JP4073205B2 - ニトロ化合物の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はニトロ化合物の製造法に関する。特に、複数のニトロ基を有する有機化合物の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ニトロ化合物は、有機基質に混酸(硝酸と硫酸の混合物)を反応させて製造されている。この方法を用いて、複数のニトロ基を有する化合物の製造を行う場合には、大量の硝酸を使用し、また、高温下で反応を行う必要があるなどの制約が多い。例えば、反応温度170℃、3,400,000〜4,100,000Pa(34〜41気圧)の圧力下においてアダマンタンと硝酸を反応させる1,3−ジニトロアダマンタンの製造法がJ.Org.Chem.,(ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー)26,2207−2212,(1961)に報告されている。しかし、収率の点で満足できるものではない。
【0003】
特開平11−239730号公報には、特定の構造を有するイミド化合物の存在下、基質と窒素酸化物とを接触させて、基質にニトロ基を導入する方法が開示されている。この方法によれば、比較的温和な条件下で基質にニトロ基を導入できるが、操作性や目的化合物の収率等の点で、必ずしも満足できるものではない。
【0004】
特開2001−247486号公報には、特定構造のイミド系化合物の存在下、アダマンタンと硝酸とを反応させて1−ニトロアダマンタンを製造する方法が開示されている。しかし、複数個のニトロ基を導入する方法は記載されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、複数のニトロ基を有する化合物を温和な条件で簡易に且つ収率よく製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定構造のイミド系化合物の存在下、水含有量が特定値以下の硝酸などを基質に対し特定量用いると、温和な条件で広範な有機基質に複数個のニトロ基を容易に導入できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、有機基質を、下記式(I)
【化3】
[式中、nは0又は1を示す。Xは−OR基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)を示す]
で表される環状イミド骨格を有するイミド系化合物の存在下、水含有量が15重量%以下の硝酸又はその塩を有機基質に対して1.8〜2.5当量用いて反応させて、有機基質に複数個のニトロ基を導入して、複数のニトロ基を有する対応するニトロ化合物を生成させるニトロ化合物の製造法を提供する。
【0008】
前記ニトロ化合物の製造法に用いるイミド系化合物が、下記式(1)
【化4】
[式中、nは0又は1を示す。Xは−OR基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)を示す。R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を示し、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、又はR1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個以上形成されていてもよい]
で表される化合物であってもよい。
【0009】
また、前記ニトロ化合物の製造法に用いる有機基質が、(a)不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する構造、(b)メチン炭素原子を有する構造、(c)非芳香族性環状炭化水素を有する構造、(d)ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を有する非芳香族性複素環を有する構造及び(e)直鎖状アルカン構造からなる群から選択された2以上の同一又は異なる構造を有する化合物であってもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
[有機基質]
本発明において有機基質として用いられる化合物には広範な有機化合物が含まれる。前記有機基質として、例えば、(a)不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する構造、(b)メチン炭素原子を有する構造、(c)非芳香族性環状炭化水素構造、(d)ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を有する非芳香族性複素環を有する構造及び(e)直鎖状アルカン構造からなる群から選択された2以上の同一又は異なる構造を有する化合物を使用できる。
【0011】
これらの化合物は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、置換チオ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)、アラルキル基、複素環基などを有していてもよい。好ましい有機基質には、炭素−水素結合を複数個有する有機化合物が含まれる。
【0012】
(a)不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する構造
不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する構造(a)としては、(a1)芳香族性環の隣接位(いわゆるベンジル位)にメチル基又はメチレン基を有する構造、(a2)不飽和結合(例えば、炭素−炭素不飽和結合、炭素−酸素二重結合など)の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する構造等が挙げられる。
【0013】
前記構造(a1)において、芳香族性環は、芳香族炭化水素環、芳香族性複素環の何れであってもよい。芳香族炭化水素環には、ベンゼン環、縮合炭素環(例えば、ナフタレン、アズレン、インダセン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレンなどの2〜10個の4〜7員炭素環が縮合した縮合炭素環など)などが含まれる。芳香族性複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン、オキサゾール、イソオキサゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−ピランなどの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメンなどの縮合環など)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−チオピランなどの6員環、ベンゾチオフェンなどの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾールなどの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンなどの6員環、インドール、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリンなどの縮合環など)などが挙げられる。
【0014】
なお、芳香族性環の隣接位のメチレン基は、前記芳香族性環に縮合した非芳香族性環を構成するメチレン基であってもよい。また、構造(a1)において、芳香族性環と隣接する位置にメチル基とメチレン基の両方の基が存在していてもよい。
【0015】
芳香族性環の隣接位にメチル基を有する芳香族化合物としては、例えば、芳香環に1〜6個程度のメチル基が置換した芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、1−エチル−4−メチルベンゼン、1−エチル−3−メチルベンゼン、1−t−ブチル−4−メチルベンゼン、1−メトキシ−4−メチルベンゼン、メシチレン、デュレン、メチルナフタレン、メチルアントラセン、4,4′−ジメチルビフェニルなど)、複素環に1〜6個程度のメチル基が置換した複素環化合物(例えば、2−メチルフラン、3−メチルフラン、3−メチルチオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、4−メチルインドール、2−メチルキノリンなど)などが例示できる。
【0016】
芳香族性環の隣接位にメチレン基を有する芳香族化合物としては、例えば、炭素数2以上のアルキル基又は置換アルキル基を有する芳香族炭化水素類(例えば、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、1,4−ジエチルベンゼン、ジフェニルメタンなど)、炭素数2以上のアルキル基又は置換アルキル基を有する芳香族性複素環化合物(例えば、2−エチルフラン、3−プロピルチオフェン、4−エチルピリジン、4−ブチルキノリンなど)、芳香族性環に非芳香族性環が縮合した化合物であって、該非芳香族性環のうち芳香族性環に隣接する部位にメチレン基を有する化合物(ジヒドロナフタレン、インデン、インダン、テトラリン、フルオレン、アセナフテン、フェナレン、インダノン、キサンテン等)などが例示できる。
【0017】
不飽和結合の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する構造(a2)には、例えば、(a2-1)いわゆるアリル位にメチル基又はメチレン基を有する鎖状不飽和炭化水素構造、(a2-2)カルボニル基の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する構造が例示できる。
【0018】
前記構造(a2-1)を含む化合物としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1,5−ヘキサジエン、1−オクテン、3−オクテン、ウンデカトリエンなどの炭素数3〜20程度の鎖状不飽和炭化水素類が例示できる。前記構造(a2-2)を含む化合物には、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、3−ペンタノン、アセトフェノンなどの鎖状ケトン類;シクロヘキサノンなどの環状ケトン類)、カルボン酸又はその誘導体(例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、フェニル酢酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、及びこれらのエステルなど)などが含まれる。
【0019】
(b)メチン炭素原子を有する構造
メチン炭素原子(又は第3級炭素原子)を有する構造(b)には、(b1)環の構成単位としてメチン基(すなわち、メチン炭素−水素結合)を含む環状構造、(b2)メチン炭素原子を有する鎖状構造が含まれる。
【0020】
環状構造(b1)には、(b1-1)少なくとも1つのメチン基を有する橋かけ環構造、(b1-2)環に炭化水素基が結合した非芳香族性環構造(脂環式炭化水素構造など)などが含まれる。なお、前記橋かけ環構造には、2つの環が2個の炭素原子を共有した構造、例えば、縮合多環式芳香族炭化水素類に水素添加した構造なども含まれる。
【0021】
橋かけ環構造(b1-1)を含む化合物としては、例えば、デカリン、ビシクロ[2.2.0]ヘキサン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[4.3.2]ウンデカン、ツジョン、カラン、ピナン、ピネン、ボルナン、ボルニレン、ノルボルナン、ノルボルネン、カンファー、ショウノウ酸、カンフェン、トリシクレン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン、トリシクロ[5.2.1.03,8]デカン、エキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、エンドトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカン、アダマンタン、1−アダマンタノール、1−クロロアダマンタン、1−メチルアダマンタン、1,3−ジメチルアダマンタン、1−メトキシアダマンタン、1−カルボキシアダマンタン、1−メトキシカルボニルアダマンタン、1−ニトロアダマンタン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、ペルヒドロアントラセン、ペルヒドロアセナフテン、ペルヒドロフェナントレン、ペルヒドロフルオレン、ペルヒドロフェナレン、ペルヒドロインデン、キヌクリジンなどの2〜4環式の橋かけ環式炭化水素又は橋かけ複素環化合物及びそれらの誘導体などが挙げられる。これらの橋かけ環式化合物は、橋頭位(2環が2個の原子を共有している場合には接合部位に相当)にメチン炭素原子を有する。
【0022】
環に炭化水素基が結合した非芳香族性環構造(b1-2)を含む化合物としては、1−メチルシクロペンタン、1−メチルシクロヘキサン、リモネン、メンテン、メントール、カルボメントン、メントンなどの、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)程度の炭化水素基(例えば、アルキル基など)が環に結合した3〜15員程度の脂環式炭化水素及びその誘導体などが挙げられる。環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物(b1-2)は、環と前記炭化水素基との結合部位にメチン炭素原子を有する。
【0023】
メチン炭素原子を有する鎖状構造(b2)を含む化合物としては、第3級炭素原子を有する鎖状炭化水素類、例えば、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−メチルオクタンなどの炭素数4〜20(好ましくは、4〜10)程度の脂肪族炭化水素類;イソプロピルベンゼン、イソプロピルビフェニルなどの、芳香族性環が第3級炭素原子を有する脂肪族炭化水素基で置換された芳香族炭化水素類;およびこれらの誘導体などが例示できる。
【0024】
(c)非芳香族性環状炭化水素構造
非芳香族性環状炭化水素構造(c)には、(c1)シクロアルカン環構造及び(c2)シクロアルケン環構造が含まれる。
【0025】
シクロアルカン環構造(c1)を含む化合物としては、3〜30員のシクロアルカン環を含む化合物、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロドデカン、シクロテトラデカン、シクロヘキサデカン、シクロテトラコサン、シクロトリアコンタン、及びこれらの誘導体などが例示できる。好ましいシクロアルカン環には、5〜30員、特に5〜20員のシクロアルカン環が含まれる。
【0026】
シクロアルケン環構造(c2)を含む化合物には、3〜30員のシクロアルケン環を含む化合物、例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロヘキセン、1−メチル−シクロヘキセン、イソホロン、シクロヘプテン、シクロドデカエンなどのほか、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエンなどのシクロアルカジエン類、シクロオクタトリエンなどのシクロアルカトリエン類、及びこれらの誘導体等が含まれる。好ましいシクロアルケン環には、3〜20員環、特に3〜12員環が含まれる。
【0027】
(d)ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を有する非芳香族性複素環を有する構造
ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を有する非芳香族性複素環を有する構造(d)における非芳香族性複素環には、窒素原子、酸素原子及びイオウ原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を有する3〜20員(好ましくは5〜12員、さらに好ましくは5又は6員)の複素環などが含まれる。前記複素環には、ベンゼン環、シクロヘキサン環、ピリジン環などの芳香族性又は非芳香族性の環が1又は2以上縮合していてもよい。前記構造(d)を含む化合物としては、例えば、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドリン、クロマン、イソクロマンなどが例示される。
【0028】
(e)直鎖状アルカン構造
直鎖状アルカン構造(e)を含む化合物としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等の炭素数1〜30程度(好ましくは炭素数1〜20程度)の直鎖状アルカンが挙げられる。
【0029】
本発明における有機基質としては、前記(a)〜(e)からなる群から選択された2以上の同一又は異なる構造を有する化合物が好ましい。例えば、前記(a)〜(e)の何れかの構造を含む化合物として各構造ごとに例示された化合物であって、すでに前記(a)〜(e)の何れかの構造を2以上含有しているもの、又は、前記例示された化合物にさらに前記(a)〜(e)から選択された構造を1以上導入したものが好ましく用いられる。
有機基質は単独で用いてもよく、同種又は異種のものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0030】
[イミド系化合物]
本発明では、触媒として、前記式(I)で表される環状イミド骨格を有するイミド系化合物を使用する。
【0031】
式(I)において、窒素原子とXとの結合は単結合である。前記イミド系化合物は、分子中に、式(I)で表されるN−置換環状イミド骨格を複数個有していてもよい。また、このイミド系化合物は、前記Xが−OR基であり且つRがヒドロキシル基の保護基である場合、N−置換環状イミド骨格のうちRを除く部分(N−オキシ環状イミド骨格)が複数個、Rを介して結合していてもよい。
【0032】
式(I)中、Rで示されるヒドロキシル基の保護基としては、有機合成の分野で慣用のヒドロキシル基の保護基を用いることができる。このような保護基として、例えば、アルキル基(例えば、メチル、t−ブチル基などのC1-4アルキル基など)、アルケニル基(例えば、アリル基など)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基など)、アリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基など)、アラルキル基(例えば、ベンジル、2,6−ジクロロベンジル、3−ブロモベンジル、2−ニトロベンジル、トリフェニルメチル基など);置換メチル基(例えば、メトキシメチル、メチルチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、2,2,2−トリクロロエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基など)、置換エチル基(例えば、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、1−イソプロポキシエチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−メトキシエチル基など)、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、1−ヒドロキシアルキル基(例えば、1−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシヘキシル、1−ヒドロキシデシル、1−ヒドロキシヘキサデシル、1−ヒドロキシ−1−フェニルメチル基など)等のヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基など;アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル基などのC1-20脂肪族アシル基等の脂肪族飽和又は不飽和アシル基;アセトアセチル基;シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル基などのシクロアルカンカルボニル基等の脂環式アシル基;ベンゾイル、ナフトイル基などの芳香族アシル基など)、スルホニル基(メタンスルホニル、エタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル、ナフタレンスルホニル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基(例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル基など)、無機酸(硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸など)からOH基を除した基、ジアルキルホスフィノチオイル基(例えば、ジメチルホスフィノチオイル基など)、ジアリールホスフィノチオイル基(例えば、ジフェニルホスフィノチオイル基など)、置換シリル基(例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル基など)などが挙げられる。
【0033】
また、Xが−OR基である場合において、N−置換環状イミド骨格のうちRを除く部分(N−オキシ環状イミド骨格)が複数個、Rを介して結合する場合、該Rとして、例えば、オキサリル、マロニル、スクシニル、グルタリル、アジポイル、フタロイル、イソフタロイル、テレフタロイル基などのポリカルボン酸アシル基;カルボニル基;メチレン、エチリデン、イソプロピリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、ベンジリデン基などの多価の炭化水素基(特に、2つのヒドロキシル基とアセタール結合を形成する基)などが挙げられる。
【0034】
Rとしては、アルキル基(メチル基など)以外の保護基がより好ましい。特に好ましいRには、例えば、水素原子;ヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基;カルボン酸、スルホン酸、炭酸、カルバミン酸、硫酸、リン酸、ホウ酸などの酸からOH基を除した基(アシル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基等)などの加水分解により脱離可能な加水分解性保護基が好ましい。
【0035】
式(I)において、nは0又は1を示す。前記イミド系化合物は、前記nが0の場合は、5員のN−置換環状イミド骨格を有するイミド系化合物を示しており、前記nが1の場合は、6員のN−置換環状イミド骨格を有するイミド系化合物を示している。
【0036】
前記イミド系化合物の代表的な例として、前記式(1)で表されるイミド化合物が挙げられる。このイミド化合物において、置換基R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素原子が含まれる。アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル基などの炭素数1〜30程度(特に、炭素数1〜20程度)の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が含まれる。
【0037】
アリール基には、フェニル、ナフチル基などが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが含まれる。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、テトラデシルオキシ、オクタデシルオキシ基などの炭素数1〜30程度(特に、炭素数1〜20程度)のアルコキシ基が含まれる。
【0038】
置換オキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、デシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、ヘキサデシルオキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基(特に、C1-30アルコキシ−カルボニル基);シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル基などのシクロアルキルオキシカルボニル基(特に、3〜20員シクロアルキルオキシカルボニル基);フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル基などのアリールオキシカルボニル基(特に、C6-20アリールオキシ−カルボニル基);ベンジルオキシカルボニル基などのアラルキルオキシカルボニル基(特に、C7-21アラルキルオキシ−カルボニル基)などが挙げられる。
【0039】
アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル基などのC1-30脂肪族アシル基(特に、C1-20脂肪族アシル基)等の脂肪族飽和又は不飽和アシル基;アセトアセチル基;シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル基などのシクロアルカンカルボニル基等の脂環式アシル基;ベンゾイル、ナフトイル基などの芳香族アシル基などが例示できる。
【0040】
アシルオキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、イソブチリルオキシ、バレリルオキシ、ピバロイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ヘプタノイルオキシ、オクタノイルオキシ、ノナノイルオキシ、デカノイルオキシ、ラウロイルオキシ、ミリストイルオキシ、パルミトイルオキシ、ステアロイルオキシ基などのC1-30脂肪族アシルオキシ基(特に、C1-20脂肪族アシルオキシ基)等の脂肪族飽和又は不飽和アシルオキシ基;アセトアセチルオキシ基;シクロペンタンカルボニルオキシ、シクロヘキサンカルボニルオキシ基などのシクロアルカンカルボニルオキシ基等の脂環式アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ基などの芳香族アシルオキシ基などが例示できる。
【0041】
前記置換基R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なっていてもよい。また、前記式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して、二重結合、または芳香族性又は非芳香属性の環を形成してもよい。好ましい芳香族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程度であり、複素環又は縮合複素環であってもよいが、炭化水素環である場合が多い。このような環には、例えば、非芳香族性脂環式環(シクロヘキサン環などの置換基を有していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセン環などの置換基を有していてもよいシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有していてもよい芳香族環(縮合環を含む)が含まれる。前記環は、芳香族環で構成される場合が多い。前記環は、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。
【0042】
前記R1、R2、R3、R4、R5及びR6、又はR1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個以上形成されていてもよい。例えば、R1、R2、R3、R4、R5及びR6が炭素数2以上のアルキル基である場合、このアルキル基を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。また、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して二重結合を形成する場合、該二重結合を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。さらに、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成する場合、該環を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。さらに、前記R1、R2、R3、R4、R5及びR6、又はR1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基のN−ヒドロキシ体や、式(1)中に示される6員のN−置換環状イミド基に対応する5員のN−置換環状イミド基若しくはそのヒドロキシ体が形成されていてもよい。
【0043】
好ましいイミド化合物には、下記式で表される5員のN−置換環状イミド化合物が含まれる。
【化5】
(式中、R7〜R10は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を示す。R7〜R10は、隣接する基同士が互いに結合して芳香族性又は非芳香族性の環を形成していてもよい。式(1f)中、Aはメチレン基又は酸素原子を示す。R1、R2、R5、R6、Xは前記に同じ。式(1c)のベンゼン環には、式(1c)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい)
【0044】
置換基R7〜R10において、アルキル基には、前記例示のアルキル基と同様のアルキル基が含まれ、ハロアルキル基には、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜30程度(特に、炭素数1〜20程度)のハロアルキル基、アルコキシ基には、前記と同様のアルコキシ基、置換オキシカルボニル基には、前記と同様の置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)が含まれる。また、アシル基としては前記と同様のアシル基(脂肪族飽和又は不飽和アシル基、アセトアセチル基、脂環式アシル基、芳香族アシル基等)などが例示され、アシルオキシ基としては前記と同様のアシルオキシ基(脂肪族飽和又は不飽和アシルオキシ基、アセトアセチルオキシ基、脂環式アシルオキシ基、芳香族アシルオキシ基等)などが例示される。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子が例示できる。置換基R7〜R10は、通常、水素原子、アルキル基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。R7〜R10が互いに結合して形成する環としては、前記R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して形成する環と同様であり、特に芳香族性又は非芳香族性の5〜12員環が好ましい。
【0045】
好ましい5員のN−置換環状イミド化合物の代表的な例として、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α−メチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,α−ジメチルコハク酸イミド、α,β−ビス(ペンタノイルオキシ)−N−ヒドロキシコハク酸イミド、α,β−ビス(ラウロイルオキシ)−N−ヒドロキシコハク酸イミド、α,β−ビス(ベンゾイルオキシ)−N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4−ペンチルオキシカルボニルフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシカルボニルフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4−フェノキシカルボニルフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4,5−ビス(ペンチルオキシカルボニル)フタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4,5−ビス(ドデシルオキシカルボニル)フタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4,5−ビス(フェノキシカルボニル)フタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどのXが−OR基で且つRが水素原子である化合物;N−アセトキシコハク酸イミド、N−アセトキシ−α−メチルコハク酸イミド、N−アセトキシ−α,α−ジメチルコハク酸イミド、N−アセトキシマレイン酸イミド、N−アセトキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジアセトキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−アセトキシフタル酸イミド、N−アセトキシテトラブロモフタル酸イミド、N−アセトキシテトラクロロフタル酸イミド、N−アセトキシヘット酸イミド、N−アセトキシハイミック酸イミド、N−アセトキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジアセトキシピロメリット酸ジイミド、N,N′−ジアセトキシナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、N−バレリルオキシフタル酸イミド、N−ラウロイルオキシフタル酸イミド、N−ベンゾイルオキシフタル酸イミド、N,α,β−トリスアセトキシコハク酸イミド、N−アセトキシ−α,β−ビス(プロピオニルオキシ)コハク酸イミド、N−アセトキシ−α,β−ビス(バレリルオキシ)コハク酸イミド、N−アセトキシ−α,β−ビス(ラウロイルオキシ)コハク酸イミド、N−アセトキシ−α,β−ビス(ベンゾイルオキシ)コハク酸イミド、N−アセトキシ−4−メトキシカルボニルフタル酸イミド、N−アセトキシ−4−エトキシカルボニルフタル酸イミド、N−アセトキシ−4−ペンチルオキシカルボニルフタル酸イミド、N−アセトキシ−4−ドデシルオキシカルボニルフタル酸イミド、N−アセトキシ−4−フェノキシカルボニルフタル酸イミド、N−アセトキシ−4,5−ビス(メトキシカルボニル)フタル酸イミド、N−アセトキシ−4,5−ビス(エトキシカルボニル)フタル酸イミド、N−アセトキシ−4,5−ビス(ペンチルオキシカルボニル)フタル酸イミド、N−アセトキシ−4,5−ビス(ドデシルオキシカルボニル)フタル酸イミド、N−アセトキシ−4,5−ビス(フェノキシカルボニル)フタル酸イミドなどのXが−OR基で且つRがアセチル基等のアシル基である化合物;N−メトキシメチルオキシフタル酸イミド、N−(2−メトキシエトキシメチルオキシ)フタル酸イミド、N−テトラヒドロピラニルオキシフタル酸イミドなどのXが−OR基で且つRがヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール結合を形成可能な基である化合物;N−メタンスルホニルオキシフタル酸イミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)フタル酸イミドなどのXが−OR基で且つRがスルホニル基である化合物;N−ヒドロキシフタル酸イミドの硫酸エステル、硝酸エステル、リン酸エステル又はホウ酸エステルなどのXが−OR基で且つRが無機酸からOH基を除した基である化合物などが挙げられる。
【0046】
また、好ましいイミド化合物には、下記式で表される6員のN−置換環状イミド化合物も含まれる。
【化6】
(式中、R11〜R16は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を示す。R17〜R22は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を示す。R17〜R22は、隣接する基同士が結合して、式(1h)又は(1i)中に示される6員のN−置換環状イミド骨格若しくはそのN−ヒドロキシ体、又は対応する5員のN−置換環状イミド骨格若しくはそのN−ヒドロキシ体を形成していてもよい。Xは前記に同じ)
【0047】
置換基R11〜R16におけるハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基としては、前記R1〜R6における対応する基と同様のものが例示される。
【0048】
置換基R17〜R22において、アルキル基には、前記例示のアルキル基と同様のアルキル基、特に炭素数1〜6程度のアルキル基が含まれ、ハロアルキル基には、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜4程度のハロアルキル基、アルコキシ基には、前記と同様のアルコキシ基、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基、置換オキシカルボニル基には、前記と同様の置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)が含まれる。また、アシル基としては前記と同様のアシル基(脂肪族飽和又は不飽和アシル基、アセトアセチル基、脂環式アシル基、芳香族アシル基等)などが例示され、アシルオキシ基としては前記と同様のアシルオキシ基(脂肪族飽和又は不飽和アシルオキシ基、アセトアセチルオキシ基、脂環式アシルオキシ基、芳香族アシルオキシ基等)などが例示される。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子が例示できる。置換基R17〜R22は、通常、水素原子、炭素数1〜4程度の低級アルキル基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。
【0049】
好ましい6員のN−置換環状イミド化合物の代表的な例として、例えば、N−ヒドロキシグルタルイミド、N−ヒドロキシ−α,α−ジメチルグルタルイミド、N−ヒドロキシ−β,β−ジメチルグルタルイミド、N−ヒドロキシ−1,8−デカリンジカルボン酸イミド、N,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−デカリンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド(N−ヒドロキシナフタル酸イミド)、N,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどのXが−OR基で且つRが水素原子である化合物;N−アセトキシグルタルイミド、N−アセトキシ−α,α−ジメチルグルタルイミド、N−アセトキシ−β,β−ジメチルグルタルイミド、N−アセトキシ−1,8−デカリンジカルボン酸イミド、N,N′−ジアセトキシ−1,8;4,5−デカリンテトラカルボン酸ジイミド、N−アセトキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド(N−アセトキシナフタル酸イミド)、N,N′−ジアセトキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、N−プロピオニルオキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ビス(プロピオニルオキシ)−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヘキサノイルオキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ビス(ヘキサノイルオキシ)−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの式(1)におけるXが−OR基で且つRがアセチル基等のアシル基である化合物;N−メトキシメチルオキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ビス(メトキシメチルオキシ)−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの式(1)におけるXが−OR基で且つRがヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール結合を形成可能な基である化合物;N−メタンスルホニルオキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ビス(メタンスルホニルオキシ)−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの式(1)におけるXが−OR基で且つRがスルホニル基である化合物;N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド又はN,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドの硫酸エステル、硝酸エステル、リン酸エステル又はホウ酸エステルなどの式(1)におけるXが−OR基で且つRが無機酸からOH基を除した基である化合物などが挙げられる。
【0050】
前記イミド系化合物のうち、Xが−OR基で且つRが水素原子である化合物は、慣用のイミド化反応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンNH2OHとを反応させ、酸無水物基の開環及び閉環を経てイミド化する方法により調製できる。前記酸無水物には、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸などの飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸1,2−無水物、1,8−デカリンジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物などの飽和又は不飽和非芳香族性環状多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水ヘット酸、無水ハイミック酸などの橋かけ環式多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ニトロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水メリット酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3;6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物が含まれる。
【0051】
前記イミド系化合物のうち、Xが−OR基で且つRがヒドロキシル基の保護基である化合物は、例えば、対応するRが水素原子である化合物(N−ヒドロキシ環状イミド化合物)に、慣用の保護基導入反応を利用して、所望の保護基を導入することにより調製することができる。例えば、N−アセトキシフタル酸イミドは、N−ヒドロキシフタル酸イミドに無水酢酸を反応させたり、塩基の存在下でアセチルハライドを反応させることにより得ることができ、また、N−アセトキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドは、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドに無水酢酸を反応させたり、塩基の存在下でアセチルハライドを反応させることにより得ることができる。なお、前記イミド化合物のうち、Xが−OR基で且つRがヒドロキシル基の保護基である化合物は、これら以外の方法で製造することも可能である。
【0052】
特に好ましいイミド化合物は、脂環式多価カルボン酸無水物から誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物(例えば、N−ヒドロキシグルタルイミドなど)、芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物(例えば、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸イミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなど);及び該N−ヒドロキシイミド化合物のヒドロキシル基に保護基を導入することにより得られる化合物などが含まれる。
【0053】
式(I)で表されるN−置換環状イミド骨格を有するイミド系化合物は、反応において、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。前記イミド系化合物は反応系内で生成させてもよい。
【0054】
前記イミド系化合物触媒の使用量は、基質1モルに対して、例えば0.001〜1モル、好ましくは0.01〜0.5モル、さらに好ましくは0.1〜0.3モル程度である。
【0055】
本発明では、前記イミド系化合物とともに助触媒を用いることもできる。助触媒として、金属化合物が挙げられる。前記イミド系化合物と金属化合物とを併用することにより、反応速度や反応の選択性が向上する場合がある。
【0056】
金属化合物を構成する金属元素としては、特に限定されないが、周期表2〜15族の金属元素を用いる場合が多い。なお、本明細書では、ホウ素Bも金属元素に含まれるものとする。例えば、前記金属元素として、周期表2族元素(Mg、Ca、Sr、Baなど)、3族元素(Sc、ランタノイド元素、アクチノイド元素など)、4族元素(Ti、Zr、Hfなど)、5族元素(Vなど)、6族元素(Cr、Mo、Wなど)、7族元素(Mnなど)、8族元素(Fe、Ruなど)、9族元素(Co、Rhなど)、10族元素(Ni、Pd、Ptなど)、11族元素(Cuなど)、12族元素(Znなど)、13族元素(B、Al、Inなど)、14族元素(Sn、Pbなど)、15族元素(Sb、Biなど)などが挙げられる。好ましい金属元素には、遷移金属元素(周期表3〜12族元素)が含まれる。なかでも、周期表5〜11族元素、特に5族〜9族元素が好ましく、とりわけV、Mo、Mn、Coなどが好ましい。金属元素の原子価は特に制限されず、例えば0〜6価程度である。
【0057】
金属化合物としては、前記金属元素の単体、水酸化物、酸化物(複合酸化物を含む)、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、オキソ酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩など)、イソポリ酸の塩、ヘテロポリ酸の塩などの無機化合物;有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、青酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩など)、錯体などの有機化合物が挙げられる。前記錯体を構成する配位子としては、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、アシル(アセチル、プロピオニルなど)、アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、ハロゲン原子(塩素、臭素など)、CO、CN、酸素原子、H2O(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなど)のリン化合物、NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。
【0058】
金属化合物の具体例としては、例えば、コバルト化合物を例にとると、水酸化コバルト、酸化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、リン酸コバルトなどの無機化合物;酢酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルトなどの有機酸塩;コバルトアセチルアセトナトなどの錯体等の2価又は3価のコバルト化合物などが挙げられる。また、バナジウム化合物の例としては、水酸化バナジウム、酸化バナジウム、塩化バナジウム、塩化バナジル、硫酸バナジウム、硫酸バナジル、バナジン酸ナトリウムなどの無機化合物;バナジウムアセチルアセトナト、バナジルアセチルアセトナトなどの錯体等の2〜5価のバナジウム化合物などが挙げられる。他の金属元素の化合物としては、前記コバルト又はバナジウム化合物に対応する化合物などが例示される。金属化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0059】
前記金属化合物の使用量は、例えば、前記イミド系化合物1モルに対して、0.001〜10モル程度、好ましくは0.005〜3モル程度である。
【0060】
本発明では、また、助触媒として、少なくとも1つの有機基が結合した周期表15族又は16族元素を含む多原子陽イオン又は多原子陰イオンとカウンターイオンとで構成された有機塩を用いることもできる。助触媒として前記有機塩を用いることにより、反応速度や反応の選択性が向上する場合がある。
【0061】
前記有機塩において、周期表15族元素には、N、P、As、Sb、Biが含まれる。周期表16族元素には、O、S、Se、Teなどが含まれる。好ましい元素としては、N、P、As、Sb、Sが挙げられ、特に、N、P、Sなどが好ましい。
【0062】
前記元素の原子に結合する有機基には、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換オキシ基などが含まれる。炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、アリルなどの炭素数1〜30程度(好ましくは炭素数1〜20程度)の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基);シクロペンチル、シクロヘキシルなどの炭素数3〜8程度の脂環式炭化水素基;フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜14程度の芳香族炭化水素基などが挙げられる。炭化水素基が有していてもよい置換基として、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)、複素環基などが例示できる。好ましい炭化水素基には、炭素数1〜30程度のアルキル基、炭素数6〜14程度の芳香族炭化水素基(特に、フェニル基又はナフチル基)などが含まれる。前記置換オキシ基には、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが含まれる。
【0063】
前記有機塩の代表的な例として、有機アンモニウム塩、有機ホスホニウム塩、有機スルホニウム塩などの有機オニウム塩が挙げられる。有機アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、トリエチルフェニルアンモニウムクロリド、トリブチル(ヘキサデシル)アンモニウムクロリド、ジ(オクタデシル)ジメチルアンモニウムクロリドなどの第4級アンモニウムクロリド、及び対応する第4級アンモニウムブロミドなどの、窒素原子に4つの炭化水素基が結合した第4級アンモニウム塩;ジメチルピペリジニウムクロリド、ヘキサデシルピリジニウムクロリド、メチルキノリニウムクロリドなどの環状第4級アンモニウム塩などが挙げられる。また、有機ホスホニウム塩の具体例としては、テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、トリブチル(ヘキサデシル)ホスホニウムクロリド、トリエチルフェニルホスホニウムクロリドなどの第4級ホスホニウムクロリド、及び対応する第4級ホスホニウムブロミドなどの、リン原子に4つの炭化水素基が結合した第4級ホスホニウム塩などが挙げられる。有機スルホニウム塩の具体例としては、トリエチルスルホニウムイオジド、エチルジフェニルスルホニウムイオジドなどの、イオウ原子に3つの炭化水素基が結合したスルホニウム塩などが挙げられる。
【0064】
また、前記有機塩には、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、オクタンスルホン酸塩、ドデカンスルホン酸塩などのアルキルスルホン酸塩(例えば、C6-18アルキルスルホン酸塩);ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、デシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などのアルキル基で置換されていてもよいアリールスルホン酸塩(例えば、C6-18アルキル−アリールスルホン酸塩);スルホン酸型イオン交換樹脂(イオン交換体);ホスホン酸型イオン交換樹脂(イオン交換体)なども含まれる。
【0065】
前記有機塩の使用量は、例えば、前記イミド系化合物1モルに対して、0.001〜0.1モル程度、好ましくは0.005〜0.08モル程度である。
【0066】
また、本発明の方法では、系内に、ラジカル発生剤やラジカル反応促進剤を存在させてもよい。このような成分として、例えば、ハロゲン(塩素、臭素など)、過酸(過酢酸、m−クロロ過安息香酸など)、過酸化物(過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)等のヒドロペルオキシドなど)などが挙げられる。これらの成分を系内に存在させると、反応が促進される場合がある。前記成分の使用量は、前記イミド系化合物1モルに対して、例えば0.001〜0.1モル程度である。
【0067】
[硝酸又はその塩]
本発明では、ニトロ化剤として硝酸又はその塩(以下、単に「硝酸類」と称する場合がある)を用いる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
硝酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩;銀塩、アルミニウム塩、亜鉛塩などのその他の金属塩などが挙げられる。好ましい塩には、硝酸のアルカリ金属塩等が含まれる。
【0069】
前記硝酸類は、そのまま反応系に供給してもよいが、水溶液などの溶液の形態で反応系に供給することができる。また、これらは反応系中で生成させて反応に用いることもできる。
【0070】
本発明の主な特徴は、水含有量が15重量%以下の硝酸類を有機基質に対して1.8〜2.5当量用いて反応させることにある。
【0071】
本発明における硝酸類の水含有量は、15重量%以下のものに限って用いられる。水含有量が15重量%を越える場合は、硝酸類の添加に伴って反応系に過剰な水が存在することとなり、イミド系化合物触媒の加水分解が促進されるためか、ニトロ化反応が阻害される。その結果、反応系に残存する硝酸により基質の酸化反応が進行し、基質の酸化物が副生しやすくなる。
【0072】
硝酸類は、系内に一括して供給してもよく、逐次的(連続的又は間欠的)に供給してもよい。
【0073】
本発明における硝酸類の使用量は、基質に対して1.8〜2.5当量(基質1モルに対して1.8〜2.5モル)の範囲内に限定される。1.8当量より少ない場合は、反応の進行が遅く、複数個のニトロ基を導入することが困難となる。一方、2.5当量を越えると、イミド系化合物の加水分解が促進され、反応の進行が妨げられる。
【0074】
[反応]
本発明の製造法では、有機基質を前記式(I)で表される環状イミド骨格を有するイミド系化合物の存在下で前記硝酸類と反応させる。
【0075】
反応は溶媒の存在下又は不存在下で行われる。溶媒としては、基質の種類等に応じて適宜選択でき、例えば、酢酸、プロピオン酸などの有機酸;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;t−ブタノール、t−アミルアルコールなどのアルコール類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼン、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合物;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;及びこれらの混合溶媒などを使用できる。
【0076】
溶媒として、酢酸などの有機酸、ベンゾニトリルなどのニトリル類、クロロベンゼンやトリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素等を用いる場合が多い。
【0077】
反応系中の水の濃度は、4重量%以下(例えば0.1〜4重量%)、好ましくは3重量%以下(例えば0.1〜3重量%)である。水含有量が4重量%を越える場合は、反応系に過剰な水が存在することとなり、イミド系化合物触媒の加水分解が促進されるためかニトロ化反応が阻害され、収率の低下を引き起こす。
【0078】
反応温度は、基質の種類等に応じて、例えば0〜150℃、好ましくは50〜130℃、さらに好ましくは80〜120℃程度の範囲から選択できる。反応圧力は、常圧、加圧下の何れであってもよい。
【0079】
反応は不活性ガス(例えば、窒素、アルゴンなど)の雰囲気下で行うことが好ましい。雰囲気中に酸素原子含有ガスが存在すると、基質に酸素原子含有基が導入された化合物が生成することがある。反応は、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。
【0080】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段やこれらを組み合わせることにより分離精製できる。
【0081】
この方法によれば、温和な条件下でニトロ化反応が円滑に進行し、複数個のニトロ基が導入された対応するニトロ化合物が生成する。例えば、基質として前記不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する構造(a)を含む化合物を用いると、該炭素−水素結合に係る炭素原子がニトロ化される。また、基質としてメチン炭素原子を有する構造(b)を含む化合物を用いると、該メチン炭素原子がニトロ化される。さらに、基質として非芳香族性環状炭化水素構造(c)を含む化合物を用いると、環を構成する炭素原子にニトロ基が導入され、例えば、シクロアルカン環構造(c1)を含む化合物からは対応するニトロシクロアルカン環構造を含む化合物が生成する。また、ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を有する非芳香族性複素環を有する構造(d)を含む化合物では、該炭素−水素結合に係る炭素原子がニトロ化され、直鎖状アルカン構造(e)を含む化合物からは対応するニトロアルカン構造を含む化合物などが生成する。従って、上記の構造を2以上含む化合物を基質として用いた場合、複数個のニトロ基が導入された化合物を容易に得ることができる。
【0082】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、水含有量及び使用量が特定された硝酸類と特定構造のイミド系化合物とを組み合わせて用いるため、ニトロ化反応が円滑に進行し、対応する複数個のニトロ基を含有する化合物を温和な条件下で簡易に且つ収率よく製造できる。
また、温和な条件で反応を行うことができるので、反応の選択性高く、触媒(イミド系化合物)の失活を抑制できるとともに、アダマンタンなどの昇華性の物質を基質として用いても、昇華によるトラブルや収率の低下等を防止できる。
【0083】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、反応生成物の同定は、NMR、IR、GC−MSにより行った。
【0084】
実施例1
フラスコに、1,3−ジメチルアダマンタン3.0g(18ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.59g(3.6ミリモル)、90重量%硝酸2.6g(37ミリモル)、及び酢酸27.0gを入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら100℃で8時間反応させた。反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果、1,3−ジメチルアダマンタンの転化率は100%であり、1,3−ジメチル−5,7−ジニトロアダマンタンが収率38%で生成していた。また、1,3−ジメチル−5−ニトロアダマンタンが収率20%、1−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアダマンタンが収率1%、1−ヒドロキシ−3,5−ジメチル−7−ニトロアダマンタンが収率17%で生成していた。さらに、1−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアダマンタン、及び1,3−ジメチル−5−ニトロアダマンタンにオキソ基が導入された化合物、並びに1,3−ジヒドロキシ−5,7−ジメチルアダマンタンの生成が確認された。
【0085】
比較例1
実施例1において、60重量%硝酸(37ミリモル)を用いた以外は、実施例1と同様の操作で反応を行った。その結果、1,3−ジメチルアダマンタンの転化率は100%であり、1,3−ジメチル−5,7−ジニトロアダマンタンが収率21%で生成していた。また、1,3−ジメチル−5−ニトロアダマンタンが収率40%、1−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアダマンタンが収率2%、1−ヒドロキシ−3,5−ジメチル−7−ニトロアダマンタンが収率16%で生成していた。
【0086】
実施例2
フラスコに、1,3−ジメチルアダマンタン100g(0.6モル)、N−ヒドロキシフタルイミド20g(0.12モル)、及び酢酸400gを入れ、窒素雰囲気下、温度100℃で、攪拌しながら90重量%硝酸85g(1.2モル)を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、4.5時間攪拌を続けて反応させた。得られた反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果、1,3−ジメチルアダマンタンの転化率は100%であり、1,3−ジメチル−5,7−ジニトロアダマンタンが収率33%で生成していた。また、1,3−ジメチル−5−ニトロアダマンタンが収率16%、1−ヒドロキシ−3,5−ジメチル−7−ニトロアダマンタンが収率19%で生成していた。
【0087】
比較例2
実施例2において、90重量%硝酸を55g(0.79モル)用いた以外は、実施例2と同様の操作で反応を行った。その結果、1,3−ジメチルアダマンタンの転化率は94%であり、1,3−ジメチル−5,7−ジニトロアダマンタンが収率4%で生成していた。また、1,3−ジメチル−5−ニトロアダマンタンが収率66%、1−ヒドロキシ−3,5−ジメチル−7−ニトロアダマンタンが収率2%で生成していた。
【0088】
実施例3
フラスコに、アダマンタン100g(0.73モル)、N−ヒドロキシフタルイミド24g(0.15モル)、及び酢酸400gを入れ、窒素雰囲気下、温度100℃で、攪拌しながら90重量%硝酸103g(1.5モル)を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、4.5時間攪拌を続けて反応させた。得られた反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果、アダマンタンの転化率は100%であり、1,3−ジニトロアダマンタンが収率28%で生成していた。1−ニトロアダマンタンが収率9%、1−ヒドロキシ−3−ニトロアダマンタンが収率12%で生成していた。
Claims (3)
- イミド系化合物が、下記式(1)
で表される化合物である請求項1記載のニトロ化合物の製造法。 - 有機基質が、(a)不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する構造、(b)メチン炭素原子を有する構造、(c)非芳香族性環状炭化水素を有する構造、(d)ヘテロ原子の隣接位に炭素−水素結合を有する非芳香族性複素環を有する構造及び(e)直鎖状アルカン構造からなる群から選択された2以上の同一又は異なる構造を有する化合物である請求項1記載のニトロ化合物の製造法。
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