JP4550324B2 - 低誘電正接樹脂組成物、その硬化物ならびに該組成物を用いたプリプレグ、積層板及び多層プリント基板 - Google Patents

低誘電正接樹脂組成物、その硬化物ならびに該組成物を用いたプリプレグ、積層板及び多層プリント基板 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高周波信号に対応するための誘電損失の小さなプリント配線板、導体付積層板、プリプレグならびにそれらを製造するために用いる低誘電正接樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、PHS、携帯電話等の情報通信機器の信号帯域、コンピューターのCPUクロックタイムはGHz帯に達し、高周波数化が進行している。電気信号の誘電損失は、回路を形成する絶縁体の比誘電率の平方根、誘電正接及び使用される信号の周波数の積に比例する。そのため、使用される信号の周波数が高いほど誘電損失が大きくなる。誘電損失は電気信号を減衰させて信号の信頼性を損なうので、これを抑制するために絶縁体には誘電率及び誘電正接の小さな材料を選定する必要がある。絶縁体の低誘電率化及び低誘電正接化には分子構造中の極性基の除去が有効であり、フッ素樹脂、硬化性ポリオレフィン、シアネートエステル系樹脂、硬化性ポリフェニレンオキサイド、アリル変性ポリフェニレンエーテル、ジビニルベンゼン又はジビニルナフタレンで変性したポリエーテルイミド等が提案されている。
【0003】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるフッ素樹脂は、誘電率及び誘電正接がともに低く、高周波信号を扱う基板材料に使用されている。しかし、PTFEは熱可塑性樹脂であるため、成形加工時の膨張収縮が大きく、扱いにくい材料であった。また、フッ素樹脂に架橋性及び溶解性を付与する提案も種々行われているが、それらの材料は総じて高価で、特性的にはPTFEに及ばないものが多い。これに対して、有機溶剤に可溶で取り扱い易い、非フッ素系の低誘電率で低誘電正接の樹脂が種々検討されてきた。例えば、特開平8−208856号記載のポリブタジエン等のジエン系ポリマーをガラスクロスに含浸して過酸化物で硬化した例;特開平10−158337号記載の如く、ノルボルネン系付加型重合体にエポキシ基を導入し、硬化性を付与した環状ポリオレフィンの例;特開平11−124491号記載の如く、シアネートエステル、ジエン系ポリマー及びエポキシ樹脂を加熱してBステージ化した例;特開平9−118759号記載のポリフェニレンオキサイド、ジエン系ポリマー及びトリアリルイソシアネートからなる変性樹脂の例;特開平9−246429号記載のアリル化ポリフェニレンエーテル及びトリアリルイソシアネート等からなる樹脂組成物の例;特開平5−156159号記載のポリエーテルイミドと、スチレン、ジビニルベンゼン又はジビニルナフタレンとをアロイ化した例;特開平5−78552号記載のジヒドロキシ化合物とクロロメチルスチレンからウイリアムソン反応で合成した、例えばヒドロキノンビス(ビニルベンジル)エーテルとノボラックフェノール樹脂からなる樹脂組成物の例など多数が挙げられる。前述の例の多くには、架橋剤又は架橋助剤としてジビニルベンゼンを含んでもよいとの記述があった。これは、ジビニルベンゼンが構造中に極性基を有しておらず、その硬化物の誘電率及び誘電正接が低いこと、ならびに熱分解温度が350℃以上と高いことに起因する。しかし、ジビニルベンゼン硬化物は非常に脆いため、硬化時に硬化物にひび割れが生じ易いという欠点を有していた。そのため、通常ジビニルベンゼンの添加量は、他の樹脂成分に比べて低く設定されていた。ジビニルベンゼンを主たる架橋剤に使用している特開平5−156159号公報の例でも樹脂全体の9%程度の添加量である。同公報記載のジビニルナフタレンも硬化物の脆さという点ではジビニルベンゼンと同様の問題を有している。また、ジビニルベンゼンは揮発性を有しているため、硬化する際に揮発してしまい硬化物の特性コントロールが難しいという欠点を有していた。これに対して、特開平5−78552号公報ではヒドロキノンビス(ビニルベンジル)エーテル等のビススチレン化合物が不揮発性であり、柔軟性の高い硬化物を与えることを明らかにしている。しかし、一般的にアルキレンエーテル基は、アルキレン基及びアリーレン基に比べて誘電率、誘電正接及び耐熱性の観点で不利である。スチレン基間を結合する構造にはアルキレン基及びアリーレン基等の炭化水素系の骨格が好ましい。スチレン基間をエチレン基で結合した多官能スチレン化合物の例としては特開平9−208625号公報記載の1,2−ビス(ビニルフェニル)エタン、Makromol.Chem.vol.187、23頁(1986)記載の側鎖にビニル基を有するジビニルベンゼンオリゴマーがある。しかし、これらの報告では、機械強度、耐熱性、誘電率又は誘電正接に関する検討はなされていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来、それを含む組成物の硬化後の誘電率及び誘電正接を低いものとしうる架橋剤として使用されていたジビニルベンゼンは、揮発性であること、及びその硬化物が脆いこと等の欠点を有していた。
本発明の目的は、誘電率及び誘電正接が低く、不揮発性で、溶解性及び各種樹脂との相溶性に優れ、その上、硬化後の耐熱性及び柔軟性が良好な架橋剤を含む、樹脂組成物、その硬化物ならびに該組成物を用いたプリプレグ、積層板及び多層プリント基板を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の発明を包含する。
(1)下記一般式:
【化3】
Figure 0004550324
(式中、Rは炭化水素骨格を表し、R1は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、mは1〜4の整数、nは2以上の整数を表す。)
で示される複数のスチレン基を有する重量平均分子量1000以下の架橋成分と、高分子量体とを含有する樹脂組成物であって、該樹脂組成物を180℃、100分で硬化させて得られる硬化物のガラス転移温度が170℃以上であるか、又は該硬化物の170℃における弾性率が500MPa以上である樹脂組成物。
(2)スチレン基を重合しうる硬化触媒及びスチレン基の重合を抑制しうる重合禁止剤の少なくとも一方を更に含有する前記(1)に記載の組成物。
(3)前記架橋成分及び高分子量体の合計100重量部に対して、前記硬化触媒の添加量が0.0005〜10重量部であり、前記重合禁止剤の添加量が0.0005〜5重量部である前記(2)に記載の組成物。
(4)前記高分子量体のガラス転移温度が170℃以上である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)前記高分子量体が、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ジビニルベンゼン、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド及びN−ビニルフェニルマレイミドの少なくとも一種からなる重合体、置換基を有していてもよいポリフェニレンオキサイド、ならびに脂環式構造を有するポリオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)下記一般式:
【化4】
Figure 0004550324
(式中、Rは炭化水素骨格を表し、R1は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、mは1〜4の整数、nは2以上の整数を表す。)
で示される複数のスチレン基を有する重量平均分子量1000以下の架橋成分と、高分子量体とを含有する樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物であって、ガラス転移温度が170℃以上であるか、又は170℃における弾性率が500MPa以上である硬化物。
(7)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物の硬化物。
(8)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物を、有機又は無機のクロス又は不織布に含浸させ、乾燥させてなるプリプレグ。
(9)前記(8)に記載のプリプレグの硬化物。
(10)前記(8)に記載のプリプレグ又はその硬化物の両面又は片面に導体層が設置されてなる積層板。
(11)前記(10)に記載の積層板の導体層に配線加工を施した後、プリプレグを介して該積層板を積層接着してなる多層プリント基板。
【0006】
(作用)
ジビニルベンゼンの硬化物の耐熱性が高く、その誘電率及び誘電正接が低いことはすでに述べた。本発明により、スチレン基を複数有する重量平均分子量が1000以下で不揮発性の炭化水素骨格の架橋成分と、高分子量体とを含有する樹脂組成物が、硬化時にひび割れせず、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を与えることが明らかとなった。スチレン基間をアルキレン基のような柔軟な炭化水素骨格で結合しているため、硬化時のひび割れが生じないものである。また、硬化後のガラス転移温度が170℃以上であるか、又は硬化後の170℃における弾性率が500MPa以上である低誘電正接樹脂組成物は、金ワイヤボンディング、はんだ付等の高温での加工プロセスにおいて変形が小さいので、マルチチップモジュール、多層プリント基板等の電子部品のための絶縁材料に適する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂組成物及びその硬化物について説明する。
本発明の樹脂組成物は、下記一般式:
【化5】
Figure 0004550324
(式中、Rは炭化水素骨格を表し、R1は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、mは1〜4の整数、nは2以上の整数を表す。)
で示される複数のスチレン基を有する重量平均分子量1000以下の架橋成分と、高分子量体とを含有する樹脂組成物であって、該樹脂組成物を180℃、100分で硬化させて得られる硬化物のガラス転移温度が170℃以上であるか、又は該硬化物の170℃における弾性率が500MPa以上である樹脂組成物であり、前記硬化物のガラス転移温度が170〜300℃であるか、又は該硬化物の170℃における弾性率が500〜3000MPaであることが好ましい。
【0008】
本発明の硬化物は、前記架橋成分と、高分子量体とを含有する樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物であって、ガラス転移温度が170℃以上であるか、又は170℃における弾性率が500MPa以上である硬化物であり、ガラス転移温度が170〜300℃であるか、又は170℃における弾性率が500〜3000MPaであることが好ましい。
【0009】
なお、本明細書中において、ガラス転移温度とは、昇温速度5℃/分の条件で動的粘弾性特性を観測した際に、損失弾性率と貯蔵弾性率の比であるtanδがピークとなる温度を示すものであり、弾性率とは同条件で測定した170℃における弾性率を示すものである。誘電率及び誘電正接が低く、ガラス転移温度が高く、高温下における弾性率が高い本発明の樹脂組成物の硬化物を絶縁層に使用するプリント基板を使用することにより、電気信号の誘電損失を低く押さえ、かつ金ワイヤボンディング、ハンダ付等の高温での加工プロセスにおける変形を抑制することができる。
【0010】
前記式において、Rで表される炭化水素骨格は、該架橋成分の重量平均分子量が1000以下となるものであれば特に制限はない。即ち、Rで表される炭化水素骨格は、スチレン基における置換基、R1、R2、R3及びR4の有無及びその大きさ、m及びnの数に応じて適宜選択することができるが、一般には炭素数1〜60であり、好ましくは炭素数2〜30である。Rで表される炭化水素骨格は、直鎖状又は分枝状のいずれでもよく、また、脂環式構造、芳香族環構造等の環構造を1つ以上含んでいてもよく、更に、ビニレン、エチニレン等の不飽和結合を含んでいてもよい。
【0011】
Rで表される炭化水素骨格としては、例えば、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、メチルトリメチレン、メチルテトラメチレン、ペンタメチレン、メチルペンタメチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、フェニレン、フェニレンジエチレン、キシリレン、1−フェニレン−3−メチルプロペニレン等が挙げられる。
【0012】
前記式において、R1で表される炭化水素基としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10の、直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、エイコシル;炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10の、直鎖状もしくは分枝状のアルケニル基、例えばビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチルアリル;アリール基、例えばフェニル、ナフチル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミルが挙げられる。
【0013】
前記式において、nが2以上の整数であることからR1は複数存在し、mが2〜4の整数である場合も、R1は複数存在するが、そのような複数存在するR1は同一でも異なっていてもよく、その結合位置も同一でも異なっていてもよい。
前記式において、R2、R3又はR4で表されるアルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ヘキシルが挙げられる。
前記式において、置換されていてもよいビニル基[(R3)(R4)C=C(R2)−]は、ベンゼン環上、Rに対して、好ましくはメタ位又はパラ位に存在する。
【0014】
本発明に用いる架橋成分としては、複数の(置換されていてもよい)スチレン基を有する重量平均分子量1000以下の多官能性モノマーが好ましい。スチレン基は反応性が高く、誘電率及び誘電正接が非常に低い。架橋成分の骨格には誘電率及び誘電正接の観点から炭化水素骨格を採用することが好ましい。これによって、スチレン基の低誘電率性及び低誘電正接性を損なうことなく、該架橋成分に不揮発性及び柔軟性を付与することができる。また、重量平均分子量1000以下の架橋成分を選択することによって、比較的低い温度で溶融流動性を示し、有機溶媒への溶解性もよくなるため、成形加工及びワニス化が容易になる。架橋成分の重量平均分子量が大きすぎると、溶融流動性が低くなり、成形加工の際に架橋が生じて成形不良となる場合がある。該架橋成分の重量平均分子量は1000以下であれば制限はないが、好ましくは200〜500である。
【0015】
架橋成分の好ましい例としては、1,2−ビス(p−ビニルフェニル)エタン、1,2−ビス(m−ビニルフェニル)エタン、1−(p−ビニルフェニル)−2−(m−ビニルフェニル)エタン、1,4−ビス(p−ビニルフェニルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(m−ビニルフェニルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(p−ビニルフェニルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(m−ビニルフェニルエチル)ベンゼン、1−(p−ビニルフェニルエチル)−4−(m−ビニルフェニルエチル)ベンゼン、1−(p−ビニルフェニルエチル)−3−(m−ビニルフェニルエチル)ベンゼン及び側鎖にビニル基を有するジビニルベンゼン重合体(オリゴマー)等が挙げられる。これらの架橋成分は2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0016】
本発明に好ましく用いられる架橋成分の合成方法としては、特開平11−60519号公報に記載の方法で合成されたハロゲノアルキルスチレンをグリニャール反応によって種々のハロゲン化物とカップリングする方法、Makromol.Chem.vol.187、23頁(1986)記載の側鎖にビニル基を有するジビニルベンゼンオリゴマーの合成方法が挙げられるが、これらに限定されない。このようにして得られた架橋成分は、特に硬化触媒を添加しなくとも180℃以下の比較的低い温度で架橋し、耐熱性が高く、誘電率及び誘電正接の低い硬化物を与える。しかし、該架橋成分を高分子量体と組み合わせずに単独で使用した場合には、プリプレグ化した際のタックフリー性が得られない場合や、また、硬化後に十分な機械強度を得られない場合がある。
【0017】
本発明では前述の架橋成分と高分子量体とを組み合わせることによって、タックフリー性及び硬化物の機械強度の向上を図ることを特徴としている。本発明に使用される高分子量体は、そのガラス転移温度が170℃以上であるか、又は170℃における弾性率が500MPa以上であり、かつワニス化が容易な可溶性ポリマーであることが好ましく、ガラス転移温度が170〜300℃であるか、又は170℃における弾性率が500〜3000MPaであることが更に好ましい。高分子量体が硬化性を有する場合には、硬化後のガラス転移温度が170℃以上であるか又は170℃における弾性率が500MPa以上であることが好ましく、硬化後のガラス転移温度が170〜300℃であるか又は170℃における弾性率が500〜3000MPaであることが更に好ましい。このような高分子量体の具体的な例としては、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ジビニルベンゼン、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸フェニルなど)、アクリロニトリル及びN−フェニルマレイミドから選択される単量体とN−ビニルフェニルマレイミドとの共重合体、置換基を有していてもよいポリフェニレンオキサイドならびに脂環式構造を有するポリオレフィン等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明に用いる架橋成分は殆どの有機溶媒に可溶であるため、種々の高分子量体と混合し、均一なワニスを得ることができる。前記有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類等が挙げられ、これらの有機溶剤は単独で、又は2種以上混合して用いることができる。ブタジエン、イソプレン及びアクリル酸エステルなどのゴム状成分は、それを含む樹脂組成物の硬化物に柔軟性及び接着性を付与し、かつ塗膜に平滑性を付与する。スチレン、エチルスチレン及び/又はアクリロニトリルは、先のゴム状成分と共重合することによって、その硬化物の耐熱性を向上させる働きを有する。ジビニルベンゼン及び/又はN−ビニルフェニルマレイミドを用い、公知のイオン重合法によって、側鎖に官能基を有する高分子量体を合成することができる。特にN−ビニルフェニルマレイミドは、アニオン重合によってマレイミド基のみが、カチオン重合によってスチレン基のみが重合するため、各種単量体との共重合が容易であり、その共重合体のガラス転移温度は高い。また、側鎖に官能基を有する高分子量体は、前記架橋成分と反応するため、該高分子量体と架橋成分とを含む樹脂組成物は硬化後の相分離がおさえられ、強固な硬化物を与える。ポリフェニレンオキサイド及び脂環式構造を有するポリオレフィンは耐熱性ポリマーであり、前記架橋成分とアロイ化することによって、硬化物に柔軟性及び接着性を付与し、その機械強度を向上させることができる。これらの高分子量体は単独で用いても、複合して用いてもよい。例えば、ポリフェニレンオキサイドとポリブタジエンとを組合せるのが好ましい。
【0018】
本発明の組成物には、その硬化物の機械強度の向上、熱膨張係数の低減、誘電率の調整、軽量化又は表面粗化によるめっき配線との接着力の向上等の目的のために充填剤を添加することができる。機械強度の向上のためには、硼酸アルミニウムウィスカー又はカーボン繊維等の繊維状の充填剤を添加することが好ましい。熱膨張係数の低減のためには、酸化珪素等の粒径の異なる球状充填剤を高い割合で充填することが好ましい。誘電率の調整においては、誘電率の高い酸化チタンを添加して誘電率を高めるか、又は誘電率の低い硼珪酸ガラスバルーンを添加することによって誘電率を低減させるのが好ましい。表面粗化のためには、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムのような、アルカリ水溶液に可溶な充填剤を添加することが好ましい。これら充填剤は単独でも又は複合して用いてもよい。
【0019】
本発明の樹脂組成物に含まれる架橋成分、高分子量体及び充填剤の添加量に関しては特に制限はないが、架橋成分が5〜95重量部、高分子量体が95〜5重量部、充填剤が70〜5重量部の範囲で添加するのが好ましい。前記組成範囲内で、成膜性の付与、強度の向上、熱膨張係数の低減、誘電率の調整、軽量化及び表面粗化によるめっき配線との接着力の向上等の目的に応じて組成を調整することができる。より好ましい組成としては、架橋成分が50〜95重量部、高分子量体が50〜5重量部、充填剤が70〜5重量部であり、更に好ましい組成としては、架橋成分が50〜80重量部、高分子量体が50〜20重量部、充填剤が70〜5重量部であり、この組成範囲により架橋性の官能基を持たない高分子量体を用いた場合にもその硬化物の耐溶剤性が保たれる。
【0020】
本発明の樹脂組成物は硬化触媒を添加しなくとも加熱のみによって硬化することができるが、硬化効率の向上を目的として、スチレン基を重合しうる硬化触媒を添加することができる。その添加量には特に制限はないが、硬化触媒の残基が誘電特性に悪影響を与える恐れがあるので、前記架橋成分及び高分子量体の合計100重量部に対して、0.0005〜10重量部とすることが望ましい。硬化触媒を前記範囲で添加することにより、スチレン基の重合反応が促進され、低温で強固な硬化物を得ることができる。スチレン基の重合を開始しうるカチオン又はラジカル活性種を、熱又は光によって生成する硬化触媒の例を以下に示す。カチオン重合開始剤としては、BF4、PF6、AsF6、SbF6を対アニオンとするジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩及び脂肪族スルホニウム塩が挙げられ、旭電化工業製SP−70、172、CP−66、日本曹達製CI−2855、2823、三新化学工業製SI−100L及びSI−150L等の市販品を使用することができる。ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン及びベンゾインメチルのようなベンゾイン系化合物、アセトフェノン及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンのようなアセトフェノン系化合物、チオキサントン及び2,4−ジエチルチオキサントンのようなチオキサンソン系化合物、4,4’−ジアジドカルコン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン及び4,4’−ジアジドベンゾフェノンのようなビスアジド化合物、アゾビスイソブチルニトリル、2、2−アゾビスプロパン、m,m’−アゾキシスチレン及びヒドラゾンのようなアゾ化合物、ならびに2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジクミルパーオキシドのような有機過酸化物等が挙げられる。特に、官能基を持たない化合物の水素引き抜きを生じさせ、架橋成分と高分子量体間の架橋をもたらしうる有機過酸化物又はビスアジド化合物を添加することが望ましい。
【0021】
本発明の樹脂組成物には、保存安定性を増すために重合禁止剤を添加することもできる。その添加量は、誘電特性、硬化時の反応性を著しく阻害しないような範囲であることが好ましく、前記架橋成分及び高分子量体の合計100重量部に対して、0.0005〜5重量部とすることが望ましい。重合禁止剤を前記範囲で添加すると、保存時の余計な架橋反応を抑制することができ、また、硬化時に著しい硬化障害をもたらすこともない。重合禁止剤の例としては、ハイドロキノン、p−ベンゾキノン、クロラニル、トリメチルキノン、4−t−ブチルピロカテコール等のキノン類及び芳香族ジオール類が挙げられる。
【0022】
本発明の樹脂組成物は、有機又は無機のクロス又は不織布に含浸し、乾燥させることによりプリプレグとして用いることができる。プリプレグの基材については特に制限はなく、各種ガラスクロス、ガラス不織布、アラミド不織布及び多孔質PTFE等を用いることができる。プリプレグは、樹脂組成物を用いて作製したワニスに、基材となるクロス又は不織布を浸し、その後これを乾燥することにより作製される。含浸後の乾燥条件は樹脂組成物によるが、例えば溶媒としてトルエンを使用した場合は、80〜130℃で30〜90分程度乾燥するのが好ましい。
【0023】
本発明のプリプレグに電解銅箔等の導体箔を重ね、加熱プレス加工することによって、表面に導体層を有する積層板を作製することができる。銅箔の厚さは、12〜36μm程度であるのが好ましい。加圧プレス加工の条件は、樹脂組成物によるが、例えば高分子量体として環状ポリオレフィンを使用した場合には、120〜180℃、1.0〜5MPaで1〜3時間成形するのが好ましい。
【0024】
この積層板の導体層を通常のエッチング法によって配線加工し、これを前記プリプレグを介して複数積層し、加熱プレス加工することによって多層化して多層プリント基板を作製することもできる。このようにして得られた多層プリント基板は誘電正接が低いため、誘電損失の小さな多層プリント基板となる。また、本発明の多層プリント基板は、ガラス転移温度が高く、かつ高温下での弾性率が高いため金ワイヤボンディング、ハンダ付け等の高温での加工プロセスに十分対応できる。
【0025】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下の説明中に部とあるのは、特に断りのない限り重量部を指す。
表1〜3に本発明の実施例と比較例の組成及びその特性を示す。以下に実施例及び比較例に使用した試薬の名称、合成方法、ワニスの調製方法及び硬化物の評価方法を説明する。
【0026】
(1)1,2−ビス(ビニルフェニル)エタン(BVPE)の合成
1,2−ビス(ビニルフェニル)エタン(BVPE)は、以下に示すような公知の方法で合成した。500mlの三つ口フラスコにグリニャール反応用粒状マグネシウム(関東化学製)5.36g(220mmol)をとり、滴下ロート、窒素導入管及びセプタムキャップを取り付けた。窒素気流下、スターラーによってマグネシウム粒を攪拌しながら、系全体をドライヤーで加熱脱水した。乾燥テトラヒドロフラン300mlをシリンジにとり、セプタムキャップを通じて注入した。溶液を−5℃に冷却した後、滴下ロートを用いてビニルベンジルクロライド(VBC、東京化成製)30.5g(200ml)を約4時間かけて滴下した。滴下終了後、0℃/20時間、攪拌を続けた。反応終了後、反応溶液をろ過して残存マグネシウムを除き、エバポレーターで濃縮した。濃縮溶液をヘキサンで希釈し、3.6%塩酸水溶液で1回、純水で3回洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで脱水した。脱水溶液をシリカゲル(和光純薬製ワコーゲルC300)/ヘキサンのショートカラムに通して精製し、真空乾燥してBVPEを得た。得られたBVPEはm−m体(液状)、m−p体(液状)、p−p体(結晶)の混合物であり、収率は90%であった。1H−NMRによって構造を調べたところその値は文献値と一致した(6H−ビニル:α−2H、6.7、β−4H、5.7、5.2;8H−アロマティック:7.1〜7.35;4H−メチレン:2.9)。
このBVPEを架橋成分として用いた。
【0027】
(2)ポリジビニルベンゼン(polyDVB)の合成
ポリジビニルベンゼン(polyDVB)は、以下に示すような公知の方法で合成した。520mlのジイソプロピルアミンTHF溶液(ジイソプロピルアミン含有量101g=1mol)を窒素置換した1000mlの三つ口フラスコに入れた。11mlのn−ブチルリチウムヘキサン溶液(n−ブチルリチウム含有量1.9g=20mmol)を加えた。140mmol(18.2g)のジビニルベンゼンを加えた。60分間室温で攪拌した。メタノールを加えて反応を停止した。反応溶液をエバポレーターで濃縮した後、冷メタノールで再沈、乾燥してポリジビニルベンゼンを得た。収率は約50%で、分子量は約20000であった。ポリジビニルベンゼンは可溶性であり、側鎖にビニル基を有していた(4H−アロマティック:6.5−7.2;3H−ビニル:5−6.5;3H−メチレン、メチン:1−2)。このポリジビニルベンゼンを比較例5の架橋成分として使用した。
【0028】
(3)その他の試薬
その他の高分子量体、架橋成分として、以下に示すものを使用した。
高分子量体;
Zeonor:日本ゼオン製、環状ポリオレフィン(Zeonor1600R)PPE:アルドリッチ製、ポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド
比較例4の架橋成分;
DVB:和光純薬製、ジビニルベンゼン
硬化触媒;
25B:日本油脂製2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(パーヘキシン25B)
有機不織布;
クラレ製ベクトランK−9
デュポン製サーマウントE210
ガラスクロス;
日東紡製#2116
【0029】
(4)ワニスの調製方法
所定量の高分子量体、架橋成分及び硬化触媒をクロロホルム又は二硫化炭素に溶解することによって樹脂組成物のワニスを作製した。
【0030】
(5)樹脂板の作製
前記ワニスをPETフィルムに塗布して乾燥した後に、これを剥離してテフロン製のスペーサー内に所定量入れ、ポリイミドフィルム及び鏡板を介し、真空下で、加熱及び加圧して硬化物としての樹脂板を得た。加熱条件は、120℃/30分、150℃/30分、180℃/100分で、プレス圧力1.5MPaの多段階加熱とした。樹脂板の大きさは70×70×1mmとした。
【0031】
(6)プリプレグの作製
実施例において作製したプリプレグはすべて、樹脂組成物のワニスを所定の有機不織布又はガラスクロスに含浸して、室温にて約1時間、90℃で60分間乾燥することにより作製した。使用した基材名及び樹脂含有率(高分子量体と架橋成分の含有率)を表3に示した。
【0032】
(7)プリプレグ硬化物の作製
積層板とした際のプリプレグの特性を知るため、前記の方法で作製したプリプレグを真空下、加熱及び加圧して模擬基板を作製した。加熱条件は120℃/30分、150℃/30分、180℃/100分、プレス圧力1.5MPaの多段階加熱とした。模擬基板は70×70×0.14〜0.3mmとした。
【0033】
(8)誘電率及び誘電正接の測定
誘電率、誘電正接は空洞共振法(アジレントテクノロジー製8722ES型ネットワークアナライザー、関東電子応用開発製空洞共振器)によって、10GHzでの値を観測した。
【0034】
(9)引張強度及び伸びの測定
引張強度及び伸びは、島津製AGS−100型引張試験機を用い、厚さ1mm、幅1mm、長さ70mmの柱状サンプルを用い、室温、支点間距離20mm引張速度10mm/分の条件で測定した。
【0035】
(10)ガラス転移温度(Tg)、弾性率
Tg、弾性率は、アイティー計測制御製DVA−200型粘弾性測定装置(DMA)を用いて、tanδのピーク位置、170℃における弾性率を観測して求めた。サンプル形状及び支点間距離は引張強度用サンプルと同じであり、昇温速度は5℃/分とした。
【0036】
(11)ピール強度
ピール強度測定用サンプルは、各樹脂組成物を電解銅箔(18μm)の粗面上に樹脂板の作製方法と同様の条件で樹脂層を形成して作製した。樹脂層は厚さ2mm、大きさは70×70mmとした。樹脂層上の電解銅箔を幅10mmに切断して、そのピール強度を測定した。
【0037】
[比較例1]
比較例1は、高分子量体としての環状ポリオレフィン樹脂Zeonorのみからなる樹脂組成物の例である。この組成物の硬化物は、所定量のペレットを金属製のスペーサー内に入れ、ポリイミドフィルム及び鏡板を介して真空下、加熱及び加圧することにより樹脂板として作製した。加熱条件は260℃/30分、プレス圧力1.5MPaとした。樹脂板は70×70×1mmとした。この樹脂板は、誘電率が2.20、誘電正接が0.0007とどちらも非常に低く、Tgは185℃、弾性率は1190MPaとどちらも高い。ただし、本樹脂は硬化性を有していないため有機溶剤中で膨潤する。また、成形時の加熱温度は260℃程度必要であった。
【0038】
[比較例2]
比較例2は、高分子量体としてのPPEのみからなる樹脂組成物の例である。
この組成物の硬化物は、所定量の樹脂粉末を金属製のスペーサー内に入れ、ポリイミドフィルム及び鏡板を介して真空下、加熱及び加圧することにより樹脂板として作製した。加熱条件は320℃/30分、プレス圧力1.5MPaとした。樹脂板は70×70×1mmとした。この樹脂板は、誘電率が2.41、誘電正接が0.0022と非常に低く、Tgは229℃、弾性率は2000MPaとどちらも高い。ただし、本樹脂は硬化性を有していないため有機溶剤中で膨潤する。また、成形温度は320℃程度必要であった。
【0039】
[比較例3]
比較例3は、架橋成分1,2−ビス(ビニルフェニル)エタン(BVPE)及びBVPEの重量に対して1wt%の硬化触媒25Bを含んでなる樹脂組成物の例である。この組成物の硬化物は、テフロンスペーサーを貼り付けた二枚のガラス板の間に無溶剤の状態で樹脂組成物を注入して密閉し、加熱して硬化することにより樹脂板として作製した。加熱条件は120℃/30分、150℃/30分、180℃/100分の多段階加熱とした。樹脂板は70×70×1mmとした。作製した樹脂板は、誘電率が2.56、誘電正接が0.0017と低く、Tgが400℃以上であり、弾性率は2590MPaとどちらも高い。硬化性を有しているため耐溶剤性にも優れる。硬化温度は180℃と比較的低い。しかし、引張強度が31.2MPa、伸びが2%と小さい点で問題を有する。
【0040】
[実施例1〜3]
実施例1〜3は、高分子量体であるZeonorと架橋成分であるBVPEをそれぞれ異なった配合比で含み、更に樹脂成分の重量に対して1wt%の硬化触媒25Bを含んでなる樹脂組成物の例である。これらの組成物の硬化物は、溶媒に二硫化硫黄を使用してワニスを調製し、上述の方法で樹脂板として作製した。
各実施例から明らかなように、各樹脂板の誘電率及び誘電正接は非常に低く、誘電率は2.27〜2.35であり、誘電正接は0.0013〜0.0017であった。その他の特性は添加した高分子量体の特性が反映され、引張強度が68〜79MPa、伸びが21〜28%、Tgが178〜183℃、弾性率が1000〜1130MPa、ピール強度が0.7〜1.2N/mと優れた値を示した。本樹脂組成物は硬化性を有するため耐溶剤性も優れている。また、成形温度は180℃であり、低い温度での成形が可能であった。
【0041】
[実施例4〜6]
実施例4〜6は、高分子量体であるPPEと架橋成分であるBVPEをそれぞれ異なった配合比で含み、更に樹脂成分の重量に対して1wt%の硬化触媒25Bを含んでなる樹脂組成物の例である。これらの樹脂組成物の硬化物は、溶媒にクロロホルムを使用してワニスを調製し、上述の方法で樹脂板として作製した。
各実施例から明らかなように本樹脂組成物の誘電率及び誘電正接は非常に低く、誘電率は2.43〜2.45であり、誘電正接は0.0017〜0.0019であった。その他の特性は添加した高分子量体の特性が反映され、引張強度が63〜82MPa、伸びが26〜47%、Tgが210〜225℃、弾性率が2470〜2530MPa、ピール強度が0.7〜1.2N/mと優れた値を示した。
本樹脂組成物は硬化性を有するため耐溶剤性にも優れている。また、成形温度は180℃であり、低い温度での成形が可能であった。
前記比較例1〜3及び実施例1〜6の結果を、以下の表1に示す;
【0042】
【表1】
Figure 0004550324
【0043】
[比較例4]
比較例4は、DVB及びDVBの重量に対して1wt%の硬化触媒25Bを含むが、高分子量体を含まない樹脂組成物の例である。この組成物の硬化物は、溶媒を使用せずに、上述の方法で樹脂板として作製した。この樹脂板は非常に脆く、硬化時及び冷却時にひび割れが生じて、評価できなかった。
【0044】
[比較例5]
比較例5は分子量が約20000のPolyDVBを架橋成分として、PPEを高分子量体としてそれぞれ50重量部含み、更に樹脂成分の重量に対して1wt%の硬化触媒25Bを含んでなる樹脂組成物の例である。この組成物の硬化物は、溶媒にクロロホルムを使用してワニスを調製し、上述の方法で樹脂板として作製した。この樹脂板は架橋剤の分子量が大きいため、溶融流動性が不十分となり、成形板が作製できないことが確認された。
【0045】
[比較例6]
比較例6は、高分子量体としてのPPE及び架橋成分としてのBVPEをそれぞれ50重量部含み、更に硬化触媒を樹脂成分の合計重量に対して20wt%と過剰に含んでなる樹脂組成物の例である。この組成物の硬化物は、溶媒にクロロホルムを使用してワニスを調製し、上述の方法で樹脂板として作製した。この樹脂板は、硬化触媒を過剰に加えたため、誘電率が2.6、誘電正接が0.003と増加した。また、硬化速度が速いため成形時の流動性が低下して樹脂板の形、厚さが不均一になった。
【0046】
[実施例7及び8]
実施例7及び8は、高分子量体としてのPPE及び架橋成分としてのBVPEをそれぞれ50重量部含み、更に硬化触媒25Bを樹脂成分の重量に対してそれぞれ10wt%又は5wt%含んでなる樹脂組成物の例である。この組成物の硬化物は、溶媒にクロロホルムを使用してワニスを調製し、上述の方法で樹脂板として作製した。この樹脂板は、硬化触媒量が10wt%以下であれば、成形不良は発生しない。また、誘電率は2.43、誘電正接は0.0018〜0.0019であり、著しい特性低下は認められなかった。
前記比較例4〜6及び実施例7〜8の結果を以下の表2に示す;
【0047】
【表2】
Figure 0004550324
【0048】
[実施例9〜11]
表3には、本発明の樹脂組成物に各種基材を含浸させて作製したプリプレグの構成及び誘電特性を示した。作製したプリプレグは何れもタックフリー性を有する。プリプレグの作製には、実施例5で調製した樹脂組成物、すなわち、高分子量体としてのPPE及び架橋成分としてのBVPEをそれぞれ50重量部ならびに樹脂成分の重量に対して1wt%の硬化触媒25Bを含んでなる樹脂組成物を使用した。プリプレグは、有機溶媒としてクロロホルムを使用してワニスを調製し、このワニスを所定の有機不織布又はガラスクロスに含浸して、室温にて約1時間、90℃で60分間乾燥することにより作製した。各基材名及び樹脂含有率を表3に示した。前記のように作製したプリプレグを、真空下、加熱及び加圧して硬化させ模擬基板を作製した。加熱条件は120℃/30分、150℃/30分、180℃/100分、プレス圧力1.5MPaの多段階加熱とした。模擬基板は70×70×0.14〜0.3mmとした。ガラスクロス(#2116)を基材とする実施例9の模擬基板は、誘電率が3.12、誘電正接が0.0038、有機不織布(K−9)を基材とする実施例10の模擬基板は誘電率2.51、誘電正接が0.0027、E210を基材とする実施例11の模擬基板は誘電率2.61、誘電正接0.0024であった。何れも良好な誘電特性を有する。
前記実施例9〜11の結果を以下の表3に示す;
【0049】
【表3】
Figure 0004550324
【0050】
[実施例12]
実施例9で作製したプリプレグの両面に電解銅箔の粗面を張り付け、真空下、加圧、加熱して両面銅張積層板を作製した。加熱条件は120℃/30分、150℃/30分、180℃/100分、プレス圧力1.5MPaとした。銅箔とプリプレグは良好な接着性を示した。これにより多層プリント基板の作製が可能となった。
【0051】
[実施例13]
以下に本発明の多層プリント基板の作成例を示す。(A)実施例12で得た両面銅張積層板の片面にフォトレジスト(日立化成製HS425)をラミネートして全面に露光した。次いで残る銅表面にフォトレジスト(日立化成製HS425)をラミネートしてテストパターンを露光し、未露光部分のフォトレジストを1%炭酸ナトリウム液で現像した。(B)硫酸5%、過酸化水素5%のエッチング液で露出した銅箔をエッチング除去して、両面銅張積層板の片面に導体配線を形成した。(C)3%水酸化ナトリウム溶液で残存するフォトレジストを除去し、片面に配線を有する配線基板を得た。同様にして2枚の配線基板を作製した。(D)二枚の配線基板の配線側の面に実施例9のプリプレグを挟み、真空下、加熱、加圧して多層化した。加熱条件は120℃/30分、150℃/30分、180℃/100分、プレス圧力1.5MPaの多段階加熱とした。(E)作製した多層板の両面の外装銅にフォトレジスト(日立化成製HS425)をラミネートしてテストパターンを露光し、未露光部分のフォトレジストを1%炭酸ナトリウム液で現像した。(F)硫酸5%、過酸化水素5%のエッチング液で露出した銅箔をエッチング除去し、3%水酸化ナトリウム溶液で残存するフォトレジストを除去して外装配線を形成した。(G)内層配線と外装配線を接続するスルーホールをドリル加工で形成した。(H)配線基板をめっき触媒のコロイド溶液に浸して、スルーホール内、基板表面に触媒を付与した。(I)めっき触媒の活性化処理の後、無電解めっき(日立化成製CUST2000)により、約1μmの種膜を設けた。(J)フォトレジスト(日立化成製HN920)を配線基板の両面にラミネートした。(K)スルーホール部及び配線基板の端部をマスクして露光後、3%炭酸ナトリウムで現像して開孔部を設置した。(L)配線基板の端部に電極を設置して電解めっきによってスルー部分にめっき銅を約18μm形成した。(M)電極部分を切断除去し、残存するフォトレジストを5%水酸化ナトリウム水溶液で除去した。(N)硫酸5%、過酸化水素5%のエッチング液に配線基板を浸して約1μmエッチングして種膜を除去し多層配線板を作製した。本多層配線板を200℃のハンダリフロー槽に10分間、288℃ハンダ槽に1分保持したが、樹脂界面、配線の剥離等は生じなかった。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、誘電率、誘電正接が低く、ガラス転移温度が高く、引張強度、伸びの大きな硬化物が得られる。本樹脂組成物は、高周波用電気部品の絶縁材料に好適であり、高周波信号用配線基板、及びそれに用いられるプリプレグへの応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】多層配線板作製時のプロセスを現わす模式図である。
【符号の説明】
1…電解銅箔、2…樹脂基板、3…フォトレジスト、4…プリプレグ、5…内層配線、6…外層配線、7…スルーホール、8…めっき触媒、9…種膜、10…開孔部、11…電極、12…めっき銅

Claims (6)

  1. 下記一般式:
    Figure 0004550324
    (式中、Rは炭化水素骨格を表し、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、mは1〜4の整数、nは2以上の整数を表す。)
    で示される複数のスチレン基を有する重量平均分子量1000以下の架橋成分と、
    高分子量体と
    前記架橋成分及び高分子量体の合計100重量部に対して0.0005〜10重量部のスチレン基を重合しうる硬化触媒とを含有する樹脂組成物であって、
    該高分子量体がポリフェニレンオキサイド、又は脂環式構造を有するポリオレフィンから選ばれる少なくとも一種の樹脂を含み、ガラス転移温度が170℃以上または170℃における弾性率が500MPa以上であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 請求項1記載の組成物の硬化物。
  3. 請求項1記載の組成物を、有機又は無機のクロス又は不織布に含浸させ、乾燥させてなるプリプレグ。
  4. 請求項に記載のプリプレグの硬化物。
  5. 請求項に記載のプリプレグ硬化物の両面又は片面に導体層が設置されてなる積層板。
  6. 請求項に記載の積層板の導体層に配線加工を施した後、プリプレグを介して該積層板を積層接着してなる多層プリント基板。
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