JP3864435B2 - ネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気光学的表示材料として有用なネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子の代表的なものにTN-LCD(ツイスティッド・ネマチック液晶表示素子)があり、時計、電卓、電子手帳、ポケットコンピュータ、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータなどに使用されている。一方、OA機器の処理情報の増加に伴い、一画面に表示される情報量が増大しており、シェファー(Scheffer)等[SID '85 Digest, 120頁(1985年)]、あるいは衣川等[SID '86 Digest, 122頁(1986年)]によって、STN-LCD(スーパー・ツイスティッド・ネマチック液晶表示素子)が開発され、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータなどの高情報処理用の表示に広く普及しはじめている。
【0003】
更に、その表示品質が優れていることから、アクティブ・マトリクス形液晶表示装置が液晶テレビ、プロジェクター表示、コンピューター等のディスプレイの応用分野に有力なものとして市場に出されている。アクティブ・マトリクス表示方式は、画素毎にTFT(薄膜トランジスタ)あるいはMIM(メタル・インシュレータ・メタル)等のスイッチング素子が使われており、この方式には漏れ電流の小さいこと、即ち高電圧保持率であることが重要視されている。(以下、これらアクティブ・マトリクス表示方式の液晶表示素子を総称してTFT-LCDと呼称する)
【0004】
従って、この様な表示素子に対応するために、現在も新しい液晶化合物あるいは液晶組成物、例えば特開平6−312949号公報、特公表5−501735号公報等の提案がなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
TN-LCDやSTN-LCDには、液晶材料の化学的安定性、液晶表示装置の動作温度及び表示特性等の課題がある。
【0006】
例えば、高時分割数のTN-LCDやSTN-LCDは各種表示として使用されており、動作温度が広いこと、良好な視角特性の為に複屈折率△nが小さいこと、しきい値電圧が低いことの要求もされている。しかしながら、動作温度が広い液晶材料は複屈折率△nやしきい値電圧の増加により、良好な液晶材料を得ることを困難にさせている。また、暗い画質を補う目的でバックライトを利用したSTN-LCDに用いられる場合、耐熱性及び耐光性等の化学的安定性が新たに要求されている。
【0007】
これらの要求特性に加えて、特にアクティブ・マトリクス方式においては、均一で高いコントラストを得るために、漏れ電流が小さく、高い電圧保持率を有することが重要である。この様な特性を得るために、例えば、下記のような一般式(a−1)
【0008】
【化8】
【0009】
(式中、Rはアルキル基を表わす。)の化合物が用いられてきた。
しかしながら、これらの化合物を用いても、広い温度範囲特に低温においてネマチック液晶性を保持するためには、更に一般式(a−2)や(a−3)
【0010】
【化9】
【0011】
(式中、Rはアルキル基を表わす。)の化合物を併用しているのが現状であった。
更に加えて、均一で高いコントラストの液晶表示特性を得るために、液晶パネルの液晶層の厚み(d)と液晶材料の複屈折率(△n)との積(△n・d)を0.35〜0.6(以下、このことをファーストミニマムと呼称する)、0.70〜1.4(以下、このことをセカンドミニマムと呼称する)あるいは1.50〜2.2(以下、このことをサードミニマムと呼称する)とするのが好ましいとされている。現在の液晶パネルの作製工程で行われている厚み(d)は約4.5μm以上であることから、液晶材料の複屈折率(△n)を0.07〜0.10、0.12〜0.14あるいは0.15以上とすることが要求されている。しかし、より小さいあるいはより大きい複屈折率を有する液晶材料は、低温での相がスメクチック相やガラス状態になりやすく、ネマチック液晶性を保持させることが新たな問題となっている。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題に応えることにあり、低温において安定したネマチック液晶性を有し、目的に応じた複屈折率△nを有し、しかも充分に高い比抵抗や電圧保持率を有する液晶組成物を提供し、この液晶組成物を用いた液晶表示装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、(1)一般式(I-1)
【0014】
【化10】
【0015】
(式中、R11は炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアルケニルオキシ基を表わし、X11は炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアルケニルオキシ基、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、−OCF3、−OCHF2又は−CF3を表わし、Y1及びY2はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表わし、Lは一般式(I-2)、Qは一般式(I-3)
【0016】
【化11】
【0017】
を表わし、環A11、環A12、環A13及び環A14はそれぞれ独立的に1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、あるいは1又は2個の水素原子がフッ素原子、塩素原子又は−CH3で置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表わし、Z11、Z12、Z13及びZ14はそれぞれ独立的に単結合、−C2H4−、−C4H8−、−COO−、−OCO−又は−C≡C−を表わし、k、l、m及びnはそれぞれ独立的に0又は1の整数であるが、k+l+m+nは0、1、2のいずれかであり、各化合物における1,4−シクロヘキシレン基の水素原子(H)は重水素原子(D)で置換されていてもよい。)で表わされる化合物からなる第1群から一種以上選ばれる化合物を含有することを特徴とするネマチック液晶組成物を提供する。
【0018】
本発明は、上記ネマチック液晶組成物に、第2の化合物群として、(2)一般式(II-1)〜(II-4)
【0019】
【化12】
【0020】
(式中、Z21及びZ25はそれぞれ独立的に−C2H4−、−C4H8−、−COO−又は単結合を表わし、Z22、Z23及びZ24はそれぞれ独立的に−C2H4−、−C4H8−又は−COO−を表わし、Z26は−COO−、−C≡C−又は単結合を表わし、R21、R22、R23及びR24はそれぞれ独立的に炭素原子数2〜10の直鎖状アルキル基又はアルケニル基を表わし、X21、X22、X23及びX24はそれぞれ独立的にフッ素原子、塩素原子、シアノ基、−OCF3、−OCHF2又は−CF3を表わし、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、Y11及びY12はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表わし、各化合物における1,4−シクロヘキシレン基の水素原子(H)は重水素原子(D)で置換されていてもよい。)で表わされる化合物からなる第2群から一種以上選ばれる化合物、及び/又は第3の化合物群として、(3)一般式(III-1)〜(III-3)
【0021】
【化13】
【0022】
(式中、Z31、Z32、Z33及びZ34はそれぞれ独立的に−COO−、−C2H4−又は単結合を表わし、Z35は−COO−、−C≡C−又は単結合を表わし、R31、R32及びR33はそれぞれ独立的に炭素原子数2〜10の直鎖状アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアルケニルオキシ基を表わし、R34、R35及びR36はそれぞれ独立的に炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアルケニルオキシ基を表わし、Y13は水素原子、フッ素原子又は−CH3を表わし、p、q及びrはそれぞれ独立的に0又は1の整数を表わし、環A31は一般式(III-4)〜(III-6)
【0023】
【化14】
【0024】
のいずれかであり、各化合物における1,4−シクロヘキシレン基の水素原子(H)は重水素原子(D)で置換されていてもよい。)で表わされる化合物からなる第3群から一種以上選ばれる化合物、及び/又は第4の化合物群として、(4)一般式(IV-1)〜(IV-5)
【0025】
【化15】
【0026】
(式中、Z41及びZ42はそれぞれ独立的に単結合、−COO−、−C2H4−又は−C4H8−を表わし、Z43は−COO−、−C≡C−又は単結合を表わし、R41、R42、R43、R44及びR45はそれぞれ独立的に炭素原子数2〜10の直鎖状アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアルケニルオキシ基を表わし、X41、X42、X43、X44及びX45はそれぞれ独立的にフッ素原子、塩素原子、シアノ基、−OCF3、−OCHF2又は−CF3を表わし、Y14、Y15、Y16、Y17、Y18、Y19、Y20及びY21はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表わし、各化合物における1,4−シクロヘキシレン基の水素原子(H)は重水素原子(D)で置換されていてもよい。)で表わされる化合物からなる第4群から一種以上選ばれる化合物、及び/又は第5の化合物群として、(5)一般式(V-1)〜(V-3)
【0027】
【化16】
【0028】
(式中、Z51、Z52及びZ53はそれぞれ独立的に単結合、−COO−、−C2H4−又は−C4H8−を表わし、R51、R52、R53、R54及びR55はそれぞれ独立的に炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基又はアルケニル基を表わし、X51は炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、−OCF3、−OCHF2又は−CF3を表わし、Y22、Y23、Y24及びY25はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表わし、環A51は1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表わし、各化合物における1,4−シクロヘキシレン基の水素原子(H)は重水素原子(D)で置換されていても良い。)で表わされる化合物からなる第5群から一種以上選ばれる化合物を含有することを特徴とするネマチック液晶組成物を提供する。
【0029】
また、本発明は上記の液晶組成物を用いたアクティブ・マトリクス液晶表示装置、ツイスティッド・ネマチック又はスーパー・ツイスティッド・ネマチック液晶表示装置をも提供する。
【0030】
本発明に係わる(1)一般式(I-1)で表わされる化合物からなる第1群から選ばれる化合物は、以下に示す一般式(I-4)〜(I-9)で表わされる化合物群から選ばれることが好ましい。
【0031】
【化17】
【0032】
(式中、R11、X11、Z11、Z12、Z13、Z14、Y1及びY2は一般式(I-1)におけると同じ意味を表わし、Y26、Y27、Y28、Y29、Y30、Y31、Y32及びY33はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表わす。)
【0033】
このような代表的な化合物としてNo.(1-1)〜(1-5)の化合物とその相転移温度を下記第1表に示す。また、各液晶化合物は、蒸留、カラム精製、再結晶等の方法を用いて不純物を除去し、充分精製したものを使用した。
【0034】
【表1】
【0035】
(表中、m.p.は結晶相から液晶相又は等方性液体相に相転移する温度を表わし、c.p.は液晶相から等方性液体相に相転移する温度をそれぞれ表わす。)
【0036】
本発明の液晶組成物の特徴は、(1)一般式(I-1)で表わされる化合物からなる第1群から選ばれる化合物を必須成分として用いる点にある。この第1群の化合物は、連結基がメチルエチル基−CH(CH3)−CH2−であることを特徴としており、複屈折率(△n)の増大を小さくあるいは低減させる効果を有している。しかも、比較的小さな誘電異方性(△ε)にも拘らずしきい値電圧(Vth)の増大を小さくあるいは低減させる効果を有している。また、充分に高い電圧保持率を有し、他の化合物、例えば一般式(II-1)〜(V-4)の化合物群から選ばれた化合物が有している優れた特性を殆ど損なうことないものである。更に、低温においてもネマチック相を誘起拡大させる性質があり、低温に保存してもネマチック液晶性をより長期に保持でき、広い温度範囲で使用できるネマチック液晶組成物を調製できることを見いだした。
【0037】
本発明は、(2)一般式(II-1)〜(II-4)で表わされる化合物からなる第2群から選ばれる化合物を上記液晶組成物に加えると、より好適なネマチック液晶組成物を得られることを見いだした。例えば、一般式(II-1)で表わされる化合物からなる混合液晶(2-1)
【0038】
【化18】
【0039】
を作製したところ、ネマチック相の温度範囲は、+46〜76℃であった。この混合液晶(2-1)を構成する一部の液晶化合物を一般式(1-2)で表わされる化合物と置き換えて本発明のネマチック液晶組成物(2-2)
【0040】
【化19】
【0041】
を作製したところ、ネマチック相の温度範囲は、+29〜82℃であった。このことから、ネマチック相の温度範囲が約20℃拡大されており、特に低温においてネマチック相を誘起拡大させる性質があることが明かである。また後述の実施例から、低温に保存してもネマチック液晶性をより長期に保持させることが期待される。
【0042】
本発明に係わる(2)一般式(II-1)〜(II-4)で表わされる化合物からなる第2群から選ばれる化合物は、以下に示す一般式(II-5)〜(II-13) で表わされる化合物群から選ばれることが好ましい。
【0043】
【化20】
【0044】
このような代表的な化合物として、No.(2-1)〜(2-12)の化合物とその相転移温度を下記第2表に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
(表中、m.p.は結晶相から液晶相又は等方性液体相に相転移する温度を表わし、c.p.は液晶相から等方性液体相に相転移する温度をそれぞれ表わす。)
【0047】
(3)一般式(III-1)〜(III-3)で表わされる化合物からなる第3群の化合物は、複屈折率(Δn)を最適化し、液晶表示のコントラスト特性を重視したネマチック液晶組成物を調製することができるものである。またネマチック液晶組成物の粘性を低減し、応答特性を改善させる効果を有している。しかしながら一般式(III-1)〜(III-3)の化合物のみからなる組成では、ネマチック相の温度範囲に問題があり、室温から低温で駆動可能なネマチック液晶組成物を調製することは困難であった。しかし上述した(1)一般式(I-1)で表わされる化合物からなる第1群から選ばれる化合物を用いることにより、広い温度範囲で駆動可能なネマチック組成物を調製することを見いだした。
【0048】
更に本発明は、(1)一般式(I-1)で表わされる化合物からなる第1群から選ばれる化合物に、又は(2)一般式(II-1)〜(II-4)で表わされる化合物からなる第2群から選ばれる化合物を含有する組成物に、(3)一般式(III-1)〜(III-3)で表わされる化合物からなる第3群から選ばれる化合物を組み合わせることができ、それぞれの化合物が有している優れた特性を損なうことなく広い温度範囲で駆動し、応答特性に優れたネマチック液晶組成物を調製することを見いだした。本発明に係わる(3)一般式(III-1)〜(III-3)で表わされる化合物からなる第3群の化合物のうち、代表的な化合物として、No.(3-1)〜(3-5)の化合物とその転移温度を下記第3表に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
(表中、Cは結晶相を、Sはスメクチック相を、Nはネマチック相を、Iは等方性液体相をそれぞれ表わす。)
更に本発明は、(4)一般式(IV-1)〜(IV-5)で表わされる化合物からなる第4群から選ばれる化合物を、(1)一般式(I-1)で表わされる化合物からなる第1群から選ばれる化合物からなる組成物に加えることにより、更には一般式(II-1)〜(III-3)で表わされる化合物群から選ばれた化合物を、第2、第3の成分として組み合わせた組成物に加えると、より好適なネマチック液晶組成物が得られることを見い出した。一般式(IV-1)〜(IV-5)で表わされる化合物はΔnを最適化し、ネマチック相の低温側への温度拡大し、駆動電圧を低減する効果がある。一般式(IVー1)〜(IV-5)で表わされる化合物は、(1)一般式(I-1)で表わされる化合物からなる第1群から選ばれる化合物及び、一般式(II-1)〜(III-3)で表わされる化合物との相溶性に優れている。また、環の間に連結基を有した化合物は蒸気圧温度特性にも優れており、本発明の液晶組成物に多用しても、液晶注入条件を緩和することができ、大型液晶パネルの作製工程における注入ムラを低減させる特徴も有する。(4)一般式(IVー1)〜(IV-5)で表わされる化合物からなる第4群から選ばれる化合物のうち、代表的な化合物として、No.(4-1)〜(4-5)の化合物とその転移温度を下記第4表に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
(表中、m.p.は結晶相から液晶相又は等方性液体相に相転移する温度を表わし、c.p.は液晶相から等方性液体相に相転移する温度をそれぞれ表わす。)
【0053】
更に本発明は、(5)一般式(V-1)〜(V-3)で表わされる化合物からなる第5群から選ばれる化合物は、(1)一般式(I-1)で表わされる化合物からなる第1群から選ばれる化合物と組み合わせることにより、更には一般式(II-1)〜(IV-5)で表わされる化合物群から選ばれる化合物を、第2、第3、第4の成分として組み合わせた液晶組成物に用いることにより、他の化合物、例えば一般式(I-1)〜(IV-5)で表わされる化合物の有している優れた特性を損なうことなく、ネマチック相−等方性液体相転移温度(TN-I)を効率良く改善させ、高温度範囲で使用可能なネマチック液晶組成物を調整出来ることを見い出した。また、一般式(V-1)〜(V-3)で表わされる化合物は、低温においてもネマチック相を誘起拡大させる効果があり、従って低温でのネマチック液晶性の長期保存が期待される。また更には、複屈折率(△n)を最適化することができるので、液晶表示装置の視野角特性の向上、コントラスト比の増加を行うことができる。
【0054】
本発明に係わる(5)一般式(V-1)〜(V-3)で表わされる化合物からなる第5群から選ばれる化合物のうち、代表的な化合物としてNo.(5-1)〜(5-5)の化合物とその転移温度を下記第5表に示す。
【0055】
【表5】
【0056】
(表中、m.p.は結晶相から液晶相又は、等方性液体相に相転移する温度を表わし、c.p.は、液晶相から等方性液体相に相転移する温度を表わす。)
【0057】
更に本発明の液晶組成物の特徴は、一般式(I-1)〜(V-3)で表わされる第1群及び、第2、第3、第4、第5群から選ばれた化合物のうち、1種又はそれ以上の化合物が、各化合物における1,4−シクロヘキシレン基の1個又はそれ以上の水素原子(H)が重水素原子で置換された化合物を含有してもよい点にある。この様な液晶組成物は、低温でのネマチック相を安定させる性質があり、特に低温に保存してもネマチック液晶性をより長期に保存できるものである。本発明者らは、重水素原子に置換したシクロヘキサン環を有する化合物の効果を特願平5−104144号明細書、特願平5−182734号明細書等で明かにしたが、本発明は更にこの効果を優れたものとしている。即ち、この特徴により、本発明の液晶組成物は、低温に保存してもネマチック性を長時間有することができるものである。
【0058】
更にまた、本発明の液晶組成物は、一般式(I-1)〜(V-3)の化合物に加えて、液晶組成物の他の特性を改善するために、液晶化合物として認識される通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶などを含有してもよい。
【0059】
本発明の液晶組成物における各化合物の含有量は、一般式(I-1)で表わされる化合物を2〜30重量%、一般式(II-1)〜(II-4)で表わされる化合物を0〜30重量%、一般式(III-1)〜(III-3)で表わされる化合物を0〜35重量%、一般式(IVー1)〜(IV-5)で表わされる化合物を0〜30重量%、一般式(Vー1)〜(V-3)で表わされる化合物を0〜25重量%の範囲で含有することが好ましい。
【0060】
また、液晶組成物における各化合物群の総含有量は、一般式(I-1)で表わされる第1の化合物群を2〜40重量%、一般式(II-1)〜(II-4)で表わされる第2の化合物群を0〜90重量%、一般式(III-1)〜(III-3)で表わされる第3の化合物群を0〜70重量%、一般式(IVー1)〜(IV-5)で表わされる第4の化合物群を0〜70重量%、一般式(Vー1)〜(V-3)で表わされる第5の化合物群を0〜35重量%の範囲で含有することが好ましい。
【0061】
本発明に係わる各化合物は,液晶組成物あるいは液晶表示特性に要求される目的に応じて以下のように組み合わせることができる。液晶組成物の結晶相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(T→N)を低くする目的には、一般式(I-1)+一般式(IVー1)〜(IVー3)にX21〜X24がフッ素原子である一般式(IIー1)〜(IIー4)を組み合わせることが好ましい。又は、一般式(I-1)+一般式(II-1)〜(IIー4)の組み合わせが好ましく、更に一般式(III-1)〜(IIIー3)を組み合わせると、より好ましい。
【0062】
液晶組成物のネマチック相−等方性液体相転移温度(TNI)を高くする目的には、一般式(I-1)+一般式(Vー1)〜(Vー3)に一般式(II-1)〜(II-4)又は、p〜rが1である一般式(IIIー1)〜(IIIー3)を組み合わせることが好ましい。液晶表示の応答性を速くする目的には、一般式(I-1)+一般式(II-1)〜(II-4)の組み合わせが好ましく、特にX21〜X24がフッ素原子、−OCF3のものが好ましい。又、一般式(I-1)+一般式(IIIー1)〜(IIIー3)の組み合わせも好ましい。更に又、一般式(I-1)+一般式(IVー1)〜(IVー3)の組み合わせも好ましく、これに一般式(IIIー1)〜(IIIー3)を組み合わせると、より好ましい。液晶組成物の複屈折率(Δn)を小さく最適化する目的には、一般式(I-1)+一般式(IIIー1)〜(IIIー3)の組み合わせが好ましく、更にX21〜X24がフッ素原子、−OCF3である一般式(II-1)〜(IIー4)を組み合わせることがより好ましい。液晶組成物の複屈折率(Δn)を大きく最適化する目的には、一般式(I-1)+一般式(II-1)〜(IIー4)の組み合わせが好ましく、特にZ26は−C≡C−、X21〜X24はフッ素原子又は塩素原子であることが好ましい。液晶表示装置のしきい値電圧を低減する目的には、一般式(I-1)+一般式(II-1)〜(IIー4)を組み合わせることが好ましく、又、一般式(I-1)〜(I-3)+一般式(IVー1)〜(IVー5)の組み合わせも好ましい。アクティブ・マトリクス表示方法に適する液晶組成物としては、一般式(I-1)+一般式(II-1)〜(IIー4)の組み合わせ、一般式(I-1)+一般式(II-1)〜(IIー4)+一般式(IIIー1)〜(IIIー3)の組み合わせ、一般式(I-1)+一般式(IIIー1)〜(IIIー3)+一般式(IVー1)〜(IVー3)の組み合わせが好ましく、この全ての組み合わせそれぞれについて、一般式(Vー1)〜(Vー3)を組み合わせることがより好ましく、X11〜X51はフッ素原子、−OCF3が適している。
【0063】
この様にして得られた本発明の液晶組成物は、後述の実施例に示したように、80℃以上のネマチック相−等方性液体相転移温度(TN-I)で、結晶相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(T→N)が約−20℃以下と広い温度でネマチック相を有し、0.07から約0.20代のの複屈折率△n、2.0V前後から1V代のしきい値電圧Vth、約30ms以下の応答性を示す特性を得ることができた。
【0064】
また、本発明のネマチック液晶組成物は、後述の実施例に示した加熱促進テスト、紫外線照射促進テストを行ったところ、各促進テスト後も98%以上の高い電圧保持率を有することや化学的にも非常に安定で高い抵抗値を有することが確認された。
【0065】
このように、本発明のネマチック液晶組成物は、広い温度範囲で液晶性を示し、しかも充分に高い電圧保持率を有する液晶組成物であり、フリッカが発生せず、コントラストに優れた液晶表示装置を提供することが可能となった。また、アクティブ・マトリクス液晶表示装置を作製したところ、フリッカが発生せずコントラストに優れた液晶表示装置を作製することができた。更に、TN-LCDやSTN-LCD液晶表示パネルを作製したところ、広範な駆動周波数で表示可能であることが確認された。
【0066】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中、測定した特性の各記号の意味は以下の通りである。
【0067】
TN-I : ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
T→N : 結晶相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(℃)
Vth : 液晶層の厚みdが6μmのTN-LCDのしきい値電圧(V)
△ε : 誘電異方性
△n : 複屈折率
τr=τd : 液晶の立ち上がりと立ち下がりが等しくなった時間(ms)
η20 : 20℃におけるネマチック液晶の粘度(cp)
η0 : 0℃におけるネマチック液晶の粘度(cp)
又、組成物の促進テストは、液晶組成物2gをアンプル管に入れ、真空脱気後、窒素置換の処理をして封入し、180℃、1時間の加熱促進テスト、及び10時間の紫外線照射促進テスト「SUNTEST」(オリジナルハナウ社製)で行った。液晶組成物の比抵抗と電圧保持率は促進テスト前後で測定した。
(実施例1)
【0068】
【化21】
【0069】
からなるネマチック液晶組成物(3−1)を調整し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 106.5 ℃
T→N : −25. ℃
Vth : 2.65 V
△ε : 3.3
△n : 0.089
τr=τd : 23.0 ms
テスト前の比抵抗 : 7.6×1013Ω cm
加熱促進テスト後比抵抗 : 5.4×1013Ω cm
紫外線照射促進テスト後比抵抗: 5.0×1013Ω cm
テスト前の電圧保持率 : 99.2%(測定温度80℃)
加熱促進テスト後電圧保持率 : 98.3%(測定温度80℃)
紫外線照射促進テスト後電圧保持率: 98.1%(測定温度80℃)
このネマチック液晶組成物(3−1)を構成材料とするアクティブ・マトリクス液晶表示装置を作製したところ、漏れ電流が小さくフリッカの発生しない優れたものであることが確認できた。
【0070】
またこのネマチック液晶組成物(3−1)にカイラル物質「S−811」(メルク社製)を添加して液晶組成物を調製した。一方、対向する平面透明電極上に「サンエバー150」(日産化学社製)の有機膜をラビングして配向膜を形成し、ツイスト角220度のSTN-LCD表示用セルを作製した。上記の液晶組成物をこのセルに注入して液晶表示装置を構成し、表示特性を測定した。その結果、しきい値電圧が低く、高時分割特性に優れ、表示画面のちらつきやクロストーク現象が改善されたSTN-LCD表示特性を示す液晶表示装置が得られた。
(実施例2)
【0071】
【化22】
【0072】
からなるネマチック液晶組成物(3−2)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 91.7 ℃
T→N :<−70. ℃
Vth : 2.14 V
△ε : 4.2
△n : 0.085
τr=τd : 27.6 ms
(実施例3)
【0073】
【化23】
【0074】
からなるネマチック液晶組成物(3−3)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 85.4 ℃
T→N : −30. ℃
Vth : 1.71 V
△ε : 4.5
△n : 0.070
τr=τd : 31.4 ms
(実施例4)
【0075】
【化24】
【0076】
からなるネマチック液晶組成物(3−4)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 98.5 ℃
T→N : −37. ℃
Vth : 2.17 V
△ε : 4.6
△n : 0.086
τr=τd : 27.3 ms
(実施例5)
【0077】
【化25】
【0078】
からなるネマチック液晶組成物(3−5)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 100.1 ℃
T→N : −55. ℃
Vth : 2.22 V
△ε : 4.5
△n : 0.092
τr=τd : 24.8 ms
(実施例6)
【0079】
【化26】
【0080】
からなるネマチック液晶組成物(3−6)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 110.4 ℃
T→N : −25. ℃
Vth : 1.91 V
△ε : 6.1
△n : 0.090
τr=τd : 28.9 ms
η20 : 20.3 cp
η0 : 63.7 cp
テスト前の比抵抗 : 7.6×1013Ω cm
加熱促進テスト後比抵抗 : 5.8×1013Ω cm
紫外線照射促進テスト後比抵抗: 5.3×1013Ω cm
テスト前の電圧保持率 : 99.0%(測定温度80℃)
加熱促進テスト後電圧保持率 : 98.3%(測定温度80℃)
紫外線照射促進テスト後電圧保持率: 98.2%(測定温度80℃)
(実施例7)
【0081】
【化27】
【0082】
からなるネマチック液晶組成物(3−7)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 97.9 ℃
T→N :<−70. ℃
Vth : 1.51 V
△ε : 7.8
(実施例8)
【0083】
【化28】
【0084】
からなるネマチック液晶組成物(3−8)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 104.2 ℃
T→N : −24. ℃
Vth : 2.43 V
△ε : 4.6
(実施例9)
【0085】
【化29】
【0086】
からなるネマチック液晶組成物(3−9)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 104.9 ℃
T→N : −30. ℃
Vth : 2.06 V
△ε : 6.7
(実施例10)
【0087】
【化30】
【0088】
からなるネマチック液晶組成物(3−10)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 80.9 ℃
T→N : −60. ℃
Vth : 1.43 V
△ε : 9.7
【0089】
【発明の効果】
本発明により、広い温度範囲でネマチック相を示し、用途に応じた複屈折率(Δn)を有し、低電圧駆動、高速応答特性のネマチック液晶組成物が得られる。更に長期の低温保存においてネマチック液晶性を保持し、しかも化学的安定性が高い。従って、これを用いた本発明の液晶表示装置は、視角特性に優れ、表示画面のちらつき、クロストーク現象を改善することができ、情報量の多いTN-LCD、STN-LCDあるいはアクティブ・マトリクス方式において良好な駆動特性及び表示特性が得られる。
Claims (6)
- (1)一般式(I-1)
- (3)一般式(III-1)〜(III-3)
- (4)一般式(IV-1)〜(IV-5)
- (5)一般式(V-1)〜(V-3)
- 請求項1、2、3又は4記載のネマチック液晶組成物を用いたアクティブ・マトリクス形液晶表示装置。
- 請求項1、2、3又は4記載のネマチック液晶組成物を用いたツイスティッド・ネマチック又はスーパー・ツイスティッド・ネマチック液晶表示装置。
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