JP4016800B2 - 内面溶接金属の原質部、再熱部とも厳格靭性要求を満たす厚肉大径ストレートuoe鋼管およびその製造方法 - Google Patents

内面溶接金属の原質部、再熱部とも厳格靭性要求を満たす厚肉大径ストレートuoe鋼管およびその製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大径UOE鋼管、特に内外面1層盛り大入熱サブマージドアーク溶接により製造される厚肉UOE鋼管の溶接金属において厳格靭性を獲得する、内面溶接金属の原質部、再熱部とも厳格靭性要求を満たす厚肉大径ストレートUOE鋼管およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の海底パイプラインは、石油・ガス開発の深海化、特に水深2000mを超える海域への敷設を反映して厚肉、厳格靭性が要求されている。サブマージドアーク溶接金属の靭性を確保するために最も効果的な方法として、Mo、TiそしてBなどを含む溶接材料を用いて溶接を行い、アシキュラーフェライト(Acicular Ferrite:以後AFと表記)と呼ばれる微細な溶接金属組織を得るという方法が知られている(例えば特許文献1,2参照)。TiはTiO として溶接金属内において、AF変態の核生成サイトとして作用し、Bは旧オーステナイト粒界に偏析し、粒界の初析フェライトの粗大化を抑制する。
【0003】
しかし、大入熱溶接においてはTi- B添加のみでは完全には粗大な粒界フェライトの生成を防止できないので、焼入性を高める元素であるMoを添加し、組織の均一微細化をはかる必要がある。そこで、Mo‐Ti‐B系サブマージドアーク溶接ワイヤが低温においても高靭性を要する鋼管のシーム溶接部に広く用いられている。
【0004】
ところが、Mo‐Ti‐B系溶接ワイヤでは両面1層溶接を行う場合、内、外面溶接金属原質部では微細AF組織により高靭性が得られるが、内面溶接金属の外面溶接により再熱される部分では靭性が劣化すること(再熱脆化)が問題となっている。このような再熱脆化の対策として、溶接金属を低酸素化したり(特許文献3)、Mn、Moの添加を抑制し、その代わりにNiを添加したり(特許文献4)、Ceqを限定した上で圧延条件を適正化する(特許文献5)技術が開示されている。
【0005】
また、再熱脆化は溶接したままの状態では固溶しているMo、Nb、V、Ti等が再熱により析出するためとし、式:PHIW=Mo+5Ti+10Nb+20V+200 B(右辺の元素記号はその元素の質量%を表す)で表されるパラメータPHIWを1.5 質量%以下、Pcmでは0.165 質量%以下とすることで再熱脆化を抑止する手法(特許文献6)や、最熱脆化は再熱時の冷却過程で靭性の劣る上部ベイナイト(Upper Bainite :以後UBと表記)が生成するためとし、UBの生成を低減するために内面溶接金属の焼入性、すなわちPcmを外面溶接金属のそれより抑える手法(特許文献7)が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭53−63238 号公報
【特許文献2】
特開昭53−22137 号公報
【特許文献3】
特開昭59−156599号公報
【特許文献4】
特開昭62−34694 号公報
【特許文献5】
特開昭61−266126号公報
【特許文献6】
特開平5−375 号公報
【特許文献7】
特開平9−1344号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、このMo‐Ti‐B系溶接金属の再熱脆化の原因を鋭意追求した。実継手(実際に施工された溶接部)においては、内面溶接金属の外面溶接による再熱は局所的であり、再熱部そのものの靭性を測定することが難しい。よって内面溶接相当の入熱条件及び溶接ワイヤ条件で片面溶接を行い、その溶接金属からシャルピー試験片を採取するに十分な寸法の試験片を切り出し、外面溶接による再熱を擬似的に再現する熱サイクルを付与した。C、Mo、Ti、Bの再熱脆化に与える影響を検討した結果、従来の合金組成のMo‐Ti‐B系溶接金属は原質部では良好な靭性が得られるものの、900 〜1200℃の温度領域を最高点として再熱された部分で靭性が著しく劣化する傾向が観察された。
【0008】
これより本発明者らは、従来のMo‐Ti‐B系組成を有する溶接金属の再熱脆化機構を次のように解釈する。原質の溶接金属は、微細なAF主体の組織であり高靭性を示すが、900 〜1200℃の温度領域へ再加熱されるとAFはオーステナイトに変態し、その冷却過程で、オーステナイト粒界より生成、成長するポリゴナルフェライト(Polygonal Ferrite :以後PFと表記)が支配的な組織となり、結果的に、PF粒間にUB及び島状マルテンサイト(Martensite‐Austenite :以後M‐Aと表記)を含む混合組織となる。UB、M‐Aは脆化を助長する組織であり、すなわち本発明者らは、これらの形成が再熱脆化の主因と考える。さらに本発明者らは、溶接金属中のC、Si、Mn、Mo、Ti、B量、特にMo、Bが再熱部のM‐A組織生成に大きな影響を与えると考える。
【0009】
本発明は、板厚30mm以上の厚肉UOE鋼管を対象としている。このような厚肉鋼管のシーム部は両面1層サブマージド溶接工程において施工されるが、溶接入熱が大きいため溶接金属の冷却速度は小さくなる。よって溶接金属原質部において微細なAF組織を得るためには、板厚30mm未満の場合の溶接金属と比べ、Mo、Bの添加量を制限する必要がある。両面1層サブマージド溶接工程において、内面の後に施される外面部の溶接金属は再熱を受けることがないので比較的容易にMo、B量を増加することができる。
【0010】
一方、外面溶接により再熱を受ける内面溶接金属においては、Mo、Bは再熱脆化に大きな影響を与えるので、その添加は原質部での微細組織を得るために十分でありつつも再熱部の脆化を抑えるために過剰とならない量を選択しなければならない。特に大入熱の外面溶接により、内面溶接金属内の再熱脆化する領域は拡大される。よって、内面溶接金属の再熱脆化部を含まざるを得ないルート、内面位置でのシャルピー衝撃試験において吸収エネルギー(vE) だけでなく延性破面率(SA)の規定も一般化しつつあり、-20 ℃でのSAを最低値で40%以上要求する需要家も現れた。これを達成するには120 〜130 J以上の吸収エネルギーが必要となる。
【0011】
このような動向に鑑みて本発明は、板厚30mm以上の厚肉高靭性UOE鋼管の両面1層サブマージドアーク溶接法において、外面溶接による内面溶接金属の再熱脆化を防止しうる効果的なサブマージドアーク溶接技術を確立して、内面、外面とも(内面溶接金属の原質部、再熱部とも)に厳格靭性要求を満たす厚肉大径ストレートUOE鋼管をその製造方法とともに提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成した本発明は、母材の板厚が30mm以上で、管周方向の1個所に内面側が先に形成された内外面1層ずつの溶接部を有する厚肉大径ストレートUOE鋼管であって、
母材の組成が質量%で、C:0.10%以下、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.020%以下、S:0.0020%以下を含み、さらにCu:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Nb:0.07%以下、V:0.07%以下、Mo:0.05%以下、Ti:0.1%以下、B:0.0030%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、
内面側の溶接金属組成が質量%で、C:0.08%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、Cu:0.50%以下、Cr:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Nb:0.07%以下、V:0.07%以下、Mo:0.045%以下、Ti:0.005〜0.030%、B:0.0005〜0.0015%、N:0.0080%以下、O:0.035%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ下記式で表されるPcmが0.120〜0.180%であり、
外面側の溶接金属組成が質量%で、C:0.10%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、Cu:0.50%以下、Cr:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Nb:0.07%以下、V:0.07%以下、Mo:0.1〜0.4%、Ti:0.005〜0.050%、B:0.0005〜0.0060%、N:0.0080%以下、O:0.035%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ下記式で表されるPcmが0.140〜0.200%であることを特徴とする、内面溶接金属の原質部、再熱部とも厳格靭性要求を満たす厚肉大径ストレートUOE鋼管である。
【0013】

Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5B
ただし、式中C、Si、Mn、Cu、Cr、Ni、Mo、V、Bはそれぞれの元素の質量%を表す。
また、本発明は、板厚30mm以上のUO加工鋼材の周端突合せ部を内面側先行の内外面1層ずつのサブマージドアーク溶接により接合して造管する工程を有する厚肉大径UOE鋼管の製造方法において、
前記UO加工鋼材(前記本発明のUOE鋼管の母材に相当する。)として、質量%で、C:0.10%以下、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.020%以下、S:0.0020%以下を含み、さらにCu:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Nb:0.07%以下、V:0.07%以下、Mo:0.05%以下、Ti:0.1%以下、B:0.0030%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成のものを用い、
内面側には質量%で、C:0.08%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、Cu:0.50%以下、Cr:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Nb:0.07%以下、V:0.07%以下、Mo:0.045%以下、Ti:0.005〜0.030%、B:0.0005〜0.0015%、N:0.0080%以下、O:0.035%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ下記式で表されるPcmが0.120〜0.180%になる組成の溶接金属が形成され、
外面側には質量%で、C:0.10%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、Cu:0.50%以下、Cr:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Nb:0.07%以下、V:0.07%以下、Mo:0.1〜0.4%、Ti:0.005〜0.050%、B:0.0005〜0.0060%、N:0.0080%以下、O:0.035%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ下記式で表されるPcmが0.140〜0.200%になる組成の溶接金属が形成されるように選定した溶接材料を用いて前記サブマージドアーク溶接を施工することを特徴とする、内面溶接金属の原質部、再熱部とも厳格靭性要求を満たす厚肉大径ストレートUOE鋼管の製造方法である。
【0014】

Pcm=C+Si/30 +(Mn+Cu+Cr)/20 +Ni/60 +Mo/15 +V/10 +5B
ただし、式中C、Si、Mn、Cu、Cr、Ni、Mo、V、Bはそれぞれの元素の質量%を表す。
【0015】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に係るUOE鋼管における母材の化学成分の限定理由を説明する。
C:母材の強度と靭性に非常に大きな影響を及ぼす元素であり、0.10%を超えると靭性や延性に悪影響を及ぼすため、0.10%以下とした。なお、好ましくは、0.03〜0.08%である。
【0016】
Si:Siは、鋼の脱酸過程で必然的に含まれる元素であるが、鋼中に過剰に存在するとHAZ(Heat Affected Zone)部の靭性を劣化するため、0.5 %以下にすべきである。なお、好ましくは、0.1 〜0.4 %である。
Mn:母材の強度と靭性を同時に向上する極めて重要な元素であるが、2.0 %を超えると偏析等により鋼材に悪影響を及ぼすために上限を2.0 %とした。なお、好ましくは、1.0 〜2.0 %である。
【0017】
P、S:P、Sは中心偏析を助長する元素であり低いことが望ましく、それぞれ0.020 %、0.0020%を上限とした。
Cu:母材の強度を確保するために必要な元素であるが、0.5 %を超えて含有すると母材およびHAZ部が硬化するため0.5 %を上限とした。
Cr:母材の強度を確保するために必要な元素であるが、0.5 %を超えて含有するとHAZ部の靭性を劣化させるため0.5 %を上限とした。
【0018】
Ni:母材の強度と靭性を向上させる元素であるが、0.5 %を超えて含有するとHAZ部が硬化するため0.5 %を上限とした。
Nb、V:母材およびHAZ部の強度と靭性を確保するために添加されているが、Nb、V共に0.07%を超えると靭性に悪影響を及ぼすため、Nbを0.07%以下、Vを0.07%以下とした。なお、好ましくは、Nb:0.02〜0.06%、V:0.06%以下である。
【0019】
Mo:は、母材の強度を確保するために必要な元素であるが、0.05%を超えて含有するとHAZ部が硬化するために0.05%を上限とした。
Ti:Tiは、母材の靭性確保に必要な元素であるが、0.1 %を超えて含有すると、逆に母材の靭性を劣化させるために、0.1 %を上限とした。なお、好ましくは、0.005 〜0.03%である。
【0020】
B:Bは、圧延中にオーステナイト粒界に偏析して焼入性を上げる作用があるが、0.0030%を超えるとHAZ部の靭性を劣化させるために、上限を0.0030%とした。なお、好ましくは、0.0005%以下である
して、溶接金属の成分組成を限定した理由は次の通りである。
C:Cは高焼入性成分であり、その増加により炭化物やマルテンサイトが生成し、靭性は低下するので、内面では0.08%以下、外面では0.10%以下にする必要がある。なお、好ましくは、内面で0.03〜0.07%、外面で0.03〜0.08%である。
【0021】
Si:Siは脱酸剤として添加されるが、同時に焼入性成分であるため過剰に添加されるとUBが生成し靭性を低下させるので、内面、外面ともに0.5 %以下とする。なお、好ましくは、内面、外面ともに0.1 〜0.4 %である。
Mn:Mnは脱酸剤および焼入性成分として必要であるが、内面、外面共に、0.8 %未満ではその効果に乏しく、一方、1.8 %を超えるとUBが生成し、靭性が低下するので、0.8 〜1.8 %とした。
【0022】
Cu:Cuは焼入性成分であり、母材希釈およびワイヤのメッキから混入する成分であるが、内面、外面共に0.50%を超えて含有すると焼入性が過剰となり靭性を害するので、0.50%を上限とした。
Cr:Crは焼入性成分であり、母材希釈により含有されるが、内面、外面共に0.50%を超えて含有すると焼入性が過剰となり靭性を害するので、0.50%を上限とした。
【0023】
Ni:Niは焼入性成分であり、母材希釈により含有されるが、内面、外面共に0.50%を超えて含有すると焼入性が過剰となり靭性を害するので、0.50%を上限とした。
Nb、V:Nb、Vは焼入性成分であり、母材希釈により含有されるが、内面、外面共に0.07%を超えて含有すると焼入性が過剰となり靭性を害するので、Nb、V共に0.07%を上限とした。なお、好ましくは、内面、外面ともに、Nb:0.02〜0.06%、V:0.06%以下である。
【0024】
Mo:Moは焼入性成分であり、溶接金属原質部では組織を微細化し靭性を向上させるが、再熱部ではUB、M‐Aの生成を助長し靭性を低下させる。よって内面では0.045 %以下に抑える必要がある。一方、外面では組織微細化による靭性改善のために最低0.1 %は必要であるが、0.4 %を超えて添加すると焼入性が過剰となってマルテンサイト組織となり、靭性を害するので0.1 〜0.4 %とする。
【0025】
Ti:Tiは微細なフェライトを形成させて靭性を向上させるが、内面、外面共に0.005 %未満ではこの効果に乏しいので最低限0.005 %必要である。一方、内面では0.030 %、外面では0.050 %を超えると固溶Tiが増加して炭化物、窒化物の析出により靭性が低下する。よって、内面では0.005 〜0.030 %、外面では0.005 〜0.050 %とした。
【0026】
B:Bは高焼入性成分であり、Tiとの相乗効果によって溶接金属原質部では微細なAFを形成させ靭性を向上させるが、内面、外面共に0.0005%未満ではこの効果に乏しい。一方、再熱部ではUB、M‐Aの生成を助長し靭性を低下させる。よって内面では0.0015%以下に抑える必要がある。一方、外面では0.0060%を超えると原質部にマルテンサイトが生成し靭性が低下するため、上限を0.0060%とした。
【0027】
N:Nは溶接金属中に不可避的に含まれる成分であるが、Bを窒化して粒界フェライトの生成を促進し、靭性を低下させるので、内面、外面共に0.0080%以下とする必要がある。
O:Oは溶接金属中に不可避的に含まれる成分であるが、内面、外面共に0.035 %を超えると溶接金属中の介在物の増加により靭性は低下するので、0.035 %を上限とした。
【0028】
Pcm:Pcmは溶接金属の組成全体としての焼入性を示すものであり、焼入性が不足すると初析フェライトが析出して靭性が劣化する。再熱脆化を考慮せずに原質部の靭性を獲得するためには、0.140 %以上必要である。このため、外面での下限を0.140 %とした。それに対し内面は、外面溶接により再熱される部分とのバランスを考慮する必要があるので、0.120 %以上とした。また、0.200 %を超えて過大となると焼入性が過剰となるので原質部でも靭性が劣化する。よって外面の上限を0.200 %とした。さらに、0.180 %超では再熱部にてUB、M‐Aが析出して靭性が劣化する。そこで内面では上限を0.180 %とした。
【0029】
本発明のUOE鋼管を製造するには、内外面1層サブマージドアーク溶接により接合される母材である板厚30mm以上のUO加工鋼材として、本発明の母材組成になるのものを用い、内面側と外面側の溶接金属組成がそれぞれ本発明範囲に収まるように、前記サブマージドアーク溶接に用いる内面側と外面側の溶接材料(ワイヤおよび/またはフラックス)を選定すればよい。
【0030】
【実施例】
表1に示す化学組成及び板厚を有するAPI規格X65クラスUOパイプ状鋼板PA、PBを、内面側先行の内外面1 層ずつのサブマージドアーク溶接により周端突合せ接合して溶接造管するに際し、内面、外面に用いる溶接材料を種々変え、同一溶接条件で溶接を行って、本発明例相当鋼管と本発明を外れる比較例相当鋼管を製造し、それらの靭性を比較した。この比較試験では、表2に示す化学組成の溶融型フラックスと表3に示す化学組成のワイヤとを組み合わせて4電極両面1層盛りサブマージドアーク溶接を行った。この場合の板厚別の溶接条件は表4に示すとおりであり、その開先形状は図1に示すとおりである。また、実施例と比較例の母材と各電極のワイヤの組合せは表5に示すとおりである。
【0031】
【表1】
Figure 0004016800
【0032】
【表2】
Figure 0004016800
【0033】
【表3】
Figure 0004016800
【0034】
【表4】
Figure 0004016800
【0035】
【表5】
Figure 0004016800
【0036】
溶接終了後、図2に示すように溶接継手の外面位置(a:母材1外面から2mm深さの位置)、内面位置(b:母材1内面から2mm深さの位置)、ルート位置(c:試験片中心線6が会合部7を通る位置)よりそれぞれ、10mm×10mmサイズのシャルピー衝撃試験片4を採取し、JIS Z 2242に従いシャルピー衝撃試験を行った。表6に溶接金属の化学組成を示す。外面、内面、ルートの各位置から採取した試料に基づく衝撃試験結果は表7に示したとおりである。
【0037】
【表6】
Figure 0004016800
【0038】
【表7】
Figure 0004016800
【0039】
表7より明らかなように、本発明例相当鋼管の溶接金属では、外面により再熱を受ける内面とどこからも再熱されない外面の両方とも高い靭性を示す。なお、内面と外面の溶接金属の組成及びPcmを変えるにあたり、本実施例においては、それぞれ組成の異なる溶接ワイヤを様々な組合せで1、2、3、4電極に使用することで対処した(表5)。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、低温用高靭性UOE鋼管の母材の化学成分ならびに両面1層サブマージドアーク溶接により形成される内面および外面溶接金属の化学成分をそれぞれ区別して限定したので、内外面ともに優れた低温靭性を有する厳格靭性要求を満たす厚肉大径ストレートUOE鋼管を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における開先形状(a:板厚31.4mm、b:板厚31.8mm)を示す断面図である。
【図2】実施例におけるシャルピー衝撃試験片採取位置を示す断面図である。
【符号の説明】
1 母材
2 内面溶接金属
3 外面溶接金属
4 シャルピー衝撃試験片
5 ノッチ
6 試験片中心線
7 会合部

Claims (2)

  1. 母材の板厚が30mm以上で、管周方向の1個所に内面側が先に形成された内外面1層ずつの溶接部を有する厚肉大径ストレートUOE鋼管であって、
    母材の組成が質量%で、C:0.10%以下、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.020%以下、S:0.0020%以下を含み、さらにCu:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Nb:0.07%以下、V:0.07%以下、Mo:0.05%以下、Ti:0.1%以下、B:0.0030%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、
    内面側の溶接金属組成が質量%で、C:0.08%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、Cu:0.50%以下、Cr:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Nb:0.07%以下、V:0.07%以下、Mo:0.045%以下、Ti:0.005〜0.030%、B:0.0005〜0.0015%、N:0.0080%以下、O:0.035%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ下記式で表されるPcmが0.120〜0.180%であり、
    外面側の溶接金属組成が質量%で、C:0.10%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、Cu:0.50%以下、Cr:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Nb:0.07%以下、V:0.07%以下、Mo:0.1〜0.4%、Ti:0.005〜0.050%、B:0.0005〜0.0060%、N:0.0080%以下、O:0.035%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ下記式で表されるPcmが0.140〜0.200%であることを特徴とする、内面溶接金属の原質部、再熱部とも厳格靭性要求を満たす厚肉大径ストレートUOE鋼管。

    Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5B
    ただし、式中C、Si、Mn、Cu、Cr、Ni、Mo、V、Bはそれぞれの元素の質量%を表す。
  2. 板厚30mm以上のUO加工鋼材の周端突合せ部を内面側先行の内外面1層ずつのサブマージドアーク溶接により接合して造管する工程を有する厚肉大径UOE鋼管の製造方法において、
    前記UO加工鋼材として、質量%で、C:0.10%以下、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.020%以下、S:0.0020%以下を含み、さらにCu:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Nb:0.07%以下、V:0.07%以下、Mo:0.05%以下、Ti:0.1%以下、B:0.0030%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成のものを用い、
    内面側には質量%で、C:0.08%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、Cu:0.50%以下、Cr:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Nb:0.07%以下、V:0.07%以下、Mo:0.045%以下、Ti:0.005〜0.030%、B:0.0005〜0.0015%、N:0.0080%以下、O:0.035%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ下記式で表されるPcmが0.120〜0.180%になる組成の溶接金属が形成され、
    外面側には質量%で、C:0.10%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、Cu:0.50%以下、Cr:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Nb:0.07%以下、V:0.07%以下、Mo:0.1〜0.4%、Ti:0.005〜0.050%、B:0.0005〜0.0060%、N:0.0080%以下、O:0.035%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、かつ下記式で表されるPcmが0.140〜0.200%になる組成の溶接金属が形成されるように選定した溶接材料を用いて前記サブマージドアーク溶接を施工することを特徴とする、内面溶接金属の原質部、再熱部とも厳格靭性要求を満たす厚肉大径ストレートUOE鋼管の製造方法。

    Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5B
    ただし、式中C、Si、Mn、Cu、Cr、Ni、Mo、V、Bはそれぞれの元素の質量%を表す。
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