JP4267139B2 - 樹脂成形品の製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、板目模様、柾目模様等の木目模様を有する疑似木材に使用される樹脂成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種の建築材料用として使用される木材、及び木目模様を有する疑似木材としては、本木、表面に印刷フイルム等を貼った化粧合板等が用いられてきた。しかし、本木を用いて意匠を満足させるためには極めて高価なものとなり、また、化粧合板は触感が不十分であったり異型の形状によっては対応困難なものがある等、問題があった。
また、建築現場での高齢化、技能者の不足から現場での加工を極力減少させ、異型製品を大量かつ安定に供給することが望まれるようになってきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂をベースとした木目模様を有した樹脂製品を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる課題は、下記(1)〜(3)からなる群より選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂(A)および木粉(B)からなる混合物を溶融混練したペレット100重量部に対し、フェノールとテトラクロロエタンの重量比が1:1の混合溶液中での25℃における極限粘度が0.5〜2.0であって、繊維状物を除くポリエステル樹脂(C)2〜100重量部をドライブレンドにて混合して樹脂組成物を得て、ついでこの樹脂組成物を射出成形する木目模様を有する樹脂成形品の製法によって解決できる。
(1)ゴム質重合体(a−1)の存在下にシアン化ビニル単量体(a−2−1)、芳香族ビニル単量体(a−2−2)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a−2−3)から選ばれた少なくとも1種からなる単量体(混合物)(a−2)をグラフト重合して得られたゴム質樹脂(A−1)。
(2)芳香族ビニル単量体(a−2−2)の重合体、または芳香族ビニル単量体(a−2−2)と、シアン化ビニル単量体(a−2−1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a−2−3)、芳香族ビニル単量体(a−2−2)と共重合可能な他のビニル単量体(a−2−4)から選ばれた1種以上の単量体とを共重合して得られる共重合体(A−2)。(3) ポリカーボネート樹脂(A−3)
また、射出成形時の樹脂温度(シリンダー温度)は、ポリエステル樹脂(C)の融点±20℃の範囲内であることが好ましい。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明において使用される熱可塑性樹脂(A)は、特に限定されるものではないが、例えば、
▲1▼ ゴム質重合体(a−1)の存在下にシアン化ビニル単量体(a−2−1)、芳香族ビニル単量体(a−2−2)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a−2−3)から選ばれた少なくとも1種からなる単量体(混合物)(a−2)をグラフト重合して得られたゴム質樹脂(A−1)、
▲2▼ 芳香族ビニル単量体(a−2−2)の重合体、または芳香族ビニル単量体(a−2−2)と、シアン化ビニル単量体(a−2−1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a−2−3)、芳香族ビニル単量体(a−2−2)と共重合可能な他のビニル単量体(a−2−4)から選ばれた1種以上の単量体とを共重合して得られる共重合体(A−2)、
▲3▼ ポリカーボネート樹脂(A−3)
などが挙げられる。また、これらは単独または併用して使用することができる。
【0006】
ゴム質樹脂(A−1)に使用するゴム質重合体(a−1)としては、ポリブタジエンゴム、ブタジエン−スチレンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、架橋アクリルゴム、ポリオルガノシロキサン系ゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、ポリブタジエンゴムの外層にポリブチルアクリレートゴムを設けてなるポリブタジエン/ポリブチルアクリレートのような複合ゴム、ポリオルガノシロキサン系ゴムとポリブチルアクリレートゴムとの複合ゴム、またはこれ以外の組み合わせからなる上記ゴム質重合体成分どうしの複合ゴム、あるいはこれら2種以上の混合物などを用いることができる。ここで使用するゴム質重合体(a−1)としては、これらのうち、ポリブタジエンゴム、架橋アクリルゴム、ポリオルガノシロキサン系ゴム、ポリブタジエンゴムの外層にポリブチルアクリレートゴムなどを設けてなる複合ゴム、ポリオルガノシロキサン系ゴムとポリアクリレートゴムとの複合ゴムが好ましい。
特に、架橋アクリルゴム、ポリオルガノシロキサン系ゴム、ポリブタジエンゴムの外層にポリブチルアクリレートゴムなどを設けてなる複合ゴム、ポリシロキサンゴムとポリアクリレートゴムとの複合ゴムは耐候性、耐薬品性に優れており、屋外や窓際用途で好ましく使用される。
【0007】
シアン化ビニル単量体(a−2−1)としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリルなどが挙げられ、これらは単独または併用して使用することができる。
また、芳香族ビニル単量体(a−2−2)としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ハロゲン化スチレン、p−エチルスチレン等が用いられ、これらは単独または併用して使用することができる。
これらのうちで、シアン化ビニル単量体(a−2−1)としてはアクリロニトリルが、また芳香族ビニル単量体(a−2−2)としてはスチレンが、特に好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(a−2−3)としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどが挙げられる、これらは単独または併用して使用できる。また、ゴム質樹脂(A−1)には、(a−2−1)〜(a−2−3)とは異なる他のビニル単量体(a−2−4)を用いることもできる。他のビニル単量体(a−2−4)としては、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド単量体、ビニルピリジン単量体が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
このような単量体(混合物)(a−2)を、公知の乳化重合、溶液重合、バルク重合、懸濁重合等の方法でゴム質重合体(a−1)にグラフト重合してゴム質樹脂(A−1)が得られる。
【0008】
共重合体(A−2)とは、芳香族ビニル単量体(a−2−2)、または芳香族ビニル単量体(a−2−2)と、シアン化ビニル単量体(a−2−1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a−2−3)、芳香族ビニル単量体(a−2−2)と共重合可能な他のビニル系単量体(a−2−4)から選ばれた1種以上とを(共)重合して得られるものであり、各々の単量体については上述のゴム質樹脂(A−1)で記載されたものと同じものが使用できる。
ここで使用されるシアン化ビニル単量体(a−2−1)としてはアクリロニトリルが、また芳香族ビニル単量体(a−2−2)としてはスチレンが、特に好ましい。
共重合体(A−2)としてシアン化ビニル単量体(a−2−1)および芳香族ビニル単量体(a−2−2)からなる共重合体を使用する場合、シアン化ビニル単量体(a−2−1)の共重合体中の含有量は10〜50重量%、芳香族ビニル単量体(a−2−2)の含有量は50〜90重量%の範囲が好ましい。
共重合体(A−2)は、溶液重合、懸濁重合、バルク重合、乳化重合など公知の方法で製造される。
【0009】
ポリカーボネート樹脂(A−3)としては、ジヒドロキシジアリールアルカンから得られるものが用いられ、任意に分岐していても良い。このポリカーボネート樹脂(A−3)は公知の方法により製造されるものであり、一般にジヒドロキシまたはポリヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることにより製造される。
ジヒドロキシジアリールアルカンは、ヒドロキシ基に関しオルトの位置にアルキル基、塩素原子または臭素原子を有していてもよい。ジヒドロキシジアリールアルカンの好ましい具体例としては、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールAおよびビス−(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼンなどが挙げられる。
また、分岐したポリカーボネートは、例えばジヒドロキシ化合物の一部、例えば0.2〜2モル%をポリヒドロキシで置換することにより製造される。ポリヒドロキシ化合物の具体例としては、フロログリシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリー(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼンなどが挙げられる。
使用するポリカーボネート樹脂(A−3)の分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは粘度平均分子量でMv15000〜35000である。
【0010】
木粉(B)は好ましくは平均粒径30〜500μm、特に好ましくは平均粒径50〜100μmのものが用いられる。平均粒径が30μm未満の場合は、成形品の木質感が不十分となり、500μmを超えると成形品表面に肌荒れが発生し易くなり成形品外観が不十分となる。
熱可塑性樹脂(A)と木粉(B)からなる混合物中における木粉(B)の割合は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、好ましくは3〜150重量部、特に好ましくは5〜100重量部である。木粉(B)の割合が3重量部未満では成形品の木質感が不十分となり、150重量部を超えると熱可塑性樹脂(A)との混和が不完全となり、成形品の機械的強度が低下する。
用いられる木粉(B)の樹種には特に制限はなく、例えば杉、栂、ラワンなどの針葉樹、広葉樹の木材片、鋸屑、鉋屑などの木材を用いることができる。
木粉(B)を得るためには、例えば粉砕機を用いて木材を平均粒径が30〜500μmの比較的丸味を帯びたものとすることが好ましい。また、木粉(B)として、粉砕木粉の表面に硬い小粒子を付着固定させた木粉を用いることができる。硬い粒子とは、硬度が木粉より高く、平均粒径が木粉の平均粒径より小さい粒子であって、具体的には、金属、金属酸化物、及び金属塩、無機化合物等が挙げられる。好ましい成分としては、酸化チタン、ニッケル、炭酸カルシウム、シリカ、マイカ等の無機系、または金属系粒子である。
【0011】
熱可塑性樹脂(A)と木粉(B)とからなる混合物には、強化材や難燃剤を配合することができる。
ここで配合される強化材としては、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維やウオラスナイト、タルク、マイカ粉、ガラス箔、チタン酸カリ等の無機フィラーから選ばれる一種以上のものである。強化材の配合量は、熱可塑性樹脂(A)と木粉(B)とからなる混合物100重量部に対して0〜60重量部、好ましくは1〜50重量部である。
また難燃化剤としては、通常ABS樹脂やポリカーボネート樹脂の難燃化に用いられるハロゲン化合物、アンチモン化合物やリン酸エステル系化合物等の難燃化剤が使用され、ハロゲン化合物としては、デカブロムジフェニルエーテル、オクタブロムジフェニルエーテル等のハロゲン化ジフェニルエーテルやハロゲン化ポリカーボネートなどが挙げられる。リン酸エステル系化合物としては、トリフェニルホスフェート、トリキシルフォスフェート、ジフェニルフォスフェート、ジキシリルフォスフェート、ジトリルフォスフェート、ジクレジルフォスフェートなどが挙げられる。
無機系難燃化剤としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ピロアンチモン酸ソーダ、水酸化アルミニウム等がその一例に挙げられるが、とくにこれらに制限されるものではない。ハロゲン化合物の配合量は熱可塑性樹脂(A)と木粉(B)とからなる混合物100重量部に対して0〜35重量部、好ましくは1〜30重量部であり、アンチモン化合物の配合量は0〜25重量部、好ましくは1〜20重量部の範囲である。
また、ドリップ防止のため難燃助剤としてポリテトラフルオロエチレン等の化合物を添加することができる。
さらに、熱可塑性樹脂(A)と木粉(B)とからなる混合物には、必要に応じて他の改質剤、離型剤、光または熱に対する安定剤、染顔料等の種々の添加剤を適宜加えることもできる。例えば、金属石鹸やエチレンビスステアロアミド等の滑剤であれば、熱可塑性樹脂(A)と木粉(B)とからなる混合物100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲で添加される。
【0012】
ポリエステル樹脂(C)は、芳香族ジカルボン酸、あるいはそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、ジオールあるいはそのエステル形成性誘導体を主成分とするジオール成分とからなる重合体、または共重合体である。
芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、またはこれらのジアルキルエステル、ジアリールエステル等のエステル形成性誘導体等が挙げられる。
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等の炭素数2〜10の脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の分子量が400〜6000の長鎖グリコール、およびこれらの混合物等が挙げられる。
これら芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分から得られるポリエステル樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンナフタレート等、あるいはこれらを主成分とする共重合ポリエステル樹脂が挙げられる。なかでも、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、及びこれらを主体とする共重合体が好ましい。
【0013】
ポリエステル樹脂(C)は、熱可塑性樹脂(A)と木粉(B)の合計量100重量部に対して、2〜100重量部が配合され、特に好ましくは4〜50重量部配合される。ポリエステル樹脂(C)が2重量部未満では良好な木目が発現せず、また100重量部を超えても良好な木目が発現しない。
また、これらポリエステル樹脂(C)は、フェノールとテトラクロロエタンの重量比が1:1の混合溶液中、25℃での極限粘度が0.5〜2.0のものが好ましい。極限粘度が0.5未満の場合は成形品の機械的強度が低下し、2.0を超えると木目模様が不十分となる場合がある。より好ましい極限粘度の範囲は使用されるポリエステル樹脂(C)の種類によって異なり、例えば、ポリブチレンテレフタレートでは0.6〜1.5の範囲が、ポリエチレンテレフタレートでは0.5〜1.2の範囲のものが好適である。
ポリエステル樹脂(C)には、必要に応じて他の改質剤、離型剤、光または熱に対する安定剤、染顔料等の種々の添加剤を適宜加えることもできる。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と木粉(B)からなる混合物を調製し、この混合物にポリエステル樹脂(C)を配合して得られる。
熱可塑性樹脂(A)と木粉(B)からなる混合物の調製方法として、通常の樹脂のブレンドに用いられるヘンシェルミキサーなどの高速ミキサー、タンブラーなどの混合装置を使用することができる。さらに溶融混練には、1軸押し出し機、2軸押し出し機等公知の装置を使用することができ、特に制限されない。
本発明においては、要望される木目模様にもよるが、熱可塑性樹脂(A)と木粉(B)からなる混合物をあらかじめ押出成形などによって溶融混練させペレット化し、さらにこの溶融混練された熱可塑性樹脂組成物(A+B)とポリエステル樹脂(C)とをドライブレンドした樹脂組成物を射出成形する2段方法が好ましく用いられる。
木粉(B)は熱可塑性樹脂(A)と混合、溶融混練押し出しをする前に乾燥することが好ましいが、ベント付き押し出し機であれば必ずしも必要ではない。
【0015】
本発明の熱可塑性樹脂(A)と木粉(B)とからなる混合物とポリエステル樹脂(C)からなる樹脂組成物は、可塑化、計量方式がプランジャー方式、スクリュー方式などの公知の成形装置を用いる射出成形法によって、成形物とされる。このとき使用される金型の構造には特に制限はなく、例えば二枚型、三枚型、スタック型などを用いることができる。ランナー方式についても特に制限はなく、例えばコールド、セミホット、ホットランナーなどを用いることができる。また、ゲートの種類に関しても特に制限されるものではないが、例えばダイレクトゲート、サイドゲート、ディスクゲート、リングゲート、ファンゲート、フィルムゲート、サブマリンゲート、タブゲートなどを用いることができ、良好な板目、柾目模様等の木目模様を得るためには、2点以上の多点ゲートが好ましく用いられる。
成形加工時に設定される樹脂温度は、使用するポリエステル樹脂(C)の種類により異なるが、良好な木目模様を得るためには、使用するポリエステル樹脂(C)の融点±20℃の樹脂温度の範囲で行うことが好ましい。例えば、ポリエステル樹脂(C)にポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)を使用した樹脂組成物を射出成形する場合の成形条件としては、樹脂温度は180〜260℃、好ましくは200〜240℃である。また、ポリエステル樹脂(C)にポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)を使用した樹脂組成物を射出成形する場合の成形条件としては、樹脂温度は210〜290℃、好ましくは230〜270℃である。これら条件より樹脂温度が低い場合、また高い場合は木目模様が不十分となる。
【0016】
【実施例】
以下、具体的に実施例を示す。本発明は、これら実施例に限定されるものではない。また、実施例での「部」および「%」は各々「重量部」および「重量%」を意味する。
[熱可塑性樹脂(A):ゴム質樹脂A−1−▲1▼の製造]
オクタメチルテトラシクロシロキサン96部、γ−メタクリルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部およびエチルオルソシリケート2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解した蒸留水300部を添加し、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間攪拌した後、ホモジナイザーに300kg/cm2 の圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
一方、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱器および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸2部と蒸留水98部とを注入し、2%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。
この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間に亘って滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、冷却した。この反応液を室温で48時間放置した後、苛性ソーダ水溶液で中和した。
このようにして得られたラテックス(L−1)を170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、17.3%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの重量平均粒子径は、0.08μmであった。ポリオルガノシロキサンのゲル含量は85%、トルエン溶媒中で測定した膨潤度は14.5であった。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱器および攪拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサンラテックス(L−1)119.5部、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム(花王(株)社製エマールNC−35)0.8部を採取し、蒸留水203部添加混合した後、n−ブチルアクリレート53.2部、アリルメタクリレート0.21部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.11部およびt−ブチルハイドロパーオキサイド0.13部からなる混合物を添加した。
この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。内部の液温が60℃となった時点で、硫酸第一鉄0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部およびロンガリッド0.24部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始せしめた。アクリレート成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとの複合ゴムのラテックスを得た。
反応器内部の液温が60℃に低下した後、ロンガリッド0.4部を蒸留水10部に溶解した水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル11.1部、スチレン33.2部およびt−ブチルハイドロパーオキサイド0.2部の混合液を約1時間に亘って滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後、硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部およびロンガリッド0.25部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル7.4部、スチレン22.2部およびt−ブチルハイドロパーオキサイド0.1部の混合液を約40分間に亘って滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後冷却し、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとからなる複合ゴムに、アクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフトさせたグラフト共重合体のラテックスを得た。動的光散乱法で求めたラテックス中のグラフト共重合体の重量平均粒子径は、0.13μmであった。
次いで、酢酸カルシウムを5%の割合で溶解した水溶液150部を60℃に加熱し攪拌した。この中へグラフト共重合体のラテックス100部を徐々に滴下し凝固した。次いで析出物を分離、洗浄したのち、乾燥し、ゴム質樹脂A−1−▲1▼を得た。
【0017】
[熱可塑性樹脂(A):ゴム質樹脂A−1−▲2▼の製造]
固形分含量が35%、平均粒子径0.08μmのポリブタジエンラテックス20部(固形分として)にn−ブチルアクリレート単位85%、メタクリル酸単位15%から成る平均粒子径0.08μmの共重合体ラテックス0.4部(固形分として)を攪拌しながら添加し、30分間攪拌を続け平均粒子径0.28μmの肥大化ジエン系ゴムラテックスを得た。得られた肥大化ジエン系ゴムラテックス20部(固形分)を反応釜に移し、不均化ロジン酸カリウム1部、イオン交換水150部を加え、窒素置換を行い、70℃(内温)に昇温した。これに10部のイオン交換水に0.12部の過硫酸カリウムを溶解した溶液を加え、下記の窒素置換された単量体混合物を2時間にわたって連続的に滴下した。
n−ブチルアクリレート 80部
アリルメタクリレート 0.32部
エチレングリコールジメタクリレート 0.16部
滴下終了と同時に内温の上昇はなくなるが、さらに80℃に昇温し1時間反応を続けると、重合率は、98.8%に達し、肥大化ジエン系ゴムを内部に含む多層構造アクリル系ゴムを得た。この多層構造アクリル系ゴムの膨潤度(メチルエチルケトン中、30℃24時間浸せき静置後の膨潤重量と絶乾重量の比)は6.4、ゲル含有量は93.0%、粒子径は0.28μmであった。
多層構造アクリル系ゴムラテックス50部(固形分)を反応釜に取り、イオン交換水140部を加え希釈し、70℃に昇温した。別にアクリロニトリル/スチレン=29/71(重量比)からなるグラフト重合用単量体混合物を50部調整し、ベンゾイルパーオキサイド0.35部を溶解した後、窒素置換した。この単量体混合物を15部/時間の速度で定量ポンプを使用し、上記反応系内に加えた。全モノマーの注入終了後、系内温度を80℃に昇温し30分攪拌を続けグラフト重合体ラテックスを得た。重合率は99%であった。
ラテックスの一部に希硫酸を加えて凝固乾燥した粉末をメチルエチルケトン還流下で抽出を行い、抽出部のηsp/Cをジメチルホルムアミドを溶媒として25℃で測定したところ、0.67であった。
上記のようにして製造したラテックスを、全ラテックスの3倍量の塩化アルミニウム(AlCl3・6H2O)0.15%水溶液(90℃)中に攪拌しながら投入し、凝固させた。全ラテックスの添加終了後、凝固槽内の温度を93℃に昇温し、このまま5分間放置した。これを冷却後、遠心脱水機により脱液、洗浄を行い乾燥し、ゴム質樹脂A−1−▲2▼の乾燥粉末を得た。
【0018】
[熱可塑性樹脂(A):ゴム質樹脂A−1−▲3▼の製造]
固形分含量が35%、平均粒子径0.08μmのポリブタジエンラテックス50部(固形分として)にn−ブチルアクリレート単位85%、メタクリル酸単位15%からなる平均粒子径0.08μmの共重合体ラテックス1部(固形分として)を攪拌しながら添加し、30分間攪拌を続け平均粒子径0.28μmの肥大化ゴムラテックスを得た。
得られた肥大化ゴムラテックスを反応容器に加え、さらに蒸留水50部、ウッドロジン乳化剤2部、デモールN(商品名、花王(株)製、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物)0.2部、水酸化ナトリウム0.02部、デキストローズ0.35部を添加して攪拌しながら、昇温させて内温60℃の時点で硫酸第一鉄0.05部、ピロリン酸ナトリウム0.2部、亜二チオン酸ナトリウム0.03部を加えた後、アクリロニトリル15部、スチレン35部、クメンハイドロパーオキサイド0.2部およびt−ドデシルメルカプタン0.5部の混合物を90分間にわたり連続的に滴下した後1時間保持して冷却した。得られたグラフト重合体ラテックスを希硫酸で凝析したのち、洗浄、濾過、乾燥してゴム質樹脂A−1−▲3▼を得た。
【0019】
[熱可塑性樹脂(A):共重合体(A−2−▲1▼)の製造]
アクリロニトリル単位29%、スチレン単位71%の組成の共重合体を懸濁重合法によって得た。この共重合体の25℃での還元粘度(ηsp/C)は0.62であった(2g/Lのジメチルホルムアミド溶液での測定値)。
【0020】
[熱可塑性樹脂(A):共重合体(A−2−▲2▼)の製造]
アクリロニトリル単位23%、スチレン単位57%、N−フェニルマレイミド単位20%の組成の共重合体をメチルエチルケトン溶液中で重合することによって得た。この共重合体の25℃での還元粘度(ηsp/C)は0.65であった(2g/Lのジメチルホルムアミド溶液での測定値)。
【0021】
[熱可塑性樹脂(A):共重合体(A−2−▲3▼)]
共重合体(A−2−▲3▼)には、ポリスチレン樹脂である電気化学工業(株)製の『電化スチロール GPA』を使用した。
[熱可塑性樹脂(A):ポリカーボネート樹脂(A−3−▲1▼)]
ポリカーボネート樹脂(A−3−▲1▼)には、ポリカーボネート樹脂である出光石油化学(株)製の『タフロン A1700』を使用した。
【0022】
[木粉(B)]
栂の粉砕品を篩別し90%以上が100メッシュをパスするものを木粉として使用した。
【0023】
[熱可塑性樹脂(C):(C−1−▲1▼)]
熱可塑性樹脂(C−1−▲1▼)には、ポリブチレンテレフタレート樹脂である三菱レイヨン(株)製の『タフペットPBT N1000』を使用した。フェノールとテトラクロロエタンの重量比が1:1の混合溶液中、25℃での極限粘度は、1.1であった。
[熱可塑性樹脂(C):(C−1−▲2▼)]
熱可塑性樹脂(C−1−▲2▼)には、ポリエチレンテレフタレート樹脂である三菱レイヨン(株)製の『ダイヤナイトPET MA−521H』を使用した。フェノールとテトラクロロエタンの重量比が1:1の混合溶液中、25℃での極限粘度、0.7であった。
【0024】
[熱可塑性樹脂(C):(C−1−▲3▼)]
熱可塑性樹脂(C−1−▲3▼)には、ABS樹脂である三菱レイヨン(株)製の『ダイヤペットABS 3001』を使用した。
[熱可塑性樹脂(C):(C−1−▲4▼)]
熱可塑性樹脂(C−1−▲4▼)には、ポリスチレン樹脂である電気化学工業(株)製の『電化スチロール GPA』を使用した。
[熱可塑性樹脂(C):(C−1−▲5▼)]
熱可塑性樹脂(C−1−▲5▼)には、ポリカーボネート樹脂である三菱エンジニアリングプラスチック(株)製の『ノバレックス 7025A』を使用した。
【0025】
[実施例1〜19、比較例1〜5]
表1の配合組成に従って、熱可塑性樹脂(A)と木粉(B)を配合し、ヘンシェルミキサーにて5分間混合し、40mm単軸押し出し機(ベント付き)にてペレット化し、表1に示す11種類の熱可塑性樹脂組成物(A+B)を得た。
さらにこのペレットと熱可塑性樹脂(C)を表2および表3に示す配合で混合し組成物を得た後、射出装置がスクリュー方式で型締め力100Tonの射出成形機(ベントなし)を用い、120mm×120mm×3mm厚みの射出成形を行い木目外観を目視で評価した。また、ASTM D−638に準拠し、引張強度の測定を行った。これらの結果も合わせて表2、表3及び表4に示す。
射出成形時の樹脂温度(シリンダー温度)は、実施例1、3〜13および比較例1〜4では220℃とし、実施例2、15および比較例5では250℃、実施例14では280℃とし、実施例16〜19では表4に示す温度とした。
なお、熱可塑性樹脂(A)と木粉(B)とからなる混合物には、(A)+(B)100部に対しステアリン酸マグネシウム0.2部とエチレンビスステアロアミド1.5部を添加した。また、ポリエステル樹脂(C)には、(C)100部に対して、ベンガラを顔料として1部添加した。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
表2中、木目発現性について、記号は以下の内容を示す。
◎:特に良好、○:木目あり、△:木目不十分、×:木目なし
また、引張強度について記号「−」は未測定を示す。
【0028】
【表3】
表3中、木目発現性について、記号は以下の内容を示す。
◎:特に良好、○:木目あり、△:木目不十分、×:木目なし
【0029】
【表4】
表4中、木目発現性について、記号は以下の内容を示す。
◎:特に良好、○:木目あり、△:木目不十分
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、優れた木目外観を有する樹脂成形品を提供することができる。得られた成形品は、優れた木質感、木目模様を有しており、疑似木材として極めて良好な意匠性を有するものであり、建材、家具などの天然木材に代わる材料として、また自動車の内装、家電、パソコン、事務機の外装等への用途展開できるものである。
Claims (2)
- 下記(1)〜(3)からなる群より選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂(A)および木粉(B)からなる混合物を溶融混練したペレット100重量部に対し、フェノールとテトラクロロエタンの重量比が1:1の混合溶液中での25℃における極限粘度が0.5〜2.0であって、繊維状物を除くポリエステル樹脂(C)2〜100重量部をドライブレンドにて混合して樹脂組成物を得て、ついでこの樹脂組成物を射出成形する木目模様を有する樹脂成形品の製法。
(1)ゴム質重合体(a−1)の存在下にシアン化ビニル単量体(a−2−1)、芳香族ビニル単量体(a−2−2)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a−2−3)から選ばれた少なくとも1種からなる単量体(混合物)(a−2)をグラフト重合して得られたゴム質樹脂(A−1)。
(2)芳香族ビニル単量体(a−2−2)の重合体、または芳香族ビニル単量体(a−2−2)と、シアン化ビニル単量体(a−2−1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a−2−3)、芳香族ビニル単量体(a−2−2)と共重合可能な他のビニル単量体(a−2−4)から選ばれた1種以上の単量体とを共重合して得られる共重合体(A−2)。(3) ポリカーボネート樹脂(A−3) - 射出成形時の樹脂温度(シリンダー温度)が、ポリエステル樹脂(C)の融点±20℃の範囲内である請求項1に記載の製法。
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