JP3814112B2 - シーム溶接部の低温強靱性に優れた超高強度鋼管及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然ガス・原油輸送用ラインパイプとして広く使用でき、高圧化による輸送効率の向上及び外径・重量の低減による現地施工能率の向上が可能である900MPa以上の引張強さを有するシーム溶接部の低温靱性の優れた超高強度ラインパイプおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、原油・天然ガスの長距離輸送方法としてパイプラインの重要性がますます高まっている。現在、長距離輸送用の幹線ラインパイプとしては米国石油協会(API)規格X65が設計の基本になっており、実際の使用量も圧倒的に多い。しかし、(1) 高圧化による輸送効率の向上、(2) ラインパイプの外径・重量の低減による現地施工能率の向上、のためより高強度ラインパイプが要望されている。これまでにX80(引張強さ620MPa以上)までのラインパイプの実用化がされているが、さらに高強度のラインパイプに対するニーズが強くなってきた。現在、超高強度ラインパイプ製造法の研究は、従来のX80ラインパイプの製造技術(例えば、NKK技報No.138(1992), pp24-31 およびThe 7th Offshore Mechanics and Arctic Engineering (1988), Volume V, pp179-185)を基本に検討されているが、これではせいぜい、X100(引張強さ760MPa以上)ラインパイプの製造が限界と考えられる。X100を越える超高強度ラインパイプについては、既に鋼板製造の研究は行われている(PCT/JP96/00155、00157)。しかし、このような超高強度ラインパイプでは従来のシーム溶接に関する技術は適用できず、シーム溶接技術に関する課題が解決できないと鋼板は製造できても鋼管の製造は不可能である。パイプラインの超高強度化は強度・低温靱性バランスを始めとして溶接熱影響部(HAZ)靱性、現地溶接性、継手軟化、バースト試験による管体破断など多くの問題を抱えており、これらを克服した画期的な超高強度ラインパイプ(X100超)の早期開発が要望されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は低温靱性のバランスが優れ、かつ現地溶接が容易な引張強さ(TS)900MPa以上(API規格X100超)の超高強度ラインパイプ、特にバースト試験において溶接部破断がなく管体破断するシーム溶接部の低温靱性に優れた超高強度ラインパイプおよびその製造方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)母材部の引張り強度が900MPa以上であり、かつ、溶接金属部の引張り強度と母材部の引張り強度の差が−100MPa以上であるシーム溶接鋼管であって、該シーム溶接鋼管の前記溶接金属部において、製管プロセスの鋼板付き合わせ部の仮付け溶接後に行われる本溶接によって形成される内面溶接金属部と外面溶接金属部の間隔が0mm超であり、かつ、内面溶接金属部と外面溶接金属部が前記仮付け溶接によって形成される仮付け溶接金属部とそれぞれ重複していることを特徴とするシーム溶接部の低温靱性の優れた超高強度溶接鋼管。
(2)重量%で、
C:0.03〜0.10%、
Si:0.6%以下、
Mn:1.7〜2.5%、
P:0.015%以下、
S:0.003%以下、
Ni:0.1〜1.0%、
Mo:0.15〜0.60%、
Nb:0.01〜0.10%、
Ti:0.005〜0.030%、
Al:0.06%以下、
を含有し、さらに重量%で、B:0.0030%以下、N:0.001〜0.006%、V:0.10%以下、Cu:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Ca:0.01%以下、REM:0.02%以下、Mg:0.006%以下の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる母材部と、
重量%で、
C:0.03〜0.14%、
Si:0.05〜040%、
Mn:1.2〜2.2%、
P:0.010%以下、
S:0.010%以下、
Ni:1.3〜3.2%、
Cr、Mo、Vのうちの1種または2種以上の合計量が1.0〜2.5%、
B:0.005%以下、
を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる溶接金属部からなり、かつ、溶接金属部のNi量が母材部のNi量に比べて1%以上高く、溶接金属部部及び母材の溶接熱影響部を含むシーム溶接部の組織がベイナイト・マルテンサイトからなることを特徴とする上記(1)に記載のシーム溶接部の低温靱性の優れた超高強度溶接鋼管。
(3)重量%で、
C:0.03〜0.10%、
Si:0.6%以下、
Mn:1.7〜2.5%、
P:0.015%以下、
S:0.003%以下、
Ni:0.1〜1.0%、
Mo:0.15〜0.60%、
Nb:0.01〜0.10%、
Ti:0.005〜0.030%、
Al:0.06%以下、
を含有し、さらに重量%で、B:0.0030%以下、N:0.001〜0.006%、V:0.10%以下、Cu:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Ca:0.01%以下、REM:0.02%以下、Mg:0.006%以下の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板の両端部を付き合わせた後、該付き合わせ部を、重量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.3%以下、Mn:1.2〜2.4% を含有しFeを主成分とする溶接ワイヤーを用いて、外面から仮付け溶接を行った後、該仮付け溶接部を、重量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.3%以下、Mn:1.2〜2.4% 、Ni:4.0〜8.5%、Cr、Mo、Vの1種又は2種以上の合計量3.0〜5.0%を含有し、かつNi量が前記鋼板のNi量に比べて1%以上高いFeを主成分とする溶接ワイヤーおよびフラックスを用いて、溶接によって形成される内面溶接金属部と外面溶接金属部の間隔が0mm超であり、かつ、内面溶接金属部と外面溶接金属部が前記仮付け溶接によって形成される仮付け溶接金属部とそれぞれ重複するように、前記仮付け溶接部を内面及び外面から本溶接を行うことを特徴とするシーム溶接部の低温靱性の優れた超高強度溶接鋼管の製造方法。
(4)前記本溶接において、仮付け溶接部を内面及び外面からそれぞれ2パス以上の溶接を行うことを特徴とする上記(3)に記載のシーム溶接部の低温靱性の優れた超高強度溶接鋼管の製造方法。
(5)前記仮付け溶接として、MAGアーク溶接、MIGアーク溶接、TIGアーク溶接の何れか1つの方法を用い、前記本溶接として、サブマージアーク溶接、MAGアーク溶接、MIGアーク溶接、TIGアーク溶接の何れか1つの方法を用いることを特徴とする上記(3)または(4)のいずれかに記載のシーム溶接部の低温靱性の優れた超高強度溶接鋼管の製造方法。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
本発明は900MPa以上の引張強さ(TS)を有するシーム溶接部の低温靱性の優れた超高強度ラインパイプに関する発明である。この強度水準の超高強度ラインパイプでは、従来主流であるX65と較べて約2倍の圧力に耐えるため、同じサイズで約2倍のガスを輸送することが可能になる。一方、X65を用いて上記超高強度ラインパイプと同等なガス輸送効率を達成する場合は圧力を高めるために肉厚を厚くする必要があり、材料費、輸送費、現地溶接施工費が高くなってパイプライン敷設費が大幅に上昇する。これが900MPa以上の引張強さ(TS)を有する低温靱性の優れた超高強度ラインパイプが必要とされる理由である。従来、このような引張強さが900MPa以上の超高強度ラインパイプでは、極端に鋼管の製造が困難になるとともに鋼管の特に低温靱性の特性を確保することが困難になる。鋼管のシーム溶接部も含めた目標特性を保証するための目安として、バースト試験において溶接熱影響部及び溶接金属等で破断せずに管体での破断が達成されることとともにシーム溶接部の低温靱性を改善することが重要な技術的課題になる。従来の超高強度ラインパイプでは、溶接時にシーム溶接部の接熱影響部の会合部から1mmまでに旧オーステナイト粒界に沿って粗大なMA(Martensite-Austenite Constituent:マルテンサイトとオーステナイトの混成物)が生成しやすく、これが破壊の起点となり、吸収エネルギー値を著しく低下させる要因であった。したがって、従来の溶接熱影響部の1/2t部の会合部あるいは会合部+1mmにおけるV ノッチシャルピー吸収エネルギーは、−30℃で50J未満と低く、例えば−30℃で64J以上の目標を満足させることはかなり困難であった。
【0006】
本発明者らは、引張強さが900MPa以上の超高強度のラインパイプにおいてシーム溶接部の低温靱性を改善すべく、実験等により鋭意検討した。
図1及び図2に超高強度のラインパイプにおける従来の溶接部と本発明による溶接部を示す。通常鋼管の造管時のシーム溶接は、鋼板両端部を付き合わせた後、付き合わせ部を最初に外面からMAGアーク溶接等で仮付け(以下仮付け溶接と言う)を行い、その後、その仮付け溶接部をさらに内面及び外面からサブマージドアーク溶接等で溶接(以下本溶接と言う)を行う。この際、従来の本溶接は、図1に示すように本溶接において外面からの溶接で形成された溶接金属部(以下外面溶接金属部という)と内面からの溶接で形成された溶接金属部(以下内面溶接金属部という)を互いに重複させるため、本溶接の前に行った仮付け溶接金属部が溶融・消失し、溶接入熱が過度に高くなり溶接熱影響部の旧オーステナイト粒が粗大化すると共に旧オーステナイト粒界に沿って生成するMAも粗大化し、これが溶接熱影響部のシャルピー吸収エネルギーを低下させ、また、溶接熱影響部の軟化がおこってバースト試験において溶接部からの破断(管体破断ではなく)を招く要因となることがわかった。
【0007】
本発明者らは、従来のような外面溶接金属部と内面溶接金属部を互いに重複させた内外面からの本溶接における過度な溶接入熱の上昇に起因する溶接部低温靱性の低下という問題を解決するために、本溶接の最適条件について、詳細な検討をおこなった。その結果、図2に示すように、仮付け溶接後の本溶接において、外面溶接金属部と内面溶接金属部を重複させずに仮付け溶接金属部を溶融させず残存させ、本溶接時の過度な溶接入熱の上昇を避けることによって溶接熱影響部で粗粒部の旧オーステナイト粒径の粗大化及びMAの粗大化を抑制し、溶接熱影響部の1/2t部の会合部あるいは会合+1mmでのVノッチシャルピー吸収エネルギーを改善し、また、溶接熱影響部の軟化部が抑えられることによってバースト試験において管体破断(溶接部からの破断なし)が可能となることがわかった。また、このような本溶接を行う場合、溶接部の溶接欠陥の発生を防止するために、本溶接によって形成された内面溶接金属部及び外面溶接金属部のそれぞれと、その前の仮付け溶接によって形成された仮溶接金属部とを重複する必要があることがわかった。
【0008】
以上の知見から、本発明では、引張強さが900MPa以上の超高強度のラインパイプのシーム溶接部において、仮付け溶接後の本溶接によって形成される内面溶接金属部と外面溶接金属部の間隔(Δd)が0mm超(これに対して従来のΔdは0mm以下の値となる)とし、かつ、内面溶接金属部及び外面溶接金属部が前記仮付け溶接によって形成された仮付け溶接金属部とそれぞれ重複することを要件とする。上記Δdが0mm以下、つまり本溶接によって形成される内面溶接金属部と外面溶接金属部が重なると、上述のように本溶接の前に行った仮付け溶接金属部が溶融・消失し、溶接入熱が過度に高くなり、その結果、溶接熱影響部の旧オーステナイト粒が粗大化すると共に旧オーステナイト粒界に沿って生成するMAも粗大化し、溶接熱影響部のシャルピー吸収エネルギーの低下や溶接熱影響部の軟化が起こる。また、本溶接部によって形成される内面溶接金属部及び外面溶接金属部のそれぞれと、仮付け溶接によって形成される仮付け溶接金属部とが重複していなければ、溶接部の溶接欠陥が発生する。ここで本発明で最初に行う仮付け溶接の方法は、通常知られているMAGアーク溶接でもMIGアーク溶接でもTIG溶接でも良い。また、仮付け溶接の後に行う内外面溶接もサブマージアーク溶接でもMIGアーク溶接でもTIG溶接でも良い。また、仮付け溶接後の本溶接における仮付け溶接部の内面及び外面からの溶接は、それぞれ1パス溶接であっても2パス以上の溶接であっても良いが、本溶接時の溶接入熱を出来る限り下げることで溶接熱影響部の軟化を抑えるという点から2パス以上の溶接がより好ましい。
【0009】
また、本発明者らが上記溶接法で製造した鋼管を用いて多数のバースト試験を行った結果から、溶接金属の引張強度が、[母材部の強度]−100(MPa)以上であれば溶接部から破断せず、管体から破断することがわかっている。従って、本発明では、溶接部の平均引張強度を[母材部の円周方向引張強度]−100(MPa)以上とする。
【0010】
次に本発明の鋼管を構成する母材部及び溶接金属部の成分および組織について説明する。
先ず、本発明の母材成分の限定理由は以下の通りである。
C量は、0.03〜0.10%に限定する。炭素は、鋼の強度向上に極めて有効であり、マルテンサイト組織において目標とする強度を得るためには、最低0.03%は必要である。しかし、C量が多すぎると母材、HAZの低温靱性や現地溶接性の著しい劣化を招くので、その上限を0.10%とした。さらに、望ましくは上限値は0.08%が好ましい。
【0011】
Siは脱酸や強度向上のために添加する元素であるが、多く添加するとHAZ靱性、現地溶接性を著しく劣化させるので、上限を0.6%とした。鋼の脱酸はAlでもTiでも十分可能であり、Siは必ずしも添加する必要はない。
Mnは本発明鋼のミクロ組織をマルテンサイト主体の組織とし、優れた強度・低温靱性のバランスを確保する上で不可欠な元素であり、その下限は1.7%である。しかし、Mnが多すぎると鋼の焼入れ性が増してHAZ靱性、現地溶接性を劣化させるだけでなく、連続鋳造鋼片の中心偏析を助長し、母材の低温靱性をも劣化させるので上限を2.5%とした。
【0012】
本発明では、不純物元素であるP、S量をそれぞれ0.015%、0.003%以下とする。この主たる理由は母材およびHAZの低温靱性をより一層向上させるためである。P量の低減は連続鋳造スラブの中心偏析を軽減するとともに、粒界破壊を防止して低温靱性を向上させる。また、S量の低減は熱間圧延で延伸化するMnSを低減して延靱性を向上させる効果がある。
【0013】
Niを添加する目的は低炭素の本発明鋼を低温靱性や現地溶接性を劣化させることなく向上させるためである。Ni添加はMnやCr、Mo添加に比較して圧延組織(とくに連続鋳造鋼片の中心偏析帯)中に低温靱性に有害な硬化組織を形成することが少ないばかりか、0.1%以上の微量Ni添加がHAZ靱性の改善にも有効であることが判明した(HAZ靱性上、とくに有効なNi添加量は0.3%以上である)。しかし、添加量が多すぎると、経済性だけでなく、HAZ靱性や現地溶接性を劣化させるので、その上限を1.0%とした。また、Ni添加は連続鋳造時、熱間圧延時におけるCu割れの防止にも有効である。この場合、NiはCu量の1/3以上添加する必要がある。
【0014】
Moを添加する理由は鋼の焼入れ性を向上させ、目的とするマルテンサイト主体の組織を得るためである。B添加鋼においてはMoの焼入れ性向上効果が高まり、また、MoはNbと共存して制御圧延時にオーステナイトの再結晶を抑制し、オーステナイト組織の微細化にも効果がある。このような効果を得るために、Moは最低でも0.15%必要である。しかし、過剰なMo添加はHAZ靱性、現地溶接性を劣化させ、さらにBの焼入れ性向上効果を消失せしめることもあるので、その上限を0.6%とした。
【0015】
Nbは、0.01〜0.10%を含有する。NbはMoと共存して制御圧延時にオーステナイトの再結晶を抑制して組織を微細化するだけでなく、析出硬化や焼入れ性増大にも寄与し、鋼を強靱化するため、0.01%以上含有する。特にNbとBが共存すると焼入れ性向上効果が相乗的に高まる。しかし、Nb添加量が多すぎると、HAZ靱性や現地溶接性に悪影響をもたらすので、その上限を0.10%とした。
【0016】
Tiは、0.005〜0.030%を含有する。Ti添加は微細なTiNを形成し、スラブ再加熱時およびHAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制してミクロ組織を微細化し、母材およびHAZの低温靱性を改善する。また、Bの焼入れ性向上効果に有害な固溶NをTiNとして固定する役割も有する。この目的のために、Ti量は3.4N(各々重量%)以上添加することが望ましい。また、Al量が少ない時(たとえば0.005%以下)、Tiは酸化物を形成し、HAZにおいて粒内フェライト生成核として作用し、HAZ組織を微細化する効果も有する。このようなTiNの効果を発現させるためには、最低0.005%のTi添加が必要である。しかし、Ti量が多すぎると、TiNの粗大化やTiCによる析出硬化が生じ、低温靱性を劣化させるので、その上限を0.030%に限定した。
【0017】
Alは通常脱酸材として鋼に含まれる元素で、組織の微細化にも効果を有する。しかし、Al量が0.06%を越えるとAl系非金属介在物が増加して鋼の清浄度を害するので、上限を0.06%とした。しかし、脱酸はTiあるいはSiでも可能であり、Alは必ずしも添加する必要はない。
以上は、本発明の鋼管母材の主要成分であるが、必要に応じて以下の成分を選択的に含有させる。
【0018】
Bは極微量で鋼の焼入れ性を飛躍的に高め、目的とするマルテンサイト主体の組織を得るために、非常に有効な元素である。さらに、BはMoの焼入れ性向上効果を高めると共に、Nbと共存して相乗的に焼入れ性を増す。一方、過剰に添加すると、低温靱性を劣化させるだけでなく、かえってBの焼入れ性向上効果を消失せしめることもあるので、その上限を0.0030%とした。
【0019】
NはTiNを形成しスラブ再加熱時およびHAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制して母材、HAZの低温靱性を向上させる。このために必要な最小量は0.001%である。しかし、N量が多すぎるとスラブ表面疵や固溶NによるHAZ靱性の劣化、Bの焼入れ性向上効果の低下の原因となるので、その上限は0.006%に抑える必要がある。
【0020】
つぎに、V、Cu、Cr、Ca、 REM、 Mgを添加する目的について説明する。
本発明の鋼管母材の基本成分に、更にこれらの元素を添加する主たる目的は、本発明鋼の優れた特徴を損なうことなく、強度・靱性の一層の向上や製造可能な鋼材サイズの拡大をはかるためである。したがって、その添加量は自ずから制限されるべき性質のものである。
【0021】
VはNbとほぼ同様の効果を有するが、その効果はNbに比較して弱い。しかし、超高強度鋼におけるV添加の効果は大きく、NbとVの複合添加は本発明鋼の優れた特徴をさらに顕著なものとする。上限はHAZ靱性、現地溶接性の点から0.10%まで許容できるが、特に0.03〜0.08%の添加が望ましい範囲である。
【0022】
Cuは母材、溶接部の強度を増加させるが、多すぎるとHAZ靱性や現地溶接性を著しく劣化させる。このためCu量の上限は1.0%である。
Crは母材、溶接部の強度を増加させるが、多すぎるとHAZ靱性や現地溶接性を著しく劣化させる。このためCr量の上限は0.6%である。
CaおよびREMは硫化物(MnS)の形態を制御し、低温靱性を向上(シャルピー試験の吸収エネルギーの増加など)させる。Ca量が0.006%、REMが0.02%を越えて添加するとCaO−CaSまたはREM−CaSが大量に生成して大型クラスター、大型介在物となり、鋼の清浄度を害するだけでなく、現地溶接性にも悪影響をおよぼす。このためCa添加量の上限を0.006%またはREM添加量の条件を0.02%に制限した。なお超高強度ラインパイプでは、S、O量をそれぞれ0.001%、0.002%以下に低減し、以下に示すMnSのクラスターの形状を制御するための指標であるESSP(Effestive Sulphide Shape Controlling Parameter)が0.5≦ESSP≦10.0を満足するようにCa、S、Oを調整することがとくに有効である。
【0023】
ESSP=(Ca)〔1−124(O)〕/1.25S … (1)
上記のESSPが0.5未満になるとCaO−CaSが大量の生成して粗大なクラスター、粗大介在物となり溶接割れ等の溶接性を悪化させ、上記ESSPが10.0を越えると、MnSの形状制御の効果がなくなるため、ESSPを0.5〜10.0に規定する。
【0024】
Mgは微細分散した酸化物を形成し、溶接熱影響部の粒粗大化を抑制して低温靭性を向上させる。0.006%以上では粗大酸化物を生成し逆に靭性を劣化させる。
以上の個々の添加元素の限定に加えて、さらに以下に示す焼き入れ性を表す指標であるPを1.9≦P≦4.0に制限することが望ましい。
【0025】
P=2.7C+0.4Si+Mn+0.8Cr+0.45(Ni+Cu)+(1+β)Mo−1+β … (2)
但し、B≧3ppmではβ=1、B<3ppmではβ=0とする。
Pを上記のように制御する理由は、目的とする強度・低温靱性バランスを達成するためである。P値の下限を1.9としたのは900MPa以上の強度と優れた低温靱性を得るためである。また、P値の上限を4.0としたのは優れたHAZ靱性、現地溶接性を維持するためである。
【0026】
以上が本発明の鋼管母材に含有する成分の限定根拠であるが、以上のような化学成分を有していても、本発明の組織である微細なマルテンサイト+ベイナイト主体の組織が得られるための適正な製造条件としなければ所望の特性は得られない。微細なマルテンサイト主体の組織を得る原理的な方法は、再結晶粒を未再結晶温度域で加工し、板厚方向に偏平したオーステナイト粒とし、これをフェライト生成が抑制される臨界冷却速度以上の冷却速度で冷却することである。
【0027】
望ましい製造方法は、本発明の化学成分を有する鋼片を950〜1250℃に再加熱し、700〜950℃での累積圧下量が50%以上となるように700℃以上の鋼材温度で圧延した後、10℃以上の冷却速度で550℃以下まで冷却する。 また必要に応じてAC1変態点以下の温度で焼戻しを行う。
本発明の鋼管は、このようにして製造された鋼板を管状に成形した後、鋼板両端部の突き合わせ部をアーク溶接し、さらに拡管して鋼管をする。
【0028】
次ぎに、本発明の鋼管の溶接金属部の成分の限定理由について述べる。
C量は、0.03〜0.14%に限定する。炭素は鋼の強度向上に極めて有効であり、マルテンサイト組織において目標とする強度を得るためには、最低0.03%は必要である。しかし、C量が多すぎると溶接低温割れが発生しやすくなり、現地溶接部とシーム溶接が交わるいわゆるTクロス部のHAZの最高硬さの上昇招くので、その上限を0.14%とした。さらに、望ましくは上限値は0.10%が好ましい。
【0029】
Siはブローホール防止のために0.05%以上は必要であるが、含有量が多いと低温靱性を著しく劣化させるので、上限を0.40%とした。特に、内外面溶接や多層溶接を行う場合、再熱部の低温靱性を劣化させる。
Mnは優れた強度・低温靱性のバランスを確保する上で不可欠な元素であり、その下限は1.2%である。しかし、Mnが多すぎると偏析が助長され低温靱性を劣化させるだけでなく、溶接材料の製造も困難になるので上限を2.2%とした。
【0030】
P、Sは、低温靭性の劣化、低温割れ感受性の低減のために、P、Sの量は低い方が望ましく、上限量をそれぞれ0.010%と規定した。
Niを添加する目的は焼入れ性を高めて強度を確保し、さらに低温靱性向上させるためである。1.3%以下では目標の強度、低温靭性を得ることが難しい。一方、含有量が多すぎると高温割れの危険があるため上限は3.2%とした。
【0031】
Cr、Mo、Vの効果の違いは厳密には区別できないが、いずれも焼入れ性を高めることにより高強度を得るために添加する。Cr、Mo、Vの1種又は2種以上の合計量が1.0%以下では効果が十分でなく、一方多量に添加すると低温割れの危険が増すため上限を2.5%とした。
Bは微量で焼入れ性を高め、溶接金属の低温靭性向上に有効な元素であるが、含有量が多すぎると却って低温靭性が低下するので含有範囲を0.005%以下とした。
【0032】
溶接金属には、その他の成分として、溶接時の精錬・凝固を良好に行わせるために必要に応じて添加されたTi, Al,Zr,Nb,Mg等の元素を含有する場合があるが、残部は鉄および不可避的不純物である。
本発明の超高強度鋼板は、先に述べた成分を規定した鋼を鋳造後、熱間加工し、その後急冷したり、場合によっては焼戻しを行って製造される。引張強さ900MPa以上の超高強度を達成するためには、鋼をマルテンサイト・ベイナイト等の低温変態組織主体のミクロ組織にしてフェライトの生成を抑制する必要がある。
【0033】
溶接金属は、溶接後の凝固まま組織であり、冷却速度が遅い溶接金属において、本発明が上記の目的強度を得、さらに本発明の鋼板と同様に優れた低温靱性を得るためには、溶接金属の化学成分と組織の調整が必要である。
Niは焼入性を高めて低い冷却速度でも高強度を得ることを可能にし、また、マルテンサイトラス間に残留オーステナイトを形成することを促進し低温靱性を向上させる。
【0034】
本発明では、溶接金属のNi量を鋼板成分より1%以上高くし、かつ、溶接金属部ならびに溶接熱影響部をベイナイト・マルテンサイト組織にすることにより、所望の強度と低温靱性が得られる。溶接金属のNi量が鋼板成分より1%低い場合は、上記効果が得られないため、本発明では、その下限を1%とした。
次に、本発明の鋼管を製造する方法について説明する。
【0035】
本願発明が目指すラインパイプは通常、直径が450mmから1500mm、肉厚が10mmから40mm程度のサイズである。このようなサイズの鋼管を高率良く製造する方法としては、鋼板をU形次いでO形に成形するUO工程で製管し、鋼板の両端部を突き合わせて、突き合わせ部をMAGアーク溶接等で外面から仮付け溶接した後に、この仮付け溶接部を内外面からサブマージアーク溶接等で本溶接し、その後、拡管して真円度を高める鋼管の製造方法が確立されている。
【0036】
サブマージアーク溶接等のアーク溶接方法は母材の希釈が大きい溶接であり、所望の特性すなわち溶接金属組成を得るためには、母材の希釈を考慮した溶接材料の選択が必要である。
以下に、本発明の超高強度ラインパイプを製造する際の溶接に用いる溶接ワイヤーの化学組成の限定理由を述べる。なお、本発明の本溶接の前に行う鋼板付き合わせ部の仮付け溶接は、溶接面積が少なく本溶接に比べて溶接金属部の品質の影響が小さいため、本溶接に用いる溶接ワイヤーの成分は、すべて以下のように規定するが、仮付け溶接に用いる溶接ワイヤーの成分はC、Si、Mn以外の他の成分は、特に規定する必要はない。
【0037】
Cは、溶接金属で必要とされるC量の範囲を得るために、母材成分による希釈および雰囲気からCの混入を考慮して0.01〜0.12%とした。
Siは、溶接金属で必要とされるSi量の範囲を得るために、母材成分による希釈を考慮して0.3%以下とした。
Mnは、溶接金属で必要とされるMn量の範囲を得るために、母材成分による希釈を考慮して1.2%〜2.4%とした。
【0038】
Niは、溶接金属で必要とされるNi量の範囲を得るために、母材成分による希釈を考慮して4.0%〜8.5%とした。
Cr、Mo、Vは、溶接金属で必要とされるCr、Mo、Vのうちの1種又は2種以上の合計量の範囲を得るために、母材成分による希釈を考慮して3.0%〜5.0%とした。
【0039】
その他P,Sの不純物は極力少ない方が望ましく、Bは強度確保に添加することも可能である。また、Ti,Al,Zr,Nb,Mg等が脱酸を目的として使用される。
なお、本発明の仮付け溶接及び本溶接は、単極だけでなく、複数電極での溶接も可能である。複数電極で溶接の場合は各種ワイヤーの組み合わせが可能であり、個々のワイヤーが上記成分範囲にある必要はなく、それぞれのワイヤー成分と消費量からの平均組成が上記成分範囲にあれば良い。
【0040】
サブマージアーク溶接等の本溶接に使用されるフラックスは大別すると焼成型フラックスと溶融型フラックスがある。焼成型フラックスは合金材添加が可能で拡散性水素量が低い利点があるが、粉化しやすく繰り返し使用が難しい欠点がある。一方、溶融型フラックスはガラス粉状で、粒強度が高く、吸湿しにくい利点があり、拡散性水素がやや高い欠点がある。本願発明のごとき超高強度の場合は、溶接低温割れが起こりやすく、この点からは焼成型が望ましいが、一方、回収して繰り返し使用が可能な溶融型は大量生産に向きコストが低い利点がある。焼成型ではコストが高いことが、溶融型では厳密な品質管理の必要性が問題であるが、工業的に対処可能な範囲であり、どちらでも本質的には使用可能である。
【0041】
溶接条件については望ましい範囲は以下の通りである。
最初に行う仮付け溶接は、MAGアーク溶接でもMIGアーク溶接でもTIGアーク溶接でもよい。通常はMAGアーク溶接である。次に仮付け溶接後に行う本溶接は、通常サブマージドアーク溶接であるが、TIGアーク溶接でもMIGアーク溶接でも、MAGアーク溶接でもよい。溶接速度は1〜3m/分程度が適切な範囲である。1m/分未満の溶接はラインパイプのシーム溶接としては非効率であり、3m/分を超える高速溶接ではビード形状が安定しない。仮付け溶接とその後の本溶接が重複するならば溶接入熱は出来る限り低い方が好ましい。また、本溶接のアーク溶接は何パスでも行ってもよい。溶接入熱は板厚によって異なるが、例えば板厚16mmの場合では溶接入熱を1.0〜2.7kJ/mmにすることが望ましい範囲である。入熱が小さすぎると溶け込みが不十分になり、溶接回数が多くなり、作業効率が悪くなり、溶接入熱が大きすぎると熱影響部の軟化が大きく、溶接部の靭性も低下する。
【0042】
これらのシーム溶接後、拡管により真円度を向上させる。真円にするためには塑性域まで変形させる必要があるが、本願発明のごとき高強度鋼の場合は0.7%程度以上の拡管率(=(拡管後円周−拡管前円周)/拡管前円周)が必要であるが、2%を超える大きな拡管を行うと、母材、溶接部とも塑性変形による靭性劣化が大きくなるため、拡管率は0.7〜2%以下にするのが望ましい。
【0043】
【実施例】
以下に、本発明の実施例とその効果を具体的に説明する。
表1に示す本発明範囲を満たす成分の発明鋼(A鋼〜D鋼)及び本発明範囲を外れる成分の比較鋼(E鋼,F鋼)を300トン転炉で溶製後、連続鋳造鋼片とし、その後1100℃に再加熱後、再結晶域で圧延し、その後900〜750℃の累積圧下量が75%となる制御圧延を16mmまで行い、その後水冷停止温度が200〜450℃になるように水冷して鋼板を製造した。その結果、表1に示されるように発明鋼(A鋼〜D鋼)の鋼板の強度は、本発明の目標範囲(900MPa以上)となり、低温靭性(シャルピー試験の−30℃での吸収エネルギー:230J以上)も高かった。一方、C量が高くNiが添加されていないE鋼の鋼板の強度は、本発明の目標範囲にあるが、低温靭性が低くなり、C量が低いF鋼の鋼板の低温靱性は目標範囲になるが、強度が低い。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
これらの鋼板をさらにUO工場で管状に成形し、鋼板の付き合わせ部を80%Ar+20%CO2 のシールドガスでMAG アーク溶接を用いて仮付け溶接を行った後、表2に示す溶接ワイヤー及びフラックスを用い3電極、2.0m/分、入熱1.5KJ/mmの溶接条件で仮溶接部の内外面を各1パスのサブマージアーク溶接による本溶接を行い、その後、拡管率1%の拡管を行った。得られた鋼管の特性を評価した結果を表3に示す。
【0047】
表2に示す本発明範囲を満たす成分の鋼及び溶接ワイヤーを用いて溶接した発明例(実施No.1〜6)では、鋼管シーム溶接部に良好な溶接ビードが得られ、溶接金属部の化学成分は本発明の範囲を満たし、溶接金属強度(900MPa以上)、溶接金属の引張強度と鋼板の引張強度の差も適正範囲(−100MPa以上)も適性であり、本溶接によって形成される内面溶接金属部と外面溶接金属部の間隔(Δd)(Δd:0mm超))も適性であった。また、これらの本発明範囲を満たす発明例の鋼管は、母材部及び溶接部が共に目標とする強度、低温靱性等の機械的性質を有し、バースト試験においても管体破断が達成できた。
【0048】
一方、比較例の実施No.7〜9は、母材成分は本発明の範囲であるが、ワイヤー成分が本発明の範囲外(No.7:Niが低目、No.8:Cが高目、No.9:Niが高目)であるため、溶接金属部の成分が本発明範囲を外れた。その結果、No.7は溶接金属の強度が低くなり、また、溶接金属の引張強度と鋼板の引張強度の差が適正範囲(−100MPa以上)を外れたためバースト試験では溶接部破断が生じた。また、No.8では溶接部の低温割れが発生し、No.9は高温割れが発生したため、引張り試験、バースト試験は実施できなかった。
【0049】
比較例の実施No.10は、溶接ワイヤーの成分は本発明の範囲内であるが、鋼板の成分が本発明範囲外であるため、鋼管母材の低温靱性が目標(低目)に達しなかった。
しかしながら、比較例のNo.11及びNo.12では、母材及び溶接ワイヤーの成分は本発明の範囲内であるが、本溶接で形成された溶接部中の内面溶接金属部と外面溶接金属部との間隔(Δd)が本発明の範囲(Δd>0)を外れたためバースト試験では溶接熱影響部破断が生じた。また、比較例のNo.13は、溶接材料及び溶接金属のCが本願発明範囲を外れている(高目)ために、溶接金属の靭性が低いためにラインパイプの要求特性を満たしていない。比較例のNo14は母材及び溶接ワイヤーの成分は本発明の範囲内であるが、溶接金属の引張強度と鋼板の引張強度の差が適正範囲(−100MPa以上)を外れたためバースト試験では溶接熱影響部破断が生じた。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、母材、溶接部共に低温靱性のバランスが優れ、かつ現地溶接が容易な引張強さ900MPa以上(API規格X100超)の超高強度ラインパイプが実現可能であり、長距離パイプラインの敷設コストが低下し、世界のエネルギー問題解決に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鋼管シーム溶接部の断面図。
【図2】従来の鋼管シーム溶接部の断面図。
【符号の説明】
1…本溶接金属部の外面溶接金属部
2…本溶接金属部の内面溶接金属部
3…鋼管の母材部
4…仮付け溶接金属部
Claims (5)
- 母材部の引張り強度が900MPa以上であり、かつ、溶接金属部の引張り強度と母材部の引張り強度の差が−100MPa以上であるシーム溶接鋼管であって、該シーム溶接鋼管の前記溶接金属部において、製管プロセスの鋼板付き合わせ部の仮付け溶接後に行われる本溶接によって形成される内面溶接金属部と外面溶接金属部の間隔が0mm超であり、かつ、内面溶接金属部と外面溶接金属部が前記仮付け溶接によって形成される仮付け溶接金属部とそれぞれ重複していることを特徴とするシーム溶接部の低温靱性の優れた超高強度溶接鋼管。
- 重量%で、
C:0.03〜0.10%、
Si:0.6%以下、
Mn:1.7〜2.5%、
P:0.015%以下、
S:0.003%以下、
Ni:0.1〜1.0%、
Mo:0.15〜0.60%、
Nb:0.01〜0.10%、
Ti:0.005〜0.030%、
Al:0.06%以下、
を含有し、さらに重量%で、B:0.0030%以下、N:0.001〜0.006%、V:0.10%以下、Cu:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Ca:0.01%以下、REM:0.02%以下、Mg:0.006%以下の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる母材部と、
重量%で、
C:0.03〜0.14%、
Si:0.05〜0.40%、
Mn:1.2〜2.2%、
P:0.010%以下、
S:0.010%以下、
Ni:1.3〜3.2%、
Cr、Mo、Vのうちの1種または2種以上の合計量が1.0〜2.5%、
B:0.005%以下、
を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる溶接金属部からなり、かつ、溶接金属部のNi量が母材部のNi量に比べて1%以上高く、溶接金属部及び母材の溶接熱影響部を含むシーム溶接部の組織がベイナイト・マルテンサイトからなることを特徴とする請求項1に記載のシーム溶接部の低温靱性の優れた超高強度溶接鋼管。 - 重量%で、
C:0.03〜0.10%、
Si:0.6%以下、
Mn:1.7〜2.5%、
P:0.015%以下、
S:0.003%以下、
Ni:0.1〜1.0%、
Mo:0.15〜0.60%、
Nb:0.01〜0.10%、
Ti:0.005〜0.030%、
Al:0.06%以下、
を含有し、さらに重量%で、B:0.0030%以下、N:0.001〜0.006%、V:0.10%以下、Cu:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Ca:0.01%以下、REM:0.02%以下、Mg:0.006%以下の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板の両端部を付き合わせた後、該付き合わせ部を、重量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.3%以下、Mn:1.2〜2.4% を含有しFeを主成分とする溶接ワイヤーを用いて、外面から仮付け溶接を行った後、該仮付け溶接部を、重量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.3%以下、Mn:1.2〜2.4% 、Ni:4.0〜8.5%、Cr、Mo、Vの1種又は2種以上の合計量3.0〜5.0%を含有し、かつNi量が前記鋼板のNi量に比べて1%以上高いFeを主成分とする溶接ワイヤーおよびフラックスを用いて、溶接によって形成される内面溶接金属部と外面溶接金属部の間隔が0mm超であり、かつ、内面溶接金属部と外面溶接金属部が前記仮付け溶接によって形成される仮付け溶接金属部とそれぞれ重複するように、前記仮付け溶接部を内面及び外面から本溶接を行うことを特徴とするシーム溶接部の低温靱性の優れた超高強度溶接鋼管の製造方法。 - 前記本溶接において、仮付け溶接部を内面及び外面からそれぞれ2パス以上の溶接を行うことを特徴とする請求項3に記載のシーム溶接部の低温靱性の優れた超高強度溶接鋼管の製造方法。
- 前記仮付け溶接として、MAGアーク溶接、MIGアーク溶接、TIGアーク溶接の何れか1つの方法を用い、前記本溶接として、サブマージアーク溶接、MAGアーク溶接、MIGアーク溶接、TIGアーク溶接の何れか1つの方法を用いることを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載のシーム溶接部の低温靱性の優れた超高強度溶接鋼管の製造方法。
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