JP3662617B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、成形性、耐熱性および耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、樹脂材料の耐熱性、耐衝撃性に関する要求は、より高度なものとなっている。特に自動車部品、例えばメーターフード、インスルメントパネル、コンソールボックス等の内装部品あるいは外板、ランプハウジング等の外装部品においては、耐熱性、耐衝撃性に加え、部品の大型化に伴う良好な射出成形性が要求されている。
一方、高い耐熱性を有する樹脂材料として、マレイミド系共重合体が知られているが、これはN置換マレイミド化合物に成形性や熱安定性を付与する目的で、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物が共重合されたものであり、高い耐熱性を有するが、非常脆く、単独では使用するのが困難であった。
【0003】
マレイミド系共重合体の靱性を改良する方法として、特開昭59−184243号公報には、マレイミド系共重合体にアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABSグラフト共重合体)を添加する方法およびエチレン−プロピレン−共役ジエン共重合体にスチレンおよびアクリロニトリルをグラフト重合したグラフト共重合体(AESグラフト共重合体)を添加する方法が記載されている。
【0004】
また、特開昭61−264041号公報には、マレイミド系共重合体に、アクリルゴムにアクリロニトリルおよびスチレンをグラフト重合したグラフト共重合体(AASグラフト共重合体)を添加する方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、マレイミド系共重合体は、射出成形時の流動性が悪く、特にL/t(L:流動距離、t:成形品厚み)の大きい成形品を射出成形によって得る場合には、成形温度を上げ、樹脂の溶融粘度を下げた状態で成形を行わなければならない。したがってマレイミド共重合体においては、高温成形時の耐衝撃性の発現性が要求される。
【0006】
しかしながら、マレイミド系共重合体にABSグラフト共重合体、AESグラフト共重合体またはAAS共重合体を添加する方法では、L/t値の大きい成形品を得るためのの高い成形温度の条件ではゴム質層の熱劣化により、得られる成形品の耐衝撃性は著しく低下する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、マレイミド系共重合体の高温成形時の耐衝撃性について鋭意検討した結果、ビニル重合性官能基を有するポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムを含有したグラフト共重合体とマレイミド系共重合体より構成される樹脂組成物が、高温で成形しても高い耐衝撃性を有する成形品を与えることをを見出し本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨とするところは、(A)芳香族ビニル単位(a−1)30〜70重量%、シアン化ビニル単位(a−2)10〜25重量%、およびマレイミド系単量体(a−3)5〜40重量%(合計100重量%)からなるマレイミド系共重合体0.01〜99.9重量部と、
(B)ビニル重合性官能基含有シロキサンを含むポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレ−トゴム(b−2)とからなる複合ゴムに、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物またはシアン化ビニル化合物から選ばれた一種または二種以上の化合物(b−3)がグラフト重合したグラフト共重合体0.01〜99.9重量部とからなる熱可塑性樹脂組成物にある。
【0009】
本発明に係るマレイミド系共重合体(A)は、芳香族ビニル単位を30〜70重量%含有することが好ましい。含有率が30重量%未満では、得られる樹脂組成物の加工性が低下し、また70重量%を越えた場合は含有するマレイミド化合物単位が少なくなり得られる成形品の耐熱性が低くなる傾向がある。
【0010】
また、本発明に係るマレイミド系共重合体は、シアン化ビニル単位を10〜25重量%含有することが好ましい。含有率が10重量%未満では得られる樹脂組成物の加工性が、また得られる成形品の耐薬品性が低下する傾向がある。25重量%を越えた範囲では成形時に熱変色が生じる傾向がある。
【0011】
また、本発明に係るマレイミド系共重合体は、マレイミド化合物単位を5〜40重量%含有することが好ましい。含有率が5重量%未満では、得られる成形品の耐熱性低くなり、また40重量%を越えると成形性が低下してしまう傾向がある。
【0012】
本発明に係るマレイミド系共重合体(A)を構成する芳香族ビニル単位とは、芳香族ビニル単量体のラジカル重合によって形成される繰り返し単位である。芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0013】
また、シアン化ビニル単位とは、シアン化ビニル単量体のラジカル重合によって形成される繰り返し単位である。シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられる。
【0014】
また、マレイミド化合物単位とは、マレイミド化合物単量体のラジカル重合によって形成される繰り返し単位である。マレイミド化合物単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−トルイルマレイミド、N−キシリールマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−ターシャリーブチルマレイミド等が挙げられるが、得られる樹脂組成物の耐熱性および成形性を考慮するとN−フェニルマレイミドが好ましい。
【0015】
本発明に係るマレイミド系共重合体(A)の製法としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法およびバルク重合法等が挙げられる。
【0016】
本発明に係るグラフト共重合体(B)を構成するポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能性基としては、特に限定されるものではないが、得られる樹脂組成物の成形性および耐衝撃性を考慮するとメタクリル基、ビニル基、アクリル基およびスチリル基等が好ましく、さらに好ましくはメタクリル基である。
なお、これらのビニル重合性官能基は、一種以上を含むことができ、その含有量は特に限定されるものではない。
【0017】
また、本発明に係るグラフト共重合体(B)を構成するビニル重合性官能基含有シロキサンを含むポリオルガノシロキサンの製法としては、ジメチルシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンからなる混合物またはさらにシロキサン系架橋剤を含む混合物を乳化剤と水によって乳化させたラテックスを、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサ−や、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザ−等を使用して微粒子化した後、酸触媒を用いて高温下で重合させ、次いでアルカリ性物質により酸を中和するものである。
【0018】
重合に用いる酸触媒の添加方法としては、シロキサン混合物、乳化剤および水とともに混合する方法と、シロキサン混合物が微粒子化したラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法等があるが、ポリオルガノシロキサンの粒子径の制御のしやすさを考慮するとシロキサン混合物が微粒子化したラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法が好ましい。
【0019】
また、ポリオルガノシロキサンの製造に用いるジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体があげられ、3〜6員環のものが好ましい。具体的にはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられるが、これらは単独でまたは二種以上混合して用いられる。
【0020】
また、ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有しかつジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合しうるものであれば特に限定されないが、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮するとビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好ましい。具体的には、β−メタクリロキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシランおよびδ−メタクリロキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロキシシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン、p−ビニルフェニルジメトキシメチルシランさらにγ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンが挙げられる。
【0021】
なお、これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、一種または二種以上の混合物として用いることができるが、その使用量は特に限定されるものではない。
【0022】
また、本発明に係るポリオルガノシロキサン製造の際用いる乳化剤としては、アニオン系乳化剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエ−テル硫酸エステルナトリウムなどの中から選ばれた乳化剤が使用される。特にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸系の乳化剤が好ましい。
【0023】
これらの乳化剤は、シロキサン混合物100重量部に対して0.05〜5重量部程度の範囲で使用される。使用量が少ないと分散状態が不安定となり微小な粒子径の乳化状態を保てなくなる。また、使用量が多いとこの乳化剤に起因する樹脂組成物成形品の着色が甚だしくなり不都合である。
【0024】
シロキサン混合物、乳化剤、水および/または酸触媒を混合する方法は、高速攪拌による混合、ホモジナイザ−などの高圧乳化装置による混合などがあるが、ホモジナイザ−を使用した方法は、ポリオルガノシロキサンラテックスの粒子径の分布が小さくなるので好ましい方法である。
【0025】
ポリオルガノシロキサンの重合に用いる酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類および硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類が挙げられる。これらの酸触媒は一種でまたは二種以上を組み合わせて用いられる。また、これらの中では、ポリオルガノシロキサンラテックスの安定化作用にも優れている点で脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、n−ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸などの鉱酸とを併用すると、ポリオルガノシロキサンラテックスの乳化剤成分に起因する樹脂組成物の着色を低減させることができる。
【0026】
ポリオルガノシロキサンの重合温度は、50℃以上が好ましく、更に好ましくは80℃以上である。
【0027】
ポリオルガノシロキサンの重合時間は、酸触媒をシロキサン混合物、乳化剤および水とともに混合、微粒子化させて重合する場合は2時間以上、さらに好ましくは5時間以上であり、酸触媒の水溶液中にシロキサン混合物が微粒子化したラテックスを低下する方法では、ラテックスの滴下終了後1時間程度保持することが好ましい。
【0028】
重合の停止は、反応液を冷却、さらにラテックスを苛性ソ−ダ、苛性カリ、炭酸ナトリウムなどのアルカリ性物質で中和することによって行うことができる。
【0029】
このようにして製造されたポリオルガノシロキサンラテックスに、アルキル(メタ)アクリレ−トと多官能性アルキル(メタ)アクリレ−トとからなるアルキル(メタ)アクリレ−ト成分を含浸させた後重合させることによって複合ゴムを得ることができる。
【0030】
アルキル(メタ)アクリレ−トとしては、例えばメチルアクリレ−ト、エチルアクリレ−ト、n−プロピルアクリレ−ト、n−ブチルアクリレ−ト、2−エチルヘキシルアクリレ−ト等のアルキルアクリレ−トおよびヘキシルメタクリレ−ト、2−エチルヘキシルメタクリレ−ト、n−ラウリルメタクリレ−ト等のアルキルメタクリレ−トが挙げられ、特にn−ブチルアクリレ−トの使用が好ましい。
【0031】
多官能性アルキル(メタ)アクリレ−トとしては、例えばアリルメタクリレ−ト、エチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、プロピレングリコ−ルジメタクリレ−ト、1,3−ブチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、1,4−ブチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、トリアリルシアヌレ−ト、トリアリルイソシアヌレ−ト等が挙げられる。
【0032】
本発明に係るポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレ−トゴムからなる複合ゴムは、ポリオルガノシロキサン成分のラテックス中へ上記アルキル(メタ)アクリレ−ト成分を添加し、通常のラジカル重合開始剤を作用させて重合することによって調製できる。アルキル(メタ)アクリレ−トを添加する方法としては、ポリオルガノシロキサン成分のラテックスと一括で混合する方法とポリオルガノシロキサン成分のラテックス中に一定速度で滴下する方法がある。尚、得られるグラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性を考慮するとポリオルガノシロキサン成分のラテックスを一括で混合する方法が好ましい。また、重合に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。この中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸にナトリウム塩・ロンガリッド・ヒドロパ−オキサイドを組み合わせたスルホキシレ−ト系開始剤が好ましい。
【0033】
本発明に係るグラフト共重合体は、上記のごとく乳化重合によって製造された複合ゴムに芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物またはシアン化ビニル化合物から選ばれた一種または二種以上の単量体をグラフト重合することによって製造できる。グラフト重合に用いる単量体のうち芳香族ビニル化合物としては例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等であり、(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えばメチルメタクリレ−ト、エチルメタクリレ−ト、2−エチルヘキシルメタクリレ−ト、メチルアクリレ−ト、エチルアクリレ−ト、ブチルアクリレ−ト等であり、シアン化ビニル化合物としては例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。グラフト重合するこれらの単量体(b−3)のうち、得られる成形品の耐衝撃性および成形外観を考慮すると、スチレンとアクリロニトリルの組合せが特に好ましい。
【0034】
グラフト重合は、複合ゴムのラテックスに芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステルまたはシアン化ビニル化合物から選ばれた一種または二種以上の単量体を加え、ラジカル重合技術により一段であるいは多段で行うことができる。
【0035】
また、グラフト重合において用いる単量体中にはグラフトポリマ−の分子量やグラフト率を調製するための各種連鎖移動剤を添加することができる。
【0036】
グラフト重合が終了した後、ラテックスを塩化カルシウムまたは硫酸アルミニウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固することによりグラフト共重合体を分離し、回収することができる。
【0037】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、このようにして製造したグラフト共重合体(B)とマレイミド系共重合体とを通常の公知の混練機械によって押出し成形することで製造することができる。このような成形機としては押出機、射出成形機、ブロ−成形機、カレンダ成形機およびインフレ−ション成形機等が挙げられる。
【0038】
また、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、マレイミド共重合体(A)0.01〜99.9とグラフト共重合体(B)99.9〜0.01からなるものである。
【0039】
さらに、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて染料、顔料、安定剤、補強剤、充填材、難燃剤等を配合することができる。
【0040】
以下実施例により本発明を説明する。尚、参考例、実施例および比較例において『部』および『%』は特に断らない限り『重量部』および『重量%』を意味する。
【0041】
実施例および比較例におけるアイゾット衝撃強度の測定は、ASTM D258に準拠した方法により行った。
【0042】
実施例および比較例におけるスパイラル流動長の測定は、幅15mm、厚み2mmのスパイラル状の射出成形用金型の射出成形を、東芝機械製射出成形機IS−100ENを用いて、シリンダ設定温度250℃あるいは320℃、金型温度60℃、インジェクションスピード90%および射出圧力設定53%の条件で射出成形した成形品の樹脂の流動方向の長さを測定することによって行った。
【0043】
【実施例】
(参考例1)マレイミド系共重合体(A−1)の製造
完全混合重合反応器、ギヤポンプ、第2重合反応器、ギヤポンプ、脱揮押出機およびペレタイザーを流動的につなげた製造装置を用いて、N−フェニルマレイミド、アクリロニトリルおよびスチレンを重合温度100℃、押出機温度250℃にて重合を行い、ペレット状のN−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体(A−1)を得た。
得られたマレイミド系共重合体(A−1)中の各単量体単位含有量は、N−フェニルマレイミド:22重量%、アクリロニトリル:20重量%、およびスチレン58重量%であり、固有粘度[η]は0.70であった。
【0044】
(参考例2)ポリオルガノシロキサンラテックス(L−1)の製造
オクタメチルシクロテトラシロキサン99.5部、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン0.5部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解した蒸留水300部を添加し、ホモミキサ−にて10000回転/分で2分間攪拌した後、ホモジナイザ−に300kg/cm2 の圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
【0045】
一方、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸5部と蒸留水95部とを注入し、5重量%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。
【0046】
この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間に亘って滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、冷却した。次いでこの反応物を苛性ソ−ダ水溶液で中和した。
【0047】
このようにして得られたラテックスを170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、18.0重量%であった。
【0048】
(参考例3) グラフト共重合体(B−1)の製造
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、参考例2にて得たポリオルガノシロキサンラテックス(L−1)64.4部、N−ラウロイルザルコシンナトリウム0.3部を採取し、蒸留水249.4部を添加混合した後、ブチルアクリレ−ト69.9部、アリルメタクリレ−ト0.4部、1,3−ブチレングリコ−ルジメタクリレ−ト0.1部およびキュメンヒドロパ−オキサイト0.17部の混合物を添加した。
【0049】
この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。内部の液温が60℃となった時点で、硫酸第一鉄0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部およびロンガリッド0.24部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始せしめた。アクリレ−ト成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリレ−ト成分の重合を完結させポリオルガノシロキサンとブチルアクリレ−トゴムとの複合ゴムのラテックスを得た。
【0050】
反応器内部の液温が60℃に低下した後、ロンガリッド0.4部を蒸留水10部に溶解した水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル9.2部、スチレン27.7部およびキュメンヒドロパ−オキサイト0.17部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後、硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部およびロンガリッド0.23部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル7.4部、スチレン22.1部およびキュメンヒドロパ−オキサイト0.13部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後冷却し、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレ−トゴムとからなる複合ゴムに、アクリロニトリルとスチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体のラテックスを得た。
【0051】
次いで硫酸アルミニウムを7.5重量%の割合で溶解した水溶液150部を60℃に加熱し攪拌した。この中へグラフト共重合体のラテックス100部を徐々に滴下し凝固した。次いで析出物を分離し、洗浄した後乾燥し、グラフト共重合体を得た。
【0052】
(実施例1)
このグラフト共重合体(B−1)45部および参考例1によって調整したマレイミド系共重合体(A−1)55部をヘンシェルミキサ−を用いて混合し、この混合物を250℃に加熱した脱気式押出機に供給し、混練してペレットを得た。得られたペレットをシリンダ温度250℃あるいは320℃、金型温度60℃に設定した射出成形機によって試験片を成形した。この試験片によりアイゾット衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
また、得られたペレットのシリンダー温度270℃および320℃の条件でスパイラル流動長の測定結果を表1に示す。
【表1】
【0054】
(参考例4) グラフト共重合体(B−2)の製造
特開昭62−181312号公報の参考例に記載される方法にて、ポリブタジエン20部および架橋アクリルゴム80部からなる多重構造アクリルゴム(L−2)ラテックスを調整した。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、参考例4にて得たアクリルゴムラテックス(L−2)50部(固形分)および蒸留水100部を入れ70℃に昇温した。次いでアクリロニトリル12.5部、スチレン37.5部およびキュメンヒドロパ−オキサイト0.13部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度80℃の状態を30分間保持した後冷却し、グラフト共重合体(B−2)ラテックスを得た。
次いでグラフト共重合体(B−2)ラテックスを希硫酸にて凝固し、析出物を分離、洗浄した後乾燥し、グラフト共重合体(B−2)を得た。
【0055】
(比較例1)
このグラフト共重合体(B−2)45部および参考例1によって調整したマレイミド系共重合体(A−1)55部をヘンシェルミキサ−を用いて混合し、この混合物を250℃に加熱した脱気式押出機に供給し、混練してペレットを得た。得られたペレットをシリンダ温度250℃あるいは320℃、金型温度60℃に設定した射出成形機によって試験片を成形した。この試験片によりアイゾット衝撃強度を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0056】
また、得られたペレットのシリンダー温度270℃および320℃の条件でスパイラル流動長の測定結果を表1に示す。
【0057】
(比較例2)
ポリブタジエン45重量%にアクリロニトリル/スチレン(重量比7/3)55重量%グラフト共重合したABSグラフト共重合体45部および参考例1によって調整したマレイミド系共重合体(A−1)55部をヘンシェルミキサ−を用いて混合し、この混合物を250℃に加熱した脱気式押出機に供給し、混練してペレットを得た。得られたペレットをシリンダ温度250℃あるいは320℃、金型温度60℃に設定した射出成形機によって試験片を成形した。この試験片によりアイゾット衝撃強度を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0058】
また、得られたペレットのシリンダー温度270℃および320℃の条件でスパイラル流動長の測定結果を表1に示す。
【0059】
【発明の効果】
本発明は以上説明したとおりであり、次のように特別に顕著な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
【0060】
1)本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、耐熱性、耐衝撃性および成形性のバランスに優れる。
【0061】
2)特にL/t値(L:流動距離、t:成形品厚み)の大きい成形品の成形において、高い成形温度で成形を行った場合でも、得られた成形品は優れた耐衝撃性を示し、自動車部品用途あるいは大型電機用途等の分野における利用価値は極めて高い。
Claims (1)
- (A)芳香族ビニル単位(a−1)30〜70重量%、シアン化ビニル単位(a−2)10〜25重量%、およびマレイミド系単量体(a−3)5〜40重量%(合計100重量%)からなるマレイミド系共重合体0.01〜99.9重量部と、
(B)ビニル重合性官能基含有シロキサンを含むポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレ−トゴム(b−2)とからなる複合ゴムに、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物またはシアン化ビニル化合物から選ばれた一種または二種以上の化合物(b−3)がグラフト重合したグラフト共重合体0.01〜99.9重量部とからなる熱可塑性樹脂組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP00854895A JP3662617B2 (ja) | 1995-01-23 | 1995-01-23 | 熱可塑性樹脂組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
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