JP3885182B2 - 乳原料及びゲル化剤を含有する食品及びその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳原料及びゲル化剤を含有する食品及びその製造方法に関する。詳細には、本発明は、内容成分が均質で「荒れる」という現象が生じておらず、より好ましくはきめが細かく舌触りのよい食感を有する食品、好適にはプリン、ムース、ババロア、ゼリーまたは杏仁豆腐等のチルドデザートに関する。
【0002】
また、本発明は、乳原料及びゲル化剤を含有する食品を、製造工程で「荒れ」を発生させず、きめ細かで滑らかな食感を呈するように製造する方法に関する。
【0003】
なお、本発明でいう「荒れる」及び「荒れ」とは、乳由来のタンパクが凝集すること等によって内容成分の均質性が損なわれること及びその均質性が損なわれた状態を意味する。「荒れた」食品は、通常、外見上、内容成分が凝集・混濁・懸濁したようなざらざらした質感を呈している。また、舌触りも悪く、さらに凝集成分の沈降等によって味が不均一となり、その結果、商品価値が著しく損なうという問題がある。
【0004】
【従来の技術】
従来から、乳原料を含有するチルドデザートは、その製造において、100℃以上で加熱殺菌した組成物を最終商品の容器への充填した後、直ちに10℃以下まで急冷しなければ「荒れ」が生じてしまい、商品価値を著しく損なうことが知られている。
【0005】
しかし、かかる急冷処理は大がかりな急冷装置を必要とし、また光熱費がかかる等の問題がある。また、「荒れ」の現象を防止するには冷却速度が重要なファクターとなるが、特に比較的大きな製品を製造する場合は製品の内部域と外部域とでは冷却むらが生じるため、厳しい管理が要求される。
【0006】
さらに、近年、消費者の健康への関心の高まりやニーズの多様化に応じて多岐に亘る食品の開発が求められているが、例えば (i)カルシウムを多く含む食品(Ca強化食品など)、(ii)紅茶,コーヒーなどのエキスを含む食品、(iii)ココアを含む食品、(iv)抹茶を含む食品、並びに(v)イチゴ,オレンジ等の果汁を含む食品等においては、たとえ急冷しても「荒れ」が発生し、高い品質を有する商品を提供することが困難であるという問題があった。
【0007】
このため、従来から、簡便でかつ低コストに製造でき、多くの食品に応用できる方法の開発が求められいた。
【0008】
この解決方法として、公知の安定剤を複合的に使用することにより改善を図る方法がある。しかしながら、その方法では未だ充分な効果は得られておらず、また逆に食感が悪くなる等のマイナスの効果を生じる場合もある。例えば、安定化剤として寒天を主として用いれば、チルドデザートの安定性はある程度向上するが、食感がゴリゴリしたものとなり、つるりとした滑らかな食感が要求される例えばプリン、ムース、ババロア等のチルドデザートには適用できない。
【0009】
このように、多種多様な食品・チルドデザートの多岐に亘る食感に悪影響を与えることなく、「急冷しなければ荒れる」という現象を充分に改善する技術はこれまで知られていなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたもので、「荒れ」を生じず内容成分が均質であり食感がきめ細やかな食品を提供することを目的とするものである。さらに、本発明は、上記の性質を有する食品を簡便かつ低コストで製造する方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねていたところ、乳原料及びゲル化剤を含有する食品に発酵セルロースを配合することにより、製造に際して、従来は「荒れ」を防止するために必須とされていた急冷工程を省いて自然冷却しても、「荒れ」を全く生じず内容成分が均一であることを見出した。また、発酵セルロースを配合することにより、艶やかできめ細かな舌触りを有した商品価値の高い食品が安定して調製できることを見出した。
【0012】
更に発明者らは、この発酵セルロース配合の効果は、従来急冷しても「荒れ」の発生を防止することが困難であったCa強化食品、紅茶等のエキス,ココア又は抹茶等を含む食品及び果汁入り食品にも有意に有効であることを確認して、本発明を完成するに至った。
【0013】
また、更なる研究によって、本発明者らは、従来「荒れ」の問題がなかった乳原料及びゲル化剤を含む食品であっても、発酵セルロースを配合することによって、乳原料等の内容成分がより均質にかつ安定に分散されてより、一層きめ細かになり舌触りのよい食感を呈するようになることを確認した。これにより、乳原料及びゲル化剤を含む食品、特に食感の良さが求められる食品への広い応用が期待される。
【0014】
すなわち本発明は、乳原料及びゲル化剤を含有する食品であって、発酵セルロースを含有することを特徴とする食品に関する。
【0015】
また、本発明は乳原料及びゲル化剤を含有するものであって、発酵セルロースを含有することを特徴とするチルドデザートに関する。
【0016】
更に、本発明は、上記チルドデザートの中でも、特にプリン、ムース、ババロア、ゼリーまたは杏仁豆腐に関する。
【0017】
また更に本発明は、乳原料及びゲル化剤を含む食品の製造工程において、乳原料、ゲル化剤及び発酵セルロースを含む食品組成物を冷却により固化させる工程を含む、上記食品の製造方法に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の対象となる食品は、少なくとも乳原料及びゲル化剤を含有するものである。
【0019】
含有される乳原料としては、牛乳、豆乳及びそれらの加工品等が挙げられ、加工品としては、例えば全脂練乳、脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳などが挙げられる。これらは単独で含まれていてもよいし、また2種以上の組み合わせで含まれていてもよい。また、脱脂乳を含有する場合は、バター、生クリーム、ヤシ油、パーム油等の油成分を含有していてもよい。含まれる乳原料の量は特に制限されないが、通常は、食品100重量部あたり、無脂乳固形分で0.1〜30重量部、好ましくは0.3〜15重量部、より好ましくは0.5〜8重量部の範囲が例示される。なお、プリンの場合は3〜8重量部の範囲が特に好ましい。
【0020】
また本発明で用いられるゲル化剤としては、通常食品に使用されるものであって、食品を液状から固形状態にするいわゆるゲル化作用を有するものであれば特に制限されず、例えばカラギナン、キサンタンガム、ファーセレラン、アルギン酸、アルギン酸塩、ペクチン、ジェランガム、寒天、ゼラチン等の天然ガム類が広く例示される。これらは単独で含まれていてもよいし、また2種以上の組み合わせで含まれていてもよい。
【0021】
含まれるゲル化剤の量は、使用されるゲル化剤の種類、製品の種類等に応じて種々選択されるものであり一義的に定めることができないが、製品の一例としてプリンの場合を挙げるとすると、食品100重量部あたり、0.05〜4重量部、好ましくは0.1〜2重量部、より好ましくは0.2〜1.5重量部の範囲が例示される。
【0022】
なお、本発明の食品には、上記ゲル化剤に加えて、必要に応じて増粘剤を配合することもできる。増粘剤としては、通常食品に使用できるものであれば特に制限されず、例えばローカストビーンガム、グアーガム、アラビアガム、プルラン等の増粘多糖類を挙げることができる。
【0023】
本発明が対象とする食品は、上に例示する乳原料を含む内容成分がゲル化剤の作用に基づいて固化してなるものであるが、好適には半固形状物、より好ましくは更にきめ細かでつるりとした滑らかな舌触り・食感が要求されるものである。具体的にはプリン、ムース、ババロア、ゼリー、杏仁豆腐などのいわゆるチルドデザートが例示される。好ましくはプリン、より好ましくはミルクプリンである。
【0024】
かかるチルドデザートは、紅茶,コーヒー等のエキス成分、ココア,抹茶等の粉末成分、イチゴ,オレンジ等の果汁等を含んでいても、また人為的にカルシウム量を強化させたものであってもよく、このような場合に従来法では防止できなかった「荒れ」の防止効果が顕著に発揮され、特に有用とされる。
【0025】
なお、ここでいうカルシウム強化食品とは、食品100重量部中、カルシウムが0.09〜3重量部、好ましくは0.09〜1重量部、より好ましくは0.18〜1重量部を含むものである。
【0026】
また、本発明で食品とは、上記のような食品加工品のみならず、該食品加工品を調製するための食品組成物をも広く包含するものである。このような食品組成物としては例えばプリン、ムース、ババロア、ゼリー、杏仁豆腐などのチルドデザート調製用の組成物、豆腐類調製用組成物等が挙げられ、その形状は粉末状、顆粒状、液状等、特に制限されるものではない。
【0027】
本発明は、上に挙げる乳原料及びゲル化剤を含有する食品であって、その中に発酵セルロースを含有することを特徴とするものである。
【0028】
本発明で用いられる発酵セルロースは、セルロース生産菌が生産するセルロースであれば特に限定されない。通常、セルロース生産菌を既知の方法、例えば特開昭61−212295号公報、特開平3−157402号公報、特開平9−121787号公報に記載される方法に従って培養し、得られる発酵セルロースを所望に応じて適宜精製することによって製造することができる。
【0029】
セルロース生産菌としては、アセトバクター属、シュードモナス属、アグロバクテリウム属等に属する細菌が挙げられるが、好適にはアセトバクター属である。発酵セルロースを生産するアセトバクター属の細菌として、より具体的には、アセトバクター・パスツリアヌス株(例えば、ATCC10245等)、アセトバクター・エスピーDA株(例えば、FERM P−12924等)、アセトバクター・キシリナム株(例えば、ATCC23768、ATCC23769、ATCC10821、ATCC1306−21等)を挙げることができる。好ましくは、アセトバクター・キシリナム株である。
【0030】
かかるセルロース生産菌を培養する培地及び条件としては、特に制限されず、常法に従うことができる。例えば、培地は、基本的に窒素源、炭素源、水、酸素及びその他の必要な栄養素を含有しており、上記微生物が増殖して目的の発酵セルロースを産生することができるものであればよく、例えばHestrin-Schramm培地を挙げることができる。なお、セルロースの生産性を向上させるために、培地中にセルロースの部分分解物、イノシトール、フイチン酸等を添加することもできる(特開昭56−46759号公報、特開平5−1718号公報)。培養条件としては、例えばpH5〜9、培養温度20〜40℃の範囲が採用され、発酵セルロースが十分産生されるまで培養が続けられる。培養方法は、静置培養、撹拌培養、通気培養のいずれでもよいが、好適には通気撹拌培養である。
【0031】
発酵セルロースを大量生産するためには、多段階接種法(関連文献があれば教示ください。)が好ましい。この場合、通常、2段階の予備接種プロセス、一次接種発酵プロセス、二次接種発酵プロセス及び最終発酵プロセスからなる5段階の発酵プロセスが採用され、各プロセスで増殖された細菌について細胞の形態およびグラム陰性であることを確認しながら、次プロセスの発酵器に継代される。
【0032】
発酵後、産生された発酵セルロースは培地から分離処理され、洗浄されて、適宜精製される。精製方法は特に制限されないが、通常、培地から回収した発酵セルロースを洗浄後、脱水し、再度水でスラリー化した後に、アルカリ処理によって微生物を除去し、次いで該アルカリ処理によって生じた溶解物を除去する方法が用いられる。具体的には、次の方法が例示される。
【0033】
まず微生物の培養によって得られる培養物を脱水し、固形分約20%のケーキとした後、このケーキを水で再スラリー化して固形分を1から3%にする。これに水酸化ナトリウムを加えて、pH13程度にして撹拌しながら数時間、系を65℃に加熱して、微生物を溶解する。次いで、硫酸でpHを6〜8に調整し、該スラリーを脱水して再度水でスラリー化し、かかる脱水・スラリー化を数回繰り返す。
【0034】
精製された発酵セルロースは、必要に応じて乾燥処理を施すことができる。乾燥処理としては特に制限されることなく、自然乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥、スプレードライ等の公知の方法を用いることができる。好ましくはスプレードライ法である。
【0035】
かくして得られる発酵セルロースは、白色から黄褐色の無臭の物質であり、水に急速に分散できる非常に微細な繊維性粒子からなる。なお、本発明で用いられる発酵セルロースは、上記方法で調製される発酵セルロースと同一若しくは類似の性質を有し、本発明の目的を達成しえるものであれば、その調製方法によって限定されるものではない。
【0036】
また、本発明の発酵セルロースは、特開平9−121787号公報に記載されるように、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ペクチン等の高分子物質の一種もしくは二種以上と複合化していてもよい。
【0037】
このような発酵セルロースは、乳原料及びゲル化剤を含有する食品の製造工程において、冷却固化以前に添加、配合されることにより、食品本来の味や風味を損なうことなく、冷却工程で生じる「荒れ」という現象を防止することができる。また、できあがった食品の均質性を高め、視覚的に艶やかできめ細かな質感を付与するとともに、つるりとした滑らかな舌触りを付与する。
【0038】
例えばプリンのように乳化状態となっている食品において、「荒れ」という現象は、条件によって程度は異なるが、乳化が破壊されているために外観上の色合いをくすませる要因となる。しかし、本発明によれば、くすんだ色合いになることを抑制し、乳や果汁などの色が活きた新鮮な色合いの商品を提供することができる。
【0039】
特に、チルドデザート等のデザートは、食事の締めくくりに喫食し、飽食時に供されることも多いので、(i)形、色、艶やかさ等の見た目の美しさで食欲をそそること、(ii)食べて美味しいことは勿論、さっぱりしていて喉ごしがよいこと等が求められる。このことからも、上記の本発明の効果は、品質が高く消費者受けのする商品を提供する上で、極めて有用なものといえる。
【0040】
そして、本発明において特に重要なことは、かかる発酵セルロースの効果は、製造工程での冷却方法・条件の如何に関わらず、損なわれることがないということである。すなわち、本発明の上記性質を有する食品は、発酵セルロースを原料の一つとして含むだけで、従来必須であった急冷工程を省いた簡素化工程により、簡便かつ低コストで、安定した品質をもって調製される。
【0041】
以上のことから、本発明は、発酵セルロースの「荒れ防止剤」としての用途を提供するものともいえる。つまり、本発明は、乳原料及びゲル化剤を含む食品、好ましくはチルドデザートの製造工程で生じ得る「荒れ」を防止するために有用な「荒れ防止剤」を提供するものでもある。
【0042】
本発明の食品に含有される発酵セルロースの含有量は、食品の種類、内容成分、含まれる乳原料やゲル化剤の種類や量等によって種々異なり、一概に規定することはできないが、通常、食品100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.03〜1重量部の範囲が例示される。また、具体的に食品が、例えばプリンの場合は、プリン100重量部に対して、通常0.01〜1重量部、好ましくは0.03〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.3重量部の範囲が例示される。
【0043】
なお、本発明の食品には、上記の成分の他に、食品の分野で広く用いられている糖類、香料、中和剤、カラメル、乳化剤、食塩、食用油脂、安定剤、酸化防止剤、保存料、色素、酸味料などが含まれていてもよい。また、本発明の食品加工品又は食品組成物は、pH2〜10、好ましくはpH3〜8の範囲で調整されていることが望ましい。
【0044】
また、本発明は、「荒れ」を生じず、内容成分が安定して均質で、見た目の美しさときめ細かな舌触りを有しており商品価値の高い食品を得ることができる製造方法を提供するものである。
【0045】
食品としては前述するものを例示することができるが、好ましくはプリン、ババロア、ムース、ゼリー、杏仁豆腐等のチルドデザートであり、より好ましくは従来「荒れ」等の問題が生じるが故に製造に際して急冷を必須としていたチルドデザートである。
【0046】
従来、例えばミルクプリンを製造する場合は:
(i) 乳、乳製品、糖類、卵、ゲル化剤を分散・溶解し、フレーバー、着色料などを添加・配合して食品組成物を調製する
(ii) 均質化する(例えば、100〜200 kg/cm2程度のホモゲナイズ)
(iii) 殺菌又は滅菌する(100〜150 ℃、数秒間)
(iv) 冷却する(60〜70℃)
(v) 充填する
(vi) カラメルソースを充填する
(vii) 蓋剤をシールする
(viii)急冷する(10℃以下)
(ix) 製品化
といった一連の工程が採用されており、中でも特に(viii)の急冷工程は「荒れ」のないプリンを製造するために必要不可欠な工程である。また「荒れ」は冷却速度によって生じたり生じなかったりと極めてセンシティブな現象であるため、かかる急冷工程での冷却速度は厳しく管理されている。
【0047】
一方、本発明の製造方法は、乳原料及びゲル化剤を含む食品の製造工程において、乳原料、ゲル化剤を含む食品組成物中に更に発酵セルロースを配合して用いること特徴とし、該食品組成物を冷却によって固化して食品を製造するものである。この方法によると、取り立てて急冷しなくても簡便に「荒れ」のないきめ細かい、内容成分の均質な食品を製造することができる。
【0048】
本発明でいう冷却とは、殺菌・滅菌処理により一旦高温となった食品を固化するまで冷やすことをいい、冷却条件によって何ら限定されるものではない。例えば、冷却温度は本発明の食品が固化する温度であれば何℃でもよく、固化に要する時間も特に制限されない。従って、空冷、放冷、水冷等の各種の冷却手段を、条件に制限されることなく幅広く用いることができる。
【0049】
また、上記工程のうち(iv)の冷却工程は、(viii)工程で急速に冷却できるように予め温度を下げておく等の目的で必要とされるものである。従って、本発明において急冷を採用しない場合は、かかる工程を省くことも可能である。
【0050】
このように、本発明の製造方法は、製品を加熱殺菌する以外は特に温度制御を行う必要がなく、簡便に且つ低コストで、さらには安定して上述する「荒れ」のない上質の食品を製造する方法である点でも有用である。
【0051】
食品組成物中に配合される発酵セルロースの量は、製造する食品の種類などに応じて種々選択され、一概に規定はできないが、具体的には前述の範囲が例示される。
【0052】
【実施例】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例及び実験例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0053】
上記の配合割合からなるプリン調製用組成物を調製し、さらにこれに発酵セルロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を表1に示す配合割合で添加、必要に応じて加熱混合、溶解して、常法に従って100〜200 kg/cm2程度でホモゲナイズして均質化し、食品組成物を調製した。これを125℃で4秒間、加熱・殺菌後、容器に充填後、常温で放冷してプリンを調製した。
【0054】
比較例1〜4
比較例として、発酵セルロースの代わりに何も入れない系(比較例1)、キサンタンガム(比較例2)、デンプン(比較例3)、メタリン酸ナトリウム(比較例4)をそれぞれ表1の配合量で用いて、実施例1と同様にプリンを調製した。尚、各配合は、それぞれのガム類のプリンへの最適配合量を用いた。
【0055】
実験例
実施例1で調製したプリン、比較例1〜4で調製したプリンについて、安定化効果、食感等の評価を比較した。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
なお、表1から「荒れ」を防止するという効果以外に、発酵セルロースに離水を改善する効果が認められた。
【0058】
実施例2(ミルクプリン)
実施例1と同じ処方からなる発酵セルロースを配合したプリン組成物を同様に調製し、125℃で4秒間、加熱・殺菌後、容器に充填した後、急冷してプリンを調製したが、この場合でも「荒れ」は生じず、きめ細かで艶やかな外観を呈し、かつ口どけのよい食感の優れたプリンが調製できた。
【0059】
【0060】
上記の配合割合からなるカルシウム強化プリン調製用組成物を、実施例1と同様に調製し、これを125℃で4秒間、加熱・殺菌後、容器に充填後、常温で放冷により自然冷却してカルシウム強化プリンを調製した。
【0061】
【0062】
上記の配合割合からなる紅茶プリン調製用組成物を実施例1と同様に調製し、これを125℃で4秒間、加熱・殺菌後、容器に充填後、常温で水冷して紅茶プリンを調製した。
【0063】
【0064】
上記の配合割合からなる抹茶プリン調製用組成物を実施例1と同様に調製し、これを125℃で4秒間、加熱・殺菌後、容器に充填後、常温で放冷して抹茶プリンを調製した。
【0065】
【0066】
上記の配合割合からなるコーヒーミルクプリン調製用組成物を実施例1と同様に調製し、これを125℃で4秒間、加熱・殺菌後、容器に充填後、常温で放冷してコーヒーミルクプリンを調製した。
【0067】
【0068】
上記の配合割合からなるレトルトチョコレートプリン調製用組成物を実施例1と同様に調製し、これを容器に充填後、120℃で20分間レトルト殺菌し、その後水冷してレトルトチョコレートプリンを調製した。
【0069】
【0070】
上記の配合割合からなる冷凍プリン調製用組成物を実施例1と同様に調製し、これを125℃で4秒間加熱・殺菌後、容器に充填し、10℃で水冷後、−20℃で冷凍して冷凍プリンを調製した。
【0071】
上記の配合割合からなるチョコレートムース調製用組成物を実施例1と同様に調製し、容器に充填後、120℃で20分間レトルト殺菌し、10℃で水冷し、チョコレートムースを調製した。
【0072】
上記の配合割合からなる杏仁豆腐調製用組成物を実施例1と同様に調製し、90℃で10分間加熱後、型に流し込み、常温で放冷して固化させ、一辺が13mmのサイコロ型の杏仁豆腐を調製した。杏仁豆腐とミカン、パイナップルを適当な大きさに切ったものを容器にいれ、シロップを充填後、85℃で30分間加熱殺菌し、水冷して杏仁豆腐デザートを調製した。
【0073】
上記の配合割合からなる紅茶プリン部、牛乳プリン部、コーヒープリン部を常法に従い調製し、それぞれを125℃で4秒間加熱・殺菌後、常温で放冷して65℃まで下がった時点で、各部をプリン容器に等量ずつ同時に注入し、縦に3層となった縦型3色プリンを調製した。
【0074】
この3色プリンは、紅茶やコーヒーのエキス分を含んでいても、各部にもまた各部の境界付近にも荒れや離水が認められず、しかも境界が明瞭なプリンであった。また、各プリン部の風味を損なうことなく、良好な味を呈していた。
【0075】
この例から、本発明によれば簡便な製法にもかかわらず、荒れや凝集等が見られず、しかも境界が明瞭な品質の良い3色プリンを調製できることがわかった。
【0076】
実施例12(渦型3色プリン)
実施例11において、紅茶プリン部、牛乳プリン部、コーヒープリン部を注入する際に、容器の中心を通る垂線を軸として容器を緩やかに水平方向に回転させることで、容易に渦型の3色プリンを調製することができた。
【0077】
また、容器を固定し、各部を注入するノズルを各ノズルの相対的な位置関係を保ったまま容器の中心を通る垂線を軸として水平方向に回転させることによっても、同様の渦型3色プリンを調製することができた。
【0078】
実施例13(横型3色プリン)
実施例11の配合割合からなる紅茶プリン部、牛乳プリン部、コーヒープリン部を実施例11の記載に従って調製し、常温で放冷して65℃まで下がった時点で各部をプリン容器に順に容器の3分の1量ずつ注入し、横に3層となった横型3色プリンを調製した。
【0079】
実施例14(斑模様プリン)
実施例11において、紅茶プリン部、牛乳プリン部、コーヒープリン部を注入する際に、各部を65℃に保温しつつ、各部を順に1mlずつ注入し、各部を1回ずつ注入し終えるごとに、容器を水平を保ったまま容器の中心を通る垂線を軸として15度ずつ回転させ、又はノズルを容器の中心を通る垂線を軸として15度ずつ回転させ、斑模様のプリンを調製した。
Claims (5)
- 乳原料、ゲル化剤、及び発酵セルロースを含有し、加熱殺菌後、冷却して調製されるプリン、ムース、ババロア、ゼリー又は杏仁豆腐のいずれかであるチルドデザート。
- さらにカルシウム強化食品、紅茶のエキスを含む食品、コーヒーのエキスを含む食品、ココアを含む食品、抹茶を含む食品、果汁を含む食品のいずれかである請求項1記載のチルドデザート。
- 発酵セルロースを有効成分とする、加熱殺菌後、冷却して製造される乳原料及びゲル化剤を含むプリン、ムース、ババロア、ゼリー又は杏仁豆腐のいずれかの荒れ防止剤。
- 乳原料及びゲル化剤を含むプリン、ムース、ババロア、ゼリー又は杏仁豆腐のいずれかであるチルドデザートを加熱殺菌して製造する際、発酵セルロースを添加することにより、加熱殺菌後、冷却される際に生じる荒れを防止する方法。
- 乳原料及びゲル化剤を含むチルドデザートの製造工程において、乳原料、ゲル化剤及び発酵セルロースを含む食品組成物を加熱殺菌後、冷却により固化させる工程を含む、冷却時に生じる荒れが防止された請求項1または2のいずれかに記載のチルドデザートの製造方法。
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