JP4127938B2 - コネクタ - Google Patents
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- Details Of Connecting Devices For Male And Female Coupling (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロックアームを備えたコネクタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
実開平1−112577号公報には、コネクタハウジングの外面にロックアームを一体形成してなるコネクタについて開示されている。ロックアームは、コネクタハウジングの外面から立ち上がる基端部と、この基端部からコネクタハウジングの外面に概ね沿うように片持ち状に延出するアーム部と、このアーム部の外面(コネクタハウジングとは反対側の面)に形成したロック突起とからなる。相手側コネクタとの嵌合の過程では、相手側コネクタのフード部にロック突起が干渉することによってロックアームがコネクタハウジングの外面側へ弾性撓みし、双方のコネクタが正規嵌合状態に至ると、ロックアームが弾性復帰してロック突起がフード部のロック孔に係止し、もって、両コネクタが嵌合状態にロックされる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般にコネクタは、電線の端末に固着された端子金具をコネクタハウジング内に挿入させた状態のものを多数組み合わせてワイヤーハーネスとして製品化され、これを複数組積み重ねた状態で箱詰めにされて運搬される、という事情がある。
ところがロックアームを有するコネクタでは、ロックアームとコネクタハウジングの外面との間にロックアームを撓ませるための撓み空間が確保されており、しかも、ロックアームは片持ち状に延出していることから、このロックアームの先端側から撓み空間(コネクタハウジングの外面とロックアームとの隙間)内へ異物が進入し得る形態となっている。
【0004】
そのため、ワイヤーハーネスの使用現場において、ワイヤーハーネスを箱から1つずつ取り出すときに、他のワイヤーハーネスの電線等がコネクタの撓み空間に入り込んでロックアームに引っ掛かった状態になっていることがある。このような状態でワイヤーハーネスを無理に取り出そうとすると、電線に引っ掛かっているコネクタのロックアームには、その基端部を支点としてコネクタハウジングの外面から離間する方向へ強制的に変位させようとする力が作用することになる。
【0005】
このような場合、従来のコネクタでは、ロックアームの変位量がさほど大きくないうちに、ロックアームがその基端部において折損してしまう、という不具合があった。
本願発明は上記事情に鑑みて創案され、コネクタハウジングから離間する方向へ変位させられたロックアームの折損が生じ難いコネクタを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、コネクタハウジングと、このコネクタハウジングの外面に一体形成したロックアームとを備え、このロックアームは、前記コネクタハウジングの外面から立ち上がる基端部と、基端部から前記コネクタハウジングの外面と概ね平行に片持ち状に延出するアーム部とからなり、前記コネクタハウジングの外面と前記アーム部の内面との間には、相手側コネクタとの嵌合時に前記アーム部を弾性撓みさせるための撓み空間が確保されているものにおいて、前記基端部の前記撓み空間に臨む面には、その基端部の立ち上がり方向に沿った溝が形成され、その溝は、前記基端部の外面とほぼ平行な平坦状をなす溝底面の左右両側に四半円弧面を滑らかに連ねた形状とされ、前記基端部に形成された前記四半円弧面は、前記基端部の前記撓み空間に臨む面に対してほぼ直角に連なった形態とされ、前記アーム部の前記撓み空間に臨む面には、そのアーム部の延出方向に沿った溝が形成され、その溝は、前記アーム部の外面とほぼ平行な平坦状をなす天井面の左右両側に四半円弧面を滑らかに連ねた形状とされ、前記アーム部に形成された前記四半円弧面は、前記アーム部の前記撓み空間に臨む面に対してほぼ直角に連なった形態とされている構成とした。
【0007】
【発明の作用及び効果】
[請求項1の発明]
ロックアームがコネクタハウジングの外面から離間する方向へ傾動変位したときにその基端部で折損するのは、応力が基端部に集中し、基端部の歪みが他の部分に比べて大きくなることが原因であると考えられる。
そこで、本発明では、基端部とアーム部に溝を形成することで、ロックアームが傾動変位したときの応力をロックアームの全体に分散させて、基端部における歪みを小さくし、これにより、基端部における折損防止を図った。また、溝は、撓み空間に臨む側の面、即ちロックアームが傾動変位したときに引張り荷重を受ける側の面に形成されていることから、溝の両側における亀裂の発生が懸念されるが、本発明では、溝の断面形状を、曲線を含んで滑らかに連続する形状としたので、溝における応力集中が緩和され、溝の両側における亀裂の発生を防止することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
[実施形態1]
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図6を参照して説明する。
本実施形態のコネクタAは、PBT製のコネクタハウジング10の外面にロックアーム11を一体形成したものである。ロックアーム11は、コネクタハウジング10の外面10Aにおける前端から立ち上がる基端部12と、この基端部12の立ち上がり端からコネクタハウジング10の外面10Aに概ね沿うように後方へ片持ち状に延出するアーム部13と、このアーム部13の外面13A(コネクタハウジング10とは反対側の面であって、図1及び図2における上側の面)に形成したロック突起14とからなり、アーム部13の内面13B(本発明の構成要件である撓み空間に臨む面)とコネクタハウジング10の外面との間には、アーム部13を弾性撓みさせるための撓み空間15が確保されている。
【0009】
相手側コネクタ(図示せず)との嵌合の過程では、相手側コネクタのフード部の内周面にロック突起14が干渉することにより、ロックアーム11がその基端部12を支点としてアーム部13をコネクタハウジング10の外面に接近させるように弾性撓みする。そして、双方のコネクタが正規嵌合状態に至ると、ロックアーム11が弾性復帰してロック突起14がフード部のロック孔(図示せず)に係止し、もって、両コネクタが嵌合状態にロックされる。
【0010】
かかる本実施形態のコネクタAは、そのコネクタハウジング10に対し、ワイヤーハーネスを構成する電線(図示せず)の端末に固着された端子金具(図示せず)が後方から挿入され、ワイヤーハーネスとして組み立てた後、複数組のワイヤーハーネスが箱詰めにされて運搬される。そして、ワイヤーハーネスの組付け現場では、箱の中からワイヤーハーネスとともにコネクタAが取り出されるが、このとき、他のワイヤーハーネスの電線がコネクタハウジング10とロックアーム11との間の撓み空間15内に進入してアーム部13に引っ掛かる虞がある。この状態でワイヤーハーネスを無理に取り出そうとすると、電線に引っ掛かっているロックアーム11には、その基端部12を支点としてコネクタハウジング10の外面10Aから離間する方向へ強制的に変位させようとする力が作用することになる。この場合、従来のコネクタでは、ロックアームの変位量がさほど大きくないうちに、ロックアームがその基端部において折損してしまう虞があったが、本実施形態では、ロックアーム11の折損が生じ難い構造とされている。以下、その構成について詳しく説明する。
【0011】
ロックアーム11の基端部12の前面12Fは、コネクタハウジング10の前面と面一状に連続した平坦面となっている。一方、基端部12の撓み空間15に臨む後面、即ちアーム部13の内面13B及びコネクタハウジング10の外面10Aに連なる面は、1つの一定曲率の円弧状曲面12Rとされている。この円弧状曲面12Rは、半円弧形をなし、アーム部13の内面13Bと接線状に連なっている。
【0012】
尚、基端部12の前面12Fから円弧状曲面12R(後面)までの前後方向の最小厚さ寸法Tkは、アーム部13におけるロック突起14よりも前方領域(基端部12側に近い領域)の上下方向の厚さ寸法Taとほぼ同じ寸法とされている。
かかる基端部12の撓み空間15に臨む後面12Rには、基端部12のコネクタハウジング10からの立ち上がり方向に沿った上下方向の溝16が、基端部12の幅方向中央に位置して形成されている。尚、この溝16の形成されている後面12Rは、ロックアーム11がコネクタハウジング10から離間する上方へ傾動変位したときに引張り加重を受ける側の面となる。
【0013】
また、アーム部13の撓み空間15に臨む内面13Bには、そのアーム部13の延出方向(前後方向)に沿うとともに基端部12の溝16に連なる溝18が、アーム部13の幅方向中央に位置して形成されている。
次に、これらの溝16,18の形状について説明する。
基端部12の後面12Rは弧状をなしているのに対し、この溝16の溝底面16Sは基端部12の前面12Fとほぼ平行な平坦状をなし、横断面上では直線状となっている。したがって、溝16の深さは、基端部12の立ち上がり方向において変化していることになる。この溝底面16Sの左右両側では、溝16の内側面を構成する四半円弧面16R(本発明の構成要件である溝の断面形状を構成する曲線)が接線状に滑らかに連なっている。そして、半円弧状の後面12Rのうち最も前面12Fに近い部分ではこの四半円弧面16Rが後面12Rとほぼ直角に連なり、それ以外の領域では、四半円弧面16Rに対して溝底面16Sとほぼ直角な平坦状連続面16Fが接線状に滑らかに連なり、その平坦状連続面16Fが後面12Rに対して直角に連なっている。
【0014】
アーム部13の溝18は、その天井面18Sがアーム部13の外面13Aとほぼ平行な平坦状をなしている。この天井面18Sの両側には四半円弧面18R(本発明の構成要件である溝の断面形状を構成する曲線)が接線状に滑らかに連なっており、この四半円弧面18Rはアーム部13の内面13Bに対してほぼ直角に連なっている。
これらの溝16,18の四半円弧面16R,18Rの半径は互いに同じ寸法である。したがって、溝16の最も浅い部分の寸法と溝18の深さは同じ寸法Sdであり、この寸法Sdは、Tk,Taのほぼ1/2の寸法とされている。また、両溝16,18の開口幅寸法と幅方向の位置も同じであり、溝16の溝底面16Sと溝18の天井面18Sとが滑らかに連続しているとともに、四半円弧面16R,18R同士も滑らかに連続している。
【0015】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ロックアーム11に対し、その基端部12を支点としてアーム部13をコネクタハウジング10から上方へ離間するように傾動させようとする力が作用した場合に、ロックアーム11がその基端部12において折損する原因としては、基端部12に応力が集中し、基端部12の歪みが他の部分に比べて大きくなることであると考えられる。
その点、本実施形態では、基端部12とアーム部13に溝16,18を形成したので、ロックアーム11が傾動変位したときの応力がロックアーム11のほぼ全体に分散し、基端部12における歪みが小さくなり、これによって、基端部12における折損防止が図られている。
【0016】
また、溝16,18は、撓み空間15に臨む側の面、即ちロックアーム11が傾動変位したときに引張り荷重を受ける側の面に形成されていることから、基端部12においてはその溝16の両側のリブ状部における亀裂の発生が懸念されるが、本実施形態では、溝16,18の内側の面が四半円弧面16R,18Rを含んで滑らかに連続する形状とされているので、この溝16,18の形状により応力の分散度が高められている。
【0017】
これにより、例えば45°程度の傾動角度では亀裂の発生を回避することができる。ロックアーム11が45°程度の角度まで傾動すると、ロックアーム11に引っ掛かっていた電線はアーム部13の内面13B上を滑ってロックアーム11から外れ易くなるため、45°程度の角度まで亀裂なしに持ちこたえることができれば、実用上は問題がないと言える。
また、基端部12におけるアーム部13の内面13Bに連なる後面は、一定曲率の円弧状曲面12Rとされているが、この形状によっても基端部12の後面における応力集中が回避されている。
【0018】
このように、本実施形態では、ロックアーム11における応力の分散度が高いので、基端部12の応力集中が回避されており、これにより、基端部12の折損を確実に防止することができる。
尚、本実施形態のコネクタAに対し、ロックアーム11をほぼ180°の大きい角度で反転させるように変位させる試験を行ったところ、基端部12の溝16の両側のリブ状部に亀裂が入って裂けたものの、基端部12自体が破断してコネクタハウジング10から分離することはなかった。また、亀裂がはいった状態でも、ロックアーム11を元の姿勢に戻してやったところ、ロックアーム11はその元姿勢を保ち続けた。そして、相手側コネクタのロック突起に係止してロックする機能を発揮することができた。
【0019】
尚、図6には、PBTからなる本実施形態のコネクタAと、図5に示す同じくPBTからなる従来コネクタBとに対し、基端部12,22を支点とするアーム部13,23の傾動角度と、ロックアーム11,21(基端部12,22)における最大歪みとの相関関係を調べるために行った試験結果をあらわすグラフが示されている。従来コネクタBは、基端部22の厚さとアーム部23の厚さとがほぼ同じ寸法とされているとともに、基端部22とアーム部23には溝が形成されていない形態である。このグラフから、同一の傾動角度の場合に、本実施形態のコネクタAの最大歪みの値は、従来コネクタBの最大歪みよりも小さいことが読み取れる。このように、試験の結果、本実施形態のコネクタAでは、従来コネクタBに比べて、ロックアーム11全体における応力の分散度が高いということが明らかとなった。
【0020】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では基端部の溝の最も浅い部分の深さ及びアーム部の溝の深さを基端部及びアーム部の厚さのほぼ1/2としたが、溝の深さと基端部及びアーム部の厚さの関係は任意に設定・変更することができる。
【0021】
(2)上記実施形態では基端部の溝の最も浅い部分の深さとアーム部の溝の深さとを同じ寸法としたが、本発明によれば、双方の溝の深さを異ならせることもできる。
(3)上記実施形態では溝の断面形状を構成する曲線が一定曲率(一定半径)の四半円弧状としたが、本発明によれば、曲率が変化する曲線によって断面形状を構成してもよい。
(4)上記実施形態では溝の断面形状に直線を含むようにしたが、本発明によれば、曲線のみで溝の断面形状を構成してもよい。この場合の曲線は、曲率が一定のものでもよく、曲率が変化するものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1の斜視図
【図2】縦断面図
【図3】図2のX−X線断面図
【図4】ロックアームを破断した状態の背面図
【図5】従来のコネクタの断面図
【図6】基端部を支点とするアーム部の傾動角度と、ロックアームにおける最大歪みとの関係を示すグラフ
【符号の説明】
10…コネクタハウジング
10A…コネクタハウジングの外面
11…ロックアーム
12…基端部
12R…基端部の後面(撓み空間に臨む面)
13…アーム部
13B…アーム部の下面(撓み空間に臨む面)
15…撓み空間
16…溝
16R…溝の四半円弧面(溝の断面形状を構成する曲線)
18…溝
18R…溝の四半円弧面(溝の断面形状を構成する曲線)
Claims (1)
- コネクタハウジングと、このコネクタハウジングの外面に一体形成したロックアームとを備え、このロックアームは、前記コネクタハウジングの外面から立ち上がる基端部と、基端部から前記コネクタハウジングの外面と概ね平行に片持ち状に延出するアーム部とからなり、前記コネクタハウジングの外面と前記アーム部の内面との間には、相手側コネクタとの嵌合時に前記アーム部を弾性撓みさせるための撓み空間が確保されているものにおいて、
前記基端部の前記撓み空間に臨む面には、その基端部の立ち上がり方向に沿った溝が形成され、その溝は、前記基端部の外面とほぼ平行な平坦状をなす溝底面の左右両側に四半円弧面を滑らかに連ねた形状とされ、
前記基端部に形成された前記四半円弧面は、前記基端部の前記撓み空間に臨む面に対してほぼ直角に連なった形態とされ、
前記アーム部の前記撓み空間に臨む面には、そのアーム部の延出方向に沿った溝が形成され、その溝は、前記アーム部の外面とほぼ平行な平坦状をなす天井面の左右両側に四半円弧面を滑らかに連ねた形状とされ、
前記アーム部に形成された前記四半円弧面は、前記アーム部の前記撓み空間に臨む面に対してほぼ直角に連なった形態とされていることを特徴とするコネクタ。
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