JP6191393B2 - 極低温靱性に優れたサブマージアーク溶接金属、及び、それを形成するサブマージアーク溶接用ワイヤ及びフラックス - Google Patents

極低温靱性に優れたサブマージアーク溶接金属、及び、それを形成するサブマージアーク溶接用ワイヤ及びフラックス Download PDF

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Description

本発明は、X60〜X80級の鋼板をサブマージアーク溶接して製造し、極寒冷地で使用するラインパイプ用UO鋼管のシーム溶接部の引張強度が500〜850MPa級の溶接金属、及び、該溶接金属を形成するサブマージアーク溶接用ワイヤ及びフラックスに関するものである。
近年、極寒冷地でのエネルギー源の開発が進み、ラインパイプ用UO鋼管には、極寒冷地でも耐え得る低温靱性が要求されている。最近では、−60℃で靱性を維持することが可能な材料の開発が行われている。これに伴い、ラインパイプ用UO鋼管のシーム溶接部にも、同様に、極寒冷地でも耐え得る低温靱性が要求される。
シーム溶接部は、大きく、溶接金属と溶接熱影響部(HAZ)からなるが、溶接金属の低温靱性を改善することが一つの課題であり、これまで、改善手法が数多く提案されている。
特許文献1には、高強度高靱性を有する溶接金属とその形成方法が開示されている。この方法では、溶接金属の成分組成と炭素当量を規定して、700N/mm以上の高強度と、−40℃以下での低温靱性を確保しているが、溶接金属の成分組成において酸素量が考慮されていないので、低温靱性の改善が不十分である。
特許文献2には、低温靱性に優れた超高強度鋼管及びその製造方法が開示されている。対象鋼管がX100超の高強度UO鋼管であるが、溶接金属の成分組成において酸素量が考慮されていないので、やはり、低温靱性の改善が不十分である。
特許文献3には、低温靱性に優れた高強度ラインパイプ(X80〜X100級)が開示されている。溶接金属の降伏強度YSは550MPa以上であるが、溶接金属にBが添加されていないし、また、Al量も考慮されていないので、十分な極低温靱性が得られていない。
特許文献4には、低温靱性に優れた高強度ラインパイプが開示されている。この高強度ラインパイプにおいては、690MPa以上の強度を想定して、溶接金属にBが添加されていないので、低温靱性の改善が不十分である。
特許文献5には、溶接金属中のBを利用してHAZ靱性を改善した溶接継手が開示されている。溶接金属の成分組成は規定されているが、靱性確保に重要な酸素量が考慮されていないので、低温靱性の改善は不十分である。
特許文献6には、低温用高靱性UOE鋼管が開示されている。X80級の溶接金属において、固溶Bは考慮されていないことに加え、靱性改善に必要なAl量が考慮されていないので、低温靱性の改善が不十分である。なお、溶接ワイヤから溶接金属にBを添加しているが、溶接ワイヤへのB添加は歩留りや、成分組成の安定性の点で難点がある。
特許文献7には、高強度溶接鋼管の製造方法が開示されている。この鋼管の溶接金属においてはB量が少なく、酸素量とB量の関係が考慮されていないし、また、固溶Bに注目していない。
特許文献8には、低温用高強度鋼管が開示されている。この鋼管においては、HAZ靱性が改善されているが、溶接金属においては、固溶Bに注目していないし、酸素量とB量の関係も考慮していない。
特開平09−049055号公報 特開2000−256779号公報 特開2000−355729号公報 特開2004−043911号公報 特開2005−002476号公報 特開2005−023429号公報 特開2006−183127号公報 特開2006−328523号公報
本発明は、従来技術の現状に鑑み、X60〜X80級の鋼板をサブマージアーク溶接して製造した、例えば、−60℃の極低温域で使用するラインパイプ用UO鋼管のシーム溶接部の“溶接ままの溶接金属”(以下「溶接金属」という。)に、極低温靱性を付与することを課題とし、極低温靱性を備える溶接金属、及び、該溶接金属を形成する溶接ワイヤと溶接フラックスを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。溶接金属に極低温靱性を付与するためには、溶接金属の低温靱性を極低温域まで安定化させる必要がある。そのためには、溶接金属の組織を微細化し最適化することが一つの手段である。
Bは、靱性に悪影響を与える粒界フェライトの生成を抑制する元素であるが、本発明者らの検討の結果、溶接金属において、極低温で靱性を確保するためには、単なるBの添加ではなく、(x)溶接金属の酸素量を考慮してのBの添加と、及び、(y)その結果の固溶B量が重要であることが判明した。
即ち、溶接金属の低温靱性を極低温域まで安定化させるためには、(z1)溶接金属に添加するB量、及び、(z2)溶接金属中に残る固溶Bの量、を最適化することが重要で、この最適化により、溶接金属の低温靱性を極低温域まで安定に維持できることが判明した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)X60〜X80級の鋼板をサブマージアーク溶接して製造したUO鋼管のシーム溶接部の引張強度が500〜850MPa級の溶接金属であって、
(i)成分組成が、質量%で、
C :0.03%以上、0.10%以下、
Si:0.05%以上、0.50%以下、
Mn:0.80%以上、2.20%以下、
P :0.015%以下、
S :0.010%以下、
Cu:0.19%以上、0.500%以下、
Nb:0.050%以下、
V :0.020%以下、
O :0.020%以上、0.035%以下、
N :0.0045%以下、
Al:0.003%以上、0.018%以下、
Ti:0.005%以上、0.025%以下、
B :0.0004%以上、0.0040%以下、
固溶B:0.0001%以上、0.0020%以下、及び、残部:Fe及び不可避的不純物
からなり、
(ii-1)下記式(1)で定義するPCMが0.12以上、0.30以下であり、
CM=[C]+[Si]/30+([Mn]+[Cu]+[Cr])/20
+[Ni]/60+[Mo]/15+[V]/10+5[B] ・・・(1)
[A]は、元素Aの量(質量%)
(ii-2)O量[O]とB量[B]が下記式(2)を満たし、
0.10×[O]−0.0015≦[B]≦0.20×[O]−0.0015
・・・(2)
(ii-3)O量[O]とAl量[Al]が下記式(3)を満たし、
0.10×[O]+0.0013≦[Al]≦0.125×[O]+0.0168
・・・(3)
(ii-4)O量[O]、N量[N]、Al量[Al]、及び、Ti量[Ti]に基づき、下記式(4)で算出するα’と、O量[O]が下記式(5)を満たす
α’=(1.5×([O]−0.89×[Al])+3.4×[N])−[Ti])
×1000 ・・・(4)
592.0×[O]−15.1≦α’≦642.0×[O]+12.0・・・(5)
ことを特徴とする極低温靱性に優れたサブマージアーク溶接金属。
(2)前記成分組成が、Ni:2.0%以下、Cr:1.5%以下、Mo:1.0%以下の1種又は2種以上を含むことを特徴とする前記(1)に記載の極低温靱性に優れたサブマージアーク溶接金属。
(3)前記(1)又は(2)に記載の極低温靱性に優れたサブマージアーク溶接金属を形成する溶接ワイヤであって、
成分組成が、質量%で、
C :0.005%以上、0.400%以下、
Si:0.005%以上、1.00%以下、
Mn:0.20%以上、4.00%以下、
P :0.015%以下、
S :0.015%以下、
Cu:0.250%以下、
Al:0.0005%以上、0.050%以下、
Ti:0.002%以上、0.500%以下、
Nb:0.010%以下、
V :0.050%以下、
N :0.008%以下、
O :0.005%以下、及び、
残部:Fe及び不可避的不純物
からなることを特徴とするサブマージアーク溶接用ワイヤ。
(4)前記成分組成が、Ni:6.0%以下、Cr:3.0%以下、Mo:4.0%以下の1種又は2種以上を含むことを特徴とする前記(3)に記載のサブマージアーク溶接用ワイヤ。
(5)前記(3)又は(4)に記載のサブマージアーク溶接用ワイヤを用いて、前記(1)又は(2)に記載の極低温靱性に優れたサブマージアーク溶接金属を形成する際に用いるフラックスであって、
(i)成分組成が、質量%で、
SiO2:6%以上、23%以下、
CaO:4%以上、20%以下、
CaF2:10%以上、60%以下、
MgO:1%以上、8%以下、
Al23:6%以上、45%以下、
23:0.05%以上、0.6%以下
及び不可避の不純物からなり、かつ、
(ii)下記式(6)で定義する塩基度が0.2以上、3.8以下であることを特徴とするサブマージアーク溶接用フラックス。
6.5×{BaO}+6.05×{CaO}+4×{MgO}+5.1×{CaF2}+4.8×{MnO}+3.4×{FeO}−0.2×{Al23}−6.31×{SiO2}−2.2×{TiO2}−0.3×{ZrO2} ・・・(6)
ここで{AB}はABのモル%
(6)前記成分組成が、質量%で、MnO:1%以上、10%以下、TiO2:1%以上、25%以下、BaO:1%以上、15%以下、K2O:0.2%以上、1.2%以下、Li2O:0.4%以上、4.0%以下、FeO:0.5%以上、3.0%以下、及び、ZrO2:1%以上、15%以下の1又は2種以上を含むことを特徴とする前記(5)に記載のサブマージアーク溶接用フラックス。
本発明によれば、X60〜X80級の鋼板をサブマージアーク溶接して製造したラインパイプ用UO鋼管のシーム溶接部の溶接金属として、−60℃の極低温域まで靱性が安定な溶接金属を提供することができる。また、本発明によれば、−60℃の極低温域まで靱性が安定な溶接金属を形成するサブマージアーク溶接用ワイヤ及びフラックスを提供することができる。
X60〜X80級の鋼板をサブマージアーク溶接で製造したラインパイプ用UO鋼管のシーム溶接部の断面を示す図である。 溶接金属に添加するBの最適量、及び、溶接金属中に残る固溶Bの最適量を、−60℃吸収エネルギー≧100Jを基準として、実験的に調査した結果を示す図である。(a)は、溶接金属のB量(質量%)と−60℃吸収エネルギー(J)の関係を示し、(b)は、溶接金属の固溶B量(質量%)と−60℃吸収エネルギー(J)の関係を示す。 実施例で用いた開先形状を示す図である。 実施例で作成した溶接金属の機械的特性を評価するために用いた試験片を採取する位置を示す図である。(a)は、溶接金属の衝撃試験片の採取位置を示し、(b)及び(c)は、溶接金属の引張試験片の採取位置を示す。
図1に、X60〜X80級の鋼板をサブマージアーク溶接で製造したラインパイプ用UO鋼管のシーム溶接部の断面を示す。通常、UO鋼管は鋼板を円筒状に成形した後、向かう突き合った端部を、円筒状の成形物の内面及び外面から、各々、一層でサブマージアーク溶接する。
一般に、サブマージアーク溶接に先立ち、仮付け溶接を行う。この仮付け溶接は、後のサブマージアーク溶接により消滅するので、UO鋼管のシーム溶接部に残存しない。
溶接は、通常、仮付け溶接を外面から行い、その後、内面から、最初にサブマージアーク溶接によりシーム溶接を行い、次いで、外面より後続溶接を行うが、仮付け溶接の存在や、このサブマージアーク溶接の順番は、本発明の効果に影響するものではない。
本発明は、一層のサブマージアーク溶接で形成した溶接金属の低温靱性を極低温域まで安定化するものである。なお、本発明は、一層のサブマージアーク溶接で溶接できるのであれば、鋼管以外にも適用することが可能である。
本発明者らは、溶接金属の低温靱性を極低温域まで安定化させるため、(z1)溶接金属に添加するBの最適量、及び、(z2)溶接金属中に残る固溶Bの最適量を、−60℃吸収エネルギー≧100Jを基準として実験的に調査した。結果を図2に示す。
図2(a)に、溶接金属の総B量(質量%)と−60℃吸収エネルギー(J)の関係を示し、図2(b)に、溶接金属の固溶B量(質量%)と−60℃吸収エネルギー(J)の関係を示す。
溶接金属へのB添加は、(a)ワイヤからの添加と、(b)フラックスからの添加の二つがあるが、ワイヤからの添加は、現実的に、ワイヤの品種が増える等、工業上課題が多いので、上記調査では、成分の調整が容易なフラックスからの添加を採用した。
フラックス中のB23(硼砂)の量を変えることにより、溶接金属のB量を調整し、溶接金属の−60℃吸収エネルギー(J)を評価した。フラックスAとフラックスBは、溶接金属の酸素量が異なっている。
図2(a)に示すように、溶接金属の総B量で整理すると、−60℃吸収エネルギー(J)との関係はフラックスの種類により限界のB量が明瞭でない。
一方、図2(b)に示すように、固溶B量で整理すると、約20ppm(0.0020質量%)超で、−60℃吸収エネルギー(J)が100Jを下回る。即ち、−60℃吸収エネルギー≧100Jを基準にすると、溶接金属の低温靭性は、固溶B:0.0020質量%超で、急激に低下する。
この点が、本発明者らが見いだした新規で、本発明の基礎をなす知見である。
なお、固溶B量が過剰であると(例えば、20ppm超)、焼入れ性が上昇して、靱性の低い粗大なベイナイト組織が生成すると推定される。
Bは、溶接金属中では、固溶Bと、主に、酸素で固定されたBの形態で存在する。酸素で固定されるBの量は、溶接金属の酸素量により変化するので、図2(a)に示すように、溶接金属の酸素量が異なる場合、総B量で整理すると、靱性(−60℃吸収エネルギー(J))との相関が判然としないと推測される。
溶接金属中のBは、一部が、溶接中に、主に酸素で固定され、残りが、固溶Bとして溶接金属中に存在する。固溶B量を0.0020%以下にするためには、酸素、窒素の他、Bを固定する元素の量を調整する必要がある。
特に、酸素の影響が大きいが、酸素は、先ず、Al及びTiにより消費され、残りの酸素が、Bの固定のために消費される。それ故、Al及びTiが過剰な場合は、Bを固定する酸素が少なくなり、固溶Bが多くなる。
また、過剰のAl及びTiは、固溶強化元素として作用し、溶接金属組織の靱性を低下させる。そのため、Al及びTiの量も最適範囲に調整する必要がある。また、窒素も過剰に存在するとBを固定してしまうため、上限を規定する必要がある。
以上のことを踏まえ、B及び固溶Bについては、
B:0.0004%以上、0.0040%以下、
固溶B:0.0001%以上、0.0020%以下、
と規定し、O、N、Al、Tiについては、
O:0.020%以上、0.035%以下、
N:0.0045%以下、
Al:0.003%以上、0.018%以下、
Ti:0.005%以上、0.025%以下、
と規定した。この成分組成の限定理由については後述する。
したがって、本発明の極低温靱性に優れたサブマージアーク溶接金属(以下「本発明溶接金属」ということがある。)は、X60〜X80級の鋼板をサブマージアーク溶接して製造したUO鋼管のシーム溶接部の引張強度が500〜850MPa級の溶接金属であって、成分組成が、質量%で、
C :0.03%以上、0.10%以下、
Si:0.05%以上、0.50%以下、
Mn:0.80%以上、2.20%以下、
P :0.015%以下、
S :0.010%以下、
Cu:0.19%以上、0.500%以下、
Nb:0.050%以下、
V :0.020%以下、
O :0.020%以上、0.035%以下、
N :0.0045%以下、
Al:0.003%以上、0.018%以下、
Ti:0.005%以上、0.025%以下、
B :0.0004%以上、0.0040%以下、
固溶B:0.0001%以上、0.0020%以下、
かつ、必要に応じて
Ni:2.0%以下
Cr:1.5%以下
Mo:1.0%以下
の一種又は二種以上で
残部:Fe及び不可避的不純物
からなることを特徴とする。
さらに、本発明溶接金属は、
(ii-1)下記式(1)で定義するPCMが0.12以上、0.30以下であり、
CM=[C]+[Si]/30+([Mn]+[Cu]+[Cr])/20
+[Ni]/60+[Mo]/15+[V]/10+5[B] ・・・(1)
[A]は、元素Aの量(質量%)
(ii-2)O量[O]とB量[B]が下記式(2)を満たし、
0.10×[O]−0.0015≦[B]≦0.20×[O]−0.0015
・・・(2)
(ii-3)O量[O]とAl量[Al]が下記式(3)を満たし、
0.10×[O]+0.0013≦[Al]≦0.125×[O]+0.0168
・・・(3)
(ii-4)O量[O]、N量[N]、Al量[Al]、及び、Ti量[Ti]に基づき、下記式(4)で算出するα’と、O量[O]が下記式(5)を満たす
α’=(1.5×([O]−0.89×[Al])+3.4×[N])−[Ti])
×1000 ・・・(4)
592.0×[O]−15.1≦α’≦642.0×[O]+12.0・・・(5)
ことを特徴とする。
ここで、溶接金属の成分組成の限定理由について説明する。なお、溶接金属の成分組成には、当然に、母材による希釈があるので、本発明溶接金属の成分組成は、母材による希釈を考慮して規定した。以下、%は質量%を意味する。上記式(1)、(2)、(3)、(4)、及び、(5)の限定理由については後述する。
C:0.03%以上、0.10%以下
Cは、溶接金属の強度の確保に有効な元素である。所要の強度を得るため、0.03%以上とする。また、極低Cでも溶接中に高温割れが発生する可能性もある。好ましくは0.05%以上である。一方、0.10%を超えると、靱性が低下するので、0.10%以下とする。好ましくは0.08%以下である。
Si:0.05%以上、0.50%以下
Siは、溶接金属の脱酸と強度の向上に有効な元素である。添加効果を得るため0.05%以上とする。好ましくは0.08%以上である。一方、0.50%を超えると、靱性が低下するので、0.50%以下とする。好ましくは0.40%以下である。
Mn:0.80%以上、2.20%以下
Mnは、Siと同様に、溶接金属の脱酸と強度の向上に有効な元素である。添加効果を得るため0.80%以上とする。好ましくは1.00%以上である。一方、2.20%を超えると、靱性が低下するので、2.20%以下とする。好ましくは2.00%以下である。
P:0.015%以下
Pは、溶接金属の靱性を阻害する元素である。少ないほど好ましく、0.015%を超えると、溶接金属が著しく脆化するので、0.015%以下とする。好ましくは0.010%以下である。下限は0%を含むが、母材から不可避的に0.002%程度混入する。
S:0.010%以下
Sは、Pと同様に、溶接金属の靱性を阻害する元素である。少ないほど好ましく、0.010%を超えると、溶接金属が著しく脆化するので、0.010%以下とする。好ましくは0.005%以下である。下限は0%を含むが、母材から不可避的に0.002%程度混入する。
Cu:0.500%以下
Cuは、溶接金属の焼入れ性を高め、強度と靱性の改善に有効な元素であるので、含有しても特性に支障はないが、0.500%を超えると、靭性を阻害するので、0.500%以下とする。また、過剰に含有すると、溶接中に高温割れが発生する可能性が高くなる。好ましくは0.350%以下である。一方、焼入れ性を高め、強度と靱性を確保する点で、好ましくは0.19%以上である。
Nb:0.050%以下
0.050%を超えると、靱性を阻害するので、0.050%以下とする。好ましくは0.035%以下である。下限は特に規定しないが、母材からの希釈や溶接材料の製造上の不純物として0.001%程度は含まれる。
V:0.020%以下
0.020%を超えると、靱性を阻害するので、0.020%以下とする。好ましくは0.015%以下である。下限は特に規定しないが、母材からの希釈や溶接材料の製造上の不純物として0.001%程度は含まれる。
O:0.020%以上、0.035%以下
Oは、粒内変態の核となる酸化物を形成する溶接金属の組織を制御する作用をなす元素である。また、不要のBの固定も行う。
0.020%未満では、強度が500〜850MPa級の溶接金属において、組織をアシキュラーフェライト主体の組織にするために必要な、粒内変態の核となる酸化物の形成が不十分となるので、0.020%以上とする。
一方、0.035%を超えると、溶接金属中の酸化物が粗大化するとともに、固溶B量が減少し、上部棚エネルギーが低下して、溶接金属の極低温靱性が低下するので、0.035%以下とする。
N:0.0045%以下
Nは、溶接金属中に不可避的に混入し、Bを窒化物として固定する作用をなす元素である。0.0045%を超えると、B窒化物量が増大し、必要な固溶B量が不足して、溶接金属の極低温靱性が低下するので、0.0045%以下とする。好ましくは0.0040%以下である。
Al:0.003%以上、0.018%以下
Alは、酸化物を形成し、溶接金属のO量を制御する作用をなす元素である。0.003%未満では、溶接金属中の酸素の量が過剰となるとともに、生成する酸化物が粗大化して、溶接金属の極低温靱性を阻害するので、0.003%以上とする。なお、Alは、フラックスや母材から不可避的に混入する。
一方、0.018%を超えると、Bを固定する酸素の量が不足して、固溶Bが増加し、溶接金属の極低温靱性が低下するので、0.018%以下とする。好ましくは0.015%以下である。
Ti:0.005%以上、0.025%以下
Tiは、粒内変態の核となる酸化物を形成して、溶接金属中の固溶Bを確保するとともに、溶接金属の組織を制御する作用をなす元素である。
0.005%未満では、強度がX65〜X80クラスの鋼管の溶接金属において、組織をアシキュラーフェライト主体の組織にするために必要な、粒内変態の核となる酸化物の形成が不十分となるので、0.005%以上とする。好ましくは0.008%以上である。
一方、0.025%を超えると、Bを固定するための酸素量が不足して、固溶Bが増加して、溶接金属のち極低温靱性が低下するので、0.025%以下とする。
B:0.0004%以上、0.0040%以下
Bは、溶接金属の焼入れ性を高めるとともに、所要量の固溶Bを確保して極低温靭性を高める作用をなす元素である。0.0004%未満であると、添加効果が充分に発現しないので、0.0004%以上とする。好ましくは0.0005%以上である。
一方、過剰に添加すると、固溶Bが増加するので、0.0040%以下とする。好ましくは0.0035%以下である。
固溶B:0.0001%以上、0.0020%以下
図2(b)に示すように、−60℃吸収エネルギー(J)の変化を固溶B量で整理すると、約20ppm超で100Jを下回る。即ち、−60℃吸収エネルギー≧100Jを基準にすると、溶接金属の低温靭性は、固溶B:0.0020%超で、急激に低下する。これを根拠に、固溶Bは0.0020%以下とする。好ましくは0.0015%以下である。0.0001%が固溶Bの限界量であるので、固溶Bは,0.0001%以上とする。
次に、上記式(1)〜(5)の限定理由について説明する。
上記式(1):0.12以上、0.30以下
上記式(1)で定義するPCMが0.12未満であると、500〜850MPaの強度の溶接金属を得るのが難しくなるので0.12以上とする。一方、0.30を超えると、強度が過剰となり靭性が低下する可能性がでてくるため、0.30以下とする。
上記式(2):O量[O]とB量[B]の関係
前述したように、溶接金属中のBは、一部が、溶接中に、酸素、窒素、その他、Bを固定する元素で固定され、残りが固溶Bとして溶接金属中に存在する。特に、酸素の影響が大きいので、固溶B量を0.0015%以下に維持するためには、酸素で消費されるB量を見込んで、B量を規定する必要がある。そこで、本発明者らは、酸素量[O]とB量[B]の最適関係を調査した。
その結果、B量[B]が、(0.10×[O]−0.0015)未満であると、0.0001%以上の固溶B量を確保することが難しく、(0.20×[O]−0.0015)を超えると、固溶B量が増大して溶接金属の極低温靱性が低下することが解った。それ故、B量[B]は、上記式(2)を満たすこととした。
上記式(3):O量[O]とAl量[Al]の関係
酸素は、主にAlにより消費され、残りの酸素が、Bの固定のために消費される。それ故、Alが過剰な場合は、Bを固定するO量が少なくなり、固溶Bが多くなる。また、過剰のAlは、固溶強化元素として、溶接金属の靱性を低下させる。そのため、溶接金属のO量[O]とAl量[Al]の関係を最適化する必要があり、本発明者らは、該関係を調査した。
その結果、Al量[Al]が、(0.10×[O]+0.0013)未満であると、Al量が少なくて、Bを固定するO量が多くなり、固溶Bが少なくなって、所要の極低温靱性を得るのが難しく、一方、(0.125×[O]+0.0168)を超えると、固溶Al量が増大して、溶接金属の靱性が低下する。それ故、Al量[Al]は、上記式(3)を満たすこととした。
上記式(4):α’と元素O量[O]の関係
引張強度が500〜850MPa級の溶接金属の組織は、アシキュラーフェライト主体で、これらは酸化物を生成核として微細化して強度と靭性を確保している。
上記効果に対するO、N、Al、及び、Tiの効果の指針として上記式(4)で求められるα’があるが、さらに詳細検討した結果、この最適値は、O量により変化し、上記式(5)で表されることが判明した。
α’が式(5)で示される下限未満の場合は、O量不足となり組織の微細化に必要な生成核が十分に生成しない。一方、上記式(5)で示される上限を超えると、酸素が過剰となり、靭性が低下する。
本発明溶接金属は、溶接金属の強度向上のため、本発明溶接金属の溶接性や極低温靭性を阻害しない範囲で、Ni:2.0%以下、Cr:1.5%以下、Mo:1.0%以下の1種又は2種以上を含有してもよい。
Ni:2.0%以下
Niは、溶接金属の焼入れ性を高め、強度向上に寄与する元素である。2.0%を超えると、凝固割れが発生する可能性が高くなるため、2.0%以下とする。好ましくは1.5%以下である。
Cr:1.5%以下
Crは、溶接金属の焼入れ性を高め、強度向上に寄与する元素である。1.5%を超えると、靱性を阻害するので、1.5%以下とする。好ましくは1.0%以下である。
Mo:1.0%以下
Moは、溶接金属の焼入れ性を高め、強度向上に寄与する元素である。1.0%を超えると、靱性を阻害するので、1.0%以下とする。好ましくは0.5%以下である。
本発明溶接金属を形成するために使用するサブマージ溶接用ワイヤ(以下「本発明ワイヤ」ということがある。)は、下記の成分組成を線材とするワイヤが好ましい。
成分組成が、質量%で、C:0.005%以上、0.400%以下、Si:0.005%以上、1.00%以下、Mn:0.20%以上、4.00%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cu:0.250%以下、Al:0.0005%以上、0.050%以下、Ti:0.002%以上、0.500%以下、Nb:0.010%以下、V:0.050%以下、N:0.008%以下、O:0.005%以下、及び、残部:Fe及び不可避的不純物からなるワイヤ。
本発明ワイヤの線材の成分組成の限定理由について説明する。
C:0.005%以上、0.400%以下
Cは、溶接金属のC量(0.03%以上、0.10%以下)を確保するため、0.005%以上、0.400%以下とする。好ましくは0.008%以上、0.300%以下である。
Si:0.005%以上、1.00%以下
Siは、溶接金属のSi量(0.05%以上、0.50%以下)を確保するため、0.005%以上、1.00%以下とする。好ましくは0.05%以上、0.50%以下である。
Mn:0.20%以上、4.00%以下
Mnは、溶接金属のMn量(0.80%以上、2.20%以下)を確保するため、0.20%以上、4.00%以下とする。好ましくは0.50%以上、3.00%以下である。
P:0.015%以下
Pは、不純物元素であり、少ない方が好ましいので、0.015%以下とする。好ましくは0.010%以下である。下限は0%を含むが、製造過程で素材から不可避的に0.001%程度混入する。
S:0.015%以下
Sは、不純物元素であり、少ない方が好ましいので、0.015%以下とする。好ましくは0.010%以下である。下限は0%を含むが、製造過程で素材から不可避的に0.001%程度混入する。
Cu:0.250%以下
Cuは、溶接金属のCu量(0.50%以下)を確保するため、0.250%以下とする。好ましくは0.200%以下である。ワイヤは、製造時に、種類によっては送給性や通電性を確保するために、線材の表面にCuを鍍金する。この場合は、このCuも溶接中に溶接金属に添加されて、溶接金属中のCuとなる。
Al:0.0005%以上、0.050%以下
Alは、脱酸元素であり、溶接金属のAl量(0.003%以上、0.018%以下)を確保するため、0.0005%以上、0.050%以下とする。
Ti:0.002%以上、0.500%以下
Tiは、溶接金属の組織制御に必要な元素で、溶接金属のTi量(0.005%以上、0.025%以下)を確保するため、0.002%以上、0.500%以下とする。好ましくは0.010%以上、0.300%以下である。
Nb:0.010%以下
Nbは、溶接金属のNb量(0.050%以下)を確保するため、0.010%以下とする。好ましくは0.007%以下である。実際は、製造上不可避に0.001%程度は含まれる。
V:0.050%以下
Vは、溶接金属のV量(0.020%以下)を確保するため、0.050%以下とする。好ましくは0.040%以下である。実際は、製造上不可避に0.001%程度は含まれる。
N:0.008%以下
Nは、溶接金属のN量(0.0045%以下)を確保するため、0.008%以下とする。好ましくは0.005%以下である。
O:0.005%以下、
Oは、溶接金属のO量(0.020%以上、0.035%以下)を確保するため、0.005%以下とする。好ましくは0.003%以下である。
本発明ワイヤは、上記元素の他、Ni:6.0%以下、Cr:3.0%以下、Mo:4.0%以下の1種又は2種以上を含有してもよい。
本発明溶接金属が、Ni:2.0%以下、Cr:1.5%以下、Mo:1.0%以下の1種又は2種以上を含有する場合、Ni:6.0%以下、Cr:3.0%以下、Mo:4.0%以下の1種又は2種以上を含有する本発明ワイヤを使用する。
本発明ワイヤを用いて、本発明溶接金属を形成する際に用いるフラックス(以下「本発明フラックス」ということがある。)は、下記のフラックスが好ましい。
(i)成分組成が、質量%で、
SiO2:6%以上、23%以下、
CaO:4%以上、20%以下、
CaF2:10%以上、60%以下、
MgO:1%以上、8%以下、
Al23:6%以上、45%以下、
23:0.05%以上、0.6%以下
及び不可避的不純物からなり、かつ、
(ii)下記式(6)で定義する塩基度が0.2以上、3.8以下である
ことを特徴とするサブマージアーク溶接用フラックス。
6.5×{BaO}+6.05×{CaO}+4×{MgO}+5.1×{CaF2}+4.8×{MnO}+3.4×{FeO}−0.2×{Al23}−6.31×{SiO2}−2.2×{TiO2}−0.3×{ZrO2} ・・・(6)
ここで{AB}はABのモル%
本発明フラックスの成分組成は、基本的に従来のフラックスの成分組成を踏襲するものであるが、本発明溶接金属へ所要量のBを供給して、所要量の固溶Bを確保するため、B23を0.05%以上、0.6%以下含有する。また、溶接金属の酸素量は、一般に、式(6)で定義される塩基度で決まり、溶接金属中の酸素量を0.020%以上、0.035%以下とするために、上記式(6)で定義する塩基度を0.2以上、3.8以下とする。
本発明フラックスは、質量%で、MnO:1%以上、10%以下、TiO2:1%以上、25%以下、BaO:1%以上、15%以下、K2O:0.2%以上、1.2%以下、Li2O:0.4%以上、4.0%以下、FeO:0.5%以上、3.0%以下、及び、ZrO2:1%以上、15%以下の1又は2種以上を含有してもよい。
本発明ワイヤと本発明フラックスを用いて、本発明溶接金属を一層サブマージアーク溶接で形成するラインパイプ用UO鋼管の母材は、X60〜X80級の鋼板であればよく、特に、特定の成分組成の鋼板に限定されない。
通常、母材の溶込みは溶接金属の成分組成に影響を及ぼすが、本発明溶接金属の成分組成、及び、上記式(1)〜(5)においては、前述したように、母材による希釈を考慮しているので、上記ラインパイプ用UO鋼管の母材は、X60〜X80級の鋼板であればよく、特に、特定の成分組成の鋼板に限定されない。
なお、母材(鋼板)の好ましい成分組成は、次のとおりである。
C :0.03%以上、0.1%以下、
Si:0.05%以上、0.40%以下、
Mn:0.8%以上、2.5%以下、
P :0.015%以下、
S :0.005%以下、
Nb:0.05%以下
V :0.05%以下
Al:0.001%以上、0.040%以下、
Ti:0.005%以上、0.030%以下、
N :0.006%以下、
O :0.005%以下、及び、
残部:Fe及び不可避的不純物
必要に応じ、Ni:1.0%以下、Cr:1.5%以下、Mo:1.2%以下、Cu:0.8%以下の1種又は2種以上
上記好ましい成分組成の限定理由を説明する。
C:0.03%以上、0.10%以下
Cは、母材(鋼板)の強度確保に有効な元素である。そのため、0.03%未満では、添加効果が充分に発現せず、0.10%を超えると、シーム溶接部の硬度が上昇して、低温割れが発生し易くなる。
Si:0.05%以上、0.40%以下
Siは、固溶強化で、母材及びHAZの強度上昇に有効な元素である。0.05%未満では、添加効果が充分に発現せず、0.40%を超えると、靱性が著しく低下する。
Mn:0.8%以上、2.5%以下
Mnは、焼入れ性を高めて、母材及びHAZの強度向上に寄与する元素である。0.8%未満では、添加効果が充分に発現せず、2.5%を超えると、強度が上昇しすぎて靱性が低下する。
P:0.015%以下
Pは、不純物元素であり、少ないほど好ましいので、0.015%以下とする。下限は0%を含むが、0.0001%未満への低減は、製造コストの上昇を招くので、実用鋼では、0.0001%が下限となる。
S:0.005%以下
Sは、不純物元素であり、少ないほど好ましいので、0.005%以下とする。下限は0%を含むが、0.0001%未満への低減は、製造コストの上昇を招くので、実用鋼では、0.0001%が下限となる。
Nb:0.05%以下
Nbは、炭化物を形成して、母材のHAZの焼戻し軟化抵抗の向上に寄与する元素であるため、母材に添加されることがあるが、0.05%を超えると、溶接金属中のNb量が過剰となる。
V:0.05%以下
Vは、炭化物を形成して、HAZの焼戻し軟化抵抗の向上に寄与する元素で、この効果を得るために添加することがあるが、0.05%を超えると溶接金属中のV量が過剰となる。
Al:0.001%以上、0.040%以下
Alは、脱酸に有効な元素である。0.001%未満では、添加効果が発現せず、0.040%を超えると、酸化物の量が増えて鋼の清浄度が低下し、靱性が低下する。
Ti:0.005%以上、0.030%以下
Tiは、窒化物を形成し、鋼中の固溶N量を低減する他、窒化物のピンニング効果でオーステナイト粒の粗大化を抑制し、母材及びHAZの靱性向上に寄与する元素である。0.005%未満では、添加効果が発現せず、0.030%を超えると、靱性が劣化する。
N:0.006%以下
Nは、TiNを形成して、オーステナイトの粗大化を抑制する元素であるため、母材に添加される場合があるが、0.006%を超えると、溶接金属中のN量が増大し溶接部金属の靭性が低下する。
O:0.005%以下、
0.005%を超えると、酸化物が粗大化して、靱性が低下するので、Oは、0.005%以下とする。
Ni:1.0%以下、Cr:1.5%以下、Mo:1.2%以下、Cu:0.8%以下の1種又は2種以上
Ni:1.0%以下
Niは、焼入れ性向上元素であるが、高価な元素であるため、1.0%を超えると、製造コストが上昇する。
Cr:1.5%以下、Mo:1.2%以下、Cu:0.8%以下
Cr、Mo、Cuは、いずれも、焼入れ性向上元素であり、母材及びHAZの強度向上に寄与するが、Crが1.5%を超え、Moが1.2%を超え、又は、Cuが0.8%を超えると、添加効果が飽和する。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例)
表1に示す成分組成のX60、X70、及び、X80級の鋼板A、B、C、及び、Dを母材とし、サブマージアーク溶接で、ラインパイプ用UO鋼管のシーム溶接部を模擬した溶接部を作成した。
溶接は、鋼板の裏面から、鋼管の内面溶接を模擬した先行溶接を行い、次に、鋼板の表面に外面溶接を模擬した後続溶接を行った。評価は、後続溶接部に対して行った。
通常は、仮止めのための溶接を先行溶接に先立ち行うが、この仮止め溶接は、後の先行溶接、又は、その後の後続溶接により消失するので、本発明の効果に影響を与えない。そのため、実施例では、仮付け溶接は行わなかった。
表2に、用いた溶接ワイヤの成分組成を示し、表3に、用いた溶接フラックスの成分組成を示す。図3に、用いた開先の形状を示す。表4に、鋼板の板厚毎の開先寸法を示す。また、表5に、鋼板の板厚に応じた溶接条件を示す。
溶接金属の特性は、JIS Z3111に準拠して、溶接金属の引張試験及び衝撃試験を実施して評価した。図4に、試験片の採取位置を示す。図4(a)に、溶接金属の衝撃試験片の採取位置を示す。衝撃試験片1は、ノッチの方向が溶接線方向になるように採取した。図4(b)及び(c)に、溶接金属の引張試験片の採取位置を示す。引張試験片2は、溶接線方向に沿って、JIS A2号引張試験片を採取した。
表6に、表2に成分組成を示す溶接ワイヤと、表3に成分組成を示す溶接フラックスを用いて形成した後続溶接の溶接金属の成分組成を示し、表7(表6の続き)に、該溶接金属の特性値を示す。表8に、形成した後続溶接金属の特性を評価した結果を示す。
発明例においては、溶接金属の成分組成、及び、固溶B量は、本発明の範囲を満足しており、その結果、−60℃吸収エネルギーが平均値及び最小値ともに100Jを超えていて、極低温靱性に優れていることが解る。
一方、比較例1及び2では、Ti又はMnが過剰のため靱性が低い。比較例3及び4では、固溶Bが不足しているため、焼入れ不足で、溶接金属の靱性が低い。比較例3では、溶接中にアークが乱れたため、溶接金属のNが過剰となり、さらに、靱性が低くなっている。
比較例5では、酸素が過剰で、かつ、固溶Bが少ないため、溶接金属の靱性が低い。比較例6及び7では、Ti又はSiが過剰のため、靱性が低い。また、Niが過剰なため、高温割れも発生している。比較例7では、さらに、P及びSが過剰のため、溶接時に高温割れが発生している。比較例8では、Bが過剰のため固溶Bも過剰となり、組織が粗大化し靱性が低い。
比較例9及び10では、酸素が過剰となり、その結果、靱性が低い。これは、塩基度の低いフラックスp及びqを使用しているためである。比較例11では、CuとMnが過剰であり、溶接中に高温割れが発生している。また、固溶Bも不足しているため、靱性も低い。比較例12では、靱性は比較的良好であるが、Cが過剰のため、溶接中に高温割れが発生している。
比較例13では、酸素が過剰のため固溶Bが不足し、さらに、Tiが過剰のため、靱性が低い。逆に、比較例14及び15では、O量不足のため、組織微細化に必要な酸化物が形成されず、靱性が低い。比較例16では、Vが過剰のため、靱性が低い。さらに、C量不足のために、高温割れが発生している。
比較例17でも、Vが過剰のため、靱性が低い。さらに、比較例18では、Cが過剰のため、強度が過剰で靱性が低く、また、高温割れも発生している。比較例19では、V及びTiが過剰で、かつ、PCMが高く、強度が過剰となり靱性が低い。
前述したように、本発明によれば、X60〜X80級の鋼板をサブマージアーク溶接で溶接して製造したラインパイプ用UO鋼管のシーム溶接部の溶接金属として、−60℃の極低温域まで靱性が安定な溶接金属を提供することができる。また、本発明によれば、−60℃の極低温域まで靱性が安定な溶接金属を形成するサブマージアーク溶接用ワイヤ及びフラックスを提供することができる。
上記溶接金属を備えるラインパイプ用UO鋼管は、極寒冷地で高い信頼性のもとで使用できるので、本発明は、ラインパイプ製造産業及びラインパイプ建設産業において利用可能性が高いものである。
1 衝撃試験片
2 引張試験片

Claims (6)

  1. X60〜X80級の鋼板をサブマージアーク溶接して製造したUO鋼管のシーム溶接部の引張強度が500〜850MPa級の溶接金属であって、
    (i)成分組成が、質量%で、
    C :0.03%以上、0.10%以下、
    Si:0.05%以上、0.50%以下、
    Mn:0.80%以上、2.20%以下、
    P :0.015%以下、
    S :0.010%以下、
    Cu:0.19%以上、0.500%以下、
    Nb:0.050%以下、
    V :0.020%以下、
    O :0.020%以上、0.035%以下、
    N :0.0045%以下、
    Al:0.003%以上、0.018%以下、
    Ti:0.005%以上、0.025%以下、
    B :0.0004%以上、0.0040%以下、
    固溶B:0.0001%以上、0.0020%以下、及び、残部:Fe及び不可避的不純物
    からなり、
    (ii-1)下記式(1)で定義するPCMが0.12以上、0.30以下であり、
    CM=[C]+[Si]/30+([Mn]+[Cu]+[Cr])/20
    +[Ni]/60+[Mo]/15+[V]/10+5[B] ・・・(1)
    [A]は、元素Aの量(質量%)
    (ii-2)O量[O]とB量[B]が下記式(2)を満たし、
    0.10×[O]−0.0015≦[B]≦0.20×[O]−0.0015
    ・・・(2)
    (ii-3)O量[O]とAl量[Al]が下記式(3)を満たし、
    0.10×[O]+0.0013≦[Al]≦0.125×[O]+0.0168
    ・・・(3)
    (ii-4)O量[O]、N量[N]、Al量[Al]、及び、Ti量[Ti]に基づき、下記式(4)で算出するα’と、O量[O]が下記式(5)を満たす
    α’=(1.5×([O]−0.89×[Al])+3.4×[N])−[Ti])
    ×1000 ・・・(4)
    592.0×[O]−15.1≦α’≦642.0×[O]+12.0・・・(5)
    ことを特徴とする極低温靱性に優れたサブマージアーク溶接金属。
  2. 前記成分組成が、Ni:2.0%以下、Cr:1.5%以下、Mo:1.0%以下の1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の極低温靱性に優れたサブマージアーク溶接金属。
  3. 請求項1又は2に記載の極低温靱性に優れたサブマージアーク溶接金属を形成する溶接ワイヤであって、
    成分組成が、質量%で、
    C :0.005%以上、0.400%以下、
    Si:0.005%以上、1.00%以下、
    Mn:0.20%以上、4.00%以下、
    P :0.015%以下、
    S :0.015%以下、
    Cu:0.250%以下、
    Al:0.0005%以上、0.050%以下、
    Ti:0.002%以上、0.500%以下、
    Nb:0.010%以下、
    V :0.050%以下、
    N :0.008%以下、
    O :0.005%以下、及び、
    残部:Fe及び不可避的不純物
    からなることを特徴とするサブマージアーク溶接用ワイヤ。
  4. 前記成分組成が、Ni:6.0%以下、Cr:3.0%以下、Mo:4.0%以下の1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項3に記載のサブマージアーク溶接用ワイヤ。
  5. 請求項3又は4に記載のサブマージアーク溶接用ワイヤを用いて、請求項1又は2に記載の極低温靱性に優れたサブマージアーク溶接金属を形成する際に用いるフラックスであって、
    (i)成分組成が、質量%で、
    SiO2:6%以上、23%以下、
    CaO:4%以上、20%以下、
    CaF2:10%以上、60%以下、
    MgO:1%以上、8%以下、
    Al23:6%以上、45%以下、
    23:0.05%以上、0.6%以下
    及び不可避の不純物からなり、かつ、
    (ii)下記式(6)で定義する塩基度が0.2以上、3.8以下であることを特徴とするサブマージアーク溶接用フラックス。
    6.5×{BaO}+6.05×{CaO}+4×{MgO}+5.1×{CaF2}+4.8×{MnO}+3.4×{FeO}−0.2×{Al23}−6.31×{SiO2}−2.2×{TiO2}−0.3×{ZrO2} ・・・(6)
    ここで{AB}はABのモル%
  6. 前記成分組成が、質量%で、MnO:1%以上、10%以下、TiO2:1%以上、25%以下、BaO:1%以上、15%以下、K2O:0.2%以上、1.2%以下、Li2O:0.4%以上、4.0%以下、FeO:0.5%以上、3.0%以下、及び、ZrO2:1%以上、15%以下の1又は2種以上を含むことを特徴とする請求項5に記載のサブマージアーク溶接用フラックス。
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