JP4266080B2 - アシルオキシ酢酸の製造方法 - Google Patents

アシルオキシ酢酸の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は写真用薬品、医薬品等の原料として有用なアシルオキシ酢酸の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アシルオキシ酢酸の製造方法として、ホルムアルデヒド誘導体と酢酸を反応させる方法(特開昭59−161328号、米国特許第3,801,627号他)、グリコール酸をハロゲン化アシルと反応させる方法(Chem.Ber., 467(1903)、特開平6−345690号、特開平7−196605号他)、ハロ酢酸またはその塩と脂肪族カルボン酸塩と反応させる方法(特開平7−196605号他)など、多くの方法が知られているが、過酷な反応条件が必要であったり、反応収率が低かったり、副生成物の除去が煩雑であったりして、必ずしも満足できるものではなかった。
【0003】
一方、製造コストをできるだけ低く抑えることは重要な課題であり、安価原料を使用したり、簡便な反応操作または/および精製操作の可能な反応ルートの開発またはこれらの工程の簡略化、反応ルートの短縮化、選択的反応の開発などしたりしている。
このうち、反応生成物を単離して、次工程で使用することは、反応収率を高める点では有効であるものの、製造コストアップにつながる。このため、反応釜から取り出さずに、そのまま次工程の反応を行うことは(本明細書においては一貫化または一貫法ともいう)、重要な課題である。
【0004】
しかしながら、反応生成物を単離しないで、次工程に使用する場合、反応に使用した塩基、酸が残存し、更には未反応の原料や反応副生物が次工程での反応阻害や、これらが関与して、更に複雑な副生物を生じたりして、多くの場合、収率の低下、精製工程の煩雑化を引き起こす。しかも、反応サイトが2ヶ所以上存在する場合、十分な反応の選択性が得られない場合が多い。また、次工程と反応溶媒を置き換えないと次工程の反応が進行しない場合も多く、これらに対する対応も必要となる。
【0005】
上記のような状況下において、特に、一貫法によりアシルオキシ酢酸を製造する場合、出発原料にクロロ酢酸エステル等のハロ酢酸エステルを使用し、脂肪族または芳香族カルボン酸塩と反応させることにより得られたアシルオキシ酢酸エステルを加水分解によって製造する。しかし、この製造方法では、アシルオキシ酢酸エステルに2ヶ所のエステル部分が存在するため、選択的な加水分解が必要であり容易に製造することができなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、アシルオキシ酢酸エステルの選択的加水分解を簡便にし、一貫化が可能で、低コストのアシルオキシ酢酸の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討した結果、出発原料にクロロ酢酸エステル等のハロ酢酸エステルを使用し、脂肪族または芳香族カルボン酸塩と反応させることにより、アシルオキシ酢酸エステルが得られ、これを選択的に加水分解する方法が最も簡便で、高収率に目的とするアシルオキシ酢酸エステルを得ることができることを見出した。この製造ルートにおいて、一貫法を検討した結果、先に述べた一貫法における問題点があるにもかかわらず、アシルオキシ酢酸エステルの一方のエステルのみを選択的かつ高収率に加水分解できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の上記目的は以下によって達成されることをことを見出した。
(1)下記一般式(I)で表される化合物と、下記一般式(II)で表される化合物とから一般式(III)で表される化合物を生成し、該一般式(III)で表される化合物を加水分解して下記一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸を製造する方法であって、前記一般式(III)で表される化合物を反応溶液中から取り出すことなく、該反応溶液に、少なくとも一種の相間移動触媒または少なくとも一種の水溶性有機溶媒を含ませて加水分解することを特徴とする一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸の製造方法である。
【0008】
【化5】
Figure 0004266080
【0009】
[R1は炭素数が1から3のアルキル基またはアリール基を表し、R2はアルキル基またはアリール基を表し、Xはハロゲン原子を表す。]
【0010】
(2)前記R2が分岐アルキル基であることを特徴とする前記(1)に記載の一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸の製造方法である。
(3)前記R2が以下に示す基であることを特徴とする前記(1)に記載の一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸の製造方法である。
【0011】
【化6】
Figure 0004266080
【0012】
(4)下記一般式(III)で表される化合物をアルカリ加水分解して下記一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸を製造する方法であって、前記加水分解に際し、水層から有機物を分液抽出可能な溶媒を使用し、かつ少なくとも一種の相間移動触媒を用いることを特徴とする一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸の製造方法である。
【0013】
【化7】
Figure 0004266080
【0014】
[R1は炭素数が1から3のアルキル基またはアリール基を表し、R2はアルキル基またはアリール基を表す。]
(5)前記加水分解が、塩基によるアルカリ加水分解であることを特徴とする前記(4)に記載の一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸の製造方法である。
【0015】
(6)下記一般式(III)で表される化合物を加水分解して一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸を製造する方法であって、前記加水分解に際し、水層から有機物を分液抽出可能な溶媒を使用し、かつ少なくとも一種の水溶性有機溶媒を用いることを特徴とする一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸の製造方法である。
【0016】
【化8】
Figure 0004266080
【0017】
[R1は炭素数が1から3のアルキル基またはアリール基を表し、R2はアルキル基またはアリール基を表す。]
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
まず第一に、本発明で使用される下記一般式(I)〜(IV)で表される化合物に関して説明する。
【0019】
【化9】
Figure 0004266080
【0020】
一般式(I)および(III)において、R1で表されるアルキル基は炭素数が1から3のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。
1で表されるアリール基は無置換でも他の置換基によって置換されていてもよく、好ましくはフェニル基、p−ニトロフェニル基であり、さらに好ましくはフェニル基である。
【0021】
一般式(II)および(III)において、R2で表されるアルキル基としては炭素数4以上(好ましくは炭素数4〜36、さらに好ましくは8〜24)の直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基であり、好ましいものは炭素原子数4以上(好ましくは炭素数4〜36、さらに好ましくは8〜24)の分岐状アルキル基である。
2で表されるアリール基としては、無置換でも他の置換基で置換されていてもよく、好ましくは炭素数5以上(好ましくは炭素数5〜36)のアルキル基またはアルキル部分を含む置換基で置換したフェニル基である。
【0022】
なお、上記R1におけるアリール基やR2におけるアルキル基およびアリール基、が有してよい置換基としては、置換可能な基であればいずれでもよく、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0023】
Xで表されるハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子であり、好ましくは塩素、臭素原子であり、最も好ましくは塩素原子である。
【0024】
以下に本発明の製造方法に使用される一般式(I)〜一般式(IV)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
一般式(I)で表される化合物の具体例
クロロ酢酸メチルエステル、クロロ酢酸エチルエステル、クロロ酢酸イソプロピルエステル、クロロ酢酸n−プロピルエステル、ブロモ酢酸メチルエステル、ブロモ酢酸エチルエステル、ブロモ酢酸イソプロピルエステル、ブロモ酢酸n−プロピルエステル、ヨード酢酸エチルエステル
【0026】
一般式(II)で表される化合物の具体例
【0027】
【化10】
Figure 0004266080
【0028】
【化11】
Figure 0004266080
【0029】
一般式(III)で表される化合物の具体例
【0030】
【化12】
Figure 0004266080
【0031】
【化13】
Figure 0004266080
【0032】
一般式(IV)で表される化合物の具体例
【0033】
【化14】
Figure 0004266080
【0034】
【化15】
Figure 0004266080
【0035】
次いで、本発明の反応に関して詳細に説明する。
本発明においては上記化合物は以下に説明する反応条件および反応工程に最もよく適合するものである。
【0036】
本発明における一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸の製造ルートは、一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物から、一般式(III)で表される化合物を得、この一般式(III)で表される化合物を加水分解して一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸を製造するものである。
一般式(III)で表される化合物は、一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物を反応させた後、反応溶液中から取り出すことなく、例えば、反応溶液中に水あるいは温水を加えて、必要ならば有機溶媒を加えて、一般式(III)で表される化合物を分液抽出し、得られた有機層に酸あるいは塩基と、少なくとも一種の相間移動触媒または少なくとも一種の水溶性有機溶媒を加えて一般式(IV)で表される化合物を製造する。
【0037】
上記の製造方法において使用できる相間移動触媒としては、四級アンモニウム塩(硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライドなど)、クラウンエーテル類などがあり、好ましくは四級アンモニウム塩であり、更に好ましくは硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライドであり、最も好ましくは硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウムなどが挙げられる。
なお、これらの相間移動触媒は単独でも併用してもよい。
【0038】
これらの相間移動触媒の使用量は特に制限はないが、好ましくは一般式(III)で表される化合物または該化合物の理論収量に対して、0.1〜20モル%、更に好ましくは0.5〜10モル%、最も好ましくは1.0から5.0モル%である。
【0039】
本発明で使用される水溶性有機溶媒としては、水に溶解する有機溶媒であり、例えば、水と溶媒とを1:1で混合した場合、均一に溶解混合されるものであり、アミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、アルコール系溶媒(tert−ブチルアルコール、イソプロパノール、エタノール、メタノールなど)、ケトン系溶媒(アセトンなど)、エーテル系溶媒(テトラヒドロフランなど)、ニトリル系溶媒(アセトニトリルなど)が挙げられ、好ましくはアミド系溶媒溶媒またはアルコール系溶媒である。具体的にはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、tert−ブチルアルコール、メタノールが好ましく、さらに好ましくはN,N−ジメチルアセトアミド、メタノールなどが挙げられ、特に好ましくは、メタノールである。
なお、これらの水溶性有機溶媒は単独でも、これらの水溶性有機溶媒を併用してもよい。
【0040】
本発明において、一般式(III)で表される化合物を合成する際、反応の結果生じた水溶性化合物(塩基、酸または塩等)を除去するため、一般式(III)で表される化合物を含む反応溶液中に水あるいは温水を加えて、水層から一般式(III)で表される化合物を有機層に抽出し、水層部分は反応釜から除去することが特に好ましい。このため、一般式(III)で表される化合物を合成する際に、水層から有機物を分液抽出可能な溶媒を使用する場合は、反応溶液中に水あるいは温水を加えることが好ましく、また、水層から有機物を分液抽出可能な溶媒を使用しない場合は、反応溶液中に水あるいは温水を加えた上に、さらに、水層から有機物を分液抽出可能な溶媒を加えることが好ましい。
【0041】
本発明においては、一般式(III)で表される化合物を選択的かつ高収率に一般式(IV)で表される化合物を製造するためには、加水分解の工程において、水層から有機物を分液抽出可能な溶媒を使用し、かつ、少なくとも一種の相間移動触媒または少なくとも一種の水溶性有機溶媒を使用する。ここで、少なくとも一種の相間移動触媒と、少なくとも一種の水溶性有機溶媒とを併用するとさらに好ましい。この場合の水溶性有機溶媒は前述の通りであり、好ましいものも同じである。
【0042】
水層から有機物を分液抽出可能な溶媒、特に一貫法における有機層抽出のための有機溶媒は、脂肪族炭化水素系溶媒(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエンなど)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテルなど)、ハロゲン系溶媒(塩化メチレン、クロロホルムなど)、エステル系溶媒(酢酸エチルなど)であり、これらのうち好ましくは脂肪族炭化水素系溶媒または芳香族炭化水素系溶媒であり、より好ましくは脂肪族炭化水素系溶媒であり、より具体的には、なかでもヘキサン、トルエンが好ましく、最も好ましくはヘキサンである。
【0043】
水層から有機物を分液抽出可能な溶媒は、少なくとも一般式(III)で表される化合物を溶解するのに必要な量、または抽出するのに必要な量が使用され、一般式(III)で表される化合物の種類や溶媒の種類によって異なるが、好ましくは一般式(III)で表される化合物または該化合物が得られる理論収量100gに対し、20〜1000ml、より好ましくは20〜500mlである。
【0044】
一方、水層から有機物を分液抽出可能な溶媒に加えられる本発明で使用される水溶性有機溶媒は、好ましくは水層から有機物を分液抽出可能な溶媒の体積に対して、0.1〜10倍量、より好ましくは0.2〜5倍量、さらに好ましくは0.3〜1.5倍量である。ただし、相間移動触媒と併用する場合は、さらに少ない量で使用することができ、分液抽出可能な溶媒の体積に対して0.001〜1倍量、より好ましくは0.005〜0.5倍量である。
【0045】
本発明の製造方法における一般式(III)で表される化合物から一般式(IV)で表される化合物を得る加水分解反応においては、塩基または酸を使用する。
塩基としては、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、有機塩基(有機酸の塩、例えば酢酸ナトリウム、酢酸カリウム)、アルコキサイド類(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムエトキシドエタノール溶液)、アミン類(例えば、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン)が挙げられる。
これらの塩基は単独で使用しても、水溶液状態で使用してもかまわない。
上記塩基のうち、好ましくは無機塩基であり、さらに好ましくは無機塩の水溶液であり、具体的には、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液であり、さらに好ましくは水酸化カリウム水溶液である。
【0046】
塩基の量は一般式(III)で表される化合物または該化合物が得られる理論量に対し、好ましくは0.9〜1.5モル%である。さらに好ましくは0.95〜1.1モル%である。
【0047】
一般式(III)で表される化合物の加水分解に用いる酸としては、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トルフルオロメタンスルホン酸が挙げられ、好ましくは塩酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸であり、さらに好ましくは塩酸である。
【0048】
本発明においては、塩基によるアルカリ加水分解が好ましい。特に、相間移動触媒を使用する場合は塩基を使用するのが好ましい。
なお、上記反応の際、加えられる水は、塩基や酸を溶解または希釈する水として、これらの水溶液で添加するのが好ましく、特に無機塩基の場合はこの溶解に必要な量の水でかまわない。
【0049】
一般式(III)で表される化合物を加水分解する際の反応温度は、2個のエステル基が存在しているため、選択性を高める意味で、低温で反応するが好ましく、例えば0℃〜50℃、より好ましくは0℃〜30℃、さらには室温が好ましい。
また、反応時間は10分〜5時間が好ましく、さらに好ましくは20分〜3時間である。
反応後は一般的に、得られたアシルオキシ酢酸の解離体を酸状態にする処置(例えば、酸性液を添加)を施した後、取り出しを行う。
【0050】
次いで、一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物から一般式(III)で表される化合物を得る工程に関して説明する。
【0051】
本発明の製造方法において、一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物から一般式(III)で表される化合物を得る反応に用いる反応溶媒は、脂肪族炭化水素系溶媒(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエンなど)、アミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、ハロゲン系塩化(メチレン、クロロホルムなど)、ケトン系溶媒(アセトンなど)、エステル系溶媒(酢酸エチルなど)、ニトリル系溶媒(アセトニトリルなど)などが挙げられ、好ましくはアミド系溶媒である。具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましく、特に好ましくはN,N−ジメチルアセトアミドである。
【0052】
このアシルオキシ化反応には塩基を使用し、一般式(II)で表される化合物である酸を塩にする。
この反応に使用する塩基としては、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、有機塩基(有機酸の塩、例えば酢酸ナトリウム、酢酸カリウム)、アルコキサイド類(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムエトキシドエタノール溶液)、アミン類(例えば、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン)が挙げられる。
これらの塩基は単独で使用しても、水溶液状態で使用してもかまわない。
これらのうち、好ましくは無機塩基であり、さらに好ましくは炭酸塩類であり、具体的には、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムが好ましく、さらに好ましくは炭酸カリウムである。
塩基の使用量は一般式(II)で表される化合物を塩にするのに必要な量が添加されるが、多くても少なくてもかまわない。
【0053】
また、一般式(I)で表される化合物に対する一般式(II)で表される化合物の使用量は0.8〜1.2が好ましい。
反応温度は、一般式(I)で表される化合物、得られた一般式(III)で表される化合物が分解しない温度であればいかなる温度でもかまわないが、好ましくは0℃〜100℃である。
一般式(I)で表される化合物は、一般式(II)で表される化合物中に添加(好ましくは滴下)される。なお、また反応時間は30分〜5時間が好ましいが、特に制限するものではない。
【0054】
以上の説明においては、一般式(IV)で表される化合物の合成は、一般式(III)で表される化合物を経て行い、この一般式(III)で表される化合物は、一般式(I)で表される化合物と、一般式(II)で表される化合物とを使用して得たが、別の合成経路を経て得たものであってもよい。例えば、グリコール酸エステルとハロゲン化アシルとを反応させて得たものでもよく、あるいは市販品であってもよい。ただし最も好ましくは、一般式(I)で表される化合物と、一般式(II)で表される化合物とを使用して一般式(III)で表される化合物を得ることである。
【0055】
【実施例】
以下に本発明の具体的実施例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
【化16】
Figure 0004266080
【0057】
(実施例1)
一般式(II)で表される化合物として化合物(A)25.7g(100mmol)にN、N−ジメチルアセトアミド(38ml)、炭酸カリウム13.4g(97.0mmol)を加えた。これを60℃に加熱攪拌しながら一般式(I)で表される化合物としてクロロ酢酸メチル11.0g(101mmol)を30分かけて滴下した。60℃にて1.5時間反応後、反応物を室温まで冷却し、これにヘキサン100mlおよび温水100mlを加えた。室温にて攪拌し、炭酸カリウムを溶解させた後、分液した。
得られた有機層を氷冷して、これに、相間移動触媒として硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウム0.80g(2.0mmol)を加え、8.13mol/lの水酸化カリウム水溶液12.5mlを滴下した。滴下終了後、室温まで昇温し、さらに2時間反応させた後、0.5mol/lのHCl水溶液15mlを加えた。室温にて15分攪拌後分液し、有機層を100mlの水、100mlの飽和食塩水で洗浄後、溶媒を減圧留去することで一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸である化合物(1)30.8g(98mmol )を得た(収率98%)。ここで得られた透明油状物の1HNMRを測定すると化合物(B)のシグナルは観測されず、化合物(B)が1HNMRの検出限界以下まで消失したことが示唆された。
【0058】
(実施例2)
一般式(II)で表される化合物として化合物(A)25.7g(100mmol)にN、N−ジメチルアセトアミド(38ml)、炭酸カリウム13.4g(97.0mmol)を加えた。これを60℃に加熱攪拌しながらクロロ酢酸メチル11.0g(101mmol)を30分かけて滴下した。60℃にて1.5時間反応後、反応物を室温まで冷却し、これにヘキサン100mlおよび温水100mlを加えた。室温にて攪拌し、炭酸カリウムを溶解させた後、分液した。
得られた有機層を氷冷して、これに、水溶性有機溶媒として、DMAC(N,N−ジメチルアセトアミド)80mlを加え、8.13mol/lの水酸化カリウム水溶液12.5mlを滴下した。滴下終了後、室温まで昇温しさらに2時間反応させた後、0.5mol/lのHCl水溶液15mlを加えた。室温にて15分攪拌後分液し、有機層を希塩酸水で3回洗浄し、100mlの水、100mlの飽和食塩水で順次洗浄後、溶媒を減圧留去することで一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸である化合物(1)30.5g(97mmol)を得た(収率97%)。ここで得られた透明油状物の1HNMRを測定すると化合物(B)のシグナルは観測されず、化合物(B)が1HNMRの検出限界以下まで消失したことが示唆された。
【0059】
(実施例3)
実施例1において、硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウムを加える際、メタノールを5ml加えた以外は実施例1と全く同様に行ったところ、化合物(1)31.1g(99mmol)を得た(収率99%)。また、1HNMRの測定からは、化合物(B)のシグナルは全く観測されなかった。
【0060】
(比較例)
一般式(II)で表される化合物として化合物(A)25.7g(100mmol)にN、N−ジメチルアセトアミド(38ml)、炭酸カリウム13.4g(97.0mmol)を加えた。これを60℃に加熱攪拌しながらクロロ酢酸メチル11.0g(101mmol)を30分かけて滴下した。60℃にて1.5時間反応後、反応物を室温まで冷却し、これにヘキサン100mlおよび温水100mlを加える。室温にて攪拌し、炭酸カリウムを溶解させた後、分液した。
得られた有機層を氷冷してこれに8.13mol/lの水酸化カリウム水溶液12.5mlを滴下した。滴下終了後、室温まで昇温しさらに2時間反応させた後、0.5mol/lのHCl水溶液15mlを加える。室温にて15分攪拌後分液し、有機層を100mlの水、100mlの飽和食塩水で洗浄後、溶媒を減圧留去する。得られた透明油状物の1HNMRを測定するとその積分比から化合物(B)が90%以上残存し、化合物(1)は10%以下しか得られていないことが分かった。
【0061】
上記実施例から明らかなように、比較例においては目的物であるアシルオキシ酢酸が非常に低収率であるのに対し、相間移動触媒を使用した実施例1、および水溶性有機溶媒を使用した実施例2は、いずれも選択的に一方のエステルのみが加水分解し、かつ高収率で製造できることがわかる。また、相間移動触媒に水溶性有機溶媒とを併用するとさらに高収率となることが分かる。この結果、工程の短縮化が可能であり、本発明による方法が製造コストの点で優れていることは明らかである。
【0062】
【発明の効果】
本発明によると、アシルオキシ酢酸エステルの選択的加水分解が簡便になり、、一貫化が可能で、低コストのアシルオキシ酢酸の製造方法を提供することができる。

Claims (6)

  1. 下記一般式(I)で表される化合物と、下記一般式(II)で表される化合物とから一般式(III)で表される化合物を生成し、該一般式(III)で表される化合物を加水分解して下記一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸を製造する方法であって、
    前記一般式(III)で表される化合物を反応溶液中から取り出すことなく、該反応溶液に、少なくとも一種の相間移動触媒または少なくとも一種の水溶性有機溶媒を含ませて加水分解することを特徴とする一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸の製造方法。
    Figure 0004266080
    [R1は炭素数が1から3のアルキル基またはアリール基を表し、R2はアルキル基またはアリール基を表し、Xはハロゲン原子を表す。]
  2. 前記R2が分岐アルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸の製造方法。
  3. 前記R2が以下に示す基であることを特徴とする請求項1に記載の一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸の製造方法。
    Figure 0004266080
  4. 下記一般式(III)で表される化合物を加水分解して下記一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸を製造する方法であって、
    前記加水分解に際し、水層から有機物を分液抽出可能な溶媒を使用し、かつ少なくとも一種の相間移動触媒を用いることを特徴とする一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸の製造方法。
    Figure 0004266080
    [R1は炭素数が1から3のアルキル基またはアリール基を表し、R2はアルキル基またはアリール基を表す。
  5. 前記加水分解が、塩基によるアルカリ加水分解であることを特徴とする請求項4に記載の一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸の製造方法。
  6. 下記一般式(III)で表される化合物を加水分解して一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸を製造する方法であって、
    前記加水分解に際し、水層から有機物を分液抽出可能な溶媒を使用し、かつ少なくとも一種の水溶性有機溶媒を用いることを特徴とする一般式(IV)で表されるアシルオキシ酢酸の製造方法。
    Figure 0004266080
    [R1は炭素数が1から3のアルキル基またはアリール基を表し、R2はアルキル基またはアリール基を表す。
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