JP4060111B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、耐候性、耐衝撃性そして耐熱分解性に優れるマレイミド系樹脂組成物、更に詳しくはマレイミド系共重合体とポリオルガノシロキサン/アルキル(メタ)アクリレート複合ゴム系グラフト共重合体とから構成されるマレイミド系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、樹脂材料の耐熱性、耐衝撃性に関する要求は、より高度なものとなっている。特に自動車部品、例えばメーターフード、インスルメントパネル、コンソールボックス等の内装部品では耐熱性、耐衝撃性に加え、部品の大型化に伴う良好な射出成形性が要求されている。射出成形は、幅広い温度範囲において成形できることがよく、特に高温で熱分解を起こさず成形できるものが要求される。また、外版、ランプハウジング等の外装部品においては、耐熱性、耐衝撃性に加え、耐候性にも優れた熱可塑性樹脂であることが要求されている。
【0003】
この様な分野に用いられる高い耐熱性、耐衝撃性を有する樹脂材料として、N−置換マレイミド化合物に芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物が共重合されたマレイミド系共重合体をマトリクスとする熱可塑性樹脂が知られている。
特開平4−63854号公報にはマレイミド系共重合体にポリオルガノシロキサン/アルキル(メタ)アクリレート複合ゴムにビニル系単量体をグラフト重合してなるグラフト共重合体を添加する方法が記載されている。
また、特開昭64−087651号公報、特開平8−053591号公報にはマレイミド系共重合体にポリブタジエン/ブチルアクリレート複合ゴムにビニル系単量体をグラフト重合してなるグラフト共重合体を添加する方法が記載されている。
【0004】
更に、特開2000−143929号公報には特定のマレイミド系共重合体と、それに屈折率の近いゴム変性熱可塑性樹脂を添加する透明な熱可塑性樹脂組成物が提案されている。
しかしながら、ゴム状重合体で変成されたマレイミド系共重合体からなる従来の熱可塑性樹脂組成物は、近年要求されている高いレベルの耐候性を備えているとはいえず、また、着色性や光沢特性等の成形外観においても無塗装で用いる製品分野には不充分なものであった。さらに、高温域での成形加工時には樹脂の熱分解によるシルバーストリークの発生による外観不良がみられた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ゴム状重合体で変性されたマレイミド系樹脂組成物の耐衝撃性、耐熱分解性、着色性や光沢等の成形外観、そして高いレベルの耐候性を同時に満足させる樹脂材料を開発することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した如き状況に鑑み鋭意検討した結果、耐熱性、耐熱分解性、耐衝撃性、耐候性、成形外観の全てに優れた熱可塑性樹脂組成物を得るには、ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムからなる複合ゴムにビニル系単量体をグラフト重合してなるグラフト共重合体(以下、グラフト共重合体という)と特定の組成からなるマレイミド系共重合体に配合することにより、耐熱性と耐衝撃性に優れ、さらに耐熱分解性、成形外観、耐候性に優れた熱可塑性樹脂組成物となることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、図1に示されるN−置換マレイミド、アルキル(メタ)アクリレート単位及び共重合可能な他の単量体で構成される三角座標において、a点(N−置換マレイミド1質量%、アルキル(メタ)アクリレート単位1質量%、共重合可能な他の単量体98質量%)、b点(N−置換マレイミド1質量%、アルキル(メタ)アクリレート単位30質量%、共重合可能な他の単量体69質量%)、c点(N−置換マレイミド71質量%、アルキル(メタ)アクリレート単位29質量%、共重合可能な他の単量体0質量%)、及びd点(N−置換マレイミド99質量%、アルキル(メタ)アクリレート単位1質量%、共重合可能な他の単量体0質量%)の4点を結んで形成される領域内(ただし、境界線上は含まない)にある単量体単位組成のマレイミド系共重合体(A)と、ポリオルガノシロキサン存在下でアルキル(メタ)アクリレートゴム製造用の単量体を乳化重合して得られる質量平均粒子径が0.03〜0.15μmであるポリオルガノシロキサン/アルキル(メタ)アクリレート複合ゴム(S)に1種または2種以上のビニル系単量体がグラフト重合されてなるグラフト共重合体(B)を含有する熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるマレイミド系共重合体(A)は、N−置換マレイミドとアルキル(メタ)アクリレート単位を必須成分とし、共重合可能な他の単量体との共重合体である。
N−置換マレイミドとしては、特に限定されないが、例を挙げると、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、等のN−シクロアルキルマレイミド、下記一般式(1)で示されるN−フェニルマレイミド、N−置換フェニルマレイミド等のN−アリールマレイミド、N−アラルキルマレイミドを挙げることができ、これらの1種または2種以上を併用することができる。
【0009】
【化1】
(式中、R1、R2、R3は各々独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲンを示す。)
【0010】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−i−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−i−ブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−i−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−i−ブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、等を例示することができる。好ましくは耐熱性と耐衝撃性に優れることから、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルである。これらアルキル(メタ)アクリレート化合物は、1種あるいは2種以上を併用することができる。
【0011】
マレイミド系共重合体(A)に用いることができる共重合可能なその他の単量体としては、例えば、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物等が挙げられるが、好ましくは芳香族ビニル化合物である。
この芳香族ビニル化合物としては特に限定されないが、例としてモノビニル芳香族炭化水素、モノビニリデン芳香族炭化水素を挙げることができる。さらに、モノビニル芳香族炭化水素としてはスチレン、o−、m−又はp−メチルスチレン(0−、m−又はp−ビニルトルエン)、p−t−ブチルスチレン、o−,m−又はp−クロロスチレン、2,4−ジプロモスチレンを挙げることができ、またモノビニリデン芳香族炭化水素としてはα−メチルスチレン、α−エチルスチレン等を挙げることができる。これらのモノビニル芳香族炭化水素、モノビニルデン芳香族炭化水素の中ではスチレン、ビニルトルエン及びα−メチルスチレンが好ましく、さらにスチレン、α−メチルスチレンがより好ましい。これら芳香族ビニル化合物は、1種あるいは2種以上を併用することができる。
他方、シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、マレオニトリル、フマロニトリル、などが挙げられ、この中では、アクリロニトリルが好ましい。これらシアン化ビニル化合物は、1種あるいは2種以上を併用することができる。
【0012】
本発明におけるマレイミド系共重合体(A)の組成は、図1に示す組成三角座標において、a点(N−置換マレイミド1質量%、アルキル(メタ)アクリレート単位1質量%、共重合可能な他の単量体98質量%)、b点(N−置換マレイミド1質量%、アルキル(メタ)アクリレート単位30質量%、共重合可能な他の単量体69質量%)、c点(N−置換マレイミド71質量%、アルキル(メタ)アクリレート単位29質量%、共重合可能な他の単量体0質量%)、及びd点(N−置換マレイミド99質量%、アルキル(メタ)アクリレート単位1質量%、共重合可能な他の単量体0質量%)の4点を結んで形成される四角形の領域内にある組成で用いられる。
【0013】
上記組成からなるマレイミド系共重合体(A)は、熱可塑性樹脂の耐熱性、耐候性、耐衝撃性、耐熱分解性の特性バランスを向上させる。
【0014】
マレイミド系共重合体(A)の製造方法は、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等、公知の方法で製造することができる。例えば、懸濁重合法による製造方法としては、重合触媒として、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機化酸化物、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、1,1’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等のラジカル発生剤を用い、分子量調整剤として、t−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のメルカプタン類を用い、懸濁安定剤(分散剤)として、(メタ)アクリル酸メチルとメタクリル酸2−スルホエチルのナトリウム塩の共重合体や、ヒドロキシアバタイト、第3リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の難溶性リン酸塩、硫酸バリウム、硫酸カルシウム水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等の無機化合物、ポリビニルアルコール、メチルセルロース等の保護コロイド等を用いて公知の方法にしたがって重合反応を行えばよい。
【0015】
さらにマレイミド系共重合体(A)の具体的製造例を挙げると、例えば、重合触媒および分子量調整剤をN−置換マレイミドを除く他の単量体の1種または2種に溶解し、その溶液を水、懸濁安定剤および残りの単量体の入った反応容器に加えて重合を行う方法、反応容器中において、重合触媒、分子量調整剤、懸濁安定剤を水に添加した後、単量体を同時または分割して添加して重合を行う方法等を採用することができる。
マレイミド系共重合体(A)の粒径は、懸濁重合により製造する場合にはその重量平均粒度が10〜8000μm、好ましくは50〜5000μmとなるように攪拌状態などの分散条件を調節して製造することが、グラフト共重合体(B)との混練操作性の面から望ましい。
また、マレイミド系共重合体(A)の分子量は、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と成形加工性のバランスに優れることから質量平均分子量が10,000〜300,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは20,000〜200,000の範囲である。
【0016】
グラフト共重合体(B)としては、ポリオルガノシロキサン成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とからなる複合ゴム(S)(以下、単に複合ゴムという)に1種または2種以上のビニル系単量体がグラフト重合されてなるものである。
上記複合ゴム(S)の代わりにポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートゴムのいずれか1種またはこれらの単純混合物をゴム源として用いても本発明に示すような優れた性能の組成物は得られず、ポリオルガノシロキサン成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが複合化されて優れた耐衝撃性、機械的強度、成形外観を有する成形物を得ることができる。
【0017】
複合ゴム(S)の構成は特に限定されないが、ポリオルガノシロキサン成分が1〜99質量%、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分が99〜1質量%からなる組成範囲であることが得られる樹脂組成物の耐衝撃性と成形外観が良好となることから好ましい。より好ましくは、ポリオルガノシロキサン成分が5〜80質量%、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分が95〜20質量%の範囲である。また、複合ゴム(S)の平均粒子径は特に限定されないが、得られる樹脂組成物の着色性が良好となることから0.01〜1.0μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.15μmの範囲である。
【0018】
複合ゴム(S)の製造方法は特に限定されないが、乳化重合法で製造するのが好適である。まず、予めポリオルガノシロキサンを乳化重合法で調製し、次にこのポリオルガノシロキサン存在下でアルキル(メタ)アクリレートゴム製造用の単量体を乳化重合するのが好ましい。
複合ゴム(S)を構成するポリオルガノシロキサン成分は、以下に示すオルガノシロキサンおよびポリオルガノシロキサン用架橋剤(以下架橋剤(I)という)を用いて乳化重合により調整でき、その際、さらにポリオルガノシロキサン用グラフト交叉剤(以下グラフと交叉剤(I)という)を併用することもできる。
【0019】
ここで用いるオルガノシロキサンとしては3員環以上の各種の環状体を用いることができ、3〜6員環のものが好ましく用いられる。3〜6員環のオルガノシロキサンの例としてはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等を挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられる。オルガノシロキサンの使用量はポリオルガノシロキサン成分中60質量%以上であり、70質量%以上であることが好ましい。架橋剤(I)としては3官能性(トリアルコキシシラン)または4官能性(テトラアルコキシシラン)のシラン系化合物が用いられ、トリメトキシシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を例示でき、これらの中では4官能性シラン化合物が好ましく、テトラエトキシシランが特に好ましい。架橋剤(I)の使用量はポリオルガノシロキサン成分中0.1〜30質量%である。
【0020】
グラフト交叉剤(I)としては次式
【化2】
(各式中、R4はメチル基を示し、R5は水素原子又はメチル基を示し、nは0、1又は2を示し、pは1〜6の整数を示す)で表される単位を形成し得る化合物等が用いられる。
【0021】
式(I−1)で表される単位を形成し得る(メタ)アクリロイルオキシアルキルシロキサンはグラフト効率が高いため効率的にグラフト鎖を形成することが可能であり、耐衝撃性発現の点で有利である。(メタ)アクリロイルオキシアルキルシロキサンの中ではメタクリロイルオキシアルキルシロキサンが好ましく、この具体例としてβ−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等が挙げられる。式(I−2)で表される単位を形成し得るビニルシロキサンとしてはビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられ、式(I−3)で表される単位を形成し得るメルカプトシロキサンとしてはγ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシエチルシランなどが挙げることができる。グラフト交叉剤(I)の使用量はポリオルガノシロキサン成分中0〜10質量%である。
【0022】
このポリオルガノシロキサンラテックス製造にあたっては例えば米国特許第2891920号明細書、同第3294725号明細書等に記載された方法を用いることができる。本発明の実施にあたっては、オルガノシロキサンと架橋剤(I)及び所望によりグラフト交叉剤(I)の混合液とをアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸等のスルホン酸系乳化剤の存在下で、例えば、ホモジナイザー等を用いて水と剪断混合する方法により製造することが好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸はオルガノシロキサンの乳化剤として作用すると同時に重合開始剤ともなるので好適である。この際、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、アルキルスルホン酸金属塩等を併用するとグラフト重合を行う際にポリマーを安定に維持するのに効果があるので好ましい。オルガノシロキサンの重合を行った後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ水溶液で中和することによる重合を停止させる。
【0023】
複合ゴムを構成するポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分は以下に示すアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分用架橋剤(以下架橋剤(II)という)及びグラフト交叉剤(以下グラフト交叉剤(II)という)を用いて合成することができる。アルキル(メタ)アクリレートとしてはメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート及びヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、1−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートを例示でき、アルキル(メタ)アクリレートとしてはn−ブチルアクリレートが好ましい。
架橋剤(II)としては多官能性(メタ)アクリレートを用いることができ、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート等をその具体例として例示できる。
【0024】
グラフト交叉剤(II)としては反応性の異なる2種の不飽和基を有する化合物が用いられ、このような化合物の例としてアリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等を挙げることができ、この中、アリルメタクリレートは架橋剤としても用いることができる。
これらの架橋剤(II)および/またはグラフト交叉剤(II)は各々単独あるいは2種以上を併用することができる。
これら架橋剤(II)および/またはグラフト交叉剤(II)の好ましい使用量は各々ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分中0.1〜10質量%である。
複合ゴム(S)の製造方法としては特に限定されないが、例を挙げるとポリオルガノシロキサンラテックス中に上記アルキル(メタ)アクリレート、架橋剤(II)及びグラフト交叉剤(II)を添加し重合を行うことができる。
【0025】
こうして得られた複合ゴム(S)にビニル系単量体をグラフト重合することによってグラフト共重合体(B)を調製することができる。
この複合ゴム(S)にグラフト重合するビニル系単量体としては、スチレン、ビニルトルエン等のモノビニル芳香族炭化水素、α−メチルスチレン等のモノビニリデン芳香族炭化水素、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸等の不飽和有機酸、グリシジルメタクリレート等のエポキシ含有エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0026】
グラフト共重合体(B)における複合ゴム(S)とグラフト共重合に用いるビニル系単量体との割合は、グラフト共重合体(B)100質量%としたときに複合ゴム(S)が30〜95質量%であることが樹脂組成物中でのグラフト共重合体の分散性が良好となり、かつ衝撃強度が高くなることから好ましく、40〜90質量%であることがより好ましい。
グラフト共重合体(B)の製造方法は特に限定されないが、一例としてはラテックス状の複合ゴム(S)に上記のビニル系単量体を加え、一段あるいは多段でラジカル重合させる方法が挙げられる。この重合には、乳化剤や重合開始剤、連鎖移動剤等前述のものが利用できる。
得られたグラフト共重合体(B)ラテックスは、塩化カルシウムや硫酸マグネシウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析・凝固することにより粉末状として分離回収することができる。
【0027】
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるマレイミド系共重合体(A)とグラフト共重合体(B)との配合比率は特に限定されず、広い範囲の割合で製造することができるが、得られる樹脂組成物の耐熱性と耐衝撃性に優れることから、合計量を100質量%としたときマレイミド系共重合体(A)が20〜99質量%となる様に配合することが好ましい。
【0028】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、マレイミド系共重合体(A)およびグラフト共重合体(B)以外にも必要に応じてその他の重合体(C)を配合することができる。
その他の重合体(C)としては、特に限定はなく、例えば、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−N−置換マレイミド三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−N−置換マレイミド三元共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−ブタジエン(SBR)、水素添加SBS、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等のスチレン系エラストマー、各種オレフィン系エラストマー、各種ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、PPS樹脂、PES樹脂、PEEK樹脂、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂およびポリアミド樹脂(ナイロン)等が挙げられ、
【0029】
好ましくは、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−N−置換マレイミド三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸−N−置換マレイミド三元共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、ポリアミド樹脂であり、これらを目的に応じて単独で、または、二種以上を併用して用いることができる。また、耐擦傷性および表面光沢をさらに改良するなどの目的で、グルタル酸無水物構造単位を主体とする樹脂をその他の重合体(C)として用いてもよい。
【0030】
その他の重合体(C)を配合する場合のその配合量は、熱可塑性樹脂組成物中0〜50質量部が好ましく、より好ましくは0〜30質量部である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、マレイミド系共重合体(A)とグラフト共重合体(B)さらに、必要に応じてその他の重合体(C)とをバンバリーミキサー、ロールミル、二軸押出機等の公知の装置を用いて機械的に混合することにより得ることができ、適宜これをペレット状に賦形して成形に用いることができる。
さらに、本発明の樹脂組成物には必要に応じて安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、顔料、染料、充填剤、帯電防止剤等を配合し得る。例えば、安定剤としては、トリフェニルホスファイト等、滑剤としてはポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等、難燃剤としてはトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のホスフェート系難燃剤、デカプロモビフェニルエーテル、デカプロビモフェニル等の臭素系難燃剤、顔料としては酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛等、充填剤としてはガラス繊維、アスベスト、ウォラストナイト、マイカ、タルク等をその目的に応じて適宜配合することができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。なお、以下の例中の%および部数は明記しない限りは質量基準とする。
また、各実施例及び比較例における諸物性は下記の方法に従って測定した。
▲1▼アイゾット衝撃強度
1/4ノッチ付き試片を用いASTM D−256にしたがって測定した。
▲2▼ビカット軟化点温度
ASTM D−1525−91に準拠して測定した。
▲3▼成形光沢
酸化チタンを3部配合した熱可塑性樹脂組成物を射出成形機(J85−ELII:日本製鋼所(株))を用いてシリンダー設定温度230℃、金型温度60℃、インジェクションスピード50%の条件で100mm×100mm×3mm板の成形を行った。得られた白着色成形板について、ASTM D−523−62 T(60度鏡面光沢度)の方法に従い表面光沢の測定を行った
【0032】
▲4▼着色性
カーボンブラックを0.8部添加した熱可塑性樹脂組成物を、▲3▼と同様の条件で成形板を調製した。得られた黒着色成形板について、JIS Z8729に準拠した色相測定(L*測定)によって行った。
▲5▼耐候性
▲3▼で得られた成形板を、サンシャインウェザオメータ(スガ試験機(株)社製WEL−SUN−DCH型)を用い、ブラックパネル温度63℃、水12分、乾燥60分のサイクルで1000時間暴露した。次いで、暴露後の成形板について、光沢を測定した。
▲6▼熱分解性
▲3▼で使用した射出成形機を用い設定温度300℃で、酸化チタンを添加しない以外は同様の条件で成形を行い、その表面に発生するシルバーストリークの数を測定した。
【0033】
参考例1:マレイミド系共重合体(A−1)の製造
撹拌機付き耐圧重合釜に、
蒸留水 200部
硫酸ナトリウム 0.3部
を仕込み、次いで、
メチルメタクリレート 25部
スチレン 30部
α−メチルスチレン 25部
N−フェニルマレイミド 20部
n−オクチルメルカプタン 0.25部
アゾビスイソブチロニトリル 0.2部
からなる単量体混合物を仕込み、室温で撹拌しながら20分間窒素バブリングさせて酸素を除去した後、内温80℃で3時間懸濁重合し、その後更に120℃に昇温し、その温度のまま30分間保持した後、冷却、濾過、水洗、乾燥して各々平均粒径約200μm、質量平均分子量103,000のビーズ状マレイミド系共重合体(A−1)を得た。
【0034】
参考例2〜10:マレイミド系共重合体(A−2)〜(A−10)の製造
参考例1記載の例において、用いる単量体混合物の種類と量を表1記載のごとく変更し、ビーズ状のマレイミド系共重合体(A−2)〜(A−10)を得た。
【0035】
【表1】
【0036】
参考例11:ポリオルガノシロキサンラテックス(L−1)の製造
オクタメチルシクロテトラシロキサン 98部
γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン 2部
を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これに
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.67部
を溶解したイオン交換水300部を添加し、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに200MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
一方、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、
ドデシルベンゼンスルホン酸 10部
イオン交換水 90部
とを注入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。
この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間に亘って滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、冷却した。次いでこの反応物を苛性ソーダ水溶液で中和した。
このようにして得られたポリオルガノシロキサン(L−1)ラテックスを170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、17.7%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサン(L−1)の重量平均粒子径は0.05μmであった。
【0037】
参考例12:ポリオルガノシロキサン(L−2)ラテックスの製造
オクタメチルシクロテトラシロキサン 97.5部
γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン 0.5部
テトラエトキシシラン 2部
を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これに
ドデシルベンゼンスルホン酸 1部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 1部
イオン交換水 200部
からなる水溶液を添加し、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに200MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
この予備混合オルガノシロキサンラテックスを、冷却管、ジャケット加熱器および攪拌装置を備えた反応器内に入れ、攪拌混合しながら80℃で5時間加熱した後約20℃に冷却し、そのまま48時間放置した。次いでこの反応物を苛性ソーダ水溶液でpH7.0に中和し重合を完結した。
このようにして得られたポリオルガノシロキサン(L−2)ラテックスを170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、36.5%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサン(L−2)の重量平均粒子径は0.16μmであった。
【0038】
参考例13:複合ゴム(S−1)およびグラフト共重合体(B−1)の製造
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、参考例11で製造した
ポリオルガノシロキサン(L−1,固形分) 8部
を採取し、イオン交換水200部((L−1)中の水を含む)を添加混合した後、
ブチルアクリレート 42部
アリルメタクリレート 0.3部
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート 0.1部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.11部
の混合物を添加した。
【0039】
この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。内部の液温が60℃となった時点で、
硫酸第一鉄 0.000075部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.000225部
ロンガリット 0.2部
イオン交換水 10部
からなる水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。アクリレート成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させポリオルガノシロキサン(L−1)とブチルアクリレートゴムとの複合ゴム(S−1)のラテックスを得た。この複合ゴム(S−1)の質量平均粒子径は0.11μmであった。
【0040】
反応器内部の液温が70℃に低下した後、
ロンガリット 0.25部
イオン交換水 10部
からなる水溶液を添加し、次いで
アクリロニトリル 2.5部
スチレン 7.5部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.05部
の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後、
硫酸第一鉄 0.001部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.003部
ロンガリット 0.2部
エマールNC−35(花王(株)製) 0.2部
イオン交換水 10部
からなる水溶液を添加し、次いで
【0041】
アクリロニトリル 10部
スチレン 30部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.2部
の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を0.5時間保持した後
キュメンヒドロパーオキサイド 0.05部
を添加し、
【0042】
さらに温度60℃の状態を0.5時間保持した後冷却した。このラテックスに
ラテムルASK 0.5部
(アルケニルコハク酸ジカリウム塩;花王(株)製)
を添加し、ポリオルガノシロキサン(L−1)とブチルアクリレートゴムとからなる複合ゴムに、アクリロニトリル、スチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体(B−1)のラテックスを得た。ラテックス中のグラフト共重合体(B−1)の重量平均粒子径は、0.12μmであった。
次いで、酢酸カルシウムを1%の割合で溶解した水溶液150部を60℃に加熱し撹拌した。この中へグラフト共重合体(B−1)のラテックス100部を徐々に滴下し凝固した。次いで析出物を分離し、洗浄した後、遠心器(国産遠心器(株)製;H−130E)を用いて1800回転毎秒の条件で2分間脱水処理した。次いで、85℃で24時間乾燥し、グラフト共重合体(B−1)を得た。また、グラフト共重合体(B−1)中のアセトン不溶分は85%であった。
【0043】
参考例14:複合ゴム(S−2)およびグラフト共重合体(B−2)の製造
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、参考例12にて得た
ポリオルガノシロキサンラテックス(L−2、固形分) 7.8部
N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム 0.2部
を混合し、蒸留水200部((L−2)中の水を含む)を添加混合した後、
ブチルアクリレート 47.2部
アリルメタクリレート 0.27部
1,3−ブチレングルコールジメタクリレート 0.07部
キュメンハイドロパーオキサイド 0.11部
の混合物を添加した。
この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。内部の液温が60℃となった時点で、
硫酸第一鉄 0.00006部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.0002部
ロンガリット 0.16部
蒸留水 6.7部
【0044】
からなる水溶液を添加し、ラジカル重合を開始せしめた。アクリレート成分の重合により、液温は78℃まで上温した。1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させポリオルガノシロキサン(L−2)とブチルアクリレートゴムとの複合ゴム(S−2)ラテックスを得た。得られた複合ゴム(S−2)の質量平均粒子径は、0.25μmであった。
次に、反応器内部の液温が60℃に低下した後、
ロンガリット 0.4部
蒸留水 6.7部
からなる水溶液を添加し、次いで
【0045】
アクリロニトリル 6.2部
スチレン 18.8部
キュメンハイドロパーオキサイド 0.11部
の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後、
硫酸第一鉄 0.00013部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.0004部
ロンガリット 0.15部
蒸留水 6.7部
からなる水溶液を添加し、さらに
アクリロニトリル 5部
スチレン 15部
キュメンハイドロパーオキサイド 0.09部
の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後冷却し、ポリオルガノシロキサン(L−2)とブチルアクリレートゴムとからなる複合ゴム(S−2)に、アクリロニトリル、スチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体(B−2)のラテックスを得た。
次いで硫酸アルミニウムを5質量%の割合で溶解した水溶液100部を60℃に加熱し撹拌した。この中へグラフト共重合体(B−2)ラテックス100部を徐々に滴下し凝固した。次いで析出物を分離し、洗浄した後乾燥し、粉末状のグラフト共重合体(B−2)を得た。グラフト共重合体(B−2)中のアセトン不溶分は87%であった。
【0046】
参考例15:複合ゴム(S−3)およびグラフト共重合体(B−3)の製造
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、
ポリオルガノシロキサンラテックス(L−2、固形分) 30部
イオン交換水((L−2)中の水を含む) 242.9部
を加え、窒素置換した後に50℃に昇温し、
n−ブチルアクリレート 37.5部
アリルメタクリレート 2.5部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.3部
からなる混合物を添加して室温のまま30分間攪拌した。次いで、
硫酸第一鉄七水塩 0.0003部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.001部
ロンガリット 0.17部
イオン交換水 5部
からなる水溶液を添加してラジカル重合を開始させ、その後内温70℃で2時間重合を保持し、アクリレートの重合を完結させ複合ゴム(S−3)ラテックスを得た。この複合ゴム(S−3)の重量平均粒子径は0.19μmであった。
【0047】
引き続きこの複合ゴム(S−3)に、
アクリロニトリル 9部
スチレン 21部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.3部
からなる混合物を、内温70℃にて45分間にわたり滴下し、その後70℃で4時間保持し、複合ゴム(S−3)へのグラフト重合を完結した。
このグラフト共重合体(B−3)ラテックスを、同量の12%塩化カルシウム60℃水溶液中に攪拌しながら投入し、その後、80℃にて5分間、さらに95℃にて5分間保持することにより凝固した。次いで析出物を分離し、洗浄した後、脱水処理した。次いで、85℃で24時間乾燥し、グラフト共重合体(B−3)を得た。このグラフト共重合体(B−3)中のアセトン不溶分は93%であった。
【0048】
参考例16:グラフト共重合体(B−4)の製造
参考例15において、複合ゴム(S−3)のままで、グラフト重合に用いる単量体をアクリロニトリルおよびスチレンを全てメチルメタクリレートとした以外は同様にして重合および凝固回収を行い、グラフト共重合体(B−4)を得た。このグラフト共重合体(B−4)中のアセトン不溶分は83%であった。
【0049】
参考例17:グラフト共重合体(B−5)の製造
公知の乳化重合により、質量平均粒子径0.3μmであるポリブタジエンゴム50部に、アクリロニトリル15部およびスチレン35部からなる単量体混合物がグラフト重合したジエンゴム系グラフト共重合体(B−5)を得た。
【0050】
参考例18:グラフト共重合体(B−6)の製造
公知の乳化重合により、質量平均粒子径0.2μmであるポリブタジエンゴム50部に、メタクリル酸メチル35部およびスチレン12.5部、アクリロニトリル2.5部からなる単量体混合物がグラフト重合したジエンゴム系グラフト共重合体(B−6)を得た。
【0051】
参考例19:その他の重合体(C−1)の製造
公知の懸濁重合により、メチルメタクリレート99部、メチルアクリレート1部からなる、質量平均分子量71,000であるビーズ状のアクリル系共重合体(C−1)を得た。
【0052】
実施例1〜7、比較例1〜10:
参考例1〜10で製造したマレイミド系共重合体(A−1)〜(A−10)、参考例13〜18で得たグラフト共重合体(B−1)〜(B−6)、必要に応じて参考例19で得たその他の共重合体(C−1)を表2に記載のごとく合計100部になる様に、そしてエチレンビスステアリルアミド0.4部、ステアリン酸バリウム0.4部を配合してヘンシェルミキサーにてブレンドした後、これらを二軸押出機(日本製鋼所(株)社製、TEX−30α)に供給し、シリンダー温度250℃で溶融混練しペレット状に賦形した。得られたペレットを乾燥後、射出成形機(日本製鋼所(株)社製、J85ELII型)に供給し、シリンダー温度250℃、金型温度60℃で射出成形し、各種試験片を得て物性を評価した。
これら樹脂組成物の評価結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2から明らかなように、実施例1〜7の熱可塑性樹脂組成物は、アイゾット衝撃強度およびビカット軟化点温度、耐熱分解性が高く、光沢や着色性の成形外観も良好であり、また、加速暴露試験による耐候性にも優れていた。
一方、比較例1〜7の熱可塑性樹脂組成物は、アイゾット衝撃強度、耐熱性、耐熱分解性、光沢や着色性の成形外観、耐候性のいずれかの項目において劣るものであった。
また、実施例1および3より、マレイミド系共重合体に使用するマレイミド系単量体がN−フェニルマレイミドであった場合には、アイゾット衝撃強度とビカット軟化点温度とのバランスに優れていた。
さらに、実施例1および比較例8、9より、グラフト共重合体に使用する複合ゴムの粒子径は0.03〜0.15μmの範囲にあった方がL*値が低く着色性に優れていた。
特に、実施例1、2、7の熱可塑性樹脂組成物は、これまで知られてない高いレベルでアイゾット衝撃強度、耐熱性、耐熱分解性、成型外観、耐候性のバランスを発現できる。
【0055】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、良好な成型樹脂外観と高い耐熱性と耐熱分解性が得られ、しかも、高いレベルの耐衝撃性等の機械的強度と耐候性とを有する熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
特に、耐衝撃性、耐熱性、耐熱分解性、成形外観そして耐候性とのバランスは従来知られているゴム変性熱可塑性樹脂組成物と比べて非常に優れており、本発明の熱可塑性樹脂組成物は各種工業用材料としての利用価値が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるマレイミド系共重合体(A)の配合割合を示す組成三角座標。
Claims (2)
- N−置換マレイミド、アルキル(メタ)アクリレート単位及び共重合可能な他の単量体で構成される三角座標において、a点(N−置換マレイミド1質量%、アルキル(メタ)アクリレート単位1質量%、共重合可能な他の単量体98質量%)、b点(N−置換マレイミド1質量%、アルキル(メタ)アクリレート単位30質量%、共重合可能な他の単量体69質量%)、c点(N−置換マレイミド71質量%、アルキル(メタ)アクリレート単位29質量%、共重合可能な他の単量体0質量%)、及びd点(N−置換マレイミド99質量%、アルキル(メタ)アクリレート単位1質量%、共重合可能な他の単量体0質量%)の4点を結んで形成される領域内(ただし、境界線上は含まない)にある単量体単位組成のマレイミド系共重合体(A)と、ポリオルガノシロキサン存在下でアルキル(メタ)アクリレートゴム製造用の単量体を乳化重合して得られる質量平均粒子径が0.03〜0.15μmであるポリオルガノシロキサン/アルキル(メタ)アクリレート複合ゴム(S)に1種または2種以上のビニル系単量体がグラフト重合されてなるグラフト共重合体(B)を含有する熱可塑性樹脂組成物。
- N−置換マレイミドが、N−フェニルマレイミドである請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
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