JP4094241B2 - 麺類の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、麺生地に油中水型乳化油脂組成物を加えて得られるしなやかさ、ほぐれ性、再加熱後の腰の強さに優れた麺類の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
うどん、焼きそば、中華そば、和そばなどに代表される麺類は小麦粉、かん水、水、食塩などを練って麺帯とし裁断して麺線とした後、蒸す、ゆでるなどの加熱処理により得られる。通常この加熱処理された麺類がすぐに調理され喫食されることはあまりなく、冷蔵あるいは冷凍もしくはLL麺では常温状態で保存、流通される。従って、加熱処理から最終的調理により喫食するまでかなりの時間が経過する。しかし、この間に麺のしなやかさやほぐれ性が悪化したり、再加熱後に麺の腰の強さが低下したり、澱粉質が老化し麺が粉っぽい食感、風味に変質する、という問題が生じることがわかった。
【0003】
特開昭55−165771号公報には麺の相互の付着を防止するため、食用油脂の乳化液を麺類の表面に塗布する方法が開示されているが操作が煩雑である。また、特公平7−32671号公報には特定の水中油型乳化油脂を加えた麺類が開示されているが、加熱処理から時間が経過した場合に、麺の腰の強さの低下などの麺の品質低下を防止できるものではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は1回目つまり、製造時のゆで、蒸し等による加熱後長時間経過してもしなやかさ、ほぐれ性が保たれ、さらに、再加熱後においても麺の腰の強さが保たれ、老化が抑制された麺類の製造法及び麺類を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、油中水型乳化油脂組成物を麺生地に添加することにより上記課題を解決できることを見出し、次の発明を完成するに至った。
(1)乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン飽和脂肪酸モノエステルを使用した油中水型乳化油脂組成物を麺生地に添加することを特徴とする麺類の製造法(請求項1)。
(2)油中水型乳化油脂組成物において、油相と水相の合計量中油相が30〜70重量%、水相が70〜30重量%からなることを特徴とする請求項1記載の麺類の製造法(請求項2)。
(3)乳化剤として、さらにグリセリン不飽和脂肪酸モノエステル、蔗糖不飽和脂肪酸ポリエステルを使用した油中水型乳化油脂組成物を用いることを特徴とする請求項1〜2記載の麺類の製造法(請求項3)。
(4)麺生地100重量部に対して油中水型乳化油脂組成物の添加量が1〜30重量部である請求項1〜3記載の麺類の製造法(請求項4)。
(5)請求項1〜4記載の麺類の製造法によって得られる麺類(請求項5)。
(6)乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン飽和脂肪酸モノエステルを使用した油中水型乳化油脂組成物を有する麺類(請求項6)。
【0006】
本発明の麺類には上記の油中水型乳化油脂組成物が用いられるが、この油中水型乳化油脂組成物は適度の安定性を有しているため、1回目の加熱後、長時間経過してもしなやかさ、ほぐれ性が保たれ、さらに、再加熱後においても麺の腰の強さが保たれ、また老化が抑制されるという効果が付与される。この詳細な理由は明らかではないが、油中水型乳化油脂の油相がほぐれ性に寄与しており、用いる油中水型乳化油脂組成物が1回目の加熱時には安定で解乳化せず、2回目以降の加熱で解乳化するため麺中に水分が保たれるので、保存中に水分が蒸発しにくく、しなやかさが保たれるものと推定される。また、2回目以降の加熱で油中水型乳化油脂が解乳化するときに遊離する水分が麺類の腰の強さを付与するものと考えられる。また老化抑制にはグリセリン脂肪酸モノエステルが主として寄与していると推定される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
【0008】
本発明に使用する油中水型乳化油脂組成物に用いられる油脂は、食用に適するものであれば特に限定されないが、例えば、コーン油、あまに油、桐油、サフラワー油、かや油、胡桃油、芥子油、向日葵油、綿実油、菜種油、大豆油、辛子油、カポック油、米糠油、胡麻油、玉蜀黍油、落花生油、オリーブ油、椿油、茶油、ひまし油、椰子油、パーム油、パーム核油、カカオ脂、シア脂、ボルネオ脂等の植物油脂や、魚油、鯨油、牛脂、豚脂、乳脂、羊脂等の動物油脂が挙げられ、また、それらの硬化油、エステル交換油、分別油等から目的に応じて適宜選択し、これを単独で、あるいは組み合わせて使用することができる。
【0009】
本発明に使用する油中水型乳化油脂組成物に用いられる乳化剤は、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン飽和脂肪酸モノエステルである。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルについては、ポリグリセリン系の乳化剤であって、主としてヒマシ油を原料とする縮合リシノレイン酸とポリグリセリンとのエステル化により得ることができる。かかるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの使用量は、乳化油脂組成物100重量%中、0.1〜1重量%が好ましく、更に好ましい範囲は0.2〜0.8重量%である。使用量が0.1重量%より少ないと乳化油脂組成物自体の乳化が満足に得られない恐れがある。一方、1重量%より多いと、乳化油脂組成物自体の乳化が強固になりすぎ、解乳化が起こりにくくなるだけでなく、乳化剤特有の悪い風味が麺類に影響する恐れがある。
【0010】
本発明においては上記のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルに加えてグリセリン飽和脂肪酸モノエステルが用いられる。グリセリン飽和脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸は炭素数16〜22の飽和脂肪酸であることが好ましい。かかるグリセリン飽和脂肪酸モノエステルの使用量は、乳化油脂組成物100重量%中、0.02〜0.5重量%が好ましく、更に好ましい範囲は0.05〜0.2重量%である。使用量が0.02重量%より少ないと乳化物の解乳化が満足に得られず、また麺類が粉っぽくなるなど食味、食感が低下する恐れがある。一方、0.5重量%より多いと、乳化油脂組成物自体の乳化安定性が悪化するほか、乳化剤特有の悪い風味が麺類に影響する恐れがある。
【0011】
本発明においては上記のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン飽和脂肪酸モノエステルに加えて、グリセリン不飽和脂肪酸モノエステル、蔗糖不飽和脂肪酸ポリエステルをさらに添加することが好ましい。グリセリン不飽和脂肪酸モノエステル、蔗糖不飽和脂肪酸ポリエステルを構成する不飽和脂肪酸は特に限定されず、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エルカ酸等が挙げられ、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、グリセリン不飽和脂肪酸モノエステルはグリセリン飽和脂肪酸エステルと混合しても用いられる。かかるグリセリン不飽和脂肪酸モノエステルの使用量は、乳化油脂組成物100重量%中、0.1〜0.5重量%が好ましく、更に好ましい範囲は0.1〜0.3重量%である。使用量が0.1重量%より少ないと乳化物の解乳化が満足に得られず、麺類の腰の強さが低下する恐れがある。一方、0.5重量%より多いと、乳化油脂組成物自体の乳化安定性が悪化するほか、乳化剤特有の悪い風味が麺類に影響する恐れがある。蔗糖不飽和脂肪酸ポリエステルの使用量は、乳化油脂組成物100重量%中、0.05〜0.3重量%が好ましく、さらに好ましい範囲は0.05〜0.2重量%である。使用量が0.05重量%より少ないと乳化油脂組成物自体の乳化が不安定になる恐れがある。一方、0.3重量%より多いと、乳化油脂組成物自体の乳化が強固になりすぎ、解乳化が起こらなくなる恐れがあるだけでなく、乳化剤特有の悪い風味が麺類に影響する恐れがある。
【0012】
上記のごとく、本発明の麺類においては、添加された油中水型乳化油脂組成物が1次加熱時には油脂として振る舞うため麺の相互付着を防止するなど製造工程における作業性を損なわず、2次加熱以降にはじめて、解乳化を起こして水相部が遊離するため、保存中に効率良く水分を保つだけでなく、再加熱時に麺類に腰の強さを付与することもできる。さらに、2次加熱されるまで油中水型乳化を保っているので、例えば水相部分にわさび、しょうがなどの揮発しやすい風味素材を閉じこめておき、喫食時に効率よくこれらの風味を麺類に付与することも可能である。
【0013】
さらに本発明の麺類に添加される油中水型乳化油脂組成物には、上記乳化剤の他、さらに解乳化の制御を行うため、あるいは乳化油脂組成物自体の乳化安定性を向上するため、グリセリン有機酸脂肪酸モノエステル、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム(CSL)等の乳化剤を併用することができる。
【0014】
本発明の麺類に添加される油中水型乳化油脂組成物の油相としては30〜70重量%が好ましい。さらに好ましい範囲は40〜60重量%である。油相が30重量%より少ないと、水相が多すぎるため乳化油脂組成物自体の油中水型乳化が不安定となる恐れがある。一方、70重量%より多いと水相が少なくなり、麺への本発明の効果の付与が満足にできなくなる恐れがある。また、水相としては70〜30重量%が好ましい。さらに好ましい範囲は60〜40重量%である。水相が70重量%より多いと、水相が多すぎるため乳化油脂組成物自体の油中水型乳化が不安定となる恐れがある。一方、30重量%より少ないと油相が多くなり、麺類の品質保持が満足にできなくなる恐れがある。
【0015】
なお、本発明に用いる乳化油脂組成物中には、該乳化油脂組成物を安定化させるためのデキストリン類、澱粉類、キサンタンガム、グアーガム等の増粘多糖類、商品性を向上するための糖類、呈味材、調味料、エキス類、香辛料等を使用しても何ら問題ない。また、商品の保水性あるいは保存性を高めたり、風味、食感を改良するため、セルロース及びその誘導体、ポリデキストロース、小麦ふすま、大豆繊維等の食物繊維、エタノール、プロピレングリコール等のアルコール類、しらこ蛋白、ポリリジン等の保存料も使用することもできる。さらに、香料、着色料、酸化防止剤等も適宜使用することができる。
【0016】
本発明の麺類に添加される油中水型乳化油脂組成物は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、油脂中に乳化剤を加え、70℃に加熱、溶解したものを油相とする。一方、水に必要に応じ添加剤を加え、70℃に加熱して殺菌し、水相とする。油相中に水相を徐々に加えて油中水型に乳化した後冷却して油中水型乳化油脂組成物を得る。このようにして得られた油中水型乳化油脂組成物は、麺類の種類あるいは期待効果の度合いによっても異なるが、加熱前の生麺生地100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部の割合で練り込んで使用することができる。
【0017】
本発明の麺類としてはうどん、きしめん、和そば、中華そば、スパゲッティなどをあげることができる。麺の製造に使用する小麦粉としては強力粉、中力粉、薄力粉あるいはこれらの混合物を用いることができる。また、茹で伸び防止を目的に活性グルテン、Ca製剤、卵白などを用いてもよい。さらに、食味、のどごしの改良を目的として増粘剤(糊料)、麺用水中油型乳化油脂などを用いてもよい。
【0018】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において部は重量部である。(実施例1〜3、比較例1)
表1に示す配合により、食用油脂にポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン飽和脂肪酸モノエステル、グリセリン不飽和脂肪酸モノエステル、及び蔗糖不飽和脂肪酸ポリエステルを加えて混合し、70℃まで加温、溶解したものを油相とした。一方、水にデキストリン等を加え、十分混合した後に70℃に加熱して殺菌し、水相とした。油相中に水相を徐々に加えて油中水型に乳化した後冷却して本発明の麺類に添加するための油中水型乳化油脂組成物を得た。
【0019】
【表1】
次に、実施例1〜3、比較例1の油中水型乳化油脂組成物を用いた中華麺の使用例を示す。
【0020】
麺用小麦粉(日清製粉(株)製、ナンバーワン)500部及び小麦たん白(グリコ栄養食品(株)製、A−グルK)5部を混合した。水165部に食塩5部、粉末かん水5.5部、アルコール(70vol%エタノール)10部及び色素(理研ビタミン(株)製、クチナカラー400P)1.25部を溶解し水溶液を調製した。この水溶液を上記小麦粉に添加し、さらに本発明の油中水型乳化油脂組成物15部を添加し横型捏和機にかけて10分間混合した後、15分ねかせた。この後、麺帯ローラーにかけ(合わせ1回、圧延3回)最終麺帯厚さ1.5〜2mmの麺帯を得、切刃#22で切り出して中華麺玉とした。この中華麺玉を沸騰水中で4分間茹で上げた後、ポリエチレン製袋に入れ荒熱をとり、密封し5℃で3日間保存した。保存後の麺のしなやかさ、ほぐれ性を評価した。保存後の麺を用いて焼きそばを調製し、この焼きそばの腰の強さを評価した。評価結果を表2に示す。
【0021】
【表2】
【0022】
【発明の効果】
以上の結果からも明らかなように、本発明による油中水型乳化油脂組成物を練り込む麺類はすぐれたしなやかさ、ほぐれ性、再加熱後の腰の強さを有する。
Claims (6)
- 乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン飽和脂肪酸モノエステルを使用した油中水型乳化油脂組成物を麺生地に練り込むことを特徴とする麺類の製造法。
- 油中水型乳化油脂組成物において、油相と水相の合計量中油相が30〜70重量%、水相が70〜30重量%からなることを特徴とする請求項1記載の麺類の製造法。
- 乳化剤として、さらにグリセリン不飽和脂肪酸モノエステル、蔗糖不飽和脂肪酸ポリエステルを使用した油中水型乳化油脂組成物を用いることを特徴とする請求項1〜2記載の麺類の製造法。
- 麺生地100重量部に対して油中水型乳化油脂組成物の添加量が1〜30重量部である請求項1〜3記載の麺類の製造法。
- 請求項1〜4記載の麺類の製造法によって得られる麺類。
- 乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン飽和脂肪酸モノエステルを使用した油中水型乳化油脂組成物を有する麺類。
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