JP3912429B2 - 電子部品の高周波電気特性測定方法および装置、高周波電気特性測定装置の校正方法 - Google Patents
電子部品の高周波電気特性測定方法および装置、高周波電気特性測定装置の校正方法 Download PDFInfo
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Description
被検体である電子部品1は、測定治具2の上面に形成された伝送路上に接続される。測定治具2の伝送路の両端は同軸ケーブル3を介して図示しないネットワークアナライザの測定ポートに接続されている。
SOLT補正の誤差モデルにおいて、S11A 〜S22A は被検体を含む伝送路の散乱係数、EDF, ERF, ESFは一方の測定ポート側の散乱係数、ELF, ETFは他方の測定ポート側の散乱係数である。
TRL補正の誤差モデルにおいて、S11A 〜S22A は被検体の散乱係数、e00〜e11は一方の測定ポート側の散乱係数、f00〜f11は他方の測定ポート側の散乱係数である。
この例では、スルー伝送路5aはいわゆるZero-throughである。被検体の測定時には、スルー伝送路5aより被検体の大きさだけ長さを長くした測定治具2に被検体をシリーズ接続して測定する。
1)標準器である伝送路(Line 数種類とReflectionとThrough)5a〜5dにおいて、同軸コネクタ3と伝送路5a〜5dとの接続部に生じる誤差要因が全て等しくなければならない。しかし、たとえ各標準器で同じ種類のコネクタを使用しても、各標準器を測定器に接続する際に特性バラツキが非常に大きくなり、補正誤差を生じ、ミリ波帯に近づくと事実上実施不可能となる。
2)前記課題を解決するため、同軸コネクタ3を共通とし、その同軸ピンを標準器である伝送路と接触接続することでコネクタ測定のバラツキの影響を回避しようという工夫もされている。しかし、同軸ピンが破損するなど、構造上接触部に十分な押しつけ荷重を確保することが難しく、接触が安定しないために補正が不安定になることが多い。また、測定周波数が高くなると一般に伝送路も同軸ピンも細くなるので、これらの位置決め再現性による測定バラツキが大きくなってしまう。
3)補正時の測定が正常であるかどうかを補正作業中に判断することが困難であるので、手間のかかる補正作業を終えて実際に被検体を測定して初めて、補正時の接触不良などの事故に気づくといった無駄を生じる。
つまり、伝送路の状態を3つの状態に変化させることで、3種類の標準器を実現し、標準器の接続を1回のみとするものである。この方法であれば、TRL補正に比べて、標準器の接続回数を減らすことができ、校正作業における測定誤差を少なくできる。
また、2つの試験端子間にストリップ線路を無反射の仕方で接続することは、実際上難しく、試験端子とストリップ線路との接続部での反射係数が誤差要因となる。
さらに、被検体を接続して得られる測定値は、被検体だけでなく、被検体と被検体を接続したストリップ線路とを合成した特性となり、被検体単体の特性を測定することができない。
Application Note 1287-9; In-Fixture Measurements Using Vector Network Analyzers ((C) 1999 Hewlett-Packard Company)
また、高精度な電子部品の高周波電気特性測定装置を提供することにある。
さらに、高精度な高周波電気特性測定装置の校正方法を提供することにある。
本発明にかかる補正方法(以下、RRR校正と呼ぶ)の好ましい例では、校正基準(標準器)として短絡基準を用いる。これは、短絡状態であればほぼ全反射状態になるので、信号導体の終端側の影響を受けないこと、及び、対象とする伝送路がTEM単一モード動作する周波数範囲では短絡状態の特性には誘電体の影響が実質的に無く、電磁界シミュレーションで非常に精度良くその電気特性を予想できること等の理由による。
一般的に、伝送路特性のシミュレーション時の精度を制限するパラメータは誘電率であるが、短絡状態の反射特性では誘電率を変化させてもほとんど計算結果に変化が見られないことを確認しており、シミュレーション結果を物理的真値と仮定して校正時に使用して差し支えないといえる。なお、伝送路の幅が測定信号の波長よりも十分に小さい場合は、短絡特性として−1(理想短絡の反射係数)を使用しても大きな誤差にはならないと考えられる。
校正工程:短絡状態での測定
RRR校正では、長さ方向に一様な電気特性を有し、一端が開放端である信号導体を持つ伝送路上の少なくとも3箇所において、伝送路を短絡状態とすることで、測定系の誤差要因を同定する。短絡状態とするため、例えば短絡基準を信号導体と接地導体との間に接続する。具体的には、伝送路の被検体測定位置に短絡基準を接続して測定を行い、次に被検体測定位置からL1 だけ離れた点に短絡基準を接続して測定を行い、さらに被検体測定位置からL2 だけ離れた点に短絡基準を接続して測定を行う。なお、伝送路特性が未知の場合には、さらに異なる1点での測定が必要である。
ここで短絡基準とは、電気的に短絡状態の部品一般を指し、チップ部品に限らず、金属片や工具などでもよい。望ましくは、ナイフエッジのような伝送路の長さ方向の接触長さが短いものがよい。短絡基準が理想的であれば、反射係数が−1(全反射)の値になるが、実際には短絡基準といえどもある程度のインダクタンスを持つので、インダクタンス値が既知である必要があるということである。通常、マイクロ波帯では、オープン状態と比較して短絡状態は比較的容易に理想に近い状態を得られる。高い測定精度が要求される場合には、簡単なシミュレーション等によって短絡基準のインダクタンスを求めれば良い。
伝送路の電気特性が既知の場合、短絡状態での測定を3箇所以上で実施すれば、測定系の誤差要因を求めることができる。
一方、伝送路の電気特性が未知の場合には、短絡状態での測定を4箇所以上で実施することで、測定系の誤差要因に加えて、伝送路の電気特性も求めることができる。
実測工程:被検体の測定
伝送路の信号導体と接地導体との間に被測定電子部品を接続し、その電気特性を測定する。
測定した被検体の電気特性と校正工程で求めた誤差要因とを用いて、計算により被検体の電気特性の真値を求めることができる。
例えば、特性インピーダンスに近い終端抵抗を信号導体の開放端と接地導体との間に接続しておき、この状態で適当な校正基準を伝送路上の少なくとも3箇所に接続することで校正作業を行うこともできる。この場合、殆どの信号は開放端で跳ね返らずに吸収されるため、校正基準として少々伝達係数の大きいチップ部品などを使用しても、誤差は小さく、校正に必要な精度が得られる。
(1)補正・測定は全て同一の1つの伝送路上で行う。
TRL補正では、いくつもの長さの伝送路が標準器として必要で、かつこれらと同軸ケーブルとの接続部の電気特性が全て等しい必要があるが、RRR校正では補正作業だけでなく、測定作業でも全て同一の1つの伝送路を使用するので、伝送路を付け替える必要がなく、伝送路やコネクタ、接続部などの特性バラツキの影響を受けない。
(2)反射を利用した測定方法であるため、測定器が1ポートで済み、安価であり、補正手順を1ポートについてのみ行えば良いので、補正の手間が少なくて済む。
(3)被検体の電気特性は伝送路の特性インピーダンスに近いほど、高精度に測定できる。
(4)2端子の電子部品は勿論、従来の測定方法では測定が困難であったアンテナのような高周波部品でも、その電気特性を高精度に測定可能である。
(5)測定治具に必要な伝送路の長さは、測定したい周波数の下限によって決まる。
低周波数に対応するには長い伝送路が必要であるが、高周波数に対応するには短い伝送路で足りる。
(6)補正のための測定は、伝送路上の数ヵ所で校正基準(例えば短絡基準)を接続して測定する。
被検体の測定位置からどれだけ離れた位置で何ヶ所の校正基準による測定をすべきかは、測定周波数帯域幅と周波数上限によって決定する。
(7)校正基準での測定を伝送路の4箇所以上で実施すれば、伝送路の特性も知ることができる。
伝送路の特性が既知である場合には、3箇所で校正基準を接続すれば、測定系の誤差要因を求めることができるが、4箇所以上で校正基準を接続すれば、測定系の誤差要因だけでなく伝送路自体の特性(誘電率,損失係数など)を求めることが可能になる。したがって、伝送路治具に使用する誘電体材料の誘電率や損失係数が未知の場合や、誘電体材料がロット毎に特性バラツキを有する場合であっても、使用する伝送路治具そのものの特性を正確に求めることができ、誤差のない高精度な校正が可能になる。
一般に、テフロン(登録商標)やアルミナなどの基材で構成された伝送路治具は、電気特性のバラツキが小さく、その物理的真値を求めやすいが、高価である。これに対し、エポキシ樹脂などの汎用樹脂よりなる基材で構成された伝送路治具は、安価であるが、材料特性のばらつきが大きく、誘電率や損失係数にもばらつきがある。このような場合には、4箇所以上で校正基準を接続して伝送路特性を求めれば、伝送路特性のばらつきの影響を受けず、被検体の電気特性を高精度に測定できる。
この場合には、校正基準を伝送路に対して近接(非接触)させ、伝送路と校正基準との間に発生する浮遊容量と校正基準の残留インダクタンスを直列共振状態とするのがよい。
直列共振状態では、校正基準接続部のインピーダンスは0Ω、つまり理想の短絡状態になる。つまり、良好な短絡基準が得られない高い周波数においても、良好な短絡基準を使用したのと同じ効果が得られる。
なお、校正基準として微小容量のコンデンサを用いた場合には、このコンデンサを伝送路に接触(完全接続)させて直列共振させることもできる。
具体的な伝送路としては、コプレーナウエーブガイドやスロット線路を用いることができる。コプレーナウエーブガイドは信号導体とこの信号導体を間にしてその両側に接地導体を有し、前記信号導体と接地導体とが同一平面上に形成されたものであり、10GHzまでの高周波特性の測定に適している。
一方、スロット線路は、信号導体と接地導体とが同一平面上に間隔をあけて設けられたものであり、10GHz以上の高周波特性の測定に適している。
補正を高精度に行うためには、補正データが相互にできるだけ離れていることが望ましく、校正基準の反射の位相によって異なる補正データを得るRRR校正では、補正に必要な校正基準の接続位置間の位相差を70°〜145°とするのが、校正精度を高める上で望ましい。但し、接続位置間の位相差を前記のように設定すれば、校正精度は高いが、1組の校正基準で対応できる周波数範囲がかなり狭くなってしまう。しかし、校正基準接続位置の設定が非常に簡単で、かつ、校正時の測定データをうまく使いまわせば、広帯域測定であっても実用上問題になるほどは校正基準測定回数が増えるわけでも無い。
−RRR校正の校正基準−
RRR校正では、測定すべき校正基準は全て同じ短絡基準10であり、使用する測定治具11(伝送路12)も同じ治具である。
伝送路の特性インピーダンスを基準とする散乱係数測定のみが必要な場合には、伝送路の特性インピーダンスは未知で良いが、インピーダンス測定を行いたい場合等には、伝送路の特性インピーダンスが既知である必要がある。これには、シミュレーションで計算したり、タイムドメインリフレクトリー法で実測するなど、公知の方法で求めればよい。
まず、被検体の測定時に電極を接続する箇所(図5中の測定点1:P1、以下「被検体測定箇所」という)に短絡基準10を接続して測定を行い、この時の測定結果をS11M1とする。この際、測定箇所における反射係数の真値をΓA1とする。ΓA1は短絡基準の真値であるが、これは短絡基準10の伝送路12の長さ方向の大きさが測定信号波長と比較して十分に小さければ−1とすればよく、そうでなければその真値の予想値をシミュレーション等で求めておくべきものである。
伝送路特性ξには伝達度αと位相係数βの2つの未知数が含まれるが、伝送路特性ξは、実数部が伝達度αに関係し、虚数部が位相係数βに関係する複素数であるから、1つの未知数として求めることができる。
なお、後の計算の都合により、短絡基準を測定する被検体測定位置からの距離L1 ,L2 ,L3 は、次のいづれかの関係を満たすことが望ましい。
L1 :L2 :L3 =1:2:3
L1 :L2 :L3 =1:2:4
前記関係を満たしていれば、以下に示す数式を用いて伝送路特性を陽に計算することができる。前記関係を満たしていない場合、下記数式では伝送路特性を計算できないので、反復計算等によって求める必要がある。
RRR校正の誤差モデルを図7に示す。反射法とは、一方のポート(コネクタ11b)から被検体17に入射した電磁波のどれだけの割合が反射するかを観測して、これからインピーダンス等を求める手法で、1ポートであるから、図7に示すように誤差要因もE11、E21、E12、E22の4個しかない。散乱係数測定は比測定であるので、E21=1とおけば、誤差要因はE11、E12、E22の3つである。図中のS11M は反射係数の測定値であり、S11A は被検体の散乱係数の真値である。
誤差係数が求まれば、図8に示すように、被検体17を信号導体12aと接地導体12b間に接続し、その電気特性を測定する。例えばチップマウンタなどを用いて被検体17を吸着し、この被検体17を測定治具11の被検体測定位置へ接触させて反射係数(S11M )を測定すればよい。RRR校正の誤差モデルはTRL補正の誤差モデルと同じものであるから、実際の被検体測定結果から誤差の影響を除去するにはTRL補正と同様の計算を行えば良く、誤差の影響を除去して被検体の反射係数S11A の真値を求める数式を以下に記載しておく。なお、誤差要因の影響を除去する計算式は以下の数式に限らず、どのような公知技術を用いてもよい。
補正を開始すると、まず測定器と測定治具とを同軸ケーブルを介して接続する(ステップS1)。次に、信号導体12aの開放端である第1の位置で短絡基準10により信号導体12aと接地導体12bとを短絡する(ステップS2)。第1の位置とは被検体測定位置近傍でもよいし、他の位置でもよい。短絡基準10を接続した状態で、ポート1側の反射係数(S11M1)を測定する(ステップS3)。
次に、第2の位置で短絡基準10により信号導体12aと接地導体12bとを短絡し(ステップS4)、ポート1側の反射係数(S11M2)を測定する(ステップS5)。続いて、第3の位置で短絡基準10により信号導体12aと接地導体12bとを短絡し(ステップS6)、ポート1側の反射係数(S11M3)を測定する(ステップS7)。
伝送路特性が未知の場合には、さらに第4の位置で短絡基準10により信号導体12aと接地導体12bとを短絡し(ステップS8)、ポート1側の反射係数(S11M4)を測定する(ステップS9)。そして、これら反射係数からポート1側の伝送路特性ξを計算で求める(ステップS10)。伝送路特性が既知の場合には、ステップS8〜S10の工程は不要である。
その後、測定した反射係数および伝送路特性ξを用いて、数式10により誤差係数を計算する(ステップS11)。
誤差係数を計算した後、測定治具に被検体を接続し(ステップS12)、被検体の反射係数(S11M )を測定する(ステップS13)。次に、数式11で測定値から誤差の影響を除去し(ステップS14)、誤差除去結果(被検体の真値)のディスプレーなどへの表示や被検体の選別等を実施する(ステップS15)。その後、全ての被検体の測定が完了するまでステップS12〜15を繰り返し(ステップS16)、全ての被検体の測定が完了すれば、RRR校正を終了する。
ここでは、RRR校正とともに、従来技術であるインピーダンスアナライザによる測定結果を併記している。なお、インピーダンスアナライザはアジレントテクノロジー社から販売されている4991Aである。従来技術であるインピーダンスアナライザによる測定結果とRRR校正法による測定がトレースした結果が得られており、RRR校正法による測定が精度の高いものであることがわかる。
伝送路12の被検体測定箇所と、ここから5mm離れた点で短絡基準10を測定したとする。伝送路12の損失が大きくないとすると、この2点の測定結果の違いは位相だけである。ここで、波長が30mm(真空中での1GHzの電磁波の波長)であるとする。5mm位置の違いは、往復で10mmの位置の違いに相当するので、測定データは(10mm÷30mm)×360°=120°の位相差があると期待できる。ところが、波長が10mm(真空中での3GHzの電磁波の波長)であったとすると、同じく往復10mmの位置の違いが生み出す位相差は10mm÷10mm×360°=360°であり、結局位相の差が生じない。このため、5mmの位置の違いでは、波長10mmの周波数では補正を正常に行えない。
校正基準間の位相差を大きく確保すると校正の精度は向上するが、一組の校正基準で対応できる周波数範囲が狭くなり、広帯域の測定をする場合に多くの校正基準を測定する必要が生じる。RRR校正と同じく校正基準間の位相差を用いて校正を行うTRL校正の場合、良好な測定精度を得るために校正基準間の位相差は20°〜30°以上程度確保するべきであるとされている。
これに対し、短絡基準の接続位置間の位相差を70°〜145°とすると、校正精度は高いが1組の校正基準で対応できる周波数範囲が前記の場合と比較してかなり狭くなってしまう。しかし、以下に説明するように短絡基準接続位置の設定が非常に簡単で、かつ、校正時の測定データをうまく使いまわせば、広帯域測定であっても実用上問題になるほどは短絡基準測定回数が増えるわけでも無いからである。
測定上限周波数fmax からfmax /2までの周波数帯は、第1、第2、第3の短絡基準測定位置の測定結果によってRRR校正を行う。fmax /2〜fmax /4までの周波数帯は、第1、第3、第4の短絡基準測定位置の測定結果を用いる。同様に、n番目の周波数帯、すなわちfmax /2n-1 〜fmax /2n の周波数帯は、第1、第n+1、第n+2の短絡基準測定位置の測定結果を用いる。このようにすることで、概ね短絡基準測定位置間の位相差が70°〜145°の範囲に保たれる。
第1実施例では、校正を実施するため、短絡基準10を用いて信号導体12aと接地導体12bとの間を短絡させたが、何らかの反射状態が得られるように信号導体12aと接地導体12bとを接続すればよく、短絡基準10に代えて伝達係数のある校正基準18を用いることも可能である。
図12に開放・短絡補正のモデルを示す。図中、Γm は校正面での反射係数観測値、Zp 、Zs はそれぞれ浮遊アドミタンス、残留インピーダンスを表す。また、Zd は被検体インピーダンスを表し、本来これによって生じる反射係数を測定しようとしているものである。
最近のネットワークアナライザには、治具などの誤差係数を与えれば、測定結果から与えた誤差の影響を自動的に除去してくれる機能(ディエンベディング機能)がある。しかし、治具の誤差を求める方法がないために、実際にはあまり使われない機能である。本発明にかかるRRR校正の手法と組み合わせると、これは非常に便利な機能になる。
なお、ディエンベディングとは、既知の誤差要因を数学的に除去する手法であり、伝送行列を用いると簡単に実施できる。得られた治具の誤差要因の散乱係数行列を伝送行列に変換して逆行列にしたものを、E-1とする。このとき、治具の誤差要因の伝送行列がEである。さらに、デバイスの伝送行列をAとする。この時、同軸ケーブル先端まで校正したネットワークアナライザで治具ごとデバイスを測定した測定結果は、デバイスに各ポートの誤差が重畳されたものであるから
E・A
が測定されているはずである。そこで、左右からそれぞれE-1、F-1をかけると、
E-1・E・A=A
となり、デバイスの特性を得ることができる。
このようにすることで、各工程で高い精度での校正基準の位置決め手段等を準備することなくRRR法を運用でき、コスト的・工程管理的に有利である。
量産工場のデバイスの検査工程において、校正基準の値をオペレータ等が計算する必要が無くなり、また測定器単体でRRR校正が行えるため、工程を簡素化できる。
この場合には、図13の(a)のように校正基準25を伝送路12から浮かして、伝送路と校正基準の間に発生する容量C[F]と校正基準の残留インダクタンスL[H]を直列共振状態とするのがよい。この場合C=1/(2πf√L)となるように設定する。
なお、校正基準と伝送路の間の浮遊容量を利用する方法に代えて、図13の(b)のように校正基準26を伝送路12に接触させて直列共振させることもできる。この場合の校正基準26は微小容量のコンデンサを用いればよい。
直列共振状態では、校正基準接続部のインピーダンスは0Ω、つまり理想の短絡状態になる。つまり、良い短絡基準が得られない高い周波数においても良い短絡基準を使用したのと同じ効果が得られる。
本発明における測定器としては、ネットワークアナライザに限らず、高周波電気特性を測定できるものであれば、使用可能である。
被検体測定位置で校正基準を測定したが、被検体測定位置で校正基準を測定する必要はなく、その場合、3回以上の校正基準測定が全て数式1のような形で表される。
伝送路は、平面伝送路に限るものではなく、校正基準を接続でき、かつ被検体を信号導体と接地導体との間に接続できるものであれば、任意の構造のものを用いることができる。
(1)補正に使用する伝送路と被検体測定に使用する伝送路は同じものであるから、伝送路のバラツキの影響を受けにくい。また、伝送路と測定器との接続も、補正および実測定において固定であり、再接続の必要がないので、伝送路の接触不良等による補正失敗等の事故も起こらない。
(2)被検体の部品単体の特性を高精度に測定可能であり、治具等の誤差の影響を受けない。本発明は高周波電気特性測定装置によりチップインダクタ、チップコンデンサなどのような2端子のインピーダンス素子、あるいはアンテナのような部品の散乱係数やインピーダンス値を精度よく測定するためには非常に有効な方法である。
(3)反射法を利用した校正方法であるため、測定器が1ポートで済み、安価でかつ校正作業が簡単である。
Claims (15)
- 電子部品の高周波電気特性を測定する方法において、
一端が開放端である信号導体と接地導体とを有し、単位長さ当たりの電気特性が既知の伝送路を準備するステップと、
前記信号導体の他端と前記接地導体とを測定器の測定ポートにそれぞれ接続するステップと、
前記信号導体の長さ方向の少なくとも3箇所において、信号導体と接地導体とを接続状態にして電気特性を測定するステップと、
前記接続状態での測定値および前記伝送路の電気特性から、前記伝送路を含む測定系の誤差要因を求めるステップと、
前記信号導体の前記開放端と前記接地導体との間に被測定電子部品を接続して電気特性を測定するステップと、
前記被測定電子部品の測定値から前記測定系の誤差要因を除去し、被測定電子部品の電気特性の真値を求めるステップと、を含むことを特徴とする電子部品の高周波電気特性測定方法。 - 電子部品の高周波電気特性を測定する方法において、
一端が開放端である信号導体と接地導体とを有し、単位長さ当たりの電気特性が未知の伝送路を準備するステップと、
前記信号導体の他端と前記接地導体とを測定器の測定ポートにそれぞれ接続するステップと、
前記信号導体の長さ方向の少なくとも4箇所において、信号導体と接地導体とを接続状態にして電気特性を測定するステップと、
前記接続状態での測定値から、前記伝送路を含む測定系の誤差要因および前記伝送路の電気特性を求めるステップと、
前記信号導体の前記開放端と前記接地導体との間に被測定電子部品を接続して電気特性を測定するステップと、
前記被測定電子部品の測定値から前記測定系の誤差要因を除去し、被測定電子部品の電気特性の真値を求めるステップと、を含むことを特徴とする電子部品の高周波電気特性測定方法。 - 前記信号導体と接地導体とを接続状態にするため、短絡基準を前記信号導体と接地導体とに対して接触させることを特徴とする請求項1または2に記載の高周波電気特性測定方法。
- 前記信号導体と接地導体とを接続状態にして電気特性を測定するステップを、前記信号導体と接地導体との間に伝送路の特性インピーダンスに近い抵抗値を持つ終端抵抗を接続した状態で実施することを特徴とする請求項1または2に記載の高周波電気特性測定方法。
- 前記信号導体と接地導体とを接続状態にするため、校正基準を前記信号導体と接地導体とに対して接触または近接させ、前記校正基準内の容量または前記校正基準と伝送路の間の容量と、前記校正基準の残留インダクタンスとで直列共振させることを特徴とする請求項1または2に記載の高周波電気特性測定方法。
- 前記伝送路は、信号導体と接地導体とが同一平面上に形成された伝送路であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の高周波電気特性測定方法。
- 前記伝送路は、前記信号導体とこの信号導体の両側および開放端を取り囲む接地導体とを有するコプレーナウエーブガイドであることを特徴とする請求項8に記載の高周波電気特性測定方法。
- 前記伝送路は、信号導体と接地導体とが間隔をあけて設けられたスロット線路であることを特徴とする請求項8に記載の高周波電気特性測定方法。
- 前記信号導体と接地導体とを短絡状態にして電気特性を測定する位置は、各位置間の位相差が70°〜145°となる位置であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の高周波電気特性測定方法。
- 電子部品の高周波電気特性を測定する装置において、
一端が開放端である信号導体と接地導体とを有し、単位長さ当たりの電気特性が既知の伝送路と、
前記信号導体の他端に接続された測定ポートと、前記接地導体に接続された測定ポートとを有し、高周波電気特性を測定可能な測定器と、
前記信号導体の長さ方向の少なくとも3箇所において、信号導体と接地導体とを接続状態にする手段と、
前記接続状態での測定値および前記伝送路の電気特性から、前記伝送路を含む測定系の誤差要因を求める手段と、
前記信号導体の前記開放端と前記接地導体との間に被測定電子部品を接続する手段と、
前記被測定電子部品を前記信号導体の前記開放端と前記接地導体との間に接続して測定される測定値から前記測定系の誤差要因を除去し、被測定電子部品の電気特性の真値を求める手段と、を含むことを特徴とする電子部品の高周波電気特性測定装置。 - 電子部品の高周波電気特性を測定する装置において、
一端が開放端である信号導体と接地導体とを有し、単位長さ当たりの電気特性が未知の伝送路と、
前記信号導体の他端に接続された測定ポートと、前記接地導体に接続された測定ポートとを有し、高周波電気特性を測定可能な測定器と、
前記信号導体の長さ方向の少なくとも4箇所において、信号導体と接地導体とを接続状態にする手段と、
前記接続状態での測定値から、前記伝送路を含む測定系の誤差要因および前記伝送路の電気特性を求める手段と、
前記信号導体の前記開放端と前記接地導体との間に被測定電子部品を接続する手段と、
前記被測定電子部品を前記信号導体の前記開放端と前記接地導体との間に接続して測定される測定値から前記測定系の誤差要因を除去し、被測定電子部品の電気特性の真値を求める手段と、を含むことを特徴とする電子部品の高周波電気特性測定装置。 - 電子部品の高周波電気特性測定装置の校正方法において、
一端が開放端である信号導体と接地導体とを有し、単位長さ当たりの電気特性が既知の伝送路を準備するステップと、
前記信号導体の他端と前記接地導体とを測定器の測定ポートにそれぞれ接続するステップと、
前記信号導体の長さ方向の少なくとも3箇所において、信号導体と接地導体とを接続状態にして電気特性を測定するステップと、
前記接続状態での測定値および前記伝送路の電気特性から、前記伝送路を含む測定系の誤差要因を求めるステップと、を含むことを特徴とする校正方法。 - 電子部品の高周波電気特性測定装置の校正方法において、
一端が開放端である信号導体と接地導体とを有し、単位長さ当たりの電気特性が未知の伝送路を準備するステップと、
前記信号導体の他端と前記接地導体とを測定器の測定ポートにそれぞれ接続するステップと、
前記信号導体の長さ方向の少なくとも4箇所において、信号導体と接地導体とを接続状態にして電気特性を測定するステップと、
前記接続状態での測定値から、前記伝送路を含む測定系の誤差要因および前記伝送路の電気特性を求めるステップと、を含むことを特徴とする校正方法。
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