JP5176591B2 - 溶接熱影響部靭性に優れた溶接鋼管 - Google Patents

溶接熱影響部靭性に優れた溶接鋼管 Download PDF

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本発明は、厚鋼板を冷間曲げ加工により筒状に成形し、突合せ部を溶接することにより製造された管厚25mm以上の溶接鋼管に関し、天然ガスや原油用ラインパイプ用溶接鋼管として好適な、引張強さが565Mpa以上の溶接熱影響部靱性に優れたものに関する。
天然ガスや原油の輸送用として使用されるラインパイプは、高圧操業による輸送効率向上を達成するため、年々高強度、厚肉化が進んでいる。
また、天然ガスを輸送する海底パイプラインシステムでは、敷設深度が深くなるほど敷設時の耐座屈強度を確保し、操業時の耐水圧強度および潮流に対する安全性の観点から、より厚肉のラインパイプが求められている。
さらに、ガス田および油田の開発は、ロシアやアラスカなどの酷寒地域や北海などの寒冷海域に拡大する傾向があり、ラインパイプ材にはより低温での母材および溶接熱影響部の靭性が要求される。
ラインパイプ用溶接鋼管は、一般的に厚鋼板を筒状に成型し、突合せ部を内外面から1層ずつシーム溶接をすることで製造されるが、管厚が25mmを超える厚肉鋼管になると、シーム溶接の入熱が増大し、溶接熱影響部靭性を確保することが困難になる。
特許文献1は溶接熱影響部靭性に優れた鋼板の製造方法に関し、実質的にAlを含有しない鋼にTi、Mgを添加して、高温で安定な酸化物を生成し鋼中に分散させて溶接熱影響部組織の粗粒化を抑制することが記載されている。
また、特許文献2は厚肉大径鋼管の溶接による製造方法に関し、通常内外面ずつ1層で行われるシーム溶接を肉厚30mm以上において肉厚の増大にあわせて内面1層外面2層、内面2層外面2層と多層盛溶接とし、1パスあたりの溶接入熱を低減する方法が記載れている。
特許第3378433号公報 特許第2650601号公報
しかしながら、特許文献1記載のように鋼中にAlを実質的に含有させない場合、安価かつ強脱酸元素であるAlを用いた脱酸を行うことができず、製鋼コストが増大するだけでなく、酸化物系不純物の増大が懸念される。
また、Mg系酸化物は、高温で安定であるため溶接熱影響部組織のピンニング効果を発揮するが、酸化物を鋼中に十分なピンニング力を発揮するだけの量を均一かつ微細に分散させることが困難である。
特許文献2記載のようにシーム溶接を多層にすることは、鋼管の生産性を大幅に低下させるだけでなく、靭性劣化が最も著しいとされるICCGHAZ(Inter Critical Coarse Grain HAZ:先行する溶接によって形成された溶融線近傍の粗大粒からなる溶接熱影響部が後続する溶接によってAc〜Ac変態点に再加熱された領域)のシーム溶接部断面に占める割合を増大させることとなる。
そこで、本発明は、上述した問題を解決すべく、生産性に優れる管厚25mm以上の溶接熱影響部靭性に優れた溶接鋼管を提供することを目的とする。
本発明者等は、高い生産性を確保するため、シーム溶接を内外面各1層で行うこととし、当該シーム溶接部において優れた溶接部靭性が得られるミクロ組織や溶け込み形状について再現熱サイクル試験や試験溶接継手を用いて種々検討を行った。
その結果、1.溶接部において最も靭性が低い部分は溶融線近傍粗粒域が特定の温度域に再加熱された領域であること、2.当該領域を細粒化することによって靭性が改善されること、3.溶接部の溶け込み形状によりシャルピー衝撃試験で評価される靭性値が影響を受けることを知見した。
以下の説明において、内外面1層ずつの溶接において先行して行う溶接はback側溶接、後行して行う溶接はfinal側溶接とする。
本発明は得られた知見を基に更に検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
(1)内面または外面のいずれかを先行して行った、内外面各1層のシーム溶接部を備えた管厚が25mm以上の溶接鋼管であり、前記内外面各1層のシーム溶接部において、Back側となるシーム溶接の溶融線近傍粗粒域で、Final側となるシーム溶接によってAc1〜Ac3変態点まで再加熱された領域における旧オーステナイト粒の平均粒径が100μm以下で、前記Final側となるシーム溶接の、表面下6mm位置における溶融線の接線と、前記Final側となるシーム溶接の溶接ビードの中心線が成す角度が20°以上で、前記Final側となるシーム溶接の溶融線近傍粗粒域における旧オーステナイト粒径が300μm以下であることを特徴とする溶接熱影響部靭性に優れた溶接鋼管。
(2)鋼の化学成分が、
質量%で、
C: 0.03〜0.08%
Si: 0.05%以下
Mn: 1.0〜2.0%
P: 0.006%以下
S: 0.005%以下
Al: 0.02〜0.05%
Nb: 0.005〜0.025%
Ti: 0.005〜0.030%
N: 0.001〜0.010%
を含有し、さらに、
Cu: 0.10〜0.60%
Ni: 0.10〜1.20%
Cr: 0.05〜0.40%
Mo: 0.05〜0.40%
の1種または2種以上を含有し、
下式で示される炭素等量(Ceq)が0.30≦Ceq≦0.45を満たし、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする(1)記載の溶接熱影響部靭性に優れた溶接鋼管。
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5
(3)更に、質量%で、
Zr: 0.0005〜0.0300%
Ca: 0.0005〜0.0100%
Mg: 0.0005〜0.0100%
REM: 0.0005〜0.0200%
の1種または2種以上を含有することを特徴とするに記載の溶接熱影響部靱性に優れた溶接鋼管。
本発明によれば、管厚25mm以上の溶接熱影響部靭性に優れたラインパイプ用溶接鋼管の製造が低コストかつ生産性良く可能となり産業上極めて有効である。
本発明は、溶接部の形状と溶接熱影響部のミクロ組織を規定する。以下に、限定理由を説明する。
1.積層法
シーム溶接部は、内面または外面のいずれかを先行して行った、内外面各1層で溶接する。本発明が対象とする管厚25mm以上の溶接鋼管のシーム溶接を、内外面各1層溶接とするため、多電極サブマージアーク溶接法を用いる。内面と外面のどちらの溶接を先行して行ってもよいが、通常の工場レイアウトは、内面溶接を先行することが多いため、以下の説明は、先行を内面溶接として行い、内面側溶接はback側溶接、外面側溶接をfinal側溶接とする。
2.Back側シーム溶接
内外面各1層のシーム溶接部において最も靭性に劣る領域は、Back側シーム溶接のICCGHAZのため、当該領域のミクロ組織において、旧オーステナイト粒の平均粒径を100μm以下とする。
表1に種々の成分組成のラインパイプ用鋼板を用いて、再現熱サイクルシャルピー衝撃試験(試験温度−30℃、試験本数3本)行った結果を示す。再現熱サイクルは溶接部の4箇所において、管厚25mm以上の溶接鋼管のシーム溶接で得られる熱履歴を模した、以下のものとした。
1.final側溶融線近傍粗粒域(以下、final側CGHAZ(CGHAZはCoarse Grain HAZの略称))、
2.back側溶融線近傍粗粒域(以下、back側CGHAZ)、
3.back側溶接の溶融線近傍粗粒域がFinal側溶接によってAc〜Ac変態点に再加熱された領域(以下、ICCGHAZ(Inter Critical Coarse Grain HAZの略称))、
4.back側溶接によって形成された溶融線近傍粗流域がfinal側溶接によって600℃〜Ac変態点に再加熱された領域(以下、SCCGHAZ(Sub Critical Coarse Grain HAZの略称))での熱サイクルとした。
Figure 0005176591
得られた試験結果より、back側ICCGHAZで最も靭性が劣っていることが認められる。図1に、表1の鋼No.1〜3についてback側ICCGHAZの靭性に及ぼす旧オーステナイト粒径の影響を調査した結果を示す。旧オーステナイト粒径は、back側CGHAZの再現熱サイクルにおいて、最高温度(1400℃)での保持時間および1400℃から800℃までの冷却時間を変えて変化させた。
図1より、旧オーステナイト粒径を微細にするほど、シャルピー衝撃値が高くなることがわかる。ICCGHAZの靱性値は、極めて小さな値となるが、実際の溶接継手のシャルピー衝撃値を評価する際は、ノッチ底に0.5〜2.0mm程度しか含まれない。
そこで、溶接継手とICCGHAZを模擬した再現熱サイクル材のシャルピー衝撃値の相関をとったところ、再現熱サイクル材の3本の平均値を25J以上にすれば、溶接継手で40Jを安定的に確保できることがわかった。ICCGHAZの旧オーステナイト粒径を100μm以下にすることにより、目標値を達成することが可能である。
3.Final側シーム溶接部
溶接鋼管のシーム溶接部のシャルピー衝撃試験は、通常、Final側からシャルピー衝撃試験片を採取して行うため、本発明では、Final側シーム溶接部における溶接部の溶け込み形状と、CGHAZにおける旧オーステナイト粒径を規定する。
表2に、板厚26.8mmでV開先を施した表1の鋼No.1を溶接入熱6〜12kJ/cmの4電極サブマージアーク溶接によりFinal側溶接を模擬した片面溶接を施して作成した溶接継手のシャルピー衝撃試験を示す。
4電極サブマージアーク溶接は、溶け込み形状を変化させるため開先形状の開先角度を4種類とし、旧オーステナイト粒径を変化させるため各開先角度について溶接入熱6〜12kJ/cmとして行った。
シャルピー衝撃試験は継手のFinal側の板厚方向各位置からシャルピー衝撃試験片を採取して、切欠き位置:CGHAZ、試験温度:−30℃、試験本数:9本で実施した。
Figure 0005176591
表2より、Final側溶接の、表面下6mm位置における溶融線の接線と、前記Final側溶接ビードの中心線が成す角度が20°以上で、CGHAZにおける旧オーステナイト粒径が300μm以下の場合、最も優れたシャルピー衝撃試験結果が得られることが認められる。
尚、final側溶接部の表面下6mmの位置は、海底用ラインパイプの材質評価に適用されるDNV−OS F101の外面FLシャルピー試験の採取位置である。
内圧に対する破壊性能を考えた場合、外表面に近いほど高い応力状態になるため、外表面に近くなおかつ一般的に管厚方向との溶融線の傾斜角度が鋭角になり破壊の危険性が高まる箇所であるため、鋼管破壊性能を評価する上で適した位置である。
当該位置におけるシャルピー衝撃試験では、ラインパイプの供用時に受ける内圧で管周方向に作用する応力に対する管厚方向に入ったき裂や欠陥の破壊抵抗の評価に好適である。
本発明に係る溶接鋼管を565MPa以上の引張強度とする場合に好適な鋼板の成分組成について以下に説明する。なお、成分量の%は全て質量%である。
C:0.03〜0.08%
Cは低温変態組織においては、過飽和に固溶することで強度上昇に寄与する。この効果を得るためには、0.03%以上の添加が必要であるが、0.08%を超えて添加すると大入熱溶接熱影響部の硬度上昇や組織中に島状マルテンサイトを生成し靭性が劣化するため、上限を0.08%とする。
Si:0.05%以下
Siは脱酸材として作用し、さらに固溶強化により鋼材の強度を増加させる元素であるが、溶接熱影響部の組織が上部ベイナイトであるときは、島状マルテンサイトの生成を助長し、溶接熱影響部靭性を著しく劣化させる。本発明では、Siを実質的に含まないようにすることで、溶接熱影響部が上部ベイナイトである場合の溶接熱影響部靭性が著しく向上するという知見を得た。従って、Siはできるだけ低減することが望ましいが、0.05%までは許容する。好ましくは0.04%未満である。
Mn:1.0〜2.0%
Mnは焼入れ性向上元素として作用し、1.0%以上の添加によりその効果が得られるが、連続鋳造プロセスを適用した場合、中心偏析部の濃度上昇が著しく、2.0%を超える添加を行うと偏析部の靭性が劣化するため、上限を2.0%とする。
P:0.006%以下
Pは固溶強化により強度を増加させる元素であるが、母材および溶接熱影響部の靭性や溶接性を劣化させるため、一般的にその含有量を低減することが望まれる。本発明では、Pを低減することにより溶接熱影響部の硬さを低減させ、溶接熱影響部靭性を向上させる。特に、0.006%以下にすることで溶接熱影響部靭性を著しく改善するため、Pは0.006%以下とした。
S:0.005%以下
Sは鋼中に不可避的不純物として存在する。特に、中心偏析部での偏析が著しい元素であり、母材の偏析部起因の靱性劣化を助長する。従って、Sはできるだけ低減することが望ましいが、製鋼プロセス上の制約から0.005%までは許容する。
Al:0.02〜0.05%
Alは脱酸元素として作用する。0.02%以上の添加で十分な脱酸効果が得られるが、0.05%を超えて添加すると鋼中の清浄度が低下し、靭性劣化の原因となるため上限を0.05%とする。
Nb:0.005〜0.025%
Nbは、熱間圧延時のオーステナイト未再結晶領域を拡大する効果があり、特に900℃まで未再結晶領域とするためには、0.005%以上の添加が必要である。一方で、Nbの添加量を増大させると溶接熱影響部、特に大入熱溶接の溶接熱影響部に島状マルテンサイトを生成し、さらに多層溶接時の再熱溶接熱影響部では析出脆化を引き起こして靭性が著しく劣化するため、上限を0.025%とする。Nbの添加量は、溶接熱影響部靭性の観点からは低いほど好ましい。
Ti:0.005〜0.030%
Tiは窒化物を形成し、鋼中の固溶N量低減に有効である。析出したTiNはピンニング効果で熱間圧延前のスラブ加熱時の母材および溶接熱影響部、特に大入熱溶接の溶接熱影響部のオーステナイト粒の粗大化を抑制して、母材および溶接熱影響部の靭性の向上に寄与する。この効果を得るためには、0.005%以上の添加が必要であるが、0.030%を超えて添加すると、粗大化したTiNや炭化物の析出により母材および溶接熱影響部靭性が劣化するようになるため上限を0.030%とする。
N:0.001〜0.010%
Nは通常鋼中に不可避的不純物として存在するが、前述の通りTi添加を行うことで、オーステナイト粗大化を抑制するTiNを形成するため規定する。必要とするピンニング効果を得るためには、0.001%以上鋼中に存在することが必要であるが、0.010%を超える場合は、固溶Nの増大による母材および溶接熱影響部の靭性劣化が著しいため、上限を0.010%とする。
本発明では、さらに、Cu、Ni、Cr、Moの1種または2種以上を添加する。Cu、Ni、Cr、Moはいずれも焼入れ性向上元素として作用し、これらの元素の1種または2種以上の添加することで板厚6mm以上の厚鋼板において高強度化が可能となる。
Cu:0.10〜0.60%
Cuは、0.10%以上添加することで鋼の焼入れ性向上に寄与する。一方で、過剰に添加すると母材および溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、添加する場合は、上限を0.60%とする。
Ni:0.10〜1.20%
Niは、0.10%以上添加することで鋼の焼入れ性向上に寄与する。特に多量に添加しても他の元素に比べ靭性劣化が小さく、強靭化には有効な元素である。しかし、高価な元素で、1.20%を超えて添加すると焼入れ性が過剰に増加して溶接熱影響部靭性が劣化するので、添加する場合は、上限を1.20%とする。
Cr:0.05〜0.40%
Crは、0.05%以上添加することで鋼の焼入れ性向上に寄与する。一方で、過剰に添加すると母材および溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、添加する場合は、上限を0.40%とする。
Mo:0.05〜0.40%
Moは、0.05%以上添加することで鋼の焼入れ性向上に寄与する。一方で、Moの添加量を増大させると大入熱溶接部を靭性を劣化させるようになる。また、多層溶接時の再熱溶接熱影響部で析出脆化を引き起こし靭性が劣化するようになるため、添加する場合は、上限を0.40%とする。Moの添加量は、溶接熱影響部靭性の観点からは低いほど好ましい。
Ceq:0.30〜0.45
Ceq(=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14.各元素は含有量(質量%)で、含有しない元素は0とする)は、C、Mnなどの焼入れ性元素の効果を見積もる指標として用いることができ、強度確保の観点から0.30以上に制御することが望ましい。一方で、0.45を超えると靭性や溶接性を損なうこととなるので上限を0.45%とする。
本発明の基本成分組成は以上であるが、さらに靭性を向上させる場合、Zr、Ca、Mg、REMの1種または2種以上を添加することができる。
Zr、Ca、Mg、REMは、いずれも鋼中の非金属介在物であるMnSの形態制御、あるいは酸化物あるいは窒化物を形成し、主に溶接熱影響部におけるオーステナイト粒の粗大化をピンニング効果で抑制する。
Zr:0.0005〜0.0300%
Zrは、鋼中で炭窒化物を形成し、特に溶接熱影響部においてオーステナイト粒の粗大化を抑制するピンニング効果をもたらす。十分なピンニング効果を得るためには0.0005%以上の添加が必要であるが、0.0300%を超えて添加すると鋼中の清浄度が著しく低下し、靭性が低下するようになるので、添加する場合は0.0005〜0.0300%とする。
Ca:0.0005〜0.0100%
Caは、鋼中の硫化物の形態制御に有効な元素であり、0.0005%以上添加することで靭性に有害なMnSの生成を抑制する。しかし、0.0100%を超えて添加するとCaO−CaSのクラスタを形成し、靭性を劣化させるようになるので、添加する場合は、0.0005〜0.0100%とする。
Mg:0.0005〜0.0100%
Mgは、製鋼過程で鋼中に微細な酸化物として生成し、特に溶接熱影響部においてオーステナイト粒の粗大化を抑制するピンニング効果をもたらす。十分なピンニング効果を得るためには、0.0005%以上の添加が必要であるが、0.0100%を超えて添加すると鋼中の清浄度が低下し、靭性が低下するようになるため、添加する場合は、0.0005〜0.0100%とする。
REM:0.0005〜0.0200%
REMは、鋼中の硫化物の形態制御に有効な元素であり、0.0005%以上添加することで靭性に有害なMnSの生成を抑制する。しかし、高価な元素であり、かつ0.0200%を超えて添加しても効果が飽和するため、添加する場合は、0.0005〜0.0200%とする。
残部は、Feおよび不可避的不純物とする。なお、本発明では、HAZ靱性に対し有害な元素であるVおよび溶接性に対して有害な元素であるBの積極的な添加を行わない。これらの元素は、不可避的不純物の1種として取り扱う。望ましくは、Vを0.005%以下およびBを0.0005%以下とする。
本発明に係る溶接鋼管は、上述した成分組成の鋼を板厚が25mm以上の鋼板とした後、筒状に成形し、突合せ部を内外面から1層ずつシーム溶接し、その後、拡管または縮管矯正を行って製造する。鋼板の製造条件は特に規定しないが、565MPa以上の引張強度とする場合、加速冷却や直接焼入れー焼戻しにより製造することが好ましい。
表3に示す化学成分の溶鋼を真空溶解炉で溶製し、連続鋳造法により150mm厚のスラブとした。ついで、これらのスラブを熱間圧延し、引き続き加速冷却を行うことで厚鋼板(25.4〜30.9mm)とした。
得られた鋼板を用いて、UO成形法により鋼管素材を成形し、仮付け溶接後、4電極サブマージアーク溶接によりシーム部に対し、初層を内面から第2層を外面から溶接し、その後拡管を行うことで溶接鋼管とした。図2に開先形状を、表4に開先形状の各部の寸法を示す。開先形状は鋼板1の外面11側と内面側12に開先を設けたX開先とした。
このとき、内外面のオーステナイト粒径は、内外面の入熱バランスを変化させることで、外面溶融線の角度は外面の開先形状を変化させることで変化させた。
得られた溶接鋼管から溶接部断面サンプルを切り出し、鏡面研磨、ナイタールエッチを行い、デジタルカメラにより継手形状を観察し、外面溶接ビードの鋼管外面側表面から1/5t位置(板厚表面下6mm)における溶融線と外面溶接のビード中心線がなす角度(θ)を測定した。
また、同サンプルを光学顕微鏡により観察し、内面溶接によって形成された溶融線近傍溶接熱影響部が外面溶接によってAc1〜Ac3変態点まで再加熱された領域における旧オーステナイト粒の平均粒径(D1)および外面溶接によって形成された溶融線近傍溶接熱影響部における旧オーステナイト粒の平均粒径(D2)を測定した。
旧オーステナイトの平均粒径は、当該箇所の溶融線と接する溶接熱影響部の旧オーステナイトの円相当径を画像処理により20個以上求め、その平均値を採用した。なお、Ac1〜Ac3変態点まで再加熱されることによって生じた逆変態オーステナイトと考えられる粒は、測定から除外した。
また、得られた溶接鋼管の溶接部から図3に示すようにJIS Z 2202の規格に準拠した、Vノッチシャルピー試験片を採取し、JIS Z 2242の規格に準拠したシャルピー試験を実施し、−30℃での吸収エネルギを各条件について3本ずつ測定し、その平均値および最低値を求めた。
表5に作製した溶接鋼管の溶接部ミクロ組織測定結果と、シャルピー試験結果を示す。
本発明例は、いずれも内外面FLシャルピー試験および会合部FLシャルピー試験において、最低値50J以上を達成している。これに対して、本発明の範囲を外れる比較例は、最低値が50Jを下回っている。
鋼管No.2、6では、外面開先が1段であるため外面溶接の溶融線と外面溶接のビード中心線がなす角度が20°を下回っているため、外面FLシャルピー試験で低い吸収エネルギを呈している。
また、鋼管No.4は内面溶接入熱が大きいため、鋼管No.10はTiが添加されておらず鋼中でTiNによるオーステナイト粒のピンニングが行われないために、Ac1〜Ac3変態点まで再加熱された領域における旧オーステナイト粒の平均粒径が100μmを超え、会合部FLシャルピー試験で低いエネルギを呈している。
また、鋼管No.10、11もTiが添加されておらず鋼中でTiNによるオーステナイト粒のピンニングが行われないことと外面溶接入熱が大きいことにより、外面溶接によって形成された溶融線近傍溶接熱影響部における旧オーステナイト粒の平均粒径が400μmを超え、外面FLシャルピー試験で低いエネルギを呈している。
Figure 0005176591
Figure 0005176591
Figure 0005176591
back側ICCGHAZの靭性に及ぼす旧オーステナイト粒径の影響を調査した結果を示す図。 開先形状を説明する図。 シャルピー試験片採取位置を示す図。

Claims (3)

  1. 内面または外面のいずれかを先行して行った、内外面各1層のシーム溶接部を備えた管厚が25mm以上の溶接鋼管であり、前記内外面各1層のシーム溶接部において、Back側となるシーム溶接の溶融線近傍粗粒域で、Final側となるシーム溶接によってAc1〜Ac3変態点まで再加熱された領域における旧オーステナイト粒の平均粒径が100μm以下で、前記Final側となるシーム溶接の、表面下6mm位置における溶融線の接線と、前記Final側となるシーム溶接の溶接ビードの中心線が成す角度が20°以上で、前記Final側となるシーム溶接の溶融線近傍粗粒域における旧オーステナイト粒径が300μm以下であることを特徴とする溶接熱影響部靭性に優れた溶接鋼管。
  2. 鋼の化学成分が、
    質量%で、
    C: 0.03〜0.08%
    Si: 0.05%以下
    Mn: 1.0〜2.0%
    P: 0.006%以下
    S: 0.005%以下
    Al: 0.02〜0.05%
    Nb: 0.005〜0.025%
    Ti: 0.005〜0.030%
    N: 0.001〜0.010%
    を含有し、さらに、
    Cu: 0.10〜0.60%
    Ni: 0.10〜1.20%
    Cr: 0.05〜0.40%
    Mo: 0.05〜0.40%
    の1種または2種以上を含有し、
    下式で示される炭素等量(Ceq)が0.30≦Ceq≦0.45を満たし、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1記載の溶接熱影響部靭性に優れた溶接鋼管。
    Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5
  3. 更に、質量%で、
    Zr: 0.0005〜0.0300%
    Ca: 0.0005〜0.0100%
    Mg: 0.0005〜0.0100%
    REM: 0.0005〜0.0200%
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項2に記載の溶接熱影響部靱性に優れた溶接鋼管。
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