JP3986184B2 - ガス発生器 - Google Patents

ガス発生器 Download PDF

Info

Publication number
JP3986184B2
JP3986184B2 JP31187298A JP31187298A JP3986184B2 JP 3986184 B2 JP3986184 B2 JP 3986184B2 JP 31187298 A JP31187298 A JP 31187298A JP 31187298 A JP31187298 A JP 31187298A JP 3986184 B2 JP3986184 B2 JP 3986184B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gas
inner cylinder
combustion chamber
combustion
space
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP31187298A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH11217055A (ja
Inventor
征吾 田口
博之 越智
賢二 佐古
喜行 岸野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Nippon Kayaku Co Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Nippon Kayaku Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd, Nippon Kayaku Co Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP31187298A priority Critical patent/JP3986184B2/ja
Publication of JPH11217055A publication Critical patent/JPH11217055A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3986184B2 publication Critical patent/JP3986184B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Air Bags (AREA)
  • Feeding, Discharge, Calcimining, Fusing, And Gas-Generation Devices (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のエアバッグを膨張展開させるものに係わり、特に、エアバッグの展開形態を制御できるガス発生器に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の衝突時に生じる衝撃から自動車の乗員を保護するため、急速にエアバッグを展開膨張させる為のガス発生器は、ステアリングホイール内やインストルメントパネル内に装着されたエアバッグモジュールに組み込まれている。そして、ガス発生器は、衝突の際に衝突センサからの衝突検出信号により瞬時に多量の高温ガスを発生させるものである。
【0003】
エアバッグを膨張展開させるガス発生器の一例としては、図16に示す様に、有蓋の二重円筒構造の上下容器101,102の内筒同士及び外筒同士を突合せて摩擦圧接する事により環状の密閉空間が形成されたハウジング100を備え、このハウジング100の密閉空間内に、内筒から径外方に向かってガス発生剤103及び筒状のフィルタ部材104を順次収納したものである。又、内筒内には、衝突センサからの衝突検出信号によって点火される点火具105と、この点火具105の点火により着火される伝火剤106とが配置されている。
【0004】
そして、ガス発生器は、衝突センサからの衝突検出信号による点火具105の点火で伝火剤106を着火し、更に伝火剤106の火炎を内筒の導火孔107を介して密閉空間内に噴出させることで、ガス発生剤103を着火燃焼させ、瞬時に多量の高温ガスを発生させる。この多量の高温ガスは、フィルタ部材104に流入し、ここでスラグ捕集と冷却を経て、上容器101の複数のガス放出孔101aからエアバッグ内に放出され、エアバッグを急速に膨張展開させる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のガス発生器では、自動車衝突の形態(低速衝突、高速衝突など)や乗員の着座姿勢(正規着座、前屈みなどの非正規着座など)の如何に拘らず、衝突センサからの衝突検出信号によって点火具を点火し、瞬時に多量のガスを発生してエアバッグを急速に膨張展開させている。従って、乗員がステアリングホイールやインストルメントパネルの近傍に着座するとき、又は自動車が低速衝突するときには、急速に膨張展開されるエアバッグによって乗員が衝撃を受ける(パンチング現象)ことが生じており、乗員を保護するエアバッグ本来の機能を発揮できないという問題があった。
【0006】
本発明は、エアバッグを展開初期の段階で緩慢に膨張展開させ、その後に急速に膨張展開させる制御を可能となし、これによって、エアバッグ本来の機能を発揮できるガス発生器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明のガス発生器では、ハウジング内の密閉空間を、複数の燃焼室に画成し、各燃焼室内にガス発生剤、フィルタ部材及び点火器を配置すると共に、各燃焼室はフィルタ部材を介して互いに連通する構成としたものである。
これによって、各点火器を時間差を設けて作動させることを可能となし、エアバッグの展開初期には一の燃焼室のみで発生したガスにより緩やかに膨張展開させ、その後に、他の燃焼室で発生したガスの追加により急速に膨張展開させる多段展開制御を可能にしたものである。
又、仕切部材によって2つの燃焼室に画成することで、エバッグを2段展開制御できる。
更に、各燃焼室が互いに連通されていることから、複数の点火器を時間差で作動させることで、ハウジングから放出されるガスの時間的な圧力上昇と最高圧力を制御できる。特に、各燃焼室をフィルタ部材を介して連通させると、各燃焼室で発生するガスがフィルタ部材によって冷却されて、他の燃焼室に流れてガス発生剤を直ちに燃焼させるとことがなく、点火器によって各燃焼室のガス発生剤を時間差を持って強制着火できる。
【0008】
本発明になるガス発生器であって、運転席用のガス発生器に適用されるものの具体的構成としては、
各燃焼室内に突出する長尺内筒、或いは短尺内筒に各点火器を夫々配置して、密閉空間を、内筒材にて該内筒材の内外側の燃焼空間とガス通過空間に画成し、燃焼空間を内筒材と長尺内筒間に装入される仕切部材によって、ガス通過空間を通して互いに連通する上下2つの燃焼室に画成すると共に、各燃焼室内にガス発生剤とフィルタ部材を配置して構成した方式のもの、
各燃焼室内に突出する長尺内筒、或いは短尺内筒に各点火器を夫々配置して、密閉空間を、内筒材及び該内筒材に装入されるフィルタ部材にて内外側に燃焼空間とガス通過空間に画成し、燃焼空間をフィルタ部材と長尺内筒間に装入される仕切部材によって、ガス通過空間及びフィルタ部材を通して互いに連通する上下2つの燃焼室に画成すると共に、各燃焼室内にガス発生剤を配置して構成した方式のもの、
各燃焼室内に突出する長尺内筒、或いは短尺内筒に各点火器を夫々配置して、密閉空間を、外筒と長尺内筒間に装入される仕切部材によって、上下2つの燃焼室に画成し、各燃焼室内にガス発生剤とフィルタ部材を配置すると共に、仕切部材によって、各燃焼室のフィルタ部材を通して各燃焼室を互いに連通するガス通孔を形成して構成した方式のもの、とを採用する。
【0009】
又、本発明になるガス発生器であって、助手席用のガス発生器に適用されるものの具体的構成としては、
長尺円筒状の外筒の密閉空間を、外筒に装入される仕切部材によって、左右2つの燃焼室に画成し、各燃焼室内にガス発生剤、フィルタ部材及び内筒材を配置すると共に、仕切部材に各燃焼室のフィルタ部材を通して各燃焼室を互いに連通するガス通孔を形成して構成した方式のもの、
長尺円筒状の外筒の密閉空間を、内筒材にて内外側の燃焼空間とガス通過空間とに画成し、燃焼空間を内筒材に装入される仕切部材によって、ガス通過空間を通して互いに連通される左右2つの燃焼室に画成すると共に、各燃焼室にガス発生剤とフィルタ部材を配置して構成した方式のもの、
長尺円筒状の外筒の密閉空間を、内筒材と該内筒材に装入されたフィルタ部材にて内外側の燃焼空間とガス通過空間とに画成し、燃焼空間をフィルタ部材に装入される仕切部材によって、ガス通過空間及びフィルタ部材を通して互いに連通される左右2つの燃焼室に画成すると共に、各ガス発生室にガス発生剤を配置して構成した方式のもの、とを採用する。
【0010】
又、点火器を配置する長尺内筒は、ハウジングの強度を考慮して、ハウジングの中心部に配置し且つ下側燃焼室、仕切部材を貫通して上蓋に接合させるようにするのが好ましい。仕切部材を長尺内筒の段部に当接して位置決めすることで、簡単な構造で上下2つの燃焼室を画成でき、段部を調整することで上下2つの燃焼室の容積を容易に変更でき、又仕切部材に上側燃焼室に突出する凸部を設けることで、点火器を短尺内筒内に容易に配置することができる。
【0011】
更に、仕切部材に、燃焼熱の伝達を抑制するクッション部材を設ける構成とすると、一方の燃焼室で発生した燃焼熱の伝達を遮断でき、2つの燃焼室のガス発生剤の燃焼を時間差をもって点火させる点火器によって確実に調整可能となし得る。
【0012】
又、内筒材を、エクスパンディッドメタルにより形成すると、エクスパンディッドメタル自体は、内外周面に突出して互いに連通した多数のガス通過孔を有するものであるから、エクスパンディッドメタル層自体がガス通過空間を形成することになり、内筒材と外筒及びフィルタ部材とを密着させて配置させることが可能となるので、これらの部材の位置決めや配置が容易となる。
【0013】
更に、フィルタ部材を、メリヤス編み金網、或いはクリンプ織り線材の集合体で成形すると、安価に製作できる利点がある。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態におけるガス発生器について説明する。
本発明のガス発生器は、ハウジング内を2つの燃焼室に画成し、各燃焼室内に装填されるガス発生剤を各燃焼室内に配置された点火器によって、独立して点火可能となすことにより、エアバッグの展開形態を制御可能としたものである。
又、2つの燃焼室をフィルタ部材を介して互いに連通し、点火器を時間差を以て作動することで、ハウジングから放出されるガスの圧力上昇と最高圧力を制御可能としたものである。
【0015】
以下、運転席用エアバッグに用いられるガス発生器と、助手席用エアバッグに用いられるガス発生器とを、図1〜図14に基づいて説明する。ただし、図9〜図14に関するものは参考実施形態である。
【0016】
先ず、図1〜図5に示す運転席用エアバッグのガス発生器X1〜X3について説明する。
【0017】
図1及び図3の運転席用ガス発生器X1は、短円筒状のハウジング1と、ハウジング1内に装入される内筒材2と、内筒材2内を上下2つの燃焼室3、4に画成する仕切部材5と、各燃焼室3、4内に配置されるガス発生剤6及びフィルタ部材7と、各燃焼室3、4のガス発生剤6を夫々独立して燃焼させる2つの点火器8、9とを備えている。
【0018】
ハウジング1は、上容器10と下容器11とで、内部に密閉空間Sを形成する構造とされている。上容器10は、短円筒状の外筒12の上端部を上蓋13で閉塞することで有蓋円筒形状にされており、アルミ合金などで一体成形されている。外筒12の上蓋13側には、密閉空間Sに開口する複数のガス放出孔12aが形成されており、これら各ガス放出孔12aは外筒12の内周に貼着されたバーストプレート15で閉鎖されている。このバーストプレート15は、例えばアルミ箔等で形成されており、ハウジング1内の防湿と燃焼時の内圧調整の役割を果たすものである。又、上蓋13の中央部には、外筒12と同心円状として内部に突出する内筒突起14が成形されている。
【0019】
下容器11は、短円筒状のフランジ筒部16の下端部を下蓋17で閉塞することで有底円筒形状にされており、アルミ合金などで一体成形されている。フランジ筒部16の上端部には、径外方に水平に折れ曲がるサイドフランジ20が一体成形されており、このサイドフランジ20は図示しないエアバッグモジュールのリテーナに取付けられる。又、下蓋17には、その中央部にフランジ筒部16と同心円状にして配置される長尺内筒18と、この長尺内筒18とフランジ筒部16との間に配置される短尺内筒19とがフランジ筒部16内に突出するように一体形成されている。
【0020】
ハウジング1は、上容器10の外筒12の下端周面を下蓋17内の底周縁面に突合せると共に、内筒突起14の下端周面を長尺内筒18の上端周面に突合わせ溶接(例えば、摩擦圧接)により接合することで、外筒12の上下端部を各蓋13、17で閉塞する二重円筒構造とされ、内部に環状の密閉空間Sが形成されている。ハウジング1の密閉空間Sは、外筒12と短尺内筒19との間に位置し、長尺内筒18に同心円状として装入された内筒材2によって、この内筒材2の内周と長尺内筒18の外周との間の環状の燃焼空間S1と、その外周と外筒12の内周との間の環状のガス通過空間S2とに画成されている。内筒材2は、その軸方向と周方向に亘って各空間S1とS2を連通する複数のガス通過孔2aが形成されている。又、内筒材2は下蓋17から上蓋13近傍まで延びており、長尺内筒18の外周に圧入された蓋材21によって上端部が閉鎖されている。
【0021】
この内筒材2としては、図6(a)に示すように、所定間隔で多数のスリット22aが形成された母材22を一様に引っ張ることで、図6(b)に示すような複数のガス通過孔2aが開口するエクスパンディッドメタルを用いて製作される。そして、内筒材2は、図6(c)に示すように、所定長さと幅を有するエクスパンディッドメタルを円筒状に成形し、終端同士をスポット溶接などの接合方法によって固着することにより製作する。尚、母材22はステンレス薄鋼板或いはステンレス以外の薄鋼板を用いる。
【0022】
このように、エクスパンディッドメタルで内筒材2を製作すると、各スリット22aの部分は、図6(a)に示す矢印方向への引張加工時に、図7に示す如く母材22の平面部Bから高さhだけ内外周側に反り返った形状にされる。したがって、内筒材2は、その外周に各スリット22aの部分で高さhだけ突出して周方向に開口して軸方向に延びる複数のガス通過孔2aが形成され、且つ各ガス通過孔2aがその周方向で相互に連通される構造となる。
【0023】
そして、エクパンディッドメタル製の内筒材2を、ハウジング1内に装入すると、各燃焼室3、4のガス発生剤6の燃焼による高圧高温ガスによって膨張、変形されても、高さhだけ内外周側に突出する複数のガス通過孔2aからガスを各ガス放出孔12aに向けて通過させることが可能となる。したがって、エクスパンディッドメタルで内筒材2を成形した場合には、外筒12の内周面に接触するように配置しても、この外筒12の内周側に連続した環状空間を形成でき、この環状空間をガス通過空間S2とすることが可能となる。
【0024】
尚、内筒材2は、エクスパンディッドメタルで製作するものに限定されず、所定間隔で複数のガス通過孔2aを形成した多孔薄鋼板(パンチングプレートなど)を、円筒状に成形して、終端同士をスポット溶接などの接合方法により接合して製作しても良い。このパンチングプレート製の内筒材2では、外筒12の内周との間でガス通過空間S2を画成するような間隔を設ける必要がある。
【0025】
内筒材2内の燃焼空間S1は、上蓋13及び下蓋17との間にこれらと略平行に配置された仕切部材5によって、上下2つの燃焼室3、4に画成される。この仕切部材5は、内筒材2内に圧入自在な円板形状にされており、その中心部に長尺内筒18を貫通させる貫通穴23を有している。又仕切部材5には、貫通穴23に対して偏心して短尺内筒19上を覆うように突出するコップ状の凸部24が形成されている。
【0026】
仕切部材5は、下容器11の開口端から内筒材2の内周に装入され、貫通穴13を長尺内筒18に嵌め込んで、長尺内筒18の段部18aに当接して位置決めされる。これで、仕切部材5は、凸部24の開口側が短尺内筒19上に対峙する状態でハウジング1の軸方向に上下2つの燃焼室3、4を画成している。そして、各燃焼室3、4内には、ガス発生剤6が装填され、これを囲繞するようにフィルタ部材7が配置されている。
【0027】
各燃焼室3、4のフィルタ部材7は、内筒材2内に装入自在な円筒形状にされている。上側燃焼室3のフィルタ部材7は、内筒材2に装入されて仕切部材5から蓋材21に当接するまで延在しており、又下側燃焼室4のフィルタ部材7は内筒材2に装入されて下蓋17から仕切部材5に当接するまで延在している。
【0028】
このフィルタ部材7としては、図8(a)に示すメリヤス編み金網、或いは図8(b)に示すクリンプ織り金属線材の集合体を、図8(c)の如く円筒形状にプレス成形して安価に製作することが好ましい。これで、各燃焼室3、4は、各フィルタ部材7、内筒材2の各ガス通過孔2a及びガス通過空間S2を通して相互に連通する構造にされている。
【0029】
又、下側燃焼室4のガス発生材6と仕切部材5との間には、仕切部材5に当接するクッション部材25が配置されている。このクッション部材25は、ガス発生剤6の振動による粉化防止と、各燃焼室3、4の相互間での熱伝達を抑制する断熱材としての機能をも兼ね備えている。したがって、クッション部材25としては、セラミックス繊維などの断熱機能を有する弾性材を用いることが好ましい。又、上側燃焼室3のガス発生剤6と蓋材21との間には、蓋材21に当接するクッション部材26が配置されている。このクッション部材26もガス発生剤6の振動による粉化防止の機能を備えるもので、シリコンゴムやシリンコン発泡体などの弾性材を用いることが好ましいが、セラミックス繊維などにより断熱機能を有するものであっても構わない。
【0030】
各点火器8、9は、保持部27Aと、この保持部27A先端に配置された着火部27Bとで構成され、内筒突起14と長尺内筒18で形成される収納空間と、仕切部材5の凸部24内と短尺内筒19で形成される収納空間に夫々独立して配置されている。各点火器8、9は、長尺内筒18内、短尺内筒19内に形成されたテーパー状の段部28にシール部材29(ゴムシート)を介在させて気密に当接されており、各内筒18、19先端のカシメ部30を内側に折り曲げることでカシメ固定されている。
【0031】
これで、長尺内筒18の点火器8は、着火部27Bが収納空間内に突出されて、着火部27Bの着火による火炎を長尺内筒18の複数の導火孔18bを通して上側燃焼室3内に噴出させる。又、短尺内筒19の点火器9は、着火部27Bがクッション部材25を貫通して凸部24内に突出されて、着火部27Bの着火による火炎を仕切部材5と短尺内筒19間の隙間を通して下側燃焼室4内に噴出させる。これらの点火器8、9は、図示しない衝突センサからの衝突検出信号に基づいて点火するものである。
【0032】
次に、運転席用ガス発生器X1の作動について説明する。
【0033】
衝突センサが自動車の衝突を検出すると、先ず、上側燃焼室3側の点火器8のみを作動させることで、着火部27Bを着火させる。着火部27Bの着火炎は、各導火孔18bから上側燃焼室3に噴出されて、この火炎でガス発生剤6を強制着火して燃焼させることで高温ガスを発生させる。このとき、上側燃焼室3内で発生した燃焼熱は、クッション部材25の断熱機能によって伝熱が抑制(鈍化)されて、下側燃焼室4のガス発生剤6が同時に着火するのを防止されている。
【0034】
上側燃焼室3で発生した高温ガスは、フィルタ部材7に流入し、このフィルタ部材7でのスラグ捕集と冷却を経て、内筒材2の各ガス通過孔2aからガス通過空間S2内に流出する。そして、上側燃焼室3での燃焼と共にガス圧が上昇して、所定圧力に達すると、バーストプレート15が破られ、ガス通過空間S2で均一化された清浄ガスが、各ガス放出孔12aからエアバッグ内に放出される。
【0035】
このとき、上側燃焼室3で発生した高温ガスの一部は、フィルタ部材7、内筒材2、ガス通過空間S2などを通して下側燃焼室4内に流出する。これで、上側燃焼室3での燃焼は、ガス通過空間S2などで連通される下側燃焼室4を含むハウジング1全体の容積(密閉空間S)を以て行われることになり、その増加された容積(下側燃焼室4の容積)だけ圧力上昇が抑制(鈍化)される圧力特性となる。又、下側燃焼室4内に流出するガスの熱量は、下側燃焼室4側の内筒材2とフィルタ部材7を通過するときに吸収(冷却)され、温度が低下してフィルタ部材7から下側燃焼室4内に噴出されるので、下側燃焼室4のガス発生剤6を直ちに自然着火させることがない。
【0036】
そして、エアバッグは、圧力上昇の抑制(鈍化)された少量の清浄なガスによって、緩やかで、弱めに張られるようにして膨張展開される。この意味で、ガス通過空間S2のガス通過のための断面積を調整して、下側燃焼室4に流出させるガス流量を制御することで、適切な圧力上昇特性にされた少量のガスでエアバッグを膨張展開させる。
【0037】
続いて、上側燃焼室3の燃焼開始後、微小時間差をおいて下側燃焼室4の点火器9を作動させると、下側燃焼室4内のガス発生剤6が強制着火されて燃焼が始まり高温ガスを発生させる。下側燃焼室4で発生した高温ガスは、上側燃焼室3と同様にして、内筒材2の各ガス通過孔2aからガス通過空間S2内に流出され、各ガス放出孔12aからエアバッグ内に放出されることから、エアバッグは両燃焼室3、4から放出される多量の清浄なガスによって急速な膨張展開に移行される。
【0038】
このとき、下側燃焼室4での燃焼は、上側燃焼室3と同様に、ガス通過空間S2などで上側燃焼室3に連通されるハウジング1全体の容積(密閉空間S)を以て行われる。したがって、エアバッグに放出される清浄ガスは、点火器9の作動時におけるハウジング1全体のガス圧(上側燃焼室3の燃焼によるガス圧)に加えて、下側燃焼室4での燃焼によるガス圧による圧力上昇特性を持つことになり、これらのガス圧の平衡圧力を最高圧力Pmaxとして、エアバッグを急速に膨張展開させる。
【0039】
この意味で、各点火器8、9の微小時間差を大きくする程に、上側燃焼室3で燃焼されたガスが下側燃焼室4を含むハウジング1全体の容積に広がり得ることから、エアバッグに放出される圧力上昇を緩やかな特性とすることができ、最高圧力Pmaxも低く抑えられることになる。これによって、各点火器8、9を作動させる微小時間差を適宜変更することで、エアバッグに放出するガスの圧力上昇特性と最高圧力Pmaxを制御でき、エアバッグを膨張展開させる時に、乗員に与える衝撃を和らげることが可能となる。
【0040】
尚、上側燃焼室3での燃焼が開始されると、高温ガスの一部は、ガス通過空間S2などを通して下側燃焼室4に流入する。この流入する高温ガスは、燃焼の開始された初期の段階では、ガス通過空間S2から下側燃焼室4側の内筒材2、フィルタ部材7を通過する間に冷却されるので、下側燃焼室4のガス発生剤6を自然着火させるまでに至らないが、上側燃焼室3の燃焼が進んで下側燃焼室4のフィルタ部材7の温度が上昇すると、遂には、下側燃焼室4のガス発生剤6を自然着火させることになる。
【0041】
したがって、各点火器8、9によって、各燃焼室3、4のガス発生剤6を微小時間差で強制着火するには、下側燃焼室4内に流入する高温ガスの熱量によって、下側燃焼室4のガス発生剤6が自然着火するまでのタイミングを微小時間差より遅らせる必要がある。
【0042】
この意味で、上側燃焼室3から下側燃焼室4に流出する燃焼ガス量(熱量)を制御する必要があるが、この制御はガス通過空間S2のガス通過のための断面積によって調整できる。
【0043】
又、各点火器8、9の作動は、微小時間差をおいて行うことを必ずしも要するものでなく、自動車の衝突態様などによって各点火器8、9の作動を適宜選択するものである。
【0044】
例えば、高速度での正面衝突や斜め前方衝突の如き重要な衝突では、各点火器8、9を同時に作動する。これで、エアバッグは各燃焼室3、4で発生した多量で急激な圧力上昇の特性を持つガスによって急速に膨張展開され、そのガス圧の最高圧力Pmaxも高いものとできる。
【0045】
又、中程度の衝突では、各点火器8、9を微小時間差を以て作動する。これで、エアバッグは、展開初期の段階で、ガスの圧力上昇の抑えられた少量のガスで緩やかに膨張展開され、微小時間差後に圧力特性の高められた多量のガスによって急速に膨張展開され、そのガス圧の最高圧力Pmaxは高速度での正面衝突などに比して抑えられたものとできる。
【0046】
更に、軽程度の衝突では、1つの点火器8のみを作動することで、上側燃焼室3のガス発生剤6を強制着火させると共に、下側燃焼室4に流出される高温ガスなどによって下側燃焼室4のガス発生剤6を自然着火する。この自然着火により発生するガスは乗員保護には寄与しないレベルの時間差でエアバッグ内に放出されるので、該エアバッグはゆっくりと膨張展開される。又、この自然着火により、1つの点火器8のみを作動させる場合でも下側燃焼室4のガス発生剤6は完全に燃焼して残ることがない。
従って、ガス発生器X1は、極めて広範囲の最高圧力が点火器8、9の強制着火次第で調整可能となる。
【0047】
このように、運転席用ガス発生器X1によれば、各点火器8、9を微小時間差を以て作動させることで、エアバッグの展開初期で上側燃焼室3のみから発生し、圧力上昇の抑えられた少量のガスによって緩やかに膨張展開させ、その後に、両燃焼室3、4から発生し、圧力上昇の高められた多量のガスによって急速に膨張展開させる展開制御を行える(2段階でエアバッグへのガス放出量とガス圧力の制御を行える)。
【0048】
したがって、運転席の乗員がステアリングホイールの近い部分に着座していても、エアバッグ展開初期における急速な膨張展開による衝撃を受けることなく、安全にエアバッグ本来の機能が発揮される。
【0049】
又、内筒材2をエクスパンディッドメタルによって製作すると、エクスパンディッドメタルの内外周側には開口形成時の反り返りによって、図7に示す如く母材22の基準平面Bから高さhの突出部が形成される。これで、エクスパンディッドメタル製の内筒材2を、外筒12の内周とフィルタ部材7の外周に接して配置しても、エクスパンディッドメタル自体にガス通過空間S2を一体に形成させることが可能となる。
【0050】
図2及び図3の運転席用ガス発生器X2について説明する。
【0051】
図2及び図3のガス発生器X2は、図1のガス発生器X1に対して、フィルタ部材7を両燃焼室3、4に亘って配置した点が異なり、図1及び図3と同一部材は同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0052】
図2において、フィルタ部材7は、内筒材2内に装入されており、下容器11の下蓋17から蓋材21の間に亘って延びている。仕切部材5は、下容器11の開口端からフィルタ部材7の内周に装入され、貫通穴23を長尺内筒18に嵌め込んで、長尺内筒18の段部18aに当接して位置決めされる。これで、仕切部材5は、凸部24の開口側が短尺内筒19上に対峙する状態でハウジング1の軸方向に上下2つの燃焼室3、4を画成している。そして、各燃焼室3、4内には、ガス発生剤6が装填されている。又、各燃焼室3、4は、フィルタ部材7を通して相互に連通する構造にされている。
【0053】
次に、運転席用ガス発生器X2の作動について説明する。
【0054】
衝突センサが自動車の衝突を検出して、上燃焼室3側の点火器8のみが作動されると、図1と同様に、上側燃焼室3で発生した高温ガスは、フィルタ部材7でスラグ捕捉と冷却を経て、ガス通過空間S2で均一化された後に、エアバッグへの放出が開始される。
【0055】
このとき、上側燃焼室3で発生した燃焼ガスの一部は、フィルタ部材7などを通して下側燃焼室4内に流出されることから、エアバッグは、上側燃焼室3のみで発生して圧力上昇の抑制(鈍化)された少量の清浄なガスによって、緩やかで、弱めに張られるようにして膨張展開される。尚、図1のガス発生器X1と同様にして、フィルタ部材7やガス通過空間S2のガス通過のための断面積を調整することで、適切な圧力上昇特性にする。
【0056】
又、フィルタ部材7内に流入した高温ガスの一部は、下側燃焼室4内に流入するが、そのガスの熱量は、下側燃焼室4側のフィルタ部材7を通過するときに吸収(冷却)され、温度が低下して下側燃焼室4に噴出されるので、下側燃焼室4のガス発生剤6を直ちに自然着火させることがない。
【0057】
続いて、上側燃焼室3の燃焼開始後、微小時間差をおいて下側燃焼室4の点火器9を作動させると、下側燃焼室4内のガス発生剤6の燃焼が始まり、図1と同様に、エアバッグは、両燃焼室3、4から放出される多量の清浄なガスによって急速な膨張展開に移行される。
【0058】
このとき、下側燃焼室4での燃焼は、上側燃焼室3と同様に、フィルタ部材7などで上側燃焼室3に連通されるハウジング1全体の容積を以て行われることから、エアバッグに放出される清浄ガスは、点火器9の作動時におけるハウジング1全体のガス圧に加えて、下側燃焼室4での燃焼によるガス圧による圧力上昇特性とになり、これらのガス圧の平衡圧力を最高圧力Pmaxとして、エアバッグを急速に膨張展開することになる。尚、図1のガス発生器X1と同様にして、各点火器8、9を作動する時間差を適宜調整することで、自動車の衝突態様に応じて、所定の圧力上昇特性と最高圧力Pmaxにされるものである。
【0059】
このように、運転席用ガス発生器X2によれば、図1と同様に、エアバッグの展開制御を容易に行えることになり、安全にエアバッグ本来の機能を発揮できる。
【0060】
又、各燃焼室3、4で発生する燃焼ガスのスラグ捕集と冷却を、一体物のフィルタ部材7で行う構成とすると、各燃焼室3、4内の夫々にフィルタ部材7を配置する図1のガス発生器X1に比して、部品点数を減少して製造コストの低減を図れる。
【0061】
図4及び図5の運転席用ガス発生器X3について説明する。
【0062】
図4及び図5のガス発生器X3は、図1のガス発生器X1に対して、内筒材2を設けないで、外筒12の内周に仕切部材5を装入することで上下2つの燃焼室3、4に画成し、この仕切部材5に各燃焼室3、4を互いに連通するガス通孔5aを形成した点などが異なり、図1及び図3と同一部材は同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0063】
図4及び図5において、仕切部材5は、下容器11の開口端から外筒12の内周に装入され、貫通穴23を長尺内筒18に嵌め込んで、長尺内筒18の段部18aに当接して位置決めされている。これで、仕切部材5は、凸部24の開口側が短尺内筒19上に対峙する状態でハウジング1の軸方向に上下2つの燃焼室3、4を画成している。又、仕切部材5の外周縁には、複数のガス通孔5aが形成されている。各ガス通孔5aは、図5にも示すように、ハウジング1の周方向に90度の角度を隔てて4つ形成されており、ハウジング1の軸方向で仕切部材5を貫通して各燃焼室3、4を連通している。そして、各燃焼室3、4内には、ガス発生剤6が装填され、これを囲繞するようにフィルタ部材7が配置されている。
【0064】
各フィルタ部材7は、下蓋17から仕切部材5まで延び、又は仕切部材5から蓋材21まで延びて各燃焼室3、4内に配置されている。又、各フィルタ部材7は、仕切部材5側の端部で各ガス通孔5aを覆っており、外筒12の内周との間にガス通過空間S2を画成している。これで、各燃焼室3、4は、各フィルタ部材7、各ガス通孔5aを通して相互に連通される構造にされている。又、上容器10の外筒12には、各燃焼室3、4のガス通過空間S2と外部とを連通する複数のガス放出孔12aが夫々形成されている。
【0065】
次に、運転席用ガス発生器X3の作動について説明する。
【0066】
衝突センサが自動車の衝突を検出して、上燃焼室3側の点火器8のみが作動されると、図1と同様に、上側燃焼室3で発生した燃焼ガスは、フィルタ部材7でスラグ捕捉と冷却を経て、ガス通過空間S2で均一化された後に、エアバッグへの放出が開始される。
【0067】
このとき、上側燃焼室3で発生した燃焼ガスの一部は、フィルタ部材7、各ガス通孔5aを通して下側燃焼室4内に流出されることから、エアバッグは、上側燃焼室3のみで発生して圧力上昇の抑制(鈍化)された少量の清浄なガスによって、緩やかで、弱めに張られるようにして膨張展開される。尚、図1のガス発生器X1と同様にして、ガス通孔5aの開口面積や数を調整することで、適切な圧力上昇特性にする。
【0068】
続いて、上側燃焼室3の燃焼開始後、微小時間差をおいて下側燃焼室4の点火器9を作動させると、下側燃焼室4内のガス発生剤6の燃焼が始まり、図1と同様に、エアバッグは、両燃焼室3、4から放出される多量の清浄なガスによって急速な膨張展開に移行される。
【0069】
このとき、下側燃焼室4での燃焼は、上側燃焼室3と同様に、各ガス通孔5aなどで上側燃焼室3に連通されるハウジング1全体の容積を以て行われることから、エアバッグに放出される清浄なガスは、点火器9の作動時におけるハウジング1全体のガス圧に加えて、下側燃焼室4での燃焼によるガス圧による圧力上昇特性とになり、これらのガス圧の平衡圧力を最高圧力Pmaxとして、エアバッグを急速に膨張展開することになる。尚、図1のガス発生器X1と同様にして、各点火器8、9を作動する時間差を適宜調整することで、自動車の衝突態様に応じて、所定の圧力上昇特性と最高圧力Pmaxにされるものである。
【0070】
このように、運転席用ガス発生器X3によれば、図1と同様に、エアバッグの展開制御を容易に行えることになり、安全にエアバッグ本来の機能を発揮できる。
【0071】
尚、運転席用ガス発生器X1〜X3においては、上側燃焼室3のガス発生剤6を燃焼させた後に、下側燃焼室4のガス発生剤6を燃焼させる形態について説明したが、これに限定されるものでなく、下側燃焼室4の燃焼後に、上側燃焼室3を燃焼させるようにしても良い。又、各燃焼室3、4の容積を変えて、一方を大きく、他方を小さくし、大容量の燃焼室側から点火するようになすこともできる。
【0072】
次に、図9〜図14に示す助手席用エアバッグのガス発生器Y1〜Y3について説明する。
【0073】
図9及び図10に示す助手席用ガス発生器Y1は、長尺円筒状のハウジング31と、ハウジング31内を左右2つの燃焼室33、34に画成する仕切部材35と、各燃焼室33、34内に夫々配置されるガス発生剤36、フィルタ部材37及び内筒材32と、各燃焼室33、34のガス発生剤36を夫々独立して燃焼させる点火器38、39とを備えている。
【0074】
ハウジング31は、両端開口の長尺円筒状の外筒42と、この外筒42の両開口をそれぞれ閉鎖する2つの蓋部材41とで構成されている。このハウジング31は、各蓋部材41を外筒42の両開口端から嵌め込んで、外筒42の両側から突出するカシメ突起42bを径内方に折り曲げることで、内部に密閉空間Sを形成する構造とされている。
【0075】
外筒42の外周には、助手席用のエアバッグ(図示しない)に通じる複数のガス放出孔42aが形成されている。各ガス放出孔42aは、図10(a)にも示すように、ハウジング31の周方向に180度の角度を隔てて軸方向に延びる直線上に形成されて、2つのガス孔列r1、r2を構成している。各ガス孔列r1、r2のガス放出孔42aは、外筒42の軸方向に亘って所定間隔毎に順次形成されており、外筒42の内周に貼着された帯状のバーストプレート47で夫々閉鎖されている。このバーストプレート47は、例えばアルミ箔等で形成されており、各ガス孔列r1、r2ごとのガス放出孔42aを閉鎖するに足る長さと幅を有している。尚、バーストプレート45としては、1枚のものを外筒42の内周に渡って貼ることを排除するものでない。
【0076】
ハウジング31の密閉空間Sは、仕切部材35によってハウジング31の軸方向で左右2つの燃焼室33、34に画成されている。仕切部材35は、外筒42の内周に装入されて各燃焼室33、34を画成しており、外筒42の外周に施される絞り加工(外筒42の径を減少させる加工)によって、カシメ固定されている。又、仕切部材35には、その外周縁側に複数のガス通孔35aが形成されている。各ガス通孔35aは、図10(b)に示すように、ハウジング31の周方向に90度の角度を隔てて4つ形成されており、ハウジング31の軸方向で仕切部材35を貫通して各燃焼室33、34を連通している。そして、仕切部材35で画成された各燃焼室33、34内には、ガス発生剤36が装填され、これを囲繞するようにフィルタ部材37及び内筒材32の順に配置されている。
【0077】
各フィルタ部材37は、各蓋部材41の凸部41aに嵌め込まれており、仕切部材35まで延びる端部で各ガス通孔35aを覆って仕切部材35を挟持している。これで、各燃焼室33、34は、各フィルタ部材37、各ガス通孔35aを通して互いに連通する構造にされている。このフィルタ部材37としては、図8(a)〜(c)に示すように、メリヤス編み金網、或いはクリンプ織り金属線材の集合体を、円筒状に成形することで製作される。又、フィルタ部材37は、ハウジング31の軸方向に順次積層される複数のフィルタユニットに分割して構成しても良く、このフィルタユニットの積層数を適宜変更することで、ハウジング31の長さに対応させてフィルタ部材37を配置できる。
【0078】
各内筒材32は、各燃焼室33、34のフィルタ部材37の外周に嵌められて、外筒42の内周との間に環状のガス通過空間S2を形成している。各内筒材32は、フィルタ部材37と共に各蓋部材41の凸部41aに嵌め込まれており、各蓋部材41から仕切部材35まで延びている。又、各内筒材32の周面には、フィルタ部材37内とガス通過空間S2とを連通する複数のガス通過孔32aが形成されている。各ガス通過孔32aは、図10(a)にも示すように、ハウジング31の周方向から見て各ガス放出孔42aと対峙しないずれた部位に開口しており、且つハウジング31の軸方向に亘って形成されている。これで、内筒材32の各ガス通過孔32aから流出するガスは、直接、外筒42の各ガス放出孔42aに向かうことなく、一旦外筒42の内周に衝突されて該外筒42でスラグ捕集と冷却が行われた後に、各ガス放出孔42aからエアバッグ内に放出される。
【0079】
この内筒材32としては、図6及び図7と同様に、エクスパンディッドメタルで円筒状に成形することが好ましいが、パンチングプレートを円筒状に成形して製作しても良い。そして、内筒材32をエクスパンディッドメタルで製作すると、外筒42の内周とフィルタ部材37の外周とに接するように配置でき、図1と同様に、エクスパンディッドメタルでガス通過空間S2を形成できる。
【0080】
各点火器38、39は、伝火剤44と、伝火剤44を着火する点火具45からなり、外筒42の両開口を閉塞する各蓋部材41に設けられて、各燃焼室33、34内のガス発生剤36を夫々独立して燃焼させるものである。各点火具45は、各蓋部材41の凸部41a内にカシメ固定されている。又、各伝火剤44は、各蓋部材41の凸部41aに嵌め込まれた鍔付きキャップ46内に収納されており、凸部41aに隙間を隔てて点火具45と対峙している。
【0081】
鍔付きキャップ46の突出側46aは、フィルタ部材37内に装入されており、伝火剤44の着火炎を各燃焼室33、34のフィルタ部材37内に噴出させる貫通孔46bを有している。キャップ46の鍔部46cは、フィルタ部材37の蓋部材41側を閉鎖して外筒42内周まで延びて、蓋部材41とフィルタ部材37、内筒材32で挟持されている。又、鍔部46cは、蓋部材41に介装されたシール材47に弾接されて、各燃焼室33、34を外部から密閉している。
【0082】
次に、助手席用ガス発生器Y1の作動について説明する。
【0083】
衝突センサが自動車の衝突を検出すると、先ず、左側燃焼室33側の点火器38のみを作動させることで、伝火剤44を着火させる。伝火剤44の着火炎は、鍔付きキャップ46の貫通孔46bから左側燃焼室33内に噴出されて、この火炎でガス発生剤36を強制着火して燃焼させることで高温ガスを発生させる。
【0084】
このとき、左側燃焼室33で発生した高温ガスの一部は、フィルタ部材37、各ガス通孔35aを通して右側燃焼室34内に流出する。これで、左側燃焼室33での燃焼は、各ガス通孔35aなどで連通される右側燃焼室34を含むハウジング31全体の容積(密閉空間S)を以て行われることになり、その増加された容積(右側燃焼室34の容積)だけ圧力上昇が抑制(鈍化)される圧力特性となる。又、右側燃焼室34内に流出するガスの熱量は、右側燃焼室34側の内筒材32とフィルタ部材37を通過するときに吸収(冷却)され、温度が低下してフィルタ部材37から右側燃焼室34内に噴出されるので、右側燃焼室34のガス発生剤36を直ちに自然着火させることがない。
【0085】
そして、エアバッグは、圧力上昇の抑制(鈍化)された少量の清浄ガスによって、緩やかで、弱めに張られるようにして膨張展開される。この意味で、仕切部材35のガス通孔35aの開口面積と数を調整して、右側燃焼室34に流出させるガス流量を制御することで、適切な圧力上昇特性にされた少量のガスでエアバッグを膨張展開させることができる。
【0086】
続いて、左側燃焼室33の燃焼開始後、微小時間差をおいて右側燃焼室34の点火器39を作動させると、右側燃焼室34内のガス発生剤36が強制着火されて燃焼が始まり高温ガスを発生させる。右側燃焼室34で発生した高温ガスは、左側燃焼室33と同様にして、内筒材32の各ガス通過孔32aからガス通過空間S2に放出され、各ガス放出孔42aからエアバッグ内に放出されることから、エアバッグは両燃焼室33、34から放出される多量の清浄ガスによって急速な膨張展開に移行される。
【0087】
このとき、右側燃焼室34での燃焼は、左側燃焼室33と同様に、各ガス通孔35aなどで左側燃焼室33に連通されるハウジング31全体の容積(密閉空間S)を以て行われる。したがって、エアバッグに放出される清浄ガスは、点火器39の作動時におけるハウジング31全体のガス圧(左側燃焼室33の燃焼によるガス圧)に加えて、右側燃焼室34での燃焼によるガス圧による圧力上昇特性を持つことになり、これらのガス圧の平衡圧力を最高圧力Pmaxとして、エアバッグを急速に膨張展開する。
【0088】
この意味で、各点火器38、39の微小時間差を大きくする程に、左側燃焼室33で燃焼されたガスが右側燃焼室34を含むハウジング31全体の容積に広がり得ることから、エアバッグに放出される圧力上昇を緩やかな特性とでき、最高圧力Pmaxも低く抑えられることになる。
【0089】
これによって、各点火器38、39を作動させる微小時間差を適宜変更することで、エアバッグに放出するガスの圧力上昇特性と最高圧力Pmaxを制御でき、エアバッグを膨張展開させる時に、乗員に与える衝撃を和らげることが可能となる。この結果、エアバッグは、展開初期で左側燃焼室33のみで発生し、圧力上昇の抑えられた少量の清浄ガスによって緩やかに膨張展開を開始し、微小時間差をおいて両燃焼室33、34で発生し、所定の圧力特性と最高圧力Pmaxにされた多量の清浄ガスにより急速に膨張展開することになる。
【0090】
このように、助手席用ガス発生器Y1によれば、助手席の乗員がインストルメントパネルの近い部分に着座していても、エアバッグ展開初期における急速な膨張展開による衝撃を受けることなく、安全にエアバッグ本来の機能が発揮される。
【0091】
図11及び図12の助手席用ガス発生器Y2について説明する。
【0092】
図11及び図12のガス発生器Y2は、図9のガス発生器Y1に対して、ハウジング31及び仕切部材35の構成と、内筒材32を両燃焼室33、34に亘って配置した点が異なり、図9及び図10と同一部材は同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0093】
図11及び図12のガス発生器Y2は、一端が開口された有底で長尺円筒状の外筒62と、外筒62の開口端を閉鎖する蓋部材41とで、内部に密閉空間Sを形成するハウジング31を構成している。
【0094】
ハウジング31は、蓋部材41の外周端に形成された環状リブ41bと外筒62の開口端を突合せ溶接(例えば、摩擦圧接)により接合することで、内部に密閉空間Sを形成する構造とされている。外筒62には、図10(a)と同様に、各ガス孔列r1、r2ごとに複数のガス放出孔62aが形成されている。又外筒62の底には、密閉空間S内に突出する突起部62bが形成されている。ハウジング31の内部には、外筒62の底と蓋部材41に亘って内筒材32が配置されている。内筒材32は、ハウジング31の密閉空間Sを、該内筒材32の内周側の燃焼空間S1、その外周と外筒62の内周の間のガス通過空間S2とに画成している。
【0095】
内筒材32の燃焼空間S1内は、内筒材32内に圧入される仕切部材35によって、左右2つの燃焼室33、34に画成されている。各燃焼室33、34内には、ガス発生剤36が装填され、これを囲繞するように内筒材32内にフィルタ部材37が配置されている。
【0096】
各フィルタ部材37は、内筒材32と共に突起部62b及び蓋部材41の凸部41aに嵌め込まれており、仕切部材35まで延びる端部で仕切部材35を挟持している。これで、各燃焼室33、34は、各フィルタ部材37、内筒材32のガス通過孔32a、ガス通過空間S2を通して相互に連通する構造にされている。
【0097】
又、蓋部材41、突起部62bには、図9と同様に、点火器38、39の点火具45がカシメ固定され、又伝火剤44が鍔付きキャップ46によって点火具45と対峙するように設けられている。蓋部材41側の鍔付きキャップ46は、鍔部46c先端を外筒62と蓋部材41との溶接時に形成されるバリ62cに当接して固定されている。64は蓋部材41側のキャップ46の鍔部46cと燃焼室34のフィルタ部材37の端部との間に介装された環状のシールプレートである。
【0098】
次に、助手席用ガス発生器Y2の作動について説明する。
【0099】
衝突センサが自動車の衝突を検出して、左燃焼室33側の点火器38のみが作動されると、図9と同様に、左側燃焼室33で発生した燃焼ガスは、フィルタ部材37でスラグ捕捉と冷却を経て、ガス通過空間S2で均一化された後に、エアバッグへの放出が開始される。
【0100】
このとき、左側燃焼室33で発生した燃焼ガスの一部は、フィルタ部材37、ガス通過空間S2を通して右側燃焼室34内に流出されることから、エアバッグは、左側燃焼室33のみで発生して圧力上昇の抑制(鈍化)された少量の清浄ガスによって、緩やかで、弱めに張られるようにして膨張展開される。尚、図9のガス発生器Y1と同様にして、ガス通過空間S2のガス通過のための断面積を調整することで、適切な圧力上昇特性にする。
【0101】
続いて、左側燃焼室33の燃焼開始後、微小時間差をおいて右側燃焼室34の点火器39を作動させると、右側燃焼室34内のガス発生剤36の燃焼が始まり、図9と同様に、エアバッグは、両燃焼室33、34から放出される多量の清浄なガスによって急速な膨張展開に移行される。
【0102】
このとき、右側燃焼室34での燃焼は、左側燃焼室33と同様に、ガス通過空間S2で左側燃焼室33に連通されるハウジング1全体の容積を以て行われることから、エアバッグに放出される清浄なガスは、点火器39の作動時におけるハウジング1全体のガス圧に加えて、右側燃焼室34での燃焼によるガス圧との圧力上昇特性となり、これらのガス圧の平衡圧力を最高圧力Pmaxとして、エアバッグを急速に膨張展開することになる。
【0103】
このように、助手席用ガス発生器Y2によれば、図9の助手席用ガス発生器Y1と同様に、エアバッグの展開制御を容易に行えることになり、安全にエアバッグ本来の機能を発揮できる。
【0104】
図13及び図14に示す助手席用ガス発生器Y3について説明する。
【0105】
図13及び図14のガス発生器Y3は、図9のガス発生器Y1に対して、ハウジング31の構成と、内筒材32とフィルタ部材37を両燃焼室33、34に亘って配置した点が異なり、図9及び図10と同一部材は同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0106】
図13及び図14のガス発生器Y3は、長尺円筒状の外筒82の両開口端にそれぞれ蓋部材41の環状リブ41bを突合わせ溶接(例えば、摩擦圧接)により接合することで、内部に密閉空間Sを形成するハウジング31を構成する。外筒82には、図10(a)と同様に、各ガス孔列r1、r2ごとに複数のガス放出孔82aが形成されている。ハウジング31の内部には、内筒材32とこの内筒材32内に装入されたフィルタ部材37とが各蓋部材41の間に亘って配置されている。フィルタ部材37は、内筒材32と共に各蓋部材41の凸部41aに嵌め込まれて、ハウジング31の密閉空間Sを内筒材32の外周と外筒80の内周との間のガス通過空間S2と、フィルタ部材37の内周側の燃焼空間S1とに画成している。
【0107】
フィルタ部材37内の燃焼空間S1は、仕切部材35によってハウジング31の軸方向に左右2つの燃焼室33、34に画成している。仕切部材35は、フィルタ部材37の内周に装入された円筒部35Aを有し、この円筒部35Aの燃焼室33側の開口を円板35Bで閉鎖することで、各燃焼室33、34を画成している。これで、各燃焼室33、34は、フルタ部材37、又はフィルタ部材37、内筒材32及びガス通過空間S2を通して相互に連通する構造にされている。そして、各燃焼室33、34内には、ガス発生剤36が装填されている。
【0108】
又、各蓋部材41には、図9と同様に、各点火器38、39の点火具45がカシメ固定され、又伝火剤44が鍔付きキャップ46によって点火具45と対峙するように設けられている。又各鍔付きキャップ46は、その鍔部46c先端を外筒82と各蓋部材41との溶接時に形成されるバリ82cに当接して固定されている。
【0109】
次に、助手席用ガス発生器Y3の作動について説明する。
【0110】
衝突センサが自動車の衝突を検出して、左側燃焼室33側の点火器38のみが作動されると、図9と同様に、左側燃焼室33で発生した燃焼ガスは、フィルタ部材37でスラグ捕捉と冷却を経て、ガス通過空間S2で均一化された後に、エアバッグへの放出が開始される。
【0111】
このとき、左側燃焼室33で発生した燃焼ガスの一部は、フィルタ部材37、ガス通過空間S2などを通して右側燃焼室34内に流出されることから、エアバッグは、左側燃焼室33のみで発生して圧力上昇の抑制(鈍化)された少量の清浄ガスによって、緩やかで、弱めに張られるようにして膨張展開される。尚、図9のガス発生器Y1と同様にして、フィルタ部材37、ガス通過空間S2のガス通過のための断面積を調整することで、適切な圧力上昇特性にする。
【0112】
続いて、左側燃焼室33の燃焼開始後、微小時間差をおいて右側燃焼室34の点火器39を作動させると、右側燃焼室34内のガス発生剤36の燃焼が始まり、図9と同様に、エアバッグは、両燃焼室33、34から放出される多量の清浄なガスによって急速な膨張展開に移行される。
【0113】
このとき、右側燃焼室34での燃焼は、左側燃焼室33と同様に、フィルタ部材37などで左側燃焼室33に連通されるハウジング31全体の容積を以て行われることから、エアバッグに放出される清浄なガスは、点火器39の作動時におけるハウジング31全体のガス圧に加えて、燃焼室34での燃焼によるガス圧による圧力上昇特性とになり、これらのガス圧の平衡圧力を最高圧力Pmaxとして、エアバッグを急速に膨張展開することになる。
【0114】
このように、助手席用ガス発生器Y3によれば、図9の助手席用ガス発生器Y1と同様に、エアバッグの展開制御を容易に行えることになり、安全にエアバッグ本来の機能を発揮できる。
【0115】
尚、助手席用ガス発生器Y1〜Y3においても、運転席用ガス発生器X1〜X3と同様にして、自動車の衝突形態によって各点火器38、39の作動を制御するものである。即ち、高速度での正面衝突などでは、各点火器38、39を同時に作動し、中程度の衝突では、各点火器38、39を微小時間差を以て作動し、更に軽程度の衝突では、1つの点火器38のみを作動させることで、運転席用ガス発生器X1〜X3と同様に、エアバッグの展開形態を選択する。
【0116】
又、助手席用ガス発生器Y1〜Y3においては、左側燃焼室33のガス発生剤36を燃焼させた後に、右側燃焼室34のガス発生剤36を燃焼させる形態について説明したが、これに限定されるものでなく、右側燃焼室34の燃焼後に、左側燃焼室33を燃焼させるようにしても良い。又、各燃焼室33、34の容積を変えて、一方を大きく、他方を小さくし、大容量の燃焼室側から点火するようになすこともできる。
【0117】
更に、助手席用ガス発生器Y1〜Y3においては、仕切部材35に当接するように図1に示すクッション部材25を配置しても良い。これで、図1〜図5の運転席用ガス発生器X1〜X3と同様にして、ガス発生剤36の粉化防止と、各燃焼室33、34の相互間で熱伝達を抑制することが可能となり、適正なエアバッグの展開制御を行える。
【0118】
以上の各ガス発生器X1〜X3、Y1〜Y3は、仕切部材5、35により2つの燃焼室3,4、33,34に画成したものを示したが、これに限定されるものでなく、仕切部材5、35の装入数を変えることにより3以上の燃焼室に画成し、各燃焼室の夫々に点火器を配置することで、エアバッグ展開を多段制御する事もできる。
【0119】
【実施例】
本発明の実施例としてのガス発生器と、比較例としてのガス発生器において、実験を行い圧力上昇特性と最高圧力とを比較したものを図15に示す。実施例のガス発生器は、2つの燃焼室を互いに連通させて画成し、各燃焼室のガス発生剤を独立して強制着火できる2つの点火器を備えるものである(図1〜図8参照。図9〜図14のものについては参考例。)。一方、比較例のガス発生器は、2つの燃焼室を密閉して画成し、各燃焼室のガス発生剤を独立して強制着火できる2つの点火器を備えるものである。
【0120】
次に、実験条件としては、実施例のガス発生器、比較例のガス発生器の各点火器を作動させる微小時間差tを、t=0ms、10ms、20msとして、60リットルタンク内に供した。そして、実施例のガス発生器、比較例のガス発生器において、60リットルタンク内の圧力上昇特性と最高圧力Pmaxとを、各時間差tごとに測定し、その結果を図15(a)及び図15(b)に示す。
【0121】
図15(a)において、実施例のガス発生器では、各点火器を作動させる微小時間差tが長くなる程、圧力上昇が抑制される傾向にあることが確認された。又、最高圧力Pmaxについても、点火器を作動させる微小時間差tが長くなる程、低く抑えることができる。これは、各燃焼室とが連通して、各燃焼室での燃焼がハウジング全体の大きな容積で行われることに起因すると考えられる。
【0122】
これに対して、図15(b)において、比較例のガス発生器では、実施例程でないが、各点火器を作動させる微小時間差tが長くなる程、圧力上昇が抑制される傾向となるが、最高圧力Pmaxについては、比較的高い同圧力に維持される。これは、各燃焼室が互いに密閉され、各燃焼室での燃焼が実施例に比して小さな容積(各燃焼室の容積)で行われることに起因すると考えられる。
【0123】
したがって、エアバッグの膨張展開を2段階で行うためには、エアバッグの展開初期の段階のみならず、その後、急速に膨張展開されても乗員に衝撃を与えない程度のガス圧(最高圧力Pmax)に制御可能な実施例のガス発生器(図1〜図8のガス発生器)を用いることが最適である。
【0124】
比較例のガス発生器では、各点火器を作動させる時間差tに係わらずほぼ同じ最高圧力Pmaxに制御されるので、各点火器を微少時間差tを以て作動しても、最高圧力Pmaxを乗員に衝撃を与えない程度のガス圧にできない。従って、エアバッグの膨張展開を2段階で行っても、最終的には比較的高い圧力(最高圧力Pmax)でエアバッグを展開膨張させることになり、乗員に衝撃を与える恐れがある。特に、自動車の中程度、軽程度の衝突に際して、危険性を伴うものと考えられる。
【0125】
【発明の効果】
本発明のガス発生器によれば、ハウジング内を仕切部材によって複数の燃焼室に画成し、各燃焼室内にガス発生剤、フィルタ部材及び点火器を配置すると共に、各燃焼室をフィルタ部材を介して互いに連通しているので、各燃焼室でのガス発生剤の燃焼をハウジング全体の容積(密閉空間)を持って行うようにすると共に、各点火器を時間差を設けて作動させることを可能となしている。
したがって、各燃焼室のガス発生剤の燃焼に時間差を設け、エアバッグ展開初期には一の燃焼室のみで発生し圧力上昇特性の抑制された少量のガスによって緩やかに展開させ、その後に、他の燃焼室で発生し所定の圧力上昇特性と最高圧力にされたガスの追加によってエアバッグを急速に展開させる多段展開制御を行うことが可能となる。又、仕切部材によって2つの燃焼室に画成し、各燃焼室のガス発生剤を各点火器で燃焼可能となすことで、エアバッグの2段展開制御を行うことも可能となる。
この結果、乗員がエアバッグの展開初期における急速展開による衝撃を受けることなく、安全にエアバッグ本来の機能を発揮させることが可能となる。
【0126】
本発明になるガス発生器であって、運転席用のガス発生器に適用されるものの具体的構成としては、ハウジングの燃焼空間を内筒材と長尺内筒の間に装入される仕切部材によって上下2つの燃焼室に画成し、各燃焼室をフィルタ部材、内筒材外周のガス通過空間を介して互いに連通する方式と、ハウジングの燃焼空間を内筒材内のフィルタ部材と長尺内筒の間に装入される仕切部材によって上下2つの燃焼室に画成し、各燃焼室をガス通過空間、フィルタ部材を介して互いに連通する方式と、ハウジングの密閉空間を外筒と長尺内筒の間に装入される仕切部材によって上下2つの燃焼室に画成し、各燃焼室を仕切部材のガス通孔、フィルタ部材を介して互いに連通する方式があるが、いずれの方式であっても、上下2つの燃焼室に配置した点火器で強制着火することによって、安定したエアバッグの2段展開形態を実現することが可能となる。
【0127】
又、本発明になるガス発生器であって、助手席用のガス発生器に適用されるものの具体的構成としては、ハウジングの密閉空間を外筒に装入される仕切部材によって左右2つの燃焼室に画成し、各燃焼室を仕切部材のガス通孔、フィルタ部材を介して互いに連通する方式と、ハウジングの燃焼空間を内筒材に装入される仕切部材によって左右2つの燃焼室に画成し、各燃焼室をフィルタ部材、内筒材外周のガス通過空間を介して互いに連通する方式と、ハウジングの燃焼空間を内筒材内のフィルタ部材に装入される仕切部材によって左右2つの燃焼室に画成し、各燃焼室を該フィルタ部材を介して互いに連通する方式とがあるが、いずれの方式によっても、左右2つの燃焼室に配置した点火器で強制着火することによって、安定したエアバッグの2段展開形態を実現することが可能となる。
【0128】
又、運転席用ガス発生器において、点火器は、ハウジングの中心部に配置された下側燃焼室を貫通して上側燃焼室内に突出する長尺内筒と、下側燃焼室内に突出する短尺内筒とに夫々配置し、特に、長尺内筒を上蓋に接合させる構造とすると、ハウジングの構造強度の増加を図ることができ、ガスを多量に発生させる大型のガス発生器や高圧のガスを発生する非アジ化系ガス発生剤の場合にも適応が可能となる。
【0129】
更に、仕切部材に、燃焼熱の伝達を抑制するクッション部材を設ける構成とすると、一方の燃焼室で発生した燃焼熱の伝達を遮断できるので、2つの各燃焼室のガス発生剤の燃焼を、確実に時間差をもって強制着火させることが容易となり、エアバッグの展開形態制御が、より一層確実且つ安定したものとなる。
【0130】
又、内筒材を、エクスパンディッドメタルにより形成すると、エクスパンディッドメタルは、内外周面に突出して相互に連通した複数のガス通過孔を有するものであるから、エクスパンディッドメタル層自体がガス通過空間を形成することになり、内筒材と外筒及びフィルタ部材とを密着させて配置させることが可能となって、これらの部材の位置決めや配置が容易となる。
【0131】
更に、運転席用ガス発生器においては、仕切部材に、上側燃焼室に突出する凸部を設けることで、下側燃焼室を小さくする場合においても、点火器を短尺内筒によって下側燃焼室内に確実に配置でき、又、仕切部材を長尺内筒の段部に当接して位置決めすることによって、簡単な構造で上下2つの燃焼室を画成でき、段部を調整することのみで容易に上下2つの燃焼室の容積を調整できる。
【0132】
又、フィルタ部材を、メリヤス編み金網或いはクリンプ織り線材の集合体で成形すると、安価に作成できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】運転席用ガス発生器を示す断面図である。
【図2】他の運転席用ガス発生器を示す断面図である。
【図3】図1及び図2のA−A断面図である。
【図4】更に、他の運転席用ガス発生器を示す断面図である。
【図5】図4のC−C断面図である。
【図6】内筒材を成形する部材を示す図であって、(a)はエクスパンディッドメタルの母材を示す図、(b)は母材を引張した状態を示す図、(c)はエクスパンディッドメタルで成形した内筒材を示す斜視図である。
【図7】図6に示すエクスパンディッドメタルの引張状態を示す断面図である。
【図8】フィルタ部材を成形する部材を示す図であって、(a)はメリヤス編み金網を示す拡大図、(b)はクリンプ織り線材を示す拡大図、(c)は成形されたフィルタ部材を示す斜視図である。
【図9】助手席用ガス発生器を示す断面図である。
【図10】図9の断面図であって、(a)はD−D断面図、(b)はE−E断面図である。
【図11】他の助手席用ガス発生器を示す断面図である。
【図12】図11のF−F断面図である。
【図13】更に、他の助手席用ガス発生器を示す断面図である。
【図14】図13のG−G断面図である。
【図15】本発明のガス発生器と、比較例のガス発生器との圧力上昇特性と最高圧力を比較したグラフであって、(a)は本発明のガス発生器の実験結果を示すグラフ、(b)は比較例のガス発生器の実験結果を示すグラフである。
【図16】従来の運転席用ガス発生器を示す断面図である。
【符号の説明】
1、31 ハウジング
3,4、33,34 燃焼室
5、35 仕切部材
6、36 ガス発生剤
7、37 フィルタ部材
8,9、38,39 点火器

Claims (7)

  1. 複数のガス放出孔(12a)を有し、内部に密閉空間(S)を形成するハウジング()を備えてなるガス発生器において、
    前記ハウジング(1)は、短円筒状の外筒(12)と、該外筒(12)の上下端部を閉塞する上蓋(13)及び下蓋(17)とで、内部に密閉空間(S)を形成する構造とされ、
    前記密閉空間(S)内を、前記上蓋(13)及び前記下蓋(17)の間に配置される仕切部材(5)によって、上下2つの燃焼室(3、4)に画成し、該各燃焼室(3、4)を前記フィルタ部材(7)を介して互いに連通すると共に、
    前記下蓋(17)には、前記仕切部材(5)を貫通して前記上側燃焼室(3)内に突出する長尺内筒(18)及び前記下側燃焼室(4)内に突出する短尺内筒(19)とを形成し、
    前記各燃焼室(3,4)内には、夫々、燃焼により高温ガスを発生させるガス発生剤()を装填し、該ガス発生剤()を囲繞するようにフィルタ部材()を配置すると共に、
    前記各内筒(18、19)内には、夫々、前記各燃焼室(3、4)内のガス発生剤(6)を燃焼させる点火器(8、9)を配置し、
    前記各燃焼室(3,4)は、前記各フィルタ部材()を介して互いに連通してなることを特徴とするガス発生器。
  2. 前記長尺内筒(18)は、前記下蓋(17)の中心部に配置し、且つ前記上蓋(13)まで延びて該上蓋(13)と突合せ接合してなることを特徴とする請求項1に記載のガス発生器。
  3. 前記ハウジング(1)の密閉空間(S)は、複数のガス通過孔(2a)を有する内筒材(2)によって、該内筒材(2)の内側の燃焼空間(S1)と、その外側のガス通過空間(S2)とに画成し、前記燃焼空間(S1)内を、前記内筒材(2)の内周と前記長尺内筒(18)の外周との間に装入される前記仕切部材(5)によって、前記ガス通過空間(S2)を通して互いに連通する上下2つの燃焼室(3、4)に画成すると共に、前記各燃焼室(3、4)内には、夫々、前記ガス発生剤(6)を装填し、該ガス発生剤(6)を囲繞するように前記内筒材(2)内に装入される前記フィルタ部材(7)を配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス発生器。
  4. 前記ハウジング(1)の密閉空間(S)は、複数のガス通過孔(2a)を有する内筒材(2)及び該内筒材(2)内に装入させる前記フィルタ部材(7)によって、該フィルタ部材(7)の内側の燃焼空間(S1)と、前記内筒材(2)の外側のガス通過空間(S2)とに画成し、前記燃焼空間(S1)内を、前記フィルタ部材(7)の内周と前記長尺内筒(18)の外周との間に装入される前記仕切部材(5)によって、前記ガス通過空間(S2)及び前記フィルタ部材(7)を通して互いに連通する上下2つの燃焼室(3、4)に画成すると共に、前記各燃焼室(3、4)内には、夫々、前記ガス発生剤(6)を装填したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス発生器。
  5. 前記ハウジング(1)の密閉空間(S)は、前記外筒(12)の内周と前記長尺内筒(18)の外周との間に装入させる前記仕切部材(5)によって、上下2つの燃焼室(3、4)に画成し、前記各燃焼室(3、4)内には、夫々、前記ガス発生剤(6)を装填し、該ガス発生剤(6)を囲繞するように前記フィルタ部材(7)を配置すると共に、前記仕切部材(5)には、前記各燃焼室(3、4)の前記フィルタ部材(7)を通して、該各燃焼室(3、4)を互いに連通するガス通孔(5a)を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス発生器。
  6. 前記仕切部材(5)には、前記短尺内筒(19)によって前記下側燃焼室(4)内に配置される前記点火器(9)を収納するための凸部(24)を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のガス発生器。
  7. 前記仕切部材(5)は、前記長尺内筒(18)に形成された段部(18a)に当接して位置決めしたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のガス発生器。
JP31187298A 1997-11-05 1998-11-02 ガス発生器 Expired - Fee Related JP3986184B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31187298A JP3986184B2 (ja) 1997-11-05 1998-11-02 ガス発生器

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9-302612 1997-11-05
JP30261297 1997-11-05
JP31187298A JP3986184B2 (ja) 1997-11-05 1998-11-02 ガス発生器

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH11217055A JPH11217055A (ja) 1999-08-10
JP3986184B2 true JP3986184B2 (ja) 2007-10-03

Family

ID=26563194

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP31187298A Expired - Fee Related JP3986184B2 (ja) 1997-11-05 1998-11-02 ガス発生器

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3986184B2 (ja)

Families Citing this family (18)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1029751B1 (en) 1998-09-28 2004-01-21 Daicel Chemical Industries, Ltd. Air bag gas generator and air bag apparatus
US6412815B1 (en) 1998-09-28 2002-07-02 Daicel Chemical Industries, Ltd. Gas generator for air bag and air bag device
JP3220443B2 (ja) * 1998-11-30 2001-10-22 ダイセル化学工業株式会社 エアバッグ用ガス発生器及びエアバッグ装置
US6722694B1 (en) 1999-02-16 2004-04-20 Daicel Chemical Industries, Ltd. Gas generator for multi-stage air bag and air bag device
JP4557367B2 (ja) * 1999-06-18 2010-10-06 ダイセル化学工業株式会社 ガス発生器用リテーナ
JP2001163171A (ja) * 1999-12-10 2001-06-19 Nippon Kayaku Co Ltd ガス発生器
WO2001047752A1 (fr) * 1999-12-28 2001-07-05 Nippon Koki Co., Ltd. Gonfleur double
JP4587584B2 (ja) * 2000-03-28 2010-11-24 ダイセル化学工業株式会社 ハイブリッドインフレータ
US6447007B1 (en) * 2000-03-28 2002-09-10 Atlantic Research Corporation Compact dual nozzle air bag inflator
JP4860807B2 (ja) * 2000-06-12 2012-01-25 株式会社ダイセル 多段式エアバッグ用ガス発生器
JP4864234B2 (ja) * 2000-06-22 2012-02-01 株式会社ダイセル エアバッグ用ガス発生器
KR100353070B1 (ko) * 2000-08-25 2002-09-18 현대자동차주식회사 자동차용 듀얼 스테이지 에어백의 인플레이터
JP4587558B2 (ja) * 2000-11-22 2010-11-24 ダイセル化学工業株式会社 ハイブリッドインフレータ
DE60129248T2 (de) 2000-12-27 2007-10-11 Daicel Chemical Industries, Ltd., Sakai Gasgenerator zur verwendung bei airbags und airbagvorrichtung
JP4542698B2 (ja) * 2000-12-27 2010-09-15 ダイセル化学工業株式会社 エアバッグ用ガス発生器及びエアバッグ装置
JP4542699B2 (ja) * 2000-12-27 2010-09-15 ダイセル化学工業株式会社 エアバッグ用ガス発生器及びエアバッグ装置
JP3741075B2 (ja) * 2002-04-12 2006-02-01 トヨタ自動車株式会社 インフレータ
US7438313B2 (en) * 2003-08-06 2008-10-21 Arc Automotive, Inc. Compact multi-level output gas generator

Also Published As

Publication number Publication date
JPH11217055A (ja) 1999-08-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100417766B1 (ko) 가스발생기
JP3986184B2 (ja) ガス発生器
KR0168471B1 (ko) 팽창식 자동차 탑승자 보호장치의 팽창 장치
CA2226364C (en) Dual chamber nonazide gas generator
US4998751A (en) Two-stage automotive gas bag inflator using igniter material to delay second stage ignition
JP3029326U (ja) 多段式エアバッグ膨張装置
JP3830897B2 (ja) 2チャンバー式インフレータ
KR100459589B1 (ko) 가스 발생기
JP3781603B2 (ja) ガス発生器
JP2732560B2 (ja) 乗物搭乗者用拘束具の膨張装置
KR20060045329A (ko) 팽창기
JPWO2002051673A1 (ja) ガス発生器
WO2007032387A1 (ja) ガス発生器
EP1056624A1 (en) Adaptive output inflator
EP1454803A1 (en) Gas generator
JP5008809B2 (ja) ガス発生器
JPH1159318A (ja) ガス発生器
EP1369316B1 (en) Gas generator for air bag and air bag device
JPH1178766A (ja) エアバッグ用ガス発生器
WO2001042061A1 (fr) Generateur de gaz
JPH1191495A (ja) ガス発生器
JP4079329B2 (ja) ガス発生器
JPH11157412A (ja) ガス発生器
JP4526375B2 (ja) エアバッグ用ガス発生器
JPH1191494A (ja) ガス発生器

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20041124

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070123

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070322

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20070417

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070615

A911 Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20070621

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070710

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070710

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100720

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100720

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110720

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130720

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees