JP3861312B2 - 自動車の前部構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の前部構造に関し、特に、正面衝突時におけるフロントサイドフレームの潰れ領域を拡大して、正面衝突時の衝撃をより緩和するようにした自動車の前部構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車車体における1つの形態として、車体の前部において前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームが設けられるとともに、フロントサイドフレーム間を連結して、2本のクロスメンバが前後方向に所定の間隔をおいて取り付けられ、これら両クロスメンバ間の上方にエンジンが配設された構成を有するものがある。そして、上記両クロスメンバには、一般に、前輪サスペンション装置のロアアームの基端がブッシュを介して上下方向に揺動可能に取り付けられるようになっている。
【0003】
また、自動車車体における別の形態として、車体の前部において前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム間を連結して、1本のクロスメンバが取り付けられてなるとともに、このクロスメンバの左右端部に一端をそれぞれ接合されて車体前方若しくは後方に延び、他端を上記フロントサイドフレームにそれぞれ接合された左右一対の前後メンバが設けられ、上記クロスメンバおよび上記前後メンバの上方にエンジンが配設された構成を有するものもある。
【0004】
そして、両形態ともに、正面衝突時の衝突エネルギを吸収するために、エンジンから前方のフロントサイドフレーム部分を、正面衝突時に潰れ変形し得る低剛性のクラッシャブルゾーンに設定している。
【0005】
また、例えば実開平4−98615号公報に開示されているように、正面衝突時に、エンジンを含むパワープラントを下方へ脱落させて、前部車体構造部材の潰れスペースを確保し、これにより衝突エネルギを吸収するようにしたものも知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、自動車の車内空間をなるべく大きくとりたいという要求から、車体の前方オーバーハングが短くなる傾向にあり、このため、正面衝突時の衝撃を吸収するのに充分なクラッシャブルゾーンが確保できないという問題が生じている。
【0007】
一方、エンジンルームと車室との間はダッシュパネルによって区切られており、このダッシュパネルとその前方に位置するエンジンの後端との間にはある程度距離があるので、エンジン前方側のフロントサイドフレーム部分に加えて、エンジン後方側のフロントサイドフレーム部分をも低剛性にしてクラッシャブルゾーンに設定した車両も知られているが、エンジン後方側のフロントサイドフレーム部分は、重量のあるエンジンを支持するために高剛性にしておく必要がある。
【0008】
そこで、前後のクロスメンバ間のフロントサイドフレーム部分あるいは上記前後メンバに対向するフロントサイドフレーム部分に、正面衝突時のクラッシャブルゾーンを設定すればよいと考えられるが、このフロントサイドフレーム部分には、一般にエンジンを車体に支持させるために、エンジンマウントブラケットのような剛性部材や上述のような前後メンバが取り付けられるので、その間のフロントサイドフレーム部分が正面衝突時に潰れなくなり、全体として潰れスペースが不足することになる。
【0009】
例えば、図24は、従来の自動車の前部構造を概念的に示す分解斜視図で、図25は、そのフロントサイドフレームを部分的に破断した状態で示す平面図であり、車体右側のフロントサイドフレーム1Rには、車幅方向に延びる前後のクロスメンバ2,3およびエンジンマウントブラケット4がボルト締めによって取り付けられるようになっているが、これら図から明らかなように、フロントサイドフレーム1Rのエンジンマウントブラケット4の取付け部分の前後方向の長さAの部分が正面衝突時に潰れなくなり、全体として潰れスペースが不足することになる。なお、1aはフロントサイドフレーム1Rの下壁に垂設されたボルト、1bはフロントサイドフレーム1Rの上壁に形成された工具挿入用孔である。
【0010】
また、前後のクロスメンバ2,3が、前輪サスペンション装置のロアアームの前後の基端をそれぞれ支持している部材である場合、前後のクロスメンバ2,3間に跨がって、剛性部材であるロアアームが取り付けられているので、このロアアームによって、前後のクロスメンバ2,3間のフロントサイドフレーム部分の潰れ変形が阻害されて、このフロントサイドフレーム部分が正面衝突時における潰れスペースとして有効に機能しないことになる。
【0011】
さらに、後輪駆動車をベースとする四輪駆動車の場合、前後のクロスメンバ2,3によって前輪ディファレンシャルギヤ・ケースがマウントブラケットを介して支持されることが多いので、やはり、剛性部材が前後のクロスメンバ2,3間に跨がって取り付けられることになり、これによっても前後のクロスメンバ2,3間のフロントサイドフレーム部分の潰れ変形が阻害されて、このフロントサイドフレーム部分が正面衝突時における潰れスペースとして有効に機能しないことになる。
【0012】
上述の事情に鑑み、本発明は、左右のフロントサイドフレーム間を連結して、2本のクロスメンバが前後方向に所定の間隔をおいて取り付けられ、これら両クロスメンバ間の上方にエンジンが配設され、かつ剛性部材が、前後のクロスメンバ間のフロントサイドフレーム部分あるいは前後のクロスメンバ間に跨がって取り付けられる場合においても、あるいは、左右のフロントサイドフレーム間を連結して、1本のクロスメンバが取り付けられてなるとともに、このクロスメンバの左右端部に一端をそれぞれ接合されて車体前方若しくは後方に延び、他端をフロントサイドフレームにそれぞれ接合された左右一対の前後メンバが設けられている場合においても、両クロスメンバ間のフロントサイドフレーム部分若しくは上記前後メンバに対向するフロントサイドフレーム部分が正面衝突時の衝突荷重により潰れ変形しやすいように衝突エネルギーを有効に吸収し得るようにした自動車の前部構造を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、請求項1に記載したように、上記両クロスメンバ間に跨がって、剛性部材が取り付けられてなる自動車の前部構造において、
上記剛性部材は、正面衝突による衝撃荷重が車両前方側から作用した際に、上記両クロスメンバのフロントサイドフレームとの結合に比べて後側のクロスメンバとの結合が容易に解除される一方、前側のクロスメンバに対しては結合状態が維持されて該前側のクロスメンバとともに後方へ移動するように、上記両クロスメンバ間に跨がって取り付けられてなることを特徴とするものである。
【0014】
そして、上記剛性部材の後側クロスメンバとの取付部は、正面衝突時に該取付部に車両前向きの力が作用するように前側クロスメンバとの取付部よりも上方に設けられていて、上記車両前向きの力による剛性部材の車両前方への回動によって結合解除されるように構成されているものとする。
【0015】
この場合の剛性部材は、前輪ディファレンシャルギヤ・ケースとこのケースを両クロスメンバ間に支持するマウントメンバとよりなる。
【0016】
上記剛性部材が、前輪ディファレンシャルギヤ・ケースとこのケースを両クロスメンバ間に支持するマウントメンバとよりなる場合には、正面衝突時に、前輪ディファレンシャルギヤ・ケースとマウントメンバとの結合が解除され得るように前輪ディファレンシャルギヤ・ケースとそのマウントメンバとが両クロスメンバ間に跨がって取り付けられていてもよい。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、剛性部材は、正面衝突時に、後側のクロスメンバに対する結合が容易に解除される一方、前側のクロスメンバに対しては結合状態が維持されて該前側のクロスメンバとともに後方へ移動するようにクロスメンバ間に跨がって取り付けられているので、正面衝突時の衝撃荷重を両クロスメンバ間のフロントサイドフレーム部分の潰れ変形によって吸収して、乗員の安全を図ることができる。
【0018】
しかも、正面衝突時に後側クロスメンバとの取付部に車両前向きの力を作用させて剛性部材を車両前方側に回動させることにより、該剛性部材と上記後側クロスメンバとの結合が解除されるようになっているので、回転モーメントを利用して剛性部材を後側クロスメンバから分離させることができ、クロスメンバ間のフロントサイドフレーム部分の潰れ変形が阻害されないようにすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による車両の下部構造の実施の形態及び参考例を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明が適用される、後輪駆動車をベースとする四輪駆動車の前部車体構造を概略的に示す底面図、図2は同側面図、図3は同正面図である。
【0021】
図において、車体10の前部には、前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム1L,1Rが設けられるとともに、これらサイドフレーム1L,1R間を連結して、2本のクロスメンバ2,3が前後方向に所定の間隔をおいて取り付けられ、これら両クロスメンバ2,3間の上方にエンジン5が配設され、左右のエンジンマウントブラケット4,4を介して両クロスメンバ2,3間のフロントサイドフレーム部分に取り付けられている。また上記両クロスメンバ2,3には、前輪サスペンション装置のロアアーム6L,6Rの基端がブッシュを介して上下方向に揺動可能に取り付けられている。
【0022】
エンジン5の後方にはトランスミッション機構7が取り付けられ、トランスミッション機構7の後端から後輪駆動用プロペラシャフト(図示は省略)が後方へ導出されているとともに、トランスミッション機構7の後端部から側方へ突出して設けられたトランスファ機構8から前方に導出された前輪駆動用プロペラシャフト9の前端が前輪ディファレンシャルギヤ機構11に連結され、この前輪ディファレンシャルギヤ機構11から左右に導出された前輪駆動軸12L,12Rによって、前輪13L,13Rが駆動されるようになっている。
【0023】
なお、ステアリングホイールSWと前輪操舵機構(図示は省略)との間を連結するステアリングシャフトには、3個のジョイントJ1 〜J3 が介装されている。
【0024】
図4は、本発明の第1の参考例を図24と対応させて概念的に示す分解斜視図で、図24と同様に、車体右側のフロントサイドフレーム1Rに、車幅方向に延びる前後のクロスメンバ2,3およびエンジンマウントブラケット4がボルト締めによって取り付けられる状態を示す。また、図5はそのエンジンマウントブラケット4の拡大平面図である。
【0025】
本参考例においては、エンジンマウントブラケット4のフロントサイドフレーム1Rへの締結部に、図5に示すように、車幅方向に延びる溝4aを形成するとともに、前後に設けられる2個のボルト孔4b,4bを、エンジンマウントブラケット4の前縁と溝4aの後縁とにそれぞれ開口するように切り欠いたものである。他方のフロントサイドフレーム1Lに取り付けられるエンジンマウントブラケット4も同様の構成にする。
【0026】
このような構成を有するエンジンマウントブラケット4を用いれば、正面衝突時の衝撃によりエンジン5が後退すると、エンジンマウントブラケット4,4とフロントサイドフレーム1L,1Rとの結合が解除されるから、エンジン5は下方へ脱落し、フロントサイドフレーム1L,1Rのクロスメンバ2,3間の部分を潰れスペースとすることができる。
【0027】
図6は、本発明の第2の参考例を図24と対応させて概念的に示す平面図で、フロントサイドフレーム1L,1Rのエンジンマウントブラケット4の締結部に、フロントサイドフレーム1L,1Rに沿って車体前後方向に延びる長孔15を設けることによって、正面衝突時にエンジンマウントブラケット4がエンジン5とともに後方へ移動させることにより、フロントサイドフレーム1L,1Rのエンジンマウントブラケット4よりも前方の部分を潰れスペースとすることができる。
【0028】
次に、図7および図8は、本発明の第3の参考例を図24および図25と対応させて概念的に示す分解斜視図および平面図である。
【0029】
本参考例においては、前方側のクロスメンバ2とエンジンマウントブラケット4とをフロントサイドフレーム1L,1Rに共締めすることによって、剛性部材であるエンジンマウントブラケット4のフロントサイドフレーム1L,1Rに対する取り付け位置と、クロスメンバ2のフロントサイドフレーム1L,1Rに対する取り付け位置とを車体前後方向に重ね合わせ、これにより、フロントサイドフレーム1L,1Rの潰れスペースを拡大したものである。
【0030】
図9は、本発明の第4の参考例を概念的に示す分解斜視図で、剛性部材であるエンジンマウントブラケット4を両クロスメンバ2,3間のフロントサイドフレーム部分に締結せず、例えば前輪ディファレンシャルギヤ機構11のケース11aに取り付けたものである。この構成によれば、正面衝突時の衝撃によりエンジン5が後退した後、両クロスメンバ2,3間のフロントサイドフレーム部分全体が潰れスペースとなり得る。
【0031】
以上の参考例は、エンジンマウントブラケット4のような剛性部材を、正面衝突時における両クロスメンバ2,3間のフロントサイドフレーム部分の潰れ変形を阻害しない態様で取り付けた場合であるが、以下に述べる実施の形態及び参考例は、剛性部材が両クロスメンバ2,3間に跨がって取り付けられている場合に、上記剛性部材が、正面衝突時における両クロスメンバ2,3間のフロントサイドフレーム部分の潰れ変形を阻害するのを防止する対策である。
【0032】
図1から明らかなように、両クロスメンバ2,3間には、剛性部材である、前輪サスペンション装置のロアアーム6L,6Rの基端がブッシュを介して上下方向に揺動可能に取り付けられている。
【0033】
そこで、本発明の第5の参考例では、正面衝突時に、前方側のクロスメンバ2とロアアーム6L,6Rとが一体的に後退し得るように、後方側のクロスメンバ3に対するロアアーム6L,6Rの取付け部に対策を施したものである。
【0034】
すなわち、図10(a)に概念的に示すように、クロスメンバ3には、それ自体は公知の構成を有する円筒状のラバーブッシュ16の外筒(図示は省略)がブラケット17によってその軸線を車体前後方向に向けて取り付けられ、このラバーブッシュ16の内筒(図示は省略)に、ロアアーム6L,6Rの基端から延びる円柱体18が嵌合している。この円柱体18は、通常のものよりも長く形成されて、その後方側の先端部分でラバーブッシュ16の内筒に嵌合しており、ラバーブッシュ16の前端面とロアアーム6L,6Rの後端面との間に間隙Bが存在している。そして、正面衝突時には、図10(b)に示すように、円柱体18がラバーブッシュ16の内筒内を後方へ距離Bだけ移動して、前方側のクロスメンバ2とロアアーム6L,6Rが一体的に後退するのを許容し、クロスメンバ2,3間のフロントサイドフレーム部分の潰れを阻害しないようになっている。
【0035】
なお、距離B以上の後退が必要な場合には、ブラケット17が破壊することによりロアアーム6L,6Rのさらなる後退が許容される。正面衝突時の衝突荷重は10G以上であり、ブラケット17の耐力は一般に3G以下のため、ブラケット17は衝突荷重によって破壊可能である。
【0036】
また、図11は、本発明の第6の参考例におけるロアアームを示す平面図で、ロアアーム6L,6Rが正面衝突時の衝撃で変形または折損して、クロスメンバ2,3間のフロントサイドフレーム部分の潰れ変形が阻害されないように構成されている。
【0037】
次に、図12および図13は本発明の第7の参考例を示し、図12は平面図、図13(a),(b)は一部を断面とした側面図で、図13(a)は正面衝突前、図13(b)は正面衝突後の状態をそれぞれ示す。
【0038】
フロントサイドフレーム1L、1Rに取り付けられる前方側のクロスメンバ2の両端の取付け部2aは、前後方向に所定の間隔をおいた2箇所でフロントサイドフレーム1L、1Rに固定されているが、本参考例では、後方側の取付け部位にラバー部材20が固定されているとともに、クロスメンバ2の取付け部2aに、上記ラバー部材20が嵌入する車体前方側へ開口する切り欠け21が形成されて、取付け部2aの後端側がラバー部材20を介してフロントサイドフレーム1L、1Rに締結されている。
【0039】
そして、正面衝突時の衝撃荷重によりフロントサイドフレーム1L、1Rがその前方部分から潰れ変形すると、クロスメンバ2の取付け部2aが後退することにより、ラバー部材20が撓んで、図13(b)に示すように、クロスメンバ2の取付け部2aの後方側がフロントサイドフレーム1L、1Rから離脱する。したがって、クロスメンバ2,3間のフロントサイドフレーム部分の潰れ変形が阻害されないことになる。
【0040】
また、本発明の第8の参考例である図14に示すように、フロントサイドフレーム1L、1Rおよび/またはクロスメンバ2の取付け部2aに「折れビード」と呼ばれる脆弱部24,25を形成して、正面衝突時の衝撃荷重によってこの脆弱部24,25を変形させるようにしてもよい。
【0041】
図15〜図17は本発明の第9の参考例を示す図で、図15は平面図、図16は要部の斜視図、図17(a),(b)は図15のXVII−XVII線に沿った断面図で、図17(a)は正面衝突前、図17(b)は正面衝突後の状態をそれぞれ示す。
【0042】
本参考例においては、前輪ディファレンシャルギヤ・ケース11aが、マウントバー26,27を介して両クロスメンバ2,3間に跨がって取り付けられている場合に、後方側のクロスメンバ3に対するマウントバー27の取付け部に対策を施したものである。すなわち、クロスメンバ3上に一対のブラケット28,28が車幅方向に所定の間隔を保って並設されているとともに、ブラケット28,28に後方へ開口する溝28aが形成されており、マウントバー27の後端部が上記溝28a,28a間に挿通したボルト29によってブラケット28,28に締結されている。
【0043】
そして、正面衝突時の衝撃荷重により、図17(b)に示すように、マウントバー27がボルト29とともに溝28a,28aに沿って後方へ移動してブラケット28,28から離脱し、クロスメンバ2,3間のフロントサイドフレーム部分の潰れ変形を阻害しないように構成されている。
【0044】
図18〜図20は本発明の第1の実施の形態を示す図で、図18は平面図、図19は図18の構成を概念的に示す側面図、図20(a),(b)は図18のXX−XX線に沿った断面図で、図20(a)は正面衝突前、図20(b)は正面衝突後の状態をそれぞれ示す。
【0045】
本実施の形態においては、前輪ディファレンシャルギヤ・ケース11aが、マウントバー26,27を介して両クロスメンバ2,3間に跨がって取り付けられている場合に、前輪ディファレンシャルギヤ・ケース11aに対するマウントバー26,27の取付け位置および取付け部に対策を施したものである。すなわち、図19から明らかなように、前輪ディファレンシャルギヤ・ケース11aの前方側のマウントバー27はケース11aの下部に、後方側のマウントバー26はケース11aの上部にそれぞれ取り付けるとともに、ケース11aの上部に突設されたマウントバー取付け部30に、後方側のマウントバー27の前端部に形成された二股部27a,27aをボルト31により締結したものである。さらに、図20(a)に示すように、マウントバー取付け部30のボルト孔に連接して、後方に開口する切り欠き30aが設けられている。
【0046】
このような構成によれば、正面衝突時には、前方側のクロスメンバ2の後退により、マウントバー26を介して前輪ディファレンシャルギヤ・ケース11aに衝撃荷重が加わる。したがって、図20(b)に示すように、ケース11aに反時計方向のモーメントが発生して、マウントバー取付け部30のボルト孔が破断して、ケース11aとマウントバー27とが分離するから、クロスメンバ2,3間のフロントサイドフレーム部分の潰れ変形が阻害されないことになる。
【0047】
図21および図22は本発明の第10の参考例を示す図で、図21は一部を分解した斜視図、図22(a),(b)は要部の概略的側面図で、図22(a)は正面衝突前、図22(b)は正面衝突後の状態をそれぞれ示す。
【0048】
本参考例では、クロスメンバ2,3の左右端部に、両クロスメンバ2,3間に跨がって縦メンバ32,32が固定されているが、これら縦メンバ32,32の後端部が締結されているクロスメンバ3の左右端部に、図15〜図17で説明した第9の参考例と同様に、後方へ開口する溝3aが形成されており、縦メンバ32,32の後端部が上記溝3aに挿通したボルト33によってクロスメンバ3に締結されている。
【0049】
そして、正面衝突時の衝撃荷重により、図22(b)に示すように、縦メンバ32がボルト33とともに溝3aに沿って後方へ移動してクロスメンバ3から離脱し、クロスメンバ2,3間のフロントサイドフレーム部分の潰れ変形を阻害しないように構成されている。
【0050】
図23は本発明の第11の参考例を示す一部を分解した斜視図である。本参考例では、上述した実施の形態や参考例とは異なり、左右一対のフロントサイドフレーム1L,1R間を連結して、1本のクロスメンバ2が取り付けられているとともに、このクロスメンバ2の左右端部に一端をそれぞれ接合されて車体後方に延び、他端をフロントサイドフレーム1L,1Rにそれぞれ接合された左右一対の前後メンバ35,35が設けられ、クロスメンバ2および前後メンバ35,35の上方にエンジン5が配設された構成を有する。そして、図示は省略するが、前後メンバ35,35の前後端に、サスペンションアームが取り付けられるようになっている。
【0051】
前後メンバ35,35には、図14に示す第8の参考例と同様に、「折れビード」と呼ばれる脆弱部36が形成され、正面衝突時の衝撃荷重によってこの脆弱部36が前後方向に変形したり破壊したりして、前後メンバ35,35に対向するフロントサイドフレーム部分の正面衝突時における潰れ変形を阻害しないように構成されている。
【0052】
あるいは、フロントサイドフレーム1L,1Rに対する前後メンバ35,35の後端部の取付け部35aのボルト孔に、図4および図5に示す第1の参考例におけるエンジンマウントブラケット4と同様の切り欠きを形成して、正面衝突時の衝撃荷重によって前後メンバ35,35の後端部とフロントサイドフレーム1L,1Rとの結合が解除され得るようにしてもよいし、また、図6に示す第2の参考例と同様に、フロントサイドフレーム1L,1Rに対する前後メンバ35,35の後端部の締結部に、車体前後方向に延びる長孔を設けることによって、正面衝突時に前後メンバ35,35が後方へ移動し得るように構成してもよい。
【0053】
さらに、図12および図13に示す第7の参考例、あるいは図21および図22に示す第10の参考例と同様な構成によって、前後メンバ35,35の後端部をフロントサイドフレーム1L,1Rから離脱させるようにしてもよい。
【0054】
なお、図23では、前後メンバ35,35がクロスメンバ2の左右端部から後方へ延びてフロントサイドフレーム1L,1Rに接合されているが、これに代えて、図21に示す後方のクロスメンバ3に対応する位置に1本のクロスメンバを設けるとともに、このクロスメンバの左右端部から車体前方に延びてフロントサイドフレーム1L,1Rに接合される前後メンバを設けてもよい。その場合は、前後メンバ35,35の後端部がクロスメンバに接合されることになり、この接合部分に上記と同様に対策を施せばよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明が適用される自動車の前部構造を概略的に示す底面図
【図2】 同 側面図
【図3】 同 正面図
【図4】 本発明の第1の参考例を概念的に示す分解斜視図
【図5】 同 エンジンマウントブラケットの拡大平面図
【図6】 本発明の第2の参考例を概念的に示す分解斜視図
【図7】 本発明の第3の参考例を概念的に示す分解斜視図
【図8】 同 平面図
【図9】 本発明の第4の参考例を概念的に示す分解斜視図
【図10】 本発明の第5の参考例を概念的に示す斜視図
【図11】 本発明の第6の参考例を示す平面図
【図12】 本発明の第7の参考例を示す平面図
【図13】 同 一部を断面とした側面図
【図14】 本発明の第8の参考例を示す側面図
【図15】 本発明の第9の参考例を示す平面図
【図16】 同 要部の斜視図
【図17】 図15のXVII−XVII線に沿った断面図
【図18】 本発明の第1の実施の形態を示す平面図
【図19】 同 概念的に示す側面図
【図20】 図18のXX−XX線に沿った断面図
【図21】 本発明の第10の参考例を示す一部を分解した斜視図
【図22】 同 要部の概略的側面図
【図23】 本発明の第11の参考例を示す一部を分解した斜視図
【図24】 従来の自動車の前部構造を概念的に示す分解斜視図
【図25】 同 平面図
【符号の説明】
1L,1R フロントサイドフレーム
2,3 クロスメンバ
4 エンジンマウントブラケット
5 エンジン
6L,6R ロアアーム
11a 前輪ディファレンシャルギア・ケース
16 ラバーブッシュ
26,27 マウントバー
32 縦メンバ
35 前後メンバ
Claims (3)
- 車体の前部において前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム間を連結して、2本のクロスメンバが前後方向に所定の間隔をおいて取り付けられ、該両クロスメンバ間の上方にエンジンが配設されてなるとともに、上記両クロスメンバ間に跨がって、剛性部材が取り付けられてなる自動車の前部構造において、
上記剛性部材は、正面衝突による衝撃荷重が車両前方側から作用した際に、後側のクロスメンバとの結合が解除される一方、前側のクロスメンバに対しては結合状態が維持されて該前側のクロスメンバとともに後方へ移動するように上記両クロスメンバ間に跨がって取り付けられていて、
上記剛性部材の後側クロスメンバとの取付部は、正面衝突時に該取付部に車両前向きの力が作用するように前側クロスメンバとの取付部よりも上方に設けられていて、上記車両前向きの力による剛性部材の車両前方への回動によって結合解除されるように構成されていることを特徴とする自動車の前部構造。 - 上記剛性部材が、前輪ディファレンシャルギヤ・ケースと該ケースを上記両クロスメンバ間に支持するマウントメンバとよりなることを特徴とする請求項1記載の自動車の前部構造。
- 正面衝突時に、上記前輪ディファレンシャルギヤ・ケースと上記マウントメンバとの結合が解除され得るように上記前輪ディファレンシャルギヤ・ケースと上記マウントメンバとが上記両クロスメンバ間に跨がって取り付けられてなることを特徴とする請求項2記載の自動車の前部構造。
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