JP3874679B2 - フィルム用ポリプロピレン系樹脂及びそれを用いたフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム用ポリプロピレン系樹脂及びそれを用いたフィルムに関する。さらに詳しくは、フィルムを製膜した際に、ポリプロピレン系フィルムが本来有する好ましい特性を損なうことなく、透明性や耐衝撃性に優れ、かつ充分なスリップ性,アンチブロッキング性などを有する上、製膜速度を高速化しても品質の変化が極めて小さい品質の良好なフィルムを与えることのできるポリプロピレン系樹脂及びこれを基材とする透明性,耐衝撃性,スリップ性,アンチブロッキング性などに優れた品質の良好なフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン系樹脂は、汎用樹脂として各種分野において幅広く用いられている。その中でポリプロピレン系フィルムは、Tダイキャスト成形法やインフレーション成形法などによって製膜され、例えば、食品包装,衣料品包装,医薬品包装,雑貨包装などの包装用をはじめ、建材用としての化粧板,合板,金属板などのラミネート用や各種化粧板の成形時の離型材用として、あるいはブックカバーなどに多用されている。
ところで、近年、フィルムの生産性を上げるために、フィルムの製膜速度の高速化と広幅化が進んでいる。しかし、製膜速度の高速化により、結果としてフィルムの製膜条件が変わるためにフィルムの透明性や耐衝撃性などの品質が低下するのを免れないという問題が生じている。
この問題を解決するために、例えば、冷却水の温度を低温にすることによって、チルロールの表面温度を下げたり、あるいはチルロールを使用せずに押出した溶融樹脂を直接水で冷却するなど、製膜法の工夫による対策が講ぜられてきた。しかしながら、これらの対策では、ある程度の効果が出ているものの、冷却水の温度や流量の変動などの影響が避けられず、充分な効果を上げるに至っていない。
【0003】
また、前記のような方法以外の対策として、例えば、(1)結晶性ポリプロピレンを熱分解したり、有機過酸化物分解したりする樹脂の改質による方法、(2)触媒や重合法の工夫により樹脂の分子量分布を狭くして、特に高分子量成分を削除して高速製膜時にかかる応力の緩和を図る方法、(3)さらに分子量分布の比較的狭い結晶性ポリプロピレンに微量の結晶核剤を添加する方法などが試みられている。しかしながら、これらの方法では、ある程度効果が認められるものの、充分な効果を上げるに至っていない。
従来、分子量分布の評価には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が用いられてきたが、透明性及び耐衝撃性は、特に、高分子量成分の量に依存して決まるため、透明性及び耐衝撃性とMw/Mnとの間に充分な相関性がなく、透明性及び耐衝撃性はGPCによるMw/Mnとうまく対応しない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、フィルムを製膜する際に、ポリプロピレン系フィルムが本来有する好ましい特性を損なうことなく、透明性や耐衝撃性に優れ、かつ充分なスリップ性,アンチブロッキング性などを有する上、製膜速度を高速化しても品質の変化が極めて小さい品質の良好なフィルムを与えることのできるポリプロピレン系樹脂及びこれを基材とする透明性,耐衝撃性,スリップ性,アンチブロッキング性などに優れる品質の良好なフィルムを提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ポリプロピレン系樹脂の立体規則性とn−ヘプタン不溶部量を特定の範囲に制御することにより、その結晶性を望ましい範囲に制御し、さらに緩和時間τとメルトインデックスを特定の関係に制御して製膜時にかかる応力を小さくすることにより、フィルムは適当な結晶化度及び望ましい結晶形態に制御されるとともに、配向が小さくなり、製膜速度を高速化しても良好な品質のものが得られることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、(1)立体規則性指標であるアイソタクチックペンタッド分率(P)が85.0〜92.0モル%及びn−ヘプタン不溶部量(H)が93.0〜97.0重量%であり、かつPとHとの関係が、式(I)
0.750P+27.125<H ・・・(I)
を満たすこと、及び(2)メルトインデックス(MI)が1〜20g/10minであり、かつ温度175℃において、周波数分散測定により得られる周波数ω0=100rad/secにおける緩和時間τ(sec)とMIとの関係が、式(II)
τ≦0.65−0.025MI ・・・(II)
を満たすことを特徴とするフィルム用ポリプロピレン系樹脂及びこのポリプロピレン系樹脂を製膜してなるフィルムを提供するものである。
【0006】
本発明のポリプロピレン系樹脂は、次の性状を有するものである。
まず、(1)立体規則性指標であるアイソタクチックペンタッド分率(P)が85.0〜92.0モル%及びn−ヘプタン不溶部量(H)が93.0〜97.0重量%であり、かつPとHとの関係が、式(I)
0.750P+27.125<H ・・・(I)
を満たすことが必要である。上記アイソタクチックペンタッド分率(P)が85.0モル%未満では得られるフィルムの剛性やアンチブロッキング性が劣り、また92.0モル%を超えるとフィルムの耐衝撃性やスリップ性が低下する。
なお、アイソタクチックペンタッド分率は、ポリプロピレン系樹脂の分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率であり、「マクロモレキュルズ(Macromolecules)」第8巻,第687ページ(1975年)に記載の方法に従って測定することができる。
【0007】
本発明においては、該アイソタクチックペンタッド分率は、日本電子(株)製のJNM−EX400型NMR装置を用い、試料溶媒1,2,4−トリクロロベンゼン/ベンゼンd6=9/1,測定温度130℃,積算回数4,000回,パルス角度45°,パルス間隔4secの条件で、13C−NMRの測定を行い、求めた値である。
また、n−ヘプタン不溶部量(H)が93.0重量%未満では得られるフィルムの剛性やアンチブロッキング性が劣り、また97.0重量%を超えるとフィルムの耐衝撃性やスリップ性が低下する。なお、n−ヘプタン不溶部量(H)は次のようにして求めた値である。2mmメッシュパスの大きさに粉砕したペレット3gを円筒ろ紙に入れ、かつ抽出溶剤としてn−ヘプタン160ミリリットルを平底フラスコに入れ、リフラックス頻度を1回/5min程度にしてソックスレー抽出器で6時間抽出する。抽出後、n−ヘプタンをエバポレーターで回収し、さらに真空乾燥器で恒量になるまで乾燥してn−ヘプタン可溶部量(S)を求め、式
H(重量%)=100(A−S)/A
(ただし、Aは抽出前の粉砕ペレットの重量である。)
により、n−ヘプタン不溶部量(H)を算出した。
さらにこのHが(0.750P+27.125)以下では、得られるフィルムの耐衝撃性やスリップ性が不充分となるおそれがある。
【0008】
次に、(2)メルトインデックス(MI)が1〜20g/10minであり、かつ温度175℃において、周波数分散測定により得られる周波数ω0=100rad/secにおける緩和時間τ(sec)とMIとの関係が、式(II)
τ≦0.65−0.025MI ・・・(II)
を満たすこと必要である。MIが上記範囲を逸脱すると製膜性が低下する。製膜性の点から、好ましいMIは2〜15g/10minの範囲であり、特に3〜10g/10minの範囲が好適である。なお、このMIは、JIS K−7210に従い、温度230℃,荷重2,160gの条件で測定した値である。
また、上記τが、(0.65−0.025MI)を超えると、製膜速度を高速化した場合、得られるフィルムの透明性及び耐衝撃性の低下が著しくなり、本発明の目的が達せられない。
さらに、緩和時間τとMIとが、式
τ≦0.60−0.025MI
の関係を満たすものは、透明性の極めて良好なフィルムが得られる。
【0009】
なお、緩和時間τは、レオメトリクス社製回転型レオメーターにおいて、コーンプレート(25mmφ)を用い、温度175℃にて周波数分散測定を行ったときの周波数ω0=100rad/secにおける緩和時間τであり、次式により計算したものである。
すなわち、ポリプロピレン系樹脂のペレットについて測定した複素弾性率G*(iω)を、応力σ*と歪みγ*によりσ*/γ*で定義したとき、式
G*(iω)=σ*/γ*=G'(ω)+iG”(ω)
τ(ω)= G'(ω)/ωG”(ω)
(ただし、G’(ω)は、貯蔵弾性率、G”(ω)は損失弾性率である。)
により求めた値である。
本発明の目的をより効果的に達成するには、このポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチックペンタッド分率(P)が88.0〜92.0モル%及びn−ヘプタン不溶部量(H)が94.0〜97.0重量%の範囲にあり、かつその他の性状が前記した条件を満たすものが好ましく、特にアイソタクチックペンタッド分率(P)が89.2〜90.7モル%及びn−ヘプタン不溶部量(H)が95.0〜96.0重量%の範囲にあり、かつPとHとの関係が、式
0.750P+27.625<H
を満たし、さらにその他の性状が前記した条件を満たすものが好適である。
【0010】
本発明のポリプロピレン系樹脂は、前記条件を満たすものであれば、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレン以外の他のオレフィンとの共重合体であってもよい。この共重合体に用いられる他のオレフィンとしては、例えば、エチレン;ブテン−1;ペンテン−1;4−メチル−1−ペンテン;ヘキセン−1;ヘプテン−1;オクテン−1;ノネン−1;デセン−1などのα−オレフィンを挙げることができる。これらの中では、エチレンが好適である。これらの他のオレフィンは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
本発明のポリプロピレン系樹脂の製造方法としては、前記条件を満たすポリプロピレン系樹脂が得られる方法であれば、特に制限はなく、様々な方法を用いることができる。例えば、(A)(a)金属マグネシウムとアルコールとハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物とを反応させて得られるマグネシウム化合物,(b)チタン化合物及び必要に応じて(c)電子供与性化合物を用いて得られる固体触媒成分と、(B)有機金属化合物と、必要に応じて用いられる(C)電子供与性化合物とからなる重合触媒の存在下、プロピレンを単独重合又はプロピレンと他のオレフィンとを共重合させることにより、本発明のポリプロピレン系樹脂を製造することができる。
また、重合触媒としては、前記チーグラー系の他、チタニウム,ジルコニウム,ハフニウムなどの金属を有するメタロセン系化合物などと、アルミノキサン,イオン性化合物などの助触媒からなる均一系触媒を用いることもできる。
【0012】
前記(A)固体触媒成分において、(a)成分のマグネシウム化合物は、金属マグネシムとアルコールとハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物とを反応させて得られたものである。
この際用いられる金属マグネシウムは、特に制限はなく、任意の粒径の金属マグネシウム、例えば顆粒状、リボン状、粉末状などのものを用いることができる。また、金属マグネシウムの表面状態も特に制限はないが、表面に酸化マグネシウムなどの被膜が生成されていないものが好ましい。
さらに、アルコールとしては、任意のものを用いることができるが、炭素数1〜6の低級アルコールを用いることが好ましく、特に、エタノールは触媒性能の発現を著しく向上させる固体触媒成分を与えるので好適である。アルコールの純度及び含水量も限られないが、含水量の多いアルコールを用いると金属マグネシウム表面に水酸化マグネシウムが形成されるので、含水量が1重量%以下、特に2,000ppm以下のアルコールを用いることが好ましく、水分は少なければ少ないほど有利である。
【0013】
ハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物の種類に制限はなく、ハロゲン含有化合物としては、ハロゲン原子をその分子中に含む化合物であればいずれのものでも使用できる。この場合、ハロゲン原子の種類については、特に制限されないが、塩素,臭素又はヨウ素、特にヨウ素が好適に使用される。ハロゲン含有化合物の中では、ハロゲン含有金属化合物が特に好ましい。これらの状態,形状,粒度などは、特に限定されず、任意のものでよく、例えば、アルコール系溶媒(例えば、エタノール)中の溶液の形で用いることができる。
アルコールの使用量は、金属マグネシウム1モルに対して2〜100モル、好ましくは5〜50モルの範囲で選ばれる。アルコール量が多すぎると、モルフォロジーの良好なマグネシウム化合物が得られにくい傾向がみられ、少ない場合は、金属マグネシウムとの反応がスムーズに行われなくなるおそれがある。
【0014】
ハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物は、通常、金属マグネシウム1グラム原子に対して、ハロゲン原子として、0.0001グラム原子以上、好ましくは0.0005グラム原子以上、さらに好ましくは0.001グラム原子以上の割合で用いられる。0.0001グラム原子未満では、得られたマグネシウム化合物を粉砕することなく用いた場合、担持量,活性,立体規則性,生成ポリマーのモルフォロジーなどが低下し、粉砕処理が不可欠なものとなり好ましくない。また、ハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物の使用量を適宜選択することにより、得られるマグネシウム化合物の粒径を任意にコントロールすることが可能である。
【0015】
金属マグネシウムとアルコールとハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物との反応それ自体は、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、金属マグネシウムとアルコールとハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物とを、還流下で、水素ガスの発生が認められなくなるまで、通常約20〜30時間反応させて所望のマグネシウム化合物を得る方法である。具体的には、例えば、ハロゲンとしてヨウ素を用いる場合には、アルコール中に金属マグネシウム及び固体状のヨウ素を投入したのち、加熱し還流する方法、アルコール中に金属マグネシウム及びヨウ素のアルコール溶液を滴下投入後加熱し還流する方法、金属マグネシウムを含むアルコール溶液を加熱しつつヨウ素のアルコール溶液を滴下する方法などが挙げられる。いずれの方法も、例えば、窒素ガス,アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で、場合により不活性有機溶媒(例えば、n−ヘキサンなどの飽和炭化水素)を用いて行うことが好ましい。金属マグネシウム、アルコール、ハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物の投入については、最初からそれぞれ全量を反応槽に投入しておく必要はなく、分割して投入してもよい。特に好ましい形態は、アルコールを最初から全量投入しておき、金属マグネシウムを数回に分割して投入する方法である。
【0016】
このようにした場合、水素ガスの一時的な大量発生を防ぐことができ、安全面から非常に望ましい。また、反応槽も小型化することが可能となる。さらには、水素ガスの一時的な大量発生により引き起こされるアルコールやハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物の飛沫同伴を防ぐことも可能となる。分割する回数は、反応槽の規模を勘案して決めればよく、操作の煩雑さを考えると通常5〜10回が好適である。また、反応自体は、バッチ式,連続式のいずれでもよいことは言うまでもない。さらには、変法として、最初から全量投入したアルコール中に金属マグネシウムを先ず少量投入し、反応により生成した生成物を別の槽に分離して除去したのち、再び金属マグネシウムを少量投入するという操作を繰り返すということも可能である。
このようにして得たマグネシウム化合物を、次の固体触媒成分の調製に用いる場合、乾燥させたものを用いてもよく、またろ別後ヘプタンなどの不活性溶媒で洗浄したものを用いてもよい。いずれの場合においても、得られたマグネシウム化合物は、粉砕あるいは粒度分布をそろえるための分級操作をすることなく次工程に用いることができる。
【0017】
また、(b)成分のチタン化合物としては、例えば、テトラメトキシチタン,テトラエトキシチタン,テトラ−n−プロポキシチタン,テトライソプロポキシチタン,テトラ−n−ブトキシチタン,テトライソブトキシチタン,テトラシクロヘキシロキシチタン,テトラフェノキシチタンなどのテトラアルコキシチタン、四塩化チタン,四臭化チタン,四ヨウ化チタンなどのテトラハロゲン化チタン、メトキシチタニウムトリクロリド,エトキシチタニウムトリクロリド,プロポキシチタニウムトリクロリド,n−ブトキシチタニウムトリクロリド,エトキシチタニウムトリブロミドなどのハロゲン化アルコキシチタン、ジメトキシチタニウムジクロリド,ジエトキシチタニウムジクロリド,ジプロポキシチタニウムジクロリド,ジ−n−ブトキシチタニウムジクロリド,ジエトキシチタニウムジブロミドなどのジハロゲン化ジアルコキシチタン、トリメトキシチタニウムクロリド,トリエトキシチタニウムクロリド,トリプロポキシチタニウムクロリド,トリ−n−ブトキシチタニウムクロリドなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタンなどが挙げられるが、これらの中で高ハロゲン含有チタン化合物、特に四塩化チタンが好適である。またこれらのチタン化合物は一種だけで用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
前記(A)固体触媒成分には、必要に応じて、(c)成分として、電子供与性化合物を用いることができる。
この電子供与性化合物としては、例えば、有機ケイ素化合物,エステル類,チオエステル類,アミン類,ケトン類,ニトリル類,ホスフィン類,エーテル類,チオエーテル類,酸無水物,酸ハライド類,酸アミド類,アルデヒド類,有機酸類,アゾ化合物などを挙げることができる。
例えば、ジフェニルジメトキシシラン,ジフェニルジエトキシシラン,ジベンジルジメトキシシラン,テトラメトキシシラン,テトラエトキシシラン,テトラフェノキシシラン,メチルトリメトキシシラン,メチルトリエトキシシラン,メチルトリフェノキシシラン,フェニルトリメトキシシラン,フェニルトリエトキシシラン,ベンジルトリメトキシシラン,メチル第三ブチルジメトキシシラン,ジ第三ブチルジメトキシシラン,ジ第三ブチルジエトキシシラン,イソプロピル第三ブチルジメトキシシラン,メチル第三ブチルジエトキシシラン,メチル(3−エチルペンチル−3)ジメトキシシラン,メチル第二ブチルジメトキシシラン,(α,α−ジメチルベンジル)トリエトキシシラン,(2−シクロヘキシルプロピル−2)トリエトキシシラン,ジイソブチルジメトキシシラン,メチル(2−メチルブチル−2)ジエトキシシラン,(α,α−ジメチルベンジル)ジメトキシシラン,(2−シクロヘキシルプロピル−2)トリメトキシシラン,シクロヘキシルメチルジメトキシシラン,ジシクロペンチルジメトキシシラン,メチル(2−メチルブチル−2)ジメトキシシラン,(3−エチルペンチル−3)トリエトキシシラン,第三ブチルトリメトキシシラン,第二ブチルトリメトキシシラン,第三ブチルトリエトキシシラン,(2−メチルブチル−2)トリメトキシシラン,(2−メチルブチル−2)トリエトキシシラン,イソブチル第二ブチルジメトキシシラン,ジ第二ブチルジメトキシシラン,イソブチルシクロペンチルジメトキシシラン,エチル第三ブチルジメトキシシラン,プロピル第三ブチルジメトキシシラン,ジイソプロピルジメトキシシラン,イソプロピル(シクロペンチルメチル)ジメトキシシラン,第三ブチルシクロペンチルジメトキシシラン,第三ブチルシクロヘキシルジメトキシシラン,イソブチルシクロヘキシルジメトキシシラン,メチルp−トリルジメトキシシラン,メチルo−トリルジメトキシシラン,ジ(p−トリル)ジメトキシシラン,ジ(o−トリル)ジメトキシシラン,ジベンジルジメトキシシラン,ビス(シクロヘキシルメチル)ジメトキシシランなどの有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0019】
また、モノメチルフタレート,モノエチルフタレート,モノプロピルフタレート,モノブチルフタレート,モノイソブチルフタレート,モノアミルフタレート,モノイソアミルフタレート,モノメチルテレフタレート,モノエチルテレフタレート,モノプロピルテレフタレート,モノブチルテレフタレート,モノイソブチルテレフタレート,ジメチルフタレート,ジエチルフタレート,ジプロピルフタレート,ジブチルフタレート,ジイソブチルフタレート,ジアミルフタレート,ジイソアミルフタレート,メチルエチルフタレート,メチルイソブチルフタレート,メチルプロピルフタレート,エチルブチルフタレート,エチルイソブチルフタレート,エチルプロピルフタレート,プロピルイソブチルフタレート,ジメチルテレフタレート,ジエチルテレフタレート,ジプロピルテレフタレート,ジイソブチルテレフタレート,メチルエチルテレフタレート,メチルイソブチルテレフタレート,メチルプロピルテレフタレート,エチルブチルテレフタレート,エチルイソブチルテレフタレート,エチルプロピルテレフタレート,プロピルイソブチルテレフタレート,ジメチルイソフタレート,ジエチルイソフタレート,ジプロピルイソフタレート,ジイソブチルイソフタレート,メチルエチルイソフタレート,メチルイソブチルイソフタレート,メチルプロピルイソフタレート,エチルブチルイソフタレート,エチルイソブチルイソフタレート,エチルプロピルイソフタレート,プロピルイソブチルイソフタレートなどの芳香族ジカルボン酸エステル、ギ酸メチル,ギ酸エチル,酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸ビニル,酢酸プロピル,酢酸オクチル,酢酸シクロヘキシル,プロピオン酸エチル,酪酸メチル,酪酸エチル,吉草酸エチル,クロル酢酸メチル,ジクロル酢酸エチル,メタクリル酸メチル,クロトン酸エチル,ピバリン酸エチル,マレイン酸ジメチル,シクロヘキサンカルボン酸エチル,安息香酸メチル,安息香酸エチル,安息香酸プロピル,安息香酸ブチル,安息香酸オクチル,安息香酸シクロヘキシル,安息香酸フェニル,安息香酸ベンジル,トルイル酸メチル,トルイル酸エチル,トルイル酸アミル,エチル安息香酸エチル,アニス酸メチル,アニス酸エチル,エトキシ安息香酸エチル,p−ブトキシ安息香酸エチル,o−クロル安息香酸エチル,ナフトエ酸エチルなどのモノエステル、γ−ブチロラクトン,δ−バレロラクトン,クマリン,フタリド,炭酸エチレンなどのエステル類、安息香酸,p−オキシ安息香酸などの有機酸類、無水コハク酸,無水安息香酸,無水p−トルイル酸などの酸無水物が挙げられる。
【0020】
さらに、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,アセトフェノン,ベンゾフェノン,ベンゾキノンなどのケトン類、アセトアルデヒド,プロピオンアルデヒド,オクチルアルデヒド,トルアルデヒド,ベンズアルデド,ナフチルアルデヒドなどのアルデヒド類、アセチルクロリド,アセチルブロミド,プロピオニルクロリド,ブチリルクロリド,イソブチリルクロリド,2−メチルプロピオニルクロリド,バレリルクロリド,イソバレリルクロリド,ヘキサノイルクロリド,メチルヘキサノイルクロリド,2−エチルヘキサノイルクロリド,オクタノイルクロリド,デカノイルクロリド,ウンデカノイルクロリド,ヘキサデカノイルクロリド,オクタデカノイルクロリド,ヘンジルカルボニルクロリド,シクロヘキサンカルボニルクロリド,マロニルジクロリド,スクシニルジクロリド,ペンタンジオレイルジクロリド,ヘキサンジオレイルジクロリド,シクロヘキサンジカルボニルジクロリド,ベンゾイルクロリド,ベンゾイルブロミド,メチルベンゾイルクロリド,フタロイルクロリド,イソフタロイルクロリド,テレフタロイルクロリド,ベンゼン−1,2,4−トリカルボニルトリクロリドなどの酸ハロゲン化物類、メチルエーテル,エチルエーテル,イソプロピルエーテル,n−ブチルエーテル,イソプロピルメチルエーテル,イソプロピルエチルエーテル,t−ブチルエチルエーテル,t−ブチル−n−プロピルエーテル,t−ブチル−n−ブチルエーテル,t−アミルメチルエーテル,t−アミルエチルエーテル,アミルエーテル,テトラヒドロフラン,アニソール,ジフェニルエーテル,エチレングリコールブチルエーテルなどのエーテル類、酢酸アミド,安息香酸アミド,トルイル酸アミドなどの酸アミド類、トリブチルアミン,N、N’−ジメチルピペラジン,トリベンジルアミン,アニリン,ピリジン,ピロリン,テトラメチルエチレンジアミンなどのアミン類、アセトニトリル,ベンゾニトリル,トルニトリルなどのニトリル類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン),2,2’−アゾビス(2−エチルプロパン),2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)などのアゾ結合に立体障害置換基が結合してなるアゾ化合物などが挙げられる。
【0021】
これらの中では、有機ケイ素化合物、エステル類,ケトン類,エーテル類,チオエーテル類,酸無水物,酸ハライド類が好ましく、特に、ジフェニルジメトキシシラン,フェニルトリエトキシシラン,シクロヘキシルメチルジメトキシシランなどの有機ケイ素化合物、ジエチルフタレート,ジ−n−ブチルフタレート,ジイソブチルフタレートなどの芳香族ジカルボン酸ジエステル、安息香酸,p−メトキシ安息香酸,p−エトキシ安息香酸,トルイル酸などの芳香族モノカルボン酸のアルキルエステルなどが好適である。これらの電子供与性化合物は一種だけで用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)固体触媒成分の調製については、特に制限はなく、前記(a)マグネシウム化合物と、(b)チタン化合物と、必要に応じて、(c)電子供与性化合物とを用い、公知の方法で行うことができる。
【0022】
このようにして調製された(A)固体触媒成分の組成は、通常、マグネシウム/チタン原子比が2〜100、ハロゲン/チタン原子比が5〜100、電子供与体/チタンモル比が0.1〜10の範囲にある。また、細孔容積が0.4cc/g以上で、比表面積が300m2/g以上であることが好ましい。細孔容積又は比表面積のいずれかが上記範囲を逸脱すると、触媒活性が低下することがある。
なお、細孔容積及び比表面積は、例えば、BET法に従って、吸収された窒素ガスの体積から求めることができる〔「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエテイ(J.Am.Chem.Soc.)」第60巻,第309ページ(1983年)参照〕。
【0023】
本発明で用いる重合用触媒における(B)成分の有機金属化合物としては、周期律表第1〜3族の金属元素を含む任意の有機化合物を好適に用いることができる。この周期律表第1〜3族の金属元素としては、例えば、リチウム,ナトリウム,カリウム,亜鉛,カドミウム,アルミニウムなどを挙げることができる。これらの中では、特にアルミニウムが好適である。
この(B)成分の有機金属化合物としては、例えば、有機アルミニウム化合物をはじめ、メチルリチウム,エチルリチウム,プロピルリチウム,ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、ジメチル亜鉛,ジエチル亜鉛,ジプロピル亜鉛,ジブチル亜鉛などのジアルキル亜鉛などを挙げることができる。
【0024】
また、前記有機アルミニウム化合物としては、一般式(III)
AlRnX3-n ・・・(III)
〔式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基、Xはハロゲン原子を示し、nは1〜3の数を示す。Rが複数ある場合、複数のRは同じでも異なっていてもよく、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよい。〕
で表される化合物を挙げることができる。例えば、トリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム,トリイソプロピルアルミニウム,トリイソブチルアルミニウム,トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド,ジプロピルアルミニウムモノクロリド,ジイソブチルアルミニウムモノクロリド,ジオクチルアルミニウムモノクロリドなどのジアルキルアルミニウムモノハライド、エチルアルミニウムセスキクロリドなどのアルキルアルミニウムセスキハライドなどを挙げることができる。
この(B)成分の有機金属化合物は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
そして、該重合用触媒においては、必要に応じ、(C)成分として、電子供与性化合物を用いることができる。この電子供与性化合物としては、前記(A)成分の固体触媒成分の調製の際に、必要に応じて用いられる電子供与性化合物の説明において例示したものと同じものを挙げることができる。
【0026】
本発明のポリプロピレン系樹脂は、前記重合用触媒の存在下に、プロピレンを単独重合又はプロピレンと他のオレフィンとを共重合させることにより得られる。
重合形式としては、特に制限はなく、スラリー重合,気相重合,バルク重合,溶液重合,懸濁重合などが用いられる。
気相重合により重合を行う場合の重合条件については、重合圧力は通常5〜60kg/cm2G、好ましくは10〜40kg/cm2G、重合温度は通常40〜120℃、好ましくは60〜90℃の範囲で適宜選ばれる。
重合体の分子量調節は、公知の手段、例えば、重合器中の水素濃度を調節することにより行うことができる。重合時間は反応温度などによって左右され、一概に定めることはできないが、5分〜10時間程度で充分である。
【0027】
重合に際しては、触媒を構成する各成分、すなわち、(A)〜(C)成分を所定の割合で混合し、接触させたのち、ただちに原料モノマーを導入し、重合を開始してもよいし、接触後0.2〜3時間程度熟成させたのち、モノマーを導入してもよい。さらに、この触媒成分は不活性溶媒やモノマーなどに懸濁して供給することができる。また、所望に応じ、該固体触媒成分に少量のプロピレンを接触させて予備重合を行うこともできる。
【0028】
本発明においては、重合後の後処理は、常法により行うことができる。すなわち、気相重合法においては、重合後、重合器から導出されるポリマー粉体に、その中に含まれるモノマーなどを除くために、窒素気流などを通過させてもよい。また、所望に応じて押出機によりペレット化してもよく、その際、触媒を完全に失活させるために、少量の水、アルコールなどを添加することもできる。また、バルク重合法においては、重合後、重合器から導出されるポリマーから完全にモノマーを分離したのち、ペレット化することもできる。
【0029】
このようにして得られたポリプロピレン系樹脂には、必要に応じ、各種添加成分、例えば、酸化防止剤,耐熱安定剤,耐候安定剤,塩素捕捉剤,スリップ剤,アンチブロッキング剤,造核剤,帯電防止剤,無機又は有機充填剤,着色剤などを配合し、公知の方法により製膜することにより、本発明のフィルムが得られる。
本発明のポリプロピレン系樹脂は、例えばTダイキャスト製膜法において、引取速度が150m/min又はこれ以上の高速製膜条件において、もちろん引取速度が150m/minより遅い場合についても、厚が10〜500μm程度の溶融押出フィルムの製造に好適に使用される。また、前述した好ましい特性を有することから、共押出製膜法による多層フィルムの製造に際して、その少なくとも一層成分として好適に使用される。
製膜法としては、溶融押出成形法によりフィルムを製造する方法であればよく、特に制限されず、Tダイキャスト製膜法やインフレーション製膜法など、任意の方法を用いることができるが、大型製膜機により高速製膜が可能なTダイキャスト製膜法が好適である。
【0030】
さらに、本発明のポリプロピレン系樹脂は、溶融押出で得た原反を引き続いて縦延伸及び横延伸処理するいわゆる二軸延伸フィルムの原料としても好適に使用される。
前記ポリプロピレン系樹脂を製膜して得られた本発明のフィルムは、通常(1’)アイソタクチックペンタッド分率(P)が85.0〜92.0モル%及びn−ヘプタン不溶部量(H)が86.0〜97.0重量%であり、かつPとHとの関係が、式(IV)
0.750P+26.000<H ・・・ (IV)
を満たし、さらに(2’)MIが1〜25g/10minであり、かつ温度175℃におい、周波数分散測定により得られる周波数ω0=100rad/secにおける緩和時間τ(sec)とMIとの関係が、式(V)
τ≦0.63−0.025MI ・・・(V)
を満たしている。
なお、このフィルムの性状は、製膜直後から24時間、40℃のアニール処理を施したのち、温度23±2℃,湿度50±10%で16時間以上の状態調節を行ってから、同じ温度,湿度条件下にて測定したものである。
また、n−ヘプタン不溶部量(H)、MI及び緩和時間τは前記ポリプロピレン系樹脂の場合と同様にして求めた値である。ただし、n−ヘプタン不溶部量(H)の測定においては、粉砕した樹脂ペレット3gの代わりに、1cm×1cmの大きさに裁断したフィルム3gを用いる。
【0031】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、フィルムの物性は、フィルム成形直後から24時間、40℃でアニール処理したのち、温度23±2℃,湿度50±10%で16時間以上状態調節してから、同じ温度及び湿度条件下にて、次に示す方法により測定した。
(1)n−ヘプタン不溶部量(H),MI,緩和時間τ
ポリプロピレン樹脂の場合と同様にして求めた。
(2)耐衝撃性(フィルムインパクト)
東洋精機製作所製フィルムインパクトテスターにおいて、1/2インチ衝撃ヘッドを用いた衝撃破壊強度により評価した。
(3)引張弾性率
JIS K−7127に準拠した引張試験により測定した。測定条件は、以下のとおりである。
クロスヘッド速度:500mm/min
測定方向:マシン方向〔MD方向〕
ロードセル:10kg
(4)透明性(ヘイズ値)
JIS K−7105に準拠して測定した。
(5)アンチブロッキング性(ブロッキング強度)
重ね合わせた二枚のフィルムについて、60℃で3時間、36g/cm2の荷重をかけて密着させた試片を剪断剥離する時の最大荷重により評価した。試験の条件は、次のとおりである。
テストスピード:20mm/min
ロードセル:2kg
(6)スリップ性(静摩擦係数)
東洋精機製作所製の摩擦角測定機により測定した。測定条件は、以下のとおりである。
測定面:金属ロール面/金属ロール面
傾斜速度:2.7°/sec
スレッド重量:1kg
スレッド断面積:65cm2
面間圧力:15g/cm2
【0032】
実施例1
(1)マグネシウム化合物(a)の調製
攪拌機付きのガラス製反応器(内容積12リットル)を窒素ガスで充分に置換し、エタノール約4860g、ヨウ素32g及び金属マグネシウム320gを投入し、攪拌しながら還流条件下で反応させ、固体状反応生成物を得た。この固体状反応生成物を含む反応液を減圧下乾燥させることによりマグネシウム化合物(固体生成物)(a)を得た。
(2)固体触媒成分(A)の調製
窒素ガスで充分に置換したガラス製三ッ口フラスコ(内容積5リットル)に、前記(1)で得られたマグネシウム化合物(a)(粉砕していないもの)160g、精製ヘプタン800ミリリットル、四塩化ケイ素24ミリリットル、及びフタル酸ジエチル23ミリリットルを加えた。系内を90℃に保ち、攪拌しながら四塩化チタン770ミリリットルを投入して110℃で2時間反応させた後、固体成分を分離して80℃の精製ヘプタンで洗浄した。更に四塩化チタン1220ミリリットルを加え、110℃で2時間反応させた後、精製ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒成分(A)を得た。
【0033】
(3)重合前処理
内容積500リットルの攪拌機付き反応槽に、n−ヘプタン230リットルを投入し、さらに、前記(2)で得られた固体触媒成分25kgを加え、次いで、この固体触媒成分中のTi原子1モルに対し、トリエチルアルミニウムを0.6モル及びシクロヘキシルメチルジメトキシシランを0.4モルの割合で加えたのち、プロピレンをプロピレン分圧で0.3kg/cm2Gになるまで導入し、20℃で4時間反応させた。反応終了後、固体触媒成分をn−ヘプタンで数回洗浄し、二酸化炭素を供給し24時間攪拌した。
【0034】
(4)プロピレンの重合
内容積200リットルの攪拌機付き重合槽に、前記(3)の処理済の固体触媒成分をTi原子に換算して3ミリモル/hrで、トリエチルアルミニウムを0.37モル/hrで、ジフェニルジメトキシシランを4.9ミリモル/hrでそれぞれ供給し、重合温度80℃,プロピレン圧力28kg/cm2Gで反応させた。この際、所定の分子量になるように水素ガスを供給した。このようにしてポリプロピレン樹脂を得た。この樹脂の物性は本文記載の方法で測定した。その結果を第1表に示す。
【0035】
(5)フィルムの作成
前記(4)で得られたポリプロピレン樹脂を、三菱重工業(株)製75mmφ成形機により、加工温度260℃,チルロール温度30℃,引取速度150m/分の条件で製膜し、膜厚25μmのフィルムを作成した。このフィルムの物性を第1表に示す。なお、このフィルムのMIは7.5g/10分であった。
【0036】
実施例2
実施例1において、(4)のプロピレンの重合で、ジフェニルジメトキシシランの代わりに、シクロヘキシルメチルジメトキシシランを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリプロピレン樹脂を製造し、さらに、フィルムを作成した。ポリプロピレン樹脂及びフィルムの物性を、第1表に示す。
【0037】
実施例3
実施例1において、(4)のプロピレンの重合で、ジフェニルジメトキシシランの代わりに、シクロヘキシルメチルジメトキシシランを用い、実施例1と同様に重合を行ったのち、引続き二段目の重合を行った。この際、所定の分子量になるようにそれぞれの重合槽に水素ガスを供給した。また、一段目/二段目の重合量比を重量比で65/35に設定した。このようにして得られたポリプロピレン樹脂を実施例1と同様にして製膜し、フィルムを作成した。
ポリプロピレン樹脂及びフィルムの物性を、第1表に示す。
【0038】
実施例4
(1)マグネシウム化合物(a)の調製
実施例1−(1)と同様にして実施した。
(2)固体触媒成分(A)の調製
実施例1−(2)と同様にして実施した。
(3)重合前処理
内容積500リットルの攪拌機付き反応槽に、n−ヘプタン230リットルを投入し、さらに、前記(2)で得られた固体触媒成分25kgを加え、次いで、この固体触媒成分中のTi原子1モルに対し、トリエチルアルミニウムを1.0モル及びシクロヘキシルメチルジメトキシシランを0.6モルの割合で加えたのち、プロピレンをプロピレン分圧で0.3kg/cm2Gになるまで導入し、20℃で4時間反応させた。反応終了後、固体触媒成分をn−ヘプタンで数回洗浄し、二酸化炭素を供給し24時間攪拌した。
【0039】
(4)プロピレンの重合
内容積200リットルの攪拌機付き重合槽に、前記(3)の処理済の固体触媒成分をTi原子に換算して3ミリモル/hrで、トリエチルアルミニウムを0.4モル/hrで、シクロヘキシルメチルジメトキシシランを11ミリモル/hrでそれぞれ供給し、重合温度80℃,プロピレン圧力28kg/cm2Gで反応させた。この際、所定の分子量になるように水素ガスを供給した。このようにしてポリプロピレン樹脂を得た。
(5)フィルムの作成
実施例1−(5)と同様にしてフィルムを作成した。
ポリプロピレン樹脂及びフィルムの物性を第1表に示す。
【0040】
実施例5
実施例4において、(4)のプロピレンの重合で、処理済の固体触媒成分をTi原子に換算し1.3ミリモル/hrで、トリエチルアルミニウムを0.2モル/hrで、シクロヘキシルメチルジメトキシシランを6ミリモル/hrで供給した以外は、実施例4と同様にしてポリプロピレン樹脂を製造し、さらにフィルムを作成した。
ポリプロピレ樹脂及びフィルムの物性を第1表に示す。
【0041】
実施例6
実施例4において、(4)のプロピレンの重合において、シクロヘキシルメチルジメトキシシランを1.65ミリモル/hr用い以外は、実施例4と同様にしてポリプロピレン樹脂を製造し、さらにフィルムを作成した。
ポリプロピレン樹脂及フィルムの物性を第1表に示す。
【0042】
実施例7
(1)固体触媒成分(A)及び重合前処理
実施例4−(2)と同様にして調製した固体触媒成分(A)を用い、二酸化炭素を供給しなかった以外は、実施例4−(3)と同様にして重合前処理を行った。
(2)プロピレンの重合
内容積200リットルの攪拌機付重合槽に、n−ヘプタンを11.5リットル/hr、前記処理済の固体触媒成分をTi原子に換算して0.2ミリモル/hr、トリエチルアルミニウムを80ミリモル/hr及びシクロヘキシルメチルジメトキシシランを1ミリモル/hrで供給し、重合温度80℃、プロピレン分圧7kg/cm2Gでスラリー重合を行った。この際、所定の分子量になるように水素ガスを供給した。重合スラリーは、ブタノール6リットルを含むn−ヘプタン40リットルの中へ連続的に抜き出し、65℃にて回分式で脱モノマー及び触媒除去を行い、遠心分離機によって固液分離したのち、65℃のn−ヘプタンで洗浄後乾燥させた。
(3)フィルムの作成
実施例4−(5)と同様にしてフィルムを作成した。
ポリプロピレン樹脂及びフィルムの物性を第1表に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
第1表から分かるように、いずれのフィルムも、耐衝撃性,引張弾性率,ヘイズ値,アンチブロッキング性及びスリップ性のいずれも良好であり、物性バランスに優れた品質の高いものである。
比較例1
(1)マグネシウム化合物(a)の調製
実施例4−(1)と同様にしてマグネシウム化合物(a)を調製した。
(2)固体触媒成分(A)の調製
実施例4−(2)において、フタル酸ジエチル23ミリリットルの代わりに、フタル酸ジブチル29ミリリットルを用いた以外は、実施例4−(2)と同様にして固体触媒成分(A)を調製した。
(3)重合前処理
実施例4−(3)において、固体触媒成分として、前記(2)で得られたものを用い、珪素化合物としてジシクロペンチルジメトキシシランを用いた以外は、実施例4−(3)と同様にして重合前処理を行った。
【0046】
(4)プロピレンの重合
内容積200リットルの攪拌機付き重合槽に、前記(3)の処理済の固体触媒成分をTi原子に換算して3ミリモル/hrで、トリエチルアルミニウムを0.4モル/hrで、ジシクロペンチルジメトキシシランを1ミリモル/hrでそれぞれ供給し、重合温度80℃、プロピレン圧力28kgkg/cm2Gで反応させた。この際、所定の分子量になるように水素ガスを供給した。このようにしてポリプロピレン樹脂を得た。
(5)フィルムの作成
実施例4−(5)と同様にしてフィルムを作成した。
ポリプロピレン樹脂及びフィルムの物性を第2表に示す。
【0047】
比較例2
比較例1において、(3)の重合前処理で、珪素化合物としてシクロヘキシルメチルジメトキシシランを用い、かつ(4)のプロピレンの重合で、珪素化合物としてシクロヘキシルメチルジメトキシシランを0.275ミリモル/hrで供給した以外は、比較例1と同様にして実施した。
ポリプロピレン樹脂及びフィルムの物性を第2表に示す。
【0048】
比較例3
比較例2において、プロピレンの重合で、シクロヘキシルメチルジメトキシシランを0.385ミリモル/hrで供給した以外は、比較例2と同様にして実施した。
ポリプロピレン樹脂及びフィルムの物性を第2表に示す。
【0049】
比較例4
比較例2において、プロピレンの重合で、シクロヘキシルメチルジメトキシシランを0.550ミリモル/hrで供給した以外は、比較例2と同様にして実施した。
ポリプロピレン樹脂及びフィルムの物性を第2表に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
比較例1は立体規則性が高く、n−ヘプタン不溶部が多く、耐衝撃性及びスリップ性に劣る。比較例2はn−ヘプタン不溶部が少なく、剛性とアンチブロッキング性に劣る。比較例3は立体規則性とn−ヘプタン不溶部との関係が、式(I)を満足しておらず、耐衝撃性に劣る。比較例4は立体規則性とn−ヘプタン不溶部との関係が、式(I)を満足しておらず、耐衝撃性及びスリップ性に劣る。
【0052】
【発明の効果】
本発明で得られるポリプロピレン系樹脂は、Tダイキャスト成形法やインフレーション成形法などの溶融押出成形法によりフィルムを製膜した際に、ポリプロピレン系フィルムが本来有する好ましい特性を損なうことなく、透明性や耐衝撃性に優れている。しかも、このポリプロピレン系樹脂は、充分なスリップ性,アンチブロッキング性などを有するとともに、製膜速度を高速化しても品質の変化が極めて小さい品質の優れたフィルムを与えることができる。
Claims (2)
- (A)マグネシウム/チタン原子比が2〜100、ハロゲン/チタン原子比が5〜100及び電子供与体/チタンモル比が0.1〜10の範囲にある固体触媒成分、(B)有機金属化合物及び必要に応じて用いられる(C)電子供与性化合物からなる触媒を用いて、プロピレン又はプロピレンと他のオレフィンを重合し、(1)立体規則性指標であるアイソタクチックペンタッド分率(P)が85.0〜92.0モル%及びn−ヘプタン不溶部量(H)が93.0〜97.0重量%であり、かつPとHとの関係が、
式0.750P+27.125<H
を満たし、(2)メルトインデックス(MI)が1〜20g/10minであり、かつ温度175℃において、周波数分散測定により得られる周波数ω°=10°rad/secにおける緩和時間τ(sec)とMIとの関係が、
式τ≦0.65−0.025MI
を満たすフィルム用ポリプロピレン系樹脂を製造する方法。 - (A)(a)金属マグネシウムとアルコールとハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物とを反応させて得られるマグネシウム化合物、(b)チタン化合物及び必要に応じて(c)電子供与性化合物を用いて得られる固体触媒成分と、(B)有機金属化合物と、必要に応じて用いられる(C)電子供与性化合物とからなる触媒を用いて、プロピレン又はプロピレンと他のオレフィンを重合し、(1)立体規則性指標であるアイソタクチックペンタッド分率(P)が85.0〜92.0モル%及びn−ヘプタン不溶部量(H)が93.0〜97.0重量%であり、かつPとHとの関係が、
式0.750P+27.125<H
を満たし、(2)メルトインデックス(MI)が1〜20g/10minであり、かつ温度175℃において、周波数分散測定により得られる周波数ω°=10°rad/secにおける緩和時間τ(sec)とMIとの関係が、
式τ≦0.65−0.025MI
を満たすフィルム用ポリプロピレン系樹脂を製造する方法。
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