JP5870664B2 - 高強度溶接鋼管およびその製造方法 - Google Patents

高強度溶接鋼管およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、分圧0.1MPa以下の硫化水素ガスを含む、pH4以下の厳しい腐食環境下となる天然ガスまたは原油輸送パイプラインにおいて、鋼管そのもののみならず、鋼管同士の円周溶接部においても耐硫化物応力腐食割れ性に優れた引張強度600MPa以上の高強度溶接鋼管に関する。
硫化水素を含む原油や天然ガスの輸送に用いられる溶接鋼管は、強度、靭性、溶接性の他に、耐水素誘起割れ性(水素誘起割れ:ydrogen nduced racking;以下、HICと略す)や、耐硫化物応力腐食割れ性(硫化物応力腐食割れ:ulfide tress Corrosion racking;以下、SSCと略す)などのいわゆる耐サワー性が必要とされる。
HICは、腐食反応による水素イオンが鋼材表面に吸着し、原子状の水素として鋼内部に侵入し、鋼中のMnSなどの非金属介在物のまわりに拡散・集積し、その内圧により割れを生じるものとされている。HICを防止する技術としては、CaやCeをS量に対して適量添加することにより、応力集中の大きい形態(例えば針状、板状)のMnSの生成を抑制し、応力集中の小さい微細分散した球状介在物に形態を変えて割れの発生を抑制する方法(例えば特許文献1)や、偏析傾向の高い元素(C、Mn、P等)の低減、さらに偏析部の硬さ上限を規定する方法(例えば特許文献2、特許文献3)が知られている。
一方、SSCは鋼管に内圧がかかっている状態で、腐食環境に面する側の鋼管表面でHICと同じく腐食反応による水素イオンが鋼管表面に吸着し、原子状の水素として鋼内部に侵入し水素脆化を起こしたものと考えられている。SSC感受性は、鋼の硬さと強い相関があり、ISO 15156には硫化水素腐食環境下ごとにSSCを防止するための硬さの上限が規定されている。このことから、少なくとも鋼管表面部の硬さを低減することが必要で、鋼管の要求強度レベルが上がるほど、その両立が難しい。この問題を解決するため、鋼管母材の製造工程において、高強度化のために加速冷却を行った後、直ちに誘導加熱により鋼板表層部のみを加熱・焼戻をする方法(例えば特許文献4)が知られている。
しかしながら、天然ガスまたは原油輸送パイプラインは厚肉・大径のため、厚鋼板を管状に成形後、溶接して製造する溶接鋼管が一般的であり、その溶接部についてもSSCを防止するため、高強度化と硬さの低減を両立させる必要があるが、上述のいずれの技術にも溶接鋼管の溶接部の耐SSC性の改善については開示されていない。加えて、図1に示す溶接鋼管同士をつなぐ円周溶接部においては、鋼管母材の円周溶接によるHAZ、鋼管溶接金属部の円周溶接によるHAZが形成され、特に鋼管溶接金属部に形成されるHAZの硬化が著しいことが知られており、鋼管本体のみならず、円周溶接部でのSSC防止は極めて難しい。なお、HAZとは、溶接による熱影響部(eat ffected one)の略である。
特開昭54−110119号公報 特開昭52−111815号公報 特開2009−133005号公報 特開2002−327212号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、特に溶接鋼管のみならず、鋼管同士の円周溶接部においても耐SSC性に優れた引張強度600MPa以上の高強度鋼管を提供することを目的とする。
本発明者らは、まず円周溶接部の耐SSC性に影響すると考えられる、鋼管母材(以下、単に「母材」または「母材部」と称することもある。)および鋼管溶接金属(以下、単に「溶接金属」または「溶接金属部」と称することもある。)それぞれのHAZ硬さの挙動を既存の溶接鋼管(以下、単に「鋼管」と称することもある。)を用い調査した。種々の鋼管母材の化学成分、鋼管溶接金属の化学成分の異なる溶接鋼管から母材部、溶接部の試料を採取し、図2(a)、(b)に示す要領で、母材部および内面溶接金属部に対して、円周溶接を模擬した炭酸ガスアーク溶接ビードを試料表面に溶接(ead late;以下、「BOP」と略す。)し、ビード長手中央部でビードに直角に試料を切断し、切断面を鏡面研磨後、溶接部マクロ組織が見えるように腐食してから、JIS Z3101に準拠して、溶接熱影響部(HAZ)の最高硬さをビッカース硬さ試験方法(JIS Z2244)で測定した。
このようにして得られた円周溶接を模擬したBOPのHAZの硬さについて、鋼の化学成分で重回帰整理を行ったところ、式(2): Py=C+Si/30+Mn/20+(Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/7+V/10+5×Bで計算されるPy値で、円周溶接による母材部のHAZ硬さ、内面溶接金属部のHAZ硬さが共に精度よく整理されることを見出した。ここで、各元素記号は質量%で、含有していない場合には0とする。
図2(c)にPyと円周溶接模擬BOP部硬さHvの関係図を示す。ここで、母材部のHAZ(図中「母材HAZ」)とは、図2(b)の炭酸ガスアーク溶接ビード(BOP)によって再熱された、BOP下に位置する母材の熱影響部をいい、溶接金属部のHAZ(図中「溶接金属部HAZ」)とは、図2(a)の炭酸ガスアーク溶接ビード(BOP)によって再熱された、BOP下に位置する鋼管内面溶接金属の熱影響部をいう。
次に、発明者らは、引張強度610MPaを有する、主な化学成分が質量%で0.05%C-0.30%Si-1.30%Mn-0.045%Nb-0.01%Ti−0.002%Ca−0.19%Moの板厚20mmの厚鋼板を母材として、溶接鋼管の内外面1層サブマージアーク溶接を模擬した溶接継手を作製し、継手引張試験を行って鋼管継手部強度に及ぼす溶接金属化学成分の影響を調査した。なお、サブマージアーク溶接は、内外面とも管厚1mm当りの溶接入熱量を0.21kJ/mmとし、溶着量が同一となるよう調整した。
ここで、管厚1mm当りの溶接入熱量は、下記式(3)により定義される。
管厚1mm当りの溶接入熱量(kJ/mm)=60×溶接電流(A)×溶接電圧(V)÷溶接速度(mm/分)÷管厚(mm)・・・式(3)
本発明では、特に言及しない場合は、溶接入熱または溶接入熱量の用語は管厚または板厚1mm当りの溶接入熱量を意味するものとする。管厚1mm当りの溶接入熱量としたのは、溶接鋼管で一般的に用いられている内外面1層サブマージアーク溶接の場合、管厚の増加に応じて溶接入熱が増大することから、溶接鋼管のサイズが種々変化する際の溶接条件の目安として、単位管厚(板厚)当りの溶接入熱量を指標とすべき、との理由からである。
その結果、内外面とも同一の溶接材料を用いて同じ溶接金属化学成分とした場合には、継手強度を600MPa以上とするためには溶接金属の化学組成で計算される式(2)のPy値を0.19以上とする必要があり、そのようなPy値で溶接鋼管の溶接部を設計した場合には、円周溶接部でHAZ硬さがビッカース硬さで248Hvを超え、ISO 15156の分類における、pH4.0以下で硫化水素分圧が0.1MPaとなる厳しいサワー環境下での耐SSC性を満足できないことが予測される。
ここで発明者らは発想を変え、同じ溶接金属組成でも溶接後の冷却速度が早くなれば焼入性が向上し、継手強度を向上し得るのではないかと考え、サブマージアーク溶接の管厚1mm当りの溶接入熱量を0.19、0.17、0.15、0.13kJ/mmと低減させ、継手強度の評価を行った。その結果、図3に示すように、同じ溶接金属のPy値でも、管厚1mm当りの溶接入熱量を低減させるに従い溶接継手の強度が増大することが確認された。この結果、ISO15156の分類における、Reasion 3環境(分圧0.1MPa以下の硫化水素ガスを含む、pH4以下の厳しい腐食環境)におけるSSC防止のための溶接金属上限Py値0.160未満であっても、板厚1mm当りの溶接入熱を0.15kJ/mm以下まで低減されたものであれば、継手強度600MPa以上とできることがわかった。
本発明は、以上の知見をもとに、さらに検討を加えたもので、
[1]厚鋼板の母材と、
突合せ部を内外面1層ずつによりサブマージアーク溶接により形成された溶接金属と
を有する溶接鋼管であって、
前記母材が、質量%で、
C:0.02〜0.06%、
Si:0.05〜0.5%、
Mn:0.75〜1.75%、
Al:0.01〜0.08%、
Nb:0.005〜0.06%、
Ti:0.005〜0.025%、
Ca:0.0010〜0.0035%を含有し、
P:0.01%以下、
S:0.001%以下、
B:0.004%以下、
N:0.008%以下で
さらに、
Cu:0.30%以下、
Ni:0.50%以下、
Cr:0.50%以下、
Mo:0.20%以下、
V:0.05%以下
の中から選ばれる1種以上を含有し、
下式(1)で表されるCP値が0.95以下であり、
下式(2)で表されるPy値が0.160以下であり、
残部がFe及び不可避的不純物からなり、
かつ、前記溶接金属が、質量%で、
C:0.04〜0.08%
Si:0.05〜0.5%
Mn:1.0〜1.6%
Nb:0.01〜0.05%
Ti:0.01〜0.04%
B:0.001〜0.003%
O:0.020〜0.035%
Al:0.02%以下
を含有し、
さらに
Cu:0.20%以下
Ni:0.30%以下
Cr:0.30%以下
Mo:0.20%以下
V:0.05%以下
の中から選ばれる1種以上を含有し、
残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ
溶接金属の化学組成で計算される式(2)のPy値が0.140〜0.160を満足することを特徴とする耐硫化物応力腐食割れ性に優れた引張強度600MPa以上の高強度溶接鋼管。
CP=4.46C(%)+2.37Mn(%)/6+{1.18Cr(%)+1.95Mo(%)+1.74V(%)}/5+{1.74Cu(%)+1.7Ni(%)}/15+22.36P(%)・・・式(1)
Py=C(%)+Si(%)/30+Mn(%)/20+{Cu(%)+Cr(%)}/20+Ni(%)/60+Mo(%)/7+V(%)/10+5×B(%)・・・式(2)
ここで、各式の右辺の元素記号は含有量(質量%)を表わし、含有しない場合は0とする。
[2] 前記母材の表層部の金属組織は、島状マルテンサイトの体積分率が2%以下であり、残部がベイナイトまたはベイナイトとフェライトの混合組織であることを特徴とする前記[1]に記載の耐硫化物応力腐食割れ性に優れた引張強度600MPa以上の高強度溶接鋼管。
[3] 前記サブマージアーク溶接は、管厚1mm当りの溶接入熱量が0.15kJ/mm以下とすることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の耐硫化物応力腐食割れ性に優れた引張強度600MPa以上の高強度溶接鋼管。
本発明によれば、pH4以下となる厳しい硫化水素腐食環境が想定される天然ガスや原油輸送パイプラインにおいて鋼管母材の耐HIC性、耐SSC性のみならず、鋼管同士をつなぐ円周溶接部においても優れた耐SSC性を有する高強度鋼管の提供が可能となり、高圧操業による天然ガスまたは原油輸送の効率化を図ることができる。
溶接鋼管同士の円周溶接部を説明する図である。 円周溶接を模擬した溶接試験による母材・溶接金属のHAZ硬さを説明する図である。 溶接鋼管の溶接継手強度に及ぼす溶接金属のPy値および板厚1mm当りの溶接入熱の影響を説明する図である。 溶接鋼管母材、溶接部、円周溶接部の硬さ測定位置を説明する図である。 4点曲げSSC試験における試験片への応力付与方法を説明する図である。
以下に本発明の各構成要件の限定理由について項目を分けて説明する。
1.鋼管母材の化学成分
はじめに鋼管母材の化学成分の限定理由を説明する。なお、化学成分の単位は全て質量%とする。
C:0.02〜0.06%
Cは、鋼の強度を高めるために最も有効な元素である。しかし、0.02%未満では十分な強度を確保できず、0.06%を超えると焼入性が上昇し、偏析部や鋼表面部の硬さ上昇により耐サワー性を劣化させる。従って、C含有量は0.02〜0.06%の範囲とする。より好ましくは、0.03〜0.05%である。
Si:0.05〜0.5%
Siは、鋼を固溶強化する効果を発揮するため、0.05%以上含有することで高強度化に有効である。しかし、0.5%を超えて含有すると靭性が著しく低下するため、Si含有量は0.05〜0.5%の範囲とする。
Mn:0.75〜1.75%
Mnは鋼の高強度化のため添加するが、0.75%未満ではその効果が十分ではなく、1.75%を越えると特に偏析部の硬さ上昇が著しくなり、耐HIC性が劣化する。従って、Mn量は0.75〜1.75%の範囲とする。好ましくは、1.2〜1.4%である。
Al:0.01〜0.08%
Alは脱酸元素として作用する。0.01%以上の添加で十分な脱酸効果が得られるが、0.08%を超えて添加すると鋼中の清浄度が低下し、HICの起点として母材部の耐HIC性を低下させるため、Al含有量は0.01〜0.08%の範囲とする。より好ましくは、0.02〜0.05%の範囲である。
Nb:0.005〜0.06%
Nbは、鋼の焼入性向上元素であり、高強度化のために添加するが、0.005%未満ではその効果がなく、0.06%を超えると偏析部に粗大なNb炭窒化物が残存し、HICの起点として母材部の耐HIC性を低下させるため、Nb含有量は0.005〜0.06%の範囲とする。より好ましくは、0.02〜0.05%の範囲である。
Ti:0.005〜0.025%
Tiは、鋼中で微細な炭窒化物をNbにさきがけて形成し、偏析部にHICの起点となるような粗大Nb炭窒化物の残存を抑制する目的で添加する。しかし、0.005%未満では効果がなく、0.025%を超えると逆にTi炭窒化物そのものが粗大化しHICの起点となって母材部の耐HIC性を低下させるため、Ti含有量は0.005〜0.025%の範囲とする。より好ましくは、0.007〜0.020%の範囲である。
Ca:0.0010〜0.0035%
CaはHICの起点となる硫化物系介在物の形態を制御し、特にMnSによるHICの発生を防止するために必要な元素であるが、0.0010%未満ではその効果がなく、0.0035%を超えて添加しても効果が飽和し、むしろ粗大なCaO・CaS介在物が生成し、これがHICの起点となり、かえって耐HIC性を劣化させる。従って、Ca含有量は0.0010〜0.0035%とする。より好ましくは、0.0015〜0.0030%の範囲である。
P:0.01%以下
Pは不可避不純物であり、中心偏析により著しく偏析部硬さを上昇させて耐HIC性を劣化させる。この傾向は0.01%を超えると顕著となる。従って、Pは極力低減することが望ましいが、0.01%までは許容することができる。より好ましくは、0.006%以下とする。
S:0.001%以下
Sは、鋼中においては一般にMnS系の介在物となるが、Ca添加によりMnS系からCaS系介在物に形態制御される。しかし、Sの含有量が多いとCaS系介在物の量も多くなり、高強度鋼板では割れの起点となり得る。この傾向は、S量が0.001%を超えると顕著となる。従って、Sは極力低減することが望ましいが、0.001%までは許容することができる。より好ましくは、0.0006%以下とする。
B:0.0004%以下
Bは、焼入性向上元素であり鋼の高強度化に効果があるが、同時にHAZの硬さ上昇効果が著しく、鋼管同士の円周溶接部における耐SSC性を劣化させるため、鋼管母材ではできる限り低減する必要があり、その上限を0.0004%とする。
N:0.008%以下
Nは不可避不純物元素であるが、前述の通りNbやTiの粗大炭窒化物を形成し、HICの起点として母材部の耐HIC性を低下させることから、上限を0.008%とする。
本発明では、さらに、鋼管母材の強度を向上させるため、以下に示すCu、Ni、Cr、Mo、Vの中から選ばれた1種以上を添加する。
Cu:0.30%以下
Cuは、強度の上昇に有効な元素であるとともに、鋼管母材がpH4〜5程度の緩やかな硫化水素腐食環境下にさらされた場合、緻密な腐食生成物を形成しHICの起点への水素の侵入・集積を抑制するが、0.30%を超えて添加してもその効果は飽和し、かつ、後述の鋼管溶接金属部への希釈により、溶接金属部の高温割れの原因となる。従って、Cuを添加する場合には上限を0.30%とする。
Ni:0.50%以下
Niは靭性の改善と強度の上昇に有効な元素である。しかしながら、0.50%を超えて添加した場合、硫化水素腐食環境下に曝された鋼管母材表面で毛割れが発生する。従って、Niを添加する場合には上限を0.50%とする。
Cr:0.50%以下
Crは、焼入性を高めることで強度を得るために有効な元素である。しかしながら、0.50%を超えて添加すると溶接性を劣化させる。従って、Crを添加する場合は0.50%以下とする。
Mo:0.20%以下
Moは、焼入性を向上し、強度の上昇に大きく寄与する元素である。しかし、HAZの硬さ上昇効果が著しく、0.20%を超えて添加すると、鋼管同士の円周溶接部における耐SSC性を劣化させる。従って、Moを添加する場合は、0.20%以下とする。
V:0.05%以下
Vは、強度を上昇させる元素である。しかし、0.05%を超えて添加するとMoと同様HAZの硬さ上昇効果が著しく、鋼管同士の円周溶接部における耐SSC性を劣化させる。従って、Vを添加する場合は0.05%以下とする。
式(1)で計算されるCP値が0.95以下
式(1):CP=4.46C(%)+2.37Mn(%)/6+{1.18Cr(%)+1.95Mo(%)+1.74V(%)}/5+{1.74Cu(%)+1.7Ni(%)}/15+22.36P(%)ここで、各式の右辺の元素記号はそれぞれの含有量(質量%)を表わし、含有しない場合は0とする。
CP値は、各合金元素の含有量から中心偏析部の材質を推定するために考案された式であり、CP値が高いほど、中心偏析部の濃度が高くなり、中心偏析部の硬さが上昇する、という技術的意義がある。発明者らは、鋭意検討の結果、硫化水素環境ごとに中心偏析部でHICが発生する限界硬さを明確化し、その硬さを超えないための指標としてCP値での整理を試みた。その結果、本発明で解決しようとしているISO 15156の分類のRegion3環境においては、このCP値を0.95以下とすることで、HICを抑制することが可能となることがわかった。従って、CP値は0.95以下とする。
式(2)で計算されるPy値が0.160以下
Py=C(%)+Si(%)/30+Mn(%)/20+{Cu(%)+Cr(%)}/20+Ni(%)/60+Mo(%)/7+V(%)/10+5×B(%)・・・式(2)
ここで、各式の右辺の元素記号はそれぞれの含有量(質量%)を表わし、含有しない場合は0とする。
図2(c)に示すようにPy値は鋼管同士の円周溶接を行った場合の鋼管母材および溶接金属部のHAZ硬さ(図中それぞれ「母材HAZ」および「溶接金属HAZ」と記載)と良い相関がある。さらに、本発明で解決しようとしているISO 15156の分類のRegion3環境でのSSC発生防止のためには鋼のビッカース硬さを248以下とする必要があることから、円周溶接部におけるHAZ硬さを248以下にするためPy値は0.160以下とする。
本発明では、上記の元素以外はFeおよび不可避不純物とする。意図的に添加しなくてもよいが、上記以外の元素及び不可避的不純物については、本発明の効果を損なわない限り含有することができる。
なお、鋼管母材素材の製造方法については、材質と製造効率の点から転炉法によって溶製された鋼を連続鋳造法によりスラブとし、厚板圧延後、加速冷却を適用して600MPa以上の高強度化を得ることが望ましい。
2.溶接金属
2.1溶接金属の化学成分
次に、鋼管の溶接金属部の化学成分の限定理由を説明する。なお、化学成分の単位は全て質量%とする。また、本発明の説明で、溶接金属とは、特に断らない限り、鋼管製造時の突合せ溶接による溶接金属を云い、円周溶接時の溶接金属を対象としない。
C:0.04〜0.08%
Cは、母材部と同様、溶接金属の強度を高めるために最も有効な元素である。特に凝固まま組織である溶接金属において高強度を得るために0.04%以上必要である。一方、0.08%を超えると、円周溶接時、溶接金属のHAZ硬さの上昇が著しく、円周溶接部の耐SSC性を劣化させるため、上限を0.08%とする。なお、より好ましくは、0.04〜0.06%である。
Si:0.05〜0.5%
Siは溶接金属中では脱酸元素として働き、溶接金属中の酸素量を制御するために必要な元素である。溶接金属中のSiが0.05%未満の場合、脱酸が不十分となり溶接金属中の酸素量が増加し強度の低下をもたらすため0.05%以上必要である。一方、0.5%を超える添加をしても効果が飽和する。従って、Si含有量は0.05〜0.5%の範囲とする。
Mn:1.0〜1.6%
Mnは溶接金属においても焼入性向上元素として作用する。溶接金属の高強度化のためには、少なくとも1.0%以上のMnが必要であるが、1.6%を超えると円周溶接時に溶接金属のHAZ硬さの上昇が著しく、円周溶接部の耐SSC性を劣化させるため、上限を1.6%とする。従って、Mn含有量は、1.0〜1.6%の範囲とする。
Nb:0.01〜0.05%
Nbは溶接金属中の固溶NをBより先に窒化物形成することにより、オーステナイト粒界に固溶Bとして存在させるため、少なくとも0.01%以上必要である。一方、0.05%を超えると炭化物を形成し、溶接金属を析出硬化させ靭性の低下をもたらすため、上限を0.05%とする。より好ましくは、0.01〜0.03%の範囲である。
Ti:0.01〜0.04%
Tiは溶接金属中の酸素と反応してTiOまたはTiOを形成し、溶接金属オーステナイト粒内からのアシキュラフェライト変態核として機能する。アシキュラフェライト組織の微細化による強度上昇効果を得るためには多数のTiOまたはTiOの生成が必要であり、Tiは少なくとも0.01%以上必要である。一方、0.04%を超えると溶接金属中のTiOまたはTiOが凝集・粗大化して靭性の低下をもたらすため、上限を0.04%とする。より好ましくは、0.02〜0.04%の範囲である。
B:0.001〜0.003%
Bは溶接金属のオーステナイト粒界からのポリゴナルフェライト生成を抑制し、アシキュラフェライト主体の金属組織とする作用があり高強度化に寄与する。粒界からのポリゴナルフェライト生成を完全に抑制するためには少なくとも0.001%以上必要であるが、0.003%を超えても効果が飽和するため、上限を0.003%とする。より好ましくは、0.002〜0.003%の範囲である。
O:0.020〜0.035%
Oは、上述のTiと反応してTiOまたはTiOを形成し、溶接金属オーステナイト粒内からのアシキュラフェライト変態核として機能する。微細な金属組織であるアシキュラフェライト組織とするためには多数のTiOまたはTiOの生成が必要であり、Oは少なくとも0.020%以上必要である。一方、0.035%を超えると粒界フェライトが一部生成し、溶接金属の強度低下の原因となるため、上限を0.035%とする。より好ましくは、0.025〜0.035%である。
Al: 0.02%以下
Alは母材部からの希釈で不可避不純物として溶接金属中に存在するが、0.02%を超えると上述したTiOの生成を阻害し、溶接金属のアシキュラフェライト組織の金属組織の微細化作用による強度上昇効果を得ることができないため、上限を0.02%とする。
本発明では、さらに、溶接金属部の強度を向上させるため、以下に示すCu、Ni、Mo、Cr、Vの中から選ばれた1種以上を添加する。なお、添加する場合は、母材に添加している元素と同じものを添加することが好ましい。
Cu:0.20%以下
Cuは、焼入性向上元素として作用し、Mnの代替とすることができる。しかし、0.20%を超えるとCu液化割れが著しく溶接欠陥の原因となる場合がある。従って、Cuを添加する場合には上限を0.20%とする。
Ni:0.30%以下
Niは、焼入性向上元素として作用し、Mnの代替とすることができる。しかし、高価な元素であり、かつ0.30%を超えると強度上昇の効果が飽和する。従って、Niを添加する場合には上限を0.30%とする。
Cr:0.30%以下
Crもまた、焼入性向上元素として作用し、Mnの代替とすることができる。しかし、0.30%を超えて添加しても強度上昇の効果が飽和する。従って、Crを添加する場合には上限を0.30%とする。
Mo:0.20%以下
Moもまた、焼入性向上元素として作用し、Mn添加の代替とすることができる。しかし、鋼管母材と同様、鋼管同士の円周溶接時において溶接金属が溶接熱影響を受ける際、HAZの硬さ上昇効果が著しく、0.20%を超えて添加すると円周溶接部における耐SSC性を劣化させる場合がある。従って、Moを添加する場合には、上限を0.20%とする。
V:0.05%以下
VもMoと同様、焼入性向上元素として作用し、Mnの代替とすることができる。しかし、鋼管母材と同様、鋼管同士の円周溶接時において溶接金属が溶接熱影響を受ける際、HAZの硬さ上昇効果が著しく、0.05%を超えて添加すると円周溶接部における耐SSC性を劣化させる場合がある。従って、Vを添加する場合には、上限を0.05%とする。
溶接金属のPy値(Py):0.140〜0.160
さらに、本発明において、鋼管溶接部の継手強度の高強度化と、鋼管円周溶接時に溶接金属に形成されるHAZの硬さ低減を両立させるため、鋼管の内面溶接金属と外面溶接金属それぞれに、式(2)で計算されるPy値が0.140〜0.160範囲とする。
Py=C(%)+Si(%)/30+Mn(%)/20+{Cu(%)+Cr(%)}/20+Ni(%)/60+Mo(%)/7+V(%)/10+5×B(%)・・・式(2)
ここで、各式の右辺の元素記号は含有量(質量%)を表わし、含有しない場合は0とする。
本発明者らが種々検討した結果、内面溶接金属を円周溶接した際に形成されるHAZの硬度もまたPy値と相関し、ISO15156に規定されるRegion3環境でのSSC発生防止の観点から、硬さの上限をビッカース硬度Hv248以下とするため、上限を0.160とする。一方、低Py溶接金属組成で母材と同様に600MPa以上の継手強度を満足させるためには、後述する管厚1mm当りの溶接入熱を低減することで溶接後の冷却速度を上げる必要があるが、必要以上に溶接入熱が低いと、溶接部のアンダーカット等の溶接欠陥の原因となるため、可能な最低溶接入熱量において継手強度を達成しうるPy値の下限を求めたところ0.140であったため、下限を0.140とする。
上記の元素以外はFeおよび不避的不純物とし、意図的に添加しない。ただし、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記以外の成分を含有することができる。
また、鋼管溶接部は通常内面溶接金属と外面溶接金属に分かれているが、必ずしも両溶接金属が全く同じ組成となる必要はなく、継手強度を増加させる観点から、外面溶接金属組成を少し高いPy値とすることが好ましい。
上記溶接金属中の化学成分を上記範囲内に制御するには、母材の化学成分および溶接条件に応じて、溶接に用いる溶接材料(溶接ワイヤおよびフラックス)を適宜選択することが好ましい。例えば、各元素について、溶接金属中の成分元素の目標成分を母材希釈率で割り戻して求めた成分を有する溶接ワイヤを作製し、これを用いて溶接する方法である。
2.2溶接方法
なお、鋼管製造時の突合せ溶接の溶接方法は、優れた溶接品質と製造能率の点からサブマージアーク溶接を用いる。この場合、サブマージアーク溶接の管厚1mm当りの溶接入熱量は0.15kJ/mm以下とすることが好ましい。
図3に示すように、鋼管の溶接時の溶接入熱量を低減することにより同一Py値であっても溶接継手の強度が増加する。管厚に応じてその溶接入熱量は変化し、管厚1mm当たりの溶接入熱量として整理すると良い相関が得られたことから、図3よりPy値0.160以下で継手強度600MPa以上を満足するためには管厚1mm当りの溶接入熱量を0.15kJ/mm以下であればよいことがわかる。
なお、溶接入熱量を下げることで、溶接金属の溶着量が下がるため、より溶接材料の溶融効率が高い、径が細い溶接ワイヤ等の使用が好ましい。また、溶接部のアンダーカット等の欠陥を抑制するためには、管厚1mm当りの溶接入熱量は0.12kJ/mm以上とすることがさらに好ましい。
3.母材部金属組織
本発明では、鋼管母材におけるSSC発生防止の観点から、特に鋼管表層部の金属組織を以下のように規定する。ここで、金属組織の体積分率(%)の表記は各金属組織の面積率(%)を画像解析により測定し、体積分率(%)とみなして適用している。
鋼管表層部の島状マルテンサイトの体積分率:2%以下
島状マルテンサイト(以下、単に「MA」と略すこともある。)は、加速冷却によって生成する組織であり、MAが生成することで硬さが大きく上昇する。上述の通りISO 15156の分類のRegion3環境でのSSC発生防止のためには、母材部である鋼管表層部のビッカース硬さを248以下とする必要があり、少なくとも硫化水素腐食環境下に直接さらされる鋼管表層部の硬度低減が重要である。本発明者らは鋭意検討の末、鋼管母材金属組織中のMAに着目し、MAの体積分率の増大に伴い鋼管表層部硬さが上昇し、少なくとも2%を超えるMA体積分率では、ビッカース硬さが248Hvを超え、しかも耐SSC性が劣化する場合があることを見出した。従って、鋼管表層部の島状マルテンサイトの体積分率を2%以下とすることが好ましい。
なお、母材部引張強度600MPa以上を得るためには少なくとも母材部の金属組織はベイナイト主体である必要があり、体積分率でベイナイト組織が70%以上であることが好ましい。ただし、表層部に限っては軟質なフェライトを生成させることで硬さ低減を図っても、母材部引張強度への影響が小さいため、体積分率で20%以下のフェライト組織を含むフェライトとベイナイトの混合組織とすることができる。
表1に示す化学成分の鋼(鋼種A〜H)を連続鋳造法によりスラブとし、これを用いて板厚19〜25mmの鋼管素材を厚板圧延・加速冷却プロセスで製造した。
鋼管素材に、それぞれ表2に示す管厚1mm当りの溶接入熱条件で、種々の溶接ワイヤを用いて内面1層、外面1層のサブマージアーク溶接を実施し鋼管溶接部とした。溶接部の内面溶接金属より化学成分分析試料を採取し、それぞれの化学成分を分析した。化学成分の分析結果を表2に示す。
母材部および鋼管溶接部それぞれからAPI規格に従い全厚引張試験片を採取し、引張強度を測定した。なお、引張強度600MPa以上を本発明に必要な強度とした。また、母材部および鋼管溶接部のHIC性能を評価するため、NACE TM0284に従い、母材部および溶接部からHIC試験片を採取し、酢酸水溶液と塩化ナトリウム水溶液を混合してpHを3.0に調整した浸漬液に100%硫化水素ガスを飽和させ、96hr浸漬した。浸漬が終了したHIC試験片は等間隔に3断面切断し、それぞれ鏡面研磨した後、光学顕微鏡にて倍率100倍で各断面の観察を行い、NACE TM0284-2003のSection7に記載される要領で見つかった割れの試料幅方向長さをそれぞれ記録し、割れ長さ率CLR(%)を算出した。なお、CLRが15%以下を本発明においては、耐HIC性能を満足するものとした。
次に、図4に示すように、鋼管母材と鋼管溶接部がつき合わせとなるような円周溶接模擬多層溶接を、炭酸ガスアーク溶接法で実施した。溶接入熱の平均値は約1.0kJ/mmであった。そして、作製した円周溶接継手の1断面を切断後鏡面研磨し、図4に示すように、母材部表面、鋼管溶接部の内面溶接金属表面、円周溶接模擬部の母材側HAZ、円周溶接模擬部の内面溶接金属側HAZの4箇所についてそれぞれ5点ずつ、ビッカース硬度を測定し、その平均値を算出した。また、母材部表面のビッカース硬度測定箇所の脇から金属組織観察用試験片を採取し、まずナイタールエッチングを施して、400倍の光学顕微鏡でミクロ組織の種類を調査した。次に同試験片に2段エッチングを施してMAを現出させてから、1500倍の走査型電子顕微鏡にて無作為5視野撮影し、写真中のMAの面積率を画像解析により計測・算出した。
次に母材部表面、鋼管溶接部内面側表面、および円周溶接模擬部内面側表面の3箇所より、厚さ5mm、幅15mm、長さ115mmの矩形試験片を採取し、図5に示す治具を用いて4点曲げにより試験片中央に降伏強度の90%に相当する応力を付与した後、HIC試験と同様、酢酸水溶液と塩化ナトリウム水溶液を混合してpHを3.0に調整した浸漬液に100%硫化水素ガスを飽和させ、720hr浸漬した。浸漬が終了した試験片を治具から外し、水洗後、100倍の倍率で試験片表面でのSSC発生有無を確認した。
母材部表面のミクロ組織調査結果、母材部および溶接部の引張試験結果、硬度測定結果、HIC試験結果、およびSSC試験結果をまとめて表3に示す。
表3において、本発明例であるNo.1〜5はいずれも、母材・内面溶接金属・外面溶接金属の化学成分および母材表面部のミクロ組織が本発明の範囲内であり、母材・溶接部とも引張強度600MPa以上の高強度かつHICのCLRが0%であり、さらに母材部、溶接部、円周溶接模擬部全ての箇所の4点曲げSSC試験で割れが発生しなかった。
一方、母材のC量が本発明の上限を超えた比較例No.6は、母材表面部のミクロ組織監察においてMA分率が本発明の上限を超えており、近傍の硬度が271と非常に硬くなった結果、母材部の4点曲げSSC試験で割れが発生した。また、母材部のHIC試験においても表面側で多数の割れが発生しCLRが15%を超えていた。母材のCP値が本発明の上限を超えた比較例No.7は、母材部のHIC試験において中心偏析部で割れが多数発生し、CLRが15%を超えていた。母材のPy値が上限を超えた比較例No.8は、円周溶接模擬部の母材側HAZ硬さが非常に硬くなっており、円周溶接模擬部の4点曲げSSC試験で割れが発生した。
内面溶接金属のPyが本発明の下限を下回った、比較例No.9は、溶接部の引張強度が600MPaを下回った。一方、Pyが本発明の上限を上回った、比較例No.10は、円周溶接模擬部の内面溶接金属側HAZ硬さが非常に硬くなっており、円周溶接模擬部の4点曲げSSC試験で割れが発生した。管厚1mm当りの溶接入熱が本願範囲の0.15kJ/mmを上回った比較例No.10は、溶接部の引張強度が600MPaを下回った。
本発明によれば、pH4以下の厳しい硫化水素腐食環境が想定される天然ガスや原油輸送パイプラインにおいて鋼管母材の耐HIC性、耐SSC性のみならず、鋼管同士をつなぐ円周溶接部においても優れた耐SSC性を有する高強度鋼管の提供が可能となり、高圧操業による天然ガスまたは原油輸送の効率化を図ることができる。

Claims (3)

  1. 厚鋼板の母材と、溶接金属とを有する溶接鋼管であって、
    前記母材が、質量%で、
    C:0.02〜0.06%、
    Si:0.05〜0.5%、
    Mn:0.75〜1.75%、
    Al:0.01〜0.08%、
    Nb:0.005〜0.06%、
    Ti:0.005〜0.025%、
    Ca:0.0010〜0.0035%を含有し、
    P:0.01%以下、
    S:0.001%以下、
    B:0.0004%以下、
    N:0.008%以下で
    さらに、
    Cu:0.30%以下、
    Ni:0.50%以下、
    Cr:0.50%以下、
    Mo:0.20%以下、
    V:0.05%以下
    の中から選ばれる1種以上を含有し、
    下式(1)で表されるCP値が0.95以下であり、
    下式(2)で表されるPy値が0.160以下であり、
    残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    かつ、前記溶接金属が、質量%で、
    C:0.04〜0.08%
    Si:0.05〜0.5%
    Mn:1.0〜1.6%
    Nb:0.01〜0.05%
    Ti:0.01〜0.04%
    B:0.001〜0.003%
    O:0.020〜0.035%
    Al:0.02%以下
    を含有し、
    さらに
    Cu:0.20%以下
    Ni:0.30%以下
    Cr:0.30%以下
    Mo:0.20%以下
    V:0.05%以下
    の中から選ばれる1種以上を含有し、
    残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ
    前記溶接金属の化学組成で計算される式(2)のPy値が0.153〜0.160を満足することを特徴とし、溶接継手の引張強度が600MPa以上である耐硫化物応力腐食割れ性に優れた高強度溶接鋼管。
    CP=4.46C(%)+2.37Mn(%)/6+{1.18Cr(%)+1.95M
    o(%)+1.74V(%)}/5+{1.74Cu(%)+1.7Ni(%)}/15+22.36P(%)・・・式(1)
    Py=C(%)+Si(%)/30+Mn(%)/20+{Cu(%)+Cr(%)}/20+Ni(%)/60+Mo(%)/7+V(%)/10+5×B(%)・・・式(2)
    ここで、各式の右辺の元素記号は含有量(質量%)を表わし、含有しない場合は0とする。
  2. 前記母材の表層部の金属組織は、島状マルテンサイトの体積分率が2%以下であり、残部がベイナイトまたはベイナイトとフェライトの混合組織であることを特徴とする、請求項1記載の耐硫化物応力腐食割れ性に優れた高強度溶接鋼管。
  3. 請求項1または2に記載の高強度溶接鋼管の製造方法であり、
    管厚1mm当りの溶接入熱量を0.15kJ/mm以下とするサブマージアーク溶接により突合せ溶接を行う高強度溶接鋼管の製造方法。
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