JP4144385B2 - 自動車の車室前部の結合構造 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の自動車の車室前部の結合構造に関する。
【０００２】
【従来の技術】
自動車は、前部構造において、ダッシュパネルとカウルサイドパネルとヒンジピラー（フロントピラー）とサイドメンバとクロスメンバとを備える（例えば、特許文献１参照。）。ダッシュパネルは、自動車の幅方向を横切って車室の前部に配置されている。カウルサイドパネルは、ダッシュパネルの左右両側にそれぞれ接合され、後方に延びている。フロントピラーは、カウルサイドパネルの後端に接合されてカウルサイドパネルとの間に閉断面を形成している。サイドメンバは、左右それぞれフロントピラーよりも内側の位置でダッシュパネルに接合され、ダッシュパネルから前方へ配置されている。クロスメンバは、ダッシュパネルとの間に閉断面を形成し、車体の幅方向に配置されてサイドメンバの後端を連結する。
【０００３】
ダッシュパネルの車室内側にクロスメンバが取付けられる場合、クロスメンバの両端は、ダッシュパネルとカウルサイドパネルに沿って後方へ曲がり、フロントピラーに接合される。また、ダッシュパネルの車室外側にクロスメンバが取付けられる場合、クロスメンバの両端は、サイドメンバに接合される。そして、ダッシュパネルとカウルサイドパネルに沿って、サイドメンバが取付けられた位置のダッシュパネルの車室内側からフロントピラーまでの間に、補強部材が取付けられる。
【０００４】
【特許文献１】
実用新案登録第２５３１７１８号公報（第１図、第３図、第２３図）
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の構成の場合、ダッシュパネルとカウルサイドパネルとの接合フランジが、タイヤの外周面と対向する位置に造られてしまう。したがって、タイヤがこのフランジに接触してバーストしないようにするために、フランジの分だけタイヤから後方に離して、ダッシュパネルおよびカウルサイドパネルを設けなければならない。そのため、車室が狭くなる。また、フロントピラーの位置が後退するため、前部座席のドアの取付け位置が後部寄りになってしまい、車室への乗り降りが不便になる。
【０００６】
また、クロスメンバが車室内側に設けられている場合、サイドメンバとダッシュパネルが取付けられた範囲のクロスメンバとダッシュパネルとを接合するために、スポット溶接のトーチが寄り付けない箇所がある。同様に、クロスメンバが車室外側に設けられている場合、サイドメンバとダッシュパネルとが接合された範囲のダッシュパネルと補強部材との接合、ダッシュパネルと補強部材が接合された後のクロスメンバの端部とサイドメンバとの接合をするために、スポット溶接のトーチが寄り付けない箇所がある。そのため、どこかを切欠いて、トーチを差し込める作業孔を設けなければならない。しかし、強度部材に開口部である作業孔を設けると、強度が当然低下するので、好ましくない。
【０００７】
そこで、本発明は、車室空間を確保しつつ、充分な強度を有した自動車の車室前部の結合構造を提供することを目的とする。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる自動車の車室前部の結合構造は、自動車の幅方向に横切って車室の前部に配置されるダッシュパネルと、このダッシュパネルの両端に互いに対向するフランジを結合して配設され、前記フランジがダッシュパネルのフランジ部と接合されるフロントピラーと、フロントピラーよりも自動車の幅方向に内側で、ダッシュパネルの車室外側に接合され、ダッシュパネルから前方に延びるサイドメンバと、自動車の幅方向に配置されて左右のサイドメンバの後端部を連結し、ダッシュパネルとの間に閉断面を形成するクロスメンバと、ダッシュパネルのサイドメンバが取付けられた部分の車室内側とフロントピラーとを連結する補強部材と、前記ダッシュパネルの左右両側に前記車室の内側に向かって膨らんで形成されたタイヤハウスと、を備え、前記フロントピラーと前記ダッシュパネルとは、前記フロントピラー側の前記フランジの先端が前記ダッシュパネルに形成された前記タイヤハウスの前記フランジ部基端よりも後方に位置する位置関係で接合される。
【０００９】
また、フロントピラーとダッシュパネルとは、フロントピラー側のフランジの先端がダッシュパネル側のフランジ部の基端を越えない位置関係で接合される
また、フロントピラーは、車室内側に面したインナと車室外側に面したアウタと有し、インナとアウタとは、フランジが、フロントピラーの外周面から突出する方向に延びる接合フランジとして、互いに接合される。
【００１０】
そして、自動車の車室前部の結合構造は、ダッシュパネルとインナとを接合し、補強部材をインナが接合されたダッシュパネル及びインナに接合し、予めクロスメンバの両端に接合されたサイドメンバを補強部材が接合されたダッシュパネルに接合し、アウタを補強部材が接合されたインナ及びダッシュパネルに接合することで、組立てられる。
【００１１】
【発明の実施の形態】
本発明に係る一実施形態の自動車の車室前部の結合構造について、図１から図３を参照して説明する。自動車の進行方向Ｆを基準に前後左右を定義し、自動車の中心に向かう方向を内側、自動車の中心から離れる方向を外側とする。自動車の前部左側のフロントピラー２とダッシュパネル１との結合部近傍を車室内側から見た状態を図１に示す。図１に示すように、自動車の車室前部の結合構造は、ダッシュパネル１、フロントピラー２、サイドメンバ３、クロスメンバ４、補強部材５が設けられている。
【００１２】
ダッシュパネル１は、自動車の幅方向を横切って車室の前部に配置される。ダッシュパネル１の下端は、車室のフロアパネルに向かって後方に延びている。また、ダッシュパネル１の左右両側の下部には、前輪を避けるように車室の内側に向かって膨らむタイヤハウス１１が形成されている。フロントピラー２は、ダッシュパネル１の左右両側に配置され、ダッシュパネル１の両端に沿って湾曲している。フロントピラー２は、車室内側に面したインナ２１と、車室外側に面したアウタ２２とを備えている。インナ２１とアウタ２２とは、フロントピラー２の外周面から突出する方向に延びる接合フランジ２３，２４をそれぞれ備えており、この接合フランジ２３，２４で接合されて、フロントピラー２を成す。
【００１３】
また、図２に示すように、ダッシュパネル１の左右両側縁とフロントピラー２には、互いに対向して延びるフランジ部１２とフランジ２３，２４がそれぞれ形成されている。フロントピラー２とダッシュパネル１とは、フロントピラー２のフランジ２３，２４の先端２５，２６がダッシュパネル１のフランジ部１２の基端１３よりも後方に位置するように接合される。
【００１４】
サイドメンバ３は、フロントピラー２よりも自動車の幅方向に内側で、ダッシュパネル１の車室外側に接合されている。サイドメンバ３は、ダッシュパネル１から前方に延びているとともに、ダッシュパネル１の下方からフロアパネルに沿って後方に延びている。
【００１５】
クロスメンバ４は、図２に示すように自動車の幅方向に配置され、両端４ａが左右のサイドメンバ３の後端３ａと接合されている。また、クロスメンバ４は、ダッシュパネル１に接合され、ダッシュパネル１とクロスメンバ４とによって閉じられた空間、いわゆる閉断面を形成する。
【００１６】
補強部材５は、ダッシュパネル１のサイドメンバ３が取付けられた部分１４の車室内側とフロントピラー２のインナ２１とを連結するように接合される。補強部材５は、ダッシュパネル１のタイヤハウス１１との間に閉断面を形成する。補強部材５の後壁５ａは、インナ２１の前壁２１ａと内側壁２１ｂとが形成する角部２１ｃに当接する。
【００１７】
次に、各部材の接合順序の一例を説明する。まずダッシュパネル１とインナ２１とを接合する。この場合、少なくとも、補強部材５で覆われる範囲のダッシュパネル１とインナ２１とを接合する。インナ２１をダッシュパネル１に接合した後、補強部材５をダッシュパネル１とインナ２１とに接合する。左右のサイドメンバ３の後端３ａとクロスメンバ４の両端４ａとを接合する。接合されたクロスメンバ４とサイドメンバ３は、補強部材５を接合した後のダッシュパネル１に接合する。
【００１８】
また、アウタ２２は、補強部材５を接合した後のインナ２１及びダッシュパネル１に接合される。この場合、アウタ２２の取付けは、クロスメンバ４とサイドメンバ３とをダッシュパネル１に接合する前でも後でも良い。補強部材５が取付けられている範囲は、スポット溶接のトーチを差し込むことができない。したがって、この部分については、アウタ２２のフランジ２４の先端２６とインナ２１のフランジ２３の先端２５をＭＩＧ溶接または、ＴＩＧ溶接でヘリ継手状に接合する。なお、上述の接合順序は、一例であるので、この他の組立手順で行なっても良い。また、フロントピラー２のフランジ２３，２４でダッシュパネル１のフランジ部１２を挟むように、インナ２１のフランジ２３をダッシュパネル１のフランジ部１２の内側から合わせ、アウタ２２のフランジ２４をダッシュパネル１のフランジ部１２の外側から合わせても良い。
【００１９】
以上のように設けられた自動車の車室前部の結合構造は、タイヤハウス１１において前輪に向かってフランジ部１２、及びフランジ２３，２４が突出しない。したがって、前輪とフランジ部１２、及びフランジ２３，２４とが接触して、前輪が傷つく惧れがない。そこで、フロントピラー２を前輪の揺動範囲Ｓに近づけて配置することができる。
【００２０】
また、フロントピラー２側のフランジ２３，２４の先端２５，２６が、ダッシュパネル１側のフランジ部１２の基端１３よりも後方に位置するようにフロントピラー２とダッシュパネル１が接合されている。すなわち、少なくともフロントピラー２側のフランジ２３，２４の長さ分だけ、インナ２１の角部２１ｃからダッシュパネル１のフランジ部１２の基部１３までの距離を大きく設けることができる。言い換えると、補強部材５の後壁５ａからタイヤハウス１１までの距離を大きくすることができ、補強部材５とタイヤハウス１１との間に造られる閉断面を大きくすることができる。この結果、補強部材５の強度を高めることができる。そして、衝突時の荷重をサイドメンバ３から補強部材５を介してフロントピラー２に伝達することができる。
【００２１】
また、フロントピラー２を前輪に近づけることができるので、フロントピラー２の位置を後方に移動させることなく、フロントピラー２の断面を大きくすることができる。したがって、フロントピラー２の剛性が向上する。
【００２２】
そして、上述のように各部材を組立てることで、自動車の車室前部の結合構造において、各部材にスポット溶接用の窓を設けることなく、各部材同士の接合強度に十分な点数のスポット溶接を実施することができる。
【００２３】
【発明の効果】
本発明の自動車の車室前部の結合構造によれば、前輪に向かってフロントピラーとダッシュパネルとを接合するフランジが突出しない。したがって、フロントピラー及びダッシュパネルを前輪に近づけて配置することができる。この結果、フロントピラーの閉断面、及び補強部材とダッシュパネルとで囲まれる閉断面を大きくすることができるので、剛性が向上するとともに、衝突時にサイドメンバに加わる荷重をより効率良くフロントピラーに伝達できる。また、ダッシュパネルとフロントピラーを前方に配置できるので、車室内を広くすることができる。
【００２４】
以上のように、本発明によれば、車室空間を確保しつつ、充分な強度を有した自動車の車室前部の結合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明に係る一実施形態の自動車の車室前部の結合構造を車室内側から見て示す斜視図。
【図２】 図１中のＦ２‐Ｆ２に沿って補強部材を通る位置で示す自動車の車室前部の結合構造の断面図。
【図３】 図１中にＦ３で示すフロントピラーとダッシュパネルと補強部材との接合部を拡大して示す斜視図。
【符号の説明】
１…ダッシュパネル、２…フロントピラー、３…サイドメンバ、３ａ…後端、４…クロスメンバ、４ａ…両端、５…補強部材、１２…フランジ、１３…基端、１４…ダッシュパネルのサイドメンバが取付けられた車室内側の部分、２１…インナ、２２…アウタ、２３，２４…（接合）フランジ。

Claims (3)

1. 自動車の幅方向に横切って車室の前部に配置されるダッシュパネルと、
   前記ダッシュパネルの両端に互いに対向するフランジを結合して配設され、前記フランジが前記ダッシュパネルのフランジ部と接合されるフロントピラーと、
   前記フロントピラーよりも自動車の幅方向に内側で、前記ダッシュパネルの車室外側に接合され、前記ダッシュパネルから前方に延びるサイドメンバと、
   前記自動車の幅方向に配置されて左右の前記サイドメンバの後端部を連結し、前記ダッシュパネルとの間に閉断面を形成するクロスメンバと、
   前記ダッシュパネルの前記サイドメンバが取付けられた部分の車室内側と前記フロントピラーとを連結する補強部材と、
   前記ダッシュパネルの左右両側に前記車室の内側に向かって膨らんで形成されたタイヤハウスと、
   を備え、
   前記フロントピラーと前記ダッシュパネルとは、前記フロントピラー側の前記フランジの先端が前記ダッシュパネルに形成された前記タイヤハウスの前記フランジ部基端よりも後方に位置する位置関係で接合されることを特徴とする自動車の車室前部の結合構造。
2. 前記フロントピラーは、車室内側に面したインナと車室外側に面したアウタと有し、前記インナと前記アウタとは、前記フランジが前記フロントピラーの外周面から突出する方向に延びる接合フランジとして互いに接合されることを特徴とする請求項１に記載の自動車の車室前部の結合構造。
3. 前記ダッシュパネルと前記インナとを接合し、
   前記補強部材を前記インナが接合された前記ダッシュパネル及び前記インナに接合し、
   予め前記クロスメンバの両端に接合された前記サイドメンバを前記補強部材が接合された前記ダッシュパネルに接合し、
   前記アウタを前記補強部材が接合された前記インナ及び前記ダッシュパネルに接合することを特徴とする請求項２に記載の自動車の車室前部の結合構造。

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