JP3839276B2 - エレクトロルミネッセント素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パターン形成されたエレクトロルミネッセント(以下ELと略称する場合がある。)素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
EL素子は、対向する電極から注入された正孔および電子が発光層内で結合し、そのエネルギーで発光層中の蛍光物質を励起し、蛍光物質に応じた色の発光を行うものであり、自発光の面状表示素子として注目されている。その中でも、有機物質を発光材料として用いた有機薄膜ELディスプレイは、印加電圧が10V弱であっても高輝度な発光が実現するなど発光効率が高く、単純な素子構造で発光が可能で、特定のパターンを発光表示させる広告その他低価格の簡易表示ディスプレイへの応用が期待されている。
【0003】
このようなEL素子を用いたディスプレイの製造にあっては、電極層や有機EL層のパターニングが通常なされている。このEL素子のパターニング方法としては、発光材料をシャドウマスクを介して蒸着する方法、インクジェットによる塗りわけ方法、紫外線照射により特定の発光色素を破壊する方法、スクリーン印刷法等がある。しかしながら、これらの方法では、発光効率や光の取り出し効率の高さ、製造工程の簡便さや高精細なパターン形成の全てを実現するEL素子を提供することはできなかった。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、発光効率や取り出し効率の高さ、製造工程の簡便さや高精細なパターンの形成を実現するEL素子の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、EL素子を構成する複数種類の発光層を、フォトリソグラフィー法を用いてパターニングするEL素子の製造方法において、上記発光層が、フォトレジスト溶媒、フォトレジスト現像液、およびフォトレジスト剥離液に不溶であって、かつ、形成されたフォトレジスト層が上記発光層形成に用いる溶媒に不溶であり、前記フォトレジスト溶媒は、上記発光層に対する溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下であり、上記フォトレジスト現像液は、上記発光層に対する溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下であり、上記発光層形成に用いる溶媒は、上記フォトレジストに対する溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下であり、少なくとも電極層が形成された基板上に発光層を形成し、上記発光層上に上記フォトレジスト層を形成した後、上記フォトレジスト層を用いて上記発光層をパターニングすることにより、パターニングされた上記発光層と、上記パターニングされた発光層上に配置されたフォトレジスト層とを形成する工程と、上記パターニングされた発光層と異なる種類の発光層を、上記パターニングされた発光層上に配置されたフォトレジスト層を覆うように形成する工程とを少なくとも有することを特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造方法を提供する。
【0006】
本発明のEL素子の製造方法によれば、EL素子内の少なくとも1層の有機EL層をフォトリソグラフィー法によりパターニングして得られたものであるので、従来行われてきた蒸着によるパターニング法と比較すると、高精度のアライメント機構を備えた真空設備等が不要であることから、比較的容易にかつ安価に製造することができる。一方、インクジェット方式を用いたパターニング法と比較すると、パターニングを補助する構造物や基体に対する前処理等を行うことない点で好ましく、さらにインクジェットヘッドの吐出精度との関係から、本発明の製造方法の方がより高精細なパターンの形成に対しては好ましい方法であるといえる。したがって、本発明のEL素子の製造方法によれば、比較的容易にかつ安価に高精細なEL素子を得ることできる。
【0007】
さらに、有機EL層が発光層であるので、発光に際して必要な高精細なパターンを得ることができる。また、上記発光層が、フォトレジスト溶媒、フォトレジスト現像液、およびフォトレジスト剥離液に不溶であって、かつ、形成されたフォトレジスト層が前記発光層形成に用いる溶媒に不溶であるので、フォトレジスト層上に発光層を形成する場合、フォトレジスト層の材料と発光層の材料とが混じることが無く、発光層の発光性能を低下させることがないという利点を有する。
【0009】
上記請求項1に記載された発明においては、請求項2に記載するように、上記発光層をフォトリソグラフィー法を用いて3回パターニングすることによりフルカラー発光のEL素子を製造することが好ましい。近年においては、フルカラー化が望まれているからであり、本発明の方法によっても、このように3回パターニングすることによりフルカラー化が可能となる。
【0013】
上記請求項1または請求項2に記載された発明においては、請求項3に記載するように、上記フォトリソグラフィー法を用いたパターニングが、パターニングされる有機EL層上にフォトレジストを塗布し、露光し、現像することによりフォトレジストをパターニングした後、ドライエッチングを用いてフォトレジストが除去された部分の有機EL層を除去することによるパターニングとしてもよい。
【0014】
このように有機EL層をドライエッチングする方法を用いることにより、より高精細なパターンの形成が可能となる。
【0015】
上記請求項3に記載された発明においては、請求項4に記載するように、上記ドライエッチングが、反応性イオンエッチングであることが好ましい。反応性イオンエッチングとすることで、効果的に有機EL層の除去が行えるからである。
【0016】
また、上記請求項3に記載された発明においては、請求項5に記載するように、上記ドライエッチングに、酸素単体または酸素を含むガスを用いることが好ましい。酸素単体または酸素を含むガスを用いることで、酸化反応によりガラスやITOに影響を与えることなく効果的に有機EL層の除去が行えるからである。
【0017】
さらに、上記請求項3に記載された発明においては、請求項6に記載するように、上記ドライエッチングに、大気圧プラズマを用いることが好ましい。大気圧プラズマを用いることで、真空工程を無くすことができ、生産性の高いパターニングが可能となるからである。
【0018】
また、上記請求項1または請求項2に記載された発明においては、請求項7に記載するように、上記フォトリソグラフィー法を用いたパターニングが、パターニングされる有機EL層上にフォトレジストを塗布し、露光し、現像することによりフォトレジストをパターニングした後、超音波浴中でフォトレジストが除去された部分の有機EL層を除去することによるパターニングであることが好ましい。
【0019】
このような方法を用いることにより、フォトレジストを用いた有機EL層のパターニングにおいて、各パターンの細りや有機EL層材料の流出等の不具合の無い、精度の高いパターニングが可能となるからである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、まず本発明のEL素子の製造方法について説明し、次いでこのEL素子の製造方法により製造することができる、従来にない新たな特徴を有する本発明のEL素子について説明する。
【0027】
A.EL素子の製造方法
本発明のEL素子の製造方法は、EL素子を構成する少なくとも1層の有機EL層を、フォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることを特徴とするものである。
【0028】
本発明のEL素子の製造方法においては、このようにEL素子を構成する少なくとも1層の有機EL層をフォトリソグラフィー法により形成するものであるので、従来のシャドウマスクを介して行われる蒸着法と比較すると真空装置等が不要であることから、容易にかつ安価に有機EL層のパターニングを行うことが可能となる。一方、インクジェット法によるパターニングと比較すると、高精細なパターニングを基体の前処理やパターン間に撥液性の凸部を設ける等の必要性無しに行うことが可能となる。すなわち、本発明のEL素子の製造方法によれば、高精細なパターン有する高品質なEL素子を安価に得ることができるのである。
【0029】
以下、このような本発明のEL素子の製造方法における各構成について具体的に説明する。
【0030】
(有機EL層)
本発明におけるEL素子とは、少なくとも1層のパターニングされた有機EL層を有するものであり、具体的には、第1電極層と、上記第1電極層上に形成されたEL層と、上記EL層上に形成された第2電極層とから少なくとも構成されてなるものであり、上記EL層には少なくとも1層のパターニングされる有機EL層が含まれるものである。
【0031】
ここで、EL層には、少なくとも発光層が含まれている必要があり、その他、バッファー層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層等が組み合わされていてもよい。
【0032】
また、上記パターニングされる有機EL層は、上述したEL層を構成するいずれの層であってもよいが、本発明においては、発光層もしくはバッファー層であることが好ましく、中でも発光層を有機EL層としてパターニングしたものであることが、本発明の効果を最大限に発揮することができる点で好ましい。さらに、発光特性の面から、この発光層とバッファー層とを有機EL素子としてパターニングしたものであることが、最も好ましい例であるといえる。
【0033】
具体的には、第1電極層上に有機EL層としてバッファー層がフォトリソグラフィー法によりパターニングされて形成され、その上にさらに有機EL層として発光層がフォトリソグラフィー法によりパターニングされて形成され、さらにその上に第2の電極層が形成されているEL層が好ましい例であり、特に上記発光層が三種類の発光層であり、3回フォトリソグラフィー法によりパターニングされて形成されたフルカラーのEL素子であることが最も好ましい例である。
【0034】
本発明においては、このような有機EL層をパターニングするに際してフォトリソグラフィー法を用いてパターニングする点に特徴を有するものであり、その他の層の製法は従来用いられている方法により製造することができる。
【0035】
(フォトリソグラフィー法)
本発明のEL素子の製造方法においては、上記有機EL層のパターニングが、フォトリソグラフィー法により行われる点に特徴を有するものである。このフォトリソグラフィー法とは、光照射により膜の光照射部の溶解性が変化することを利用して光照射パターンに応じた任意のパターンを形成する方法である。以下、このフォトグラフィー法について説明する。
【0036】
(フォトレジスト)
本発明において用いることができるフォトレジストは、ポジ型であってもネガ型であっても特に限定されるものではないが、発光層などの有機EL層形成に用いる溶媒に不溶であるものが好ましい。
【0037】
具体的に用いることができるフォトレジストとしては、ノボラック樹脂系、ゴム+ビスアジド系等を挙げることができる。
【0038】
(フォトレジスト溶媒)
本発明において、上記フォトレジストをコーティングする際に用いられるフォトレジスト溶媒としては、フォトレジスト製膜の際に発光層等の上述した有機EL層とフォトレジスト材料が混合や溶解することを防ぎ、本来の発光特性を保つために発光層材料等の有機EL材料を溶解しないものを用いることが望ましい。この点を考慮すると、本発明に用いることができるフォトレジスト溶媒としては、発光層形成用材料等の有機EL層形成用の材料に対する溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましい。
【0039】
例えば、バッファー層形成材料が水系の溶媒に溶解し、発光層が芳香族系等の無極性有機溶媒に溶解する場合に用いることができるフォトレジスト溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトンをはじめとするケトン類、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、をはじめとするセロソルブアセテート類、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルをはじめとするセロソルブ類、メタノール、エタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、シクロヘキサノールをはじめとするアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、シクロヘキサン、デカリン等が挙げられるが、この他でも条件を満たす溶媒であれば使用可能であり、2種以上の混合溶媒であっても良い。
【0040】
(フォトレジスト現像液)
また、本発明に用いることができるフォトレジスト現像液としては、上記有機EL層を形成する材料を溶解するものでなければ特に限定されるものではない。具体的には、一般的に使用されている有機アルカリ系現像液を使用できるが、そのほかに、無機アルカリ、またはレジストの現像が可能な水溶液を使用することができる。レジストの現像を行った後は水で洗浄するのが望ましい。
【0041】
本発明に用いることができる現像液としては、発光層形成用材料等の有機EL層形成用の材料に対する溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g現像液)以下の現像液であることが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g現像液)以下の現像液を選択することである。
【0042】
(フォトレジスト剥離液)
さらに、本発明において用いることができるフォトレジスト剥離液としては、上記有機EL層を溶解するものではなく、フォトレジスト層を溶解することが必要であり、上述したようなフォトレジストの溶媒をそのまま使用することがでる。また、ポジ型レジストを用いた場合はUV露光を行った後でレジスト現像液として挙げた液を用いて剥離することも可能である。
【0043】
さらに、強アルカリ水溶液、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒、およびそれらの混合物、市販のレジスト剥離液を用いてもよい。レジスト剥離後は、2−プロパノール等でリンスし、さらに水でリンスしてもよい。
【0044】
(パターニング方法)
本発明に用いられるフォトリソグラフィー法によるパターニングは、具体的には、ポジ型のフォトレジストを用いた場合、まず有機EL層を全面形成後、その上に上記フォトレジスト材料を上記フォトレジスト溶媒に溶解したフォトレジスト溶液を全面塗布して乾燥させることにより、まずフォトレジスト層を形成する。次いで、このフォトレジスト層に対してパターン露光を行い、露光部分のフォトレジストを上述したようなレジスト現像液で現像する。この現像により、未露光部のフォトレジストのみ残す。そして、フォトレジストが被覆されていない部分の有機EL層を除去することにより、有機EL層をパターニングする方法である。
【0045】
なお、上記のような有機EL層を全面形成する方法としては、通常の有機EL層の形成と同様であって特に制限はないが、蒸着法の他、電着法、材料の溶融液、溶液または混合液を使用するスピンコーティング法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等の塗布方法が挙げられる。
【0046】
本発明に用いられるフォトリソグラフィー法においては、上述したようにパターニングされる有機EL層上にフォトレジストを塗布し、露光し、現像した後、ドライエッチングを用いてフォトレジストが除去された部分の有機EL層を除去するようにしてもよい。
【0047】
通常、フォトレジスト層は、有機EL層よりかなり厚く成膜されることから、全体的にドライエッチングを行うことにより、有機EL層を除去することができるのである。
【0048】
この場合、フォトレジスト層の膜厚は、0.1〜10μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜5μmの範囲内である。このような膜厚とすることで、フォトレジストのレジスト機能を保ったまま、加工精度の高いドライエッチングが可能となる。
【0049】
このようにフォトリソグラフィー法の一部にドライエッチング法を組み合わせることにより、エッチングの端部をよりシャープとすることが可能となることから、パターンの端部に存在する膜厚不均一領域の幅をより狭くすることが可能となり、その結果、より高精細なパターニングが可能となるという効果を奏する。
【0050】
本発明に用いられるドライエッチング法としては、ドライエッチングが、反応性イオンエッチングであることが好ましい。反応性イオンエッチングを用いることにより、有機膜が化学的に反応を受け、分子量の小さい化合物となることにより、気化・蒸発して基板上から除去することができ、エッチング精度の高い、短時間の加工が可能となるからである。
【0051】
また、本発明においては、上記ドライエッチングに際して、酸素単体または酸素を含むガスを用いることが好ましい。酸素単体または酸素を含むガスを用いることで有機膜の酸化反応による分解除去が可能であり、基板上から不要な有機物を除去することができ、エッチング精度の高い、短時間の加工が可能である。また、この条件では、通常用いられるITO等の酸化物透明導電膜をエッチングすることがないので、電極特性を損なうことなく、電極表面を浄化することができる点においても効果的である。
【0052】
さらに、本発明においては上記ドライエッチングに、大気圧プラズマを用いることが好ましい。大気圧プラズマを用いることで、通常真空装置が必要であるドライエッチングが大気圧下で行なうことができ、処理時間の短縮、およびコストの低減が可能である。この場合、エッチングはプラズマ化した大気中の酸素によって有機物が酸化分解することを利用することとできるが、ガスの置換および循環によって反応雰囲気のガス組成を任意に調整してもよい。
【0053】
本発明に用いられるフォトリソグラフィー法においては、パターニングされる有機EL層上にフォトレジストを塗布し、露光し、現像した後、溶媒によってフォトレジストが除去された部分の有機EL層を除去することによるパターニングとしても良い。このとき用いる溶媒は、フォトレジストを剥離することなく、発光層を溶解または剥離することが必要であり、発光層の塗布溶媒の他、条件を満たす溶媒を選択することができる。
【0054】
本発明に用いられるフォトリソグラフィー法においては、パターニングされる有機EL層上にフォトレジストを塗布し、露光し、現像した後、超音波浴中でフォトレジストが除去された部分の有機EL層を除去することによるパターニングとしてもよい。使用する溶媒は、フォトレジストを剥離することなく発光層を溶解または剥離することが必要であり、発光層の塗布溶媒のほか、条件を満たす溶媒を選択することができる。
【0055】
このように超音波浴を用いることにより、フォトレジストを用いた有機EL層のパターニングにおいて、各パターンの細りや有機EL層材料の流出等の不具合の無い、精度の高いパターニングが可能となるからであり、短時間で精度の高いパターニングが可能となる点で好ましい。なお、上記フォトレジストを現像する際にもこの超音波浴を用いて行うようにしてもよい。
【0056】
本発明においては、この超音波浴に用いる超音波の条件は、25℃において、20〜100キロヘルツの発振周波数で、0.1〜60秒間行なうことが好ましく、このような条件とすることで、短時間で精度の高いパターニングが可能となる。
【0057】
(バッファー層)
本発明においては、上述したように二つの電極層に挟まれたEL層において、少なくとも1層がパターニングされる有機EL層である必要があり、上述したようにバッファー層もしくは発光層が有機EL層としてパターニングされて形成されることが好ましい。以下、まずこのバッファー層について説明する。
【0058】
本発明でいうバッファー層とは、発光層に電荷の注入が容易に行われるように、陽極と発光層との間または陰極と発光層との間に設けられる、有機物、特に有機導電対などを含む層である。例えば、発光層への正孔注入効率を高めて、電極などの凹凸を平坦化する機能を有する導電性高分子であることができる。
【0059】
本発明に用いられるバッファー層は、その導電性が高い場合、素子のダイオード特性を保ち、クロストークを防ぐためにパターニングされていることが望ましい。したがって、本発明によりパターニングされて形成されることが望ましいのである。なお、バッファー層の抵抗が高い場合等はパターニングされていなくても良い場合もあり、またバッファー層が省ける素子の場合はバッファー層を設けなくても良い場合もある。
【0060】
本発明において、バッファー層および発光層の両者が上記有機EL層としてフォトリソグラフィー法によりパターニングされて形成される場合は、バッファー層を形成する材料が、フォトレジスト溶媒および発光層形成に用いる溶媒に不溶であるものを選択することが好ましく、より好ましくはバッファー層を形成する材料が、フォトレジスト剥離液に不溶である材料を選択した場合である。
【0061】
一方、発光層が真空製膜等により形成され、有機EL層としてフォトリソグラフィー法によりパターニングされる層がバッファー層のみである場合は、バッファー層を形成する材料が、フォトレジスト溶媒およびフォトレジスト剥離液に不溶である材料を選択することが好ましい。
【0062】
本発明に用いられるバッファー層を形成する材料としては、具体的にはポリアルキルチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、トリフェニルアミン等の正孔輸送性物質の重合体、無機酸化物のゾルゲル膜、トリフルオロメタン等の有機物の重合膜、ルイス酸を含む有機化合物膜等が挙げられるが、上述したような溶解性に関する条件を満たしていれば特に限定されず、製膜後に反応、重合あるいは焼成等により上記の条件を満たしても良い。また、発光層を真空製膜等によって製膜する場合は一般に使用されているバッファー材料、正孔注入材料、正孔輸送材料を使用することができる。
【0063】
また、本発明においてバッファー層を形成する際に用いられる溶媒としては、バッファー材料が分散または溶解していればよく、特に制限されるものではないが、フルカラーのパターニング等において、複数回のバッファー層の製膜が必要である場合、フォトレジスト材料を溶解しないバッファー層溶媒を用いる必要があり、さらに好ましくは発光層を溶解しないバッファー層溶媒であることが好ましい。本発明に用いることができるバッファー層溶媒としては、レジスト材料の溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することである。またバッファー層溶媒としてさらに好ましくは、発光材料の溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することであり、特に0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましい。例えば、水、メタノール、エタノールをはじめとするアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒が挙げられるが、この他でも条件を満たす溶媒であれば使用可能である。また、2種以上の溶媒を混合して用いても良い。
【0064】
このようなバッファー層のフォトリソグラフィー法を用いたパターニングの例を図1を用いて具体的に説明する。
【0065】
図1は、本発明の方法によって、バッファー層および発光層のパターニングを行い、単色のEL素子を製造する手順を示す図である。まず図1(a)に示すように、基体1上にパターニングされた第1電極層2の上にバッファー層3を全面に形成する。次に図1(b)に示すようにバッファー層3の上にポジ型レジスト層4を形成してプリベークを行う。次に図1(c)に示すようにマスク5で部分的に遮光して紫外線パターン露光6を行う。次いで図1(d)に示すようにレジスト現像液によって現像し、水洗を行うと露光部のフォトレジストおよびバッファー層が除去される。次いで、図1(e)に示すように、レジスト剥離液によってレジストを剥離すると第1電極層2を覆うバッファー層3のパターンが形成できる。次に、図1(f)に示すように、基体1上にパターニングされた第1電極層2と第1電極層2上に設けられたバッファー層3の上に発光層7を全面形成する。次いで図1(g)に示すように発光層7上にポジ型フォトレジスト層4を形成しプリベークを行う。次に図1(h)に示すようにマスク5で部分的に遮光して紫外線パターン露光6を行う。次いで図1(i)に示すようにレジスト現像液により現像、水洗を行うと、露光部のフォトレジストが除去される。次いで、図1(j)に示すように、発光層の溶媒により洗浄を行うとパターニングされた剥き出しの発光層7が除去される。次いで図1(k)に示すようにレジスト剥離液によってレジストを剥離する。最後に図1(l)に示すように第2電極層8を形成すると図の下方に向けてEL発光9を放つEL素子が製造できる。
【0066】
(発光層)
次に、本発明によりパターニングされて形成される、有機EL層としての発光層について説明する。
【0067】
このような発光層を形成する材料としては、蛍光を発する材料を含み発光するものであれば特に限定されない。発光層を形成する材料としては、発光機能と正孔輸送機能や電子輸送機能をかねていることができるが、好ましくは発光層を形成する材料が、上記フォトレジスト溶媒、上記フォトレジスト現像液、および上記フォトレジスト剥離液に不溶である材料である。また、この場合は、発光層をフォトリソグラフィー法によりパターニングする際に用いるフォトレジストが、発光層の形成に用いる溶媒に不溶の材料を用いることが好ましい。
【0068】
本発明において用いることができる発光層を形成する材料としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0069】
1.色素系材料
色素系材料としては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0070】
2.金属錯体系材料
金属錯体系材料としては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。
【0071】
3.高分子系材料
高分子系の材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体、金属錯体系発光材料を高分子化したもの等を挙げることができる。
【0072】
4.ドーピング材料
発光層中に発光効率の向上、発光波長を変化させる当の目的でドーピングを行うことができる。このドーピング材料としては例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィレン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等を挙げることができ。
【0073】
5.発光層塗布用溶媒
発光層塗布用の溶媒は、バッファー層と用いる場合、発光層の製膜の際にバッファー層と発光層材料が混合や溶解することを防ぎ、発光材料本来の発光特性を保つためにバッファー層を溶解しないことが望ましい。
【0074】
このような観点から、発光層塗布用溶媒はバッファー層材料に対する溶解度が25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましい。
【0075】
さらに発光層塗布用溶媒は、発光層を複数層塗布する場合、2色目以降の発光層製膜の際に、フォトレジスト層と発光層材料が混合や溶解することを防ぎ、さらに、すでにパターニングされている発光層を保護するためにフォトレジストを溶解しないことが望ましい。
【0076】
このような観点から、発光層塗布溶媒はフォトレジストに対する溶解度が25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましい。例えば、バッファー層が水系やDMF、DMSO、アルコール等の極性溶媒に溶解し、フォトレジストが一般的なノボラック系ポジレジストの場合、ベンゼン、トルエン、キシレンの各異性体およびそれらの混合物、メシチレン、テトラリン、p−シメン、クメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ブチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンの各異性体およびそれらの混合物等をはじめとする芳香族系溶媒、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、2−ブタノン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジグライム等をはじめとするエーテル系溶媒、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1−クロロナフタレン等のクロル系溶媒、シクロヘキサノン等が挙げられるが、この他でも条件を満たす溶媒であれば使用可能であり、2種以上の混合溶媒であっても良い。
【0077】
本発明においては、このような発光層を3種類用い、パターニングすることによりフルカラー表示のEL素子を形成することができる。このような発光層の形成方法について図面を用いて具体的に説明する。
【0078】
図2は、本発明の方法によって、3色の発光層のパターニングを行い、フルカラー表示のEL素子を製造する手順を示す図である。まず図2(a)に示すように基体21上にパターニングされた第1電極層22およびバッファー層23を形成し、さらにその上に、青色発光層24を全面形成する。次いで、図2(b)に示すようにポジ型レジスト25を全面塗布し、図2(c)に示すように青色発光層を形成する部分をマスク26し、その部分以外を紫外線露光27をする。これをレジスト現像液によって現像し、水洗すると、図2(d)に示すように露光部のレジストが除去される。さらに発光層の溶媒によって現像すると、図2(e)に示すように剥き出しの青色発光層24のみ除去され、レジストと、レジストに被覆された青色発光層24が残る。次いで青色発光層の形成と同様に、図2(f)に示すように緑色発光層28を全面形成し、さらに図2(g)に示すようにポジ型レジスト25を全面塗布し、図2(h)に示すように青色および緑色発光層を形成する部分をマスク26し、それ以外を紫外線露光27をする。これをレジスト現像液によって現像、水洗し、さらに発光層の溶媒によって現像すると、図2(i)に示すように剥き出しの緑色発光層28のみ除去され、レジストに被覆された部分が残る。さらに青色および緑色発光層の形成と同様に、図2(j)に示すように赤色発光層29と、ポジ型レジスト25を全面形成し、図2(k)に示すように青色、緑色および赤色発光層を形成する部分をマスクしその部分以外を紫外線露光する。これをレジスト現像液によって現像、水洗し、発光層の溶媒によって現像すると、図2(l)に示すように剥き出しの赤色発光層29のみ除去され、レジストに被覆された部分が残る。さらにレジスト剥離液により剥離処理をするとレジストが形成された部分から上の層が剥離し、図2(m)に示すように、青、緑、赤の3色の発光層が剥き出しに形成される。最後に図2(n)のようにこれらの発光層上に第2電極層30を形成すると図の下方にEL発光31を放つEL素子が製造できる。
【0079】
(その他の有機EL層)
1.電荷輸送層
本発明の有機EL層としては電荷注入層も挙げることができる。この電荷注入層には正孔注入層および/または電子注入層が含まれる。これらは、例えば特開平11−4011号公報に記載のもののように、EL素子に一般に用いられるものであれば特に限定されない。
【0080】
なお、以上の層を構成する、発光材料、正孔輸送材料、または電子輸送材料は、それぞれ単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい。同じ材料を含む層は1層でも複数層でもよい。
【0081】
2.電極層
本発明においては、電極層は通常EL素子に用いられるものであれば限定されず基体に先に設ける電極層を第1電極層、有機EL層形成後に設ける電極層を第2電極層と呼ぶことがある。これらの電極層は、陽極と陰極からなり、陽極と陰極のどちらか一方が、透明または、半透明であり、陽極としては、正孔が注入し易いように仕事関数の大きい導電性材料が好ましい。また、複数の材料を混合させてもよい。いずれの電極層も、抵抗はできるだけ小さいものが好ましく、一般には、金属材料が用いられるが、有機物あるいは無機化合物を用いてもよい。
【0082】
好ましい陽極材料としては、例えば、ITO、酸化イソジウム、金が挙げられる。好ましい陰極材料としては、例えばマグネシウム合金(MgAg他)、アルミニウム合金(AlLi、AlCa、AlMg他)、金属カルシウムおよび仕事関数の小さい金属が挙げられる。
【0083】
3.絶縁層
本発明のEL素子において、基体上に形成されている第1電極層のパターニングしたエッジ部分および素子の非発光部分を覆い、発光に不要な部分での短絡を防ぐために、絶縁層を発光部分が開口となるように予め設けておいても良い。このようにすることで、素子の短絡等による欠陥を低減し、長寿命で安定発光する素子が得られる。
【0084】
通常知られている通り、例えば、UV硬化性の樹脂材料等を用いて1μm程度の膜厚でパターン形成することができるが、本発明のドライエッチングで有機EL層をパターニングする場合、絶縁層はドライエッチング耐性があることが望ましく、耐性が小さい場合は、1μm以上、例えば、1.5〜10μmの膜厚で形成し、ドライエッチングで欠損しないようにすることが好ましく、さらに好ましくは2〜5μmの膜厚で形成することである。
【0085】
B.EL素子
次に、本発明のEL素子について説明する。本発明のEL素子は、以下に説明する三つの実施態様を有するものであり、いずれも、上述したEL素子の製造方法により製造することができる。以下、各実施態様毎に説明する。
【0086】
(第1実施態様)
本発明のEL素子の第1実施態様は、少なくとも1層のパターニングされた有機EL層を有するEL素子であって、隔壁、パターニングを補助する構成物およびパターニングを補助する表面処理のいずれをも有しないことを特徴とするものである。
【0087】
本実施態様のEL素子は、パターニングされた有機EL層を有するものであるにもかかわらず、隔壁、パターニングを補助する構成物およびパターニングを補助する表面処理のいずれをも有するものではない。したがって、コスト的に有利であるという利点を有する。
【0088】
本実施態様においては、上記有機EL層は蒸着法では形成することができない高分子材料で形成されたものであることが好ましい。また、上記有機EL層が、特にパターニングが必須である発光層であることが好ましい。
【0089】
その他の構成に関しては、上述したEL素子の製造方法において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0090】
(第2実施態様)
本発明のEL素子の第2実施態様は、少なくとも1層の有機EL層を有するEL素子であって、上記有機EL層がパターニングされた発光層であり、上記パターニングされた発光層の端部に形成された膜厚不均一領域の幅が、15μm以下、好ましくは10μm以下、特に好ましくは7μm以下であることを特徴とするものである。ここで、「膜厚不均一領域」とは、エッジ部分に存在し、膜厚が平坦部の平均膜厚の90%以下となっている領域をいう。
【0091】
上述したようなEL素子の製造方法により得られるEL素子において、発光層をフォトリソグラフィー法によりパターニングしたものは、その発光層がインクジェット法などによるものと異なり、厚みの均一性が高くかつ発光層周辺部のエッジ形状をエッチング条件によって自在に制御することが可能となる。したがって、エッジ領域、すなわち本発明でいう膜厚不均一領域の幅の調整が可能であり、エッジが立った形状、すなわち膜厚不均一領域の幅を狭くしたもの、もしくはエッジをテーパー形状としたもの、すなわち膜厚不均一領域の幅を広くしたものとすることができる。
【0092】
一方、従来のインクジェット法によりパターニングされた発光層の膜厚不均一領域は、通常15μmを超える幅を有するものである。したがって、このようなパターニングにより形成される各色を構成する画素を緻密に配置することが困難であった。
【0093】
ここで、図3は本発明のEL素子の発光層における膜厚不均一領域、すなわちエッジ部分を示すものであり、図4は従来のインクジェット法によりパターニングされた発光層の膜厚不均一領域を示すものである。これらの図からも明らかなように、従来のインクジェット法によりパターニングされた発光層のエッジ部分の膜厚不均一領域は幅広いが、本発明のEL素子の発光層における膜厚不均一領域の幅はかなり狭い。
【0094】
本実施態様のEL素子は、発光層端部の膜厚不均一領域の幅が上述した値以下であるので、各画素間の距離を小さくすることが可能であり、これにより各画素を緻密に配置することでき、高品質な画像を得ることができるEL素子とすることができるという利点を有する。
【0095】
本実施態様においても、発光層を形成する材料は、蒸着法では形成することができない有機高分子材料であることが好ましい。また、発光層は少なくとも3層あり、これによりフルカラー画像が得られるように構成されたものであることが好ましい。なお、その他の構成、材料等に関しては、上述したEL素子の製造方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0096】
(第3実施態様)
本発明のEL素子の第3実施態様は、少なくとも1層の有機EL層を有するEL素子であって、上記有機EL層が、複数色の発光が可能なパターニングされた複数の発光層であり、隣り合う異なる色を発光する発光層間の距離が、30μm以下、好ましくは20μm以下、特に好ましくは15μm以下であることを特徴とするEL素子である。
【0097】
なお、ここで発光層間の距離とは、パターニングされた各発光層からなる画素間のスペースを示すものである。
【0098】
発光層の湿式パターニングで最もよく知られているインクジェット法では、膜のエッジ部分の均一性が低いこと、インクの着弾位置が不安定であること、インクの濡れ広がる範囲を規定するために、撥インク性のバンクを設けたり撥インク性のパターン形成を行っておく必要があること等により、パターニングされた発光層間の距離は通常少なくとも40μm以上設けるのが一般的である。したがって、画素ピッチが小さい、例えば42μmピッチ以下のような素子のパターニングは不可能である。
【0099】
一方、本実施態様のEL素子は、高分子または低分子発光層を湿式製膜によって製造することが可能なEL素子にあって、発光層のパターニング精度が高く、また、パターニングした発光層のエッジ部分が乾燥により形成されたものと異なり、溶解またはエッチングにより不要部を取り去る手法を用いているため、発光層の膜の均一性が高く、パターニングした末端から例えば5μm程度の傾斜した領域があるだけである。したがって、フルカラーディスプレイを作製する場合に、発光部分である各画素間の距離を小さくすることが可能であり、これにより開口率を大きくすることができる。また、画素間の距離を小さくすることができることから、各画素を緻密に配置することが可能となる。
【0100】
第2実施態様と同様に本実施態様においても、発光層を形成する材料は、蒸着法では形成することができない有機高分子材料であることが好ましい。また、発光層は少なくとも3層あり、これによりフルカラー画像が得られるように構成されたものであることが好ましい。なお、その他の構成、材料等に関しては、上述したEL素子の製造方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0101】
(その他)
上記第1実施態様、第2実施態様および第3実施態様に示されるEL素子においては、少なくとも基板と、前記基板上にパターン状に形成された電極層と、前記電極層のエッジ部分および素子の非発光部分を覆うような絶縁層とを有する構成とされていることが好ましい。
【0102】
このようにパターン状に形成された電極層のエッジ部分を絶縁層で覆うことにより、上述したように素子の短絡等による欠陥を低減することができるからである。
【0103】
ここで、用いられる基板としては、通常EL素子において用いられているガラス等の基板であれば、特に限定されるものではない。
【0104】
また、電極層および絶縁層に関しては、上記EL素子の製造方法の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0105】
(具体的な材料の組み合わせ)
上記のような、特定の溶液への溶解性を利用した本発明におけるEL素子のパターニングを行うことのできる好適な材料組み合わせは、例えば以下の通りである。
【0106】
バッファー層:ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体
発光層:ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体
フォトレジスト:ポジ型レジスト(ノポラック樹脂系)
フォトレジスト溶媒:セロソルブ、セロソルブアセテート
フォトレジスト現像液:有機アルカリ現像液
フォトレジスト剥離液:セロソルブ、セロソルブアセテート、アセトン
発光層形成溶媒:キシレン、トルエン
一方、一般的に用いられるEL素子材料やフォトレジスト材料であっても、例えば以下のような組み合わせは本発明においては好適ではない(ただし、各々の材料は他の材料系との組み合わせにおいては好適材料となりうる)。
【0107】
バッファー層:ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体
発光層:以下の構造を有するTPD/Alq3、ポリビニルカルバゾール+オキサジアゾール誘導体+蛍光色素
【0108】
【化1】
【0109】
【化2】
【0110】
フォトレジスト:ポジ型レジスト(ノボラック樹脂系)
フォトレジスト溶媒:セロソルブ、セロソルブアセテート
フォトレジスト現像液:有機アルカリ現像液
フォトレジスト剥離液:セロソルブ、セロソルブアセテート、アセトン
発光層形成溶媒:ジクロロエタン(TPD/Alq3の場合は真空成膜)
本発明において、発光層にポリビニルカルバゾール+オキサジアゾール誘導体+蛍光色素を用いると、レジストの成膜、剥離時にオキサジアゾール誘導体や蛍光色素が溶出するため不適当である。また、発光層にTPD/Alq3を用いることも、レジストの成膜、剥離時にTPDおよびAlq3が溶出する、フォトリソ中の加熱工程によってTPDが結晶化する等の理由で不適当である。
【0111】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0112】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明する。
【0113】
[実施例1:発光層が単層の場合]
(バッファー層のパターニング)
3インチ□、板厚1.1mmのパターニングされたITO基板を洗浄し、本実施例に用いる基体および第1電極層とした。
【0114】
以下の化学構造を有するバッファー層塗布液(ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(PEDT/PSS):バイエル社製(BaytronP)を0.5mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。
【0115】
【化3】
【0116】
2500rpmで20秒間保持してバッファー層を形成し、150℃で5分間乾燥した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0117】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化社製;OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持してレジスト層を形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行った。その後、アライメント露光機に露光マスクを共にセットし、バッファー層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化社製;NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストおよび、バッファー層を除去した。120℃で30分間ポストベークした後、アセトンでフォトレジストを全て除去し、アセトンに不溶のバッファー層を任意のパターンに形成した。
【0118】
(発光層のパターニング)
バッファー層がパターニングされた基体上に以下の化学構造を有するポリパラフェニレンビニレン誘導体発光高分子MEH−PPVの1wt%キシレン溶液を、2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。
【0119】
【化4】
【0120】
2000rpmで10秒間保持して発光層を形成し、80℃で1時間乾燥した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0121】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化社製;OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持してレジスト層を形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行った。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、発光層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化社製;NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。90℃で30分間ポストベークした後、トルエンでフォトレジストか除去された部分の発光層を除去した。アセトンでフォトレジストを全て除去し、アセトンに不溶の発光層を任意のパターンに形成した。
【0122】
90℃で1時間乾燥した後、次いで得られた基体上に、第2電極層(上部電極)としてCaを500オングストロームの厚みで蒸着し、さらに保護層としてAgを2500オングストロームの厚みで蒸着し、EL素子を作成した。
【0123】
得られたパターンの解像度はポジ型レジストの解像力に依存するが、本例では従来の蒸着マスク法、インクジェット法では実現不可能な解像度である。10μmと高精細のラインを形成できた。
【0124】
(EL素子の発光特性の評価)
ITO電極(第1電極層)側を陽極、Ag電極(第2電極層)側を陰極に接続し、ソースメーターにより、直流電流を印加した。10V印加時に発光が認められ、フォトリソグラフィー法を用いたパターニングによる発光開始電圧の劣化がないと評価できた。また、発光効率の低下もみられなかった。さらに、バッファー層をパターニングしていることにより、陽極ライン間の絶縁性を高めることができクロストーク発生率が減少した。
【0125】
[実施例2:発光層が3層の場合]
実施例1と同様にバッファー層をパターニングした。
【0126】
第1の発光層としてバッファー層がパターニングされた基体上にポリパラフェニレンビニレン誘導体発光高分子MEH−PPVの1wt%キシレン溶液を、2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2000rpmで10秒間保持して発光層を形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0127】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化社製;OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持してレジスト層を形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行った。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、第1色の発光部以外の発光層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化社製;NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。90℃で30分間ポストベークした後、トルエンでフォトレジストが除去された部分の発光層を除去し、第1の発光部がフォトレジストで保護されかつ第2、第3の発光部のバッファー層が露出した基体を得た。
【0128】
第2の発光層としてポリパラフェニレンビニレン誘導体発光高分子MEH−PPVの1wt%キシレン溶液を、2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2000rpmで10秒間保持して発光層を形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0129】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化製OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持してレジスト層を形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行った。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、第1、第2の発光部以外の発光層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化社製;NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。90℃で30分間ポストベークした後、トルエンでフォトレジストが除去された部分の発光層を除去し、第1および第2の発光部がフォトレジストで保護されかつ第3の発光部のバッファー層が露出した基体を得た。
【0130】
第3の発光層としてポリバラフェニレンビニレン誘導体発光高分子MEH−PPVの1wt%キシレン溶液を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2000rpmで10秒間保持して発光層を形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0131】
ポジ型レジスト液(東京応化製OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持してレジスト層を形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行なった。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、第1ないし第3の発光部以外の発光層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化製NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。90℃で30分間ポストベークした後、トルエンでフォトレジストが除去された部分の発光層を除去し、第1乃至第3の発光部がフォトレジストで保護された基体を得た。その後、アセトンでフォトレジストを全て除去した。
【0132】
90℃で1時間乾燥した後、次いで、得られた基体上に、第2電極層(上部電極)としてCaを500オングストロームの厚みで蒸着し、さらに保護層としてAgを2500オングストロームの厚みで蒸着し、EL素子を作製した。
【0133】
得られたパターンの解像度はポジ型レジストの解像力に依存するが、本例では従来の蒸着マスク法、インクジェット法では実現不可能な解像度である、10μmと高精細のラインを形成できた。
【0134】
(EL素子の発光特性の評価)
ITO電極(第1電極層)側を陽極、Ag電極(第2電極層)側を陰極に接続し、ソースメーターにより、直流電流を印加した。10V印加時に第1ないし第3の発光部それぞれより発光が認められ、フォトリソグラフィー法を用いたパターニングによる発光開始電圧の劣化がないと評価できた。また、発光効率の低下もみられなかった。さらに、バッファー層をパターニングしていることにより、陽極ライン間の絶縁性を高めることができクロストーク発生率が減少した。
【0135】
[実施例3:溶媒の変更]
発光層に下記式で表されるポリビニルカルバゾール、発光層溶媒にトルエンを用いた以外は実施例1と同様にEL素子を作製した。
【0136】
【化5】
【0137】
得られたパターンの解像度はポジ型レジストの解像力に依存するが、本例では従来の蒸着マスク法、インクジェット法では実現不可能な解像度である、10μmと高精細のラインを形成できた。
【0138】
(EL素子の発光特性の評価)
ITO電極(第1電極層)側を陽極、Ag電極(第2電極層)側を陰極に接続し、ソースメーターにより、直流電流を印加した。15V印加時発光が認められ、フォトリソグラフィー法を用いたパターニングによる発光開始電圧の劣化がないと評価できた。また、発光効率の低下もみられなかった。さらに、バッファー層をパターニングしていることにより、陽極ライン間の絶縁性を高めることができクロストーク発生率が減少した。
【0139】
[実施例4:ドライエッチングによるパターニング]
(バッファー層の製膜)
3インチ□、板厚1.1mmのパターニングされたITO基板を洗浄し、本実施例に用いる基体および第1電極層とした。バッファー層塗布液(バイエル社製;BaytronP)を0.5mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2500rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0140】
(発光層のパターニング)
バッファー層がパターニングされた基体上にポリパラフェニレンビニレン誘導体発光高分子MEH−PPVの1wt%キシレン溶液を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2000rpmで10秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0141】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化社製;OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行なった。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、発光層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化社製;NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。
【0142】
120℃で30分間ポストベークした後、酸素プラズマ処理を150ミリトールの圧力で150Wのパワーで20分間行なった。フォトレジストはバッファー層および発光層に比べて5倍以上厚いため、フォトレジストで保護されてない部分の発光層とバッファー層のみが剥離されて、ITO電極が剥き出しになった。第1の発光部がフォトレジストで保護された基体を得た。
【0143】
得られた基体上にバッファー層塗布液をスピンコートし、800オングストロームのバッファー層を得た。次いで、 第2の発光層としてポリパラフェニレンビニレン誘導体発光高分子MEH−PPVの1wt%キシレン溶液を、を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2000rpmで10秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0144】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化製OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行なった。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、第1色の発光部以外の発光層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化製NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。
【0145】
120℃で30分間ポストベークした後、酸素プラズマ処理を150ミリトールの圧力で150Wのパワーで20分間行なった。フォトレジストはバッファー層および発光層に比べて5倍以上厚いため、フォトレジストで保護されてない部分の発光層とバッファー層のみが剥離されて、ITO電極が剥き出しになった。第1および第2の発光部がフォトレジストで保護された基体を得た。
【0146】
得られた基体上にバッファー層塗布液をスピンコートし、800オングストロームのバッファー層を得た。次いで、第3の発光層としてポリパラフェニレンビニレン誘導体発光高分子MEH−PPVの1wt%キシレン溶液を、を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2000rpmで10秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0147】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化社製;OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行なった。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、第1色の発光部以外の発光層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化社製;NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。
【0148】
120℃で30分間ポストベークした後、酸素プラズマ処理を150ミリトールの圧力で150Wのパワーで20分間行なった。フォトレジストはバッファー層および発光層に比べて5倍以上厚いため、フォトレジストで保護されてない部分の発光層とバッファー層のみが剥離された。第1乃至第3の発光部がフォトレジストで保護された基体を得た。その後、アセトンでフォトレジストをすべて除去した。
【0149】
100℃で1時間乾燥した後、次いで、得られた基体上に、第2電極層(上部電極)としてCaを500オングストロームの厚みで蒸着し、さらに保護層としてAgを2500オングストロームの厚みで蒸着し、EL素子を作製した。
【0150】
(EL素子の発光特性の評価)
ITO電極側を正極、Ag電極側を負極に接続し、ソースメーターにより、直流電流を印加した。10V印加時に第1乃至第3の発光部それぞれより発光が認められた。
【0151】
[実施例5:大気プラズマの使用]
酸素プラズマ処理の代わりに、大気圧プラズマを用いた以外は実施例4と同様に素子作製を行った。実施例4と同様にパターン形成が可能であり、第1乃至第3の発光部それぞれより発光が認められた。
【0152】
[実施例6:超音波浴の使用]
(バッファー層の製膜)
6インチ□、板厚1.1mmのパターニングされたITO基板を洗浄し、本発明の基体および第1電極層とした。バッファー層塗布液(バイエル製BaytronP(化1))を0.5mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2500rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0153】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化製OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行なった。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、バッファー層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化製NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストおよび、バッファー層を除去した。120℃で30分間ポストベークした後、アセトンでフォトレジストを全て除去し、アセトンに不溶のバッファー層を任意のパターンに形成した。
【0154】
(発光層の製膜)
第1の発光層としてバッファー層がパターニングされた基体上にポリパラフェニレンビニレン誘導体発光高分子MEH−PPVの1wt%キシレン溶液を、を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2000rpmで10秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0155】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化製OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行なった。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、第1色の発光部以外の発光層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化製NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。120℃で30分間ポストベークした後、超音波浴中においてトルエンでフォトレジストが除去された部分の発光層を除去し、第1の発光部がフォトレジストで保護された基体を得た。
【0156】
第2の発光層としてポリパラフェニレンビニレン誘導体発光高分子MEH−PPVの1wt%キシレン溶液を、を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2000rpmで10秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。アセトンでフォトレジストを剥離することで、パターニングされた第1の発光層の上部に形成されたフォトレジストとともに、第2の発光層を剥離し、パターニングされた第1の発光層を露出させた。
【0157】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化製OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行なった。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、第1色と第2色の発光部以外の発光層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化製NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。120℃で30分間ポストベークした後、超音波浴中においてトルエンでフォトレジストが除去された部分の発光層を除去し、第1および第2の発光部がフォトレジストで保護された基体を得た。
【0158】
第3の発光層としてポリパラフェニレンビニレン誘導体発光高分子MEH−PPVの1wt%キシレン溶液を、を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2000rpmで10秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。アセトンでフォトレジストを剥離することで、パターニングされた第1および第2の発光層の上部に形成されたフォトレジストとともに、第3の発光層を剥離し、パターニングされた第1および第2の発光層を露出させた。
【0159】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化製OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は約1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行なった。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、第1乃至第3の発光部以外の発光層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化製NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。120℃で30分間ポストベークした後、超音波浴中においてトルエンでフォトレジストが除去された部分の発光層を除去し、第1乃至第3の発光部がフォトレジストで保護された基体を得た。その後、アセトンでフォトレジストをすべて除去し、パターニングされた発光層を露出させた。
【0160】
100℃で1時間乾燥した後、次いで、得られた基体上に、第2電極層(上部電極)としてCaを500オングストロームの厚みで蒸着し、さらに保護層としてAgを2500オングストロームの厚みで蒸着し、EL素子を作製した。
【0161】
(EL素子の発光特性の評価)
ITO電極側を正極、Ag電極側を負極に接続し、ソースメーターにより、直流電流を印加した。10V印加時に第1乃至第3の発光部それぞれより発光が認められた。
【0162】
[実施例7:絶縁層の形成]
3インチ□、板厚1.1mmのパターニングされたITO基板を洗浄し、基体および第1電極層とした。このときITOのパターンは、ライン84μmでスペースが16μmであった。上記スペースの部分とITOの端部(5μmづつ)に、26μm幅で絶縁性のUV硬化型樹脂よりなるネガ型レジストにより膜厚5μmの絶縁層を形成した。その他は、実施例4と同様にしてEL素子を形成した。
【0163】
第1、第2および第3の発光部を形成するためのパターニング後も絶縁層は欠損することなく絶縁層としての機能を果たしており、第1〜第3の発光部のそれぞれより発光が認められた。したがって、絶縁層を形成しても、実施例4の場合と同様にパターン形成が可能であることがわかった。
【0164】
【発明の効果】
本発明によれば、EL素子内の少なくとも1層の有機EL層をフォトリソグラフィー法によりパターニングして得られたものであるので、従来行われてきた蒸着によるパターニング法と比較すると、アライメント機構を備えた真空設備等が不要であることから、比較的容易にかつ安価に製造することができる。一方、インクジェットによるパターニング法と比較すると、パターニングを補助する構造物や基体に対する前処理等を行うことない点で好ましく、さらにインクジェットヘッドの吐出精度との関係から、本発明の製造方法の方がより高精細なパターンの形成に対しては好ましい方法であるといえる。したがって、本発明のEL素子の製造方法によれば、比較的容易にかつ安価に高精細なEL素子を得ることできる。
【0165】
また、本発明によれば、発光層内に不純物の混入がなく、発光効率や光の取り出し効率が高く、製造工程の簡略化量産化や高精彩で均一発光可能なパターン形成、クロストークの低減の全てを実現するEL素子の製造方法およびEL素子を提供することができる。
【0166】
より具体的には、例えばバッファー層をパターニングすることにより、単純マトリックス型素子の駆動における、クロストークの低減が可能となる。また、塗布により作製したバッファー層と発光層をパターニングすることにより、例えばレーザー除去や、拭き取りによって通常行なわれている不溶部の除去を同時に行なうことが可能であり、工程の簡略化が可能である。さらに、隔壁、パターニングを補助する撥インキ性を有する構成物およびパターニングを補助する撥インキ性を有する表面処理のいずれも用いる必要がない点でも工程簡略化が可能である。また、本発明は、任意のパターンで発光するEL素子あるいはフルカラー発光するEL素子のいずれにおいても、さらにフレキシブルな基体を用いたEL素子においても発光色の制御、およびパターニングができる点でも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のEL素子の製造方法の一例を示すものであり、バッファー層のパターニングを行い、単色のEL素子を製造する手順を示す工程図である。
【図2】本発明のEL素子の製造方法の他の例を示すものであり、3色の発光層のパターニングを行い、フルカラー表示のEL素子を製造する手順を示す工程図である。
【図3】本発明のEL素子における発光層のエッジ部分の断面を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】従来のインクジェット法により形成された発光層のエッジ部分の断面を拡大して示す拡大断面図である。
【符号の説明】
1 … 基体
3 … バッファー層
4 … ポジ型フォトレジスト層
7 … 発光層
23 … バッファー層
24 … 青色発光層
25 … ポジ型フォトレジスト層
28 … 緑色発光層
29 … 赤色発光層
Claims (7)
- エレクトロルミネッセント素子を構成する複数種類の発光層を、フォトリソグラフィー法を用いてパターニングするエレクトロルミネッセント素子の製造方法において、
前記発光層が、フォトレジスト溶媒、フォトレジスト現像液、およびフォトレジスト剥離液に不溶であって、かつ、形成されたフォトレジスト層が前記発光層形成に用いる溶媒に不溶であり、
前記フォトレジスト溶媒は、前記発光層に対する溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下であり、前記フォトレジスト現像液は、前記発光層に対する溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下であり、前記発光層形成に用いる溶媒は、前記フォトレジストに対する溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下であり、
少なくとも電極層が形成された基板上に発光層を形成し、前記発光層上に前記フォトレジスト層を形成した後、前記フォトレジスト層を用いて前記発光層をパターニングすることにより、パターニングされた前記発光層と、前記パターニングされた発光層上に配置されたフォトレジスト層とを形成する工程と、
前記パターニングされた発光層と異なる種類の発光層を、前記前記パターニングされた発光層上に配置されたフォトレジスト層を覆うように形成する工程と
を少なくとも有することを特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造方法。 - 前記発光層をフォトリソグラフィー法を用いて3回パターニングすることによりフルカラー発光のエレクトロルミネッセント素子を製造することを特徴とする請求項1に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
- 前記フォトリソグラフィー法を用いたパターニングが、パターニングされる有機エレクトロルミネッセント層上にフォトレジストを塗布し、露光し、現像することによりフォトレジストをパターニングした後、ドライエッチングを用いてフォトレジストが除去された部分の有機エレクトロルミネッセント層を除去することによるパターニングであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
- 前記ドライエッチングが、反応性イオンエッチングであることを特徴とする請求項3に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
- 前記ドライエッチングに、酸素単体または酸素を含むガスを用いることを特徴とする請求項3に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
- 前記ドライエッチングに、大気圧プラズマを用いることを特徴とする請求項3に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
- 前記フォトリソグラフィー法を用いたパターニングが、パターニングされる有機エレクトロルミネッセント層上にフォトレジストを塗布し、露光し、現像することによりフォトレジストをパターニングした後、超音波浴中でフォトレジストが除去された部分の有機エレクトロルミネッセント層を除去することによるパターニングであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
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