JP3944430B2 - 耐熱性多孔質樹脂多層基板 - Google Patents
耐熱性多孔質樹脂多層基板 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高周波信号に対応するための誘電損失の小さなプリント配線板,導体付積層板,プリプレグ,積層板の製造法、およびそれらを用いた電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、PHS,携帯電話等の情報通信機器の信号帯域,コンピューターのCPUクロックタイムはGHz帯に達し、高周波数化が進行している。電気信号の誘電損失は、回路を形成する絶縁体の比誘電率の平方根、誘電正接及び使用される信号の周波数の積に比例する。そのため、使用される信号の周波数が高いほど誘電損失が大きくなる。誘電損失は電気信号を減衰させて信号の信頼性を損なうので、これを抑制するために絶縁体には誘電率及び誘電正接の小さな材料を選定する必要がある。絶縁体の低誘電率化及び低誘電正接化には分子構造中の極性基の除去が有効であり、フッ素樹脂,硬化性ポリオレフィン,シアネートエステル系樹脂,硬化性ポリフェニレンオキサイド,アリル変性ポリフェニレンエーテル,ジビニルベンゼン又はジビニルナフタレンで変性したポリエーテルイミド等が提案されている。
【0003】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるフッ素樹脂は、誘電率及び誘電正接がともに低く、高周波信号を扱う基板材料に使用されている。しかし、PTFEは熱可塑性樹脂であるため、成形加工時の膨張収縮が大きく、扱いにくい材料であった。また、フッ素樹脂に架橋性及び溶解性を付与する提案も種々行われているが、それらの材料は総じて高価で、特性的にはPTFEに及ばないものが多い。これに対して、有機溶剤に可溶で取り扱い易い、非フッ素系の低誘電率で低誘電正接の樹脂が種々検討されてきた。例えば、特開平8−208856号記載のポリブタジエン等のジエン系ポリマーをガラスクロスに含浸して過酸化物で硬化した例;特開平10−158337号記載の如く、ノルボルネン系付加型重合体にエポキシ基を導入し、硬化性を付与した環状ポリオレフィンの例;特開平11−124491号記載の如く、シアネートエステル,ジエン系ポリマー及びエポキシ樹脂を加熱してBステージ化した例;特開平9−118759号記載のポリフェニレンオキサイド,ジエン系ポリマー及びトリアリルイソシアネートからなる変性樹脂の例;特開平9−246429号記載のアリル化ポリフェニレンエーテル及びトリアリルイソシアネート等からなる樹脂組成物の例;特開平5−156159号記載のポリエーテルイミドと、スチレン,ジビニルベンゼン又はジビニルナフタレンとをアロイ化した例;特開平5−78552号記載のジヒドロキシ化合物とクロロメチルスチレンからウイリアムソン反応で合成した、例えばヒドロキノンビス(ビニルベンジル)エーテルとノボラックフェノール樹脂からなる樹脂組成物の例など多数が挙げられる。前述の例の多くには、架橋剤又は架橋助剤としてジビニルベンゼンを含んでもよいとの記述があった。これは、ジビニルベンゼンが構造中に極性基を有しておらず、その硬化物の誘電率及び誘電正接が低いこと、ならびに熱分解温度が350℃以上と高いことに起因する。しかし、ジビニルベンゼン硬化物は非常に脆いため、硬化時に硬化物にひび割れが生じ易いという欠点を有していた。そのため、通常ジビニルベンゼンの添加量は、他の樹脂成分に比べて低く設定されていた。ジビニルベンゼンを主たる架橋剤に使用している特開平5−156159号公報の例でも樹脂全体の9%程度の添加量である。同公報記載のジビニルナフタレンも硬化物の脆さという点ではジビニルベンゼンと同様の問題を有している。また、ジビニルベンゼンは揮発性を有しているため、硬化する際に揮発してしまい硬化物の特性コントロールが難しいという欠点を有していた。これに対して、特開平5−78552号公報ではヒドロキノンビス(ビニルベンジル)エーテル等のビススチレン化合物が不揮発性であり、柔軟性の高い硬化物を与えることを明らかにしている。しかし、一般的にアルキレンエーテル基はアルキレン基及びアリーレン基に比べて誘電率、誘電正接及び耐熱性の観点で不利である。スチレン基間を結合する構造にはアルキレン基及びアリーレン基等の炭化水素系の骨格が好ましい。スチレン基間をエチレン基で結合した多官能スチレン化合物の例としては特開平9−208625号公報記載の1,2−ビス(ビニルフェニル)エタン、Makromol.Chem.vol.187、23頁(1986)記載の側鎖にビニル基を有するジビニルベンゼンオリゴマーがある。しかし、これらの報告では、機械強度,耐熱性,誘電率又は誘電正接に関する検討はなされていなかった。
【0004】
一方、Cu配線材料と熱膨張係数がよく一致するポリイミド及び前述の低誘電正接樹脂組成物などの材料の誘電特性は、その分子構造により決定される各材料に固有の値を持ち、この誘電特性を制御するには限界がある。そこで、低誘電率(=1)の空気を材料に含ませ多孔質化し、ポリイミドなどの誘電特性を制御した多孔質材料が多く報告されている。
【0005】
特開2000−154273号公報は、超臨界炭酸ガスによりナノ孔すなわち直径がnmの孔を形成し400m2/g 以上の高表面積を有する多孔質材料を用いて低誘電特性を得ている。特開平2001−123953号公報は、スキン層を設け、特開2001−126534号公報は、フィルム層(多孔質化していない層)を積層し、強度を高めた低誘電材料を得ている。特開平9−046012号公報は、多孔質フィルムとCuとを低誘電特性を備えたエポキシ系接着剤で接合した多孔質材料を得ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来、それを含む組成物の硬化後の誘電率及び誘電正接を低いものとしうる架橋剤として使用されていたジビニルベンゼンは、揮発性であること、及びその硬化物が脆いこと等の欠点を有していた。
【0007】
多孔質材料については多孔質化するとフィルムの強度が低下する。また、特開2000−319442号公報に記載されているように、多孔質層が連続孔を有している場合、エッチングにより回路パターンを形成する際に、連続孔を通じてエッチング液が浸透し、Cuなどの配線材料をフィルム側からもエッチングするので、設計通りの配線を形成することが困難となる。更に、この従来例においては、Cu配線材料とフィルムとの熱膨張係数の違いに対する配慮が無い。
【0008】
ポリイミドフィルムにスキン層やフィルム層を積層した場合、エッチング時にフィルム側からの配線のエッチングを防ぐことができる。しかし、ポリテトラフルオロエチレン,ポリエチレンなどを用いると、Cu配線材料とフィルムとの熱膨張係数が一致しないので、配線の切断等の問題が生じる。
【0009】
本発明の目的は、低誘電正接,高強度,低熱膨張の耐熱性多孔質樹脂配線基板を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の発明を包含する。
【0011】
本発明は、下記一般式:
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、Rは炭化水素骨格を表し、R1 は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R2,R3及びR4 は、同一又は異なっても良く、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、mは1〜4の整数、nは2以上の整数を表す。)で示される複数のスチレン基を有する重量平均分子量1000以下の架橋成分と、高分子量体とを含有する樹脂組成物を接着剤または充填剤とした耐熱性多孔質配線板である。
【0014】
ジビニルベンゼンの硬化物の耐熱性が高く、その誘電率及び誘電正接が低いことはすでに述べた。本発明により、スチレン基を複数有する重量平均分子量が
1000以下で不揮発性の炭化水素骨格の架橋成分と、高分子量体とを含有する樹脂組成物が、硬化時にひび割れせず、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を与えることが明らかとなった。スチレン基間をアルキレン基のような柔軟な炭化水素骨格で結合しているため、硬化時のひび割れが生じないものである。
【0015】
また、耐熱性多孔質樹脂フィルムは、フィルム層と多孔質層を2層以上積層した積層フィルムで構成されていても良い。また、耐熱性多孔質樹脂フィルムの空孔に接着剤が含浸されていても良い。
【0016】
本発明は、耐熱性多孔質樹脂フィルムを接着剤を介して積層し、スルーホールに形成された電極を介して層間の配線が接続された構成を有する両面配線基板において、前記接着層が低誘電正接樹脂組成物である耐熱性多孔質両面配線基板である。また、前記スルーホール内表面に低誘電正接樹脂組成物コーティング膜を有する耐熱性多孔質両面配線基板である。また、本発明の多孔質ポリイミド両面配線板は前記低誘電樹脂接着剤で接着し積層した耐熱性多孔質基板とすることができる。
【0017】
本発明の低誘電率、低誘電正接多層基板材料は、高周波伝送損失を小さくすることができる。また、熱膨張係数はCu配線材料とほぼ同程度の値を有しており、信頼性に優れた電子部品を提供することができる。さらに、積層プロセスが簡単で電子部品の低コスト化することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる樹脂組成物及びその硬化物について説明する。
【0019】
本発明で用いる樹脂組成物は、上記の一般式(化1)で示される複数のスチレン基を有する重量平均分子量1000以下の架橋成分と、高分子量体とを含有する樹脂組成物であって、該樹脂組成物を180℃100分で硬化させて得られる硬化物のガラス転移温度が170℃以上であるか、又は該硬化物の170℃における弾性率が500MPa以上であることが好ましい。
【0020】
なお、本明細書中において、ガラス転移温度とは、昇温速度5℃/分の条件で動的粘弾性特性を観測した際に、損失弾性率と貯蔵弾性率の比であるtanδ がピークとなる温度を示すものである。誘電率及び誘電正接が低く、ガラス転移温度が高く、高温下における弾性率が高い本発明で用いる樹脂組成物を多孔質ポリイミドと組合わせたプリント基板を使用することにより、電気信号の誘電損失を低く押さえ、かつ金ワイヤボンディング、ハンダ付等の高温での加工プロセスにおける変形を抑制することができる。
【0021】
前記式において、Rで表される炭化水素骨格は、該架橋成分の重量平均分子量が1000以下となるものであれば特に制限はない。即ち、Rで表される炭化水素骨格は、スチレン基における置換基、R1,R2,R3及びR4の有無及びその大きさ、m及びnの数に応じて適宜選択することができるが、一般には炭素数1〜60であり、好ましくは炭素数2〜30である。Rで表される炭化水素骨格は、直鎖状又は分枝状のいずれでもよく、また、脂環式構造,芳香族環構造等の環構造を1つ以上含んでいてもよく、更に、ビニレン,エチニレン等の不飽和結合を含んでいてもよい。
【0022】
Rで表される炭化水素骨格としては、例えば、エチレン,トリメチレン,テトラメチレン,メチルトリメチレン,メチルテトラメチレン,ペンタメチレン,メチルペンタメチレン,シクロペンチレン,シクロヘキシレン,フェニレン,フェニレンジエチレン,キシリレン、1−フェニレン−3−メチルプロペニレン等が挙げられる。
【0023】
前記式において、R1 で表される炭化水素基としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10の、直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、例えばメチル,エチル、n−プロピル,イソプロピル、n−ブチル,イソブチル、s−ブチル,ペンチル,ヘキシル,デシル,エイコシル;炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10の、直鎖状もしくは分枝状のアルケニル基、例えばビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチルアリル;アリール基、例えばフェニル,ナフチル,ベンジル,フェネチル,スチリル,シンナミルが挙げられる。
【0024】
前記式において、nが2以上の整数であることからR1 は複数存在し、mが2〜4の整数である場合も、R1 は複数存在するが、そのような複数存在するR1 は同一でも異なっていてもよく、その結合位置も同一でも異なっていてもよい。
【0025】
前記式において、R2,R3又はR4 で表されるアルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、例えばメチル,エチル、n−プロピル,イソプロピル、n−ブチル,イソブチル,ヘキシルが挙げられる。
【0026】
前記式において、置換されていてもよいビニル基[(R3)(R4)C=C(R2)−]は、ベンゼン環上、Rに対して、好ましくはメタ位又はパラ位に存在する。
【0027】
本発明に用いる架橋成分としては、複数の置換されていてもよいスチレン基を有する重量平均分子量1000以下の多官能性モノマーが好ましい。スチレン基は反応性が高く、誘電率及び誘電正接が非常に低い。架橋成分の骨格には誘電率及び誘電正接の観点から炭化水素骨格を採用することが好ましい。これによって、スチレン基の低誘電率性及び低誘電正接性を損なうことなく、該架橋成分に不揮発性及び柔軟性を付与することができる。また、重量平均分子量1000以下の架橋成分を選択することによって、比較的低い温度で溶融流動性を示し、有機溶媒への溶解性もよくなるため、成形加工及びワニス化が容易になる。架橋成分の重量平均分子量が大きすぎると、溶融流動性が低くなり、成形加工の際に架橋が生じて成形不良となる場合がある。該架橋成分の重量平均分子量は1000以下であれば制限はないが、好ましくは200〜500である。
【0028】
架橋成分の好ましい例としては、1,2−ビス(p−ビニルフェニル)エタン、1,2−ビス(m−ビニルフェニル)エタン、1−(p−ビニルフェニル)−2−(m−ビニルフェニル)エタン、1,4−ビス(p−ビニルフェニルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(m−ビニルフェニルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(p−ビニルフェニルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(m−ビニルフェニルエチル)ベンゼン、1−(p−ビニルフェニルエチル)−4−(m−ビニルフェニルエチル)ベンゼン、1−(p−ビニルフェニルエチル)−3−(m−ビニルフェニルエチル)ベンゼン及び側鎖にビニル基を有するジビニルベンゼン重合体
(オリゴマー)等が挙げられる。これらの架橋成分は2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0029】
本発明に好ましく用いられる架橋成分の合成方法としては、特開平11−
60519号公報に記載の方法で合成されたハロゲノアルキルスチレンをグリニャール反応によって種々のハロゲン化物とカップリングする方法、Makromol.
Chem.vol.187、23頁(1986)記載の側鎖にビニル基を有するジビニルベンゼンオリゴマーの合成方法が挙げられるが、これらに限定されない。このようにして得られた架橋成分は、特に硬化触媒を添加しなくとも180℃以下の比較的低い温度で架橋し、耐熱性が高く、誘電率及び誘電正接の低い硬化物を与える。しかし、該架橋成分を高分子量体と組み合わせずに単独で使用した場合には、プリプレグ化した際のタックフリー性が得られない場合や、また、硬化後に十分な機械強度を得られない場合がある。
【0030】
本発明では前述の架橋成分と高分子量体とを組み合わせることによって、タックフリー性及び硬化物の機械強度の向上を図ることを特徴としている。本発明に使用される高分子量体は、そのガラス転移温度が170℃以上であるか、又は
170℃における弾性率が500MPa以上であり、かつワニス化が容易な可溶性ポリマーであることが好ましく、ガラス転移温度が170〜300℃であるか、又は170℃における弾性率が500〜3000MPaであることが更に好ましい。高分子量体が硬化性を有する場合には、硬化後のガラス転移温度が170℃以上であるか又は170℃における弾性率が500MPa以上であることが好ましく、硬化後のガラス転移温度が170〜300℃であるか又は170℃における弾性率が500〜3000MPaであることが更に好ましい。このような高分子量体の具体的な例としては、ブタジエン,イソプレン,スチレン,メチルスチレン,エチルスチレン,ジビニルベンゼン,アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸メチル,アクリル酸ブチル,アクリル酸フェニルなど),アクリロニトリル、N−フェニルマレイミドからなる単独および共重合体,置換基を有していてもよいポリフェニレンオキサイドならびに脂環式構造を有するポリオレフィン等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明に用いる架橋成分は殆どの有機溶媒に可溶であるため、種々の高分子量体と混合し、均一なワニスを得ることができる。前記有機溶媒としては、例えば、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン等のケトン類,トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類,ジエチルエーテル,エチレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノメチルエーテル,テトラヒドロフラン,ジオキサン等のエーテル類,メタノール,エタノール,イソプロパノール等のアルコール類等が挙げられ、これらの有機溶剤は単独で、又は2種以上混合して用いることができる。ブタジエン、イソプレン及びアクリル酸エステルなどのゴム状成分は、それを含む樹脂組成物の硬化物に柔軟性及び接着性を付与し、かつ塗膜に平滑性を付与する。スチレン、エチルスチレン及び/又はアクリロニトリルは、先のゴム状成分と共重合することによって、その硬化物の耐熱性を向上させる働きを有する。ジビニルベンゼン及び/又はN−ビニルフェニルマレイミドを用い、公知のイオン重合法によって、側鎖に官能基を有する高分子量体を合成することができる。特にN−ビニルフェニルマレイミドは、アニオン重合によってマレイミド基のみが、カチオン重合によってスチレン基のみが重合するため、各種単量体との共重合が容易であり、その共重合体のガラス転移温度は高い。また、側鎖に官能基を有する高分子量体は、前記架橋成分と反応するため、該高分子量体と架橋成分とを含む樹脂組成物は硬化後相分離がおさえられ、強固な硬化物を与える。ポリフェニレンオキサイド及び脂環式構造を有するポリオレフィンは耐熱性ポリマーであり、前記架橋成分とアロイ化することによって、硬化物に柔軟性及び接着性を付与し、その機械強度を向上させることができる。これらの高分子量体は単独で用いても、複合して用いてもよい。例えば、ポリフェニレンオキサイドとポリブタジエンとを組合せるのが好ましい。
【0031】
本発明で用いる樹脂組成物に含まれる架橋成分、高分子量体及び充填剤の添加量に関しては特に制限はないが、架橋成分が5〜95重量部、高分子量体が95〜5重量部、充填剤が70〜5重量部の範囲で添加するのが好ましい。前記組成範囲内で、成膜性の付与,強度の向上,熱膨張係数の低減,誘電率の調整,軽量化及び表面粗化によるめっき配線との接着力の向上等の目的に応じて組成を調整することができる。より好ましい組成としては、架橋成分が50〜95重量部、高分子量体が50〜5重量部、充填剤が70〜5重量部であり、更に好ましい組成としては、架橋成分が50〜80重量部、高分子量体が50〜20重量部、充填剤が70〜5重量部であり、この組成範囲により架橋性の官能基を持たない高分子量体を用いた場合にもその硬化物の耐溶剤性が保たれる。
【0032】
本発明で用いる樹脂組成物は硬化触媒を添加しなくとも加熱のみによって硬化することができるが、硬化効率の向上を目的として、スチレン基を重合しうる硬化触媒を添加することができる。その添加量には特に制限はないが、硬化触媒の残基が誘電特性に悪影響を与える恐れがあるので、前記架橋成分及び高分子量体の合計100重量部に対して、0.0005〜10 重量部とすることが望ましい。硬化触媒を前記範囲で添加することにより、スチレン基の重合反応が促進され、低温で強固な硬化物を得ることができる。スチレン基の重合を開始しうるカチオン又はラジカル活性種を、熱又は光によって生成する硬化触媒の例を以下に示す。カチオン重合開始剤としては、BF4,PF6,AsF6,SbF6を対アニオンとするジアリルヨードニウム塩,トリアリルスルホニウム塩及び脂肪族スルホニウム塩が挙げられ、旭電化工業製SP−70,172,CP−66,日本曹達製CI−2855,2823,三新化学工業製SI−100L及びSI−150L等の市販品を使用することができる。ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン及びベンゾインメチルのようなベンゾイン系化合物,アセトフェノン及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンのようなアセトフェノン系化合物、チオキサントン及び2,4−ジエチルチオキサントンのようなチオキサンソン系化合物、4,4′−ジアジドカルコン、2,6−ビス(4′−アジドベンザル)シクロヘキサノン及び4,4′−ジアジドベンゾフェノンのようなビスアジド化合物、アゾビスイソブチルニトリル、2,2−アゾビスプロパン、m,m′−アゾキシスチレン及びヒドラゾンのようなアゾ化合物、ならびに2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジクミルパーオキシドのような有機過酸化物等が挙げられる。特に、官能基を持たない化合物の水素引き抜きを生じさせ、架橋成分と高分子量体間の架橋をもたらしうる有機過酸化物又はビスアジド化合物を添加することが望ましい。
【0033】
本発明で用いる樹脂組成物には、保存安定性を増すために重合禁止剤を添加することもできる。その添加量は、誘電特性,硬化時の反応性を著しく阻害しないような範囲であることが好ましく、前記架橋成分及び高分子量体の合計100重量部に対して、0.0005〜5 重量部とすることが望ましい。重合禁止剤を前記範囲で添加すると、保存時の余計な架橋反応を抑制することができ、また、硬化時に著しい硬化障害をもたらすこともない。重合禁止剤の例としては、ハイドロキノン、p−ベンゾキノン,クロラニル,トリメチルキノン、4−t−ブチルピロカテコール等のキノン類及び芳香族ジオール類が挙げられる。
【0034】
本発明で用いる耐熱性多孔質樹脂フィルムについて以下説明する。本発明では、ポリイミド,アラミド,ポリサンフォン,ポリエーテルサルフォン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリベンゾオキサゾール,ポリフェニレンサルファイド,シンジオタクチックポリスチレン,ポリエーテルニトリル,ポリテトラフロロエチレンなどの耐熱性多孔質樹脂材料を使用することができる。ただし、多孔質ポリイミドフィルムの場合は、主に芳香族テトラカルボン酸二無水物としてsBPDAを用い、芳香族ジアミンとしてPPDおよびDDEを用いることが好ましい。この組成で作成したポリイミドは多孔質化した場合でも機械強度,誘電特性,熱膨張などの物性が良好となる。また、多孔質ポリイミドフィルムは、下記式a記載の構造であり、Rが下記式b,cの構造からなる多孔質ポリイミドフィルムであって、b/(b+c)が0.8〜1.0とすることが好ましい。
【0035】
【化2】
【0036】
【化3】
【0037】
【化4】
【0038】
ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとからポリアミック酸を経由し、イミド化して合成される。芳香族テトラカルボン酸二無水物および芳香族ジアミンの組み合わせは多数あり、その組み合わせにより、合成されるポリイミドのパッキング係数は異なる。
【0039】
ここでパッキング係数(K)とは、Polymer.Sci.USSR,12,556(1970)にSlonimskiiやAskadskiiによって提案されたものであり、分子鎖の固有体積(Vint)を密度から求まる実際のモル体積(Vtrue)で割った値として
K=Vint/Vtrue=NAΣΔVi/(M/d)
NA:アボガドロ数
ΔVi:構成原子の真の体積
M:分子量
d:密度
のように定義される。
【0040】
多孔質化すると、誘電率および誘電正接は低下し、改善されるが、一方でポリイミドフィルムの機械的強度は低下する。そのため、多孔質化しない状態でポリイミドフィルムの機械的強度は可能な限り高くしなければ、多孔質化した際に十分な機械的強度が実現できない。
【0041】
上記のパッキング係数を大きくすれば、一般に機械的強度が向上する。一方で、熱膨張係数,伸びといった物性はパッキング係数が大きすぎると問題が生じる場合がある。パッキング係数を大きくすると伸び、熱膨張係数が小さくなり、フレキシブル性や熱膨張係数のCu配線とのマッチングが悪くなり、信頼性が低下する場合がある。したがって、芳香族ジアミンおよび芳香族テトラカルボン酸二無水物の組み合わせを最適化することが必要である。本発明においては、芳香族テトラカルボン酸二無水物としてsBPDA(ビフェニルテトラカルボン酸二無水物),芳香族ジアミンとしてPPD(パラフェニレンジアミン)とDDE(4,4′−ジアミノジフェニルエーテル)を採用し、PPD組成比がモル%で100〜80%とする。この組成においては、Cu配線と熱膨張係数のマッチング,誘電特性が良好であり、強度も十分となる。
【0042】
溶媒としては、ポリマーを溶解するものであれば、特に限定されず、例えば、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等がある。
【0043】
多孔質層の形成方法には、湿式凝固法,乾式凝固法,延伸法など種々の製膜方法がある。そのうちで、湿式凝固法によれば、連続気泡多孔質膜が得られ好ましい。
【0044】
湿式凝固法では、一般に、溶剤に樹脂と添加剤等を溶解した製膜原液(ドープ)を調製し、これを基材に塗布(キャスト)したものを凝固液に浸漬して溶剤置換させ、樹脂を凝固(ゲル化)させ、その後、凝固液等を乾燥除去し、多孔質層を得る。
【0045】
多孔質化していないフィルム層や多孔質層を銅箔上に直接形成させることもできる。
【0046】
なお、湿式凝固法におけるドープは、好ましくは−20〜40℃の温度範囲で塗布される。また、凝固液としては、用いる樹脂を溶解せずに上記溶剤と相溶性を有するものであれば、限定されない。水と、メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール等のアルコール類と、これらの混合液とが用いられ、特に水がよく用いられる。浸漬時の凝固液の温度は特に限定されない。好ましくは、0〜50℃の温度範囲である。
【0047】
製膜原液のポリマー濃度は、5重量%から25重量%の範囲が好ましく、特に、より優れた強度を有する多孔質成型体を得るには、7重量%以上であり、高空孔率を有する多孔質成型体を得るには、20重量%以下がより好ましい。濃度が高すぎると、粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難になるし、濃度が低すぎると、多孔質膜を形成できないからである。
【0048】
孔径形状や孔径制御のために硝酸リチウムのような無機物やポリビニルピロリドンのような有機物を添加することもできる。添加物の濃度は、溶液中に1重量%から10重量%まで添加するのが好ましい。硝酸リチウムを添加すると、溶剤と凝固液との置換速度が速く、スポンジ構造の中にフィンガーボイド構造(指状にボイドを有する構造)を形成できる。ポリビニルピロリドンのような凝固スピードを遅くする添加剤を加えると、スポンジ構造が均一に広がった多孔質層が得られる。
【0049】
ドープは一定の厚みに塗布し、水等の凝固液中に浸積して凝固させたり、水蒸気雰囲気下に放置して凝固した後、水中に浸積するなどして、脱溶剤され、多孔質層となる。多孔質層の形成後、凝固液から取り出し、乾燥する。乾燥温度は、特に制限されない。200℃以下での乾燥が望ましい。
【0050】
形成した多孔質層,フィルム層は、最終的に200〜500℃で熱処理して、前駆体(ポリアミド酸)を加熱閉環させてポリイミド化する。
【0051】
上記の手段により、50〜85%程度の高い空孔率を有する多孔質成型体を銅箔上に形成できる。
【0052】
本発明は上記低誘電正接樹脂組成物を接着剤または充填剤とすることで多層基板を作成することができる。接着剤として使用する場合は、片面銅箔付多孔質ポリイミドフィルムを接着し両面配線板を作製する。両面配線板は片面銅箔付多孔質ポリイミドフィルムを接着し作製する。次いで銅箔をエッチングし表面配線を形成し、プリプレグをはさみ加熱プレス加工して積層することができる。次いでスルーホールを形成したのちスルーホールに配線を形成し層間接続を行って、多層基板を作成することができる。表面配線の形成は通常のフォトリソグラフィーを用いることができる。スルーホールの形成はドリル、レーザーなどにより加工される。多孔質材料の空孔が連続孔で液体の浸入が懸念される場合は、スルーホール内面に充填剤として使用するワニスをコーティングして拡散防止膜を形成し、液体の空孔内侵入を防止させる。この拡散防止膜により不純物の浸入を防止し、簡単な洗浄プロセスで信頼性の高い多層基板を作成することができる。層間接続用の配線はメッキプロセスやペースト充填などにより形成することができる。加圧プレス加工の条件は、樹脂組成物によるが、例えば高分子量体として環状ポリオレフィンを使用した場合には、120〜180℃,1.0〜5MPa で1〜3時間成形するのが好ましい。
【0053】
ワニスを充填剤として用いる多層基板は、銅箔無し多孔質ポリイミドフィルムおよび片面銅箔付多孔質ポリイミドフィルムにワニスを含浸し、乾燥させプリプレグとして用いることによって作製する。一般にプリプレグは樹脂組成物をガラスクロスや不織布に含浸させて得られる。ガラスクロスや不織布はプレス加工時によれや凝集といった問題が生じ微細領域では不均一な組成となる場合がある。そこで、プリプレグの基材となる多孔質ポリイミドフィルムに特に限定はないが、好ましくは空孔径が0.5μm 以下で、空孔率が30%以上、より好ましくは空孔径が0.2〜0.5μmで、空孔率が40〜70%とする。この範囲であれば充填剤とポリイミドの組成が微細領域でも十分に均一となり、配線形成後の電気特性にばらつきを小さくすることができる。空孔径が0.2μm より小さい場合、エッチング液やメッキ液が浸入した際に洗浄が困難となる。エッチング液,メッキ液等は容易に空孔内に浸入する。空孔径が小さい場合液の乾燥速度が速く液中の塩などの固形物が空孔内で析出する。一旦析出すると洗浄が困難となり多孔質フィルム中に残存し電気特性が低下してしまう。
【0054】
プリプレグは、低誘電正接樹脂組成物を用いて作製したワニスに、基材となる片面銅箔付多孔質ポリイミドフィルムを浸し、その後これを乾燥することにより作製される。含浸後の乾燥条件は樹脂組成物によるが、例えば溶媒としてトルエンを使用した場合は、80〜130℃で30〜90分程度乾燥するのが好ましい。
【0055】
また、本発明のプリプレグは、充填材の充填率を変化させることで、誘電率,誘電正接を任意に設定することができる。
【0056】
本発明の銅箔付プリプレグは銅箔をエッチングし表面配線を形成し、積層し加熱プレス加工することによって多層化し、スルーホールを形成し、スルーホールに配線を形成させ層間接続を行って多層基板を作成することができる。また、本発明の銅箔付プリプレグは銅箔をエッチングし表面配線を形成し、さらにビアホールを形成し、ビアホールに配線を形成させた後、積層し加熱プレス加工することによって、多層基板を一体成型することができる。表面配線の形成は通常のフォトリソグラフィーを用いることができる。スルーホール及びビアホールの形成はドリル,レーザーなどにより加工される。多孔質材料の空孔に充填材を完全に充填せずに、空孔が存在し、連続孔で液体の浸入が懸念される場合は、スルーホール内面に充填剤として使用するワニスをコーティングし、拡散防止膜を形成しても良い。この拡散防止膜により不純物の浸入を防止し、簡単な洗浄プロセスで信頼性の高い多層基板を作成することができる。層間接続用の配線はメッキプロセスやペースト充填などにより形成することができる。加圧プレス加工の条件は、樹脂組成物によるが、例えば高分子量体として環状ポリオレフィンを使用した場合には、120〜180℃、1.0〜5MPa で1〜3時間成形するのが好ましい。
【0057】
このようにして得られた多層基板は誘電正接が低いため、誘電損失の小さな多層基板となる。また、本発明の多層基板は、Cuと熱膨張係数が同等で信頼性の高い多層基板を提供することができる。
【0058】
(実施例)
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下の説明中に部とあるのは、特に断りのない限り重量部を指す。
【0059】
表1〜表2に本発明の実施例の組成及びその特性を示す。以下に使用した試薬の名称,合成方法,ワニスの調製方法,多孔質ポリイミドフィルムの製造法,両面板の作成法及び硬化物の評価方法を説明する。
【0060】
(1)1,2−ビス(ビニルフェニル)エタン(BVPE)の合成
1,2−ビス(ビニルフェニル)エタン(BVPE)は、以下に示すような公知の方法で合成した。500mlの三つ口フラスコにグリニャール反応用粒状マグネシウム(関東化学製)5.36g(220mmol)をとり、滴下ロート,窒素導入管及びセプタムキャップを取り付けた。窒素気流下、スターラーによってマグネシウム粒を攪拌しながら、系全体をドライヤーで加熱脱水した。乾燥テトラヒドロフラン300mlをシリンジにとり、セプタムキャップを通じて注入した。溶液を−5℃に冷却した後、滴下ロートを用いてビニルベンジルクロライド
(VBC,東京化成製)30.5g(200mmol)を約4時間かけて滴下した。滴下終了後、0℃/20時間、攪拌を続けた。反応終了後、反応溶液をろ過して残存マグネシウムを除き、エバポレーターで濃縮した。濃縮溶液をヘキサンで希釈し、3.6% 塩酸水溶液で1回、純水で3回洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで脱水した。脱水溶液をシリカゲル(和光純薬製ワコーゲルC300)/ヘキサンのショートカラムに通して精製し、真空乾燥してBVPEを得た。得られた
BVPEはm−m体(液状),m−p体(液状),p−p体(結晶)の混合物であり、収率は90%であった。1H−NMR によって構造を調べたところその値は文献値と一致した(6H−ビニル:α−2H,6.7,β−4H,5.7,5.2;8H−アロマティック:7.1〜7.35;4H−メチレン:2.9 )。この
BVPEを架橋成分として用いた。
【0061】
(2)その他の試薬
その他の高分子量体,架橋成分として、以下に示すものを使用した。
【0062】
高分子量体;
Zeonor:日本ゼオン製,環状ポリオレフィン(Zeonor1600R)
PPE:アルドリッチ製,ポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド
脂環式アクリレート:日本化薬株式会社,R−684
硬化触媒;
25B:日本油脂製2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(パーヘキシン25B)
(3)ワニスの調製方法
所定量の高分子量体,架橋成分及び硬化触媒等をクロロホルム又は二硫化炭素に溶解することによって樹脂組成物のワニスを作製した。
【0063】
(4)片面銅箔付多孔質ポリイミドフィルムの作製
窒素フローが可能なグローブボックスにおいて、所定の比率で混合した芳香族ジアミンであるPPDおよびDDEをN−メチルピロリドンに加え、室温で撹絆した。次いで、芳香族ジアミン1モルに対し、酸無水物であるsBPDAを1モル加え、1時間ほど窒素フロー中で撹絆し、固形分10wt%のポリアミド酸溶液を得た。
【0064】
得られたポリアミド酸溶液を厚さ18μmの銅箔に塗布し、水が入った凝固槽中に浸漬して水と接触させゲル化(凝固)させた。これを取り出し、120℃で十分に乾燥させ、さらに400℃で30分間処理しイミド化させ、多孔質ポリイミドフィルムを銅箔上に形成し、片面銅箔付銅箔付き多孔質ポリイミドフィルムを作成した。なお、空孔率は65%、空孔径が約0.2μmであった。
【0065】
(5)多孔質アラミドフィルムの作製
芳香族ポリアミド(帝人(株)製,コーネックス)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に溶解し芳香族ポリアミド(100重量部),NMP(900重量部)のポリマー溶液を得た。
【0066】
これを厚み190μmの厚さでポリプロピレンフィルム上に塗布し、60℃の水槽に浸漬して多孔質フィルムを形成した。その後、1昼夜水中保存して脱溶剤を行った。
【0067】
得られた多孔体は、厚み35μmの連続孔が形成されたスポンジ構造となっていた。平均孔径は2μm、空孔率は45%であった。
【0068】
(6)片面銅箔フィルム層付多孔質ポリイミドフィルムの作製
10wt%のポリアミド酸溶液を、厚さ18μmの銅箔に塗布してフィルム層を形成し120℃で十分に乾燥させ、さらに窒素中400℃で30分間処理しイミド化させた。次いでポリアミド酸溶液をフィルム層上に塗布し、水が入った凝固槽中に浸漬して水と接触させゲル化(凝固)させた。これを取り出し、120℃で十分に乾燥させ、さらに窒素中400℃で30分間処理しイミド化させ、多孔質ポリイミドフィルムをフィルム層上に形成し、片面銅箔フィルム層付き多孔質ポリイミドフィルムを作成した。
【0069】
なお、フィルム層込みの空孔率は52%、多孔質層の空孔径が約0.2μmであった。
【0070】
(7)両面銅箔フィルム層付多孔質ポリイミドフィルムの作製
図1に示した両面板の作成法に従い以下説明する。前記ワニスを接着剤とし片面銅箔フィルム層付多孔質ポリイミドフィルムを両面銅箔フィルム層付多孔質ポリイミドフィルムとする工程である。
(a)接着剤の塗布
銅箔1,フィルム層2,多孔質層3からなる片面銅箔フィルム層付多孔質ポリイミドフィルム4の多孔質層面にワニスを塗布後に乾燥し、低誘電正接接着層5を形成した。
(b)両面銅箔フィルム層付多孔質ポリイミドフィルムの形成
低誘電正接接着層を形成した片面銅箔フィルム層付多孔質ポリイミドフィルム4と接着層を形成していない片面銅箔フィルム層付多孔質ポリイミドフィルムを貼り合わせ、ポリイミドフィルム及び鏡板を介し、真空下で、加熱及び加圧して接着し両面銅箔フィルム層付多孔質ポリイミドフィルム6を作製した。加熱条件は、120℃/30分,180℃/100分で、プレス圧力1.5MPa とした。
【0071】
(8)両面銅箔付多孔質アラミドフィルムの作製
両面板の作成法にについて説明する。前記ワニスを接着剤とし銅箔と多孔質アラミドフィルム接着し両面銅付多孔質アラミドフィルムとする工程である。
(a)接着剤の塗布
多孔質アラミドフィルムを成膜時の基材としたポリプロピレンフィルムからはがし、取り出した多孔質アラミドフィルムにワニスを塗布後に乾燥し、低誘電正接接着層を両面に形成した。
(b)両面銅箔付多孔質アラミドフィルムの形成
低誘電正接接着層を形成した接着層付多孔質アラミドフィルムの上下に銅箔を貼り合わせ、ポリイミドフィルム及び鏡板を介し、真空下で、加熱及び加圧して接着し両面銅箔付多孔質アラミドフィルムを作製した。加熱条件は、120℃/30分,180℃/100分で、プレス圧力1.5MPaとした。
【0072】
(9)ポリイミドプリプレグの作製
実施例において作製したポリイミドプリプレグはすべて、樹脂組成物のワニスを充填剤として多孔質ポリイミドフィルムまたは片面銅箔付多孔質ポリイミドフィルムに含浸して作製した。図2に従いプリプレグ作製を説明する。
(a)片面銅箔付多孔質ポリイミドフィルムの作製
固形分10wt%のポリアミド酸溶液を厚さ18μmの銅箔1に塗布して、水が入った凝固槽中に浸漬して水と接触させゲル化(凝固)させた。これを取り出し、120℃で十分に乾燥させ、さらに窒素中400℃で30分間処理しイミド化させ、多孔質ポリイミドフィルム7を銅箔1上に形成し、片面銅箔付多孔質ポリイミドフィルム8を作成した。なお、銅箔を取り除いた状態で使用する場合はFeCl3/HCl エッチング液を用いて銅箔をエッチアウトし、希HCl,水で洗浄し多孔質ポリイミドフィルムとした。
(b)ワニスの充填
片面銅箔付多孔質ポリイミドフィルムまたは多孔質ポリイミドフィルムの多孔質面に十分な量のワニスを塗布し、真空装置内で吸引し多孔質層内にワニスを含浸し低誘電正接充填物9を多孔質ポリイミドフィルム7内に充填した。次いで
90℃で60分間乾燥し、120℃で1時間加熱処理を行いプリプレグ10作製した。
【0073】
(10)アラミドプリプレグの作製
実施例において作製したアラミドプリプレグはすべて、樹脂組成物のワニスを充填剤として多孔質アラミドフィルムに含浸して作製した。
【0074】
多孔質アラミドフィルムを成膜時の基材としたポリプロピレンフィルムからはがし、取り出した多孔質アラミドフィルムにワニスを充填したのち乾燥し、低誘電正接接着層を両面に形成した。
【0075】
多孔質アラミドフィルムに十分な量のワニスを塗布し、真空装置内で吸引し多孔質層内にワニスを含浸し低誘電正接充填物を多孔質アラミドフィルム内に充填した。次いで90℃で60分間乾燥し、120℃で1時間加熱処理を行いアラミドプリプレグ作製した。
【0076】
(11)誘電率及び誘電正接の測定
誘電率,誘電正接は空洞共振器摂動法(アジレントテクノロジー製8722ES型ネットワークアナライザー,関東電子応用開発製空洞共振器)によって、10GHzでの値を観測した。
【0077】
(12)引張強度の測定
引張強度は、島津製AGS−100型引張試験機を用い、幅2mm,長さ70mmのサンプルを用い、室温,支点間距離20mm引張速度10mm/分の条件で測定した。
【0078】
(13)接着及びピール強度
接着及びピール強度測定用サンプルは、各樹脂組成物を電解銅箔(18μm)の粗面上に樹脂板の作製方法と同様の条件で樹脂層を形成して作製した。樹脂層は厚さ2mm、大きさは70×70mmとした。樹脂層上の電解銅箔を幅10mmに切断して、その接着及びピール強度を測定した。
【0079】
(14)熱膨張係数の測定
熱膨張係数は、TMAを用い、幅5mm,長さ25mmのサンプルを用い、2℃/minの昇温速度で測定した。
【0080】
[実施例1〜3]
実施例1〜3は、多孔質ポリイミドフィルムを低誘電正接樹脂で接着し積層化した基板の実施例であり、高分子量体であるZeonor、PPE,ポリビニルベンジルエーテルと架橋成分であるBVPEをそれぞれ1:1の配合比で含み、更に樹脂成分の重量に対して1wt%の硬化触媒25Bを含んでなる樹脂組成物を接着剤として用いた例である。これらの組成物の硬化物は、溶媒に二硫化硫黄を使用してワニスを調製し、上述の方法で両面板を作製した例である。表1に示した各実施例から明らかなように、各樹脂板の誘電率及び誘電正接は非常に低く、誘電率は2.15〜2.30であり、誘電正接は0.0018〜0.0028であった。その他の特性は添加した高分子量体の特性が反映され、引張強度が90〜115MPa、熱膨張係数が16〜20ppm/℃,ピール及び接着強度が0.8 〜1.2N/mと優れた値を示した。多孔質ポリイミドフィルムを低誘電正接接着剤を用いて、低誘電正接,高強度,低熱膨張積層板を作成できることを確認した。
【0081】
また、多孔質アラミドフィルムを用いて、多孔質ポリイミドフィルム同様に高分子量体であるZeonor、PPE,ポリビニルベンジルエーテルと架橋成分であるBVPEをそれぞれ1:1の配合比で含み、更に樹脂成分の重量に対して1wt%の硬化触媒25Bを含んでなる樹脂組成物を接着剤として用い積層したところ、多孔質ポリイミド同様の結果が得られ、多孔質アラミドフィルムの有効性を確認した。
【0082】
【表1】
【0083】
[実施例4,5]
実施例4,5は、多孔質ポリイミドフィルムに低誘電正接樹脂を充填した基板の実施例であり、高分子量体であるZeonor、PPEと架橋成分であるBVPEをそれぞれ1:1の配合比で含み、更に樹脂成分の重量に対して1wt%の硬化触媒25Bを含んでなる樹脂組成物を充填剤として用いた例である。これらの組成物の硬化物は、溶媒に二硫化硫黄を使用してワニスを調製し、上述の方法で両面板として作製した。各実施例から明らかなように本樹脂組成物の誘電率及び誘電正接は非常に低く、誘電率は3.23,3.31 であり、誘電正接は0.0025、0.0028 であった。その他の特性は添加した高分子量体の特性が反映され、引張強度が120,135MPa、熱膨張係数が17,19ppm/℃ ,ピール及び接着強度が0.8、1.1N/mと優れた値を示した。多孔質ポリイミドフィルムを低誘電正接接着剤を用いて、低誘電正接、高強度、低熱膨張充填基板を作成できることを確認した。
【0084】
また、多孔質アラミドフィルムを用いて、多孔質ポリイミドフィルム同様に高分子量体であるZeonor、PPEと架橋成分であるBVPEをそれぞれ1:1の配合比で含み、更に樹脂成分の重量に対して1wt%の硬化触媒25Bを含んでなる樹脂組成物を充填剤として用い積層したところ、多孔質ポリイミド同様の結果が得られ、多孔質アラミドフィルムの有効性を確認した。
【0085】
【表2】
【0086】
[実施例6]
実施例6は、実施例2で作製した両面板を積層して多層回路基板を作製した例である。
【0087】
以下に本発明の多層プリント基板の作成例を図3の工程図に従い説明する。
【0088】
(A)銅箔1,フィルム層2,多孔質層3,低誘電正接接着層5からなる両面銅箔フィルム層付多孔質ポリイミドフィルム6の両面にフォトレジスト(日立化成製HS425)をラミネートして片面には配線パターンを露光し、現像,エッチング後、レジストを剥離して片面に配線パターン11を形成し、配線付両面板12を作製した。
【0089】
(B)次に実施例5で作製した銅箔をエッチアウトしたプリプレグを配線付両面板12で挟み、真空下,加熱,加圧して多層化し多層基板13を作成した。加熱条件は120℃/30分,180℃/100分,プレス圧力1.5MPa の多段階加熱とした。
【0090】
(C)多層基板13の両面にフォトレジスト(日立化成製HS425)をラミネートして、所定の位置にドリル加工によりスルーホール(以下TH)14を形成し、次いで実施例2で使用したワニスを塗布しTH14内面に拡散防止膜15を形成させた。
【0091】
(D)レジスト剥離後に両面板をめっき触媒のコロイド溶液に浸して、TH内、基板表面に触媒を付与し、めっき触媒の活性化処理の後、無電解めっき(日立化成製CUST2000)により、約1μmの種膜を設けた。次いで両面板の端部に電極を設置して電解めっきによって銅箔及びスルー部分にめっき銅16を約18μm形成し、層間接続を行い多層回路基板17を作製した。
【0092】
本多層配線板を200℃のハンダリフロー槽に10分間,288℃ハンダ槽に1分保持したが、樹脂界面、配線の剥離等は生じなかった。また、配線を形成したサンプルについて、温度を−50と150℃との間で上下させる熱サイクル試験を3000サイクル実行したところ、配線切断および剥離等の不良が発生することはなかった。さらに、40V印加、85℃/85%高温高湿中でマイグレーション試験を行ったところ、表面配線及びTH配線間の絶縁性は1000時間後でも問題はなかった。
【0093】
本発明の多層基板は誘電正接が小さく、熱膨張係数がCuと同等である基板を使用しているため、信頼性が高く、高周波回路に適用しても伝送損失が小さくすることができる。また、両面板の段階で任意の配線パターンを形成しこれらを一括して積層するためプロセスの簡略化が可能で低コスト化できる。さらに、多孔質層を使用しているため表面配線及びTH配線間のマイグレーションに問題が発生する可能性があるが、フィルム層の付与及びTH内面に低誘電正接拡散防止膜を形成しているので伝送特性を低下することなくマイグレーションを防止することができる。
【0094】
[実施例7]
実施例7は、実施例5で作製した銅箔付プリプレグを積層して多層配線基板を作製した例である。
以下に本発明の多層プリント基板の作成例を図4の工程図に従い説明する。
【0095】
(A)銅箔,多孔質ポリイミドフィルム,低誘電正接充填物からなる片面銅箔付多孔質ポリイミドフィルムの銅箔面にフォトレジスト(日立化成製HS425)をラミネートして配線パターンを露光し、現像,エッチング後、レジストを剥離して片面に配線パターン11を形成し、配線付プリプレグ18を作製した。
【0096】
(B)次に配線付プリプレグ18を配線パターンを形成していない銅箔付プリプレグで挟み、真空下、加熱,加圧して多層化し多層基板13を作成した。加熱条件は120℃/30分,180℃/100分,プレス圧力1.5MPa の多段階加熱とした。
【0097】
(C)多層基板13の両面にフォトレジスト(日立化成製HS425)をラミネートして、所定の位置にドリル加工によりスルーホール(以下TH)14を形成させた。このとき通常は多孔質層は低誘電正接充填物が充填されているためメッキ工程での残留物の問題はないが、場合によってはプリプレグから充填物が層間に染み出した際に多孔質層の空孔が再現する。この場合は実施例6同様に拡散防止膜を形成して多孔質層内へのメッキ液浸入の防止処理を行っても良い。
【0098】
(D)レジスト剥離後に両面板をめっき触媒のコロイド溶液に浸して、TH内、基板表面に触媒を付与し、めっき触媒の活性化処理の後、無電解めっき(日立化成製CUST2000)により、約1μmの種膜を設けた。次いで両面板の端部に電極を設置して電解めっきによって銅箔及びスルー部分にめっき銅16を約18μm形成し、層間接続を行い多層回路基板17を作製した。
【0099】
本多層配線板を200℃のハンダリフロー槽に10分間、288℃ハンダ槽に1分保持したが、樹脂界面、配線の剥離等は生じなかった。また、配線を形成したサンプルについて、温度を−50と150℃との間で上下させる熱サイクル試験を3000サイクル実行したところ、配線切断および剥離等の不良が発生することはなかった。さらに、40V印加、85℃/85%高温高湿中でマイグレーション試験を行ったところ、表面配線及びTH配線間の絶縁性は1000時間後でも問題はなかった。
【0100】
本発明の多層基板は誘電正接が小さく、熱膨張係数がCuと同等である基板を使用しているため、信頼性が高く、高周波回路に適用しても伝送損失が小さくすることができる。また、片面板の段階で任意の配線パターンを形成しこれらを一括して積層するためプロセスの簡略化が可能で低コスト化できる。さらに、多孔質層に低誘電正接樹脂を含浸しているため伝送特性を低下することなくマイグレーションを防止することができる。
【0101】
[実施例8]
実施例8は、本発明の多層配線基板をアンテナに適用した例を示す。以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0102】
図5は、本発明のアンテナ素子一体型高周波回路モジュールの要部断面構造を示す断面図である。本実施例は、5GHz帯の円偏波の信号を送受信するためのアンテナ素子一体型高周波回路モジュールである。図1に示すように、本実施例のアンテナ素子一体型高周波回路モジュールは、矩形の基板19,MMICを用いて構成した高周波回路モジュール20、並びにディスクリート部品21で構成される。高周波回路モジュール20は、図示しないがガラスセラミクスを用いた多層基板により作製したパッケージに、GaAs半導体を用いて作製したMMICチップが積層されて構成される。MMICチップは、スイッチ、低雑音増幅器、電力増幅器、ミキサ、逓倍器などを構成する。これらのMMICチップ間を接続する配線などはガラスセラミクスのパッケージ内に設けられており、また、MMICチップは、ワイヤボンディングでパッケージ内に設けられた配線と接続されている。また、バンドパスフィルタ,フェーズロックループ(PLL)モジュール,水晶発振器は、ディスクリート部品21で構成される。基板19は、銅箔からなる3層の導体層と、2層の誘電体層(22,23)から形成されており、各導体層は、上から順に、アンテナ素子24,接地電極25,配線26として使用され、配線26がクロスする部分はジャンパー配線29によって接続される。アンテナ素子一体化高周波回路モジュールは外部接続端子30により外部と接続される。
【0103】
第3の導体層には、複数の配線26、即ち、高周波回路モジュール20への電源供給線,高周波回路モジュール20とディスクリート部品21および外部回路をつなぐための配線、並びにアンテナ素子24と高周波回路モジュール20を接続するための配線などが形成される。アンテナ素子24と、配線26の一部はビアホール27によって接続される。また、配線26と同じ導体層に形成されたパタンの一部と接地電極25とは、ビアホール28により電気的接続されて、前記配線26と同じ導体層に形成されたパタンの一部は接地電極25と同電位になるように構成される。
【0104】
本実施例において、基板19を構成する誘電体層22の厚さと、誘電体層23の厚さとは異なっている。アンテナに必要とされる帯域や利得などによって、誘電体層22の厚さは適宜変化させる。また、誘電体層23の厚さも、アンテナ素子一体型高周波回路モジュールの全体の厚さ、あるいは、配線26の幅が所望の値になるように、適宜変化させる。本実施例で使用する誘電体層は本発明の多孔質配線板を使用しており、低誘電正接であり伝送損失を小さくすることができる。
【0105】
また本実施例で基板19は、3層の導体層と2層の誘電体層により構成されているが、誘電体層22と誘電体層23は電気的特性を変化させることができる。特に、誘電体層22と誘電体層23は比誘電率を変化させ、誘電体層23の比誘電率を大きくすることが有効である。
【0106】
本実施例において、誘電体層23上に銅箔を用いて4分の1波長の配線を形成する場合、その長さは誘電体層23の比誘電率によって変化し、比誘電率が大きいほど配線パタンとしての長さは短くなる。したがって、本実施例では、4分の1波長の配線パタンを短くして、アンテナ素子一体型高周波回路モジュールを小型化するために、比誘電率の大きな誘電体層23を用いている。一方、アンテナの電気的特性は、一般に誘電体層22の比誘電率が小さいほうが良くなるため、誘電体層22は誘電体層23よりも比誘電率の小さいものを用いている。
【0107】
このように、本実施の形態では、基板19を比誘電率が異なる誘電体層22と誘電体層23を用いて構成することにより、アンテナの特性が良く、かつ小型のアンテナ素子一体型高周波回路モジュールを実現することができる。なお誘電体層の誘電率を変化させる場合は、低誘電率材料には実施例1〜3で作製した多孔質ポリイミドを使用しており、伝送損失を小さくすることができる。一方、高誘電体層には実施例4,5で作製した多孔質に低誘電樹脂物を充填したものを使用する。また、酸化物高誘電体粒子を多孔質層に充填し、高誘電体層とすることもできる。多孔質体を使用することで多孔質層内に充填物の種類や充填量を制御することで自由に誘電体層の誘電率を操作することができ、回路基板の設計を簡略化できる。
【0108】
以上説明した実施例によれば、作製工程において不揮発性で、溶解性及び各種樹脂との相溶性に優れ、その上、硬化後の誘電率及び誘電正接が低く、耐熱性及び柔軟性が良好な架橋剤を含む樹脂組成物を接着剤または充填材に用い、多層化が容易で、誘電率,誘電正接が小さく、機械的強度が高く、配線切断等を防止でき信頼性が高い構造の高周波用多孔質ポリイミドフィルム、および高周波用多孔質ポリイミド回路基板を得ることできる。
【0109】
【発明の効果】
本発明によれば、低誘電正接,高強度,低熱膨張の耐熱性多孔質樹脂配線基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】低誘電正接接着層を有した両面板を現わす模式図である。
【図2】低誘電正接樹脂含浸プリプレグを現わす模式図である。
【図3】図1の両面板を使用した多層配線板作製時のプロセスを現わす模式図である。
【図4】図2の両面板を使用した多層配線板作製時のプロセスを現わす模式図である。
【図5】アンテナ素子一体高周波モジュールを現わす断面図である。
【符号の説明】
1…銅箔、2…フィルム層、3…多孔質層、4…片面銅箔フィルム層付多孔質ポリイミドフィルム、5…低誘電正接接着層、6…両面銅箔フィルム層付多孔質ポリイミドフィルム、7…多孔質ポリイミドフィルム、8…銅箔付き多孔質ポリイミドフィルム、9…低誘電正接充填物、10…プリプレグ、11…配線パターン、12…配線付両面板、13…多層基板、14…TH、15…拡散防止膜、16…メッキ銅、17…多層回路基板、18…配線付プリプレグ、19…基板、20…高周波回路モジュール、21…ディスクリート部品、22,23…誘電体層、24…アンテナ素子、25…接地電極、26…配線、27,28…ビアホール、29…ジャンパー配線、30…外部接続端子。
Claims (16)
- 請求項1に記載の耐熱性多孔質樹脂配線基板において、前記低誘電正接樹脂組成物がスチレン基を重合しうる硬化触媒及びスチレン基の重合を抑制しうる重合禁止剤の少なくとも一方を更に含有することを特徴とする耐熱性多孔質樹脂配線基板。
- 請求項2に記載の耐熱性多孔質樹脂配線板において、前記架橋成分及び高分子量体の合計100重量部に対して、前記硬化触媒の添加量が0.0005 〜10重量部であり、前記重合禁止剤の添加量が0.0005〜5 重量部であることを特徴とする耐熱性多孔質樹脂配線基板。
- 請求項1に記載の耐熱性多孔質樹脂配線基板において、前記高分子量体が、ブタジエン,イソプレン,スチレン,メチルスチレン,エチルスチレン,ジビニルベンゼン,アクリル酸エステル,アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、N−ビニルフェニルマレイミド,ポリビニルベンジルエーテルの少なくとも一種からなる重合体,置換基を有していてもよいポリフェニレンオキサイド、ならびに脂環式構造を有するポリオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする耐熱性多孔質樹脂配線基板。
- 請求項1に記載の耐熱性多孔質樹脂配線基板において、前記耐熱性多孔質樹脂フィルムがフィルム層と多孔質層を2層以上積層した積層フィルムであることを特徴とする耐熱性多孔質樹脂配線基板。
- 請求項1に記載の耐熱性多孔質樹脂配線基板において、前記耐熱性多孔質樹脂フィルムの空孔に前記接着剤が含浸されていることを特徴とする耐熱性多孔質樹脂配線基板。
- 請求項1に記載の耐熱性多孔質樹脂配線板において、所定の位置に形成されたスルーホールと、前記スルーホール内に形成された電極とを有することを特徴とする耐熱性多孔質樹脂配線基板。
- 請求項7に記載の耐熱性多孔質樹脂配線板において、前記スルーホール内表面に前記低誘電正接樹脂組成物のコーティング膜を有することを特徴とする耐熱性多孔質樹脂配線基板。
- 前記耐熱性多孔質樹脂配線板を接着剤で介して積層したことを特徴とする請求項7に記載の耐熱性多孔質樹脂多層配線基板。
- 請求項10に記載のプリプレグ又はその硬化物の両面又は片面に導体層が設置されてなることを特徴とする多層配線基板。
- スルーホール電極を形成し、導体層をエッチングして配線を形成した請求項
11に記載のプリプレグを積層し加熱プレスすることを特徴とする積層配線基板の製造方法。 - 請求項1に記載の耐熱性多孔質樹脂多層配線基板を用いたことを特徴とする電子部品。
- 請求項1に記載の耐熱性多孔質樹脂配線基板において、前記導体層が銅であることを特徴とする耐熱性多孔質樹脂配線基板。
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