JP3880077B2 - ガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、耐熱性、剛性、タッピング性、及び成形性に優れたガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物に関する。このガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物は電気・電子部品、自動車内装部品特に、インストルメントパネルの芯材に好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来から、マレイミド系共重合体とABS樹脂との樹脂組成物は知られている(特開昭57ー125241)。この樹脂組成物は耐熱性とタッピング性、衝撃強度、成形性に優れているものの、剛性が低いという欠点を持っている。この欠点を改良する目的で、マレイミド系共重合体とABS樹脂との樹脂組成物にガラス繊維をブレンドした樹脂組成物も知られている(特開昭60−47049)。
【0003】
しかしながら、このガラス繊維をブレンドした樹脂組成物は耐熱性、剛性、衝撃性は充分高いものの、タッピング強度と流動性をともに高くすることが出来ないという問題点があった。例えば、マレイミド系共重合体の分子量及び/又はABS樹脂の分子量を低くする事で流動性を高くする事はできるが、タッピング強度が低くなり、ネジによるセルフタッピングが出来なくなり、成形品の組立が困難になる。また、マレイミド系共重合体及び/又はABS樹脂の分子量を高くするか、ABS樹脂の配合量を増やせば、タッピング強度は充分高くなるが、成形性が低下してしまい、射出成形時にショートショット等の不良現象が起こる。
【0004】
熱可塑性樹脂組成物が、耐熱性、剛性を損なうことなく、優れた流動性、タッピング強度を有するということは極めて重要な特性である。流動性が高いと、射出成形が容易で複雑な構造であっても、不良なく成形する事ができ成形性が良好となる。また、タッピング強度が高いと、タッピングネジを用いた2次加工時の成形品組立が容易になり、タッピング性が優れていることになる。
【0005】
【発明が解決しようする問題点】
上記で述べたとおりガラス繊維強化されたマレイミド系樹脂組成物において、耐熱性、剛性、タッピング性、成形性のいずれも優れた特性を有するガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物は得られておらず、これらの性質を兼備した該樹脂組成物が強く望まれている。本発明の目的は、これらの問題点を解決しガラス繊維強化されたマレイミド系樹脂組成物の耐熱性、剛性、衝撃強度を損なうことなく、優れた成形性とタッピング強度を付与することにある。
【0006】
【問題点を解決する為の手段】
すなわち、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定の組成のマレイミド系共重合体(A)成分、特定の組成のビニル系共重合体(B)成分、特定の組成、ゴム粒径、グラフト率、及び未グラフト平均分子量を持つグラフト共重合体(C)成分、並びにガラス繊維(D)成分を選択し、しかもこれらの各成分の配合比を特定の範囲に規定し、かつ(D)成分を除いた(A)〜(C)の3成分のメルトフローレート(以下、MFRと称する)が特定の範囲になる場合に、極めて優れた耐熱性、剛性、タッピング強度及び成形性を有したガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物を得ることができ、本発明の目的を達成することができる事を見いだしたものである。
【0007】
すなち、本発明は、(A)成分:芳香族ビニル単量体単位60〜70重量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体単位30〜40重量%、及びこれらと共重合可能なビニル単量体(但しシアン化ビニル単量体を除く)単位0〜10重量%からなるマレイミド系共重合体10〜50重量部、(B)成分:芳香族ビニル単量体単位75〜80重量%、シアン化ビニル単量体単位20〜25重量%、及びこれらと共重合可能なビニル単量体単位0〜5重量%からなるビニル系共重合体40〜80重量部、
(C)成分:ブタジエン重合体、ブタジエンと共重合可能なビニル単量体との共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、及びアクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステルと共重合可能なビニル単量体との共重合体から選ばれるゴム状重合体40〜60重量部に、芳香族ビニル単量体75〜80重量%、シアン化ビニル単量体20〜25重量%及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜5重量%からなる単量体混合物60〜40重量部をグラフト重合させ、かつ重量平均ゴム粒径が0.2〜0.3μの範囲で、グラフト率が30〜40%の範囲であり、未グラフトコポリマーの重量平均分子量が6〜12万であるグラフト共重合体5〜30重量部、及び
(D)成分:ガラス繊維5〜30重量部よりなる組成物で、かつ(D)成分を除く前記3成分の混合物のMFRが20〜80g/10分の範囲にあるガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物から成るものである。
【0008】
本発明のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物に含まれる(A)成分のマレイミド系共重合体について説明する。
(A)成分を製造するにあたって、第1の製法としては、芳香族ビニル単量体、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体、及びこれらと共重合可能なビニル単量体混合物を共重合させる方法、第2の製法としては、芳香族ビニル単量体、不飽和ジカルボン酸無水物単量体及びこれらと共重合可能なビニル単量体混合物を共重合させた後、この共重合体中の不飽和ジカルボン酸無水物基をアンモニア、及び/又は第1級アミンと反応させてイミド基に変換させる方法が挙げられ、いずれの方法によってもマレイミド系共重合体を得ることができる。
【0009】
(A)成分を構成する芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系単量体及びその置換単量体が挙げられ、これらの中でスチレンが特に好ましい。
【0010】
不飽和ジカルボン酸イミド誘導体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、Nーシクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド等が挙げられる。これらの中でN−フェニルママレイミドが好ましい。
【0011】
不飽和ジカルボン酸無水物単量体としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の無水物が挙げられ、これらの中でマレイン酸無水物が特に好ましい。
【0012】
これらと共重合可能なビニル単量体としては、メチルアクリル酸エステル、エチルアクリル酸エステル、ブチルアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル単量体,メチルメタクリル酸エステル、エチルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル単量体、アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸単量体、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、及びN−ビニルカルバゾ−ル等が挙げられる。これらの中でアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸等の単量体が特に好ましい。また、第1の製法では上記の不飽和ジカルボン酸無水物単量体が挙げられる。第2の製法では不飽和ジカルボン酸無水物単量体を用いるが、イミド基へ転換されずに残った不飽和ジカルボン酸無水物基を共重合体中に導入することができる。
【0013】
(A)成分を製造する第1の製法の場合は、塊状−懸濁重合、溶液重合、塊状重合を、第2の製法の場合は、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合等公知の重合方法を用いることができる。
【0014】
第2の製法で、マレイミド系共重合体を得るためのイミド化反応に用いるアンモニアや第1級アミンは、無水又は水溶液のいずれの状態でもあってもよい。第1級アミンの例としてメチルアミン、エチルアミン、シクロヘキシルアミン等のアルキルアミン、アニリン、トルイジン、ナフチルアミン等の芳香族アミンが挙げられる。これらの中で特にアニリンが好ましい。
【0015】
イミド化反応は溶液状態又は懸濁状態で行う場合は通常の反応容器、例えばオートクレーブ等を用いるのが好ましく、塊状溶融状態で行う場合には、脱揮装置の付いた押出機を用いてもよい。
【0016】
イミド化反応の温度は約80〜350℃であり、好ましくは100〜300℃である。80℃未満の場合には反応速度が遅く、反応に長時間を要して実用的でない。一方350℃を越える場合には重合体の熱分解による物性低下をきたす。イミド化反応時に触媒を用いてもよく、その場合は第3級アミン、例えばトリエチルアミン等が好ましく用いられる。
【0017】
(A)成分に用いられる芳香族ビニル単量体単位は60〜70重量%であり、好ましくは62〜69重量%である。芳香族ビニル単量体単位が60重量%未満では、マレイミド系共重合体の特徴である成形性が失われ、樹脂組成物の成形性が低下する。また不飽和ジカルボン酸イミド誘導体単位は30〜40重量%であり、好ましくは31〜38重量%である。30重量%未満で(B)成分及び(C)成分との相容性が低下し、またガラス繊維との親和性も不充分となりタッピング強度が低下し、また耐熱性も低下する。一方不飽和ジカルボン酸イミド誘導体単位が、40重量%を越えると樹脂組成物が脆くなり、成形性も著しく悪くなる。また、これらと共重合可能なビニル単量体単位は0〜15重量%であり、15重量%を越えると(B)成分及び(C)成分との相容性が低下し、タッピング強度が低下する。
【0018】
(A)成分のマレイミド系共重合体は、ゴム状重合体の存在下で行ってもよく、ゴム状重合体は0〜30重量%が好ましい。ゴム状重合体の量が30重量%を超えると耐熱性、成形性が損なわれる。
なお、ゴム状重合体はブタジエン重合体、ブタジエンと共重合可能なビニル単量体との共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、及びアクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステルと共重合可能なビニル単量体との共重合体等を用いるとができる。
【0019】
次に、(B)成分のビニル系共重合体について説明する。
(B)成分において用いられる芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン等のスチレン系単量体、及びその置換単量体が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
【0020】
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、αークロルアクリロニトリル等があり、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0021】
これらと共重合可能なビニル単量体としては、メチルアクリル酸エステル、エチルアクリル酸エステル、ブチルアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル単量体、メチルメタクリル酸エステル、エチルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル単量体、アクリル酸、メタクリル酸等のピニルカルボン酸単量体、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、及びN−ビニルカルバゾ−ル等が挙げられる。これらの中でアクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸等の単量体が特に好ましい。
【0022】
(B)成分も通常の重合方法で製造でき、例えば懸濁重合、溶液重合、乳化重合のどの重合方法でもよい。
【0023】
(B)成分中の芳香族ビニル単量体単位は75〜80重量%であり、特に76〜79重量%が望ましい。75重量%未満では成形性が低下し、80重量%を超えると成形品が脆くなり、タッピング強度が低下する。
シアン化ビニル単量体単位は20〜25重量%であり、特に21〜24重量%が好ましい。20重量%未満では(A)成分及び(C)成分との相溶性が低下してタッピング強度が低下し、25重量%を越えると成形性が低下する。
【0024】
次に、本発明の(C)成分のグラフト重合体について説明する。
(C)成分に使用されるゴム状重合体はブタジエン重合体、ブタジエンと共重合可能なビニル単量体との共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、及びアクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステルと共重合可能なビニル単量体との共重合体等が挙げられる。
【0025】
(C)成分に用いられる芳香族ビニル単量体はスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン等のスチレン系単量体、及びその置換単量体が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
【0026】
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、αークロルアクリロニトリル等があり、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0027】
また、これらと共重合可能なビニル単量体としては、メチルアクリル酸エステル、エチルアクリル酸エステル、ブチルアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル単量体,メチルメタクリル酸エステル、エチルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル単量体、アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸単量体、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、及びN−ビニルカルバゾ−ル等が挙げられる。これらの中でアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸等の単量体が特に好ましい。
【0028】
このグラフト重合体の製造に当たっては、一般に公知のいずれの重合技術も採用可能であって、例えば懸濁重合、乳化重合の如き水性不均一重合、塊状重合、溶液重合及び生成重合体の貧溶媒中での沈殿不均一重合、並びにこれらの組合せ等が挙げられる。
【0029】
ゴム粒径は、重量平均粒径で0.2〜0.3μの範囲にあり、それ以外の範囲ではタッピング強度が低下する。また、グラフト率は30〜40%で、グラフト率が30%未満ではタッピング強度が低下し、グラフト率が40%以上では流動性が低下する問題がある。更に未グラフトコポリマーの重量平均分子量は6〜12万であり、6万未満ではタッピング強度が低下し、12万を超えると流動性が低下する。
【0030】
(C)成分は、ゴム状重合体40〜60重量部存在下に、芳香族ビニル単量体75〜80重量%、シアン化ビニル単量体20〜25重量%及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜15重量%からなる単量体混合物60〜40重量部をグラフト重合させたものである。
好ましくは、ゴム状重合体45〜55重量部存在下に、芳香族ビニル単量体76〜79重量%、シアン化ビニル単量体21〜24重量%及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜10重量%からなる単量体混合物45〜55重量部をグラフト重合させたものである。
芳香族ビニル単量体が75重量%未満では成形性が低下し、80重量%を越えると耐熱性が低下する。また、シアン化ビニル単量体が20重量%未満ではタッピング強度が低下し、25重量%を越えると成形性が低下する。またこれらと共重合可能なビニル単量体が15重量%を越えると(A)成分及び(B)成分との相溶性が低下し、タッピング強度が低下する。さらにゴム状重合体が40重量部未満ではタッピング強度が低下し、60重量部を超えると成形性が低下する。
【0031】
次に、(D)成分のガラス繊維について説明する。
通常ガラス繊維強化組成物はガラス繊維の形状、表面処理状態によって物性が大きく変動する。本発明のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物においても、ガラス繊維の繊維長は0.3mm以上が好ましく、又アミノシラン、エポキシシラン等のシラン系カップリング剤やチタン系カップリング剤等で処理したガラス繊維を使用することができる。
【0032】
ガラス繊維含有量は5〜30重量部であり更に好ましくは10〜20重量部である。ガラス繊維が5重量部未満の場合は得られる成形品の剛性及び寸法安定性が十分に改良されず、30重量部を越えると成形性が劣り、特に射出成形等が難しくなる。
【0033】
本発明のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物における(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の配合比は、(A)成分10〜50重量部、(B)成分40〜80重量部、(C)成分5〜30重量部、(D)成分5〜30重量部である。更に、(A)成分15〜45重量部、(B)成分45〜65重量部、(C)成分10〜25重量部、(D)成分10〜25重量部が好ましい。
(A)成分が10重量部未満では耐熱性が充分でなく、50重量部を超えると成形性が低下する。(B)成分は40重量部未満では成形性が充分でなく、80重量部を超えるとタッピング強度が低下する。(C)成分が5重量部未満ではタッピング強度が充分でなく、30重量部を超えると成形性が低下する。(D)成分が5重量部未満では耐熱性が充分でなく、30重量部を超えると成形性が低下する。
【0034】
本発明のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物においては、(A)〜(C)各成分の単量体単位及び誘導体単位の比、並びに(A)〜(D)各成分の配合量比だけでは、耐熱性、剛性、成形性、タッピング強度のバランスを良好にする事はできない。タッピング強度は各成分中の単量体単位及び誘導体単位の比と各成分の配合量比のバランスで微妙に変化してしまうので、(A)成分と(B)成分と(C)成分の組成物のMFRが20〜80g/10分の範囲にあって初めて、耐熱性、剛性、成形性、タッピング強度を高くする事が出来る。(A)〜(C)成分の3成分のMFRが20g/10分未満ではタッピング強度は高いが、成形性が充分でなく、MFRが80g/10分を超えると、成形性は良いが、タッピング強度が低くなり、ともに規定の範囲を逸脱すると好ましくない。
【0035】
なお、本発明におけるMFRは、ASTM D−6874に基づき、測定温度265℃、荷重10kg、時間10分の条件で測定した値である。
(A)成分、(B)成分及び(C)成分からなる組成物のMFRは、各成分の単量体単位及び誘導体単位の比、重合度及び各成分の配合量比により調整することができる。一般に(A)成分及び(C)成分が増加するとMFRは小さくなり、(B)成分が増加するとMFRは大きくなる。しかし、同一の重合度でも(A)成分のイミド含有量が多くなるとMFRは小さくなり、又同一のイミド含有量でも重合度が大きくなるとMFRは小さくなる。(B)成分及び(C)成分においても各成分の配合比が同じでも重合度が大ききなるとMFRは小さくなる。また(C)成分においては、一般にゴム状重合体が多くなると、MFRは小さくなる傾向にある。
【0036】
本発明のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、高含量の不飽和ジカルボン酸イミド誘導体を有するマレイミド系共重合体を必須成分とした熱可塑性樹脂とガラス繊維を含有したものであるが、その混合法は特に制限がなく、公知の手段を使用する事が出来る。その手段として例えばバンバリ−ミキサ−、タンブラ−ミキサ−、混合ロ−ル、1軸又は2軸押出機等が挙げられる。混合形態としては通常の溶触混合、マスタ−ペレット等を用いる多段階溶融混練、溶液中でのブレンドより組成物を得る方法がある。
【0037】
また、本発明のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物には、更に酸化防止剤、紫外線吸収材、難燃剤、可塑剤、滑剤、着色剤及びタルク、シリカ、クレー、マイカ、炭酸カルシウム等の充填剤を添加する事も可能である。
【0038】
更に、本発明のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物は均衡して優れた耐熱性、耐衝撃性、タッピング強度、成形性(流動性)を有しているので、複雑な構造であっても不良なく成形品を得ることができ、またタッピング強度が高いので、該樹脂組成物の成形品はタッピングネジを用いた成形品組立が容易になる。
従って、タッピングネジを用いて二次加工する自動車部品のドア芯材、インパネコア、スポイラー、ピラーサンルーフフレーム、デフロスターグリル、ランプハウジング等や、電気・電子機器部品、工業用機械部品等に好適である。
【0039】
以下、本発明を更に実施例により説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部、%はいずれも特にことわらない限り重量基準である。
【0040】
【実施例】
実験例(1)(A)成分の製造
撹拌機を備えたオートクレーブ中にスチレン75部、メチルエチルケトン100部を仕込み、系内を窒素ガスで置換した後温度を85℃に昇温し、無水マレイン酸25部とベンゾイルパ−オキサイド0.15部をメチルエチルケトン200部に溶解した溶液を8時間で連続的に添加した。添加後更に3時間温度を85℃に保った。粘調な反応液の一部をサンプリングしてガスクロマトグラフィーにより未反応単量体の定量を行った結果、重合率はスチレン95モル%、無水マレイン酸98モル%であった。ここで得られた共重合体溶液に無水マレイン酸に対し当量のアニリン23.3部、トリエチルアミン0.3部を加え140℃で7時間反応させた。反応溶液にメチルエチルケトン200部を加え、室温まで冷却し、激しく撹拌したメタノ−ル1500部に注ぎ、析出、濾別、乾燥しイミド化重合体を得た。C−13NMR 分析より酸無水物基のイミド基への転化率はほぼ100モル%であった。このイミド化重合体は、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体としてのN−フェニルマレイミド単位を37.8重量%含む共重合体であり、これを重合体A−1とした。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフイーを用い、ポリスチレンを標準分子量として求めた重量平均分子量は15.2万であった。
【0041】
実験例(2)(A)成分の製造
実験例(1)と同様のオートクレーブ中にスチレン80部、メチルエチルケトン100部を仕組み、系内を窒素ガスで置換し、温度を85℃に昇温した。無水マレイン酸20部とベンゾイルパ−オキサイド0.075部及びアゾビスイソブチロニトリル0.075部をメチルエチルケトン200部に溶解した溶液を8時間で連続的に添加した。これ以降は、アニリン量を19部に替えた以外は実験例(1)と全く同じ操作を行った。重合率はスチレン96モル%、無水マレイン酸98モル%であった。酸無水物基のイミド基への転化率は実験例(1)と同様ほぼ100モル%であった。このイミド化重合体は、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体としてのN−フェニルマレイミド単位を31.0重量%含む共重合体であり、これを重合体A−2とした。なお、重合体A−1と同様にして求めた重合体A−2の重量平均分子量は16.4万であった。
【0042】
実験例(3)(A)成分の製造
実験例(1)と同様のオートクレーブ中にスチレン60部、メチルエチルケトン100部を仕組み、系内を窒素ガスで置換し、温度を85℃に昇温した。無水マレイン酸40部とベンゾイルパ−オキサイド0.075部及びアゾビスイソブチロニトリル0.075部をメチルエチルケトン200部に溶解した溶液を8時間で連続的に添加した。これ以降はアニリン量を38部に替えた以外は実験例(1)と全く同じ操作を行った。重合率はスチレン96モル%、無水マレイン酸98モル%であった。酸無水物基のイミド基への転化率は実験例(1)と同様ほぼ100モル%であった。このイミド化重合体は、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体としてのN−フェニルマレイミド単位を50.6重量%含む共重合体であり、これを重合体A−3とした。なお、重合体A−1と同様にして求めた重合体A−3の重量平均分子量は12.5万であった。
【0043】
実験例(4)(B)成分の製法
撹拌機を備えたオートクレーブ中にスチレン78部、アクリロニトリル22部、ステアリン酸カリウム2.5部、t−ドデシルメルカブタン0.5部及び水250部を70℃に加熱し、これに過硫酸カリウム0.05部を添加し重合を開始させた。重合開始から7時間後にさらに過硫酸カリウム0.03部を添加し、温度を75℃に昇温して3時間保ち重合を完結させた。重合率は97モル%に達した。得られたラテックスを塩化カルシウムで凝固し、水洗、乾燥後、白色粉末の共重合体を得た。これを共重合体B−1とした。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフイーを用い、ポリスチレンを標準分子量として求めた重量平均分子量は13.7万であった。
【0044】
実験例(5)(B)成分の製法
スチレンを70部、アクリロニトリルを30部に替えた以外は実験例(4)と同様に重合、析出を行い、得られた共重合体をB−2とした。なお、重合体B−1と同様にして求めた重合体B−2の重量平均分子量は13.5万であった。
【0045】
実験例(6)(B)成分の製法
t−ドデシルメルカブタン量を1.5部に替えた以外は実験例(4)と同様に重合、析出を行い、得られた共重合体をB−3とした。なお、重合体B−1と同様にして求めた重合体B−3の重量平均分子量は5.3万であった。
【0046】
実験例(7)(C)成分の製法
ポリブタジエンラテックス143部(固形分35%、ゴムの重量平均粒径0.25μ、ゲル含率90%)、ステアリン酸カリウム1部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレ−ト0.1部、テトラソジウムエチレンジアミンテトラアセチックアシッド0.03部、硫酸第一鉄0.003部、及び水150部を50℃に加熱し、これにスチレン77%及びアクリロニトリル23%よりなる単量体混合物50部、t−ドデシルメルカブタン0.2部、キユメンハイドロオキサイド0.15部、を6時間で連続添加し、更に添加後65℃に昇温し2時間重合した。重合率はガスクロマトグラフィ−分析により97モル%に達した。得られたラテックスに酸化防止剤を添加した後、塩化カルシウムで凝固、水洗、乾燥後白色粉末としてグラフト共重合体を得た。これを重合体C−1とした。
【0047】
次に、C−1のグラフト率と未グラフトコポリマーの分子量を測定する為に、C−1を規定量とり、メチルエチルケトン溶液に膨潤させて、遠心分離した。上澄み溶液中の未グラフトコポリマーのスチレンーアクリロニトリル共重合体の分子量をゲルパーミエイションクロマトグラフィーにて測定したところ、重量平均分子量は8万であった。また、遠心分離で沈降したゲル分(枝部がグラフトコポリマーで、幹部がポリブタジエンゴム)の組成をケルダール窒素定量分析と熱分解ガスクロマトグラフィーにより分析し、スチレンとアクリロニトリル量からグラフトコポリマー(枝部)の重量を測定した。また臭素付加法によりポリブタジエンゴム(幹部)を分析し、ポリブタジエンゴム(幹部)の重量を決定した。このように求められたグラフトコポリマー(枝部)の重量とポリブタジエンゴム(幹部)の重量から以下の一般式1よりグラフト率を求めたところグラフト率は33%であった。
【0048】
【数1】
【0049】
実験例8(C)成分の製造
実験例7のポリブタジエンラテックスをゴムの重量平均粒径0.15μのものに変えた以外は、実験例7と同様に重合、析出を行ないグラフト共重合体C−2を得た。これの重合率をガスクロマトグラフィ−で、分析したとこ98モル%であった。また、C−2のグラフト率は34%で、未グラフトコポリマーのスチレン−アクリロニトリル共重合体の重量平均分子量は8万であった。なお、重量平均分子量は、共重合体A及び重合体Bを測定したと同じゲルパーミエーションクロマトグラフイーを用い、ポリスチレンを標準分子量として求めた。
【0050】
実施例1
実験例1で得られた重合体A−1を35部、実験例4で得られた重合体B−1を45部、実験例7で得られたグラフト共重合体C−1を10部と、ガラス繊維TP−89(日本板硝子株式会社製、繊維径13μ、繊維長3mm)10部をタンブラーミキサーで混合後、ベント付き押出機で押出し、ペレット化した。このペレットを射出成形機で成形し、物性評価を行い、その結果を表ー1に示した。
【0051】
実施例2〜4及び比較例1〜6
重合体A−1〜A−3、重合体B−1〜B−3、グラフト重合体C−1〜C−2、ガラス繊維TP−89をそれぞれ表−1に記載の配合比でブレンドし、実施例1と同様にペレット化して、それぞれの物性を評価し、その結果を表ー1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
なお、物性測定の試験方法は下記の方法で行った。
(1)熱変形温度:ASTM D−648に準じ、1/4インチ厚み試験片を用い、荷重18.6kg/cm2で測定した。
(2)アイゾット強度:ASTM−D256に準じ、1/4インチ厚みのノッチ付試験片を用いて測定した。
(3)MFR:ASTM D−6874に準じ、温度265℃、荷重10kgで測定した。
(4)タッピング強度:図ー1に示したボス部を有する成形品を、東芝機械製IS−50EPを使用し、設定温度250℃、金型温度50℃、射出速度70%、射出圧力は最低充填圧力+5Kg/cm2のゲージ圧で射出成形した。次に、山外径5mm,谷外径4mmのネジをトルクドライバーを使用し、50回/分の回転数でボス成形品にねじ込み、破壊までの最大トルクを測定した。
【0054】
表−1に示すとおり、本発明のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物は耐熱、耐衝撃性、タッピング強度、成形性(流動性)において著しい向上が認められる。特に流動性が高くて、かつタッピング強度が極めて高いものであった。また、タッピング強度は従来衝撃強度の目安として評価されていたアイゾット強度とは全く相関性がないものでもあった。このように、本発明はガラス繊維強化されたマレイミド系樹脂組成物の耐熱性、剛性、衝撃強度を損なうことなく、優れた成形性とタッピング強度の付与を成した。
【0055】
【発明の効果】
本発明のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物は均衡して優れた耐熱性、耐衝撃性、タッピング強度、成形性(流動性)を有する。従って、本発明のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物は耐熱性、剛性、寸法安定性、耐衝撃性、タッピング性、成形性の特性が要求される用途に使用される。例えば、自動車部品であるドア芯材、インパネコア、スポイラー、ピラーサンルーフフレーム、デフロスターグリル、ランプハウジング等や、電気・電子機器部品、工業用機械部品等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(1) ボス成形品の上面図を示す。
(2) ボス成形品の側面図を示す。
(3) ボス部Aの概略断面図を示す。
【符号の簡単な説明】
a=60.0mm
b=60.0mm
c= 8.0mmΦ
d= 4.2mmΦ
e=30.0mm
f= 3.0mm
Claims (2)
- (A)成分:芳香族ビニル単量体単位60〜70重量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体単位30〜40重量%、及びこれらと共重合可能なビニル単量体(但しシアン化ビニル単量体を除く)単位0〜10重量%からなるマレイミド系共重合体10〜50重量部、
(B)成分:芳香族ビニル単量体単位75〜80重量%、シアン化ビニル単量体単位20〜25重量%、及びこれらと共重合可能なビニル単量体単位0〜5重量%からなるビニル系共重合体40〜80重量部、
(C)成分:ゴム状重合体40〜60重量部に、芳香族ビニル単量体75〜80重量%、シアン化ビニル単量体20〜25重量%及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜5重量%からなる単量体混合物60〜40重量部をグラフト重合させ、かつ重量平均ゴム粒径が0.2〜0.3μの範囲で、グラフト率が30〜40%の範囲であり、未グラフトコポリマーの重量平均分子量が6〜12万であるグラフト共重合体5〜30重量部、及び
(D)成分:ガラス繊維5〜30重量部よりなる組成物で、かつ(D)成分を除く前記3成分の混合物のメルトフローレート(MFR)が20〜80g/10分の範囲にあることを特徴とするガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物。 - 請求項1記載のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物を成形し、タッピングしてなる該樹脂組成物の成形品。
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