JP4133989B2 - 無段変速機の制御装置 - Google Patents

Description

本発明は無段変速機の制御装置に関し、特に、ロックアップクラッチを備えたトルクコンバータを備えるものに関する。

ロックアップクラッチを備えたトルクコンバータでは、ロックアップクラッチの前後差圧（ロックアップ差圧）を制御することで、ロックアップクラッチの締結・開放を行っており、コンバータ状態からロックアップ状態へ移行する際には、所定の初期差圧から徐々に差圧を上昇させてコンバータ状態からスリップ状態へ移行した後にロックアップクラッチの締結を行っている。

このようなロックアップクラッチの制御では、低車速からロックアップを行って燃費を向上させるものが知られている（特許文献１）。
特開２００４−１２４９６９号公報

しかしながら、上記従来例では、有段式自動変速機のロックアップ制御に関するものであり、車速ＶＳＰとスロットル開度ＴＶＯとの関係に基づきロックアップ特性を定めたマップを設け、このマップにこもり音の発生領域を示すことで、ロックアップ領域中のスリップ制御を実施する条件を定め、こもり音を防止することができる。

しかしながら、無段変速機では、図６に示すように車速ＶＳＰとトルクコンバータのタービン回転速度Ｎｐｒｉとの関係がスロットル開度ＴＶＯによって変化するため、従来技術のように車速ＶＳＰとスロットル開度ＴＶＯとマップに基づきこもり音領域を考慮してロックアップ特性を設定し、スリップ領域を定めることが困難であるという問題があった。

そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、無段変速機に用いられるロックアップ領域でこもり音を防止するためのスリップ制御を行うためのマップを設け、こもり音の発生を防ぐことを目的とする。

本発明は、エンジンと無段変速機の間に介装されるとともにロックアップクラッチを備えたトルクコンバータと、車両の運転状態に基づいて、前記ロックアップクラッチに供給する差圧指令値を演算して、前記トルクコンバータのコンバータ状態とロックアップ状態とをスリップ状態を介して切り換えるロックアップ制御手段と、を備えた無段変速機の制御装置において、車速を検出する車速検出手段と、スロットル開度を検出するスロットル開度検出手段と、前記無段変速機の入力軸回転速度を検出する入力軸回転速度検出手段と、前記エンジンのエンジントルクを検出するトルク検出手段と、を備え、前記ロックアップ制御手段は、検出した車速とスロットル開度とからロックアップ領域またはコンバータ領域を判別するロックアップ領域判別手段と、検出した無段変速機の入力軸回転速度とエンジントルクとから前記トルクコンバータのスリップ領域またはロックアップ領域を判別する第一のスリップ領域判別手段と、第１の車速に基づいてスリップ領域と判別し、第１の車速よりも高速な第２の車速に基づいてロックアップ領域と判別する第二のスリップ領域判別手段と、備え、前記第二のスリップ領域判別手段がスリップ領域と判別し、前記ロックアップ領域判別手段がコンバータ領域と判別した場合には、前記トルクコンバータを、コンバータ領域として制御し、前記第二のスリップ領域判別手段がスリップ領域と判別し、前記ロックアップ領域判別手段がロックアップ領域と判別した場合には、前記トルクコンバータを、前記第一のスリップ判別手段の判別領域に基づき制御する。

本発明によれば、無段変速機のロックアップ領域判別を、ロックアップ領域判別マップと、無段変速機の入力軸回転速度とエンジントルクとから前記トルクコンバータのスリップ領域を判別する第一のスリップ領域判別手段と、車速に基づいてスリップ領域またはロックアップ領域を判別する第二のスリップ領域判別手段とを用いて行うため、容易に領域判別を行うことができる。また、スリップ状態に制御することで、こもり音を防止することができる。

以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。

図１は、本発明のシステム構成を示す概略図である。

この図１において、エンジン３にはトルクコンバータ５を備えた無段変速機４が連結され、トルクコンバータ５にはロックアップクラッチ６が配設されて運転状態に応じてロックアップ（締結状態）またはアンロックアップ（開放状態）を行うものである。

トルクコンバータ５は、トルクコンバータ出力要素（タービン）と共に回転するロックアップクラッチ６を内蔵し、このロックアップクラッチ６は、トルクコンバータ入力要素（インペラ）に締結されるとき、トルクコンバータ５を入出力要素間が直結されたロックアップ状態にするものとする。

ロックアップクラッチ６は、その両側（前後）におけるトルクコンバータアプライ圧Ｐａとトルクコンバータレリーズ圧Ｐｒとの差圧Ｐａ−Ｐｒに応動し、レリーズ圧Ｐｒがアプライ圧Ｐａよりも高いとロックアップクラッチ６は開放されてトルクコンバータ入出力要素間を直結せず、レリーズ圧Ｐｒがアプライ圧Ｐａよりも低くなる時にロックアップクラッチ６は締結されてトルクコンバータ入出力要素間を直結するものである。

そして、上記後者の締結に際して、ロックアップクラッチ６の締結力、つまりロックアップ容量は、上記の差圧Ｐａ−Ｐｒにより決定し、この差圧が大きい程ロックアップクラッチ６の締結力が増大してロックアップ容量を増大する。

差圧Ｐａ−Ｐｒは、周知のロックアップコントロールバルブ７により制御し、このロックアップコントロールバルブ７には、アプライ圧Ｐａおよびレリーズ圧Ｐｒを相互に対向するように作用させ、更にアプライ圧Ｐａと同方向にバネの付勢力を、またレリーズ圧Ｐｒと同方向にばね力を作用させ、同時にレリーズ圧Ｐｒと同方向に信号圧Ｐｓｏｌをそれぞれ作用させる。

ロックアップコントロールバルブ７は、これら油圧とバネの付勢力が釣り合うよう差圧Ｐａ−Ｐｒを決定する。

ここでロックアップコントロールバルブ７にかかる信号圧Ｐｓｏｌは、ポンプ圧Ｐｐを元圧としてロックアップソレノイド８がデューティ信号Ｄｕｔｙに応じて作り出すものである。

マイクロコンピュータなどで構成されるＡＴコントローラ１は、車両の運転状態に応じてデューティ信号Ｄｕｔｙを決定し、ロックアップソレノイド８を介して差圧Ｐａ−Ｐｒを制御する。

ＡＴコントローラ１には、車両の走行状態やドライバーの運転状況を示す信号、例えば、無段変速機４に設けた入力軸回転センサ１６からの入力軸回転速度Ｎｐｒｉ、トルクコンバータ５への入力回転速度（＝エンジン回転速度Ｎｅ）を検出するインペラ回転センサ１１からのポンプインペラ回転速度Ｎｐ、アクセル操作量センサ１４からのアクセル操作量ＡＰＯ（またはスロットル開度ＴＶＯ）、車速センサ１３からの車速ＶＳＰが入力される。

また、ＡＴコントローラ１はエンジンコントローラ２からエンジン回転速度Ｎｅ、エンジントルクＴｅを受信する。

そして、ＡＴコントローラ１は、これらの検出信号によりロックアップクラッチ６の締結や解放あるいはスリップなどの制御を行う。

ＡＴコントローラ１は、車両の運転状態に応じてスムーズロックアップを行うもので、このスムーズロックアップは、例えば、アクセル操作量ＡＰＯの変化が少なく、かつ車速ＶＳＰが緩やかに上昇する際に、コンバータ状態からスリップ状態を経てロックアップクラッチ６の締結を行うものである。

図２から図４は、本発明のロックアップ領域判別、即ち、現時点の運転条件からトルクコンバータ５のコンバータ（以下、トルコンという。）状態であるべきか、ロックアップ状態であるべきか、さらにはロックアップ状態のスリップ制御を行う状態であるべきかの判別を行うものである。

本発明のロックアップ領域判別には、図２に示すようなロックアップ領域判別マップと、図３に示すようなスリップ領域判別マップを用いる。

図２に示すロックアップ領域判別マップでは、スロットル開度ＴＶＯと車速ＶＳＰとを入力し、ロックアップ特性線との関係からトルコン状態かロックアップ状態かを判別する。なお、図２中に、スリップ許可／禁止線が記載されるが、これは、こもり音発生領域に応じて設定される。つまり、こもり音対策としてトルクコンバータ５をスリップ状態とする境界を示す。具体的には、スリップ許可線は、こもり音発生領域（＝発生車速）の上限に応じて設定されており、スリップ禁止線は、許可線に対してヒステリシス分を見込んで高速側に設定され、制御上のハンチングを防止する。

図３に示すスリップ領域判別マップでは、入力軸回転速度ＮｐｒｉとエンジントルクＴｅとを入力し、スリップ特性線との関係からスリップ領域かロックアップ領域かを判別する。ここでスリップ線は、ロックアップ特性線と同様に、こもり音発生領域に応じて設定される。具体的には、実験等を実施してこもり音発生領域を明らかにし、マップを作成しておく。

そして、図２と図３でそれぞれ判別された領域判別を用いて、図４の領域判別表を用いて最終的なロックアップ領域を判別する。なお、この図４は、スリップ許可状態での領域判別表を代表してある。

図２から設定されたロックアップ特性線による領域判別の結果がロックアップ領域で、図３から設定されたスリップ線による領域判別の結果がスリップ領域であれば、最終判別はスリップ領域と判別し、スリップ線による領域判別の結果がロックアップ領域であれば、最終判別はロックアップ領域と判別する。

また、図２から設定されたロックアップ特性線による領域判別の結果がトルコン状態で、図３から設定されたスリップ線による領域判別の結果がスリップ領域であれば、最終判別はトルコン領域と判別し、スリップ線による領域判別の結果がロックアップ領域であれば、最終判別はトルコン領域と判別する。

次に、図５は、ＡＴコントローラ１で行われる発進直後のスムースロックアップ制御の領域判別のフローチャートである。

Ｓ１では、実際の車速ＶＳＰ、スロットル開度ＴＶＯ、エンジントルクＴｅ、入力軸回転速度Ｎｐｒｉを読み込んで、Ｓ２において、読み込んだ車速ＶＳＰとスロットル開度ＴＶＯとを用いて図２のようなマップからトルコン領域にあるかロックアップ領域にあるかを判別する。ロックアップ領域にある場合にＳ３に進み、トルコン領域にある場合にＳ４に進み、Ｓ４でロックアップクラッチ６を開放してトルコン状態に制御し、エンジンストール等を防止する。

Ｓ３では、スリップ領域かどうか、つまりこもり音発生領域かどうかを図３に示すようなマップを用いて判別する。スリップ領域であれば、トルクコンバータアプライ圧Ｐａとトルクコンバータレリーズ圧Ｐｒを調整して、ロックアップクラッチ６の入出力要素間に所定のスリップ、つまり回転速度差が生じるように制御する。このようにスリップ状態に制御することで、こもり音を防止することができる。また、スリップを禁止するロックアップ領域である場合には、通常のロックアップ制御を実施する。

したがって、本発明では、無段変速機のロックアップ領域判別を車速ＶＳＰとスロットル開度ＴＶＯとで示されるロックアップ領域マップと、エンジントルクＴｅと入力軸回転速度Ｎｐｒｉとで示されるスリップ領域マップのそれぞれで判別した領域判別を用いて最終領域を判別するため、ロックアップ領域の判別を容易に行うことができる。

以上のように、本発明によれば、容易に無段変速機のロックアップ領域を判別でき、こもり音を確実に防止できるため、無段変速機のロックアップ制御に適用することができる。

本発明の一実施形態を示す駆動系のブロック図である。 ロックアップ領域判別マップの一例である。。 スリップ領域判別マップの一例である。 最終領域判別条件の一例を示す表である。 ＡＴコントローラ１で行われる領域判別を示すフローチャートである。 無段変速機の変速線の一例を示す図である。

符号の説明

１ ＡＴコントローラ
４ 無段変速機
５ トルクコンバータ
６ ロックアップクラッチ

Claims (3)

1. エンジンと無段変速機の間に介装されるとともにロックアップクラッチを備えたトルクコンバータと、
   車両の運転状態に基づいて、前記ロックアップクラッチに供給する差圧指令値を演算して、前記トルクコンバータのコンバータ状態とロックアップ状態とをスリップ状態を介して切り換えるロックアップ制御手段と、を備えた無段変速機の制御装置において、
   車速を検出する車速検出手段と、
   スロットル開度を検出するスロットル開度検出手段と、
   前記無段変速機の入力軸回転速度を検出する入力軸回転速度検出手段と、
   前記エンジンのエンジントルクを検出するトルク検出手段と、を備え、
   前記ロックアップ制御手段は、
   検出した車速とスロットル開度とからロックアップ領域またはコンバータ領域を判別するロックアップ領域判別手段と、
   検出した無段変速機の入力軸回転速度とエンジントルクとから前記トルクコンバータのスリップ領域またはロックアップ領域を判別する第一のスリップ領域判別手段と、
   第１の車速に基づいてスリップ領域と判別し、第１の車速よりも高速な第２の車速に基づいてロックアップ領域と判別する第二のスリップ領域判別手段と、
   を備え、
   前記第二のスリップ領域判別手段がスリップ領域と判別し、前記ロックアップ領域判別手段がコンバータ領域と判別した場合には、前記トルクコンバータを、コンバータ領域として制御し、
   前記第二のスリップ領域判別手段がスリップ領域と判別し、前記ロックアップ領域判別手段がロックアップ領域と判別した場合には、前記トルクコンバータを、前記第一のスリップ判別手段の判別領域に基づき制御することを特徴とする無段変速機の制御装置。
2. 前記第一及び第二のスリップ領域判別手段は、ロックアップ領域またはロックアップ領域のスリップ領域のいずれかを判別することを特徴とする請求項１に記載の無段変速機の制御装置。
3. 前記第一及び第二のスリップ領域判別手段は、こもり音発生領域を考慮して設定されることを特徴とする請求項１に記載の無段変速機の制御装置。

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