JP3957364B2 - 光重合性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光重合性組成物および光重合性積層体に関し、更に詳しくは印刷回路板作成に適したアルカリ現像可能な光重合性組成物および光重合性積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、印刷回路作成用のレジストとして支持層と光重合性層からなる、いわゆるドライフィルムレジスト(以下DFRと略称)が用いられている。DFRは、一般に支持フィルム上に光重合性組成物を積層し、多くの場合、さらに該組成物上に保護用のフィルムを積層することにより調製される。ここで用いられる光重合性層としては、現像液として弱アルカリ水溶液を使用するアルカリ現像型が一般的である。
【0003】
DFRを用いてプリント回路板を作成するには、まず保護フィルムを剥離した後、ラミネーター等を用い銅張積層板等の永久回路作成用基板上にDFRを積層し、配線パターンマスクフィルム等を通し露光を行う。次に、必要に応じて支持フィルムを剥離し、現像液により未露光部分の光重合性組成物を溶解、もしくは分散除去し、基板上に硬化レジスト画像を形成させる。その後、形成されたレジスト画像をマスクとして基板の金属表面をエッチング、またはめっきによる処理を行い、次いでレジスト画像を現像液よりも強いアルカリ水溶液を用いて剥離して、プリント配線板等を形成する。特に最近は、工程の簡便さから貫通孔(スルーホール)を硬化膜で覆い、その後エッチングするいわゆるテンティング法が多用されている。ここで用いられるエッチング液としては、塩化第二銅、塩化第二鉄、銅アンモニア錯体溶液などが用いられる。
【0004】
しかしながら、従来のDFRは三層構造のロール状態で保存されるため、保存時に端面から光重合層がはみだす、いわゆるエッジフューズという現象が起こることがあり、取り扱い上好ましくない状況になることがある。また、従来のDFRにおける未露光部の光重合性層が硬いと、それを基板上にラミネートした時に密着性が悪く、凹凸の有る基板表面においては、光重合層が凹凸を埋めることができず空間を生じることがある。このような空間が生じた場合、エッチング液が基板に浸透するため、断線、欠け等の不良が生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したようなエッジフューズを改良するためには、光重合性層における結合剤の配合割合を相対的に増加させれば良いが、そうすると光重合性層の基板への追従性が低下し、硬化膜の柔軟性が低下する。一方、光重合性層の基板への追従性を良くするには、光重合性層における結合剤の配合割合を相対的に減少させれば良いが、そうするとエッジフューズの悪化、剥離時間が増加するという問題点が生じる。従ってこれら特性を同時に満足する光重合性組成物が提供されることが望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記(a)の線状重合体を含有する光重合性組成物をDFRとして用いた場合に、硬化レジストの柔軟性が良好となり、エッジフューズ性と光重合性層の基板への追従性が良好、常温での保存が6ヶ月以上可能になる等の特性が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
1.(a)カルボキシル基含有量が酸当量で100〜600であり、かつ、重量平均分子量が15万〜30万であり、単量体成分としてアクリル酸ブチルを含有する線状重合体A、及びカルボキシル基含有量が酸当量で100〜600であり、かつ、重量平均分子量が1万〜3万の線状重合体Bが混合されてなり、Bに対するAの重量比率が90/10〜50/50であるバインダー用樹脂、20〜90重量%、(b)光重合可能な不飽和化合物、5〜60重量%、(c)光重合開始剤、0.01〜30重量%を含有することを特徴とする光重合性組成物。
【0008】
2.線状重合体Bは、単量体成分としてスチレンを含有することを特徴とする上記1.記載の光重合性組成物。
3.光重合可能な不飽和化合物(b)が下記式(I)または(II)で示される化合物であることを特徴とする上記1.又は2.記載の光重合性組成物。
【0009】
【化3】
(ここでR 1 は炭素数4〜12のジイソシアナート残基、R 2 、R 3 は水素またはメチル基、n 1 、n 2 は1〜15の整数を表す。)
【0010】
【化4】
(ここでn3、n 4 、n 5 は3〜20の整数、R 4 、R 5 は水素またはメチル基を表す)
【0011】
4.支持体上に上記1.〜3.の何れか一項に記載の光重合性組成物からなる層を設けた光重合性樹脂積層体。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明に用いるバインダー用樹脂(a)を構成する線状重合体Aに含まれるカルボキシル基の量は酸当量で100〜600である必要があり、好ましくは、300〜400が好ましい。線状共重合体A中のカルボキシル基は、DFRにアルカリ水溶液に対する現像性や剥離性を与えるために必要である。酸当量が100未満では、塗工溶媒または他の組成物、例えばモノマーとの相溶性が低下し、600を超えると現像性や剥離性が低下する。
【0014】
ここで酸当量とはその中に1当量のカルボキシル基を有するポリマーの重量を言う。なお、酸当量の測定は電位差滴定法により行われる。また分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量(ポリスチレン換算)として求められる。また、線状重合体Aの分子量は15〜30万である必要があり、より好ましくは18〜25万である。線状重合体Aの分子量が30万を超えると現像性が低下し、15万未満では光重合性層の基板への追従性が悪化する。
【0015】
本発明に用いられる線状共重合体Aは、下記の2種類の単量体の中より各々一種またはそれ以上の単量体を共重合させることにより得られる。第一の単量体は、分子中に重合性不飽和基を一個有するカルボン酸または酸無水物である。そのような単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステル等が挙げられる。第二の単量体は、非酸性で、分子中に重合性不飽和基を一個有し、光重合性層の現像性、エッチング及びめっき工程での耐性、硬化膜の可とう性等の種々の特性を保持するように選ばれる。このような単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2ーエチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる。また、フェニル基を有するビニル化合物(例えばスチレン)も第二の単量体として用いることができる。
【0016】
本発明で用いる線状共重合体Aは単独で用いても追従性、密着性は良好であるが、線状共重合体Bと併用することにより、より迅速な現像処理が可能となる。また、併用する場合のA/B(重量比)は90/10〜50/50である。併用する場合の線状重合体Bの重量比率が10%以下では現像時間短縮の効果は低下し、50%以上ではエッジフューズ性が悪化する。
【0017】
本発明に用いる線状共重合体Bに含まれるカルボキシル基の量は酸当量で100〜600である必要があり、200〜400が好ましい。線状共重合体B中のカルボキシル基はDFRにアルカリ水溶液に対する現像性や剥離性を与えるために必要である。酸当量が100未満では、塗工溶媒または他の組成物、例えばモノマーとの相溶性が低下し、600を超えると現像性や剥離性が低下する。
【0018】
ここで酸当量とはその中に1当量のカルボキシル基を有するポリマーの重量を言う。なお、酸当量の測定は電位差滴定法により行われる。また分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量(ポリスチレン換算)として求められる。また、線状共重合体Bの分子量は1万〜3万である必要がある。線状共重合体Bの分子量が3万を超えると現像性が低下し、1万未満ではエッジフューズ性が著しく悪化する。
【0019】
線状共重合体Bは線状共重合体Aの場合と同様に、前記の2種類の単量体から選ばれた単量体を共重合することにより得られる。本発明の光重合性組成物に含有されるバインダー用樹脂(a)の量は20〜90重量%の範囲であり、好ましくは30〜70重量%である。バインダー用樹脂(a)の量が20重量%未満または90重量%を超えると、露光によって形成される硬化画像がレジストとしての特性(例えば、テンティング、エッチング、各種めっき工程において十分な耐性)を十分に有しない。
【0020】
本発明の光重合性組成物を構成する光重合可能な不飽和化合物(b)としては、少なく
とも二つの末端エチレン基を持つ光重合性不飽和化合物が用いられることが好ましい(以下、光重合性不飽和化合物をモノマーともいう)。この例としては、1、6ーヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1、4ーシクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、またポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2ージ(pーヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、2、2ービス(4ーメタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、及びウレタン基を含有する多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましい例としては、前記の一般式(I)または(II)で表されるものが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、その他の多官能、または単官能モノマーと併用しても良い。また、一般式(I)と(II)のモノマーを併用する系が望ましく、これらのモノマーを使用する事により、追従性が良好で柔軟、かつ強靱なテンティング膜が得られる。
【0021】
一般式(I)で表される化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートまたは、2、2、4、ートリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、一分子中にヒドロキシル基と(メタ)アクリル基を有する化合物(例えば、2ーヒドロキシプロピルアクリレート、オリゴプロピレングリコールモノメタクリレート等)とのウレタン化合物等がある。これらは公知の方法により合成できる。
【0022】
一般式(II)で表される化合物において、n3、n4、n5が3よりも小さいと当該化合物の沸点が低下して、レジストの臭気が強くなり、使用が著しく困難になる。また、n3、n4、n5が20を越えると単位重量あたりの光活性部位の濃度が低くなるため、実用的感度が得られない。一般式(II)で表される化合物は、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを反応させ、得られた生成物を適当な酸触媒の存在下でアクリル酸またはメタクリル酸によりエステル化する方法により合成することができる。
【0023】
これらのモノマーは、一種類で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。モノマーの使用量は5〜60重量%の範囲から選ばれ、5重量%未満では、感度、膜強度の点で充分ではなく、60重量%を越えるとDFRに用いた場合に保存時の光重合性層のはみ出しが著しくなるため好ましくない。本発明の光重合性組成物に用いることのできる光重合開始剤(c)としては、各種の活性光線、例えば紫外線などにより活性化され重合を開始する公知の開始剤が挙げられる。
【0024】
このような光重合開始剤としては、例えば、2ーエチルアントラキノン、オクタエチルアントラキノン、1、2ーベンズアントラキノン、2、3ーベンズアントラキノン、2ーフェニルアントラキノン、2、3ージフェニルアントラキノン、1ークロロアントラキノン、2ークロロアントラキノン、2ーメチルアントラキノン、1、4ーナフトキノン、9、10ーフェナントラキノン、2ーメチル1、4ーナフトキノン、2、3ージメチルアントラキノン、3ークロロー2ーメチルアントラキノンなどのキノン類、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン[4、4’ービス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、4、4’ービス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどの芳香族ケトン類、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾインなどのベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、2ー(οークロロフェニル)ー4、5ージフェニルイミダゾリル二量体等のビイミダゾール化合物、チオキサントン類とアルキルアミノ安息香酸の組み合わせ、例えばエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチル、2ークロルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチル、イソプロピルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチルとの組み合わせ、また、2ー(οークロロフェニル)ー4、5ージフェニルイミダゾリル二量体とミヒラーズケトンとの組み合わせ、9ーフェニルアクリジン等のアクリジン類、1ーフェニルー1、2ープロパンジオンー2ーοーベンゾイルオキシム、1ーフェニルー1、2ープロパンジオンー2ー(οーエトキシカルボニル)オキシム等のオキシムエステル類等がある。これらの開始剤の好ましい例としては、ジエチルチオキサントン、クロルチオキサントン等のチオキサントン類、ジメチルアミノ安息香酸エチル等のジアルキルアミノ安息香酸エステル類、ベンゾフェノン、4、4’ービス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4、4’ービス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2ー(οークロロフェニル)ー4、5ージフェニルイミダゾリル二量体、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0025】
本発明の光重合性組成物に含有される光重合開始剤(c)の量は、0.01重量〜30重量%であり、好ましくは、0.05重量〜10重量%である。光重合開始剤の量が30重量%を超えると光重合性組成物の活性吸収率が高くなり、光重合性樹脂積層体として用いた場合、光重合性層の底の部分の重合による硬化が不十分になる。また、光重合開始剤の量が0.01重量%未満では十分な感度がでなくなる。
【0026】
本発明の光重合性組成物の熱安定性、保存安定性を向上させるために、光重合性組成物にラジカル重合禁止剤を含有させることは好ましいことである。このようなラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tertーブチルカテコール、塩化第一銅、2、6ージ−tertーブチルーpークレゾール、2、2’ーメチレンビス(4ーエチルー6ーtertーブチルフェノール)、2、2’ーメチレンビス(4ーメチルー6ーtertーブチルフェノール)、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、ジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。
【0027】
本発明の光重合性組成物は、染料、顔料等の着色物質を含有させることもできる。このような着色物質としては、例えば、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、カルコキシドグリーンS,パラマジエンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン、ベイシックブルー20、ダイヤモンドグリーン等が挙げられる。
【0028】
また光照射により発色する発色系染料を本発明の光重合性組成物に含有させることもできる。発色系染料としては、ロイコ染料またはフルオラン染料と、ハロゲン化合物の組み合わせが挙げられる。ロイコ染料としては、例えば、トリス(4ージメチルアミノー2ーメチルフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、トリス(4ージメチルアミノー2ーメチルフェニル)メタン[ロイコマラカイトグリーン]等が挙げられる。一方ハロゲン化合物としては臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンザル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルフォン、4臭化炭素、トリス(2、3ージブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1、1、1ートリクロロー2、2ービス(p−クロロフェニル)エタン、ヘキサクロロエタン、トリアジン化合物等が挙げられる。トリアジン化合物としては、2、4、6ートリス(トリクロロメチル)ーs−トリアジン、2ー(4ーメトキシフェニル)ー4、6ービス(トリクロロメチル)ーs−トリアジンが挙げられる。
【0029】
また、このような発色系染料の中でもトリブロモメチルフェニルスルフォンとロイコ染料との組み合わせや、トリアジン化合物とロイコ染料との組み合わせが有用である。さらに、本発明の光重合性樹脂組成物に熱発色防止剤として、グリシジルエーテル化合物を少量添加しても良い。このような化合物の具体例としては、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAーPO2モル付加ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0030】
また、本発明の光重合性組成物に必要に応じて可塑剤等の添加剤を含有させることもできる。そのような添加剤としては、例えば、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類が挙げられる。本発明の光重合性樹脂積層体を作成する場合には、上記光重合性組成物を含有した光重合性層に、該光重合性層を支持する支持層を積層する。支持層の材料としては、活性光を透過する透明なものが望ましい。活性光を透過する支持層の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合体フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、セルロース誘導体フィルム、等が挙げられる。これらのフィルムが必要に応じ延伸されたものも使用可能である。画像形成性、経済性の面でフィルムの厚みは薄い方が有利であるが、強度を維持する必要から、フィルムの厚みは10〜30μmのものが一般的である。
【0031】
支持層とは反対側の光重合性層の表面に、必要に応じて保護層を積層する。支持層よりも保護層の方が光重合性層との密着力が十分小さいことがこの保護層としての重要な特性であり、これにより、保護層が容易に剥離できる。このような保護層としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。
【0032】
光重合性層の厚みは用途において異なるが、印刷回路板作製用には5〜100μm、好ましくは、5〜90μmであり、光重合性層が薄いほど解像力は向上する。また、光重合性層が厚いほど膜強度が向上する。この光重合性樹脂積層体を用いた印刷回路板の作成工程は公知の技術により行われるが、以下にその工程を簡単に述べる。
【0033】
保護層がある場合は、まず保護層を剥離した後、光重合性層を印刷回路板用基板の金属表面に加熱圧着し積層する。この時の加熱温度は一般的に40〜160℃である。次に、必要ならば支持層を剥離しマスクフィルムを通して活性光により画像露光する。次に、光重合性層上に支持フィルムがある場合には必要に応じてこれを除き、続いてアルカリ水溶液を用いて光重合性層の未露光部を現像除去する。アルカリ水溶液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を用いる。これらのアルカリ水溶液は光重合性層の特性に合わせて選択されるが、一般的に0.5〜3%の炭酸ナトリウム水溶液が用いられる。次に、現像により露出した金属面に既知のエッチング法、またはめっき法のいずれかの方法を用いて金属の画像パターンを形成する。その後、一般的に、現像で用いたアルカリ水溶液よりも更に強いアルカリ性の水溶液により硬化レジスト画像を剥離する。剥離用のアルカリ水溶液についても特に制限はないが、1%〜5%の水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの水溶液が一般的に用いられる。また、現像液や剥離液に少量の水溶性有機溶媒を加えることも可能である。
【0034】
【発明の実施の形態】
【0035】
【実施例】
(実施例1〜6、比較例1〜3)
表1に示された組成(実施例1〜6、比較例1〜3の欄)の化合物を均一に溶解した。次に、この混合溶液を厚さ20μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにバーコーターを用いて均一に塗布し、95℃の乾燥機中で4分間乾燥した。この時の光重合性層の厚さは40μmであった。光重合性層のポリエチレンテレフタレートフィルムを積層していない表面上に23μmのポリエチレンフィルムを張り合わせ積層フィルムを得た。一方、35μm圧延銅箔を積層した銅張積層板表面を湿式バフロール研磨(スリーエム社製、商品名スコッチブライト#600、2連)し、この積層フィルムのポリエチレンフィルムを剥しながら光重合性層をホットロールラミネーターにより105℃でラミネートした。
【0036】
得られた積層体にマスクフィルムを通して、超高圧水銀ランプ(オーク製作所HMW−201KB)により60mJ/cm2で光重合性層を露光した。続いてこの積層体からポリエチレンテレフタレート支持フィルムを剥離した後、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液を約60秒間スプレーし、未露光部分を溶解除去したところ良好な硬化画像を得た。
【0037】
また、本発明の光重合性組成物を用いた積層体について以下の評価を行った。
(1)エッジフューズ試験23℃、50%でロール状で保管し端面からの光重合層のしみ有無により以下のランク付けにより評価した。
○;6ヶ月以上端面からのしみ出し無しで保存可能。
【0038】
△;1ヶ月以上6ヶ月未満端面からのしみ出し無しで保存可能。
×;1ヶ月未満端面からのしみ出し無しで保存可能。
(2)最小現像時間の測定35μm圧延銅箔を積層した銅張り積層板にDFRのポリエチレンフィルムを剥がしながら光重合性層をホットロールラミネーターにより、105℃でラミネートした。続いて、この積層体のポリエチレンテレフタレート支持フィルムを剥離した後、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液をスプレーし、未露光の光重合性層が溶解する最小現像時間を測定し、その時間を最小現像時間とした。実際の現像はこの最小現像時間の1.5倍の時間で行った。
(3)追従性評価試験35μm圧延銅箔を積層した銅張り積層板に、あらかじめ市販のDFRを使って、ラミネートー露光ー現像ーエッチングーレジスト剥離を行い、ライン幅が100μmの線状の溝を作った。溝の深さは約10μmであった。
【0039】
こうして作製した溝付き基板を用い、上記と同様の方法で上記積層体をラミネートした。この積層体にマスクフィルムを通して、基板の溝に垂直になるようなラインパターン(ライン幅;125μm)を使用して、露光、現像により画像パターンを得た。さらに、50℃の塩化第二銅溶液を70秒間スプレーし、レジストの無い部分の銅をエッチングした。最後に50℃の3%水酸化ナトリウム水溶液を約80秒間スプレーして硬化レジストを剥離した。こうして作られた銅ライン上で、あらかじめ溝のあった部分が断線していない箇所を数え、その数をxとした。反対にエッチングされて断線している箇所を数え、その数をyとし、次の計算式により断線率(%)を計算し、以下の方法によりランク付けした。
【0040】
断線率(%)=100y/(x+y)
○;断線率が30%未満
△;断線率が30%以上50%未満
×;断線率が50%以上<記号説明>
P−1:メタクリル酸メチル70重量%、メタクリル酸23重量%、アクリル酸ブチル7重量%の三元共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分濃度32%、重量平均分子量8.5万)
P−2:メタクリル酸メチル70重量%、メタクリル酸23重量%、アクリル酸ブチル7重量%の三元共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分濃度24%、重量平均分子量20万)
P−3:スチレン55重量%、アクリル酸35重量%、α−メチルスチレン10重量%の三元共重合体(重量平均分子量1.5万)
M−1:トリメチロールプロパントリアクリレート
M−2:ヘキサメチレンジイソシアネートとオリゴプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製ブレンマーPP1000)との反応物
M−3:平均8モルのプロピレンオキサイドを付加したポリプロピレングリコールにエチレンオキサイドをさらに両端にそれぞれ平均3モル付加したグリコールのジメタクリレート
M−4:平均10モルのプロピレンオキサイドを付加したポリプロピレングリコールにエチレンオキサイドをさらに両端にそれぞれ平均4モル付加したグリコールのジメタクリレート
M−5:テトラエチレングリコールジメタクリレート
M−6:テトラエチレングリコールジアクリレート
A−1:ベンゾフェノン
A−2:4、4’ービス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン
A−3:2ー(οークロロフェニル)ー4、5ージフェニルイミダゾリル二量体
B−1:マラカイトグリーン
B−2:ロイコクリスタルバイオレット
B−3:トリブロモメチルフェニルスルフォン
【0041】
【表1】
【0042】
【発明の効果】
本発明の光重合性樹脂組成物を用いたDFRは、特に保存時のエッジフューズ性が小さく、基板へのラミネート時における追従性が良好で、アルカリ現像型回路板作製用DFRとして有用である。
Claims (4)
- (a)カルボキシル基含有量が酸当量で100〜600であり、かつ、重量平均分子量が15万〜30万であり、単量体成分としてアクリル酸ブチルを含有する線状重合体A、及びカルボキシル基含有量が酸当量で100〜600であり、かつ、重量平均分子量が1万〜3万の線状重合体Bが混合されてなり、Bに対するAの重量比率が90/10〜50/50であるバインダー用樹脂、20〜90重量%、(b)光重合可能な不飽和化合物、5〜60重量%、(c)光重合開始剤、0.01〜30重量%を含有することを特徴とする光重合性組成物。
- 線状重合体Bは、単量体成分としてスチレンを含有することを特徴とする請求項1記載の光重合性組成物。
- 支持体上に請求項1〜3の何れか一項に記載の光重合性組成物からなる層を設けた光重合性樹脂積層体。
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