JP3865693B2 - アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物、被覆方法及びアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板 - Google Patents
アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物、被覆方法及びアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板の被覆方法及びアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板は、一般的に、4〜75重量%のアルミニウム、残りの大半が亜鉛、更に、ケイ素、マグネシウム等の成分が微量添加された合金をめっきした鋼板である。
【0003】
現在、実用化されている製品化されているアルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板としては、アルミニウムが4〜10重量%、マグネシウム等が約0.1重量%、残部が亜鉛からなる合金をめっきした低アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板と、アルミニウムが55重量%、亜鉛が43.4重量%、ケイ素が1.6重量%を含有してなる合金をめっきした高アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板との2種類を挙げることができる。
【0004】
従来の溶融亜鉛めっき鋼板と同一めっき厚みで比較すると、低アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板で1.5〜2倍、高アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板では3〜6倍の耐食性を有しているものである。このように、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板は、優れた耐食性を有し、更に、メッキ外観が美麗であるため、屋根材、壁材等の建材製品、ガードレール、防音壁、排水溝等の土木製品の材料、自動車、家電製品、産業機器等の材料、塗装鋼板の基板等として広く使用されている。
【0005】
しかしながら、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板は、そのめっき層にはアルミニウムが配合されているため、めっきしたままの状態で湿潤環境下におかれると、亜鉛めっき鋼板ほどではないが発錆を起こしてしまう。錆が亜鉛めっき鋼板では白色であるが、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板では灰色から黒色であり、めっき表面が黒変するため、著しく商品価値が低下してしまう。
【0006】
また、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板が屋根材、壁材等の建材製品、ガードレール、防音壁、排水溝等の土木製品に使用された場合、スレート、コンクリート等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む材料と接触することが多くなり、これらから溶出したアルカリ成分により、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板の表面が影響を受け、結果として、黒変してしまい、外観が劣化してしまう。
【0007】
粒子内にポリウレタンとビニル重合体とが共存している高分子組成物粒子が分散しているアルミニウム−亜鉛めっき鋼板用被覆剤が開示されている。これは、アルカリ条件下における耐黒変性、ロール成形性等を有するアルミニウム−亜鉛めっき鋼板用被覆剤を提供するものであるが、耐食性及び耐黒変性が充分なものとはいえない(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
ウレタン樹脂等の1種以上の樹脂、シランカップリング剤及びジルコニアゾル等の1μm以下の微粒子を含有する水系塗装下地処理剤であって、好ましいpHが2〜10であるものが開示されている。これは、優れた耐食性、塗装密着性を有する皮膜を形成できる処理剤を提供するものであるが、ジルコニアゾル等を使用するものであるため、形成される皮膜中でもジルコニア等の微粒子になっているものであり、耐食性及び耐黒変性が充分ではない(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
バナジウム化合物及びジルコニウム等の金属化合物、必要に応じてウレタン樹脂等の水溶性高分子及び/又は水系エマルション樹脂、無機酸、有機酸及びフッ素化合物等のエッチング剤を含有する金属表面処理剤が開示されている。これは、優れた耐食性、耐アルカリ性を付与できる処理剤を提供するものである。
【0010】
しかしながら、この処理剤は、毒性が問題視されているバナジウムを含有するものであり、性能を確保するために、実質的に無機酸、有機酸及びフッ素化合物等のエッチング剤を必要とするものであるため、環境面で好ましいものではない。また、形成される皮膜の耐アルカリ性も充分なものとはいえない(例えば、特許文献3参照。)。
【0011】
このように、アルミニウム−亜鉛メッキ鋼板に適用する種々の処理剤が提案されているが、優れた耐黒変性、耐食性、塗膜密着性を有し、更に、優れた成型加工性を有する皮膜を形成できる処理剤は得られていないため、開発が望まれていた。
【特許文献1】
特開2000−73179号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開2001−81392号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開2002−30460号公報(第2頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板に対して好適に適用することができ、優れた成型加工性と、耐食性、耐黒変性、耐候性及び塗膜密着性とを付与することができるとともに、貯蔵安定性にも優れたアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板の被覆方法及びアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アニオン性ポリウレタン水分散体(a)、シランカップリング剤(b)及び水溶性ジルコニウム化合物(c)を含むアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物であって、上記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)は、ガラス転位温度(Tg)が50℃以下であり、上記水溶性ジルコニウム化合物(c)は、炭酸ジルコニウムアンモニウムであり、上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、pHが7〜10であり、かつ、バナジウム、無機酸、有機酸及びフッ素化合物を含有しないものであることを特徴とするアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物である。
【0014】
上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、上記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)100質量部(固形分換算)に対して、上記シランカップリング剤(b)は、0.1〜10質量部(固形分換算)、上記水溶性ジルコニウム化合物(c)は、0.1〜10質量部(固形分換算)含有するものであることが好ましい。
【0015】
上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、更に、上記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)と反応性を有する架橋剤を含有するものであることが好ましい。
【0016】
上記架橋剤は、上記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)100質量部(固形分換算)に対して、0.5〜20質量部(固形分換算)含有するものであることが好ましい。
【0017】
上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、更に、平均粒子径が0.5〜3μmのワックスを上記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)100質量部(固形分換算)に対して、0.1〜1質量部(固形分換算)含有するものであることが好ましい。
【0018】
本発明は、上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物を乾燥膜厚1〜3μmとなるように塗布することを特徴とするアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板の被覆方法である。
【0019】
本発明はまた、上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板の被覆方法によって被覆されたことを特徴とするアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板に対して好適に使用することができるものである。アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板に使用することによって、鋼板表面に優れた耐食性、耐黒変性、耐候性及び塗膜密着性を有する皮膜を形成することができるとともに、優れた成型加工性を付与することができるものである。
【0021】
即ち、本発明のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、組成物中に含有されるアニオン性ポリウレタン水分散体(a)による皮膜のバリヤー性の向上及び基材や上塗り塗膜との密着性等の向上、シランカップリング剤(b)による基材との密着性の向上、水溶性ジルコニウム化合物(c)による耐食性の向上が効果として発揮されるものである。その結果、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板に対して優れた耐食性、耐黒変性、耐候性及び塗膜密着性を付与することができ、また、成型加工性にも優れた皮膜を形成することができる。
【0022】
本発明のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、アニオン性ポリウレタン水分散体(a)を含有するものである。これにより、基材であるアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板や上塗り塗膜との密着性、耐食性、耐黒変性及び成型加工性を向上させることができる。
【0023】
上記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)は、カルボキシル基を有するポリウレタンをアンモニア等の塩基性化合物を添加することによって水中に分散させたものである。上記カルボキシル基を有することにより、基材や上塗り塗膜との密着性を向上させることができる。
【0024】
上記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)は、ガラス転位温度(Tg)が50℃以下である。これにより、上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物の成膜性、耐食性及び耐黒変性を向上させることができ、また、成型加工性にも優れた皮膜を形成することができる。50℃を超えると、低温乾燥時の成膜性が低下し、耐食性及び耐黒変性も低下するおそれがあり、また、乾燥後の皮膜も堅く、加工された際に皮膜が割れ易くなり、加工部の耐食性が低下するおそれもある。上記ガラス転位温度(Tg)の下限は、−20℃であることが好ましく、−10℃であることがより好ましい。上記ガラス転位温度(Tg)の上限は、40℃であることが好ましく、30℃であることがより好ましい。なお、上記ガラス転位温度(Tg)は、動的粘弾性測定装置(RHEOLOGRAPH
SOLID;東洋精機社製)による実測値である。
【0025】
上記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)は、固形分酸価が、下限5mgKOH/g、上限40mgKOH/gであることが好ましい。これにより、成膜時の耐食性、耐黒変性と密着性とを両立することができる。5mgKOH/g未満であると、基材や上塗り塗膜との密着性が低下したり、ポリウレタンの水分散化が困難となり、液安定性が低下するおそれがある。40mgKOH/gを超えると、カルボキシル基が親水性を有するため、成膜時の耐食性及び耐黒変性が低下するおそれがある。上記下限は、10mgKOH/gであることがより好ましく、15mgKOH/gであることが更に好ましい。上記上限は、35mgKOH/gであることがより好ましく、30mgKOH/gであることが更に好ましい。なお、上記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)の固形分酸価は、ポリウレタンの原料酸価からの計算値である。
【0026】
上記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)は、上述したように、カルボキシル基を有する樹脂をアンモニア等の塩基性化合物を用いることによって水中に分散させたものである。
【0027】
上記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)としては特に限定されず、例えば、多価イソシアネート、多価アルコール及び酸性基を有する2官能性活性水素含有化合物を含有する構成成分を従来公知の方法により重合することによってアニオン性ポリウレタンを調製し、更に、1価アミン等の塩基性化合物を添加することによってアニオン性ポリウレタンを水中に分散させることによって得ることができる。
【0028】
上記多価イソシアネートとしては特に限定されず、従来ポリウレタンエマルジョン合成原料として知られているものを使用することができ、例えば、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート等を挙げることができる。更にこれらの混合物が使用可能である。また、ウレタン、アロファネート、尿素、ビュレット、カルボイミド、ウレタンイミン、イソシアヌレート残基で変性された2官能性イソシアネート等も使用することができる。
【0029】
上記多価アルコールとしては特に限定されず、従来ポリウレタンエマルジョン合成原料として知られているものを使用することができ、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリシロキサンポリオール等を挙げることができ、その分子量が500〜5000のものが好ましい。また、必要によっては、低分子量多価アルコールを混合してもよい。上記混合可能な多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。
【0030】
上記酸性基を有する2官能性活性水素含有化合物としては特に限定されず、従来アニオン性ポリウレタンエマルジョンの合成原料として知られているものを使用することができ、例えば、2,2−ジメチロールプロパン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、リシンシスチン、3,5−ジアミノ安息香酸等を挙げることができる。これらの化合物は分子中にカルボキシル基を有し、ポリウレタンにアニオン性と水分散性とを付与する。
【0031】
上記1価アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン;N−エチルモルホリン等のN−アルキル置換N含有複素環化合物等を挙げることができる。
【0032】
本発明のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、シランカップリング剤(b)を含有するものである。これにより、基材であるアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板に対する密着性が向上し、耐食性及び耐黒変性を向上させることができる。
【0033】
上記シランカップリング剤(b)は、反応性官能基を複数個有するシラン化合物であれば特に限定されず、例えば、信越化学工業、日本ユニカー、チッソ、東芝シリコーン等から販売されているビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルエトキシシラン、N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。上記シラン化合物は、シランの加水分解物も含むものである。
【0034】
上記シランカップリング剤(b)は、アニオン性ポリウレタン水分散体(a)100質量部(固形分換算)に対して、下限0.1質量部、上限10質量部(固形分換算)含有するものであることが好ましい。0.1質量部未満であると、添加量が少ないため、基材との密着性が不足し、耐食性及び耐黒変性の改善効果が充分に見られないおそれがある。10質量部を超えると、成膜性が悪くなり、耐食性及び耐黒変性が低下するおそれがあるとともに、液のゲル化、増粘等が起こることにより液安定性も低下するおそれがある。上記下限は、0.5であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。上記上限は、8であることがより好ましく、6であることが更に好ましい。
【0035】
本発明のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、水溶性ジルコニウム化合物(c)を含有するものである。水溶性ジルコニウム化合物(c)の有する防錆作用によって、耐食性を向上させることができる。また、水溶性ジルコニウム化合物(c)は、ポリウレタン中のカルボキシル基と架橋反応を起こす化合物であり、これにより、耐食性、耐黒変性を向上させることができる。即ち、従来の処理剤のように、ジルコニウム化合物としてジルコニアの微粒子が使用される場合には、ジルコニアは処理剤中で溶解した状態で存在するわけではないために、形成される皮膜中の樹脂と架橋反応を起こすことは少ないものと推察される。一方、本発明のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物中に含有される水溶性ジルコニウム化合物(c)は、水溶性のものであり、水性樹脂組成物中において、溶解した状態で存在するものであるため、皮膜中においてジルコニウムと上記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)における樹脂中のカルボキシル基との架橋反応が効率的に進行するものと推察される。その結果、上記水溶性ジルコニウム化合物(c)を含有するアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物を使用することによって、樹脂との架橋反応が充分に進行した皮膜をアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板上に形成することができ、得られるアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板の耐食性、耐黒変性を向上させることができるものと推察される。更に、上記シランカップリング剤(b)と水溶性ジルコニウム化合物(c)とを併用すると、その相乗作用によって、各々の単独系の場合と比較して、耐食性及び耐黒変性を飛躍的に向上させることができる。
【0036】
上記水溶性ジルコニウム化合物(c)は、水に溶解した場合に、pHが下限7、上限11になるものである。即ち、上記水溶性ジルコニウム化合物(c)を水に溶解して得られる水溶液のpHは、7〜11となる。7未満であると、耐食性、耐黒変性が低下するおそれがあるとともに、液のゲル化、増粘等が起こり、液安定性も低下するおそれがある。例えば、クエン酸ジルコニウムアンモニウム(水に溶解した場合、pHが6になるものである。)等の有機酸又は無機酸の塩の場合にこれらの傾向が顕著に現れるため、好ましくない。11を超えると、鋼板表面がエッチングされ外観不良となるおそれがある。上記下限は、8であることが好ましく、上記上限は、10であることが好ましい。
【0037】
上記水溶性ジルコニウム化合物(c)は、水に溶解した場合に、pHが7〜11になるジルコニウムを含有する化合物であれば特に限定されないが、なかでも、炭酸ジルコニウムアンモニウムであることが好ましい。炭酸ジルコニウムアンモニウムである場合には、化合物中のジルコニウムと樹脂中のカルボキシル基とがより効率的に架橋反応が進行するため、特に優れた成型加工性、耐黒変性、耐食性を有する皮膜が形成されるため、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板に対して特に好適に適用することができる。
【0038】
上記水溶性ジルコニウム化合物(c)は、アニオン性ポリウレタン水分散体(a)100質量部(固形分換算)に対して、下限0.1質量部、上限10質量部(固形分換算)含有するものであることが好ましい。0.1質量部未満であると、添加量が少ないため、基材との密着性、耐食性及び耐黒変性の改善効果が充分に見られないおそれがある。10質量部を超えると、成膜性が悪くなり、耐食性及び耐黒変性が低下するおそれがあるとともに、液のゲル化、増粘等が起こることにより液安定性も低下するおそれがある。上記下限は、0.5であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。上記上限は、8であることがより好ましく、6であることが更に好ましい。
【0039】
本発明のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、pHが、下限7、上限10である。これにより、より優れた成型加工性、耐黒変性、耐食性、塗膜密着性を有する皮膜を形成することができる。上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物が酸性を示すものである場合には、その水性樹脂組成物を鋼板表面に塗布すると、形成される皮膜が成型加工性、耐食性、耐黒変性、塗膜密着性に劣るものとなってしまう場合があるが、上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物がpH7〜10を示すものであるため、これらの性能に優れた皮膜を形成することができる。このように、酸性である場合とpH7〜10である場合とで性能に違いが見られる理由は明らかではないが、酸性である場合には、鋼板表面がエッチング等を受けることがあり、その結果、形成される皮膜の性能に劣る場合があるが、上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、pH7〜10を示すものであるため、エッチング等を受けることが酸性の場合に比べて少なく、結果として、水性樹脂組成物中の成分によって発揮される効果を充分に有する皮膜を形成することができるためであると推察される。つまり、酸性の場合と、pH7〜10を示す本発明のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物とでは、皮膜の形成される機構が異なるものであるために、形成される皮膜の性能が異なるものとなると推察される。
【0040】
上記pHが7未満であると、耐食性、黒変性が低下するおそれがあるとともに、液のゲル化、増粘等が起こり、液安定性も低下するおそれがある。上記pHが10を超えると、鋼板表面がエッチングされ外観不良となるおそれがある。上記pHの下限は、7.5であることが好ましく、上記pHの上限は、9.5であることが好ましい。
【0041】
上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、更に、上記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)と反応性を有する架橋剤を含有してもよい。上記架橋剤を水性樹脂組成物中に含有させることによって、上記架橋剤がポリウレタン中のカルボキシル基と反応して架橋し、皮膜の耐食性、耐黒変性を向上させることができる。
【0042】
上記架橋剤は、樹脂中のカルボキシル基と反応性を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、多官能性エポキシ化合物、有機チタン化合物、アミノ樹脂、ブロックイソシアネート、カルボジイミド化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物等を挙げることができる。なかでも、低温硬化性が要求される場合には、カルボジイミド化合物を好適に使用することができる。
【0043】
上記カルボジイミド化合物としては特に限定されないが、カルボジイミド基を1分子中に2個以上有するものが好ましく、例えば、1分子中に少なくとも2個のカルボジイミド基を有し、炭素数4以上のモノアルコキシ基で片側末端を封鎖されたポリアルキレンオキサイドユニットを有している変性ポリカルボジイミド化合物等を挙げることができる。
【0044】
上記カルボジイミド基は、−N=C=N−で表される官能基である。上記変性ポリカルボジイミド化合物1分子中に含まれる上記カルボジイミド基の量は、少なくとも2個であり、反応効率を考慮すれば、実質的には20個以下であることが好ましい。
【0045】
上記ポリアルキレンオキサイドユニットは、例えば、R1−O−(CH2−CHR2−O−)m−(R1は炭素数4〜20のアルキル基、R2は水素原子又はメチル基であり、mは4〜30の整数である。)で表されるユニットであり、アルコキシ基で末端封鎖されたポリ(エチレンオキサイド)又はポリ(プロピレンオキサイド)、それらの混合物からなるモノアルコキシポリアルキレングリコールから活性水素を除いたものである。
【0046】
上記ユニットは、上記変性ポリカルボジイミド化合物の分子両末端にウレタン結合によって結合している。上記変性ポリカルボジイミド化合物は、両末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物とモノアルコキシポリアルキレングリコールとを反応させることによって得られるものである。
【0047】
上記両末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物の製造方法としては、当業者によってよく知られており、有機ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応を利用することができる。
【0048】
上記有機ジイソシアネートとしては特に限定されず、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、これらの混合物を挙げることができ、上述のアニオン性ポリウレタン水分散体(a)で述べた多価イソシアネートを挙げることができる。上記縮合反応には、通常、カルボジイミド化触媒が用いられる。
【0049】
上記両末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物とモノアルコキシポリアルキレングリコールとの反応は、モノアルコキシポリアルキレングリコールの水酸基のモル量がイソシアネート基のモル量以上になるように設定して行うことが好ましい。上記モノアルコキシポリアルキレングリコールは、従来公知の化合物を使用することができる。反応方法としては、当業者によってよく知られている方法を用いることができ、例えば、両者を混合し、60〜120℃に加熱して反応させることによって上記変性ポリカルボジイミド化合物を得ることができる。
【0050】
上記オキサゾリン化合物としては特に限定されず、例えば、オキサゾリン基を1分子中に平均1.5個以上有する化合物を挙げることができる。上記オキサゾリン化合物は、オキサゾリン基を、1分子中に平均2〜50個有することが好ましい。オキサゾリン基が結合する残基としては、脂肪族基、芳香族基、脂環族基及びこれらの組合せの基を挙げることができる。上記オキサゾリン基が結合する残基としては、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよいが、特にスチレンポリマー、スチレン−アクリレート系共重合体が好ましい。上記オキサゾリン化合物の市販品としては、例えば、「エポクロスK−2020E」(日本触媒社製)、「エポクロスK−2030E」(日本触媒社製)、「エポクロスWS−500」(日本触媒社製)等の水分散化物を挙げることができる。
【0051】
上記アジリジン化合物としては特に限定されず、例えば、アジリジン基を1分子中に平均1.5個以上有する化合物を挙げることができる。上記アジリジン化合物は、アジリジン基を、1分子中に平均2〜50個有することが好ましい。また、アジリジン基が結合する残基としては、酸素、硫黄、窒素等のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、脂肪族基、芳香族基、脂環族基及びこれらの組合せの基を挙げることができる。上記アジリジン基が結合する残基としては、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。
【0052】
上記アジリジン化合物としては、例えば、N,N′−ヘキサメチレン−1、6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N′−ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート)、N,N′−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリエチレンメラミン、トリメチロールプロパン−トリ(β−メチルアジリジン)プロピオネート、ビスイソフタロイル−1,2−メチルアジリジン、トリ−1−アジリジニルフォスフィンオキサイド、トリス−1,2−メチルアジリジンフォスフィンオキサイド等を挙げることができる。また、水分散系のアジリジン化合物の市販品としては、例えば、「SU−125F」(明成化学工業社製)、「DZ−22E」(日本触媒社製)等を挙げることができる。
【0053】
上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物が架橋剤を含有する場合には、耐食性、耐黒変性、塗膜密着性、液安定性の観点から、上記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)100質量部(固形分換算)に対して、架橋剤を下限0.5質量部、上限20質量部含有するものであることが好ましい。0.5質量部未満であると、架橋剤の添加量が不足するため、耐食性、耐黒変性の改善効果が充分でないおそれがあり、20質量部を超えると、皮膜中の酸価が低くなり、基材や上塗り塗膜との密着性が低下するおそれがあるとともに、液のゲル化、増粘等が起こり、液安定性も低下するおそれがある。上記下限は、1であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。上記上限は、15であることがより好ましく、10であることが更に好ましい。上記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)に含まれるカルボキシル基と反応性を有する上記架橋剤に含まれる官能基としては、例えば、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、エポキシ基、イソシアネート基等を挙げることができる。
【0054】
上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、更に、平均粒子径が、下限0.5μm、上限3μmのワックスを含有することが好ましい。この範囲の平均粒子径のワックスを含有させることにより、物理的に皮膜表面にワックスを露出させることができ、少量の添加量で潤滑性を付与し、成型加工性を向上させることができる。一般的にワックスは、界面活性剤のような分散剤を用いて水分散化されているため、形成される皮膜の耐水性が低下することが多いが、本発明のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、少量の添加量で潤滑性を付与し、成型加工性を向上させることができるため、性能への影響はほとんどない。
【0055】
上記ワックスの平均粒子径が0.5μm未満であると、添加量を増加させないと、潤滑性が充分に得られないが、添加量を増加させると、耐水性が低下してしまうおそれがある。このため、0.5μm未満のワックスを用いることは好ましくない。3μmを超えると、経時でワックスの分離や沈降が起こり、液安定性が低下するおそれがある。上記下限は、1μmであることがより好ましく、上記上限は、2.5μmであることがより好ましい。
【0056】
上記ワックスは、アニオン性ポリウレタン水分散体(a)100質量部(固形分換算)に対して、下限0.1質量部、上限1質量部(固形分換算)含有するものであることが好ましい。0.1質量部未満であると、潤滑性が不足し、成型加工性の改善効果が充分でないおそれがある。1質量部を超えると、耐食性、耐黒変性及び上塗り塗膜との密着性が低下するおそれがある。上記下限は、0.2質量部であることがより好ましく、0.3質量部であることが更に好ましい。上記上限は、0.8質量部であることがより好ましく、0.6質量部であることが更に好ましい。
【0057】
上記ワックスとしては特に限定されず、一般的なすべてのワックスを使用することができるが、例えば、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス等を挙げることができる。なかでも、成型加工性の観点から、ポリエチレン系ワックスが好ましい。
【0058】
上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、各々の目的に応じて、造膜助剤、濡れ性付与剤、消泡剤等を挙げることができる。例えば、発泡し易い場合には、消泡剤を添加して消泡性を付与したり、ハジキ易い場合には、濡れ剤を添加して濡れ性を付与する。また、より均一で平滑な皮膜を形成するために、造膜助剤として溶剤を使用してもよい。上記溶剤としては特に限定されず、塗料に一般的に使用されているものを用いることができ、例えば、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系のもの等を挙げることができる。
【0059】
本発明のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板の被覆方法は、上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物を塗布するものである。
上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物をアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板に被覆する方法としては特に限定されず、例えば、ロールコーター、浸漬塗布、スプレー塗布、はけ塗り、静電塗布等、通常のエマルジョン塗料と同様の塗布手段及び方法で塗布することができる。また、乾燥方法としても特に限定されず、例えば、塗布後に熱風で加熱し乾燥させる方法や、あらかじめ被塗物を加熱し、その後上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物を熱時塗布し、余熱を利用して乾燥させる方法であってもよい。
【0060】
上記乾燥条件は、乾燥温度が、下限50℃、上限250℃であることが好ましい。50℃未満であると、水分の蒸発が遅く充分な成膜性が得られないため、耐食性、耐黒変性が低下するおそれがある。250℃を超えると、樹脂の熱分解が生じて耐食性、耐黒変性が低下するとともに、黄変のため外観も悪くなるおそれがある。上記下限は、70℃であることがより好ましく、上記上限は、220℃であることがより好ましい。また、コーティング後に熱乾燥させる場合の乾燥時間は、1秒〜5分であることが好ましい。
【0061】
上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板の被覆方法は、乾燥膜厚が下限1μm、上限3μmとなるように塗布するものであることが好ましい。1μm未満であると、耐食性、耐黒変性、耐候性、成型加工性が低下するおそれがある。3μmを超えると、経済的でなく、塗装にも不都合である。上記下限は、1.5μmであることがより好ましく、上記上限は、2.5μmであることがより好ましい。
【0062】
上記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板の被覆方法によって被覆されたアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板は、成型加工性、耐黒変性、耐食性、塗膜密着性に優れたものであり、建材製品、土木製品、自動車、家電製品、産業機器等の材料等として好適に使用することができる。上記被覆されたアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板に形成された皮膜の乾燥膜厚は、下限1μm、上限3μmであることが好ましい。
【0063】
本発明のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、ガラス転位温度(Tg)が50℃以下であるアニオン性ポリウレタン水分散体(a)、シランカップリング剤(b)、及び、水に溶解した場合にpHが7〜11になる水溶性ジルコニウム化合物(c)からなり、pHが7〜10であるものである。即ち、特定のアニオン性ポリウレタン水分散体(a)を含有するものであるため、基材や上塗り塗膜との密着性、耐食性、耐黒変性を向上させることができ、更に、シランカップリング剤(b)及び水溶性ジルコニウム化合物(c)を併用することによって耐食性、耐黒変性を飛躍的に向上させることができる。また、pHが7〜10を示すものであるため、耐食性及び耐黒変性を向上させることができる。その結果、皮膜形成性に優れ、耐黒変性、耐食性、塗膜密着性にも優れた皮膜をアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板に形成することができる。特に、上記水溶性ジルコニウム化合物(c)が炭酸ジルコニウムアンモニウムである場合、これらの性能により優れた皮膜を形成することができる。従って、本発明のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、建材製品、土木製品の材料、自動車、家電製品、産業機器等の材料、塗装鋼板の基板等として好適に使用することができる。
【0064】
【実施例】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
【0065】
実施例1〜8及び比較例1〜6
(アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物の調製)
表1に記載した種類のアニオン性ポリウレタン水分散体、シランカップリング剤、ジルコニウム化合物をこの順序で表1に記載した固形分濃度比になるように加え、5分間攪拌後、脱イオン水を加えて水性樹脂組成物の固形分濃度を25%に調整することによって、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物を得た。
【0066】
実施例9〜16
表1に記載した種類のアニオン性ポリウレタン水分散体、シランカップリング剤、ジルコニウム化合物、架橋剤、ワックスをこの順序で表1に記載した固形分濃度比になるように加え、10分間攪拌後、脱イオン水を加えて水性樹脂組成物の固形分濃度を25%に調整することによって、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物を得た。
【0067】
表1に示したアニオン性ポリウレタン水分散体の種類(a1〜a5)を以下に示した。
a1:スーパーフレックス420(ポリカーボネート系ポリウレタン水分散体、固形分32%;第一工業製薬社製)
a2:スーパーフレックス150HS(ポリエステルポリエーテル系ポリウレタン水分散体、固形分38%;第一工業製薬社製)
a3:スーパーフレックス110(ポリエーテル系ポリウレタン水分散体、固形分30%;第一工業製薬社製)
a4:スーパーフレックス130(ポリエーテル系ポリウレタン水分散体、固形分35%;第一工業製薬社製)
a5:スーパーフレックス410(ポリカーボネート系ポリウレタン水分散体、固形分30%;第一工業製薬社製)
【0068】
表1に示したシランカップリング剤の種類(b1〜b4)を以下に示した。
b1:サイラエースS−510(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、固形分濃度100%;チッソ社製)
b2:サイラエースS−330(3−アミノプロピルトリメトキシシラン、固形分濃度100%;チッソ社製)
b3:サイラエースS−210(ビニルトリメトキシシラン、固形分濃度100%;チッソ社製)
b4:サイラエースS−810(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、固形分濃度100%;チッソ社製)
【0069】
表1に示したジルコニウム化合物の種類(c1〜c3)を以下に示した。 ただし、c1、c2は水溶性ジルコニウム化合物、c3は水分散性ジルコニウム化合物である。
c1:ジルコゾールAC−7(炭酸ジルコニウムアンモニウム、固形分13%、;第一稀元素工業社製)
c2:クエン酸ジルコニウムアンモニウム(固形分12%;第一稀元素工業社製)
c3:ジルコニアゾルNZS−30B(ジルコニアゾル、固形分30%;日産化学工業社製)
【0070】
表1に示した架橋剤の種類(d1〜d3)を以下に示した。
d1:VP−56(カルボジイミド系架橋剤、固形分71%;日本ペイント社製)
d2:FS−50(アジリジン系架橋剤、固形分28%;明成化学工業社製)
d3:エポクロス WS−500(オキサゾリン系架橋剤、固形分40%;日本触媒社製)
【0071】
表1に示したワックスの種類(e1〜e3)を以下に示した。
使用したを以下に示す。
e1:ノプコ1245MS−N(マイクロクリスタリンワックス、固形分46%;サンノプコ社製)
e2:ケミパールW−300(低分子量ポリオレフィンワックス、固形分40%;三井化学社製)
e3:ケミパールW−900(低分子量ポリオレフィンワックス、固形分40%;三井化学社製)
【0072】
【表1】
【0073】
(試験板の作成)
脱脂、洗浄した板厚0.5mmの市販の溶融55重量%アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板の表面に実施例及び比較例で得られたアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物をバーコーターにより乾燥膜厚が1〜3μmになるように塗布し、電気熱風乾燥炉を用いて、被塗物到達温度を80〜150℃となるように乾燥した。これを冷却したものを試験板とし、この試験板の耐食性、耐黒変性、耐候性、成型加工性、塗膜密着性及びアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物の貯蔵安定性を下記の評価方法に従って評価し、その結果を表2に示した。
【0074】
(評価方法)
<耐食性>
試験板の平面部及びエリクセンテスターで7mm押し出した試験板の加工部について、JIS Z 2371に基づき塩水噴霧試験をかけ、120時間後の白錆発生面積率を下記の基準で評価した。
◎:白錆発生面積が10%未満
○:同10%以上30%未満
△:同30%以上50%未満
×:同50%以上
【0075】
<耐黒変性>
試験板を1%NaOH溶液に1時間浸漬し、黒変状態を下記の基準で評価した。◎:黒変が認められない
○:僅かに黒変が認めれる
△:黒変が認められる
×:黒変が著しい
【0076】
<耐候性>
試験板をデューサイクル試験器にかけ、100時間後の光沢保持率を測定し、下記の基準で評価した。
◎:光沢保持率70%以上
○:光沢保持率70%未満〜50%以上
△:光沢保持率50%未満〜30%以上
×:光沢保持率30%未満
【0077】
<成型加工性>
塗布面を上に向けて試験板を置き、上側にエリクセン5mm押し出しした別の試験板を乗せ、加重1kgをかけながら6往復させた。摩擦部周辺の剥離皮膜量を下記の基準で評価した。
◎:ほとんど剥離がない
○:僅かに剥離がある
△:少し剥離がある
×:剥離が多い
【0078】
<塗膜密着性>
試験板にアクリル樹脂系塗料(スーパーラック100、日本ペイント社製)をバーコーターにより乾燥膜厚が20μmとなるように塗装し、160℃で20分間熱風乾燥炉を用いて焼き付けて塗装板を作成した。次に、塗装板を沸騰水中に2時間浸漬後、塗装板に1mm間隔の碁盤目をカッターナイフを用いて100個作り、エリクセンテスタ−にて塗装板を6mm押し出し、その押し出し部に粘着テープを貼り付けて剥離した。残存した碁盤目の数を測定し、下記の基準で評価した。
◎:残存数100個
○:残存数99〜81個
△:残存数80〜51個
×:残存数50個以下
【0079】
<貯蔵安定性>
実施例及び比較例で得られたアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物を室温で30日間放置した後の状態を下記の基準で評価した。
◎:変化なし
○:僅かに増粘(実用上問題のないレベル)
△:増粘
×:ゲル化
【0080】
【表2】
【0081】
表2に示すように、実施例で得られたアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れており、また、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物を塗布することにより得られた試験板は、耐食性、耐黒変性、耐候性、成型加工性に優れていた。更に、塗装することによって得られた塗装板は、優れた塗膜密着性を有するものであった。
【0082】
【発明の効果】
本発明のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、上述した構成よりなるので、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板に対して好適に適用することができ、優れた成型加工性と、耐食性、耐黒変性、耐候性及び塗膜密着性とを付与することができるとともに、貯蔵安定性にも優れたものである。従って、本発明のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、屋根材、壁材等の建材製品、ガードレール、防音壁、排水溝等の土木製品の材料、自動車、家電製品、産業機器等の材料、塗装鋼板の基板等として好適に用いることができるものである。
Claims (7)
- アニオン性ポリウレタン水分散体(a)、シランカップリング剤(b)及び水溶性ジルコニウム化合物(c)を含むアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物であって、
前記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)は、ガラス転位温度(Tg)が50℃以下であり、
前記水溶性ジルコニウム化合物(c)は、炭酸ジルコニウムアンモニウムであり、
前記アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物は、pHが7〜10であり、かつ、バナジウム、無機酸、有機酸及びフッ素化合物を含有しないものである
ことを特徴とするアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物。 - アニオン性ポリウレタン水分散体(a)100質量部(固形分換算)に対して、シランカップリング剤(b)は、0.1〜10質量部(固形分換算)、水溶性ジルコニウム化合物(c)は、0.1〜10質量部(固形分換算)含有するものである請求項1記載のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物。
- 更に、前記アニオン性ポリウレタン水分散体(a)と反応性を有する架橋剤を含有するものである請求項1又は2記載のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物。
- 前記架橋剤は、アニオン性ポリウレタン水分散体(a)100質量部(固形分換算)に対して、0.5〜20質量部(固形分換算)含有するものである請求項3記載のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物。
- 更に、平均粒子径が0.5〜3μmのワックスをアニオン性ポリウレタン水分散体(a)100質量部(固形分換算)に対して、0.1〜1質量部(固形分換算)含有するものである請求項1、2、3又は4記載のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物。
- 請求項1、2、3、4又は5記載のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板処理用水性樹脂組成物を乾燥膜厚1〜3μmとなるように塗布することを特徴とするアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板の被覆方法。
- 請求項6記載のアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板の被覆方法によって被覆されたことを特徴とするアルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板。
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