JP4587558B2 - ハイブリッドインフレータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車両の膨張式安全システムに関し、より詳しくはエアバッグを確実にかつ迅速に膨張させることができるハイブリッドインフレータ及びそれを用いたエアバッグシステムに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
自動車両の膨張式安全システム用のインフレータの発展に伴い、加圧ガスと固形ガス発生剤とを併用するハイブリッドインフレータが注目されている。ハイブリッドインフレータにおいて、主たる設計要件はエアバッグが効果的に作動するように所定の時間で所定の量だけ膨張させねばならないことであり、従来その構造について種々の提案がなされている(例えば特開平8−282427号公報参照)。かかるハイブリッドインフレータは、乗員の安全確保の観点から、確実にエアバッグを膨張させることが重要となる。
【0003】
本発明は、エアバッグシステム用として高い信頼性を有するハイブリッドインフレータ及びそれを用いたエアバッグシステムを提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ガス発生室が1つのシングル型、ガス発生室が2つのデュアル型のいずれもに適用することができる。
【0005】
本発明は、解決手段として、インフレータハウジングと、インフレータハウジング内に収容されたガス発生器と、ガス発生器に接続された点火手段を備えた点火手段室とを有し、インフレータハウジング内に不活性ガスを含む加圧媒質が充填された、エアバッグを備えた車両の膨張式安全システムのためのハイブリッドインフレータであって、
ガス発生器がガス発生器ハウジングで外殻を構成されており、ガス発生器ハウジング内に、点火手段の長さ方向延長上に設けられた筒状の伝火室ハウジング内に形成された伝火室と、伝火室ハウジングとガス発生器ハウジングにより形成された、ガス発生手段が収容されたガス発生室を有しており、
伝火室ハウジングは、伝火室とガス発生室内とを連通させる、長さ方向に間隔をおいて配置された複数の伝火孔を有し、ガス発生室は、インフレータハウジング内と連通する複数の連通孔を有しており、
複数の伝火孔と連通孔の一部又は全部が、長さ方向に正対しないように配置されているハイブリッドインフレータを提供する。
【0006】
このように伝火孔と連通孔の一部又は全部が、ハイブリッドインフレータの長さ方向に正対しないように配置されていると、伝火孔と連通孔の全部が正対している場合に比べて、伝火室から流出するブースターガスがより長い距離を移動し、より多くのガス発生手段と接触することができるので、ガス発生手段をより均一に燃焼させることができる。
【0007】
本発明は、他の解決手段として、インフレータハウジングと、インフレータハウジング内に収容されたガス発生器と、ガス発生器に接続された点火手段を備えた点火手段室とを有し、インフレータハウジング内に不活性ガスを含む加圧媒質が充填された、エアバッグを備えた車両の膨張式安全システムのためのハイブリッドインフレータであって、
ガス発生器がガス発生器ハウジングで外殻を構成されており、ガス発生器ハウジング内に、1つの点火手段の長さ方向延長上に設けられた筒状の伝火室ハウジング内に形成された伝火室と、伝火室ハウジングとガス発生器ハウジングにより形成された、それぞれガス発生手段が収容された第1ガス発生室と第2ガス発生室を有しており、
伝火室ハウジングは、伝火室と第1ガス発生室内とを連通させる、長さ方向に間隔をおいて配置された複数の伝火孔を有し、第1ガス発生室と第2ガス発生室は、それぞれインフレータハウジング内と連通する複数の第1連通孔と第2連通孔を有しており、
複数の伝火孔と第1連通孔の一部又は全部が、長さ方向に正対しないように配置されているハイブリッドインフレータを提供する。
【0008】
このように伝火孔と第1連通孔が、ハイブリッドインフレータの長さ方向に正対しないように配置されていると、上記と同様にして、ガス発生手段の燃焼を均一にすることができる。
【0009】
更に本発明のハイブリッドインフレータは、上記したようにガス発生手段の燃焼をより均一にするため、複数の伝火孔と連通孔又は複数の伝火孔と第1連通孔の一部又は全部が、ハイブリッドインフレータの長さ方向に正対しないで、かつ幅方向に正対しないように配置されているものが望ましい。
【0010】
更に本発明のハイブリッドインフレータは、上記したようにガス発生手段の燃焼をより均一にするため、複数の伝火孔と連通孔又は複数の伝火孔と第1連通孔の一端から他端までの間隔と、ガス発生室又は第1ガス発生室の長さ方向への一端から他端までの間隔が近似していることが望ましい。
【0011】
更に本発明のハイブリッドインフレータは、上記したようにガス発生手段の燃焼をより均一にするため、複数の伝火孔と連通孔又は複数の伝火孔と第1連通孔が、いずれも等間隔で配置されていることが望ましい。
【0012】
また本発明のハイブリッドインフレータは、第1ガス発生室と第2ガス発生室が、一端側に配置された第1リテーナーと、他端側である第1ガス発生室と第2ガス発生室の間に配置された第2リテーナーによって、それぞれの長さ方向への間隔が調整されている構造にすることができる。
【0013】
本発明においては、第1及び第2リテーナーが、一端面が閉塞され他端面が開口された大口径筒状物と、大口径筒状物と一体にその内側にかつ開口部方向に突出して形成された、両端面が開口された小口径筒状物と、大口径筒状物と小口径筒状物の間に設けられた環状物との組合せからなるものが好ましい。
【0014】
これらの第1及び第2リテーナーは、大口径筒状物と小口径筒状物の間に設けられた環状物が、閉塞端面と一体に形成され、開口部方向に突出されたものであるか又は別途成形したものが配置されたものにすることができる。
【0015】
更にこれらの第1及び第2リテーナーは、大口径筒状物の側壁の高さが最も高く、環状突起物の高さが最も低いものにすることができる。
【0016】
本発明においては、第1リテーナーが、閉塞端面側が第1ガス発生室側になるように配置され、第2リテーナーが、開口部側が第1ガス発生室側になるように配置されていることが望ましい。
【0017】
このようにして第1及び第2リテーナーを配置した場合、第1ガス発生室は、第1リテーナーの閉塞端面側と第2リテーナーの開口部側によって挟み込まれた状態になる。このような配置にすることで、第2リテーナーの作用により、第1ガス発生室内で生じた燃焼ガスが第2ガス発生室に侵入することが防止される。更に、第2リテーナーの開口部側には環状物が存在しているため、ガス発生手段が第2リテーナーの開口部内部に入り込むことがない。前記環状物が存在しない場合、第2リテーナーの開口部内に入り込んだガス発生手段は燃焼が遅れたり、燃焼ガスの移動が阻害されたりする恐れがある。
【0018】
また本発明のハイブリッドインフレータは、ガス発生器ハウジングのガス発生室又は第1ガス発生室と第2ガス発生室が存在しない部分の壁面に、前記壁面を貫通して予備連通孔が設けられている構造にすることができる。
【0019】
ここで「予備連通孔」とは、正常作動時には加圧媒質及び燃焼ガスの移動経路となる連通孔として機能せず、作動時において、下記のとおり特定の異常が発生した場合にのみ連通孔として機能し、加圧媒質及び燃焼ガスをハイブリッドインフレータ外部に放出するための予備的経路となるものである。
【0020】
連通孔又は第1及び第2連通孔が設けられたガス発生器ハウジングは溶接等で固着されているのではなく、インフレータハウジングに固着したボスに一端側を嵌め込んだ状態で取り付けられている。よって、作動時の衝撃によって、ガス発生器ハウジングが長さ方向に移動して加圧媒質及び燃焼ガスの移動経路を遮断してしまうような異常(即ち、特定の異常)が生じる恐れがある。そのような場合には、前記した予備連通孔が加圧媒質及び燃焼ガスの新たな移動経路となることで、ハイブリッドインフレータの正常な作動が確保される。
【0021】
また本発明のハイブリッドインフレータは、ハイブリッドインフレータの一端側にボスが配置され、ボス内部に形成された点火手段室に点火手段が配置されており、更に点火手段により着火燃焼される伝火手段が伝火室ハウジング内に配置されており、伝火室ハウジングの一端側がボスにより固定されている構造にすることができる。
【0022】
更に、伝火室ハウジングの一端側が半径方向に押し広げられたスカート部を有し、前記スカート部内に伝火手段が挿入されており、ボスと一体となった環状突起部によりスカート部の周囲が外側からかしめられているか又は伝火室ハウジングの一端側が半径方向外側に折り曲げられた折曲部を有し、前記折曲部が形成された伝火室ハウジングの一端側に伝火手段が挿入されており、ボスと一体となった環状突起部により折曲部の周囲が外側からかしめられている構造にすることができる。
【0023】
このような構造にすることによって、伝火手段と伝火室ハウジングが一体に密着して固定されるので、点火手段が作動して伝火手段が着火燃焼して生じる高温のブースターガス(火炎)がリークすることが防止され、ガス発生手段の燃焼が円滑に行われる。
【0024】
更に、スカート部と環状突起部又は折曲部と環状突起部が、ハイブリッドインフレータの長さ方向に加えられる力に抗する力によって、密着度が高まるように接触している構造にすることが望ましい。
【0025】
伝火手段の燃焼時、伝火室ハウジングに対しては、ハイブリッドインフレータの長さ方向に大きな力が加わるため、その力に抗して密着できるようにされていると、望ましくはスカート部と環状突起部又は折曲部と環状突起部が互いに面接触していると、点火手段が作動した際のブースターガスのリーク防止作用がより高められる。スカート部と環状突起部又は折曲部と環状突起部が互いに点接触しているだけであると、長さ方向に大きな力が加わったとき、スカート部と環状突起部又は折曲部と環状突起部の間に隙間が生じて、ブースターガスがリークする場合がある。
【0026】
また本発明は、他の解決手段として、インフレータハウジングと、インフレータハウジング内に収容されたガス発生器と、ガス発生器に接続された点火手段を備えた点火手段室とを有し、インフレータハウジング内に不活性ガスを含む加圧媒質が充填された、エアバッグを備えた車両の膨張式安全システムのためのハイブリッドインフレータであって、
ガス発生器がガス発生器ハウジングで外殻を構成されており、ガス発生器ハウジング内に、1つの点火手段の長さ方向延長上に設けられた筒状の伝火室ハウジング内に形成された伝火室と、伝火室ハウジングとガス発生器ハウジングにより形成された、それぞれガス発生手段が収容された第1ガス発生室と第2ガス発生室を有しており、
第1ガス発生室と第2ガス発生室が、一端側に配置された第1リテーナーと、他端側である第1ガス発生室と第2ガス発生室の間に配置された第2リテーナーによって、それぞれの長さ方向への間隔が調整されており、
第1及び第2リテーナーが、一端面が閉塞され他端面が開口された大口径筒状物と、大口径筒状物と一体にその内側にかつ開口部方向に突出して形成された、両端面が開口された小口径筒状物と、大口径筒状物と小口径筒状物の間に設けられた環状物との組合せからなるものであるハイブリッドインフレータを提供する。
【0027】
これらの第1及び第2リテーナーは、大口径筒状物と小口径筒状物の間に設けられた環状物が、閉塞端面と一体に形成され、開口部方向に突出されたものであるか又は別途成形したものが配置されたものにすることができる。
【0028】
更にこれらの第1及び第2リテーナーは、大口径筒状物の側壁の高さが最も高く、環状突起物の高さが最も低いものにすることができる。
【0029】
本発明においては、上記したとおりの作用をなすため、第1リテーナーが、閉塞端面側が第1ガス発生室側になるように配置され、第2リテーナーが、開口部側が第1ガス発生室側になるように配置されていることが望ましい。
【0030】
また本発明は、インフレータハウジングと、インフレータハウジング内に収容されたガス発生器と、ガス発生器に接続された点火手段を備えた点火手段室とを有し、インフレータハウジング内に不活性ガスを含む加圧媒質が充填された、エアバッグを備えた車両の膨張式安全システムのためのハイブリッドインフレータであって、
ガス発生器がガス発生器ハウジングで外殻を構成されており、ガス発生器ハウジング内に、1つの点火手段の長さ方向延長上に設けられた筒状の伝火室ハウジング内に形成された伝火室と、伝火室ハウジングとガス発生器ハウジングにより形成された、ガス発生手段が収容された1又は2以上のガス発生室を有しており、
ガス発生器ハウジングのガス発生室が存在しない部分の壁面に、前記壁面を貫通して予備連通孔が設けられているハイブリッドインフレータを提供する。
【0031】
ここで「予備連通孔」は、上記したとおりのもので、同様の作用をなすものである。
【0032】
また本発明は、インフレータハウジングと、インフレータハウジング内に収容されたガス発生器と、ガス発生器に接続された点火手段を備えた点火手段室とを有し、インフレータハウジング内に不活性ガスを含む加圧媒質が充填された、エアバッグを備えた車両の膨張式安全システムのためのハイブリッドインフレータであって、
ガス発生器がガス発生器ハウジングで外殻を構成されており、ガス発生器ハウジング内に、1つの点火手段の長さ方向延長上に設けられた筒状の伝火室ハウジング内に形成された伝火室と、伝火室ハウジングとガス発生器ハウジングにより形成された、ガス発生手段が収容された1又は2以上のガス発生室を有しており、
ハイブリッドインフレータの一端側にボスが配置され、ボス内部に形成された点火手段室に点火手段が配置されており、更に点火手段により着火燃焼される伝火手段が伝火室ハウジング内に配置されており、
伝火室ハウジングの一端側が半径方向に押し広げられたスカート部を有し、前記スカート部内に伝火手段が挿入されており、ボスと一体となった環状突起部によりスカート部の周囲が外側からかしめられているか、又は伝火室ハウジングの一端側が半径方向外側に折り曲げられた折曲部を有し、前記折曲部が形成された伝火室ハウジングの一端側に伝火手段が挿入されており、ボスと一体となった環状突起部により折曲部の周囲が外側からかしめられているハイブリッドインフレータを提供する。
【0033】
このような構造にすることによって、上記したとおり、伝火手段と伝火室ハウジングが一体に密着して固定されるので、点火手段が作動して伝火手段が着火燃焼して生じる高温のブースターガス(火炎)がリークすることが防止され、ガス発生手段の燃焼が円滑に行われる。
【0034】
上記発明のハイブリッドインフレータにおいては、下記のとおり、ガス発生室に収容するガス発生剤(ガス発生手段)又は第1ガス発生室に収容する第1ガス発生剤と第2ガス発生室に収容する第2ガス発生剤(ガス発生手段)は、インフレータハウジング内に充填する加圧媒質の組成との関連で決定することができる。本発明では、シングル型とデュアル型のガス発生剤は同一であるので、以下においては、デュアル型のガス発生剤として説明する。
【0035】
本発明のハイブリッドインフレータで用いる加圧媒質は、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス(本発明では窒素も不活性ガスに含まれるものとする)からなるものであり、必要に応じて酸素を含ませることもできる。アルゴンは加圧媒質の熱膨張を促進するように作用し、ヘリウムを含有させておくと加圧媒質の漏れの検出が容易となるので、不良品の流通が防止されるため好ましい。また、酸素はガス発生手段としてのガス発生剤の燃焼により生じた一酸化炭素や水素を、二酸化炭素や水蒸気に変換するように作用する。加圧媒質の充填圧力(=インフレータハウジング内の圧力)は、好ましくは10,000〜70,000kPa、より好ましくは30,000〜60,000kPaである。なお、加圧媒質は酸素を含有しても含有していなくてもよく、酸素を含有させる場合は最大で30モル%が好ましい。
【0036】
第1ガス発生室に収容する第1ガス発生剤と、第2ガス発生室に収容する第2ガス発生剤は、例えば、ガンプロペラントを用いることができる。ガンプロペラントとしては、シングルベースガンプロペラント、ダブルベースガンプロペラント、トリプルベースガンプロペラントのほかに、二次爆薬、結合剤、可塑剤、安定剤等からなるものを混合し、所望形状に成型したものも使用できる。
【0037】
二次爆薬としては、ヘキサハイドロトリニトロトリアジン(RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、ペンタエリスリトールテトラニトレイト(PETN)、トリアミノグアニジンニトレイト(TAGN)等が挙げられる。例えば、二次爆薬としてRDXを用い、酸素のない雰囲気中、20,670kPaの圧力下、燃焼温度3348Kで燃焼させた場合、燃焼ガス中の生成ガスはmole%で窒素33%、一酸化炭素25%、水蒸気23%、二酸化炭素8%及び他のガス成分となる。
【0038】
結合剤としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオレート、エチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、アジドポリマー、ポリブタジエン、水素化ポリブタジエン、ポリウレタン等が挙げられ;可塑剤としては、トリメチロールエタントリニトレイト、ブタントリオールトリニトレイト、ニトログリセリン、ビス(2,2−ジニトロプロピル)アセタール/ホルマール、グリシジルアジド、アセチルトリエチルシトレート等が挙げられ;安定剤は、エチルセントラライト、ジフェニルアミン、レゾシノール等が挙げられる。
【0039】
二次爆薬と結合剤、可塑剤及び安定剤との割合は、二次爆薬が約50〜90重量%、結合剤、可塑剤及び安定剤の合計量が約10〜50重量%が好ましい。
【0040】
上記した組成のガス発生剤は、常圧下では燃焼しにくい場合があるが、本発明のハイブリッドインフレータのように内部があらかじめ高圧に保持されている場合には、安定かつ円滑に燃焼させることができる。
【0041】
その他、第1ガス発生室に収容する第1ガス発生剤と、第2ガス発生室に収容する第2ガス発生剤は、例えば、燃料及び酸化剤又は燃料、酸化剤及びスラグ形成剤を含むものを、必要に応じて結合剤と共に混合し、所望形状に成型したものを使用することができ、このようなガス発生剤を用いた場合は、その燃焼により発生するガスを、加圧媒質と共にエアバッグの膨張展開に供することができる。特にスラグ形成剤を含むガス発生剤を用いた場合は、インフレータから排出されるミストの量を大幅に低減できる。
【0042】
燃料としては、ニトログアニジン(NQ)、グアニジン硝酸塩(GN)、グアニジン炭酸塩、アミノニトログアニジン、アミノグアニジン硝酸塩、アミノグアニジン炭酸塩、ジアミノグアニジン硝酸塩、ジアミノグアニジン炭酸塩、トリアミノグアニジン硝酸塩等のグアニジン誘導体等から選ばれる1又は2以上が好ましい。また燃料として、テトラゾール及びテトラゾール誘導体等から選ばれる1又は2以上のものも用いることができる。
【0043】
酸化剤としては、硝酸ストロンチウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、過塩素酸カリウム、酸化銅、酸化鉄、塩基性硝酸銅等から選ばれる1又は2以上が好ましい。酸化剤の配合量は、燃料100重量部に対して、好ましくは10〜80重量部、より好ましくは20〜50重量部である。
【0044】
スラグ形成剤としては、酸性白土、タルク、ベントナイト、ケイソウ土、カオリン、シリカ、アルミナ、ケイ酸ナトリウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ヒドロタルサイト及びこれらの混合物から選ばれる1又は2以上が好ましい。スラグ形成剤の配合量は、燃料100重量部に対して、好ましくは0〜50重量部、より好ましくは1〜10重量部である。
【0045】
結合剤としては、カルボキシルメチルセルロースのナトリウム塩、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、ポリビニルアルコール、グアーガム、微結晶性セルロース、ポリアクリルアミド、ステアリン酸カルシウム等から選ばれる1又は2以上が好ましい。結合剤の配合量は、燃料100重量部に対して、好ましくは0〜30重量部、より好ましくは3〜10重量部である。
【0046】
また本発明は、衝撃センサ及びコントロールユニットからなる作動信号出力手段と、ケース内に上記のハイブリッドインフレータとエアバッグが収容されたモジュールケースとを備えたエアバッグシステムを提供する。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を示した図面により、本発明を詳しく説明する。図1はデュアル型のハイブリッドインフレータ100の一実施形態の長さ方向への断面図、図2は図1の第1ガス発生室部分の幅方向への断面図、図3(a)は図1で用いたリテーナーの斜視図、図3(b)は同断面図である。
【0048】
図1に示すように、インフレータハウジング102は筒状の耐圧性容器からなり、内部空間103は加圧媒質が充填され、高圧に保持されている。加圧媒質は、通常はインフレータハウジング102の一端側に接続されたボス145に形成された細孔107から充填し、前記細孔は加圧媒質の充填後にシールピン109により閉塞する。インフレータハウジング102は、ディフューザ180側の端部近傍を除いた残部外形を均一径の形状(くびれ等のないフラットな外形)にすることができる。
【0049】
ガス発生器108は、一端側がボス145に嵌め込まれているガス発生器ハウジング105により外殻が形成されており、その内部において、伝火室110と、伝火室110の周囲に形成された、インフレータハウジング102の長さ方向に直列にかつ隣接して配置された第1ガス発生室120と第2ガス発生室130とを有している。
【0050】
伝火室110は、筒状の伝火室ハウジング111から形成されており、伝火手段となるブースター剤(伝火薬)112が充填されたブースターカップ116と第1閉鎖手段としての第1破裂板119により閉鎖された第1連通路を介して、第1点火用イニシエータ117に連結されている。伝火室110は、伝火孔118により第1ガス発生室120と連通されている。
【0051】
第1ガス発生室120は、伝火室110の周囲に配置されており、ガス発生室ハウジング105、伝火室ハウジング111、第1リテーナー126及び第2リテーナー136から形成されており、内部に所要量のガス発生手段としての第1ガス発生剤124が収容されている。第1ガス発生室120とインフレータハウジング102は複数の第1連通孔125により連通されており、複数の第1連通孔125は、第1ガス発生剤124が第1ガス発生室120の外に漏れ出ないように、それらの孔径が調整されている。
【0052】
図1に示すとおり、複数の伝火孔118と複数の第1連通孔125は、一部が長さ方向に正対しない位置に設けられている。このように伝火孔118と第1連通孔125を配置すると、次の理由で第1ガス発生剤124をより均一に燃焼させることができる。
【0053】
伝火孔118と第1連通孔125の一部が正対していないと、ブースター剤118が燃焼して生じる高温のブースターガスが伝火孔から流出するとき、そのガス流は、伝火孔118と第1連通孔125が正対する場合に比べ、より長い距離を移動して第1ガス発生剤124と接触した後に第1連通孔125から流出することになる。このため、全ての第1ガス発生手段124を均一に燃焼させることができる。更に、図1では、伝火孔118と第1連通孔125の一部は正対しているため、残部が正対していないことによるガス流の流れの阻害が生じることもない。
【0054】
一方、伝火孔118と第1連通孔125の全てが正対していると、ブースターガスが伝火孔118から流出するとき、伝火孔118から第1連通孔125までの最短距離を通って流出することになり、伝火孔118と第1連通孔125を結ぶ線上にある第1ガス発生剤124は燃焼させることができるものの、前記線上にない第1ガス発生剤124の燃焼が遅れる恐れがある。
【0055】
更に、複数の伝火孔118と複数の第1連通孔125は、図2に示すとおり、幅方向(半径方向)に正対しない位置に設けられていることが好ましい。このようにして配置することで、ブースターガスのガス流が矢印のように流れるため、第1ガス発生剤124を均一に燃焼させることができる。
【0056】
また、第1ガス発生手段124を均一に燃焼させるため、複数の伝火孔118と複数の第1連通孔125の一端から他端までの間隔と、第1ガス発生室120の長さ方向への間隔が近似していることが好ましい。
【0057】
更に、複数の伝火孔118と複数の第1連通孔125は、いずれも等間隔で配置されていることが好ましい。
【0058】
第2ガス発生室130は、ガス発生器ハウジング105、伝火室ハウジング111、第2リテーナー136及びボス145(及び第2破裂板139)から形成されており、その内部に所要量のガス発生手段としての第2ガス発生剤134が収容されている。第2ガス発生室130とインフレータハウジング102は、上記のとおり孔径が調整された複数の第2連通孔135により連通されている。
【0059】
第1ガス発生室120と第2ガス発生室130の容積は、第1リテーナー126と第2リテーナー136により調整されている。これらのリテーナーの内、第2リテーナー136としては、図3(a)、(b)に示す構造のものが望ましい。また、工作点数を削減する観点から、第1リテーナー126と第2リテーナー136を同じものにしてもよい。
【0060】
第1リテーナー126及び第2リテーナー136は、一端面が閉塞され他端面が開口された大口径筒状物201と、大口径筒状物201と一体にその内側にかつ開口部方向に突出して形成された、両端面が開口された小口径筒状物202と、大口径筒状物201と小口径筒状物202の間に設けられた、閉塞端面と一体に形成され、突出された環状物203との組合せからなっている。
【0061】
環状物203は、第2リテーナー136の開口部内に、第1ガス発生剤124が入り込むことを防止するためのものである。よって、環状物203は、前記機能を果たすものであれば特に限定されるものではなく、別途成形した環状物を嵌め込んでもよい。
【0062】
図1に示すとおり、第1リテーナー126及び第2リテーナー136は、小口径筒状物202の貫通孔部分を伝火室ハウジング111に嵌め込んで取り付けられており、大口径筒状物201の外壁面がガス発生器ハウジング105の内壁面と接触し、小口径筒状物202の外壁面が伝火室ハウジング111の外壁面と接触している。
【0063】
第1リテーナー126及び第2リテーナー136は、伝火室ハウジング111に嵌め込んだ状態で取り付けられており、取り付け時の安定性を確保するため、大口径筒状物201の側壁の高さが小口径筒状物202の側壁の高さよりも高い方が望ましく、環状物124は、ガス発生剤124が内部に入り込まないようにできる高さである。
【0064】
第1リテーナー126は、閉塞端面側が第1ガス発生室120側になるように配置され、第2リテーナー136は、開口部側が第1ガス発生室120側になるように配置されている。
【0065】
このように配置することで、第1ガス発生剤124が燃焼し、第1ガス発生室120内部が高圧になった場合、第2リテーナー136は外側に押し広げられるように膨張し、大口径筒状物201の外壁面がガス発生器ハウジング105の内壁面を押圧して密着度を高め、小口径筒状物202の外壁面が伝火室ハウジング111の外壁面を押圧して密着度を高めるため、第1ガス発生室120内の燃焼ガスが第2ガス発生室130内にリークすることが防止される。そして、第1リテーナー126の環状部裏面205側も押圧され、同様に大口径筒状物201と小口径筒状物202が押し広げられるように膨張するため、空間177側に燃焼ガスがリークすることが防止される。
【0066】
第2ガス発生室130は、第2閉鎖手段としての第2破裂板139により閉鎖された第2連通路を介して、第2点火用イニシエータ140に連結されている。なお、第2ガス発生室130においては、複数の第2連通孔135が第2点火用イニシエータ140とは幅方向(半径方向)に反対側になるようにして形成されている。
【0067】
第2点火用イニシエータ140は、第1点火用イニシエータ117(第1点火手段室115)及び伝火室110がインフレータハウジング102の長さ方向への中心軸(図1中の一点鎖線)上に配置されているため、前記中心軸に対して偏心して配置されている。
【0068】
第2ガス発生剤134の量は、第1ガス発生剤124と同量又は第1ガス発生剤124の量よりも多くしたり少なくしたりすることができ、形状及び組成は同一でも異なっていてもよい。
【0069】
上記のとおり、伝火室110が第1ガス発生室120に連通され、第1ガス発生室120がインフレータハウジング102と連通されており、更に第2ガス発生室130がインフレータハウジング102と連通されているため、伝火室110、第1ガス発生室120及び第2ガス発生室130は、いずれも高圧、即ちインフレータハウジング102内部(内部空間103)と同じ圧力に保持されている。
【0070】
第1ガス発生室120と第2ガス発生室130は、インフレータハウジング102の長さ方向に、直列にかつ隣接して配置されている。このように直列に配置することにより、ガス発生室を二つにした場合でもハイブリッドインフレータ全体の大きさをコンパクトにし、重量増加を抑制できる。
【0071】
第1ガス発生室120と第2ガス発生室130は、それぞれにおいて第1ガス発生剤124と第2ガス発生剤134が燃焼して発生した燃焼ガスがインフレータハウジング102に流入する経路が独立した経路となっている。即ち、第1ガス発生室120において発生した燃焼ガスは、第1連通孔125からインフレータハウジング102に流入し、第2ガス発生室130において発生した燃焼ガスは、第2連通孔135からインフレータハウジング102に流入する。
【0072】
また、第1ガス発生室120と第2ガス発生室130は、第1ガス発生室120において発生したガスが、流入経路である第1連通孔125を通ってガス流としてインフレータハウジング102内をディフューザポート182方向に流れて行くとき、第2ガス発生室130の流入経路である第2連通孔135は、第1ガス発生室120の流入経路である第1連通孔125に対して前記ガス流の逆方向側に位置している。
【0073】
このようにして第1ガス発生室120と第2ガス発生室130を配置することにより、第1ガス発生室120の燃焼の影響を第2ガス発生室130に及ぼさないようにできる。このような配置は、特に加圧媒質に酸素を含まない場合において、第1ガス発生室120の燃焼による影響を第2ガス発生室130に及ぼさない点で有効となる。なお、第1ガス発生室120と第2ガス発生室130の配置順序は逆の順序でもよい。
【0074】
ボス145内に形成された点火手段室114は、第1点火手段室115と第2点火手段室141を有し、第1点火手段室は第1点火用イニシエータ117を収容し、第2点火手段室141は第2点火用イニシエータ140を収容する。第1及び第2点火手段室は、イフレータハウジング102の幅方向に並列にかつ隣接して配置することができる。
【0075】
第1点火用イニシエータ117と第2点火用イニシエータ140は、イニシエータカラー143を介してボス145に取り付けられており、ボス145は、接合部位146においてインフレータハウジング102に溶接等により固着されている。
【0076】
図1と、図1の部分拡大図である図4に示すとおり、伝火室ハウジング111の一端側は、半径方向に押し広げられたスカート部133を有しており、スカート部133内にブースターカップ116が挿入されている。そして、ボス145と一体となった環状突起部131により、スカート部133の周囲が外側からかしめられ、環状突起部131の内表面131aとスカート部133の外表面133aとが互いに面接触することで接触面は密着されている。
【0077】
ハイブリッドインフレータ100の作動時に伝火室ハウジング111に対して矢印方向(長さ方向)への大きな力が加えられたとき、スカート部133も矢印方向に移動しようとして、その外表面133aが環状突起部の内表面131aに押し付けられ、即ちスカート部の外表面133aに対して、環状突起部の内表面131aにより矢印方向(長さ方向)への力に抗する力が加えられるため、接着面の密着性がより高められる。よって、伝火室110で生じたブースターガスが第1点火用イニシエータ117側にリークすることが防止される。
【0078】
次に、図4とは別の実施形態によるブースターガスのリーク防止構造を図5に基づいて説明する。図5に示すとおり、伝火室ハウジング111の一端側が半径方向外側に折り曲げられて折曲部133が形成されており、ブースターカップ116が挿入されている。そして、ボス145と一体となった環状突起部131により、折曲部133の周囲が外側からかしめられ、環状突起部131の内表面131aと折曲部133の外表面133aとが互いに面接触することで接触面は密着されている。そして、図5に示す実施形態においても、図4と同様の作用により、伝火室110で生じたブースターガスが第1点火用イニシエータ117側にリークすることが防止される。
【0079】
伝火室110の延長上にはアダプター170が連結され、伝火室110とアダプター170とを連通する開口部には、O−リング172を介し、伝火室110とアダプター170の両方にまたがって、作動時において主破裂板178を破壊するための図示した形状の発射体175が取り付けられている。この発射体175の先端部は、アダプター170の内部空間176内に位置しており、前記内部空間176とインフレータハウジング102の内部空間103とは、アダプター170のハウジング105の内側面に対向する面に設けられた複数のガス流入孔166のみによって連通されている。ハウジング105の内側面とアダプター170の外側面とによりガス流路105aが形成されているので、内部空間103の加圧媒質は、作動時において必ずガス流路105aを通ってガス流入孔166に流入することになる。
【0080】
ガス発生器ハウジング105の第1ガス発生室120と第2ガス発生室130が存在しない部分の壁面には、内部空間103と連通する予備連通孔155が設けられている。この予備連通孔155は、加圧媒質及び燃焼ガスをハイブリッドインフレータ100の外部に放出するための予備的経路となるものである。
【0081】
インフレータハウジング102の一端側にはディフューザ180が連結されており、ディフューザ180は、接合部位181において溶接により固着されている。ディフューザ180の発射体175に対向する端部側には、作動前におけるディフューザポート182への加圧媒質の移動経路を遮断する主閉鎖手段としての主破裂板178が取り付けられている。よって、作動前においては、この主破裂板178により、インフレータハウジング102の内部空間103とガス流入空間150とは完全に分離遮断されているので、加圧媒質の移動は阻止される。
【0082】
ディフューザ180の他端側には、エアバッグに加圧媒質を送り込むための複数のディフューザポート182、微粒子を取り除くためのディフューザスクリーン186が設けられ、外表面側にはエアバッグモジュールと接続するためのスタッドボルト190が固着されている。
【0083】
ハイブリッドインフレータ100において、上記した各構成要素は、いずれも中心軸(図1中の一点鎖線)に対して、幅方向に対称となるように配置されていることが望ましいが、一部構成要素又は全ての構成要素が前記の中心軸に対して偏心して配置されていてもよい。
【0084】
本発明のハイブリッドインフレータにおいては、以下に示すように第1ガス発生室と第2ガス発生室の配置関係を適宜変更することができる。
【0085】
例えば、インフレータハウジング102内の両端に第1ガス発生室120と第2ガス発生室130を対向するように配置することができる。この場合、加圧媒質は第1ガス発生室120と第2ガス発生室130の間の空間部に充填する。
【0086】
また例えば、インフレータハウジング102内において、伝火室110の周囲に第1ガス発生室120(又は第2ガス発生室130)を配置し、更に第1ガス発生室120の周囲に第2ガス発生室130(又は第1ガス発生室120)を配置することができる。
【0087】
次に、図6に基づいてシングル型のハイブリッドインフレータ100を説明する。シングル型のハイブリッドインフレータは、ガス発生室が1つ(図1の第1ガス発生室に相当する)で、それに対応して点火手段が1つであるほかは、図1で示すデュアル型のハイブリッドインフレータ100と同一構造で同一の作用をなすものである。図6中、図1と同一番号は同一の意味を示すものであるが、リテーナー126は図1とは異なる形状のものを使用している。
【0088】
本発明のエアバッグシステムは、衝撃センサ及びコントロールユニットからなる作動信号出力手段と、モジュールケース内にハイブリッドインフレータ100とエアバッグが収容されたモジュールケースとを備えたものである。ハイブリッドインフレータ100は、第1点火用イニシエータ117と第2点火用イニシエータ140側において作動信号出力手段(衝撃センサ及びコントロールユニット)に接続し、エアバッグを取り付けたモジュールケース内には、スタッドボルト190をねじ込むことにより接続固定する。そして、かかる構成のエアバッグシステムにおいて、作動信号出力手段における作動信号出力条件を適宜設定することにより、衝撃の程度に応じてガス発生量を調整し、エアバッグの膨張速度を調整することができる。
【0089】
次に、図1〜図4を参照しながら、ハイブリッドインフレータ100の動作を説明する。
【0090】
インフレータハウジング102内に高圧充填された加圧媒質は、ハイブリッドインフレータ100の作動前において、それぞれ第1連通孔125及び第2連通孔135で連通された第1ガス発生室120及び第2ガス発生室130に流入し、更に伝火孔118を経て伝火室110にも流入しており、それらを高圧でかつ等圧に保持している。また、発射体175は、同圧に保持された内部空間176と伝火室110にまたがって取り付けられているので、誤作動が防止される。
【0091】
車両の衝突時、作動信号出力手段により、第1点火用イニシエータ117が作動点火し、第1破裂板119を破ってブースター剤112を着火させ、高温のブースターガスを発生させる。
【0092】
ブースターガスの発生により伝火室110の内圧が高まると、その圧力によって押圧された発射体175が移動し、鋭利な先端部分で主破裂板178を破裂させる。このとき、一部のブースターガスは、主破裂板178の破裂によってガス流入空間150に流入する。なお、スカート部133と環状突起部131とが作動時の圧力に抗するように面接触しているため、ブースターガスが第1点火用イニシエータ117側にリークすることがない。
【0093】
ブースターガスの大部分は、伝火孔118から第1ガス発生室120内に流入し、第1ガス発生剤124を着火燃焼させて、所定量(第1ガス発生剤124の充填量に応じた量)の高温燃焼ガスを発生させる。このとき、伝火孔118と第1連通孔125の一部が長さ方向に正対しないように配置され、全部が幅方向に正対しないように配置されているので、第1ガス発生剤124が均一に燃焼される。また、第1ガス発生室120内は加圧媒質が流入して高圧に保持されているので第1ガス発生剤124の燃焼は安定している。なお、第1リテーナー126の作用により、第1ガス発生剤124の燃焼時に第2ガス発生剤134が着火燃焼することはない。更に、第1ガス発生室120の第1連通孔125と第2ガス発生室130の第2連通孔135との配置状態も、第1ガス発生剤124の燃焼により第2ガス発生剤134が着火燃焼しないように作用する。
【0094】
その後、第1ガス発生室120で発生した燃焼ガスは、第1連通孔125を通って内部空間103に流入し、この燃焼ガスによって押圧された加圧媒質は、破裂した主破裂板178を経てガス流入空間150内に流入する。このようにしてガス流入空間150内に流入した加圧媒質は、更にディフューザスクリーン186を経て、ディフューザポート182から噴射され、エアバッグモジュールに取り付けられたエアバッグを膨張させる。
【0095】
更に、第1点火用イニシエータ134の作動と同時に又は僅かに遅れて(約10〜40ms)、作動信号出力手段により第2点火用イニシエータ140が作動点火し、第2破裂板139を破って第2ガス発生剤134を着火燃焼させ、所定量(第2ガス発生剤134の充填量に応じた量)の高温燃焼ガスを発生させる。このとき、第2ガス発生室130内は加圧媒質が流入して高圧に保持されているので第2ガス発生剤134の燃焼は安定している。
【0096】
また、図1に示すように、第2点火用イニシエータ140が第2連通孔135と離れて半径方向に異なる向きに配置されているので、第2ガス発生室130内の第2ガス発生剤134は均等に燃焼される。例えば、第2連通孔135が第2点火用イニシエータ140に近い位置に配置されているとすると、その付近の第2ガス発生剤134は円滑に燃焼するが、前記第2連通孔135から離れた位置にある第2ガス発生剤134は燃焼しにくい場合がある。
【0097】
第2ガス発生剤134の燃焼により生じた高温燃焼ガスは、第2連通孔135から内部空間103に流入して圧力を高め、押圧された残部の加圧媒質は、破裂した主破裂板178を経てガス流入空間150内に流入し、ディフューザポート182から噴射され、更にエアバッグを膨張させる。
【0098】
なお、ガス発生器ハウジング105は、ボス145に嵌め込まれて取り付けられているので、第1ガス発生剤124及び第2ガス発生剤134の燃焼による圧力の上昇によって、ボス145とは反対側の長さ方向に移動して、先端部106がインフレータハウジング102に衝突する恐れがある。このようなガス発生器ハウジング105の衝突が生じた場合、内部空間103からガス流路105a、ガス流入孔166への移動経路が遮断されてしまい、加圧媒質及び燃焼ガスの外部への流出経路が遮断されてしまう。しかし、予備連通孔155が設けられているため、前記のようなガス発生器ハウジング105の衝突が生じた場合には、予備連通孔155がガス流入孔166と長さ方向及び/又は幅方向に正対するように位置するため、ガス流路105a、ガス流入孔166への移動経路が確保される。
【0099】
このように上記したハイブリッドインフレータは、2段階で燃焼ガスを発生させることによって、第1ガス発生室120の作用により、車両の衝突時におけるエアバッグ膨張動作の立ち遅れを防止するとともに、第2ガス発生室130の作用により、インフレータハウジング102内の加圧媒質を完全に排出して、安全上十分な程度にまでエアバッグを瞬時に膨張させることができる。
【0100】
また、二つのガス発生室を有しているので、第1ガス発生室120のみから燃焼ガスを発生させたり、第1及び第2ガス発生室120、130から同時に燃焼ガスを発生させたり、第1ガス発生室120と第2ガス発生室130における燃焼ガス発生時間を所望間隔に適宜調整するような実施形態にも対応することができる。
【0101】
【発明の効果】
本発明のデュアル型ハイブリッドインフレータは、伝火孔と第1連通孔の配置状態、第1及び第2リテーナーの構造及び配置、予備連通孔の存在、伝火室ハウジングの取り付け方法等に特徴を有するものであるため、これらの作用によって作動時における誤作動が防止されるものであり、シングル型ハイブリッドインフレータでも同様の作用がなされる。よって、エアバッグシステムに適用した場合には、確実かつ迅速にエアバッグを膨張させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のデュアル型ハイブリッドインフレータの一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のハイブリッドインフレータの第1ガス発生室部分での幅方向への断面図である。
【図3】図3(a)は図1で用いたリテーナーの斜視図であり、図3(b)は図1で用いたリテーナーの断面図である。
【図4】図1のハイブリッドインフレータの部分断面図である。
【図5】図4の別実施形態の断面図である。
【図6】本発明のシングル型ハイブリッドインフレータの一実施形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
100 ハイブリッドインフレータ
102 インフレータハウジング
105 ガス発生器ハウジング
110 伝火室
111 伝火室ハウジング
118 伝火孔
120 第1ガス発生室
124 第1ガス発生剤
125 第1連通孔
126、136 第1、第2リテーナー
130 第2ガス発生室
134 第2ガス発生剤
135 第2連通孔
155 第3連通孔
Claims (9)
- 筒状の耐圧性容器からなるインフレータハウジング(102)と、インフレータハウジング(102)内に収容されたガス発生器(108)と、ガス発生器(108)に接続された点火手段を備えた点火手段室(114)とを有し、インフレータハウジング内(103)に不活性ガスを含む加圧媒質が充填された、エアバッグを備えた車両の膨張式安全システムのためのハイブリッドインフレータ(100)であって、
インフレータハウジング(102)の一端側にボス(145)が接続され、他端側にディフューザ(180)が連結されており、
ガス発生器(108)がガス発生器ハウジング(105)で外殻を構成されており、ガス発生器ハウジング(105)内に、1つの点火手段の長さ方向延長上に設けられた筒状の伝火室ハウジング(111)内に形成された伝火室(110)と、伝火室(110)の周囲に形成された、インフレータハウジング(102)の長さ方向に直列にかつ隣接して配置された、それぞれガス発生手段が収容された第1ガス発生室(120)と第2ガス発生室(130)を有しており、
第1ガス発生室と(120)第2ガス発生室(130)が、ディフューザ(180)側に配置された第1リテーナー(126)と、第1ガス発生室(120)と第2ガス発生室(130)の間に配置された第2リテーナー(136)によって、それぞれの長さ方向への間隔が調整されており、
第1リテーナ(126)及び第2リテーナー(136)が、一端面が閉塞され他端面が開口された大口径筒状物(201)と、大口径筒状物(201)と一体にその内側にかつ開口部方向に突出して形成された、両端面が開口された小口径筒状物(202)と、大口径筒状物(201)と小口径筒状物(202)の間に設けられた、前記大口径筒状物(201)の閉塞端面と一体に形成され、開口部方向に突出された環状物(203)との組合せからなるものであり、
伝火室ハウジング(111)は、伝火室(110)と第1ガス発生室(120)内とを連通させる、長さ方向に間隔をおいて配置された複数の伝火孔(118)を有し、第1ガス発生室(120)と第2ガス発生室(130)は、それぞれインフレータハウジング(102)内と連通する複数の第1連通孔(125)と第2連通孔(135)を有しており、
複数の伝火孔(118)の一部と第1連通孔(125)の一部が、長さ方向に正対しないように配置されているハイブリッドインフレータ。 - 複数の伝火孔の一部と複数の第1連通孔の一部が、ハイブリッドインフレータの長さ方向に正対しないで、かつ幅方向に正対しないように配置されているものである請求項1記載のハイブリッドインフレータ。
- 複数の伝火孔と複数の第1連通孔の一端から他端までの間隔と、ガス発生室又は第1ガス発生室の長さ方向への一端から他端までの間隔が近似している請求項1又は2記載のハイブリッドインフレータ。
- 第1リテーナ及び第2リテーナーがが、大口径筒状物の側壁の高さが最も高く、環状物の高さが最も低いものである請求項1〜3のいずれか1記載のハイブリッドインフレータ。
- 第1リテーナーが、閉塞端面側が第1ガス発生室側になるように配置され、第2リテーナーが、開口部側が第1ガス発生室側になるように配置されている請求項1〜4のいずれか1記載のハイブリッドインフレータ。
- 筒状の耐圧性容器からなるインフレータハウジング(102)と、インフレータハウジング(102)内に収容されたガス発生器(108)と、ガス発生器(108)に接続された点火手段を備えた点火手段室(114)とを有し、インフレータハウジング内(103)に不活性ガスを含む加圧媒質が充填された、エアバッグを備えた車両の膨張式安全システムのためのハイブリッドインフレータ(100)であって、
インフレータハウジング(102)の一端側にボス(145)が接続され、他端側にディフューザ(180)が連結されており、
ガス発生器(108)が、一端側がボスに嵌め込まれたガス発生器ハウジング(105)で外殻を構成されており、ガス発生器ハウジング(105)内に、1つの点火手段の長さ方向延長上に設けられた筒状の伝火室ハウジング(111)内に形成された伝火室(110)と、伝火室(110)の周囲に形成された、インフレータハウジング(102)の長さ方向に直列にかつ隣接して配置された、それぞれガス発生手段が収容された第1ガス発生室(120)と第2ガス発生室(130)を有しており、
伝火室ハウジング(111)は、伝火室(110)と第1ガス発生室(120)内とを連通させる、長さ方向に間隔をおいて配置された複数の伝火孔(118)を有し、第1ガス発生室(120)と第2ガス発生室(130)は、それぞれインフレータハウジング(102)内と連通する複数の第1連通孔(125)と第2連通孔(135)を有しており、
ガス発生器ハウジング(105)内の伝火室(110)の延長上にはアダプター(170)が連結され、アダプター(170)の内部空間(176)とインフレータハウジング(102)の内部空間(103)とは、アダプター(170)のガス発生器ハウジング(105)の内側面に対向する面に設けられた複数のガス流入孔(166)のみによって連通され、ガス発生器ハウジング(105)の内側面とアダプター(170)の外側面とによりガス流路(105a)が形成されており、
ガス発生器ハウジング(105)の第1ガス発生室(120)と第2ガス発生室(130)が存在しない部分の壁面には、内部空間(103)と連通する予備連通孔(155)が設けられており、
予備連通孔(155)が、
作動時において、ボス(145)に嵌め込まれているガス発生器ハウジング(105)が、第1ガス発生剤(124)及び第2ガス発生剤(134)の燃焼による圧力の上昇によって、ボス(145)とは反対側の長さ方向に移動して、先端部(106)がインフレータハウジング(102)に衝突し、内部空間(103)からガス流路(105a)、ガス流入孔(166)への移動経路が遮断されたとき、ガス流入孔(166)と正対するように位置することで前記移動経路を確保できるものである、ハイブリッドインフレータ。 - 筒状の耐圧性容器からなるインフレータハウジング(102)と、インフレータハウジング(102)内に収容されたガス発生器(108)と、ガス発生器(108)に接続された点火手段を備えた点火手段室(115)とを有し、インフレータハウジング内(103)に不活性ガスを含む加圧媒質が充填された、エアバッグを備えた車両の膨張式安全システムのためのハイブリッドインフレータ(100)であって、
インフレータハウジング(102)の一端側にボス(145)が接続され、他端側にディフューザ(180)が連結されており、
ガス発生器(108)が、一端側がボスに嵌め込まれたガス発生器ハウジング(105)で外殻を構成されており、ガス発生器ハウジング(105)内に、1つの点火手段の長さ方向延長上に設けられた筒状の伝火室ハウジング(111)内に形成された伝火室(110)と、伝火室(110)の周囲に形成された、ガス発生手段が収容されたガス発生室(120)を有しており、
伝火室ハウジング(111)は、伝火室(110)とガス発生室(120)内とを連通させる、長さ方向に間隔をおいて配置された複数の伝火孔(118)を有し、ガス発生室(120)は、インフレータハウジング(102)内と連通する複数の連通孔(125)を有しており、
ガス発生器ハウジング(105)内の伝火室(110)の延長上にはアダプター(170)が連結され、アダプター(170)の内部空間(176)とインフレータハウジング(102)の内部空間(103)とは、アダプター(170)のガス発生器ハウジング(105)の内側面に対向する面に設けられた複数のガス流入孔(166)のみによって連通され、ハウジング(105)の内側面とアダプター(170)の外側面とによりガス流路(105a)が形成されており、
ガス発生器ハウジング(105)のガス発生室(120)が存在しない部分の壁面には、内部空間(103)と連通する予備連通孔(155)が設けられており、
前記予備連通孔(155)が、作動時において、ボス(145)に嵌め込まれているガス発生器ハウジング(105)が、ガス発生剤(124)の燃焼による圧力の上昇によって、ボス(145)とは反対側の長さ方向に移動して、先端部(106)がインフレータハウジング(102)に衝突し、内部空間(103)からガス流路(105a)、ガス流入孔(166)への移動経路が遮断されたとき、ガス流入孔(166)と正対するように位置することで前記移動経路を確保できるものである、ハイブリッドインフレータ。 - 予備連通孔が、加圧媒質及び燃焼ガスをハイブリッドインフレータ外部に放出するための予備的経路となる請求項6又は7記載のハイブリッドインフレータ。
- 衝撃センサ及びコントロールユニットからなる作動信号出力手段と、ケース内に請求項1〜8のいずれか1記載のハイブリッドインフレータとエアバッグが収容されたモジュールケースとを備えたエアバッグシステム。
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