JP3949385B2 - フタロシアニン化合物、着色組成物、インクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なフタロシアニン化合物、該化合物を含有する着色組成物、特にインクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式記録材料、感熱転写型画像記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等が盛んに利用されている。また、ディスプレーではLCDやPDPにおいて、撮影機器ではCCDなどの電子部品において、カラーフィルターが使用されている。
これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を再現あるいは記録するために、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の(染料や顔料)が使用されているが、好ましい色再現域を実現出来る吸収特性を有し、且つさまざまな使用条件に耐えうる堅牢な色素がないのが実状であり、改善が強く望まれている。
【0003】
インクジェット記録方法は、材料費が安価であること、高速記録が可能なこと、記録時の騒音が少ないこと、更にカラー記録が容易であることから、急速に普及し、更に発展しつつある。
インクジェット記録方法には、連続的に液滴を飛翔させるコンティニュアス方式と画像情報信号に応じて液滴を飛翔させるオンデマンド方式が有り、その吐出方式にはピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、あるいは静電力により液滴を吸引吐出させる方式がある。
また、インクジェット記録用インクとしては、水性インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インクが用いられる。
【0004】
このようなインクジェット記録用インクに用いられる色素に対しては、溶剤に対する溶解性あるいは分散性が良好なこと、高濃度記録が可能であること、色相が良好であること、光、熱、環境中の活性ガス(NOx、オゾン等の酸化性ガスの他SOxなど)に対して堅牢であること、水や薬品に対する堅牢性に優れていること、受像材料に対して定着性が良く滲みにくいこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性がないこと、純度が高いこと、更には、安価に入手できることが要求されている。
特に、良好なシアン色相を有し、光及び環境中の活性ガス、中でもオゾンなどの酸化性ガスに対して堅牢な色素が強く望まれている。
【0005】
インクジェット記録用水溶性インクに用いられるシアンの色素骨格としてはフタロシアニン系やトリフェニルメタン系が代表的である。
最も広範囲に報告され、利用されている代表的なフタロシアニン系色素は、以下の▲1▼〜▲6▼で分類されるフタロシアニン誘導体が挙げられる。
【0006】
▲1▼Direct Blue 86又はDirect Blue 199等の銅フタロシアニン系色素〔例えば、Cu-Pc-(SO3Na)m:m=1〜4の混合物〕
【0007】
▲2▼特開昭62−190273号、特開昭63−28690号、特開昭63−306075号、特開昭63−306076号、特開平2−131983号、特開平3−122171号、特開平3−200883号、特開平7−138511号等に記載のフタロシアニン系色素〔例えば、Cu-Pc-(SO3Na)m(SO2NH2)n:m+n=1〜4の混合物〕
【0008】
▲3▼特開昭63−210175号、特開昭63−37176号、特開昭63−304071号、特開平5−171085号、WO 00/08102号等に記載のフタロシアニン系色素〔例えば、Cu-Pc-(CO2H)m(CONR1R2)n:m+n=0〜4の数〕
【0009】
▲4▼特開昭59−30874号、特開平1−126381号、特開平1−190770号、特開平6−16982号、特開平7−82499号、特開平8−34942号、特開平8−60053号、特開平8−113745号、特開平8−310116号、特開平10−140063号、特開平10−298463号、特開平11−29729号、特開平11−320921号、EP173476A2号、EP468649A1号、EP559309A2号、EP596383A1号、DE3411476号、US6086955号、WO 99/13009号、GB2341868A号等に記載のフタロシアニン系色素〔例えば、Cu-Pc-(SO3H)m(SO2NR1R2)n:m+n=0〜4の数、且つ、m≠0〕
【0010】
▲5▼特開昭60−208365号、特開昭61−2772号、特開平6−57653号、特開平8−60052号、特開平8−295819号、特開平10−130517号、特開平11−72614号、特表平11−515047号、特表平11−515048号、EP196901A2号、WO 95/29208号、WO 98/49239号、WO 98/49240号、WO 99/50363号、WO 99/67334号等に記載のフタロシアニン系色素〔例えば、Cu-Pc-(SO3H)l(SO2NH2)m(SO2NR1R2)n:l+m+n=0〜4の数〕
【0011】
▲6▼特開昭59−22967号、特開昭61−185576号、特開平1−95093号、特開平3−195783号、EP649881A1号、WO 00/08101号、WO 00/08103号等に記載のフタロシアニン系色素〔例えば、Cu-Pc-(SO2NR1R2)n:n=1〜5の数〕
【0012】
ところで、現在一般に広く用いられているDirect Blue 86又はDirect Blue 199に代表されるフタロシアニン系色素については、一般に知られているマゼンタ色素やイエロー色素に比べ耐光性に優れるという特徴がある。
フタロシアニン系色素は酸性条件下ではグリーン味の色相であり、シアンインクには不適当である。そのためこれらの色素をシアンインクとして用いる場合は中性からアルカリ性の条件下で使用するのが最も適している。しかしながら、インクが中性からアルカリ性でも、用いる被記録材料が酸性紙である場合印刷物の色相が大きく変化する可能性がある。
【0013】
さらに、昨今環境問題として取りあげられることの多い酸化窒素ガスやオゾン等の酸化性ガスによってもグリーン味に変色及び消色し、同時に印字濃度も低下してしまう。
【0014】
一方、トリフェニルメタン系については、色相は良好であるが、耐光性、耐オゾンガス性等において非常に劣る。
【0015】
今後、使用分野が拡大して、広告等の展示物に広く使用されると、光や環境中の活性ガスに曝される場合が多くなるため、特に、良好な色相を有し、光堅牢性および環境中の活性ガス(NOx、オゾン等の酸化性ガスの他SOxなど)堅牢性に優れた色素及びインク組成物がますます強く望まれている。
しかしながら、これらの要求を高いレベルで満たすシアン色素(例えば、フタロシアニン系色素)及びシアンインクを捜し求めることは、極めて難しい。
これまで、耐オゾンガス性を付与したフタロシアニン系色素としては、特開平3−103484号、特開平4−39365号、特開2000−303009号等の各公報に開示されているが、いずれも色相と光及び酸化性ガス堅牢性を両立させるには至っていないのが現状であり、シアンインクで、まだ市場の要求を充分に満足する製品を提供するには至っていない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、
(1)三原色の色素として色再現性に優れた吸収特性を有し、且つ光,熱,湿度および環境中の活性ガスに対して十分な堅牢性を有する新規な色素を提供すること、
(2)色相と堅牢性に優れた着色画像や着色材料を与える、インクジェットなどの印刷用のインク組成物、感熱転写型画像形成材料におけるインクシート、電子写真用のトナー、LCD、PDPやCCDで用いられるカラーフィルター用着色組成物、各種繊維の染色のための染色液などの各種着色組成物を提供すること、
(3)特に、該フタロシアニン系色素誘導体の使用により良好な色相を有し、光及び環境中の活性ガス、特にオゾンガスに対して堅牢性の高い画像を形成することができるインクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、良好な色相と光堅牢性及びガス堅牢性(特に、オゾンガス)の高いフタロシアニン系色素誘導体を詳細に検討したところ、従来知られていない特定の色素構造(特定の置換基種を特定の置換位置に特定の置換基数導入)を有するの下記一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば下記構成の着色組成物、インクジェット記録用インク、インクジェット記録方法、及びフタロシアニン化合物が提供されて、本発明の上記目的が達成される。
【0018】
1.下記一般式(I’)で表されるフタロシアニン化合物を含有することを特徴とする着色組成物。
【0019】
【化4】
【0020】
一般式(I’)中;
X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立に、−SO−Z及び/または−SO2−Zを表す。ここで、Zは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基を表す。但し、前記−SO 2 −Zにおいて、Zが置換ヘテロ環基を表し、前記ヘテロ環基のヘテロ環がピペラジン環及びピペリジン環である場合にピペラジン環及びピペリジン環のN位でSO 2 と結合する場合を除く。
Y1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基またはイオン性親水性基を表す。これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。
但し、X1、X2、X3、X4、Y1、Y2、Y3及びY4のうち少なくとも1つは、イオン性親水性基を置換基として有する。
a1〜a4、b1〜b4は、それぞれX1〜X4、Y1〜Y4の置換基数を表し、a1〜a4及びb1〜b4は、それぞれ独立に、0〜4の整数である。但し、a1〜a4すべてが同時に0になることはない。
Mは、水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、または金属ハロゲン化物を表す。
2. 前記一般式(I’)において、Zが置換アルキル基、置換アリール基、または置換ヘテロ環であることを特徴とする上記1に記載の着色組成物。但し、前記−SO 2 −Zにおいて、Zが置換ヘテロ環基を表し、前記ヘテロ環基のヘテロ環がピペラジン環及びピペリジン環である場合にピペラジン環及びピペリジン環のN位でSO 2 と結合する場合を除く。
3.前記一般式(I’)において、Zが置換アルキル基、または置換ヘテロ環であることを特徴とする上記1または2に記載の着色組成物。但し、前記−SO 2 −Zにおいて、Zが置換ヘテロ環基を表し、前記ヘテロ環基のヘテロ環がピペラジン環及びピペリジン環である場合にピペラジン環及びピペリジン環のN位でSO 2 と結合する場合を除く。
【0021】
4.下記一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
【化16】
一般式(I)中;X 1 、X 2 、X 3 及びX 4 は、それぞれ独立に、−SO−Z及び/または−SO 2 −Zを表す。ここで、Zは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基を表す。Y 1 、Y 2 、Y 3 及びY 4 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基またはイオン性親水性基を表す。これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。但し、X 1 、X 2 、X 3 、X 4 、Y 1 、Y 2 、Y 3 及びY 4 のうち少なくとも1つは、イオン性親水性基を置換基として有する。a 1 〜a 4 、b 1 〜b 4 は、それぞれX 1 〜X 4 、Y 1 〜Y 4 の置換基数を表し、a 1 〜a 4 及びb 1 〜b 4 は、それぞれ独立に、0〜4の整数である。但し、a 1 〜a 4 すべてが同時に0になることはない。Mは、水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、または金属ハロゲン化物を表す。
【0022】
5.一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物が、下記一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物であることを特徴とする上記4に記載のインクジェット記録用インク。
【0023】
【化5】
【0024】
一般式(II)中;
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基またはイオン性親水性基を表す。これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。
Z1、Z2、Z3、及びZ4は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基を表す。但し、Z1、Z2、Z3、及びZ4のうち少なくとも1つは、イオン性親水性基を置換基として有する。
l、m、n、p、q1、q2、q3、q4は、それぞれ独立に、1または2の整数をす。
Mは、一般式(I)の場合と同義である。
【0025】
6.一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物が、下記一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物であることを特徴とする上記5に記載のインクジェット記録用インク。
【0026】
【化6】
【0027】
一般式(III)中、Z1、Z2、Z3、Z4、l、m、n、p及びMは、一般式(II)の場合と同義である。
【0028】
7.一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物において、イオン性親水性基が、カルボキシル基、スルホ基または4級アンモニウム基であることを特徴とする上記6に記載のインクジェット記録用インク。
8. 前記一般式(I)、(II)、または(III)において、Z、Z1、Z2、Z3、Z4がそれぞれ独立に、置換アルキル基、置換アリール基、または置換ヘテロ環であることを特徴とする上記4〜7のいずれかに記載のインクジェット記録用インク。
9. 前記一般式(I)、(II)、または(III)において、Z、Z1、Z2、Z3、Z4がそれぞれ独立に、置換アルキル基、または置換ヘテロ環であることを特徴とする上記4〜8のいずれかに記載のインクジェット記録用インク。
【0029】
10.支持体上に白色無機顔料粒子を含有するインク受像層を有する受像材料上に、上記4〜9のいずれかに記載のインクジェット記録用インクを用いて画像形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
【0030】
11.上記6に記載される一般式(III)で表されることを特徴とするフタロシアニン化合物。但し、上記7に記載のZ 1 、Z 2 、Z 3 、Z 4 が置換ヘテロ環基を表し、前記ヘテロ環基のヘテロ環がピペラジン環及びピペリジン環である場合にピペラジン環及びピペリジン環のN位でSO 2 と結合する場合を除く。
12.前記一般式(III)において、Z1、Z2、Z3、Z4がそれぞれ独立に、置換アルキル基、置換アリール基、または置換ヘテロ環であることを特徴とする上記11に記載のフタロシアニン化合物。但し、前記置換ヘテロ環基のヘテロ環がピペラジン環及びピペリジン環である場合にピペラジン環及びピペリジン環のN位でSO 2 と結合する場合を除く。
13.前記一般式(III)において、Z1、Z2、Z3、Z4がそれぞれ独立に、置換アルキル基、または置換ヘテロ環であることを特徴とする上記11または12に記載のフタロシアニン化合物。但し、前記置換ヘテロ環基のヘテロ環がピペラジン環及びピペリジン環である場合にピペラジン環及びピペリジン環のN位でSO 2 と結合する場合を除く。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[フタロシアニン化合物]
まず、本発明の一般式(I)及び(I’)で表されるフタロシアニン化合物について詳細に説明する。
【0032】
上記一般式(I)及び(I’)において、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立に、−SO−Z及び/または−SO2−Zを表し、好ましくは−SO2−Zである。
ここで、Zは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基を表し、特に置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基が好ましく、その中でも置換のアルキル基、置換のアリール基、置換のヘテロ環基が最も好ましい。
【0033】
上記一般式(I)及び(I’)において、Y1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基またはイオン性親水性基を表す。各々の基は、さらに置換基を有していてもよい。
【0034】
なかでも、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基、アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基およびアルコキシカルボニル基が好ましく、特に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0035】
X1、X2、X3、X4、Y1、Y2、Y3及びY4の少なくとも1つは、イオン性親水性基を置換基として有する。
置換基としてのイオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、および4級アンモニウム基等が含まれる。該イオン性親水性基としては、カルボキシル基およびスルホ基が好ましく、特にスルホ基が好ましい。
カルボキシル基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルグアニジウムイオン)が含まれる。
【0036】
Y1、Y2、Y3、Y4及びZが有することができる置換基としては、下記の置換基を挙げることができる。
【0037】
ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子);炭素数1〜12の直鎖状または分岐状鎖アルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12の直鎖状または分岐鎖状アルキニル基、側鎖を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、側鎖を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルケニル基(上記基の具体的例として、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、2−メタンスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、シクロペンチル):アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル);ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル);アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メタンスルホニルエトキシ);アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルバモイルフェノキシ、3−メトキシカルバモイル);アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド);アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ);アニリノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ;ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド);スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ);アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ);アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ);アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ);スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、オクタデカン);カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル);スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル);スルホニル基(例えば、メタンスルホニル、オクタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル);アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル);ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ);アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ);アシルオキシ基(例えば、アセトキシ);カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ);シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ);アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ);イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミ);ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ);スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル);ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル);アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル);アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル);イオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、および4級アンモニウム基);その他シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基等が挙げられる。
【0038】
a1〜a4、b1〜b4は、それぞれX1〜X4、Y1〜Y4の置換基数を表す。そしてa1〜a4及びb1〜b4は、それぞれ独立に、0〜4の整数である。但し、a1〜a4すべてが同時に0になることはない。
【0039】
好ましくは、a1、b1が、a1+b1=4の関係を満たすそれぞれ独立の0〜4の整数を表し、特に好ましいのは、a1が1または2であり、b1が3または2である組み合わせであり、その中でもa1が1であり、b1が3である組み合わせが最も好ましい。
【0040】
好ましくは、a2、b2が、a2+b2=4の関係を満たすそれぞれ独立の0〜4の整数を表し、特に好ましいのは、a2が1または2であり、b2が3または2である組み合わせであり、その中でもa2が1であり、b2が3である組み合わせが最も好ましい。
【0041】
好ましくは、a3、b3が、a3+b3=4の関係を満たすそれぞれ独立の0〜4の整数を表し、特に好ましいのは、a3が1または2であり、b3が3または2である組み合わせであり、その中でもa3が1であり、b3が3である組み合わせが最も好ましい。
【0042】
好ましくは、a4、b4が、a4+b4=4の関係を満たすそれぞれ独立の0〜4の整数を表し、特に好ましいのは、a4が1または2であり、b4が3または2である組み合わせであり、その中でもa4が1であり、b4が3である組み合わせが最も好ましい。
【0043】
Mは、水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、または金属ハロゲン化物を表す。
Mとして好ましいものは、水素原子の他に、金属元素として、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。なかでも特に、Cu、Ni、Zn、Al等が好ましく、Cuが最も好ましい。
金属酸化物としては、VO、GeO等が好ましく挙げられる。 また、金属水酸化物としては、Si(OH)2、Cr(OH)2、Sn(OH)2等が好ましく挙げられる。さらに、金属ハロゲン化物としては、AlCl、SiCl2、VCl、VCl2、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl等が挙げられる。
【0044】
また、一般式(I)及び(I’)で表されるフタロシアニン化合物は、L(2価の連結基)を介してPc(フタロシアニン環)が2量体(例えば、Pc−M−L-M−Pc)または3量体を形成してもよく、そのとき複数個存在するMは、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。
【0045】
Lで表される2価の連結基は、オキシ基−O−、チオ基−S−、カルボニル基−CO−、スルホニル基−SO2−、イミノ基−NH−、メチレン基−CH2−、及びこれらを組み合わせて形成される基が好ましい。
【0046】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
【0047】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアルキル基には、置換基を有するアルキル基および無置換のアルキル基が含まれる。アルキル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜12のアルキル基が好ましい。置換基の例には、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基、およびハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。アルキル基の例には、メチル、エチル、ブチル、イソプロピル、t−ブチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、シアノエチル、トリフルオロメチル、3−スルホプロピルおよび4−スルホブチルが含まれる。
【0048】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すシクロアルキル基には、置換基を有するシクロアルキル基および無置換のシクロアルキル基が含まれる。シクロアルキル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が5〜12のシクロアルキル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。シクロアルキル基の例には、シクロヘキシル基が含まれる。
【0049】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアルケニル基には、置換基を有するアルケニル基および無置換のアルケニル基が含まれる。アルケニル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が2〜12のアルケニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基等が含まれる。
【0050】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアラルキル基としては、置換基を有するアラルキル基および無置換のアラルキル基が含まれる。アラルキル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が7〜12のアラルキル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アラルキル基の例には、ベンジル基、および2−フェネチル基が含まれる。
【0051】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアリール基には、置換基を有するアリール基および無置換のアリール基が含まれる。アリール基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が6〜12のアリール基が好ましい。置換基の例には、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルキルアミノ基およびイオン性親水性基が含まれる。アリール基の例には、フェニル、p−トリル、p−メトキシフェニル、o−クロロフェニルおよびm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニルが含まれる。
【0052】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すヘテロ環基には、置換基を有するヘテロ環基および無置換のヘテロ環基が含まれる。ヘテロ環基としては、5員または6員環のヘテロ環基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。へテロ環基の例には、2−ピリジル基、2−チエニル基および2−フリル基が含まれる。
【0053】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアルキルアミノ基には、置換基を有するアルキルアミノ基および無置換のアルキルアミノ基が含まれる。アルキルアミノ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数1〜6のアルキルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルキルアミノ基の例には、メチルアミノ基およびジエチルアミノ基が含まれる。
【0054】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアルコキシ基には、置換基を有するアルコキシ基および無置換のアルコキシ基が含まれる。置換基を除いたときのアルコキシ基としては、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基が好ましい。置換基の例には、アルコキシ基、ヒドロキシル基およびイオン性親水性基が含まれる。アルコキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基および3−カルボキシプロポキシ基が含まれる。
【0055】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアリールオキシ基には、置換基を有するアリールオキシ基および無置換のアリールオキシ基が含まれる。アリールオキシ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が6〜12のアリールオキシ基が好ましい。置換基の例には、アルコキシ基およびイオン性親水性基が含まれる。アリールオキシ基の例には、フェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基およびo−メトキシフェノキシ基が含まれる。
【0056】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアミド基には、置換基を有するアミド基および無置換のアミド基が含まれる。アミド基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が2〜12のアミド基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アミド基の例には、アセトアミド基、プロピオンアミド基、ベンズアミド基および3,5−ジスルホベンズアミド基が含まれる。
【0057】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアリールアミノ基には、置換基を有するアリールアミノ基および無置換のアリールアミノ基が含まれる。アリールアミノ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が6〜12のアリールアミノ基が好ましい。置換基の例としては、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。アリールアミノ基の例としては、アニリノ基および2−クロロアニリノ基が含まれる。
【0058】
Y1、Y2、Y3及びY4表すウレイド基には、置換基を有するウレイド基および無置換のウレイド基が含まれる。ウレイド基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜12のウレイド基が好ましい。置換基の例には、アルキル基およびアリール基が含まれる。ウレイド基の例には、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基および3−フェニルウレイド基が含まれる。
【0059】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すスルファモイルアミノ基には、置換基を有するスルファモイルアミノ基および無置換のスルファモイルアミノ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。スルファモイルアミノ基の例には、N, N−ジプロピルスルファモイルアミノ基が含まれる。
【0060】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアルキルチオ基には、置換基を有するアルキルチオ基および無置換のアルキルチオ基が含まれる。アルキルチオ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜12のアルキルチオ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基およびエチルチオ基が含まれる。
【0061】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアリールチオ基には、置換基を有するアリールチオ基および無置換のアリールチオ基が含まれる。アリールチオ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が6〜12のアリールチオ基が好ましい。置換基の例には、アルキル基、およびイオン性親水性基が含まれる。アリールチオ基の例には、フェニルチオ基およびp−トリルチオ基が含まれる。
【0062】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアルコキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアルコキシカルボニルアミノ基および無置換のアルコキシカルボニルアミノ基が含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、エトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0063】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すスルホンアミド基には、置換基を有するスルホンアミド基および無置換のスルホンアミド基が含まれる。スルホンアミド基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜12のスルホンアミド基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、および3−カルボキシベンゼンスルホンアミドが含まれる。
【0064】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すカルバモイル基には、置換基を有するカルバモイル基および無置換のカルバモイル基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基およびジメチルカルバモイル基が含まれる。
【0065】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すスルファモイル基には、置換基を有するスルファモイル基および無置換のスルファモイル基が含まれる。置換基の例には、アルキル基、アリ−ル基が含まれる。スルファモイル基の例には、ジメチルスルファモイル基およびジ−(2−ヒドロキシエチル)スルファモイル基、フェニルスルファモイル基が含まれる。
【0066】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアルコキシカルボニル基には、置換基を有するアルコキシカルボニル基および無置換のアルコキシカルボニル基が含まれる。アルコキシカルボニル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が2〜12のアルコキシカルボニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基が含まれる。
【0067】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すヘテロ環オキシ基には、置換基を有するヘテロ環オキシ基および無置換のヘテロ環オキシ基が含まれる。ヘテロ環オキシ基としては、5員または6員環のヘテロ環を有するヘテロ環オキシ基が好ましい。置換基の例には、ヒドロキシル基、およびイオン性親水性基が含まれる。ヘテロ環オキシ基の例には、2−テトラヒドロピラニルオキシ基が含まれる。
【0068】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアゾ基には、置換基を有するアゾ基および無置換のアゾ基が含まれる。アゾ基の例には、p−ニトロフェニルアゾ基が含まれる。
【0069】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアシルオキシ基には、置換基を有するアシルオキシ基および無置換のアシルオキシ基が含まれる。アシルオキシ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数1〜12のアシルオキシ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アシルオキシ基の例には、アセトキシ基およびベンゾイルオキシ基が含まれる。
【0070】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すカルバモイルオキシ基には、置換基を有するカルバモイルオキシ基および無置換のカルバモイルオキシ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。カルバモイルオキシ基の例には、N−メチルカルバモイルオキシ基が含まれる。
【0071】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すシリルオキシ基には、置換基を有するシリルオキシ基および無置換のシリルオキシ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。シリルオキシ基の例には、トリメチルシリルオキシ基が含まれる。
【0072】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアリールオキシカルボニル基には、置換基を有するアリールオキシカルボニル基および無置換のアリールオキシカルボニル基が含まれる。アリールオキシカルボニル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が7〜12のアリールオキシカルボニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル基が含まれる。
【0073】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアリールオキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアリールオキシカルボニルアミノ基および無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0074】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すイミド基には、置換基を有するイミド基および無置換のイミド基が含まれる。イミド基の例には、N−フタルイミド基およびN−スクシンイミド基が含まれる。
【0075】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すヘテロ環チオ基には、置換基を有するヘテロ環チオ基および無置換のヘテロ環チオ基が含まれる。ヘテロ環チオ基としては、5員または6員環のヘテロ環を有することが好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。へテロ環チオ基の例には、2−ピリジルチオ基が含まれる。
【0076】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すホスホリル基には、置換基を有するホスホリル基および無置換のホスホリル基が含まれる。ホスホリル基の例には、フェノキシホスホリル基およびフェニルホスホリル基が含まれる。
【0077】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すアシル基には、置換基を有するアシル基および無置換のアシル基が含まれる。アシル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜12のアシル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アシル基の例には、アセチル基およびベンゾイル基が含まれる。
【0078】
Y1、Y2、Y3及びY4が表すイオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、および4級アンモニウム基等が含まれる。イオン性親水性基としては、カルボキシル基およびスルホ基が好ましく、特にスルホ基が好ましい。カルボキシル基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルグアニジウムイオン)が含まれる。
【0079】
Zが表すアルキル基には、置換基を有するアルキル基および無置換のアルキル基が含まれる。アルキル基は、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜12のアルキル基が好ましい。置換基の例には、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基、およびハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。アルキル基の例には、メチル、エチル、ブチル、n-プロピル、イソプロピル、t−ブチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、シアノエチル、トリフルオロメチル、3−スルホプロピルおよび4−スルホブチルが含まれる。
【0080】
Zが表すシクロアルキル基には、置換基を有するシクロアルキル基および無置換のシクロアルキル基が含まれる。シクロアルキル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が5〜12のシクロアルキル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。シクロアルキル基の例には、シクロヘキシル基が含まれる。
【0081】
Zが表すアルケニル基には、置換基を有するアルケニル基および無置換のアルケニル基が含まれる。アルケニル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が2〜12のアルケニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基等が含まれる。
【0082】
Zが表すアラルキル基としては、置換基を有するアラルキル基および無置換のアラルキル基が含まれる。アラルキル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が7〜12のアラルキル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アラルキル基の例には、ベンジル基、および2−フェネチル基が含まれる。
【0083】
Zが表すアリール基には、置換基を有するアリール基および無置換のアリール基が含まれる。アリール基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が6〜12のアリール基が好ましい。アリール基の例には、フェニル、p−トリル、p−メトキシフェニル、o−クロロフェニルおよびm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニル、m−スルホフェニルが含まれる。置換基の例には、アルキル基(R−)、アルコキシ基(RO―)、アルキルアミノ基(RNH−、RR'N−)、カルバモイル基(―CONHR)、スルファモイル基(―SO2NHR)、スルホニルアミノ基(―NHSO2R)、ハロゲン原子、イオン性親水性基が含まれる(なお前記R、R'はアルキル基、フェニル基を表し、さらにこれらはイオン性親水性基を有してもよい)。
【0084】
Zが表すヘテロ環基は、置換基を有するヘテロ環基および無置換のヘテロ環基が含まれ、さらに他の環と縮合環を形成していてもよい。ヘテロ環基としては、5員または6員環のヘテロ環基が好ましい。ヘテロ環基は、さらに他の環と縮合環を形成していてもよい。
へテロ環基の例には、ヘテロ環の置換位置を限定せずに挙げると、それぞれ独立に、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピラゾール、ベンゾピラゾール、トリアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンゾイソチアゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、チアジアゾール、ピロール、ベンゾピロール、インドール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チオフェン、ベンゾチオフェン、フラン、ベンゾフラン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノクサリン、トリアジン等が含まれる。
置換基の例には、アルキル基(R−)、アルコキシ基(RO―)、アルキルアミノ基(RNH−、RR'N−)、カルバモイル基(―CONHR)、スルファモイル基(―SO2NHR)、スルホニルアミノ基(―NHSO2R)、ハロゲン原子、イオン性親水性基が含まれる(なお前記R、R'はアルキル基、フェニル基を表し、さらにこれらはイオン性親水性基を有してもよい)。
【0085】
上記一般式(I)及び(I’)で表されるフタロシアニン化合物として特に好ましい組み合わせは、
(イ)X1、X2、X3及びX4が、−SO2−Zである。
(ロ)上記Zが、それぞれ独立に、置換アルキル基、置換アリール基、置換ヘテロ環基であり、特に置換アルキル基、置換ヘテロ環基であることが好ましく、その中でも置換アルキル基であることが最も好ましい。但し、一般式(I’)の場合には、前記−SO 2 −Zにおいて、Zが置換ヘテロ環基を表し、前記ヘテロ環基のヘテロ環がピペラジン環及びピペリジン環である場合にピペラジン環及びピペリジン環のN位でSO 2 と結合する場合を除く。
(ハ)X1、X2、X3、X4のうち少なくとも1つが、イオン性親水性基を置換基として含有し、該置換基が、スルホ基、カルボキシル基、または4級アンモニウム基であることが好ましく、更に好ましくはカルボキシル基またはスルホ基であることであり、特に好ましくはスルホ基であることである。
(ニ)Y1、Y2、Y3及びY4が、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、またはスルホニル基であり、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、またはスルホニル基であり、その中でも水素原子またはスルホニル基であるのが最も好ましい。
(ホ)a1〜a4が、それぞれ独立に1または2の整数であり、特に1が好ましく、b1〜b4が、それぞれ独立に、3または2の整数であり、特に3が好ましい。
(ヘ)Mが、Cu、Ni、Zn、またはAlであり、なかでも特にCuであることが最も好ましい。
【0086】
前記一般式(I)及び(I’)で表されるフタロシアニン化合物一分子中、イオン性親水性基を少なくとも4個以上有するものが好ましく、特に、イオン性親水性基がスルホ基であるのが好ましい、その中でもスルホ基を少なくとも4個以上有するものが最も好ましい。
【0087】
一般式(I)及び(I’)で表されるフタロシアニン化合物は、分子内に少なくとも1つ以上のイオン性親水性基を有しているので、水性媒体中に対する溶解性または分散性が良好である。」
【0088】
なお、一般式(I)及び(I’)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0089】
一般式(I)及び(I’)で表されるフタロシアニン化合物の中でも、上記一般式(II)で表される構造のフタロシアニン化合物がさらに好ましい。以下に、本発明の一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物について詳しく述べる。
【0090】
上記一般式(II)において、Z1、Z2、Z3及びZ4は、それぞれ独立に、前記一般式(I)中のZと各々同義であり、好ましい例も同様である。
【0091】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、それぞれ独立に、前記一般式(I)中のY1、Y2、Y3及びY4と各々同義であり、好ましい例も同様である。
【0092】
l、m、n、pは、それぞれ独立に、4≦l+m+n+p≦8を満たす1または2の整数を表し、好ましくは4≦l+m+n+p≦6を満たすことであり、最も好ましくは、それぞれが1(l=m=n=p=1)である場合である。
【0093】
q1、q2、q3、q4は、それぞれ独立に、1または2の整数であり、特にq1=q2=q3=q4=2であることが好ましい。
【0094】
Mは、前記一般式(I)中のMと各々同義であり、好ましい例も同様である。
【0095】
上記一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物の中でも、特に好ましい置換基の組み合わせは、以下の通りである。
(イ)R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8が、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、またはスルホニル基であり、特に水素原子、ハロゲン原子、またはスルホニル基であり、その中でも水素原子またはスルホニル基であるのが最も好ましい。
(ロ)Z1、Z2、Z3及びZ4は、それぞれ独立に、置換アルキル基、置換アリール基、または置換ヘテロ環基が好ましく、特に置換アルキル基または置換ヘテロ環基が好ましく、その中でも置換アルキル基が最も好ましい。
(ハ)l、m、n、pは、それぞれ独立に、1または2の整数であり、特に好ましいのは、l=m=n=p=1である。
(ニ)q1、q2、q3、q4は、それぞれ独立に、1または2の整数を表し、特にはq1=q2=q3=q4=2が好ましい。
(ホ)Mは、Cu、Ni、Zn、Alが好ましく、なかでもCuが最も好ましい。
【0096】
なお、一般式(II)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0097】
一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物の中でも、上記一般式(III)で表される構造のフタロシアニン化合物がさらに好ましい。以下に、本発明の一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物について詳しく述べる。
【0098】
Z1、Z2、Z3、Z4、l、m、n、p及びMは、一般式(II)中のZ1、Z2、Z3、Z4、l、m、n、p及びMと各々同義であり、好ましい例も同様である。
【0099】
前記一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物の中でも、特に好ましい置換基の組み合わせは、前記一般式(II)中の特に好ましい置換基の組み合わせと同様である。
【0100】
なお、一般式(III)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0101】
以下に本発明の一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物について詳しく述べる。尚、一般式(I)、(II)、(III)で表される化合物は、従来知られていない特定の構造の(特に、フタロシアニン母核中に特定の置換基を、特定の位置に、特定の数導入した)新規な化合物であり、インクジェット用水溶性染料及び該水溶性染料合成中間体として有用であり、また、有用な化学・医薬・農薬有機化合物中間体となり得る化合物である。
【0102】
一般に、インクジェット記録用インク組成物として種々のフタロシアニン誘導体を使用することが知られている。下記一般式(IV)で表されるフタロシアニン誘導体は、その合成時において不可避的に置換基Rn(n=1〜16)の置換位置(R1:1位〜R16:16位とここで定義する)異性体を含む場合があるが、これら置換位置異性体は互いに区別することなく同一誘導体として見なしている場合が多い。また、Rの置換基に異性体が含まれる場合も、これらを区別することなく、同一のフタロシアニン誘導体として見なしている場合が多い。
【0103】
【化7】
【0104】
本明細書中で定義するフタロシアニン化合物において構造が異なる場合とは、一般式(IV)で説明すると、置換基Rn(n=1〜16)の構成原子種が異なる場合、置換基Rnの数が異なる場合または置換基Rnの位置が異なる場合の何れかである。
【0105】
本発明において、上記一般式(I’)、(I)〜(IV)で表されるフタロシアニン化合物の構造が異なる(特に、置換位置)誘導体を以下の三種類に分類して定義する。
【0106】
(1)β-位置換型:(2及びまたは3位、6及びまたは7位、10及びまたは11位、14及びまたは15位に特定の置換基を有するフタロシアニン化合物)
(2)α-位置換型:(1及びまたは4位、5及びまたは8位、9及びまたは12位、13及びまたは16位に特定の置換基を有するフタロシアニン化合物)
(3)α,β-位混合置換型:(1〜16位に規則性なく、特定の置換基を有するフタロシアニン化合物)
【0107】
本明細書中において、構造が異なる(特に、置換位置)フタロシアニン化合物の誘導体を説明する場合、上記(1)β-位置換型、(2)α-位置換型、(3)α,β-位混合置換型を使用する。
【0108】
本発明に用いられるフタロシアニン誘導体は、例えば白井−小林共著、(株)アイピーシー発行「フタロシアニン−化学と機能−」(P.1〜62)、C.C.Leznoff−A.B.P.Lever共著、VCH発行‘Phthalocyanines−Properties and Applications’(P.1〜54)等に記載、引用もしくはこれらに類似の方法を組み合わせて合成することができる。
【0109】
本発明の一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物は、例えば下記一般式(V)で表されるフタロニトリル誘導体及び/または下記一般式(VI)で表されるジイミノイソインドリン誘導体と下記一般式(VII)で表される金属誘導体を反応させることにより合成される。なお、一般式(V)式及び/または一般式(VI)中、tは一般式(III)中のl、m、n、pと同義である。
【0110】
【化8】
【0111】
一般式(VII):M−(Y)d
一般式(VII)中、Mは上記一般式(I)〜(III)のMと同一であり、Yはハロゲン原子、酢酸陰イオン、アセチルアセトネート、酸素などの1価又は2価の配位子を示し、dは1〜4の整数である。
一般式(VII)で示される金属誘導体としては、Al、Si、Ti、V、Mn,Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ru、Rh、Pd、In、Sn、Pt、Pbのハロゲン化物、カルボン酸誘導体、硫酸塩、硝酸塩、カルボニル化合物、酸化物、錯体等が挙げられる。具体例としては塩化銅、臭化銅、沃化銅、塩化ニッケル、臭化ニッケル、酢酸ニッケル、塩化コバルト、臭化コバルト、酢酸コバルト、塩化鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、沃化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化バナジウム、オキシ三塩化バナジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、塩化アルミニウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、アセチルアセトンマンガン、塩化マンガン、塩化鉛、酢酸鉛、塩化インジウム、塩化チタン、塩化スズ等が挙げられる。
【0112】
金属誘導体と一般式(V)で示されるフタロニトリル化合物の使用量は、モル比で1:3〜1:6が好ましい。
また、金属誘導体と一般式(VI)で示されるジイミノイソインドリン誘導体の使用量は、モル比で1:3〜1:6が好ましい。
【0113】
反応は、通常、溶媒の存在下に行われる。溶媒としては、沸点80℃以上、好ましくは130℃以上の有機溶媒が用いられる。例えばn−アミルアルコール、n−キサノール、シクロヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、スルフォラン、ニトロベンゼン、キノリン、尿素等がある。溶媒の使用量はフタロニトリル化合物の1〜100質量倍、好ましくは5〜20質量倍である。
【0114】
反応において、触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)或いはモリブデン酸アンモニウムを添加しても良い。添加量はフタロニトリル化合物及び/又はジイミノイソインドリン誘導体1モルに対して、0.1〜10倍モル好ましくは0.5〜2倍モルである。
【0115】
反応温度は80〜300℃、好ましくは100〜250℃の反応温度の範囲にて行なうのが好ましく、130〜230℃の反応温度の範囲にて行なうのが特に好ましい。80℃以下では反応速度が極端に遅い。300℃以上ではフタロシアニン化合物の分解が起こる可能性がある。
【0116】
反応時間は2〜20時間、好ましくは5〜15時間の反応時間の範囲にて行なうのが好ましく、5〜10時間の反応時間の範囲にて行なうのが特に好ましい。2時間以下では未反応原料が多く存在し、20時間以上ではフタロシアニン化合物の分解が起こる可能性がある。
【0117】
これらの反応によって得られる生成物は通常の有機合成反応の後処理方法に従って処理した後、精製してあるいは精製せずに製品として用いられる。
即ち、例えば、反応系から遊離したものを精製せずに、あるいは再結晶やカラムクロマトグラフィー(例えば、ゲルパーメーションクロマトグラフィ(SEPHADEXTMLH−20:Pharmacia製)等にて精製する操作を単独、あるいは組み合わせて行ない、製品として提供することができる。
また、反応終了後、反応溶媒を留去して、あるいは留去せずに水、または氷に投入し、中和してあるいは中和せずに遊離したものを精製せずに、あるいは再結晶、カラムクロマトグラフィー等にて精製する操作を単独に、あるいは組み合わせて行なった後、製品として提供することができる。
また、反応終了後、反応溶媒を留去して、あるいは留去せずに水、または氷に投入し、中和してあるいは中和せずに、有機溶媒/水溶液にて抽出したものを精製せずに、あるいは晶析、カラムクロマトグラフィーにて精製する操作を単独あるいは組み合わせて行なった後、製品として提供することができる。
【0118】
かくして得られる、前記一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物(例えば:l=m=n=p=1の場合)は、通常、R1(SO2−Z1)、R2(SO2−Z2)、R3(SO2−Z3)、R4(SO2−Z4)の各置換位置における異性体である下記一般式(a)−1〜(a)−4で表される化合物の混合物となっている。
【0119】
【化9】
【0120】
すなわち、上記一般式(a)−1〜(a)−4で表される化合物は、β-位置換型(2及びまたは3位、6及びまたは7位、10及びまたは11位、14及びまたは15位に特定の置換基を有するフタロシアニン化合物)である。
【0121】
本発明の一般式(I)及び(I’)で表されるフタロシアニン化合物は、上記α,β-位混合置換型にあたり、一般式(II)および(III)の化合物は上記β-位置換型(2及びまたは3位、6及びまたは7位、10及びまたは11位、14及びまたは15位に特定の置換基を有するフタロシアニン化合物)にあたる。α,β-位混合置換型化合物は置換基の位置、数の異なる化合物の混合物であり、β-位置換型化合物は置換基の位置の異なる化合物の混合物である。本発明ではいずれの置換型においても、例えば一般式(I)及び(I’)中の−SO-Z及び/または−SO2-Zで表される、特定の置換基が堅牢性の向上に非常に重要であることが見出され、更に、特定の置換基を特定の位置(例えば、α,β-位混合置換型よりはβ-位置換型の方がより好ましい)に特定の数{例えば、フタロシアニン化合物1分子あたり4個以上8個以下でかつ一般式(IV)で表されるフタロシアニン母核で説明すると、(2位及びまたは3位)、(6位及びまたは7位)、(10位及びまたは11位)、(14位及びまたは15位)の各組に少なくとも特定の置換基を1個以上含有する}、フタロシアニン母核に導入した誘導体が本発明の課題を解決する手段として極めて重要な構造上の特徴であることを確認した。これらの原因は詳細には不明であるが、特定の置換基による構造上の特徴によってもたらされる色相・光堅牢性・オゾンガス耐性等の向上効果は、前記先行技術から全く予想することができないものである。
【0122】
本発明のフタロシアニン化合物の具体例を、前記一般式(III)を用いて下記表1〜表7(例示化合物101〜135)及び下記化合物(例示化合物136〜137)に示すが、本発明に用いられるフタロシアニン化合物は、下記の例に限定されるものではない。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】
【0127】
【表5】
【0128】
【表6】
【0129】
【表7】
【0130】
【表8】
【0131】
【化10】
【0132】
本発明の化合物は、着色組成物、好ましくは画像形成用着色組成物として用いることができる。
本発明の化合物の用途としては、画像、特にカラー画像を形成するための画像記録材料が挙げられ、具体的には、以下に詳述するインクジェット方式記録材料を始めとして、感熱転写型画像記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等であり、好ましくはインクジェット方式記録材料、感熱転写型画像記録材料、電子写真方式を用いる記録材料であり、更に好ましくはインクジェット方式記録材料である。また、米国特許4808501号明細書、特開平6−35182号公報などに記載されているLCDやCCDなどの固体撮像素子で用いられているカラーフィルター各種繊維の染色のための染色液にも適用できる。本発明の色素は、その用途に適した溶解性、熱移動性などの物性を、置換基により調整して使用する。また、本発明の化合物は、用いられる系に応じて均一な溶解状態、乳化分散のような分散された溶解状態、固体分散状態で使用する事が出来る。
【0133】
[インクジェット記録用インク]
次に本発明のインクジェット記録用インクについて説明する。
インクジェット記録用インクは、親油性媒体や水性媒体中に前記フタロシアニン化合物を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いたインクである。
必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有される。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性染料を分散物の形で用いる場合には、染料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相または水相に添加してもよい。
【0134】
乾燥防止剤はインクジェット記録方式に用いるノズルのインク噴射口において該インクジェット用インクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で好適に使用される。
【0135】
記乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。具体的な例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチルー2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。これらのうちグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。また上記の乾燥防止剤は単独で用いても良いし2種以上併用しても良い。これらの乾燥防止剤はインク中に10〜50質量%含有することが好ましい。
【0136】
浸透促進剤は、インクジェット用インクを紙により良く浸透させる目的で好適に使用される。浸透促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール,ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を用いることができる。これらはインク中に5〜30質量%含有すれば通常充分な効果があり、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
【0137】
紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。紫外線吸収剤としては特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号明細書等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
【0138】
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。前記褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
【0139】
防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンおよびその塩等が挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
【0140】
pH調整剤としては前記中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。前記pH調整剤はインクジェット記録用インクの保存安定性を向上させる目的で、該インクジェット記録用インクがpH6〜10と夏用に添加するのが好ましく、pH7〜10となるように添加するのがより好ましい。
【0141】
表面張力調整剤としてはノニオン、カチオンあるいはアニオン界面活性剤が挙げられる。なお、本発明のインクジェット用インクの表面張力は25〜70mN/mが好ましい。さらに25〜60mN/mが好ましい。また本発明のインクジェット記録用インクの粘度は30mPa・s以下が好ましい。更に20mPa・s以下に調整することがより好ましい。界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。更に、特開昭59−157,636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。
【0142】
消泡剤としては、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も必要に応じて使用することができる。
【0143】
本発明のフタロシアニン化合物を水性媒体に分散させる場合は、特開平11-286637号、特願平2000-78491号、同2000-80259号、同2000-62370号等の各公報に記載されるように、色素と油溶性ポリマーとを含有する着色微粒子を水性媒体に分散したり、特願平2000-78454号、同2000-78491号、同2000-203856号,同2000-203857号の各明細書のように高沸点有機溶媒に溶解した本発明の化合物を水性媒体中に分散することが好ましい。本発明の化合物を水性媒体に分散させる場合の具体的な方法,使用する油溶性ポリマー、高沸点有機溶剤、添加剤及びそれらの使用量は、上記特許公報等に記載されたものを好ましく使用することができる。あるいは、前記フタロシアニン化合物を固体のまま微粒子状態に分散してもよい。分散時には、分散剤や界面活性剤を使用することができる。分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。上記のインクジェット記録用インクの調製方法については、先述の特許以外にも特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、特開平11−286637号、特願2000−87539号の各公報に詳細が記載されていて、本発明のインクジェット記録用インクの調製にも利用できる。
【0144】
水性媒体は、水を主成分とし、所望により、水混和性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。前記水混和性有機溶剤の例には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。尚、前記水混和性有機溶剤は、二種類以上を併用してもよい。
【0145】
本発明のインクジェット記録用インク100質量部中は、前記フタロシアニン化合物を0.2質量部以上10質量部以下含有するのが好ましい。また、本発明のインクジェット用インクには、前記フタロシアニン化合物とともに、他の色素を併用してもよい。2種類以上の色素を併用する場合は、色素の含有量の合計が前記範囲となっているのが好ましい。
【0146】
本発明のインクジェット記録用インクは、粘度が40cp以下であるのが好ましい。また、その表面張力は20mN/m以上70mN/m以下であるのが好ましい。粘度及び表面張力は、種々の添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防黴剤、防錆剤、分散剤及び界面活性剤を添加することによって、調整できる。
【0147】
本発明のインクジェット記録用インクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
【0148】
適用できるイエロー染料としては、任意のものを使用することが出来る。例えばカップリング成分(以降カプラー成分と呼ぶ)としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロンやピリドン等のようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類、などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。
【0149】
適用できるマゼンタ染料としては、任意のものを使用することが出来る。例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類などを有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、シアニン染料、オキソノール染料などのようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料、例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン染料、例えばジオキサジン染料等のような縮合多環染料等を挙げることができる。
【0150】
適用できるシアン染料としては、任意のものを使用する事が出来る。例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、ピロロトリアゾールのようなヘテロ環類などを有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料などのようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;インジゴ・チオインジゴ染料などを挙げることができる。
【0151】
前記の各染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてイエロー、マゼンタ、シアンの各色を呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ染料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
【0152】
[インクジェット記録方法]
本発明のインクジェット記録方法は、前記インクジェット記録用インクにエネルギーを供与して、公知の受像材料、即ち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載されているインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に画像を形成する。
【0153】
画像を形成する際に、光沢性や耐水性を与えたり耐候性を改善する目的からポリマー微粒子分散物(ポリマーラテックスともいう)を併用してもよい。ポリマーラテックスを受像材料に付与する時期については、着色剤を付与する前であっても,後であっても、また同時であってもよく、したがって添加する場所も受像紙中であっても、インク中であってもよく、あるいはポリマーラテックス単独の液状物として使用しても良い。具体的には、特願2000−363090号、同2000−315231号、同2000−354380号、同2000−343944号、同2000−268952号、同2000−299465号、同2000−297365号等の各明細書に記載された方法を好ましく用いることが出きる。
【0154】
以下に、本発明のインクを用いてインクジェットプリントをするのに用いられる記録紙及び記録フィルムについて説明する。
記録紙及び記録フィルムにおける支持体は、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等からなり、必要に応じて従来公知の顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、カチオン剤、紙力増強剤等の添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機等の各種装置で製造されたもの等が使用可能である。これらの支持体の他に合成紙、プラスチックフィルムシートのいずれであってもよく、支持体の厚みは10〜250μm、坪量は10〜250g/m2が望ましい。
支持体には、そのままインク受容層及びバックコート層を設けてもよいし、デンプン、ポリビニルアルコール等でサイズプレスやアンカーコート層を設けた後、インク受容層及びバックコー卜層を設けてもよい。更に支持体には、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置により平坦化処理を行ってもよい。本発明では支持体として、両面をポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテン及びそれらのコポリマー)でラミネートした紙及びプラスチックフィルムがより好ましく用いられる。
ポリオレフィン中に、白色顔料(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛)又は色味付け染料(例えば、コバルトブルー、群青、酸化ネオジウム)を添加することが好ましい。
【0155】
支持体上に設けられるインク受容層には、顔料や水性バインダーが含有される。顔料としては、白色顔料が好ましく、白色顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、合成非晶質シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛等の白色無機顔料、スチレン系ピグメント、アクリル系ピグメント、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。インク受容層に含有される白色顔料としては、多孔性無機顔料が好ましく、特に細孔面積が大きい合成非晶質シリカ等が好適である。合成非晶質シリカは、乾式製造法によって得られる無水珪酸及び湿式製造法によって得られる含水珪酸のいずれも使用可能であるが、特に含水珪酸を使用することが望ましい。
【0156】
インク受容層に含有される水性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド誘導体等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。これらの水性バインダーは単独又は2種以上併用して用いることができる。本発明においては、これらの中でも特にポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールが顔料に対する付着性、インク受容層の耐剥離性の点で好適である。
インク受容層は、顔料及び水性結着剤の他に媒染剤、耐水化剤、耐光性向上剤、界面活性剤、その他の添加剤を含有することができる。
【0157】
インク受容層中に添加する媒染剤は、不動化されていることが好ましい。そのためには、ポリマー媒染剤が好ましく用いられる。
ポリマー媒染剤については、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430号、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号の各明細書に記載がある。特開平1−161236号公報の212〜215頁に記載のポリマー媒染剤を含有する受像材料が特に好ましい。同公報記載のポリマー媒染剤を用いると、優れた画質の画像が得られ、かつ画像の耐光性が改善される。
【0158】
耐水化剤は、画像の耐水化に有効であり、これらの耐水化剤としては、特にカチオン樹脂が望ましい。このようなカチオン樹脂としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン、ポリエチレンイミン、ポリアミンスルホン、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、カチオンポリアクリルアミド、コロイダルシリカ等が挙げられ、これらのカチオン樹脂の中で特にポリアミドポリアミンエピクロルヒドリンが好適である。これらのカチオン樹脂の含有量は、インク受容層の全固形分に対して1〜15質量%が好ましく、特に3〜10質量%であることが好ましい。
【0159】
耐光性向上剤としては、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、ヒンダーアミン系酸化防止剤、ベンゾフェノン等のベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの中で特に硫酸亜鉛が好適である。
【0160】
界面活性剤は、塗布助剤、剥離性改良剤、スベリ性改良剤あるいは帯電防止剤として機能する。界面活性剤については、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載がある。界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。有機フルオロ化合物の例には、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例えば、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例えば、四フッ化エチレン樹脂)が含まれる。有機フルオロ化合物については、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭61−20994号、同62−135826号の各公報に記載がある。その他のインク受容層に添加される添加剤としては、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、pH調整剤、マット剤、硬膜剤等が挙げられる。なお、インク受容層は1層でも2層でもよい。
【0161】
記録紙及び記録フィルムには、バックコート層を設けることもでき、この層に添加可能な成分としては、白色顔料、水性バインダー、その他の成分が挙げられる。バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬べーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント,ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0162】
バックコート層に含有される水性バインダーとしては、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0163】
インクジェット記録紙及び記録フィルムの構成層(バックコート層を含む)には、ポリマーラテックスを添加してもよい。ポリマーラテックスは、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマーラテックスについては、特開昭62−245258号、同62−1316648号、同62−110066号の各公報に記載がある。ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマーラテックスを媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマーラテックスをバックコート層に添加しても、カールを防止することができる。
【0164】
本発明のインクは、インクジェットの記録方式に制限はなく、公知の方式、例えば静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して、放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等に用いられる。インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0165】
【実施例】
以下、本発明を実施例にもとづいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0166】
(合成例)
以下、実施例に本発明のフタロシアニン系色素誘導体の合成法を詳しく説明するが、出発物質、色素中間体及び合成ル−トについて限定されるものでない。
【0167】
本発明の代表的なフタロシアニン化合物は、例えば下記合成ル−トから誘導することができる。以下の実施例において、λmaxは吸収極大波長であり、εmaxは吸収極大波長におけるモル吸光係数を意味する。
【0168】
【化11】
【0169】
合成例1:化合物Aの合成
窒素気流下、4−ニトロフタロニトリル(東京化成)26.0gを200mLのDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解し、内温20℃で攪拌しているところへ、30.3gの3−メルカプト−プロパン−スルホン酸ナトリウム(アルドリッチ)を添加した。続いて、内温20℃で攪拌しているところへ、24.4gの無水炭酸ナトリウムを徐々に加えた。反応液を攪拌しながら、30℃まで加温し、同温度で1時間撹拌した。20℃まで冷却した後、反応液をヌッチェでろ過し、ろ液を15000mLの酢酸エチルにあけて晶析し、引き続き室温で30分間撹拌して、析出した粗結晶をヌッチェでろ過し、酢酸エチルで洗浄し、乾燥した。得られた粗結晶を、メタノール/酢酸エチルから再結晶して、42.5gの化合物Aを得た。1H-NMR(DMSO-d6),δ値TMS基準:1.9〜2.0(2H,t);2.5〜2.6(2H,m);3.2〜3.3(2H,t);7.75〜7.85(1H,d);7.93〜8.03(1H,d);8.05〜8.13(1H,s)
【0170】
合成例2:化合物Bの合成
42.0gの化合物Aを300mLの酢酸に溶解し、内温20℃で攪拌しているところへ、2.5gNa2WO4・2H2Oを添加した後、氷浴中、内温10℃まで冷却した。引き続き、32mLの過酸化水素水(30%)を発熱に注意しながら徐々に滴下した。内温15〜20℃で30分間撹拌した後に、反応液を内温60℃まで加温して、同温度で1時間撹拌した。20℃まで冷却した後、反応液に1500mLの酢酸エチルを注入し、引き続き同温度にて30分間撹拌した後に、析出した粗結晶をヌッチェでろ過し、200mLの酢酸エチルで洗浄し、乾燥した。得られた粗結晶を、メタノール/酢酸エチルを用いて加熱洗浄して精製して、40.0gの化合物Bを得た。1H-NMR(DMSO-d6),δ値TMS基準:1.8〜1.9(2H,t);2.4〜2.5(2H,m);3.6〜3.7(2H,t);8.3〜8.4(1H,d);8.4〜8.5(1H,d);8.6〜8.7(1H,s)
【0171】
合成例3:例示化合物102の合成
冷却管の付いた三つ口フラスコに、n−アミルアルコール70mL加え、そこに化合物B6.7g、塩化銅(II)1.0gを加え、攪拌しながら室温で7.0mLの1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)を滴下した。引き続き、反応液を内温100℃まで加温して、同温度で10時間撹拌した。40℃まで冷却した後、50℃の加温したメタノ−ル250mLを注入して、還流下で1時間攪拌した。次に、反応液を室温まで冷却した後、得られた固体をヌッチェでろ過し、200mLのメタノールで洗浄した。続いて得られた固体を塩化ナトリウムで飽和した100mLの1M塩酸水溶液に加え、未反応の銅塩を溶かし出した。不溶物をろ過した後、ろ液に300mLのメタノールを滴下して晶析した後、得られた粗結晶をヌッチェでろ過し、200mLのメタノールで洗浄した。粗結晶を、50mLの水に溶解させた後、水溶液を攪拌しながら酢酸ナトリウムの飽和メタノール溶液100mLを徐々に添加して造塩した。更に、攪拌しながら還流温度まで加温し、同温度で1時間撹拌した。室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、メタノールで洗浄した。引き続き、80%メタノール100mLに得られた結晶を加え、1時間還流下撹拌し、室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、更に、70%メタノール水溶液100mLに得られた結晶を加え、1時間還流撹拌し、室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、メタノ−ル100mLで洗浄後乾燥して、3.8gの例示化合物102を青色結晶として得た。λmax(吸収極大波長) : 629.1nm;εmax(吸収極大波長におけるモル吸光係数)=6.19×104(水溶液中)。得られた化合物を分析(質量分析法:ESI−MS、元素分析、中和滴定等種々の機器解析方法により測定)した結果、本明細書中で定義したフタロシアニン銅(II)-置換位置が、β-位置換型{それぞれの各ベンゼン核の(2または3位)、(6または7位)、(10または11位)、(14または15位)に−{SO2−(CH2)3−SO3Na}基を1個、銅フタロシアニン一分子中−{SO2−(CH2)3−SO3Na}基を合計4個有する}であることが確認できた。
【0172】
[比較化合物の合成例]
a)比較化合物1の合成
冷却管の付いた三つ口フラスコに、クロロスルホン酸150mLを加え、攪拌しながら引き続き20℃を超えない温度を保ちながら25.0g の銅フタロシアニンをゆっくり分割添加した。(発熱するため冷却を同時に実施した)
次いでこの混合物を100℃まで、1時間かけて加温し、更に135℃まで1時間かけて加温を続け、ガスの発生が終了するまで同温度で5時間撹拌した。その後この反応液を10℃まで冷却した後、次いで、反応液を1500mLの飽和食塩水と500gの氷との混合物にゆっくり添加して青色結晶の目的物を析出させた。懸濁液内の温度は、氷を補足的に添加することによって0〜5℃に保った。更に室温で1時間攪拌した後に、ヌッチェでろ過し、1000mLの冷飽和食塩水で洗浄した。得られた固体を700mLの0.1M水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた。溶液を攪拌しながら80℃まで加温し、同温度で1時間撹拌した。水溶液を熱時ゴミ取りろ過した後、ろ液を攪拌しながら塩化ナトリウム270mLを徐々に添加した塩析した。この塩析液を攪拌しながら80℃まで加温し、同温度で1時間撹拌した。室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、150mLの20%食塩水で洗浄した。引き続き、80%エタノール200mLに得られた結晶を加え、1時間還流下撹拌し、室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、更に、60%エタノール水溶液200mLに得られた結晶を加え、1時間還流撹拌し、室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、エタノ−ル300mLで洗浄後乾燥して、34.2gの下記比較化合物1を青色結晶として得た。λmax : 624.8nm;εmax=3.40×104;λmax : 663.8nm;εmax=3.57×104(水溶液中)。得られた化合物を分析した結果、本明細書中で定義したフタロシアニン銅(II)-置換位置が、フタロシアニン銅(II)-置換位置がα,β−混合型で且つスルホ基置換数比、約4個:3個:2個=1:3:1の混合物(ESI−MS)}であることが確認できた。
【0173】
【化12】
【0174】
b)比較化合物4の合成
冷却管の付いた三つ口フラスコに、ニトロベンゼン100mL加え、180℃まで1時間かけて昇温し、そこに4−スルホフタル酸一ナトリウム塩43.2g、塩化アンモニウム4.7g、尿素58g、モリブデン酸アンモニウム0.68g、塩化銅(II)6.93gを加え、同温度で6時間撹拌した。反応液を40℃まで冷却したのち、50℃の加温したメタノ−ル200mLを注入して、生成した固形物を粉砕してながら室温で1時間攪拌した。得られた分散物をヌッチェでろ過し、400mLのメタノールで洗浄した。続いて得られた固体を塩化ナトリウムで飽和した1000mLの1M塩酸水溶液を加え、煮沸して未反応の銅塩を溶かし出した。冷却後沈殿した固体をヌッチェでろ過し、100mLの1M塩酸飽和食塩水溶液で洗浄した。得られた固体を700mLの0.1M水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた。溶液を攪拌しながら80℃まで加温し、同温度で1時間撹拌した。水溶液を熱時ゴミ取りろ過した後、ろ液を攪拌しながら塩化ナトリウム270mLを徐々に添加した塩析した。この塩析液を攪拌しながら80℃まで加温し、同温度で1時間撹拌した。室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、150mLの20%食塩水で洗浄した。引き続き、80%エタノール200mLに得られた結晶を加え、1時間還流下撹拌し、室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、更に、60%エタノール水溶液200mLに得られた結晶を加え、1時間還流撹拌し、室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、エタノ−ル300mLで洗浄後乾燥して、29.25gの化合物Aを青色結晶として得た。λmax : 629.9nm;εmax=6.11×104(水溶液中)。得られた化合物を分析(質量分析法:ESI−MS、元素分析、中和滴定等種々の機器解析方法により測定)した結果、本明細書中で定義したフタロシアニン銅(II)-置換位置が、β-位置換型{それぞれの各ベンゼン核の(2または3位)、(6または7位)、(10または11位)、(14または15位)にスルホ基を1個、銅フタロシアニン一分子中スルホ基を合計4個有する}であることが確認できた。
【0175】
【化13】
【0176】
[実施例1]
下記の成分に脱イオン水を加え1リッターとした後、30〜40℃で加熱しながら1時時間撹拌した。その後KOH 10mol/LにてpH=9に調製し、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過しシアン用インク液を調製した。
【0177】
インク液Aの組成:
本発明のフタロシアニン化合物(例示化合物101) 20.0g
ジエチレングリコール 20g
グリセリン 120g
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 230g
2−ピロリドン 80g
トリエタノールアミン 17.9g
ベンゾトリアゾール 0.06g
サーフィノールTG 8.5g
PROXEL XL2 1.8g
【0178】
フタロシアニン化合物を、下記表9に示すように変更した以外は、インク液Aの調製と同様にして、インク液B〜G、比較用のインク液として、以下の化合物を用いてインク液101,102,103,104を作成した。
【0179】
【化14】
【0180】
【化15】
【0181】
染料を変更する場合は、添加量がインク液Aに用いた染料に対して等モルとなるように使用した。染料を2種以上併用する場合は等モルずつ使用した。
【0182】
(画像記録及び評価)
以上の各実施例(インク液A〜G)及び比較例(インク液101〜104)のインクジェット用インクについて、下記評価を行った。その結果を表9に示した。
なお、表9において、「色調」、「紙依存性」、「耐水性」及び「耐光性」は、各インクジェット用インクを、インクジェットプリンター(EPSON(株)社製;PM−700C)でフォト光沢紙(EPSON社製PM写真紙<光沢>(KA420PSK、EPSON)に画像を記録した後で評価したものである。
【0183】
<色調>
フォト光沢紙に形成した画像の390〜730nm領域のインターバル10nmによる反射スペクトルを測定し、これをCIE L*a*b*色空間系に基づいて、a*、b*を算出した。JNCのJAPAN Color の標準シアンのカラーサンプルと比較してシアンとして好ましい色調を下記のように定義し、3段階評価を行った。
【0184】
好ましいa*:−35.9以上0以下、
好ましいb*:−50.4以上0以下
○:a*、b*ともに好ましい領域
△:a*、b*の一方のみ好ましい領域
×:a*、b*のいずれも好ましい領域外
【0185】
<紙依存性>
フォト光沢紙に形成した画像と、別途にPPC用普通紙に形成した画像との色調を比較し、両画像間の差が小さい場合をA(良好)、両画像間の差が大きい場合をB(不良)として、二段階で評価した。
【0186】
<耐水性>
画像を形成したフォト光沢紙を、1時間室温乾燥した後、10秒間脱イオン水に浸漬し、室温にて自然乾燥させ、滲みを観察した。滲みが無いものをA、滲みが僅かに生じたものをB、滲みが多いものをCとして、三段階で評価した。
【0187】
<耐光性>
前記画像を形成したフォト光沢紙に、ウェザーメーター(アトラスC.I65)を用いて、キセノン光(85000lx)を7日間照射し、キセノン照射前後の画像濃度を反射濃度計(X-Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として評価した。なお、前記反射濃度は、1、1.5及び2.0の3点で測定した。
何れの濃度でも色素残存率が70%以上の場合をA、1又は2点が70%未満をB、全ての濃度で70%未満の場合をCとして、三段階で評価した。
【0188】
<暗熱保存性>
前記画像を形成したフォト光沢紙を、80℃−15%RHの条件下で7日間試料を保存し、保存前後の画像濃度を反射濃度計(X-Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として評価した。色素残存率について反射濃度が1,1.5,2の3点にて評価し、いずれの濃度でも色素残存率が90%以上の場合をA、2点が90%未満の場合をB、全ての濃度で90%未満の場合をCとした。
【0189】
<耐オゾンガス性>
前記画像を形成したフォト光沢紙を、オゾンガス濃度が0.5±0.1ppm、室温、暗所に設定されたボックス内に7日間放置し、オゾンガス下放置前後の画像濃度を反射濃度計(X-Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として評価した。なお、前記反射濃度は、1、1.5及び2.0の3点で測定した。ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。
何れの濃度でも色素残存率が70%以上の場合をA、1又は2点が70%未満をB、全ての濃度で70%未満の場合をCとして、三段階で評価した。
【0190】
【表9】
【0191】
表9から明らかなように、本発明のインクジェット用インクは色調に優れ、紙依存性が小さく、耐水性および耐光性並びに耐オゾン性に優れるものであった。特に耐光性、耐オゾン性等の画像保存性に優れることは明らかである。
【0192】
[実施例2]
実施例1で作製した同じインクを用いて、実施例1の同機にて画像を富士写真フイルム製インクジェットペーパーフォト光沢紙EXにプリントし、実施例1と同様な評価を行ったところ、実施例1と同様な結果が得られた。
【0193】
[実施例3]
実施例1で作製した同じインクを、インクジェットプリンターBJ−F850(CANON社製)のカートリッジに詰め、同機にて同社のフォト光沢紙GP−301に画像をプリントし、実施例1と同様な評価を行ったところ、実施例1と同様な結果が得られた。
【0194】
【発明の効果】
本発明によれば、
(1)三原色の色素として色再現性に優れた吸収特性を有し、且つ光,熱,湿度および環境中の活性ガスに対して十分な堅牢性を有する新規なフタロシアニン化合物が提供され、
(2)色相と堅牢性に優れた着色画像や着色材料を与える、インクジェットなどの印刷用のインク組成物、感熱転写型画像形成材料におけるインクシート、電子写真用のトナー、LCD、PDPやCCDで用いられるカラーフィルター用着色組成物、各種繊維の染色の為の染色液などの各種着色組成物が提供され、特に、
(3)該フタロシアニン化合物の使用により良好な色相を有し、光及び環境中の活性ガス、特にオゾンガスに対して堅牢性の高い画像を形成することができるインクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法が提供される。
Claims (13)
- 下記一般式(I’)で表されるフタロシアニン化合物を含有することを特徴とする着色組成物。
- 前記一般式(I’)において、Zが置換アルキル基、置換アリール基、または置換ヘテロ環であることを特徴とする請求項1に記載の着色組成物。但し、前記−SO 2 −Zにおいて、Zが置換ヘテロ環基を表し、前記ヘテロ環基のヘテロ環がピペラジン環及びピペリジン環である場合にピペラジン環及びピペリジン環のN位でSO 2 と結合する場合を除く。
- 前記一般式(I’)において、Zが置換アルキル基、または置換ヘテロ環であることを特徴とする請求項1または2に記載の着色組成物。但し、前記−SO 2 −Zにおいて、Zが置換ヘテロ環基を表し、前記ヘテロ環基のヘテロ環がピペラジン環及びピペリジン環である場合にピペラジン環及びピペリジン環のN位でSO 2 と結合する場合を除く。
- 下記一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
- 一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物が、下記一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録用インク。
- 一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物において、イオン性親水性基が、カルボキシル基、スルホ基または4級アンモニウム基であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記一般式(I)、(II)、または(III)において、Z、Z1、Z2、Z3、Z4がそれぞれ独立に、置換アルキル基、置換アリール基、または置換ヘテロ環であることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載のインクジェット記録用インク。
- 前記一般式(I)、(II)、または(III)において、Z、Z1、Z2、Z3、Z4がそれぞれ独立に、置換アルキル基、または置換ヘテロ環であることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載のインクジェット記録用インク。
- 支持体上に白色無機顔料粒子を含有するインク受像層を有する受像材料上に、請求項4〜9のいずれかに記載のインクジェット記録用インクを用いて画像形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
- 請求項6に記載される一般式(III)で表されることを特徴とするフタロシアニン化合物。但し、請求項6に記載のZ 1 、Z 2 、Z 3 、Z 4 が置換ヘテロ環基を表し、前記ヘテロ環基のヘテロ環がピペラジン環及びピペリジン環である場合にピペラジン環及びピペリジン環のN位でSO 2 と結合する場合を除く。
- 前記一般式(III)において、Z1、Z2、Z3、Z4がそれぞれ独立に、置換アルキル基、置換アリール基、または置換ヘテロ環であることを特徴とする請求項11に記載のフタロシアニン化合物。但し、前記置換ヘテロ環基のヘテロ環がピペラジン環及びピペリジン環である場合にピペラジン環及びピペリジン環のN位でSO 2 と結合する場合を除く。
- 前記一般式(III)において、Z1、Z2、Z3、Z4がそれぞれ独立に、置換アルキル基、または置換ヘテロ環であることを特徴とする請求項11または12に記載のフタロシアニン化合物。但し、前記置換ヘテロ環基のヘテロ環がピペラジン環及びピペリジン環である場合にピペラジン環及びピペリジン環のN位でSO 2 と結合する場合を除く。
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