整流電流を直列共振コンデンサCs1 に対して充電する動作が得られる。
そして、整流ダイオードDO2がオフとなり、整流ダイオードDO1がオンとなって整流動作を行う期間においては、一次巻線N1 と二次巻線N2 との極性が+Mとなる加極性モードとなり、二次巻線N2 に誘起された電圧に直列共振コンデンサCs1 の電位が加わるという直列共振が生じる状態で平滑コンデンサCO10 に対して充電が行われる動作となる。
【0036】
上記のようにして、加極性モード(+M;フォワード動作)と減極性モード(−M;フライバック動作)との両者のモードを利用して整流動作が行われることで、平滑コンデンサCO10 においては、二次巻線N2 の誘起電圧のほぼ2倍に対応する直流電圧(整流平滑電圧)が得られる。
また、[直列共振コンデンサCs2 、整流ダイオードDO3,DO4、平滑コンデンサCO11 ]の組とから成る第2の倍電圧整流回路においても同様の動作によって、平滑コンデンサCO11 の両端には、二次巻線N2 の誘起電圧のほぼ2倍に対応する直流電圧が得られることになる。
【0037】
そして、上記のようにして第1,第2の倍電圧整流回路の各々によって倍電圧整流動作が行われる結果、直列接続された平滑コンデンサCO10 −平滑コンデンサCO11 の両端には、二次巻線N2 の誘起電圧のほぼ4倍に対応する二次側直流出力電圧EO1が得られることになる。
【0038】
ここで、例えば入力される交流入力電圧VACの変動を85V〜144V、対応可能な負荷電力Poを200W〜0Wという入出力条件に対応する電源回路を、図10に示した4倍電圧全波整流回路を備えた電源回路によって構成する場合は、例えば絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 =46T、二次巻線N2 =14T、一次側共振コンデンサCr=3900pF、二次側直列共振コンデンサCs1 ,Cs2 =0.1μFが選定される。
【0039】
また、例えば絶縁コンバータトランスPITの二次側として、図13に示すような回路構成を採用することも考えられる。
この図に示す電源回路の二次側としては、図5に示した電源回路の二次巻線N2 に対して並列に接続されていた二次側並列共振コンデンサC2 を削除し、二次巻線N2 の一端とブリッジ整流回路DBRとの間に、二次側直列共振コンデンサCsを直列に接続した構成とされる。
【0040】
図14は、上記図13に示した二次側の回路構成を備え、適正なドライブ条件となるように各構成部品の値が選定された電源回路において、負荷を変動させた場合の定電圧制御特性を示した図である。
この図に示されているように、図13に示した電源回路は、図9に示した電源回路と同様、負荷電力Poが変動した場合でもスイッチング周波数fsは殆ど変化しておらず、二次側から出力される直流出力電圧EO1を定電圧化するための定電圧制御は、スイッチング素子Q1 がオンとされる期間TONと、オフとされる期間TOFF を制御することにより行われている。つまり、図13に示した電源回路は図9に示した電源回路と同様に複合制御方式を採っていないものとされる。
【0041】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図5に示した電源回路では、ブリッジ整流回路DBRを構成している各整流ダイオードがターンオンする際に、ブリッジ整流回路DBRの整流ダイオードを流れる電流I3 ,I4 には、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2 の漏洩インダクタンス成分L2 と、ブリッジ整流回路DBRを構成している各整流ダイオードの接合静電容量(数pF)によって、図7(b),図7(c)に示すような高周波のリンギング電流(振動電流)が重畳される。
このような高周波の振動電流は、ブリッジ整流回路DBRを構成している4組の整流ダイオードから電源ノイズ(EMI;Electromagnetic Interference)として輻射されることになる。このため、図5に示した電源回路の実際に構成する場合は、絶縁コンバータトランスPITの二次側にフェライトビーズインダクタやセラミックコンデンサを追加するなどして、EMI対策を施さなければならず部品点数が増加する。
【0042】
これに対して、図9に示した倍電圧半波整流方式の電源回路では、図11(b),図11(c)に示すように、二次側に設けられている整流ダイオードDO1,DO2のターンオン時に、整流ダイオードDO1,DO2を流れる共振電流I3 ,I4 に高周波のリンギングノイズは重畳されない。
また、図10に示した4倍電圧全波整流方式の電源回路、及び図13に示した等倍電圧全波整流方式の電源回路においても、その動作波形は図示していないが二次側に設けられている整流ダイオードを流れる共振電流に高周波のリンギングノイズが重畳されないものとなる。
【0043】
しかしながら、上記図9及び図10に示した電源回路は、図12に示すように、負荷電力が例えば50W〜120Wの範囲という中間負荷状態となる領域においてスイッチング素子Q1 が異常動作となる。
また図13に示した電源回路も、図14に示すように、例えば負荷電力が中間負荷状態となる領域においてスイッチング素子Q1 が異常動作となっている。
つまり、上記図9、図10及び図13に示した電源回路では、絶縁コンバータトランスPITの二次側に、二次側直列共振コンデンサCsが設けられているため、二次側の整流ダイオードDO1〜DO4を流れる共振電流に高周波のリンギングノイズが重畳されなくなるが、この場合は負荷電力が中間負荷状態となる領域において、スイッチング素子Q1 が異常動作となる欠点があった。
【0044】
ここで、図13に示した電源回路の中間負荷状態における動作波形を図15に示し、この図を参照しながら中間負荷状態において発生する異常動作について説明する。
自励発振駆動回路としての直列共振回路(NB ,CB )によりスイッチング素子Q1 がスイッチング動作を行うことで、図15(a)に示すような一次側並列共振電圧Vcpが得られることになる。この場合はスイッチング素子Q1 がオフとなっている期間TOFF が終了する直前の期間T1 において、図15(b)に示すようにスイッチング素子Q1 のコレクタに対してコレクタ電流Icpが短時間流れることになる。また、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2 を流れる共振電流I2 の波形としては、図15(c)に示すような波形となる。
【0045】
この場合、図15(a),図15(b)に示したようにスイッチング素子Q1 のオフ期間TOFF が終了する直前の期間T1 では、スイッチング素子Q1 が導通状態となっており、スイッチング素子Q1 のコレクタ−エミッタ間に供給されている一次側共振電圧Vcpが0レベルになった時にスイッチング動作を行う、いわゆる共振形の基本動作であるZVS(Zero Voltage Switching)動作から外れることになる。即ち、上記図13に示した電源回路の中間負荷状態においては、スイッチング素子Q1 の動作がZVS動作を外れることにより異常動作が発生している。
【0046】
このような異常動作は、負荷電力Poの減少にともなってスイッチング素子Q1 のオフとなる期間TOFF が拡大することによって発生する。そして、このような異常動作が発生する期間T1 においては、スイッチング素子Q1 が或る電圧レベルと電流レベルを持った状態でスイッチング動作が行われるので、スイッチング素子Q1 における電力損失が増加することになる。このため、スイッチング素子Q1 の発熱を抑えるための放熱板を拡大する必要が生じることになる。
【0047】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記した課題を考慮して、二次側に設けられる整流ダイオードを流れる二次側共振電流に高周波のリンギング電流が重畳されないようにすると共に、中間負荷状態においてもスイッチング素子の動作がZVS動作となるスイッチング電源回路を提供することを目的とする。
【0048】
このため、本発明のスイッチング電源回路としては、スイッチング素子を備えて、入力された直流入力電圧を断続して出力するスイッチング手段と、スイッチング手段の出力を二次側に伝送する絶縁コンバータトランスと、スイッチング手段の動作を電圧共振形とするようにして挿入される一次側電圧共振回路と、絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して二次側並列共振コンデンサを並列に接続することで形成される二次側並列共振回路と、絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して二次側直列共振コンデンサを直列に接続することで形成される二次側直列共振回路とが組み合わされて成る二次側共振回路とを備える。
そして、絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧を入力して整流動作を行うことで、交番電圧のレベルの等倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧を得るように構成された直流出力電圧生成手段と、二次側直流出力電圧レベルに応じて、スイッチング素子のスイッチング周波数を可変することで定電圧制御を行うようにされる定電圧制御手段とを備えて構成することとした。
【0049】
上記構成によれば、絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して二次側直列共振回路と二次側並列共振回路が組み合わされて成る二次側共振回路を設けることで、二次側並列共振回路の共振動作によって、絶縁コンバータトランスの二次巻線N2 を流れる二次側共振電流をほぼ正弦波状とすることができる。これにより、二次側に設けられる整流ダイオードを流れる共振電流の導通角がほぼ等しくなるため、整流ダイオードを流れる共振電流には、高周波のリンギング電流が重畳されなくなる。
また、二次側直流出力電圧の定電圧制御としては、スイッチング周波数と、スイッチング素子を流れるスイッチング電流の導通角を制御する複合制御となるため、負荷が変動した場合でもスイッチング素子がオフとなる期間の拡大を抑えることができ、中間負荷状態においてもスイッチング素子をZVS動作とすることが可能になる。
【0050】
【発明の実施の形態】
図1の回路図は、本発明の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成を示した図である。この図に示す電源回路は、これまで説明してきた電源回路と同様に、1石のスイッチング素子(バイポーラトランジスタ)を備えた自励式の電圧共振形スイッチングコンバータが設けられている。なお、この図において図5及び図13と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
この図1に示す本実施の形態の電源回路は、図5及び図13に示した電源回路と同様に、絶縁コンバータトランスPITの二次側に対してブリッジ整流回路DBRが設けられている。そして、二次側並列共振コンデンサC2 と、二次側直列コンデンサCsが組み合わされて接続されている点が、図5及び図13に示した電源回路と異なる。つまり、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2 に対して、二次側並列共振コンデンサC2 が並列に接続されていると共に、二次巻線N2 の一端とブリッジ整流回路DBRとの間に二次側直列共振コンデンサCsが直列に挿入されている。
【0052】
上記したような構成によれば、本実施の形態の電源回路の二次側においては、二次側並列共振コンデンサC2 のキャパシタンスと二次巻線N2 の漏洩インダクタンスL2 とにより電圧共振回路が形成されると共に、二次側直列共振コンデンサCsのキャパシタンスと二次巻線N2 の漏洩インダクタンスL2 とにより電流共振回路が形成されることになる。つまり、二次側では、二次巻線N2 を共通にインダクタンスとして備える電圧共振回路と電流共振回路とが複合的に組み合わされた構成を採るものである。
なお、本明細書では、このようにして二次側において電圧共振回路と電流共振回路とを組み合わせた構成について、「二次側電圧・電流共振回路」ともいうこととする。
【0053】
図2は上記したような本実施の形態の電源回路の各部の動作波形の一例を示した図である。
このような本実施の形態の電源回路は、自励発振駆動回路としての直列共振回路(NB ,CB )によりスイッチング素子Q1 がスイッチング動作を行うことで、スイッチング素子Q1 //並列共振コンデンサCrの並列接続回路の両端には、並列共振回路の作用によって、図2(a)に示すような一次側並列共振電圧Vcpが得られる。この並列共振電圧Vcpは、図示するようにスイッチング素子Q1 がオンとなる期間TONは0レベルで、オフとなる期間TOFF において正弦波状のパルスとなる波形が得られる。またスイッチング素子Q1 のコレクタには図2(b)に示すような波形のコレクタ電流Icpが流れることになる。
【0054】
また、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2 を流れる二次側共振電流I2 の波形としては、二次側直列共振コンデンサCsと二次側並列共振コンデンサC2 が組み合わせて接続されていることで、これら並列共振コンデンサC2 及び直列共振コンデンサCsのキャパシタンスと、二次巻線N2 の漏洩インダクタンスL2 による電圧・電流共振動作によって、図2(c)に示すように、ほぼ正弦波状となっている。
この場合、ブリッジ整流回路DBRを構成している4組の整流ダイオードを流れる共振電流I3 ,I4 の導通角はほぼ等しいものとなり、共振電流I3 ,I4 の波形としては図2(d),図2(e)に示すようになる。
【0055】
このような本実施の形態の電源回路と、二次巻線N2 に対して二次側並列共振コンデンサC2 が挿入されていない図13に示した電源回路とを比較すると、図13に示した電源回路では、負荷電力Poが軽負荷となるにしたがってスイッチング素子Q1 がオフとされる期間TOFF が拡大され、例えば中間負荷状態の時はスイッチング素子Q1 がオフとされる期間TOFF の終了直前の期間T1 において、図15(a),(b)に破線で示したようにスイッチング素子Q1 が導通してコレクタ電流Icpが流れていた。
これに対して、本実施の形態の電源回路では、図2(a),(b)に示すように、中間負荷状態においても、後述するようにスイッチング素子Q1 がオフとされる期間TOFF は殆ど拡大することがないので、期間TOFF においてスイッチング素子Q1 にコレクタ電流Icpが流れることがない。これにより、中間負荷状態における異常動作が防止され、安定したZVS動作となる。つまり、対応可能な負荷範囲の全領域において安定したZVS動作が実現されるものである。
また、中間負荷状態における異常動作が防止されることで、異常動作により発生する電力損失も無くなるので、中間負荷状態における電力変換効率の向上を図ることができると共に、スイッチング素子Q1 の発熱も減少するため、スイッチング素子Q1 に取り付けられている放熱板を拡大する必要もなくなる。
【0056】
また、本実施の形態の電源回路では、図2(d),図2(e)に示したように、ブリッジ整流回路DBRを流れる共振電流I3 ,I4 の導通角がほぼ等しいものとなるため、例えば図5に示した電源回路において、ブリッジ整流回路DBRを構成している4組の整流ダイオードがターンオンする際に発生していた高周波のリンギング電流が共振電流I3 ,I4 に重畳されるということもない。
これにより、本実施の形態の電源回路では、整流ダイオードDO1,DO2からEMIが殆ど輻射されないので、例えば図5に示した電源回路においては、EMI対策として、実際には設ける必要があったフェライトビーズインダクタやセラミックコンデンサを削除することが可能とされ、その分、部品点数の削減を図ることができる。
【0057】
また、本実施の形態の電源回路は、絶縁コンバータトランスPITの二次側に対して電圧・電流共振回路を設けるようにしているため、二次側並列共振コンデンサC2 の共振作用に、二次側直列共振コンデンサCsの共振作用が加わった二次側共振電流I2 が、ブリッジ整流回路DBRを介して平滑コンデンサCO1に流入し、平滑コンデンサCO1に対する充電動作を行うことになる。
例えば、先ず、絶縁コンバータトランスPITが加極性モードで動作すると、二次巻線N2 に励起された励起電圧により二次巻線N2 →直列共振コンデンサCs→ブリッジ整流回路DBR→平滑コンデンサCO1という経路で電流が流れ、平滑コンデンサCO1に対する充電動作が行われると共に、二次巻線N2 の励起電圧により二次側直列共振コンデンサCsに対する充電動作が行われる。
すると、減極性モードにおいては、二次巻線N2 の励起電圧に対して二次側直列共振コンデンサCsの電位が加わるという直列共振作用が得られた状態で、直列共振コンデンサCs→二次巻線N2 →ブリッジ整流回路DBR→平滑コンデンサCO1という経路で電流が流れ、平滑コンデンサCO1に対する充電動作が行われることになる。
この場合、二次側から出力される直流出力電圧EO1の電圧レベルは、二次巻線N2 の励起電圧に二次側直列共振コンデンサCsの電位が加わることになるため、二次巻線N2 の励起電圧レベルより大きくなる。
【0058】
従って、本実施の形態の電源回路において、図5に示した電源回路の二次側直流出力電圧EO1とほぼ同等の二次側直流出力電圧EO1を得ようとした場合は、二次側コンデンサCsの電位が加わる分だけ、二次巻線N2 の励起電圧を低くすることができる。これにより、本実施の形態の電源回路の二次巻線N2 の巻線数を、図5に示した電源回路の二次巻線N2 の巻線数より少なくすることが可能となり、これに伴って、絶縁コンバータトランスPITを構成している分割ボビンBの小型、軽量化を図ることも可能になる。
【0059】
例えば図1に示した本実施の形態の電源回路では、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 の巻線数を43T、二次巻線N2 の巻線数を38T、一次側共振コンデンサCr=4700pF、二次側直列共振コンデンサCs=0.027μF、二次側並列共振コンデンサC2 =0.01μFに選定することができる。
上記のようにして各部品を選定した場合は、図1に示した電源回路の二次巻線N2 の巻線数は38Tとされており、図5に示した電源回路の二次巻線N2 の巻線数43Tよりも少なくなっている。
従って、図1に示した電源回路では、図5に示した電源回路よりも、絶縁コンバータトランスPITのサイズを小さくすることが可能である。
【0060】
このように本実施の形態の電源回路は、ブリッジ整流回路DBRを構成している4組の整流ダイオードを流れる共振電流I3 ,I4 に高周波のリンギング電流が重畳されることなく、また中間負荷状態においてスイッチング動作がZVS動作から外れる異常動作を防止できるうえに、絶縁コンバータトランスPITを構成している分割ボビンBの小型、軽量化を図ることが可能になるものである。
【0061】
ここで、図3は上記したような設計により各構成部品の値が設定された本実施の形態の電源回路において、負荷を変動させた場合の定電圧制御特性を示した図である。なお、この場合も入力交流電圧VACは100V、二次側直流出力電圧EO1は135Vとされる。
この図3に示されているように、本実施の形態の電源回路では、二次側から出力される直流出力電圧EO1の定電圧制御として、負荷電力Poが上昇するにしたがって、スイッチング周波数fsが低くなるように制御されていると共に、スイッチング素子Q1 がオンとなる期間TONは長くなるように制御されている。つまり、定電圧制御動作として複合制御方式となっていることがわかる。
【0062】
従って、本実施の形態の電源回路では、負荷の変動に伴うスイッチング素子Q1 のオフとなる期間TOFF の変化は、例えば図13に示した電源回路のスイッチング素子Q1 のオフとなる期間TOFF の変化(図14参照)に比べて小さく、その変化量は僅かなものとなっている。
このことからも、本実施の形態とされる電源回路が中間負荷状態をとった場合に、スイッチング素子Q1 がオフとなる期間TOFF が拡大していないことがわかる。従って、本実施の形態の電源回路は、例えば図9や図10、図13に示した電源回路のように、中間負荷状態においてスイッチング動作がZVS動作から外れる異常動作が発生しないものとなる。
【0063】
さらにまた、本実施の形態の電源回路は、スイッチング素子Q1 を複合制御方式によって制御することができるため、対応可能な最大負荷電力PoMAX が200Wから220Wまで拡大すると共に、制御可能な動作範囲の拡大も図ることが可能になる。
【0064】
また、本実施の形態の電源回路の二次側としては、図1に示したブリッジ整流回路DBRに限定されるものでない。
そこで、本実施の形態の電源回路の変形例として二次側の構成を図4に示す。なお、この図4において、一次側の構成は図1の構成と同様とされるため図示は省略する。また図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
この図に示す二次側においては、2本のダイオード素子DO1,DO2、平滑コンデンサCO1、インダクタLO によって構成されるフォワード方式の等倍電圧半波整流回路に、二次側並列共振コンデンサC2 と二次側直列共振コンデンサCsが設けられて構成されている。
【0066】
上記各素子の接続形態としては、二次巻線N2 に対して二次側並列共振コンデンサC2 が並列に接続されると共に、二次巻線N2 の巻始め端部には整流ダイオードとして機能するダイオード素子DO1のアノードが接続され、このダイオード素子DO1のカソードと平滑コンデンサCO1の正極側との間に、インダクタLO が挿入されている。また、二次巻線N2 の巻終り端部、及び平滑コンデンサCO1の負極側が二次側アースに接続される。
ダイオード素子DO1のカソードとインダクタLO との接続点と、二次側アースとの間には、図示するように、二次側直列共振コンデンサCsと、ダイオード素子DO2がそれぞれ挿入されている。この場合、ダイオード素子DO2のカソードはダイオード素子DO1のカソードとインダクタLO との接続点に対して接続され、ダイオード素子DO2のアノードは二次側アースに対して接続されることになる。
【0067】
このような接続形態により形成される等倍電圧半波整流回路の整流動作としては、一次側のスイッチング動作により一次巻線N1 にスイッチング出力が得られると、このスイッチング出力は二次巻線N2 に励起され、この二次巻線N2 に得られた励起電圧を入力して整流する。
この場合、先ず、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 と二次巻線N2 との極性が+Mとなる加極性モードでは、ダイオード素子DO1がオンとなり、ダイオード素子DO1により整流された整流電流はインダクタLO を介して平滑コンデンサCO1に供給され、平滑コンデンサCO1に対する充電が行われる。この場合、平滑コンデンサCO1にはインダクタLO を介してダイオード素子DO1からの整流電流が流入することから、インダクタLO にはエネルギーが蓄積されることになる。
また、この加極性モードの時には、ダイオード素子DO1の整流電流が分岐されて二次側直列共振コンデンサCsにも供給され、二次側直列共振コンデンサCsに対する充電も行われる。
【0068】
一方、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 と二次巻線N2 との極性が−Mとなる減極性モードでは、ダイオード素子DO1がオフになり、インダクタLO に蓄積されていたエネルギーの逆起電力と、二次側直列共振コンデンサCsの放電電力とによって発生する電流が平滑コンデンサCO1に流入し、平滑コンデンサCO1に対する充電動作が行われることになる。
即ち、減極性モードにおいては、ダイオード素子DO2がオンになり、インダクタLO →平滑コンデンサCO1→ダイオード素子DO2という経路でインダクタLO からの電流が平滑コンデンサCO1に供給されると共に、二次側直列共振コンデンサCsからの放電電流がインダクタLO →平滑コンデンサCO1という経路で平滑コンデンサCO1に供給されることになる。
このような動作により、平滑コンデンサCO1の両端には二次巻線N2 の誘起電圧のほぼ等倍に対応する直流電圧(整流平滑電圧)EO1が得られることになる。この場合も二次側から出力される直流出力電圧EO1の電圧レベルは、二次側直列共振コンデンサCsの放電時の両端電圧が加わるため、二次巻線N2 の励起電圧レベルより大きくすることができる。
【0069】
従って、図4に示した二次側の構成においても、図5に示した電源回路の二次側直流出力電圧EO1とほぼ同等の二次側直流出力電圧EO1を得ようとすれば、二次巻線N2 の巻線数を、図5に示した電源回路の二次巻線N2 の巻線数より少なくすることが可能となるものである。
【0070】
このような構成とされる電源回路にあっては、例えば絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2 の巻線数を38T、二次側直列共振コンデンサCs=0.027μF、二次側並列共振コンデンサC2 =0.015μF、インダクタLO =150μHに選定すると、図1に示した電源回路と同様の効果が得られることが確認された。
【0071】
なお、本実施の形態においては、スイッチング電源回路の二次側に対して、ブリッジ整流回路DBR、及び半波整流方式の等倍電圧整流回路を設けた場合を例に挙げているが、このような構成の整流回路に限定されるものでなく、本発明としては、二次巻線N2 に励起される励起電圧レベルの等倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧EO1を得るように構成された各種整流回路が設けられればよいものである。
【0072】
また、本発明の電源回路としては、上記図1、図4に示した構成以外にも、実際の使用条件に対応して適宜変更されて構わないものである。例えば上記各実施の形態としては、自励方式によるスイッチング駆動の構成が採られているが、他励式によってスイッチング素子を駆動する構成に対しても本発明の適用が可能である。また、スイッチング素子としても、バイポーラトランジスタやMOS−FETの以外の他の部品素子(例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やSIT(静電誘導サイリスタ))等が採用されて構わないものである。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して、二次側直列共振回路と二次側並列共振回路が組み合わされて成る二次側共振回路を形成するようにしている。
この場合、先ず、二次側並列共振回路の共振動作によって、絶縁コンバータトランスの二次巻線を流れる二次側共振電流は、ほぼ正弦波状となるため、直流出力電圧生成手段に設けられている整流ダイオードを流れる電流の導通角もほぼ等しくなる。これにより、整流ダイオードを流れる電流には高周波のリンギング電流が重畳されることなく、整流ダイオードから発生するEMIを抑制することができる。よって、二次側に対してEMI対策のための部品を設ける必要がなく、その分、回路規模の小型化を図ることが可能になる。
【0074】
また、二次側直流出力電圧の定電圧制御は、スイッチング周波数と、スイッチング素子を流れるスイッチング電流の導通角を制御する複合制御となるため、負荷が変動した場合でもスイッチング素子がオフとなる期間の拡大を抑えることができ、よって中間負荷状態においてもスイッチング素子はZVS動作を外れないものとなる。
これにより、中間負荷状態において発生していた異常動作が解消され、結果的に対応可能な負荷変動範囲内の全領域において安定したZVS動作を実現することができる。
また、ZVS動作が得られることで、スイッチング素子における電力損失も減少するので、電力変換効率の向上を図ることができると共に、スイッチング素子に取り付けられている放熱板を大型化する必要もない。
【0075】
さらにまた、直流出力電圧生成手段から出力される二次側直流出力電圧の定電圧制御は、スイッチング周波数と、スイッチング素子を流れるスイッチング電流の導通角を制御する複合制御となるため、最大負荷電力の増加を図ることができると共に、制御可能範囲の拡大を図ることができるという利点もある。
さらにまた、絶縁コンバータトランスの巻線数を少なくすることができるので、その分、絶縁コンバータトランスの小型、軽量化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図2】本実施の形態の電源回路の要部の動作を示す波形図である。
【図3】本実施の形態の電源回路の負荷が変動した場合の定電圧制御特性を示した図である。
【図4】変形例としての電源回路の二次側構成例を示す回路図である。
【図5】先行技術としての電源回路の構成を示す回路図である。
【図6】先行技術としての電源回路の二次側の他の構成を示す回路図である。
【図7】図5に示した先行技術としての電源回路の要部の動作を示す波形図である。
【図8】図5に示した先行技術としての電源回路の負荷が変動した場合の定電圧制御特性を示した図である。
【図9】先行技術としての電源回路の構成を示す回路図である。
【図10】先行技術としての電源回路の二次側の他の構成を示す回路図である。
【図11】図9に示した先行技術としての電源回路の二次側動作を示す波形図である。
【図12】図9に示した先行技術としての電源回路の負荷が変動した場合の定電圧制御特性を示した図である。
【図13】先行技術としての電源回路の二次側の他の構成を示す回路図である。
【図14】図13に示した先行技術としての電源回路の負荷が変動した場合の定電圧制御特性を示した図である。
【図15】図13に示した先行技術としての電源回路の一次側動作を示す波形図である。
【図16】絶縁コンバータトランスの構成を示す断面図である。
【図17】相互インダクタンスが+M/−Mの場合の各動作を示す説明図である。
【符号の説明】
1 制御回路、Ci 平滑コンデンサ、Q1 スイッチング素子、PIT 絶縁コンバータトランス、PRT 直交形制御(ドライブ)トランス、Cr 一次側並列共振コンデンサ、C2 二次側並列共振コンデンサ、Cs Cs1 Cs2二次側直列共振コンデンサ、NC 制御巻線、NB 駆動巻線、ND 共振電流検出巻線、CB 共振コンデンサ、DBR ブリッジ整流回路、DO1 DO2 DO3 DO4 整流ダイオード、CO1 CO2 平滑コンデンサ、LO インダクタ
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電子機器に電源として備えられるスイッチング電源回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スイッチング電源回路として、例えばフライバックコンバータやフォワードコンバータなどの形式のスイッチングコンバータを採用したものが広く知られている。これらのスイッチングコンバータはスイッチング動作波形が矩形波状であることから、スイッチングノイズの抑制には限界がある。また、その動作特性上、電力変換効率の向上にも限界があることがわかっている。
そこで、先に本出願人により、各種共振形コンバータによるスイッチング電源回路が各種提案されている。共振形コンバータは容易に高電力変換効率が得られると共に、スイッチング動作波形が正弦波状となることで低ノイズが実現される。また、比較的少数の部品点数により構成することができるというメリットも有している。
【0003】
図5の回路図は、先に本出願人が提案した発明に基づいて構成することのできる、先行技術としてのスイッチング電源回路の一例を示している。この電源回路は、1石のスイッチング素子Q1 を備えて、いわゆるシングルエンド方式で自励式によりスイッチング動作を行う電圧共振形コンバータを備えて構成される。
【0004】
この図に示す電源回路においては、商用交流電源(交流入力電圧VAC)を入力して直流入力電圧を得るための整流平滑回路として、ブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiからなる全波整流回路が備えられ、交流入力電圧VACの1倍のレベルに対応する整流平滑電圧Eiを生成するようにされる。また、この整流平滑回路に対しては、その整流電流経路に対して突入電流制限抵抗Riが挿入されており、例えば電源投入時に平滑コンデンサCiに流入する突入電流を抑制するようにしている。
【0005】
この電源回路に備えられる電圧共振形のスイッチングコンバータは、1石のスイッチング素子Q1 を備えた自励式の構成を採っている。この場合、スイッチング素子Q1 には、高耐圧のバイポーラトランジスタ(BJT;接合型トランジスタ)が採用されている。
【0006】
スイッチング素子Q1 のベースは、起動抵抗RS を介して平滑コンデンサCi(整流平滑電圧Ei)の正極側に接続されて、起動時のベース電流を整流平滑ラインから得るようにしている。また、スイッチング素子Q1 のベースと一次側アース間には、検出駆動巻線NB ,共振コンデンサCB ,ベース電流制限抵抗RB の直列接続回路よりなる自励発振駆動用の直列共振回路が接続される。
また、スイッチング素子Q1 のベースと平滑コンデンサCiの負極(1次側アース)間に挿入されるクランプダイオードDD により、スイッチング素子Q1 のオフ時に流れるクランプ電流の経路を形成するようにされており、また、スイッチング素子Q1 のコレクタは、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 の一端と接続され、エミッタは接地される。
【0007】
また、上記スイッチング素子Q1 のコレクタ−エミッタ間に対しては、並列共振コンデンサCrが並列に接続されている。この並列共振コンデンサCrは、自身のキャパシタンスと、後述する絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 側のリーケージインダクタンスL1 とにより電圧共振形コンバータの一次側並列共振回路を形成する。そして、ここでは詳しい説明を省略するが、スイッチング素子Q1 のオフ時には、この並列共振回路の作用によって共振コンデンサCrの両端電圧Vcpは、実際には正弦波状のパルス波形となって電圧共振形の動作が得られるようになっている。
【0008】
この図に示す直交形制御トランスPRTは、共振電流検出巻線ND 、駆動巻線NB 、及び制御巻線NC が巻装された可飽和リアクトルである。この直交形制御トランスPRTは、スイッチング素子Q1 を駆動すると共に、定電圧制御のために設けられる。
この直交形制御トランスPRTの構造としては、図示は省略するが、4本の磁脚を有する2つのダブルコの字形コアの互いの磁脚の端部を接合するようにして立体型コアを形成する。そして、この立体型コアの所定の2本の磁脚に対して、同じ巻回方向に共振電流検出巻線ND 、駆動巻線NB を巻装し、更に制御巻線NC を、上記共振電流検出巻線ND 及び駆動巻線NB に対して直交する方向に巻装して構成される。
【0009】
この場合、直交形制御トランスPRTの共振電流検出巻線ND は、平滑コンデンサCiの正極と絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 との間に直列に挿入されることで、スイッチング素子Q1 のスイッチング出力は、一次巻線N1 を介して共振電流検出巻線ND に伝達される。直交形制御トランスPRTにおいては、共振電流検出巻線ND に得られたスイッチング出力がトランス結合を介して駆動巻線NB に励起されることで、駆動巻線NB にはドライブ電圧としての交番電圧が発生する。このドライブ電圧は、自励発振駆動回路を形成する直列共振回路(NB ,CB )からベース電流制限抵抗RB を介して、ドライブ電流としてスイッチング素子Q1 のベースに出力される。これにより、スイッチング素子Q1 は、直列共振回路の共振周波数により決定されるスイッチング周波数でスイッチング動作を行うことになる。
【0010】
絶縁コンバータトランスPITは、スイッチング素子Q1 のスイッチング出力を二次側に伝送する
絶縁コンバータトランスPITは、図16に示すように、例えばフェライト材によるE型コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コアが備えられ、このEE型コアの中央磁脚に対して、分割ボビンBを利用して一次巻線N1 と、二次巻線N2 をそれぞれ分割した状態で巻装している。そして、中央磁脚に対しては図のようにギャップGを形成するようにしている。これによって、所要の結合係数による疎結合が得られるようにしている。
ギャップGは、E型コアCR1,CR2の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成することが出来る。また、結合係数kとしては、例えばk≒0.85という疎結合の状態を得るようにしており、その分、飽和状態が得られにくいようにしている。
【0011】
上記絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 の一端は、図5に示すようにスイッチング素子Q1 のコレクタと接続され、他端側は共振電流検出巻線ND の直列接続を介して平滑コンデンサCiの正極(整流平滑電圧Ei)と接続されている。
【0012】
絶縁コンバータトランスPITの二次側では、一次巻線N1 により誘起された交番電圧が二次巻線N2 に発生する。この場合、二次巻線N2 に対しては、二次側並列共振コンデンサC2 が並列に接続されることで、二次巻線N2 のリーケージインダクタンスL2 と二次側並列共振コンデンサC2 のキャパシタンスとによって並列共振回路が形成される。この並列共振回路により、二次巻線N2 に励起される交番電圧は共振電圧となる。つまり二次側において電圧共振動作が得られる。
【0013】
即ち、この電源回路では、一次側にはスイッチング動作を電圧共振形とするための並列共振回路が備えられ、二次側には電圧共振動作を得るための並列共振回路が備えられる。なお、本明細書では、このように一次側及び二次側に対して共振回路が備えられて動作する構成のスイッチングコンバータについては、「複合共振形スイッチングコンバータ」ともいうことにする。
【0014】
上記ようにして、電源回路の二次側に対しては、ブリッジ整流回路DBR及び平滑コンデンサCO1から成る整流平滑回路を備えることで二次側直流出力電圧EO1を得るようにしている。つまり、この構成では二次側においてブリッジ整流回路DBRによって全波整流動作を得ている。この場合、ブリッジ整流回路DBRは二次側並列共振回路から供給される共振電圧を入力することで、二次巻線N2 に励起される交番電圧とほぼ等倍レベルに対応する直流出力電圧EO1を生成する。なお、この直流出力電圧EO1は制御回路1に対しても分岐して入力される。
制御回路1においては、直流出力電圧EO1を検出電圧及び制御回路1の動作電源として利用する。
【0015】
また、上記図5に示した電源回路の絶縁コンバータトランスPITの二次側としては、本出願人の提案に基づき図6に示すような回路構成も採用することができる。
この図に示す絶縁コンバータトランスPITの二次側では、二次巻線N2 に対して並列に二次側並列共振コンデンサC2 が接続される。そして、二次巻線N2 に対してセンタータップを設けたうえで、整流ダイオードDO1,DO2及び平滑コンデンサCO1を図のように接続することで全波整流回路を構成し、二次巻線N2 に励起される交番電圧のほぼ等倍レベルに対応する直流出力電圧EO1を生成するようにしている。
【0016】
ところで、絶縁コンバータトランスPITにおいては、一次巻線N1 、二次巻線N2 の極性(巻方向)と整流ダイオードDO (DO1,DO2)の接続との関係によって、一次巻線N1 のインダクタンスL1 と二次巻線N2 のインダクタンスL2 との相互インダクタンスMについて、+Mとなる場合と−Mとなる場合とがある。
例えば、図17(a)に示す接続形態を採る場合に相互インダクタンスは+Mとなり、図17(b)に示す接続形態を採る場合に相互インダクタンスは−Mとなる。
これを、図5及び図6に示す二次側の動作に対応させてみると、例えば図5に示す電源回路では、二次巻線N2 に得られる交番電圧が正極性のときにブリッジ整流回路DBRに整流電流I3 が流れる動作は+Mの動作モード(フォワード方式)と見ることができ、また逆に二次巻線N2 に得られる交番電圧が負極性のときにブリッジ整流ダイオードDBRに整流電流I4 が流れる動作は−Mの動作モード(フライバック方式)であると見ることができる。
また例えば図6に示す電源回路では、二次巻線N2 に得られる交番電圧が正極性のときに整流ダイオードDO1に整流電流が流れる動作は+Mの動作モード(フォワード方式)と見ることができ、逆に、二次巻線N2 に得られる交番電圧が負極性のときに整流ダイオードDO2に流れる整流電流は−Mの動作モード(フライバック方式)であると見ることができる。即ち、この図5及び図6に示す電源回路では、二次巻線N2 に得られる交番電圧が正/負となるごとに、相互インダクタンスが+M/−Mのモードで動作することになる。
【0017】
このような構成では、一次側並列共振回路と二次側並列共振回路の作用によって増加された電力が負荷側に供給され、それだけ負荷側に供給される電力も増加して、最大負荷電力の増加率も向上する。
これは、先に図16にて説明したように、絶縁コンバータトランスPITに対してギャップGを形成して所要の結合係数による疎結合としたことによって、更に飽和状態となりにくい状態を得たことで実現されるものである。例えば、絶縁コンバータトランスPITに対してギャップGが設けられない場合には、フライバック動作時において絶縁コンバータトランスPITが飽和状態となって動作が異常となる可能性が高く、上述した全波整流動作が適正に行われるのを望むのは難しい。
【0018】
制御回路1では、二次側の直流出力電圧レベルEO1の変化に応じて、制御巻線NC に流す制御電流(直流電流)レベルを可変することで、直交形制御トランスPRTに巻装された駆動巻線NB のインダクタンスLB を可変制御する。これにより、駆動巻線NB のインダクタンスLB を含んで形成されるスイッチング素子Q1 のための自励発振駆動回路内の直列共振回路の共振条件が変化する。これは、スイッチング素子Q1 のスイッチング周波数を可変する動作となり、この動作によって二次側の直流出力電圧を安定化する。
【0019】
図5に示した電源回路においては、駆動巻線NB のインダクタンスLB を可変制御する直交形制御トランスPRTが設けられる場合、スイッチング周波数を可変するのにあたり、スイッチング素子Q1 がオフとなる期間TOFF は一定とされたうえで、オンとなる期間TONを可変制御するようにされる。つまり、この電源回路では、定電圧制御動作として、スイッチング周波数を可変制御するように動作することで、スイッチング出力に対する共振インピーダンス制御を行い、これと同時に、スイッチング周期におけるスイッチング素子の導通角制御(PWM制御)も行っているものと見ることが出来る。そして、この複合的な制御動作を1組の制御回路系によって実現している。なお、本明細書では、このような複合的な制御を「複合制御方式」ともいう。
【0020】
ここで、例えば入力される交流入力電圧VACの変動が85V〜144V、対応可能な負荷電力Poが200W〜0W(無負荷)という入出力条件に対応する電源回路を、上記図5に示した直交形制御トランスPRTによる自励発振形スイッチング周波数制御方式によって構成する場合は、例えば絶縁コンバータトランスPITのフェライトコアEE−35、一次巻線N1 及び二次巻線N2 の巻線数をそれぞれ43T(ターン)、ギャップG=1mm、一次側共振コンデンサCr=6800pF、二次側並列共振コンデンサC2 =0.01μFに選定される。
【0021】
図7は上記のように各構成部品の値が設定された図5に示す構成の電源回路において、入力交流電圧VACを100Vとした時に得られる動作波形の一例を示した図である。
このような電源回路において、自励発振駆動回路としての直列共振回路(NB ,CB )によりスイッチング素子Q1 がスイッチング動作を行うことで、スイッチング素子Q1 //並列共振コンデンサCrの並列接続回路の両端には、並列共振回路の作用によって、図7(a)に示すような一次側並列共振電圧Vcpが得られる。この一次側並列共振電圧Vcpは、図示するようにスイッチング素子Q1 がオンとなる期間TONは0レベルで、オフとなる期間TOFF において正弦波状のパルスとなる波形が得られ、電圧共振形としての動作に対応している。
【0022】
そして、スイッチング素子Q1 のオン/オフ動作により、絶縁コンバータトランスPITの二次側にスイッチング出力が伝達される。この場合、絶縁コンバータトランスPITが+Mの動作モード(フォワード方式)になると、絶縁コンバータトランスPITはフォワードコンバータ動作となって、絶縁コンバータトランスPITの二次側に設けられているブリッジ整流回路DBRでは、図7(b)に示すような波形の整流電流I3 が流れる。また逆に、絶縁コンバータトランスPITが−Mの動作モード(フライバック方式)になると、絶縁コンバータトランスPITはフライバックコンバータ動作となって、図7(c)に示すような波形の整流電流I4 が流れることになる。
【0023】
また図8は、上記のように各構成部品の値が設定された図5に示す構成の電源回路において、負荷が変動した場合の定電圧制御特性を示した図である。なお、この場合も入力交流電圧VACは100Vとする。
この図に示されているように、上記図5に示した電源回路では、二次側から出力される直流出力電圧EO1の定電圧制御として、負荷電力Poが上昇するにしたがって、スイッチング素子Q1 のスイッチング周波数fsがほぼ一定の傾きを持って低くなるように制御され、また同時にスイッチング素子Q1 がオンとなる期間TONもほぼ一定の傾きを持って長くなるように制御されている。なお、スイッチング素子Q1 がオフとされる期間TOFF は、ほぼ一定とされるので図示は省略する。つまり、上記図5に示した電源回路では、定電圧制御動作として、スイッチング周波数を可変制御することで、スイッチング出力に対する共振インピーダンス制御を行い、これと同時にスイッチング素子Q1 のオン期間(導通角)を制御するという複合制御方式を採っている。
【0024】
また、図9は先に本出願人により提案された発明に基づいて構成することのできる先行技術としてのスイッチング電源回路の他の構成例を示した図である。
なお、上記図5と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0025】
この図に示す絶縁コンバータトランスPITの二次側に設けられている二次巻線N2 の一端は二次側アースに接続され、他端は直列共振コンデンサCsの直列接続を介して整流ダイオードDO1のアノードと整流ダイオードDO2のカソードの接続点に対して接続される。整流ダイオードDO1のカソードは平滑コンデンサCO1の正極と接続され、整流ダイオードDO2のアノードは二次側アースに対して接続される。平滑コンデンサCO1の負極側は二次側アースに対して接続される。
【0026】
このような接続形態では、[二次巻線N2 、直列共振コンデンサCs、整流ダイオードDO1,DO2、平滑コンデンサCO1]の組から成る倍電圧半波整流回路が設けられることになる。ここで、直列共振コンデンサCsは、自身のキャパシタンスと二次巻線N2 の漏洩インダクタンス成分L2 とによって、整流ダイオードDO1,DO2のオン/オフ動作に対応する直列共振回路を形成する。
また、一次側の並列共振回路(N1 ,Cr)の並列共振周波数をfo1とし、上記二次側の直列共振回路の直列共振周波数をfo2とすると、fo1≒fo2となるように、二次側の直列共振コンデンサCsのキャパシタンスが選定される。つまり、この図に示す電源回路も、一次側にスイッチング動作を電圧共振形とするための並列共振回路が備えられ、二次側に倍電圧半波整流動作を得るための直列共振回路が備えられた複合共振形スイッチングコンバータとして構成されているものである。
【0027】
上記[二次巻線N2 、直列共振コンデンサCs、整流ダイオードDO1,DO2,平滑コンデンサCO1]の組による倍電圧整流動作としては、一次側のスイッチング動作により一次巻線N1 にスイッチング出力が得られると、このスイッチング出力は二次巻線N2 に励起される。倍電圧整流回路は、この二次巻線N2 に得られた交番電圧を入力して整流動作を行う。
この場合、先ず、整流ダイオードDO1がオフとなり、整流ダイオードDO2がオンとなる期間においては、一次巻線N1 と二次巻線N2 との極性が−Mとなる減極性モードで動作して、二次巻線N2 の漏洩インダクタンスと直列共振コンデンサCsによる直列共振作用によって、整流ダイオードDO2により整流した整流電流を直列共振コンデンサCsに対して充電する動作が得られる。
そして、整流ダイオードDO2がオフとなり、整流ダイオードDO1がオンとなって整流動作を行う期間においては、一次巻線N1 と二次巻線N2 との極性が+Mとなる加極性モードとなり、二次巻線N2 に誘起された電圧に直列共振コンデンサCsの電位が加わるという直列共振が生じる状態で平滑コンデンサCO1に対して充電が行われる動作となる。
上記のように、絶縁コンバータトランスPITが加極性モードと減極性モードを交互に繰り返すことで、平滑コンデンサCO1には、二次巻線N2 の誘起電圧のほぼ2倍のレベルに対応した直流出力電圧(整流平滑電圧)が得られる。つまり、この図9に示す二次側においては、いわゆる倍電圧半波整流動作を行う倍電圧半波整流回路が設けられている。
【0028】
ここで、例えば入力される交流入力電圧VACの変動を85V〜144V、対応可能な負荷電力Poを200W〜0Wとした入出力条件に対応する電源回路を、図9に示した倍電圧半波整流回路を備えた電源回路によって構成する場合は、例えば絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 の巻線数を39T、二次巻線N2 の巻線数を23T、一次側共振コンデンサCr=4700pF、二次側直列共振コンデンサCs=0.1μFに選定される。
【0029】
図11は、図9に示したような絶縁コンバータトランスPITの二次側が倍電圧半波整流回路によって構成され、各構成部品の値が適正に選定された電源回路において、入力交流電圧VACを100Vとした時に得られる動作波形の一例である。
このような回路においても、自励発振駆動回路としての直列共振回路(NB ,CB )によりスイッチング素子Q1 がスイッチング動作を行うことで、スイッチング素子Q1 //並列共振コンデンサCrの並列接続回路の両端には、並列共振回路の作用によって、図11(a)に示すような一次側並列共振電圧Vcpが得られる。この並列共振電圧Vcpは、図示するように、スイッチング素子Q1 がオンとなる期間TONは0レベルで、オフとなる期間TOFF において正弦波状のパルスとなる波形が得られ、電圧共振形としての動作に対応することになる。
また、整流ダイオードDO1,DO2を流れる電流I3 ,I4 は、図11(b),図11(c)に示すように、二次巻線N2 を流れる直列共振電流が交互に連続して流れる波形となる。
【0030】
また図12は、上記のような設計により各構成部品の値が設定された図9に示した電源回路において、負荷を変動させた場合の定電圧制御特性を示した図である。なお、この場合の入力交流電圧VACは100V、二次側直流出力電圧EO1のレベルは135Vとされる。
この図12に示されているように、図9に示した電源回路では、負荷電力Poが変動した場合でも、スイッチング周波数fsは殆ど変化しておらず、二次側から出力される直流出力電圧EO1を定電圧化するための定電圧制御は、スイッチング素子Q1 がオンとされる期間TONと、オフとされる期間TOFF を制御することにより実現されている。即ち、図9に示した電源回路は、スイッチング周波数fsの可変制御は行われておらず、先に説明したような複合制御方式を採っていないものとなっている。
【0031】
また、上記図9に示した電源回路の絶縁コンバータトランスPITの二次側としては、本出願人からの提案に基づき図10に示すような回路構成とすることもできる。
この図に示す絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2 の一端は、直列共振コンデンサCs1 の直列接続を介して、整流ダイオードDO1のアノードと整流ダイオードDO2のカソードの接続点に対して接続されると共に、直列共振コンデンサCs2 の直列接続を介して整流ダイオードDO3のアノードと整流ダイオードDO4のカソードの接続点に対して接続される。
一方、二次巻線N2 の他端は、平滑コンデンサCO10 の負極と平滑コンデンサCO11 の正極の接続点に対して接続される。また、この平滑コンデンサCO10 の負極と平滑コンデンサCO11 の正極の接続点に対しては、整流ダイオードDO2のアノードと整流ダイオードDO3のカソードが接続される。
平滑コンデンサCO10 と平滑コンデンサCO11 は、平滑コンデンサCO10 の負極と平滑コンデンサCO11 の正極と接続して直列接続したうえで、平滑コンデンサCO10 の正極を整流ダイオードDO1のカソードに接続し、平滑コンデンサとCO11 の負極を二次側アースに対して接続するように設けられる。
【0032】
このような接続形態では、結果的には、[直列共振コンデンサCs1 、整流ダイオードDO1,DO2、平滑コンデンサCO10 ]の組から成る第1の倍電圧整流回路と、[直列共振コンデンサCs2 、整流ダイオードDO3,DO4、平滑コンデンサCO11 ]の組から成る第2の倍電圧整流回路とが形成され、これら第1及び第2の倍電圧整流回路の出力(平滑コンデンサCO10 ,CO11 )が直列に接続されて設けられることになる。そして、この第1及び第2の倍電圧整流回路を組み合わせた整流回路全体としては、直列接続された平滑コンデンサCO10 −平滑コンデンサCO11 の両端には、二次巻線N2 に得られた交番電圧の4倍に対応する二次側出力電圧が得られる。つまり、この第1及び第2の倍電圧整流回路を組み合わせた整流回路全体としては、4倍電圧全波整流回路を形成する。なお、この4倍電圧全波整流回路の整流動作については後述する。
【0033】
直列共振コンデンサCs1 は、自身のキャパシタンスと二次巻線N2 の漏洩インダクタンス成分L2 とによって、第1の倍電圧整流回路における整流ダイオードDO1,DO2のオン/オフ動作に対応する直列共振回路を形成する。
同様に、直列共振コンデンサCs2 は、自身のキャパシタンスと二次巻線N2 の漏洩インダクタンス成分L2 によって、第2の倍電圧整流回路における整流ダイオードDO3,DO4のオン/オフ動作に対応する直列共振回路を形成する。
【0034】
また、これら直列共振回路の共振周波数としては、一次側の並列共振回路(N1 ,Cr)の並列共振周波数をfo1とし、二次側の直列共振回路(N2 ,Cs1 )の直列共振周波数をfo2、同じ二次側の直列共振回路(N2 ,Cs2 )の直列共振周波数をfo3とすると、fo1≒fo2≒fo3となるように、二次側の直列共振コンデンサCs1 ,Cs2 のキャパシタンスが選定される。
【0035】
続いて、先に述べた4倍電圧全波整流回路の動作について説明する。
一次側のスイッチング動作により一次巻線N1 にスイッチング出力が得られると、このスイッチング出力は二次巻線N2 に励起される。4倍電圧整流回路は、この二次巻線N2 に得られた交番電圧を入力して整流動作を行うが、このときの[直列共振コンデンサCs1 、整流ダイオードDO1,DO2、平滑コンデンサCO10 ]から成る第1の倍電圧整流回路の動作を以下に記す。
先ず、整流ダイオードDO1がオフとなり、整流ダイオードDO2がオンとなる期間においては、一次巻線N1 と二次巻線N2 との極性が−Mとなる減極性モードで動作して、二次巻線N2 の漏洩インダクタンスと直列共振コンデンサCs1 による直列共振作用によって、整流ダイオードDO2により整流した整流電流を直列共振コンデンサCs1 に対して充電する動作が得られる。
そして、整流ダイオードDO2がオフとなり、整流ダイオードDO1がオンとなって整流動作を行う期間においては、一次巻線N1 と二次巻線N2 との極性が+Mとなる加極性モードとなり、二次巻線N2 に誘起された電圧に直列共振コンデンサCs1 の電位が加わるという直列共振が生じる状態で平滑コンデンサCO10 に対して充電が行われる動作となる。
【0036】
上記のようにして、加極性モード(+M;フォワード動作)と減極性モード(−M;フライバック動作)との両者のモードを利用して整流動作が行われることで、平滑コンデンサCO10 においては、二次巻線N2 の誘起電圧のほぼ2倍に対応する直流電圧(整流平滑電圧)が得られる。
また、[直列共振コンデンサCs2 、整流ダイオードDO3,DO4、平滑コンデンサCO11 ]の組とから成る第2の倍電圧整流回路においても同様の動作によって、平滑コンデンサCO11 の両端には、二次巻線N2 の誘起電圧のほぼ2倍に対応する直流電圧が得られることになる。
【0037】
そして、上記のようにして第1,第2の倍電圧整流回路の各々によって倍電圧整流動作が行われる結果、直列接続された平滑コンデンサCO10 −平滑コンデンサCO11 の両端には、二次巻線N2 の誘起電圧のほぼ4倍に対応する二次側直流出力電圧EO1が得られることになる。
【0038】
ここで、例えば入力される交流入力電圧VACの変動を85V〜144V、対応可能な負荷電力Poを200W〜0Wという入出力条件に対応する電源回路を、図10に示した4倍電圧全波整流回路を備えた電源回路によって構成する場合は、例えば絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 =46T、二次巻線N2 =14T、一次側共振コンデンサCr=3900pF、二次側直列共振コンデンサCs1 ,Cs2 =0.1μFが選定される。
【0039】
また、例えば絶縁コンバータトランスPITの二次側として、図13に示すような回路構成を採用することも考えられる。
この図に示す電源回路の二次側としては、図5に示した電源回路の二次巻線N2 に対して並列に接続されていた二次側並列共振コンデンサC2 を削除し、二次巻線N2 の一端とブリッジ整流回路DBRとの間に、二次側直列共振コンデンサCsを直列に接続した構成とされる。
【0040】
図14は、上記図13に示した二次側の回路構成を備え、適正なドライブ条件となるように各構成部品の値が選定された電源回路において、負荷を変動させた場合の定電圧制御特性を示した図である。
この図に示されているように、図13に示した電源回路は、図9に示した電源回路と同様、負荷電力Poが変動した場合でもスイッチング周波数fsは殆ど変化しておらず、二次側から出力される直流出力電圧EO1を定電圧化するための定電圧制御は、スイッチング素子Q1 がオンとされる期間TONと、オフとされる期間TOFF を制御することにより行われている。つまり、図13に示した電源回路は図9に示した電源回路と同様に複合制御方式を採っていないものとされる。
【0041】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図5に示した電源回路では、ブリッジ整流回路DBRを構成している各整流ダイオードがターンオンする際に、ブリッジ整流回路DBRの整流ダイオードを流れる電流I3 ,I4 には、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2 の漏洩インダクタンス成分L2 と、ブリッジ整流回路DBRを構成している各整流ダイオードの接合静電容量(数pF)によって、図7(b),図7(c)に示すような高周波のリンギング電流(振動電流)が重畳される。
このような高周波の振動電流は、ブリッジ整流回路DBRを構成している4組の整流ダイオードから電源ノイズ(EMI;Electromagnetic Interference)として輻射されることになる。このため、図5に示した電源回路の実際に構成する場合は、絶縁コンバータトランスPITの二次側にフェライトビーズインダクタやセラミックコンデンサを追加するなどして、EMI対策を施さなければならず部品点数が増加する。
【0042】
これに対して、図9に示した倍電圧半波整流方式の電源回路では、図11(b),図11(c)に示すように、二次側に設けられている整流ダイオードDO1,DO2のターンオン時に、整流ダイオードDO1,DO2を流れる共振電流I3 ,I4 に高周波のリンギングノイズは重畳されない。
また、図10に示した4倍電圧全波整流方式の電源回路、及び図13に示した等倍電圧全波整流方式の電源回路においても、その動作波形は図示していないが二次側に設けられている整流ダイオードを流れる共振電流に高周波のリンギングノイズが重畳されないものとなる。
【0043】
しかしながら、上記図9及び図10に示した電源回路は、図12に示すように、負荷電力が例えば50W〜120Wの範囲という中間負荷状態となる領域においてスイッチング素子Q1 が異常動作となる。
また図13に示した電源回路も、図14に示すように、例えば負荷電力が中間負荷状態となる領域においてスイッチング素子Q1 が異常動作となっている。
つまり、上記図9、図10及び図13に示した電源回路では、絶縁コンバータトランスPITの二次側に、二次側直列共振コンデンサCsが設けられているため、二次側の整流ダイオードDO1〜DO4を流れる共振電流に高周波のリンギングノイズが重畳されなくなるが、この場合は負荷電力が中間負荷状態となる領域において、スイッチング素子Q1 が異常動作となる欠点があった。
【0044】
ここで、図13に示した電源回路の中間負荷状態における動作波形を図15に示し、この図を参照しながら中間負荷状態において発生する異常動作について説明する。
自励発振駆動回路としての直列共振回路(NB ,CB )によりスイッチング素子Q1 がスイッチング動作を行うことで、図15(a)に示すような一次側並列共振電圧Vcpが得られることになる。この場合はスイッチング素子Q1 がオフとなっている期間TOFF が終了する直前の期間T1 において、図15(b)に示すようにスイッチング素子Q1 のコレクタに対してコレクタ電流Icpが短時間流れることになる。また、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2 を流れる共振電流I2 の波形としては、図15(c)に示すような波形となる。
【0045】
この場合、図15(a),図15(b)に示したようにスイッチング素子Q1 のオフ期間TOFF が終了する直前の期間T1 では、スイッチング素子Q1 が導通状態となっており、スイッチング素子Q1 のコレクタ−エミッタ間に供給されている一次側共振電圧Vcpが0レベルになった時にスイッチング動作を行う、いわゆる共振形の基本動作であるZVS(Zero Voltage Switching)動作から外れることになる。即ち、上記図13に示した電源回路の中間負荷状態においては、スイッチング素子Q1 の動作がZVS動作を外れることにより異常動作が発生している。
【0046】
このような異常動作は、負荷電力Poの減少にともなってスイッチング素子Q1 のオフとなる期間TOFF が拡大することによって発生する。そして、このような異常動作が発生する期間T1 においては、スイッチング素子Q1 が或る電圧レベルと電流レベルを持った状態でスイッチング動作が行われるので、スイッチング素子Q1 における電力損失が増加することになる。このため、スイッチング素子Q1 の発熱を抑えるための放熱板を拡大する必要が生じることになる。
【0047】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記した課題を考慮して、二次側に設けられる整流ダイオードを流れる二次側共振電流に高周波のリンギング電流が重畳されないようにすると共に、中間負荷状態においてもスイッチング素子の動作がZVS動作となるスイッチング電源回路を提供することを目的とする。
【0048】
このため、本発明のスイッチング電源回路としては、スイッチング素子を備えて、入力された直流入力電圧を断続して出力するスイッチング手段と、スイッチング手段の出力を二次側に伝送する絶縁コンバータトランスと、スイッチング手段の動作を電圧共振形とするようにして挿入される一次側電圧共振回路と、絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して二次側並列共振コンデンサを並列に接続することで形成される二次側並列共振回路と、絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して二次側直列共振コンデンサを直列に接続することで形成される二次側直列共振回路とが組み合わされて成る二次側共振回路とを備える。
そして、絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧を入力して整流動作を行うことで、交番電圧のレベルの等倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧を得るように構成された直流出力電圧生成手段と、二次側直流出力電圧レベルに応じて、スイッチング素子のスイッチング周波数を可変することで定電圧制御を行うようにされる定電圧制御手段とを備えて構成することとした。
【0049】
上記構成によれば、絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して二次側直列共振回路と二次側並列共振回路が組み合わされて成る二次側共振回路を設けることで、二次側並列共振回路の共振動作によって、絶縁コンバータトランスの二次巻線N2 を流れる二次側共振電流をほぼ正弦波状とすることができる。これにより、二次側に設けられる整流ダイオードを流れる共振電流の導通角がほぼ等しくなるため、整流ダイオードを流れる共振電流には、高周波のリンギング電流が重畳されなくなる。
また、二次側直流出力電圧の定電圧制御としては、スイッチング周波数と、スイッチング素子を流れるスイッチング電流の導通角を制御する複合制御となるため、負荷が変動した場合でもスイッチング素子がオフとなる期間の拡大を抑えることができ、中間負荷状態においてもスイッチング素子をZVS動作とすることが可能になる。
【0050】
【発明の実施の形態】
図1の回路図は、本発明の実施の形態としてのスイッチング電源回路の構成を示した図である。この図に示す電源回路は、これまで説明してきた電源回路と同様に、1石のスイッチング素子(バイポーラトランジスタ)を備えた自励式の電圧共振形スイッチングコンバータが設けられている。なお、この図において図5及び図13と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
この図1に示す本実施の形態の電源回路は、図5及び図13に示した電源回路と同様に、絶縁コンバータトランスPITの二次側に対してブリッジ整流回路DBRが設けられている。そして、二次側並列共振コンデンサC2 と、二次側直列コンデンサCsが組み合わされて接続されている点が、図5及び図13に示した電源回路と異なる。つまり、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2 に対して、二次側並列共振コンデンサC2 が並列に接続されていると共に、二次巻線N2 の一端とブリッジ整流回路DBRとの間に二次側直列共振コンデンサCsが直列に挿入されている。
【0052】
上記したような構成によれば、本実施の形態の電源回路の二次側においては、二次側並列共振コンデンサC2 のキャパシタンスと二次巻線N2 の漏洩インダクタンスL2 とにより電圧共振回路が形成されると共に、二次側直列共振コンデンサCsのキャパシタンスと二次巻線N2 の漏洩インダクタンスL2 とにより電流共振回路が形成されることになる。つまり、二次側では、二次巻線N2 を共通にインダクタンスとして備える電圧共振回路と電流共振回路とが複合的に組み合わされた構成を採るものである。
なお、本明細書では、このようにして二次側において電圧共振回路と電流共振回路とを組み合わせた構成について、「二次側電圧・電流共振回路」ともいうこととする。
【0053】
図2は上記したような本実施の形態の電源回路の各部の動作波形の一例を示した図である。
このような本実施の形態の電源回路は、自励発振駆動回路としての直列共振回路(NB ,CB )によりスイッチング素子Q1 がスイッチング動作を行うことで、スイッチング素子Q1 //並列共振コンデンサCrの並列接続回路の両端には、並列共振回路の作用によって、図2(a)に示すような一次側並列共振電圧Vcpが得られる。この並列共振電圧Vcpは、図示するようにスイッチング素子Q1 がオンとなる期間TONは0レベルで、オフとなる期間TOFF において正弦波状のパルスとなる波形が得られる。またスイッチング素子Q1 のコレクタには図2(b)に示すような波形のコレクタ電流Icpが流れることになる。
【0054】
また、絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2 を流れる二次側共振電流I2 の波形としては、二次側直列共振コンデンサCsと二次側並列共振コンデンサC2 が組み合わせて接続されていることで、これら並列共振コンデンサC2 及び直列共振コンデンサCsのキャパシタンスと、二次巻線N2 の漏洩インダクタンスL2 による電圧・電流共振動作によって、図2(c)に示すように、ほぼ正弦波状となっている。
この場合、ブリッジ整流回路DBRを構成している4組の整流ダイオードを流れる共振電流I3 ,I4 の導通角はほぼ等しいものとなり、共振電流I3 ,I4 の波形としては図2(d),図2(e)に示すようになる。
【0055】
このような本実施の形態の電源回路と、二次巻線N2 に対して二次側並列共振コンデンサC2 が挿入されていない図13に示した電源回路とを比較すると、図13に示した電源回路では、負荷電力Poが軽負荷となるにしたがってスイッチング素子Q1 がオフとされる期間TOFF が拡大され、例えば中間負荷状態の時はスイッチング素子Q1 がオフとされる期間TOFF の終了直前の期間T1 において、図15(a),(b)に破線で示したようにスイッチング素子Q1 が導通してコレクタ電流Icpが流れていた。
これに対して、本実施の形態の電源回路では、図2(a),(b)に示すように、中間負荷状態においても、後述するようにスイッチング素子Q1 がオフとされる期間TOFF は殆ど拡大することがないので、期間TOFF においてスイッチング素子Q1 にコレクタ電流Icpが流れることがない。これにより、中間負荷状態における異常動作が防止され、安定したZVS動作となる。つまり、対応可能な負荷範囲の全領域において安定したZVS動作が実現されるものである。
また、中間負荷状態における異常動作が防止されることで、異常動作により発生する電力損失も無くなるので、中間負荷状態における電力変換効率の向上を図ることができると共に、スイッチング素子Q1 の発熱も減少するため、スイッチング素子Q1 に取り付けられている放熱板を拡大する必要もなくなる。
【0056】
また、本実施の形態の電源回路では、図2(d),図2(e)に示したように、ブリッジ整流回路DBRを流れる共振電流I3 ,I4 の導通角がほぼ等しいものとなるため、例えば図5に示した電源回路において、ブリッジ整流回路DBRを構成している4組の整流ダイオードがターンオンする際に発生していた高周波のリンギング電流が共振電流I3 ,I4 に重畳されるということもない。
これにより、本実施の形態の電源回路では、整流ダイオードDO1,DO2からEMIが殆ど輻射されないので、例えば図5に示した電源回路においては、EMI対策として、実際には設ける必要があったフェライトビーズインダクタやセラミックコンデンサを削除することが可能とされ、その分、部品点数の削減を図ることができる。
【0057】
また、本実施の形態の電源回路は、絶縁コンバータトランスPITの二次側に対して電圧・電流共振回路を設けるようにしているため、二次側並列共振コンデンサC2 の共振作用に、二次側直列共振コンデンサCsの共振作用が加わった二次側共振電流I2 が、ブリッジ整流回路DBRを介して平滑コンデンサCO1に流入し、平滑コンデンサCO1に対する充電動作を行うことになる。
例えば、先ず、絶縁コンバータトランスPITが加極性モードで動作すると、二次巻線N2 に励起された励起電圧により二次巻線N2 →直列共振コンデンサCs→ブリッジ整流回路DBR→平滑コンデンサCO1という経路で電流が流れ、平滑コンデンサCO1に対する充電動作が行われると共に、二次巻線N2 の励起電圧により二次側直列共振コンデンサCsに対する充電動作が行われる。
すると、減極性モードにおいては、二次巻線N2 の励起電圧に対して二次側直列共振コンデンサCsの電位が加わるという直列共振作用が得られた状態で、直列共振コンデンサCs→二次巻線N2 →ブリッジ整流回路DBR→平滑コンデンサCO1という経路で電流が流れ、平滑コンデンサCO1に対する充電動作が行われることになる。
この場合、二次側から出力される直流出力電圧EO1の電圧レベルは、二次巻線N2 の励起電圧に二次側直列共振コンデンサCsの電位が加わることになるため、二次巻線N2 の励起電圧レベルより大きくなる。
【0058】
従って、本実施の形態の電源回路において、図5に示した電源回路の二次側直流出力電圧EO1とほぼ同等の二次側直流出力電圧EO1を得ようとした場合は、二次側コンデンサCsの電位が加わる分だけ、二次巻線N2 の励起電圧を低くすることができる。これにより、本実施の形態の電源回路の二次巻線N2 の巻線数を、図5に示した電源回路の二次巻線N2 の巻線数より少なくすることが可能となり、これに伴って、絶縁コンバータトランスPITを構成している分割ボビンBの小型、軽量化を図ることも可能になる。
【0059】
例えば図1に示した本実施の形態の電源回路では、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 の巻線数を43T、二次巻線N2 の巻線数を38T、一次側共振コンデンサCr=4700pF、二次側直列共振コンデンサCs=0.027μF、二次側並列共振コンデンサC2 =0.01μFに選定することができる。
上記のようにして各部品を選定した場合は、図1に示した電源回路の二次巻線N2 の巻線数は38Tとされており、図5に示した電源回路の二次巻線N2 の巻線数43Tよりも少なくなっている。
従って、図1に示した電源回路では、図5に示した電源回路よりも、絶縁コンバータトランスPITのサイズを小さくすることが可能である。
【0060】
このように本実施の形態の電源回路は、ブリッジ整流回路DBRを構成している4組の整流ダイオードを流れる共振電流I3 ,I4 に高周波のリンギング電流が重畳されることなく、また中間負荷状態においてスイッチング動作がZVS動作から外れる異常動作を防止できるうえに、絶縁コンバータトランスPITを構成している分割ボビンBの小型、軽量化を図ることが可能になるものである。
【0061】
ここで、図3は上記したような設計により各構成部品の値が設定された本実施の形態の電源回路において、負荷を変動させた場合の定電圧制御特性を示した図である。なお、この場合も入力交流電圧VACは100V、二次側直流出力電圧EO1は135Vとされる。
この図3に示されているように、本実施の形態の電源回路では、二次側から出力される直流出力電圧EO1の定電圧制御として、負荷電力Poが上昇するにしたがって、スイッチング周波数fsが低くなるように制御されていると共に、スイッチング素子Q1 がオンとなる期間TONは長くなるように制御されている。つまり、定電圧制御動作として複合制御方式となっていることがわかる。
【0062】
従って、本実施の形態の電源回路では、負荷の変動に伴うスイッチング素子Q1 のオフとなる期間TOFF の変化は、例えば図13に示した電源回路のスイッチング素子Q1 のオフとなる期間TOFF の変化(図14参照)に比べて小さく、その変化量は僅かなものとなっている。
このことからも、本実施の形態とされる電源回路が中間負荷状態をとった場合に、スイッチング素子Q1 がオフとなる期間TOFF が拡大していないことがわかる。従って、本実施の形態の電源回路は、例えば図9や図10、図13に示した電源回路のように、中間負荷状態においてスイッチング動作がZVS動作から外れる異常動作が発生しないものとなる。
【0063】
さらにまた、本実施の形態の電源回路は、スイッチング素子Q1 を複合制御方式によって制御することができるため、対応可能な最大負荷電力PoMAX が200Wから220Wまで拡大すると共に、制御可能な動作範囲の拡大も図ることが可能になる。
【0064】
また、本実施の形態の電源回路の二次側としては、図1に示したブリッジ整流回路DBRに限定されるものでない。
そこで、本実施の形態の電源回路の変形例として二次側の構成を図4に示す。なお、この図4において、一次側の構成は図1の構成と同様とされるため図示は省略する。また図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
この図に示す二次側においては、2本のダイオード素子DO1,DO2、平滑コンデンサCO1、インダクタLO によって構成されるフォワード方式の等倍電圧半波整流回路に、二次側並列共振コンデンサC2 と二次側直列共振コンデンサCsが設けられて構成されている。
【0066】
上記各素子の接続形態としては、二次巻線N2 に対して二次側並列共振コンデンサC2 が並列に接続されると共に、二次巻線N2 の巻始め端部には整流ダイオードとして機能するダイオード素子DO1のアノードが接続され、このダイオード素子DO1のカソードと平滑コンデンサCO1の正極側との間に、インダクタLO が挿入されている。また、二次巻線N2 の巻終り端部、及び平滑コンデンサCO1の負極側が二次側アースに接続される。
ダイオード素子DO1のカソードとインダクタLO との接続点と、二次側アースとの間には、図示するように、二次側直列共振コンデンサCsと、ダイオード素子DO2がそれぞれ挿入されている。この場合、ダイオード素子DO2のカソードはダイオード素子DO1のカソードとインダクタLO との接続点に対して接続され、ダイオード素子DO2のアノードは二次側アースに対して接続されることになる。
【0067】
このような接続形態により形成される等倍電圧半波整流回路の整流動作としては、一次側のスイッチング動作により一次巻線N1 にスイッチング出力が得られると、このスイッチング出力は二次巻線N2 に励起され、この二次巻線N2 に得られた励起電圧を入力して整流する。
この場合、先ず、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 と二次巻線N2 との極性が+Mとなる加極性モードでは、ダイオード素子DO1がオンとなり、ダイオード素子DO1により整流された整流電流はインダクタLO を介して平滑コンデンサCO1に供給され、平滑コンデンサCO1に対する充電が行われる。この場合、平滑コンデンサCO1にはインダクタLO を介してダイオード素子DO1からの整流電流が流入することから、インダクタLO にはエネルギーが蓄積されることになる。
また、この加極性モードの時には、ダイオード素子DO1の整流電流が分岐されて二次側直列共振コンデンサCsにも供給され、二次側直列共振コンデンサCsに対する充電も行われる。
【0068】
一方、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1 と二次巻線N2 との極性が−Mとなる減極性モードでは、ダイオード素子DO1がオフになり、インダクタLO に蓄積されていたエネルギーの逆起電力と、二次側直列共振コンデンサCsの放電電力とによって発生する電流が平滑コンデンサCO1に流入し、平滑コンデンサCO1に対する充電動作が行われることになる。
即ち、減極性モードにおいては、ダイオード素子DO2がオンになり、インダクタLO →平滑コンデンサCO1→ダイオード素子DO2という経路でインダクタLO からの電流が平滑コンデンサCO1に供給されると共に、二次側直列共振コンデンサCsからの放電電流がインダクタLO →平滑コンデンサCO1という経路で平滑コンデンサCO1に供給されることになる。
このような動作により、平滑コンデンサCO1の両端には二次巻線N2 の誘起電圧のほぼ等倍に対応する直流電圧(整流平滑電圧)EO1が得られることになる。この場合も二次側から出力される直流出力電圧EO1の電圧レベルは、二次側直列共振コンデンサCsの放電時の両端電圧が加わるため、二次巻線N2 の励起電圧レベルより大きくすることができる。
【0069】
従って、図4に示した二次側の構成においても、図5に示した電源回路の二次側直流出力電圧EO1とほぼ同等の二次側直流出力電圧EO1を得ようとすれば、二次巻線N2 の巻線数を、図5に示した電源回路の二次巻線N2 の巻線数より少なくすることが可能となるものである。
【0070】
このような構成とされる電源回路にあっては、例えば絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2 の巻線数を38T、二次側直列共振コンデンサCs=0.027μF、二次側並列共振コンデンサC2 =0.015μF、インダクタLO =150μHに選定すると、図1に示した電源回路と同様の効果が得られることが確認された。
【0071】
なお、本実施の形態においては、スイッチング電源回路の二次側に対して、ブリッジ整流回路DBR、及び半波整流方式の等倍電圧整流回路を設けた場合を例に挙げているが、このような構成の整流回路に限定されるものでなく、本発明としては、二次巻線N2 に励起される励起電圧レベルの等倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧EO1を得るように構成された各種整流回路が設けられればよいものである。
【0072】
また、本発明の電源回路としては、上記図1、図4に示した構成以外にも、実際の使用条件に対応して適宜変更されて構わないものである。例えば上記各実施の形態としては、自励方式によるスイッチング駆動の構成が採られているが、他励式によってスイッチング素子を駆動する構成に対しても本発明の適用が可能である。また、スイッチング素子としても、バイポーラトランジスタやMOS−FETの以外の他の部品素子(例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やSIT(静電誘導サイリスタ))等が採用されて構わないものである。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して、二次側直列共振回路と二次側並列共振回路が組み合わされて成る二次側共振回路を形成するようにしている。
この場合、先ず、二次側並列共振回路の共振動作によって、絶縁コンバータトランスの二次巻線を流れる二次側共振電流は、ほぼ正弦波状となるため、直流出力電圧生成手段に設けられている整流ダイオードを流れる電流の導通角もほぼ等しくなる。これにより、整流ダイオードを流れる電流には高周波のリンギング電流が重畳されることなく、整流ダイオードから発生するEMIを抑制することができる。よって、二次側に対してEMI対策のための部品を設ける必要がなく、その分、回路規模の小型化を図ることが可能になる。
【0074】
また、二次側直流出力電圧の定電圧制御は、スイッチング周波数と、スイッチング素子を流れるスイッチング電流の導通角を制御する複合制御となるため、負荷が変動した場合でもスイッチング素子がオフとなる期間の拡大を抑えることができ、よって中間負荷状態においてもスイッチング素子はZVS動作を外れないものとなる。
これにより、中間負荷状態において発生していた異常動作が解消され、結果的に対応可能な負荷変動範囲内の全領域において安定したZVS動作を実現することができる。
また、ZVS動作が得られることで、スイッチング素子における電力損失も減少するので、電力変換効率の向上を図ることができると共に、スイッチング素子に取り付けられている放熱板を大型化する必要もない。
【0075】
さらにまた、直流出力電圧生成手段から出力される二次側直流出力電圧の定電圧制御は、スイッチング周波数と、スイッチング素子を流れるスイッチング電流の導通角を制御する複合制御となるため、最大負荷電力の増加を図ることができると共に、制御可能範囲の拡大を図ることができるという利点もある。
さらにまた、絶縁コンバータトランスの巻線数を少なくすることができるので、その分、絶縁コンバータトランスの小型、軽量化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図2】本実施の形態の電源回路の要部の動作を示す波形図である。
【図3】本実施の形態の電源回路の負荷が変動した場合の定電圧制御特性を示した図である。
【図4】変形例としての電源回路の二次側構成例を示す回路図である。
【図5】先行技術としての電源回路の構成を示す回路図である。
【図6】先行技術としての電源回路の二次側の他の構成を示す回路図である。
【図7】図5に示した先行技術としての電源回路の要部の動作を示す波形図である。
【図8】図5に示した先行技術としての電源回路の負荷が変動した場合の定電圧制御特性を示した図である。
【図9】先行技術としての電源回路の構成を示す回路図である。
【図10】先行技術としての電源回路の二次側の他の構成を示す回路図である。
【図11】図9に示した先行技術としての電源回路の二次側動作を示す波形図である。
【図12】図9に示した先行技術としての電源回路の負荷が変動した場合の定電圧制御特性を示した図である。
【図13】先行技術としての電源回路の二次側の他の構成を示す回路図である。
【図14】図13に示した先行技術としての電源回路の負荷が変動した場合の定電圧制御特性を示した図である。
【図15】図13に示した先行技術としての電源回路の一次側動作を示す波形図である。
【図16】絶縁コンバータトランスの構成を示す断面図である。
【図17】相互インダクタンスが+M/−Mの場合の各動作を示す説明図である。
【符号の説明】
1 制御回路、Ci 平滑コンデンサ、Q1 スイッチング素子、PIT 絶縁コンバータトランス、PRT 直交形制御(ドライブ)トランス、Cr 一次側並列共振コンデンサ、C2 二次側並列共振コンデンサ、Cs Cs1 Cs2二次側直列共振コンデンサ、NC 制御巻線、NB 駆動巻線、ND 共振電流検出巻線、CB 共振コンデンサ、DBR ブリッジ整流回路、DO1 DO2 DO3 DO4 整流ダイオード、CO1 CO2 平滑コンデンサ、LO インダクタ
Claims (3)
- スイッチング素子を備え、入力された直流入力電圧を断続して出力するスイッチング手段と、
上記スイッチング手段の出力を二次側に伝送する絶縁コンバータトランスと、
上記スイッチング手段の動作を電圧共振形とするようにして挿入される一次側電圧共振回路と、
上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して二次側並列共振コンデンサを並列に接続することで形成される二次側並列共振回路と、上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に対して二次側直列共振コンデンサを直列に接続することで形成される二次側直列共振回路とが、組み合わされて成る二次側共振回路と、
上記絶縁コンバータトランスの二次巻線に得られる交番電圧を入力して整流動作を行うことで、上記交番電圧レベルの等倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧を得るように構成された直流出力電圧生成手段と、
上記二次側直流出力電圧のレベルに応じて、上記スイッチング素子のスイッチング周波数を可変することで定電圧制御を行うようにされる定電圧制御手段と、
を備えて構成されることを特徴とするスイッチング電源回路。 - 上記直流出力電圧生成手段は、
4組の整流ダイオード素子からなるブリッジ整流回路と、1組の平滑コンデンサとを備えると共に、上記二次側直列共振コンデンサを整流電流経路に対して挿入して形成されることで、上記交番電圧レベルの等倍に対応するとされるレベルの二次側直流出力電圧を生成する全波整流回路として構成されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。 - 上記直流出力電圧生成手段は、
2本のダイオード素子と1組の平滑コンデンサと、この平滑コンデンサに流入する電流の経路に挿入されるインダクタとを備えると共に、上記2本のダイオード素子のうち、整流動作を行うダイオード素子の整流出力が充電されるように上記二次側直列共振コンデンサを挿入することで、上記交番電圧レベルの等倍に対応するとされるレベルの二次側直流出力電圧を生成する半波整流回路として構成されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
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