JP4005335B2 - 基板処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶パネルのTFT基板等の基板を回転駆動しつつ、処理液の塗布、洗浄、乾燥する、いわゆる回転式基板処理装置に係り、特に、基板の裏面を洗浄、乾燥する機構を有する回転式基板処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
TFT基板等のガラス基板の製造においては、レジストの塗布、エッチング液の塗布、レジストの剥離等の処理が繰り返し施されるが、作業効率の向上や設備の小規模化の観点から、この処理を実施する装置として回転式の基板処理装置が使用されている。
【0003】
図1は、従来の回転式基板処理装置を示す模式図である。図1に示すように、従来の回転式基板処理装置は、長方形の基板1を受け台2の上に保持した状態で、モータ(図示せず)によって回転軸3を回転させながら、上方に設置したスプレーユニット(図示せず)によってエッチング液等の処理液を基板1の表面に供給する。基板1の表面に供給された処理液は、遠心力によって基板1の表面上を外方に向かって拡散する。このような作用により、処理液は、基板1の表面全体にほぼ均一な膜厚に塗布され、余分な処理液は、基板1のエッジ部分から外方に飛散する。
【0004】
処理液の塗布が終了した後には、別のスプレーユニット(図示しない)によって、処理液の塗布と同様に、基板1を回転させた状態で、基板1の表面に純水等の洗浄液を吹きつけ、基板1の表面の洗浄を行い、さらに、基板1を高速で回転させて乾燥させる。
【0005】
しかし、余分な処理液や洗浄液が基板の裏面に回り込んだり、または、ミスト状になった処理液が裏面に付着したりすると、ガラス基板の製品欠陥となる。このような事態に対応すべく、近年では、基板裏面の洗浄機構を有する回転式基板処理装置が主流となっている。
【0006】
図2は、従来の基板裏面の洗浄機構を有する回転式基板処理装置の一例を示す模式図であり、(a)は当該装置の全体概略図を示し、(b)は基板裏面の洗浄手段の拡大図を示す。図2に示すように、この基板処理装置では、基板1は、支持ピン5を介して、ロータ4にほぼ水平に支持されている。
【0007】
このロータ4は、基板1の回転円の最大径(対角寸法)よりも若干大きな円板であって、回転駆動機構(図示しない)によって、高速回転し、基板1の表面に遠心力の作用を持たせるとともに、処理液や洗浄液を回収する際の液ガイドとしても機能する。このロータ4の中心部に、基板洗浄ノズル6が設置されている。この基板洗浄ノズル6は、ロータ4とは独立に、回転しない固定軸に設置されており、通常、その中心部に不活性ガス噴射手段7を有し、更にその周囲に複数の洗浄液噴射手段8を有する構造となっている。
【0008】
図3は、従来の基板洗浄ノズルによる基板裏面への洗浄液の噴射状態を示す模式図である。図3に示すように、基板洗浄ノズル6の中心部に設置された不活性ガス噴射手段7は、基板1裏面の回転中心部にN2等の不活性ガスを吹き付けるためのものであり、これにより、遠心力が小さい基板の回転中心部における乾燥を促進させて、基板全体をむらなく乾燥できる。一方、不活性ガス噴射手段7の周囲に設置された複数の洗浄液噴射手段8は、基板裏面に純水等の洗浄液を吹き付けるためのものである。この洗浄液噴射手段8は、純水等を洗浄液として基板裏面に吹き付け、これによって基板裏面の洗浄を行うためのものである。このような基板裏面の洗浄機構によって、余剰な処理液等が基板裏面に付着することによるガラス基板の欠陥は、一応、解消されていた。
【0009】
しかし、最近、ガラス基板の大型化の要請が強くなってきており、従来の基板裏面の洗浄機構では対処しきれない事態が生じてきた。即ち、上記の図3に示した洗浄機構では、精々、幅600mm、長さ720mmの基板の洗浄を対象とされていたため、基板裏面にむらなく洗浄液を塗布することで、基板裏面に付着した余剰処理液等を取り除くことができた。従って、洗浄液は、同じ傾斜角度を有する複数の洗浄液噴射手段から広角に拡散するように噴射されるような機構となっていた。しかし、このような機構では、最近、主流となってきている幅730mm、長さ920mmという寸法またはこれより大きい寸法の基板洗浄を行う場合には、基板の回転中心部付近への洗浄液の塗布を重視すれば、基板の回転外周部付近への洗浄液の塗布が困難となり、逆に、基板の回転外周部付近への洗浄液の塗布を重視すれば、基板の回転中心部付近への洗浄液の塗布が困難となる。
【0010】
これに対応すべく、洗浄液噴射手段の拡散角度をあまりに広角にして洗浄液を噴射しても、基板裏面における単位面積当たりの洗浄液の圧力が弱すぎて、十分な洗浄が行えない。このように、ガラス基板の大型化に伴って、従来の小型のガラス基板の裏面洗浄においては、全く考慮する必要がなかった問題が発生するようになった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、TFT基板等のガラス基板裏面の洗浄を欠陥を発生させることなく、確実に行える回転式基板処理装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の基板処理装置を要旨とする。
【0013】
即ち、基板を処理槽内でほぼ水平に支持して回転させるロータと、このロータによって回転する基板の裏面に洗浄液および不活性ガスを吹き付けるべく回転中心部に固定された基板洗浄ノズルと、この基板洗浄ノズルを回転中心部に固定する固定軸とを有する基板処理装置であって、上記の基板洗浄ノズルが、その中心部に不活性ガス噴射手段を有し、不活性ガス噴射手段の周囲に、それぞれ傾斜角度を変化させた複数の洗浄液噴射手段を有し、上記の固定軸が、ロータと基板洗浄ノズルとの隙間から、基板洗浄ノズル外の気体を吸引する機構を有し、該機構は、前記固定軸内の吸入用気体流動管から吸入された気体がロータの下側を外周側から中心側へ流動し、前記固定軸内の放出用気体流動管を経て放出される第1経路と、ロータと基板洗浄ノズルとの隙間から前記固定軸内の放出用気体流動管に至る第2経路とを有し、第1経路における吸入用気体流動管からの気体吸入量を、第1経路及び第2経路で共用される放出用気体流動管からの気体放出量より少なく設定することにより、第2経路においてロータと基板洗浄ノズルとの隙間から気体を吸引する構成であることを特徴とする基板処理装置である。
本発明の基板処理装置は、好ましくは、前記ロータの下側で前記固定軸に固定されて前記基板洗浄ノズルを支持するノズルホルダを有する。この場合、前記第1経路は、気体が前記固定軸内の吸入用気体流動管から前記ノズルホルダの下側を中心側から外周側へ流動し、前記ノズルホルダとその上側のロータとの間を外周側から中心側へ流動し、前記固定軸内の放出用気体流動管に至る構成が好ましい。
【0014】
なお、上記の洗浄液噴射手段のうち、不活性ガス噴射手段の直近部に設置された2つの洗浄液噴射手段の傾斜角度が、不活性ガス噴射手段の傾斜角度と同じであるのが望ましい。また、上記の噴射手段は、孔で構成されているのが望ましい。さらに、上記の基板洗浄ノズルは、その上面部が複数の曲率半径を有する曲面から構成されているのが望ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の基板処理装置において、回転する基板裏面に洗浄液および不活性ガスを吹き付ける基板洗浄ノズルの実施形態を説明する。以下の説明において、請求項1〜4に記載されるそれぞれの基板洗浄ノズルを「第1の基板洗浄ノズル」〜「第4の基板洗浄ノズル」と表記し、合わせて、本発明の基板洗浄ノズルと表記する。
【0016】
なお、本発明の基板処理装置は、基板洗浄ノズルの形状に特徴を有するとともに、基板洗浄ノズルを固定する固定軸が、ロータと基板洗浄ノズルとの隙間から気体を吸引する機構を有することをも特徴とするが、この機構については後述する。
【0017】
図4は、本発明の基板洗浄ノズル上面部の配置の一例を模式的に表した平面図である。図4に示すとおり、第1の基板洗浄ノズルは、その中心部に不活性ガス噴射手段7を有するとともに、その周囲にそれぞれ傾斜角度を変化させた複数の洗浄液噴射手段8を有する。洗浄液噴射手段8の傾斜角度は、例えば、図4に示すように、不活性ガス噴射手段7を中心として対角に位置するものが同一の角度となるように設定してもよく、また、全てが異なる角度となるように設定してもよい。第1の基板洗浄ノズルは、このような構成を有するので、大型の基板の裏面洗浄においては、基板裏面の全体に、ほぼ均一の圧力で、且つ、むらなく洗浄液を吹き付けることができる。なお、不活性ガス噴射手段から噴射される不活性ガスの流量は、50〜70L/minであればよく、洗浄液噴射手段から噴射される洗浄液の流量は、合計で7L/minであればよい。また、ノズルの上端部と基板裏面との距離は10〜25mmの範囲であればよい。
【0018】
本発明における洗浄液噴射手段の個数は、特に限定しないが、例えば、幅730mm、長さ920mmといった大型の基板裏面を洗浄する場合には、6個以上設置するのが望ましいが、この個数があまりに多いと、それぞれの洗浄液噴射手段から噴射される洗浄液の圧力が不十分となるため、その上限は、20個とするのが望ましい。また、洗浄液噴射手段の傾斜角度は、例えば、図4に示した例のように、0°、9.5°、16°および18°の4パターンで構成されていてもよく、基板裏面の全面に洗浄液が噴射させるため、0〜22°の範囲で、且つ4パターン以上に設定すればよい。
【0019】
それぞれの洗浄液噴射手段の設置位置は、不活性ガス噴射手段から10mm以上離れた位置であればよく、また、互いの洗浄液の噴射を妨げない程度に、相互に離れている必要がある。特に、不活性ガス噴射手段を中心とした複数の同心円を想定し、それぞれの同心円上に複数の洗浄液噴射手段を等間隔で配置するのが望ましい。また、洗浄液噴射手段から噴射される洗浄液の拡散角度は、基板裏面の全面に洗浄液が噴射されるとともに、洗浄液に所定の圧力を持たせるため、0〜2°程度が望ましい。
【0020】
なお、「傾斜角度」とは、各噴射手段から噴射される不活性ガスまたは洗浄液が噴出される方向の軸とガラス基板に垂直な方向の軸とがなす角度をいう。たとえば、洗浄液噴出手段による洗浄液の噴出方向がガラス基板の垂直方向と同一の場合には、これを0°とする。
【0021】
第2の基板洗浄ノズルは、上記の構成要件に加え、洗浄液噴射手段のうち、不活性ガス噴射手段の直近部に設置された2つの洗浄液噴射手段の傾斜角度が、不活性ガス噴射手段の傾斜角度と同じであることを特徴とする基板洗浄ノズルである。このような構成を有する基板洗浄ノズルであれば、洗浄液が不活性ガスの流れに沿って、基板裏面の回転中心部に一文字状に噴射されることになるため、この部分の洗浄を確実に行うことができる。
【0022】
なお、「不活性ガス噴射手段の直近部に設置された2つの洗浄液噴射手段の傾斜角度が、不活性ガスの傾斜角度と同じ」とは、例えば、図4に示すように、洗浄液噴射手段のうちの2つ(図中の8aおよび8b)が傾斜角度が0°であることをいう。ただし、この傾斜角度は、洗浄液が基板裏面の回転中心部に一文字状に噴射されるように設定すればよいので、必ずしも0°である必要はなく、不活性ガス噴射手段の傾斜角度と実質的に同一の角度であればよい。
【0023】
第3の基板洗浄ノズルは、上記の構成要件に加え、その噴射手段が孔で構成されていることを特徴とする基板洗浄ノズルである。以下この理由を説明する。
【0024】
基板の裏面洗浄中には、噴射された洗浄液が基板裏面から跳ね返って浮遊し、前記の図3中に点線の円で示したイ部などに、水滴として残存する場合がある。通常、このような浮遊した洗浄液の水滴がロータ4の上に付着した場合には、ロータ4は回転しているので、その遠心力によって水滴は排除されるが、基板洗浄ノズル6は、固定軸に設置されているため、水滴が付着しても排除されず、残存する。この水滴がミスト状でそれぞれの水滴の粒径が小さい場合には、特に問題とはならないが、長時間の使用などにより、粒径の大きな水滴が基板洗浄ノズル6に残存すると問題となる。
【0025】
即ち、このような水滴は、基板洗浄ノズル6上から、高速で回っているロータ4上に滑り落ち、ロータ4上で破砕され、これが拡散して再び基板裏面に付着する場合があり、このような洗浄液の水滴が再付着すると、基板裏面にすじ状の汚れを残し、製品としてのガラス基板に重大な欠陥を残すこととなる。
【0026】
本発明者らの検討によれば、上記の図3に示したような従来の基板洗浄ノズルの場合に、その上面に水滴が付着しやすい理由は、上記の水滴が基板洗浄ノズル上の不活性ガス噴射手段や洗浄液噴射手段等の突起部周辺に定着することが多いからである。
【0027】
一方、従来の基板洗浄ノズルの場合、図3に示すように、各噴射手段について一つずつヘッドを用意して、それぞれのヘッドをねじ込み、更に、ヘッドから噴射される洗浄液の角度を調整する必要があったため、基板洗浄ノズルの製造、および、この設置または段取り替えに長時間を要し、また、基板洗浄ノズルを構成する部材が多くなり、製造コストの高騰を招くという問題があった。
【0028】
図5は、第3の基板洗浄ノズル上面部の配置の一例を模式的に表した平面図である。図5に示すように、第3の基板洗浄ノズル6は、その不活性ガス噴射手段7および洗浄液噴射手段8のいずれもが孔で構成されている。このような構成にすることにより、その上面に一切突起部が存在しないため、基板洗浄ノズル6の上面に洗浄液の水滴が付着しにくくなる。また、第3の基板洗浄ノズルは、各噴射手段に付きヘッド等の部材を一切必要としないので、製造コストの低減および製造時間等の短縮をすることができる。
【0029】
ここで、図5に示した例では、不活性ガス噴射手段7の直近部に、これと同じ傾斜角度を有する2つの洗浄液噴射手段8と、その外周部に、それぞれの傾斜角度が異なる6つの洗浄液噴射手段8とが設置されている。このように、第3の基板洗浄ノズルにおいても、不活性ガス噴射手段の直近部に設置された2つの洗浄液噴射手段の傾斜角度が不活性ガス噴射手段の傾斜角度と実質的に同一の角度であるのが望ましいのは、前述のとおりである。また、その他の洗浄液噴射手段についても、個数、傾斜角度等の条件は、前述した範囲内にあればよい。特に、外周部にある6つの洗浄液噴射手段のそれぞれの傾斜角度は、12°、14°、16°、18°、20°および22°(それぞれの傾斜角度は±0.25°の誤差を許容する)であり、且つ、ランダムに設定されているのが望ましい。
【0030】
なお、「洗浄液噴射手段のそれぞれの傾斜角度がランダムに設定されている」とは、隣り合う洗浄液噴射手段の傾斜角度が順番に大きくなるような構成ではないことをいう。たとえば、上記の6つの洗浄液噴射手段のそれぞれの傾斜角度を、時計回りの順番にみたときに、12°→14°→16°→18°→20°→22°のような配置ではなく、22°→18°→14°→12°→16°→20°のように配置されていることをいう。
【0031】
図6は、本発明の基板洗浄ノズルによる基板裏面への洗浄液の噴射状態の一例を示す模式図である。図6に示すように、基板洗浄ノズル6から噴射された洗浄液は、回転している基板の裏面に、楕円形に塗布される。即ち、このような構成を有する基板洗浄ノズルであれば、隣り合う洗浄液噴射手段から噴射される洗浄液が基板裏面に到達する際に、相互に重なり合った状態で塗布できる。
【0032】
これは、隣り合う洗浄液噴射手段から噴射される洗浄液が基板裏面に到達する際に、相互に重なり合わない状態で塗布されると、基板裏面に塗布された洗浄液が基板の回転による遠心力を受けて、基板裏面を伝って外方に排出される際に、むらが発生して基板裏面にすじ状の汚れを残すからである。
【0033】
第4の基板洗浄ノズルは、上記の構成要件に加え、その上面部が複数の曲率半径を有する曲面から構成されていることを特徴とする基板洗浄ノズルである。以下、この理由を説明する。
【0034】
図7は、本発明の基板洗浄ノズルの一例を模式的に表した断面図である。図6に示すように、第4の基板洗浄ノズルは、その上面部が複数の曲率半径を有する曲面から構成されている。このような構成を有する基板洗浄ノズルであれば、技術的な根拠は定かではないが、ミスト状の洗浄液が当該基板洗浄ノズルの上面部に付着しにくく、また、仮に付着しても、その水滴が大きくなる前に上面部を滑り落ちていくため、前述したような、基板裏面に再付着するという事態が発生しない。
【0035】
ここで、構成される曲面の数および曲率半径は、特に限定しないが、不活性ガス噴射手段を含む部分が平面であり、その外周部に曲率半径40mm(許容誤差:±5mm)の曲面、12mm(許容誤差:±2.5mm)の曲面および2.5mm(許容誤差:±1mm)の曲面で構成されているのが望ましい。
【0036】
なお、第4の基板洗浄ノズルは、特に、第3の基板洗浄ノズルの構成をも有するのが望ましい。これは、上述した第3の基板洗浄ノズルの作用効果と第4の基板洗浄ノズルの作用効果がともに発揮されるというだけでなく、基板洗浄ノズルの径を40mm以下と小さくできるという複合効果を有するからである。
【0037】
従来のような噴射手段としてヘッドの使用を前提とした基板洗浄ノズルでは、洗浄ノズルの上面部にヘッドを取り付けるための、ねじ加工をする必要があり、その径を小さくするのには限界があった。しかし、その径が40mm以下である小さな基板洗浄ノズルであれば、浮遊した洗浄液が付着しにくくなるため、上述した基板裏面への再付着という問題が発生しにくくなる。
【0038】
次に、基板洗浄ノズルを固定する固定軸について説明する。本発明の基板処理装置は、上記の第1〜第4の基板洗浄ノズルを特徴とするとともに、基板洗浄ノズルを固定する固定軸が、ロータと基板洗浄ノズルとの隙間から気体を吸引する機構を有することをも特徴とする。
【0039】
図8および図9は、本発明の固定軸の主たる構成部材を示す断面であり、図8は各構成部材の分断図であり、図9はこれらの構成部材を組み立て状態を示す図である。図8に示すように、本発明の基板処理装置における固定部は、たとえば、同心管11に液漏れストッパ10、ノズルホルダ9、ロータ4、基板洗浄ノズル6の順で組み立てられる。また、図9に示すとおり、同心管11は、その中心部に不活性ガス流動管12が配置され、不活性ガス流動管12の外側に同心円状に洗浄液流動管13が配置され、更に、洗浄液流動管13の外側に同心円状に気体流動管14が配置されている。
【0040】
なお、図8および図9において点線で示した部分は回転体であり、本発明ではこの全ての点線部分をロータ4と呼ぶこととし、このロータ4は、一つの部材で構成されていてもよく、複数の部材で構成されていてもよい。例えば、図8では、ロータ4として示される部材は、実際には洗浄液等が装置内部に侵入するのを防ぐための防水カバーであるが、この防水カバーも回転体に取り付けられてロータ4と同調して回転する部材である。従って、本発明においては、このような防水カバーも含めた回転体をロータ4と呼ぶこととする。
【0041】
不活性ガス流動管12は、ノズルホルダ9の上端部に設けられた孔および基板洗浄ノズル6の上端部に設けられた不活性ガス噴射手段7を貫通している。ノズルホルダ9の上端部と基板洗浄ノズル6との間、および、不活性ガス流動管12の外側とノズルホルダ9の内側との間には、図示しないゴムパッキンがはめ込まれているので、不活性ガスが後述するノズルホルダ9と基板洗浄ノズル6との間の空間部に侵入することはなく、逆に、洗浄液が不活性ガス噴射手段7から不活性ガスとともに噴射されることはない。
【0042】
洗浄液流動管13の上端部は、ノズルホルダ9の上端付近に水平方向に設けられた孔に対応する位置に設置されており、洗浄液は、洗浄液流動管13内を上昇して、このノズルホルダ9に設けられた孔を通過し、ノズルホルダ9と基板洗浄ノズル6との間の空間部にバッファとして保持され、その後、基板洗浄ノズル6の上面部に設けられた各洗浄液噴射手段8から、所定の圧力で噴射される。洗浄液流動管13の外側とノズルホルダ9の内側との間には、図示しないゴムパッキンがはめ込まれているため、洗浄液が後述する気体流動管へ吸い込まれることはない。
【0043】
気体流動管14は、図9に示されるように、2つの同心管によって構成されている。これらの同心管のうち、外側に位置する気体流動管14では、その下端部から気体が吸入され、内側に位置する気体流動管14では、その下端部から気体が放出される構成となっている。従って、吸入された気体は、図9の矢印で示すように装置内部の空間を流れて、ロータ4の下部とノズルホルダ9との隙間を通り、基板洗浄ノズル6の下端部に設けられた気体孔およびノズルホルダ9の雄ねじ下部のくびれた部分に設けられた気体孔を流れて、気体放出側の気体流動管14の上端部に流れ込み、この管内を下方に向かって流れて、気体放出口から放出される。
【0044】
この際、ロータ4と基板洗浄ノズル6との隙間から気体を吸引する機構を固定軸に持たせるためには、気体流動管14の気体吸入口から吸入される気体の流量を気体放出口から放出される気体の流量よりも少ない量に設定する必要がある。例えば、気体吸入口から吸入される気体の流量を2L/min程度(圧力:0.1MPa)とし、気体放出口から放出される気体の流量を3L/min程度(圧力:0.1MPa)とするのが望ましい。
【0045】
図10は、上記の図9中に示すロ部の拡大図である。図10に示すとおり、本発明の基板処理装置においては、基板洗浄ノズル6とロータ4との隙間に気体を吸引する機構、即ち、気体が図中の矢印で示す流れに沿って、吸引される機構となっている。このような機構により、基板洗浄ノズル6の上面部に付着し、その端部に流れ落ちた水滴は、図中の矢印で示す気体の流れに沿って、基板洗浄ノズル6とロータ4の隙間に吸引され、更に、基板洗浄ノズルの下端部に設置された気体孔およびノズルホルダ9に設置された気体孔を通り抜け、気体流動管14を下向きに流れて、気体放出口から気体とともに放出される。
【0046】
従って、本発明の基板処理装置では、基板洗浄ノズルの上面部に付着し、流れ落ちた水滴が、高速回転しているロータ上に落下することがなく、前述した基板裏面への洗浄液の再付着という事態が生じない。
【0047】
なお、上記の図9に示した液漏れストッパ10は、基板洗浄ノズル6とロータ4との隙間に吸引された水滴が基板洗浄ノズル6の下端に設置された気体孔に到達した際に、ロータ4とノズルホルダ9との隙間を軸中心から外側に向かって通り、装置内部の空間に入り込むのを防ぐ役割をする。
【0048】
【発明の効果】
本発明の基板洗浄装置によれば、基板裏面のほぼ全面に同等の圧力で洗浄液を噴射することができるので、大型のガラス基板であっても、その裏面の洗浄を欠陥を発生させることなく、確実に行うことができる。また、固定軸に設置された基板洗浄ノズルの上面部に付着、残存する洗浄液の水滴を最小限に抑えることができるとともに、製造コストの低減、段取り替え時間の短縮等を図ることができる。さらに、仮に、基板洗浄ノズルの上面部に洗浄液の水滴が付着し、これが基板洗浄ノズルの端部から流れ落ちても、基板洗浄ノズルとロータとの間から気体とともに吸引されるので、洗浄液が基板裏面に再付着するという事態が生じない。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の回転式基板処理装置を示す模式図である。
【図2】従来の基板裏面の洗浄機構を有する回転式基板処理装置の一例を示す模式図であり、(a)は当該装置の全体概略図を示し、(b)は基板裏面の洗浄手段の拡大図を示す。
【図3】従来の基板洗浄ノズルによる基板裏面への洗浄液の噴射状態を示す模式図である。
【図4】本発明の基板洗浄ノズル上面部の配置の一例を模式的に表した平面図である。
【図5】第3の基板洗浄ノズル上面部の配置の一例を模式的に表した平面図である。
【図6】第3の基板洗浄ノズルによる基板裏面への洗浄液の噴射状態の一例を示す模式図である。
【図7】第4の基板洗浄ノズルの一例を模式的に表した断面図である。
【図8】本発明の固定軸の主たる構成部材の断面を示す分断図である。
【図9】本発明の固定軸の主たる構成部材の組み立て状態を示す断面図である。
【図10】図9中に示すロ部の拡大図である。
【符号の説明】
1 基板
2 受け台
3 回転軸
4 ロータ
5 支持ピン
6 基板洗浄ノズル
7 不活性ガス噴射手段
8 洗浄液噴射手段
9 ノズルホルダ
10 液漏れストッパ
11 同心管
12 不活性ガス流動管
13 洗浄液流動管
14 気体流動管
Claims (5)
- 基板を処理槽内でほぼ水平に支持して回転させるロータと、このロータによって回転する基板の裏面に洗浄液および不活性ガスを吹き付けるべく回転中心部に固定された基板洗浄ノズルと、この基板洗浄ノズルを回転中心部に固定する固定軸とを有する基板処理装置であって、上記の基板洗浄ノズルが、その中心部に不活性ガス噴射手段を有し、不活性ガス噴射手段の周囲に、それぞれ傾斜角度を変化させた複数の洗浄液噴射手段を有し、上記の固定軸が、ロータと基板洗浄ノズルとの隙間から、基板洗浄ノズル外の気体を吸引する機構を有し、該機構は、前記固定軸内の吸入用気体流動管から吸入された気体がロータの下側を外周側から中心側へ流動し、前記固定軸内の放出用気体流動管を経て放出される第1経路と、ロータと基板洗浄ノズルとの隙間から前記固定軸内の放出用気体流動管に至る第2経路とを有し、第1経路における吸入用気体流動管からの気体吸入量を、第1経路及び第2経路で共用される放出用気体流動管からの気体放出量より少なく設定することにより、第2経路においてロータと基板洗浄ノズルとの隙間から気体を吸引する構成であることを特徴とする基板処理装置。
- 上記の洗浄液噴射手段のうち、不活性ガス噴射手段の直近部に設置された2つの洗浄液噴射手段の傾斜角度が、不活性ガス噴射手段の傾斜角度と同じであることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
- 上記のいずれの噴射手段も孔で構成されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の基板処理装置。
- 上記の基板洗浄ノズル上面部が複数の曲率半径を有する曲面から構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板処理装置。
- 前記ロータの下側で前記固定軸に固定されて前記基板洗浄ノズルを支持するノズルホルダを有し、前記第1経路は、気体が前記固定軸内の吸入用気体流動管から前記ノズルホルダの下側を中心側から外周側へ流動し、前記ノズルホルダとその上側のロータとの間を外周側から中心側へ流動し、前記固定軸内の放出用気体流動管に至る構成であることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
Priority Applications (1)
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