JP3841853B2 - 車両用運転状況監視装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の運転者の運転状況を監視し、必要に応じて警告を発する車両用運転状況監視装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両のステアリングの操舵量及び車速に基づいて、運転者の応答遅れ時間及び車両位置と走行車線との偏差量を推定し、該推定した応答遅れ時間及び偏差量と正常状態における応答遅れ時間及び偏差量とを比較して、運転者の運転状況(例えば運転者の居眠りや疲労による運転能力の低下による異常な操舵状態)を判定するようにした運転状況監視装置が、従来より知られている(特開平5−85221号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の監視装置では、ステアリングの操舵量及び車速に基づいて実際の車両位置と走行車線(基準となる車両位置)との偏差量を演算しており、車両の挙動に直接関連する物理量に基づいて前記偏差量を演算していないため、例えば路面の状況(例えば路面の凹凸や傾き)や運転者の個人差(例えば初心者か否か)等が原因で前記偏差量に誤差が生じ、運転者の運転状況の判定精度が低下するという問題があった。
【0004】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、車両の挙動をより的確に把握し、運転者の運転状況の判定精度を向上させることができる車両用運転状況監視装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、車両のヨー運動又は横方向運動に関する挙動量を検出する挙動量検出手段と、前記車両の車速を検出する車速検出手段と、前記挙動量の変化に基づいて挙動基準を設定する挙動基準設定手段と、前記挙動量、前記挙動基準及び前記車速に基づいて前記車両の横変位挙動量を演算する横変位挙動量演算手段と、前記演算された横変位挙動量に応じた偏差量と所定偏差量との比較結果に基づいて運転者の運転状況が適正か否かを判定する判定手段と、前記車両の運転者が車線変更を行う意志があるか否かを判別する車線変更判別手段とを有し、前記運転者に車線変更の意志がなく、且つ前記運転者の運転状況が適正でない場合に運転者の運転状況が異常であると判定する、車両の運転者の運転状況を監視する車両用運転状況監視装置であって、前記挙動基準設定手段は、前記演算された横変位挙動量の最大値及び最小値の差に応じて前記挙動基準の再設定又は補正を行うことを特徴とする請求項1の車両用運転状況監視装置を提供する。
【0006】
同じ目的を達成するため本発明は、車両の運転者の運転状況を監視する車両用運転状況監視装置において、前記車両のヨー運動又は横方向運動に関する挙動量を検出する挙動量検出手段と、前記車両の車速を検出する車速検出手段と、前記挙動量の変化に基づいて挙動基準を設定する挙動基準設定手段と、前記挙動量、前記挙動基準及び前記車速に基づいて前記車両の横変位挙動量を演算する横変位挙動量演算手段と、前記演算された横変位挙動量に応じた偏差量と所定偏差量との比較結果に基づいて前記運転者の運転状況が適正か否かを判定する判定手段と、前記検出された車両の挙動量の大きさ及び発生時間にもとづいて運転者が車線変更を行ったか否かを判別する車線変更判別手段とを有し、車線変更が行われていないと判別され、且つ前記運転者の運転状況が適正でない場合に運転者の運転状況が異常であると判定することを特徴とする請求項2の車両用運転状況監視装置を提供する。
【0007】
また、請求項2の装置において、前記挙動量はヨーレートであり、前記車線変更判別手段は、検出したヨーレートの大きさ及び発生時間によって前記車線変更の判別を行うことが望ましい。
【0008】
また、請求項1の装置において、前記判定手段は、測定時点が異なる複数のデータに基づいて判定を行うことが望ましい。
【0009】
また、請求項2の装置において、前記挙動基準設定手段は、前記演算された横変位挙動量の最大値及び最小値の差に応じて前記挙動基準の再設定又は補正を行うことが望ましい。
【0010】
また、前記判定手段が前記運転者の運転状況が適正でないと判定した場合に、警告を行う警告手段をさらに設けることが望ましい。
【0011】
また、前記判定手段が前記運転者の運転状況が適正でないと判定した場合に、車速制御を行う車速制御手段をさらに設けることが望ましい。
【0012】
また、前記判定手段が前記運転者の運転状況が適正でないと判定した場合に、前記運転者に直接作用する車載装置の制御を行う車載装置制御手段をさらに設けることが望ましい。
【0013】
請求項1記載の車両用運転状況監視装置によれば、車両のヨー運動又は横方向運動に関する挙動量が検出され、この挙動量に基づいて挙動基準が設定され、前記挙動量、挙動基準及び車速に基づいて車両の横変位挙動量が演算され、演算された横変位挙動量に応じた偏差量と所定偏差量との比較結果に基づいて運転者の運転状況が適正か否かが判定され、車両の運転者が車線変更を行う意志があるか否かが判別される。そして、運転者に車線変更の意志がなく且つ運転者の運転状況が適正でないと判定された場合に運転状況が異常と判定される。また、前記挙動基準は、演算された横変位挙動量の最大値及び最小値の差に応じて再設定又は補正される。
【0014】
請求項2の車両用運転状況監視装置によれば、車両のヨー運動又は横方向運動に関する挙動量が検出され、この挙動量に基づいて挙動基準が設定され、前記挙動量、挙動基準及び車速に基づいて車両の横変位挙動量が演算され、演算された横変位挙動量に応じた偏差量と所定偏差量との比較結果に基づいて運転者の運転状況が適正か否かが判定され、検出された車両の挙動量の大きさ及び発生時間にもとづいて運転者が車線変更を行ったか否かが判別される。そして、車線変更が行われていないと判別され且つ前記運転者の運転状況が適正でない場合に運転者の運転状況が異常であると判定される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明の第1の実施の形態にかかる車両用運転状況監視装置の構成を示すブロック図であり、本装置は内燃エンジンや電動モータ等の原動機で駆動され、ステアリングを有する車両に搭載されている。同図において、マイクロコンピュータ1の入力側には、当該車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ10と、当該車両の走行速度を検出する車速センサ12及び当該車両の運転者の車線変更の意志を検出するためのウインカスイッチ11が接続されている。また、マイクロコンピュータ1の出力側には、運転者の運転状況の監視中において必要に応じて警報を発する警報部24が接続されている。この警報部24は、例えばランプ、ブザー、音声発生器などで構成される。
【0017】
マイクロコンピュータ1の信号メモリ部14、基準線推定部16、横変位量微分量算出部18、偏差量算出部20及び判断部22は、マイクロコンピュータ1が有する機能をブロックとして示したものである。
【0018】
信号メモリ部14は前記センサ10、12及びスイッチ11からの入力信号を記憶し、現在から過去T1秒間(例えば30秒間)のヨーレートデータ及び車速データをT2秒(例えば10秒)毎に更新して、基準線算出部16に出力する。
【0019】
基準線算出部16は、入力されたヨーレートYR(図2(a)参照)を時間積分して、ヨー角YA(同図(b)参照)に変換し、さらにこのヨー角YAのデータに基づいて基準線(同図(b)の破線参照)を算出する。この算出は具体的には以下のように周知の最小自乗法を用いて行う。
【0020】
例えば、時刻t1,t2,t3においてヨー角YA1,YA2,YA3というデータ得られたとすると、基準線を1次式で近似する場合は、
YA1=b1+b2t1+e1
YA2=b1+b2t2+e2
YA3=b1+b2t3+e3
とする。ここで、e1〜e3は残差であり、これら残差の自乗和が最小となるように、b1,b2を決定する。また、2次式で近似する場合は、
【0021】
【数1】
YA1=b1+b2t1+b3t12 +e1
YA2=b1+b2t2+b3t22 +e2
YA3=b1+b2t3+b3t32 +e3
として、残差の自乗和が最小となるようにb1〜b3を決定する。また、3次式で近似する場合は、
【0022】
【数2】
YA1=b1+b2t1+b3t12 +b4t13 +e1
YA2=b1+b2t2+b3t22 +b4t23 +e2
YA3=b1+b2t3+b3t32 +b4t33 +e3
として、残差の自乗和が最小となるようにb1〜b4を決定する。
【0023】
なお、データの数が多い場合には同様にしてさらに次数を上げて近似を行う。
【0024】
本実施の形態では、先ず1次式で基準線を求め、ヨー角YAから基準線に対応する基準ヨー角を差し引いて修正ヨー角YAM(図2(c)参照)を算出して、横変位微分量算出部18に出力する。
【0025】
横変位量微分量算出部18は、修正ヨー角YAM及び車速Vを下記式に適用して横変位微分量DYK(図2(d)参照)を算出する。
【0026】
DYK=V×sin(YAM)
そしてこの横変位微分量DYKの最大値DYKMAXと最小値DYKMINとの差が所定値α1以上のときは、前記基準線の近似次数を上げて再度基準線をもとめて、横変位微分量DYKの算出し、これを(DYKMAX−DYKMIN)<α1が成立するまで繰り返す。
【0027】
なお、(DYKMAX−DYKMIN)≧α1であっても、基準線の近似次数が所定次数に達したときに基準線の算出を終了するようにしてもよい。
【0028】
偏差量算出部20は、横変位微分量DYKに基づいて偏差量ΔDIF1を算出する。偏差量ΔDIF1は、例えば図2(d)に斜線を付した部分の面積(横変位微分量DYKの絶対値の時間積分値)として算出するが、DYK値の標準偏差や最大値と最小値との差を用いてもよい。
【0029】
判断部22は、偏差量ΔDIF1が所定偏差量ΔDIFLIM1以上であって、ウインカが操作されていないときは、運転者が車線変更を意図していないにも拘わらず、車両位置が基準線から大きくずれたことを意味するので運転状態が異常と判定し、警報部24に警報を発するよう指令する信号を出力する。
【0030】
以上のように本実施の形態では、検出したヨー角YAに基づいて基準線を算出し、この基準線からのずれを表す横変位微分量DYKから算出した偏差量ΔDIF1に基づいて運転状況を判定するので、路面の状況や運転者の個人差に拘わらず正確に判定することができる。さらに、ウインカの作動状態も考慮して警報を発するようにしたので、運転者が意図した進路変更時に異常と誤判断することを防止することができる。
【0031】
図3はマイクロコンピュータ1における処理の手順を示すフローチャートであり、上述した基準線推定部16、横変位量微分量算出部18、偏差量算出部20及び判断部22の機能は、具体的にはマイクロコンピュータ1のCPUにおける図3の処理により実現される。
【0032】
先ずステップS11では、T1秒間のヨーレートYR及び車速VをT2秒毎に取り込み、次いで基準線の算出(ステップS12)及び横変位微分量DYKの算出を行う(ステップS13)。そして、横変位微分量DYKの最大値DYKMAXと最小値DYKMINとの差が所定値α1より小さいか否かを判別し、(DYKMAX−DYKMIN)≧α1であるときは、ステップS12に戻り、基準線の近似の次数を1次上げて再度基準線の算出を行い、ステップS14の答が肯定(YES)となるまで繰り返す。
【0033】
なお、上述したように近似次数が所定次数に達したとき、基準線算出を終了するようにしてもよい。
【0034】
ステップS14で(DYKMAX−DYKMIN)<α1となると、ステップS15に進み偏差量ΔDIF1を算出し、次いでこの偏差量ΔDIF1が所定偏差量ΔDIFLIM1以上か否かを判別する(ステップS16)。そして、ΔDIF1≧ΔDIFLIM1であるときは、ウインカが操作されているか否かを判別する(ステップS17)。その結果、ΔDIF1<ΔDIFLIM1であるとき又はウインカが操作されているときは、直ちに本処理を終了する一方、ΔDIF1≧ΔDIFLIM1であって、ウインカが操作されていないときは、運転状況が異常であると判定して、警報を発するよう指令する信号を警報部24に出力する。
【0035】
図4は本発明の第2の実施の形態にかかる車両用運転状況監視装置の構成を示す図であり、本実施例の監視装置は、第1の実施の形態の横変位微分量算出部18に代えて横変位量算出部19を備えており、偏差量算出部20は、横変位微分量ではなく横変位量に基づいて偏差量を算出する。これ以外の点は第1の実施の形態と同一である。
【0036】
図5は、本実施の形態のマイクロコンピュータ1で実行される処理の手順を示すフローチャートであり、これを参照して本実施例の監視装置の動作を説明する。
【0037】
先ずステップS21、S22では、図3のステップS11、S12と同様にデータを取り込み、基準線の算出を行う。ステップS23では、修正ヨー角YAM及び車速Vから横変位微分量DYKを算出し、さらにDYK値を時間積分することにより横変位量YKを算出する(図2(e)参照)。
【0038】
次に横変位量YKの最大値YKMAXと最小値YKMINとの差が所定値α2より小さいか否かを判別し(ステップS24)、(YKMAX−YKMIN)≧α2であるときは、ステップS22に戻り、基準線の近似の次数を1次上げて再度基準線の算出を行い、ステップS24の答が肯定(YES)となるまで繰り返す。
【0039】
なお、(YKMAX−YKMIN)≧α2であっても近似次数が所定次数に達したときは基準線の算出を終了するようにしてもよい。
【0040】
ステップS24で(YKMAX−YKMIN)<α2となると、ステップS25に進み偏差量ΔDIF2を算出する。この偏差量は、例えば図2(e)に斜線を付した部分の面積(横変位量YKの絶対値の時間積分値)として算出するが、YK値の標準偏差や最大値と最小値との差を用いてもよい。
【0041】
次いでこの偏差量ΔDIF2が所定偏差量ΔDIFLIM2以上か否かを判別する(ステップS26)。そして、ΔDIF2≧ΔDIFLIM2であるときは、ウインカが操作されているか否かを判別する(ステップS27)。その結果、ΔDIF2<ΔDIFLIM2であるとき又はウインカが操作されているときは、直ちに本処理を終了する一方、ΔDIF2≧ΔDIFLIM2であって、ウインカが操作されていないときは、運転状況が異常であると判定して、警報を発するよう指令する信号を警報部24に出力する。
【0042】
以上のように本実施の形態では、検出したヨー角YAに基づいて基準線を算出し、この基準線からのずれを表す横変位量YKから算出した偏差量ΔDIF2に基づいて運転状況を判定するので、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0043】
図6は本発明の第3の実施の形態にかかる車両用運転状況監視装置の構成を示す図であり、本実施の形態の監視装置は、第2の実施の形態の偏差量算出部20と判断部22との間に運転者の運転能力を推定する運転能力推定部21が追加されている。これ以外の点は第2の実施の形態と同一である。
【0044】
図7は図6の機能ブロック図に対応する処理のフローチャートであり、図7のステップS21〜S25は、図5の処理と同一である。
【0045】
ステップS31では、ステップS25で算出した偏差量ΔDIF2に基づいて運転者の運転能力を推定する。この推定は具体的には以下のようにして行う。
【0046】
先ず偏差量ΔDIF2の算出を、ヨーレートYR及び車速Vのサンプリング時期を変えてm回(例えば4回)とn回(例えば8回)行い、m個のΔDIF2値の平均値ΔDIFAVE及び標準偏差σDIF及びn個のΔDIF値の平均値ΔDIFAVE3を算出する。そして、平均値ΔDIFAVEが所定偏差量ΔDIFTHより大きいか否か、及び標準偏差σDIFが所定閾値σTHより大きいか否かに応じて図8に示すように運転能力レベルA〜Dを決定する。ここで、ΔDIFAVE≦ΔDIFTH且つσDIF≦σTHであるときは、偏差量が平均して小さく且つそのばらつきも小さいので、最も運転能力が高い状態と推定する(レベルA)。一方、ΔDIFAVE>ΔDIFTH且つσDIF≦σTHであるときは、偏差量が平均して大きく且つそのばらつきが小さいので、最も運転能力が低い状態と推定する(レベルD)。また、σDIF>σTHであるときは、ΔDIFAVE値が小さい方が運転能力が高いと推定し、ΔDIFAVE≦ΔDIFTHであるときをレベルB、ΔDIFAVE>ΔDIFTHである時をレベルCとする。
【0047】
さらに、m個のΔDIF2値の中で所定値を越えるものの数NOV(=0〜m)を求め、このNOV値に応じて運転能力レベルE〜Iを決定する。すなわち、m=4の場合には、NOV=0,1,2,3,4に対応して運転能力をそれぞれE,F,G,H,Iとする。
【0048】
そして、上記運転能力レベルA〜C及びE〜Iに基づいて、、図9に示すように総合的な運転能力の判定を行う。すなわちn個のΔDIF値の平均値ΔDIFAVE3の所定閾値をΔDIF3THとすると、レベルA,B且つE,またはΔDIFAVE3<ΔDIF3THのときは「正常」と判定し、レベルA,B且つF,G且つΔDIFAVE3≧ΔDIF3THのときまたはレベルC且つE,F,G且つΔDIFAVE3≧ΔDIF3THのときは「警告レベル1」と判定し、レベルA,B,C且つH,I且つΔDIFAVE3≧ΔDIF3THのとき、またはレベルD且つΔDIFAVE3≧ΔDIF3THのときは「警告レベル2」と判定する。
【0049】
なお、n個のΔDIF値の平均値ΔDIFAVE3を用いずに、レベルA,B且つEのときは「正常」と判定し、レベルA,B且つF,GのときまたはレベルC且つE,F,Gのときは「警告レベル1」と判定し、レベルA,B,C且つH,IのときまたはレベルDのときは「警告レベル2」と判定するようにしてもよい。
【0050】
このようにして、複数の偏差量ΔDIF2の平均値及びばらつきに基づいて運転者の運転能力を判定することにより、より正確に運転能力を判定(推定)することができる。
【0051】
図7に戻り、ステップS32では、運転能力が低いか否か、すなわちステップS31で推定した運転能力が警告レベル1又は2であるか否かを判別し、この答が肯定(YES)のときは、ウインカが操作されているか否かを判別する(ステップS33)。その結果、運転能力が警告レベル1又は2でないとき又はウインカが操作されているときは、直ちに本処理を終了する一方、運転能力が警告レベル1又は2であって、ウインカが操作されていないときは、運転状況が異常であると判定して、警報を発するよう指令する信号を警報部24に出力する。
【0052】
この場合、警告レベル2のときは、警告レベル1のときより警告音を大きくしたり、ランプ点灯とブザー発音とを両方行うようにすること等が望ましい。さらに、警告レベル2のときは、車速を減速させるといったフェールセーフアクションを行うようにしてもよい。
【0053】
以上のように第3の実施の形態によれば、複数の偏差量ΔDIF2の平均値及びばらつきに基づいて運転者の運転能力を判定することにより、より正確に運転能力を判定(推定)することができ、さらにきめの細かい警告及びフェールセーフアクションが可能となる。
【0054】
次に本発明の第4の実施の形態を図10及び11を参照して説明する。
【0055】
図10は図3のステップS17をステップS17aに変更したものであり、これ以外の点は第1の実施の形態と同一である。
【0056】
図10のステップS17aでは車線変更が行われたか否かを判別する。そして、車線変更がおこわれときは直ちに本処理を終了し、車線変更が行われていないときは、運転状況が異常であると判定して、警報を発するよう指令する信号を警報部24に出力する。
【0057】
ここで車線変更が行われたか否かの判別は、以下のように行う。すなわち、車線変更が行われた場合には、ヨーレートYRは図11に示すような変化をすることがわかっているので、ヨーレートYRが一方向(例えば右方向)のピークを示す時点から他方向(例えば左方向)のピークを示す時点までの時間Tと、それらのピーク値の差(ヨーレートの振幅)aとを計測する。そして、時間Tが所定時間T1,T2(T1>T2)範囲内にあり、且つ振幅aが所定値Aより大きいとき、車線変更が行われたと判定する。
【0058】
この実施の形態によれば、例えば運転者がウインカ操作せずに車線変更した場合でも、誤判定することがなく、判定精度を向上させることができる。
【0059】
なお、図10のステップS17aでは車線変更後所定時間TARC内か否かを判別し、所定時間TARC内であれば直ちに処理を終了し、所定時間TARC経過した後に、警報を発するようにしてもよい。
【0060】
また、図5のステップS27又は図7のステップS33においても、上述したステップS17aと同様の判別を行うようにしてもよい。
【0061】
また、上述した第1〜第3の実施の形態において、ウィンカが操作されたか否かの判別(図3のステップS17、図5のステップS27、図7のステップS33)は、ヨーレートYR及び車速Vのデータ取得処理(図3のステップS11、図5、7のステップS21)の直後に行うようにし、ウィンカ操作がされたときは、基準線算出等の処理を行うことなく直ちに処理終了するようにしてもよい。また、第4の実施の形態において、車線変更したか否かの判別(図10のステップS17a)も同様にステップS11の直後に行うようにし、車線変更がなされたときは、基準線算出等の処理を行うことなく直ちに処理を終了するようにしてもよい。
【0062】
また、上述した実施の形態では、運転者への警告は、運転者の視覚又は聴覚に訴えるものを使用したが、これに限るものではなく、運転者に直接作用する方法、例えばシートを振動させたり、シートベルトに張力を加えたり、あるいは特定の香りを車室内に放出したり、空調装置の作動状態を変更したりするようにしてもよい。これにより、運転状況の悪化をより確実に運転者に知らせることができる。
【0063】
また、上述した実施の形態では、ヨーレートセンサ10によりヨーレートを検出したが、これに代えて、車輪速センサ及び車速センサの出力、又はステアリングの操舵角を検出する操舵角センサ及び横方向加速度センサの出力等を用いてヨーレートを算出するようにしてもよい。
【0064】
また、上述した実施の形態では、ヨー角YAに基づいて基準線を推定したが、ヨーレートYR、又は横変位量YKに基づいて基準線を推定してもよい。
【0065】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1記載の車両用運転状況監視装置によれば、車両のヨー運動又は横方向運動に関する挙動量が検出され、この挙動量に基づいて挙動基準が設定され、前記挙動量、挙動基準及び車速に基づいて車両の横変位挙動量が演算され、演算された横変位挙動量に応じた偏差量と所定偏差量との比較結果に基づいて運転者の運転状況が適正か否かが判定され、車両の運転者が車線変更を行う意志があるか否かが判別されるので、路面の状況や運転者の個人差に拘わらず的確に運転状況を把握することができる。そして、運転者に車線変更の意志がなく且つ運転者の運転状況が適正でないと判定された場合に運転状況が異常と判定されるので、運転者が意図した進路変更時に異常と誤判断することを防止することができる。また、前記挙動基準は、演算された横変位挙動量の最大値及び最小値の差に応じて再設定又は補正されるので、より適切な挙動基準により運転状況の判定が可能となる。
【0066】
請求項2の車両用運転状況監視装置によれば、車両のヨー運動又は横方向運動に関する挙動量が検出され、この挙動量に基づいて挙動基準が設定され、前記挙動量、挙動基準及び車速に基づいて車両の横変位挙動量が演算され、演算された横変位挙動量に応じた偏差量と所定偏差量との比較結果に基づいて運転者の運転状況が適正か否かが判定され、検出された車両の挙動量の大きさ及び発生時間にもとづいて運転者が車線変更を行ったか否かが判別される。そして、車線変更が行われていないと判別され且つ前記運転者の運転状況が適正でない場合に運転者の運転状況が異常であると判定されるので、例えば運転者がウィンカ操作せずに車線変更した場合でも、誤判定することがなく、判定精度を向上させることができる。
請求項3の車両用運転状況監視装置によれば、検出されたヨーレートの振り幅及び発生時間によって前記車線変更の判別が行われるので、判定精度を更に向上させることができる。
【0067】
請求項4の車両用運転状況監視装置によれば、前記運転状況の判定は、測定時点が異なる複数のデータに基づいて行われるので、運転状況の一時的な変動の影響を排除してより正確な判定を行うことができる。
【0068】
請求項5の車両用運転状況監視装置によれば、前記挙動基準は、演算された横変位挙動量の最大値及び最小値の差に応じて再設定又は補正されるので、より適切な挙動基準により運転状況の判定が可能となる。
【0069】
請求項6の車両用運転状況監視装置によれば、運転者の運転状況が適正でないと判定した場合には、警告が行われるので、運転者は必要な措置をとることが可能となる。
【0070】
請求項7の車両用運転状況監視装置によれば、運転者の運転状況が適正でないと判定した場合には、車速制御がおこなわれるので、より安全性を向上させることができる。
【0071】
請求項8の車両用運転状況監視装置によれば、運転者の運転状況が適正でないと判定した場合には、運転者に直接作用する車載装置の制御が行われるので、運転状況の悪化をより確実に運転者に知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる車両用運転状況監視装置の構成を示すブロック図である。
【図2】検出データ及び検出データに基づいて算出されるパラメータの推移を示す図である。
【図3】図1のマイクロコンピュータで実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施の形態にかかる車両用運転状況監視装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図4のマイクロコンピュータで実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施の形態にかかる車両用運転状況監視装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図6のマイクロコンピュータで実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】運転者の運転能力レベルを決定するためのマップを示す図である。
【図9】運転者の運転能力レベルを決定するためのマップを示す図である。
【図10】図3の処理の一部を変更した処理のフローチャートである。
【図11】車線変更の判定手法を説明するための図である。
【符号の説明】
1 マイクロコンピュータ(挙動基準設定手段、横変位挙動量演算手段、判定手段、警告手段、車線変更判別手段、車速制御手段、車載装置制御手段)
10 ヨーレートセンサ(挙動量検出手段)
11 ウインカスイッチ(車線変更判別手段)
12 車速センサ(車速検出手段)
24 警報部(警告手段)
Claims (8)
- 車両のヨー運動又は横方向運動に関する挙動量を検出する挙動量検出手段と、
前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記挙動量の変化に基づいて挙動基準を設定する挙動基準設定手段と、
前記挙動量、前記挙動基準及び前記車速に基づいて前記車両の横変位挙動量を演算する横変位挙動量演算手段と、
前記演算された横変位挙動量に応じた偏差量と所定偏差量との比較結果に基づいて運転者の運転状況が適正か否かを判定する判定手段と、
前記車両の運転者が車線変更を行う意志があるか否かを判別する車線変更判別手段とを有し、
前記運転者に車線変更の意志がなく、且つ前記運転者の運転状況が適正でない場合に運転者の運転状況が異常であると判定する、車両の運転者の運転状況を監視する車両用運転状況監視装置であって、
前記挙動基準設定手段は、前記演算された横変位挙動量の最大値及び最小値の差に応じて前記挙動基準の再設定又は補正を行うことを特徴とする車両用運転状況監視装置。 - 車両の運転者の運転状況を監視する車両用運転状況監視装置において、
前記車両のヨー運動又は横方向運動に関する挙動量を検出する挙動量検出手段と、
前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記挙動量の変化に基づいて挙動基準を設定する挙動基準設定手段と、
前記挙動量、前記挙動基準及び前記車速に基づいて前記車両の横変位挙動量を演算する横変位挙動量演算手段と、
前記演算された横変位挙動量に応じた偏差量と所定偏差量との比較結果に基づいて前記運転者の運転状況が適正か否かを判定する判定手段と、
前記検出された車両の挙動量の大きさ及び発生時間にもとづいて運転者が車線変更を行ったか否かを判別する車線変更判別手段とを有し、
車線変更が行われていないと判別され、且つ前記運転者の運転状況が適正でない場合に運転者の運転状況が異常であると判定することを特徴とする車両用運転状況監視装置。 - 前記挙動量はヨーレートであり、前記車線変更判別手段は、検出したヨーレートの大きさ及び発生時間によって前記車線変更の判別を行うことを特徴とする請求項2記載の車両用運転状況監視装置。
- 前記判定手段は、測定時点が異なる複数のデータに基づいて判定を行うことを特徴とする請求項1記載の車両用運転状況監視装置。
- 前記挙動基準設定手段は、前記演算された横変位挙動量の最大値及び最小値の差に応じて前記挙動基準の再設定又は補正を行うことを特徴とする請求項2記載の車両用運転状況監視装置。
- 前記判定手段が前記運転者の運転状況が適正でないと判定した場合に、警告を行う警告手段をさらに設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用運転状況監視装置。
- 前記判定手段が前記運転者の運転状況が適正でないと判定した場合に、車速制御を行う車速制御手段をさらに設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用運転状況監視装置。
- 前記判定手段が前記運転者の運転状況が適正でないと判定した場合に、前記運転者に直接作用する車載装置の制御を行う車載装置制御手段をさらに設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用運転状況監視装置。
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