JP3968625B2 - ホスホン酸含有ポリアゾール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、力学特性、耐薬品性などにおいてきわめて優れた特性を示すポリアゾール系ポリマーの特性を損なうことなく、高分子電解質膜等として利用できるイオン性基含有ポリマーとなるホスホン酸含有ポリアゾールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液体電解質のかわりに高分子固体電解質をイオン伝導体として用いる電気化学的装置の例として、水電解槽や燃料電池を上げることができる。これらに用いられる高分子膜は、カチオン交換膜としてプロトン導電率とともに化学的、熱的、電気化学的および力学的に十分安定なものでなくてはならない。このため、長期にわたり使用できるものとしては、主に米デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」を代表例とするパーフルオロカーボンスルホン酸膜が使用されてきた。しかしながら、100℃を越える条件で運転しようとすると、膜の含水率が急激に落ちるほか、膜の軟化も顕著となる。このため、将来が期待されるメタノールを燃料とする燃料電池においては、膜内のメタノール透過による性能低下がおこり、十分な性能を発揮することはできない。また、現在主に検討されている水素を燃料として80℃付近で運転する燃料電池においても、膜のコストが高すぎることが燃料電池技術の確立の障害として指摘されている。
【0003】
このような欠点を克服するため、芳香族環含有ポリマーにスルホン酸基を導入した高分子電解質膜が種々検討されている。例えば、ポリアリールエーテルスルホンをスルホン化したもの(Journal of Membrane Science, 83, 211(1993))、ポリエーテルエーテルケトンをスルホン化したもの(特開平6−93114)、スルホン化ポリスチレン等である。しかしながら、芳香環上に導入されたスルホン酸基は酸または熱により脱スルホン酸反応が起こりやすく、燃料電池用電解質膜として使用するには耐久性が十分であるとは言えない。
【0004】
一方、スルホン酸基よりは耐熱性に優れると考えられるホスホン酸含有の芳香族ポリマーについて、高分子電解質の視点から着目したものはあまりみられない。わずかな例として、USP5,498,784号において4,4‘−(2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン)ビス(2−アミノフェノール)からなるポリベンズオキサゾールにおいて、ジカルボン酸成分の5%〜50%を3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸とするポリマーが報告されているが、溶解性の良さと複合材料としての可能性に着目しているが、電池用途の高分子電解質としては考慮されることはなかった。実際、このポリマーはアルコール溶解性が特徴であり、メタノールを燃料とする燃料電池用の電解質膜と使用することに適さないことは明白である。また、イオン伝導性も低い値しか示さない。他に、特開平11−286545号では、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸を始めとする含リンポリアミド共重合体が報告されているが、これもその耐熱性に着目した性質しか調べられていない。このポリマーは燃料電池として使用される酸性化条件では、加水分解が起こり電解質膜として使用することはできない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、これまで高分子電解質として検討されてきたスルホン酸基にかわり、より耐熱性が高いことが期待されるホスホン酸基をポリマー骨格自体の耐熱性が高いポリマーに導入することにより、耐溶剤性、耐久安定性、機械特性に優れたイオン伝導性高分子電解質となりうる新規な高分子材料を得ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ホスホン酸を含有する非フッ素系ポリアゾール類において、優れた耐熱性、耐溶剤性、耐久安定性、機械特性を持つイオン伝導性高分子電解質を得るに至った。
【0007】
すなわち本発明は、平均分子量が1,000から1,000,000の間にあり、(式1)で示される繰り返し単位を含み、繰り返し単位が複数の場合ランダムおよび/または交互的に結合していることを特徴とするホスホン酸基を含有する新規な非フッ素系ポリアゾールである。また、本発明はこれらの化合物を主成分とすることを特徴とする成形物であり、繊維、フィルム、シート状物などに加工することができ、特に膜にすることにより、特に効果的な性能が発揮される。
【化2】
(但し、(式1)において、Rはアゾール環を形成できる4価の芳香族基であり、4,6−ジヒドロキシメタフェニレンジアミン、および3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホンいずれか一つ以上から選ばれる芳香族ジアミンジオール、芳香族テトラミンから誘導される4価の芳香族基である。R’は二価のフェニル基を示し、R’のすべてまたは一部にホスホン酸基を有している。)
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明でいうホスホン酸含有非フッ素系ポリアゾールとはホスホン酸基を含有する芳香族系のポリオキサゾール類、ポリチアゾール類、ポリイミダゾール類およびそれらが混在する組成物や共重合体をさす。一般的には下記式のような繰り返し単位構造で示すことができる。
【0009】
【化1】
(但し、一般式1において、Rはアゾール環を形成できる4価の芳香族基を示し、XはO、S、またはNHを表す。R‘は二価の芳香族基、脂肪族基または脂環族基を示し、R’のすべてまたは一部にホスホン酸基を有している。R、R‘はいずれも単環であっても、複数の芳香環の結合体、あるいは縮合環であってもよく、ホスホン酸以外の安定な置換基を有していても良い。また、R、R’の芳香環中にN,S,O等が存在するヘテロ環構造を有していてもかまわない。ただし、R、R‘中にフッ素原子が含まれることはない)
【0010】
また、一般式1とともに下記式で示すような繰り返し単位を含んでいても良い。
【化2】
(ここでXはO、S、またはNHを表し、R“はアゾール環を形成できる三価の芳香族基を示す。ただし、R“中にフッ素原子が含まれることはない)
【0011】
上記一般式1で示す本発明のホスホン酸含有ポリアゾールを合成する経路は特には限定されないが、通常は式中Rで示すアゾール環を形成できる4価の芳香族基単位を形成する芳香族ジアミンジオール、芳香族ジアミンジチオール、芳香族テトラミンおよびそれらの誘導体から選ばれる化合物と、R‘で示す二価基を形成するジカルボン酸およびその誘導体から選ばれる化合物の反応により合成することができる。この際、ジカルボン酸の中にホスホン酸を含有するジカルボン酸を使用することで、得られるポリアゾール中にホスホン酸基を導入することができる。
【0012】
芳香族ジアミンジオール、芳香族ジアミンジチオール、芳香族テトラミンの具体例としては、2,5−ジヒドロキシパラフェニレンジアミン、4,6−ジヒドロキシメタフェニレンジアミン、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール、4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジチオール、2,5−ジアミノ−3,6−ジメチル−1,4−ベンゼンジチオール、1,2,4,6−テトラアミノベンゼン、3,3‘−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジアミノ−4,4‘−ジフェニルベンゼンジオール、3,3‘−ジジメルカプトベンジジン、3,3’−ジアミノ−4,4‘−ジフェニルベンゼンジチオール、3,3‘−ジアミノベンジジン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニルフェニル)エーテル、3,3’,4,4‘−テトラアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニルフェニル)スルホン、3,3’,4,4‘−テトラアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェノキシ)ベンゼン、ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェノキシ)ベンゼン、ビス(3,4,−ジアミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられるがこれらに限定されることはない。これらの誘導体の例としては、塩酸、硫酸、リン酸などの酸との塩などをあげることができる。これらの化合物は、同時に複数使用することもできる。これらの芳香族ジアミンジオール、芳香族ジアミンジチオール、芳香族テトラミンは、必要に応じて塩化すず(II)や亜リン酸化合物など公知の酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0013】
ホスホン酸含有ジカルボン酸の具体例としては、例えば、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ビスホスホノテレフタル酸、などのホスホン酸含有ジカルボン酸及びこれらの誘導体を挙げることができる。ホスホン酸含有ジカルボン酸の構造はこれらに限定されることはないが、ここに示したようなフェニルホスホン酸型のものが好ましい。ホスホン酸含有ジカルボン酸はそれら単独だけでなく、ホスホン酸を含有しないジカルボン酸とともに共重合の形で導入することができる。ホスホン酸含有ジカルボン酸とともに使用できるジカルボン酸例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ターフェニルジカルボン酸等ポリエステル原料として報告されている一般的なジカルボン酸を使用することができ、ここで例示したものに限定されるものではない。ホスホン酸基を含有するジカルボン酸の純度は特に制限されるものではないが、97%以上が好ましく、98%以上がより好ましい。ホスホン酸基を含有するジカルボン酸を原料として重合されたポリアゾールは、ホスホン酸基を含有しないジカルボン酸を用いた場合に比べて、重合度が低くなる傾向が見られるため、ホスホン酸基を含有するジカルボン酸はできるだけ純度が高いものを用いることが好ましい。ホスホン酸含有ジカルボン酸とともにホスホン酸を含有しないジカルボン酸を使用する場合、ホスホン酸の効果を明確にするために、ホスホン酸含有ジカルボン酸は全ジカルボン酸中の20モル%以上であることが好ましいが、きわだった効果を引き出すために50モル%以上であることがさらに好ましい。
【0014】
上記一般式2で示すポリアゾール単位を導入する経路は特には限定されないが、通常は式中Rで示すアゾール環を形成できる三価の芳香族基単位を形成するオルト位にアミノ基を2個持つ芳香族カルボン酸、オルト位の関係でアミノ基とヒドロキシル基を持つ芳香族カルボン酸、オルト位の関係でアミノ基とメルカプト基を持つ芳香族カルボン酸およびそれらの誘導体から選ばれる化合物の重合により得ることができる。
【0015】
これらのホスホン酸含有ポリアゾールを合成する手法は、特には限定されないが、J.F.Wolfe, Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, 2nd Ed., Vol.11, P.601(1988)に記載されるようなポリリン酸を溶媒とする脱水、環化重合により合成することができる。また、ポリリン酸のかわりにメタンスルホン酸/五酸化リン混合溶媒系を用いた同様の機構による重合を適用することもできる。他に、適当な有機溶媒中や混合モノマー融体の反応でポリアミド構造などの前駆体ポリマーとしておき、その後の適当な熱処理などによる環化反応で目的のポリアゾール構造に変換する方法なども使用することができる。熱安定性の高いポリマーを合成するには、一般によく使用されるポリリン酸を用いた重合が好ましい。しかしながら、従来報告されているような長時間をかけた重合では、ホスホン酸含有モノマーを含む系では、得られたポリマーの熱安定性が低下してしまう恐れがある。このため、本発明では、重合時間は個々のモノマーの組み合わせにより最適な時間があるので一概には規定できないが、重合時間を効果的に短くすることが好ましい。このことにより、ホスホン酸基量が多いポリマーも熱安定性の高い状態で得ることができる。これらのホスホン酸基含有ポリアゾールの分子量は特に限定されるものではないが、1,000〜1,000,000であることが好ましい。低すぎると、水への溶解など成形体から脱落してしまう恐れがある。また、繰り返し単位が複数の場合主としてランダムおよび/または交互的に結合していることで、高分子電解質膜として安定した性能を示す特徴を持つ。
【0016】
本発明のホスホン酸基含有ポリアゾールは、重合溶液又は単離したポリマーから押し出し、紡糸、圧延、キャストなど任意の方法で繊維やフィルムに成形することができる。中でも適当な溶媒に溶解した溶液から成形することが好ましい。溶解する溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミドなど非プロトン極性溶媒や、ポリリン酸、メタンスルホン酸、硫酸、トリフルオロ酢酸などの強酸から適切なものを選ぶことができるがこれらに限定されるものではない。これらの溶媒は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。また、溶解性を向上させる手段として、臭化リチウム、塩化リチウム、塩化アルミニウムなどのルイス酸を有機溶媒に添加したものを溶媒としてもよい。溶液中のポリマー濃度は0.1〜30重量%の範囲であることが好ましい。低すぎると成形性が悪化し、高すぎると加工性が悪化する。
【0017】
溶液から成形体を得る方法は公知の方法を用いることができる。例えば加熱、減圧乾燥、ポリマーを溶解する溶媒と混和できるポリマー非溶媒への浸漬などによって、溶媒を除去しホスホン酸基含有ポリアゾールの成形体を得ることができる。溶媒が有機溶媒の場合は、加熱又は減圧乾燥で溶媒を留去させることが好ましい。溶媒が強酸の場合には、水、メタノール、アセトンなどに浸漬することが好ましい。この際、必要に応じて他のポリマーと複合された形で繊維やフィルムに成形することもできる。溶解性挙動が類似するポリベンズアゾール系ポリマーと組み合わせると、良好な成形をするのに都合がよい。
【0018】
本発明のホスホン酸基含有ポリアゾールを主成分とする膜を成形する好ましい方法は、溶液からのキャストである。キャストした溶液から前記のように溶媒を除去してホスホン酸基含有ポリアゾールの膜を得ることができる。溶媒の除去は、乾燥することが膜の均一性からは好ましい。また、ポリマーや溶媒の分解や変質をさけるため、減圧下でできるだけ低い温度で乾燥することが好ましい。キャストする基板には、ガラス板やテフロン板などを用いることができる。溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。キャストする際の溶液の厚みは特に制限されないが、10〜1000μmであることが好ましい。薄すぎると膜としての形態を保てなくなり、厚すぎると不均一な膜ができやすくなる。より好ましくは100〜500μmである。溶液のキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にして溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。キャストした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどしてポリマーの凝固速度を調整することができる。本発明の膜は目的に応じて任意の膜厚にすることができるが、イオン伝導性の面からはできるだけ薄いことが好ましい。具体的には200μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、20μm以下であることが最も好ましい。
【0019】
本発明のホスホン酸基含有ポリアゾールポリマーはイオン伝導性に優れているため、フィルム、膜状にして燃料電池などのイオン交換膜として使用するのに適している。さらに、本発明のポリマー構造を主成分にすることにより、本発明のイオン交換膜と電極との接合体を作製するときのバインダー樹脂等の塗料として利用することもできる。
【0020】
また、本発明による膜は、耐久性、耐溶剤性、機械的特性に優れている。例えば、耐久性としては熱重量測定における熱分解温度が350℃以上を示すほか、耐溶剤性では酸性水溶液中での膨潤も少なく、機械的特性では膜厚の薄い状態でも膜の取り扱いで破断などの心配がないものである。
【0021】
【実施例】
以下本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
ポリマー対数粘度:溶媒として硫酸もしくはメタンスルホン酸を用いてオストワルド粘度計を用いて測定した。硫酸を用いる場合は、0.5g/dlの硫酸溶液について30℃で測定した。また、メタンスルホン酸を用いる場合は、0.05g/dlのメタンスルホン酸溶液について25℃で測定した。
IR測定:分光器にBiorad社FTS-40、顕微鏡にBiorad社UMA-300Aを用いた顕微透過法により測定した。
【0022】
実施例1
3,3’,4,4‘−テトラアミノジフェニルスルホン(略号:TAS)1.830g(6.575x10-3mole)、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸(略号:DCP、純度98%)1.618g(6.575x10-3mole)、ポリリン酸(五酸化リン含量75%)20.48g、五酸化リン16.41gを重合容器に量り取る。窒素を流し、オイルバス上ゆっくり撹拌しながら100℃まで昇温 する。100℃で1時間保持した後、150℃に昇温 して1時間、200℃に昇温 して4時間重合した。重合終了後放冷し、水を加えて重合物を取り出し、家庭用ミキサーを用いてpH試験紙中性になるまで水洗を繰り返した。得られたポリマーは80℃で終夜減圧乾燥した。硫酸を用いて測定したポリマーの対数粘度は、1.11を示した。ポリマーのIRスペクトルを図1に示す。
ポリマー300mgとメタンスルホン酸2.5mlを室温で撹拌し、均一溶液とした。ホットプレート上でガラス板上に約250mm厚に流延し、1時間室温で放置した後、水中にガラス板を浸した。水を時々交換し、数日水浸漬を続ける。フィルムを取り出し、周りを固定して収縮を押さえながら風乾した。最後に減圧乾燥機により80℃終夜乾燥した。得られたフィルムをTHF溶媒中で煮沸処理したが、形態を保持した。家庭用ミキサーを用いてpH試験紙中性になるまで水洗を繰り返した。
【0023】
実施例2
DCPのかわりにDCPとテレフタル酸(略号:TPA)の混合比を変えて、合計で6.575x10-3moleになるようにして仕込む以外は、実施例1と同様にして重合を行った。得られたポリマー400mgとNMP4mlを撹拌しながら、オイルバス上で170℃に加熱して溶解させた。ホットプレート上で、ガラス板上に約250μm厚に流延し、NMPを蒸発させた。フィルムをガラス板からはが
し、80℃終夜減圧乾燥し、その後アセトン浸漬することで溶媒を除いたフィルムを作製した。得られたフィルムをTHF中で煮沸処理することで耐溶剤性を評価した。各種測定結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
比較例1
TASとDCPを用いるかわりに、4,4‘−(2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオリメチル)エチリデン)ビス(2−アミノフェノール)2.408g(6.575x10-3mole)、4,4’−ジカルボキシビフェニルエーテル1.528g(5.917x10-3mole)、DCP0.162g(6.582x10-4mole)を使い実施例1と同様にポリマーを合成した。得られたポリマーの対数粘度は、1.24であった。実施例2と同様にフィルムを作製し、THFで煮沸処理したところ、フィルムは形態を崩した。
【0026】
実施例3
200mlガラス製セパラブルフラスコに、4,6−ジアミノレゾルシノール二塩酸塩(略号:DAR)9.063g(4.254×10-2mol)、DCP10.469g(4.254×10-2mol)、ポリリン酸(五酸化リン含量84%)43.86g、五酸化リン14.49gを秤量し、窒素気流下70℃で0.5時間、120℃で5時間、135℃で19時間、165℃で18時間、190℃で5時間の順に攪拌しながらオイルバス中で加熱すると、黄色半透明の堅いゴム状のドープが得られた。ドープはイオン交換水中に投入し、pH試験紙中性になるまで水洗を繰り返した。得られたポリマーは80℃で終夜減圧乾燥した。メタンスルホン酸によるポリマーの対数粘度は、1.46を示した。ポリマーのIRスペクトルを図2に示す。
ポリマー0.08gをメタンスルホン酸2.0mlに室温で溶解した。溶液はガラス板上に約300μmの厚みに流延し10分間そのまま放置した後、水中にガラス板を浸した。水を時々交換し、数日水浸漬を続けた。フィルムを取り出し、周りを固定して収縮を押さえながら風乾した。最後に減圧乾燥機により80℃終夜乾燥して、イオン伝導性測定用フィルムを作製した。得られたフィルムをTHF溶媒中で煮沸処理したが、形態を保持した。
【0027】
実施例4
原料としてDAR 2.876g(1.35×10-2mol)、DCP 2.215g(9.00×10-3mol)、TPA 0.748g(4.50×10-3mol)、ポリリン酸(五酸化リン含量84%)43.86g、五酸化リン16.03gを用いた他は実施例3と同様にして、イオン伝導性測定用フィルムを作成した。ポリマーの対数粘度は0.82dl/gだった。実施例3と同様に得られたフィルムをTHF溶媒中で煮沸処理したが、形態を保持した。
【0028】
実施例5
実施例1において、重合時に塩化すず(II)をTASに対して1モル%になるように加えてポリマーを得、同様に評価した。ポリマーの対数粘度は0.82dl/gだった。得られたフィルムをTHF溶媒中で煮沸処理したが、形態を保持した。
【0029】
【発明の効果】
耐久性、耐熱性、耐溶剤性に優れた、本発明のポリマーにより、燃料電池などの高分子電解質としても際立った性能を示す材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】TASとDCPから合成されたホスホン酸含有ポリベンズイミダゾールのIRスペクトル
【図2】DARとDCPから合成されたホスホン酸含有ポリベンズオキサゾールのIRスペクトル
Claims (3)
- 請求項1に記載のホスホン酸含有非フッ素系ポリアゾールからなることを特徴とする成形物。
- 請求項1に記載のホスホン酸含有非フッ素系ポリアゾールからなることを特徴とする膜。
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