JP4145571B2 - エレクトロルミネッセント素子の製造方法 - Google Patents

エレクトロルミネッセント素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトリソグラフィー法によりエレクトロルミネッセント(以下、エレクトロルミネッセントをELと略す場合がある。)素子を製造する際に、ドライエッチング法を組合せ発光層をパターン状に形成するEL素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
EL素子は、対向する電極から注入された正孔および電子が発光層内で結合し、そのエネルギーで発光層中の蛍光物質を励起し、蛍光物質に応じた色の発光を行うものであり、自発光の面状表示素子として注目されている。その中でも、有機物質を発光材料として用いた有機薄膜ELディスプレイは、印加電圧が10V弱であっても高輝度な発光が実現するなど発光効率が高く、単純な素子構造で発光が可能で、特定のパターンを発光表示させる広告その他低価格の簡易表示ディスプレイへの応用が期待されている。
【0003】
このようなEL素子を用いたディスプレイの製造にあっては、例えば、有機EL層、具体的には発光層のパターニング等が通常行われる。この発光層のパターニング方法としては、発光材料をシャドウマスクを介して蒸着する方法、インクジェットによる塗りわけ方法、紫外線照射により特定の発光色素を破壊する方法、スクリーン印刷法等がある。しかしながら、これらの方法では、発光効率や光の取り出し効率の高さ、製造工程の簡便さや高精細なパターン形成の全てを実現するEL素子を提供することはできなかった。
【0004】
このような問題点を解決する手段として、発光層をフォトリソグラフィー法によりパターニングすることにより形成するEL素子の製造方法が提案されている。この方法によれば、従来行われてきた蒸着によるパターニング法と比較すると、高精度のアライメント機構を備えた真空設備等が不要であることから、比較的容易にかつ安価に製造することができる。一方、インクジェット方式を用いたパターニング法と比較すると、パターニングを補助する構造物や基板に対する前処理等を行うことがない点で好ましく、さらにインクジェットヘッドの吐出精度との関係から、フォトリソグラフィー法による製造方法の方がより高精細なパターンの形成に対しては好ましい方法であるといった利点を有するものであった。
【0005】
このような利点を有するフォトリソグラフィー法によるEL素子の製造方法においては、発光層をエッチングする方法として、ドライエッチング法を組み合わせることがある。ドライエッチング法は、発光層表面にパターン状に形成されたフォトレジストをマスクとして、フォトレジストにより被覆されていない領域の発光層を異方的にエッチングする方法である。そのため、発光層を微細に加工することを可能とする。しかしながら、ドライエッチング法は、エッチングの選択性が悪いため、発光層をエッチングする際に、その下に形成されているバッファー層等まで同時にエッチングしてしまう場合がある。従って、複数の発光層を有するEL素子を製造する際には、各発光層のパターニングごとにバッファー層等を成膜し直す必要があった。このような処理は、材料を無駄にするばかりでなく、製造効率の低下にも繋がるため、選択的なエッチングが可能なドライエッチング法の開発が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ドライエッチング法の選択性を向上させるため、エッチング量を制御しながらドライエッチング法を行うことにより、発光層のみのエッチングを可能とするEL素子の製造方法およびその製造装置を提供することを主目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、電荷注入層上に発光層が形成され、上記発光層表面の発光部が形成される位置にフォトレジスト層がパターン状に形成された状態で、上記フォトレジスト層が形成されていない領域の発光層をドライエッチング法により除去することにより表面にフォトレジスト層を有する発光部を形成する工程を有するEL素子の製造方法において、上記ドライエッチング法によるエッチング量を制御することにより、上記電荷注入層を残した状態で表面にフォトレジスト層を有する発光部を形成することを特徴とするEL素子の製造方法を提供する。
【0008】
本発明のEL素子の製造方法は、発光層をドライエッチング法によりパターン状に除去する際、発光層の下に形成されている電荷注入層を除去することなく、発光層のみを所望のパターンに形成することを可能とするものである。従って、電荷注入層は一度成膜された後は、同一のものを使用することができることから、材料面において無駄を少なくできると共に、製造効率面においても電荷注入層の成膜の手間を省くことができるという利点を有する。
【0009】
また本発明においては、請求項2に記載するように、基板と、上記基板上にパターン状に形成された電極層と、上記基板および上記電極層上に形成された電荷注入層とを少なくとも有する中間基板上に、発光層形成用塗工液を塗布して発光層を形成する発光層形成工程と、上記発光層上にフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成し、これをパターン露光した後、現像することにより、発光部が形成される領域にフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、上記フォトレジスト層がパターン状に形成された状態でドライエッチング法を用いてエッチングを行い、フォトレジスト層が形成されていない領域の発光層を除去することにより、表面にフォトレジスト層を有する発光部を形成するエッチング工程とを有するEL素子の製造方法において、上記エッチング工程では、ドライエッチング法によるエッチング量を制御することにより、上記電荷注入層を残した状態で表面にフォトレジスト層を有する発光部を形成することを特徴とするEL素子の製造方法を提供する。
【0010】
本発明は、ドライエッチング法により発光層をパターン状に除去する際、エッチング量を制御することにより、発光層の下に形成されている電荷注入層を除去することなく発光層のみをエッチングすることを可能とするものである。従って、従来、フルカラーのEL素子を製造する際には、各発光層のパターニングごとに電荷注入層を成膜し直していたが、本発明では、そのような複数回の成膜工程が一度で済むことから、製造効率上有利であるばかりでなく、材料面においても無駄を少なくすることができるのである。
【0011】
上記請求項1または請求項2に記載された発明においては、請求項3に記載するように、上記ドライエッチング法によるエッチング量の制御が、ドライエッチングされる発光層の蛍光強度を検出し、検出された発光層の蛍光強度に基づいて行なわれることが好ましい。発光層はエッチングの進行に伴って、その蛍光強度が変化する。そこで、このような発光層の蛍光強度の変化を測定し、その変化に応じてドライエッチング法のエッチング量を制御することにより、比較的容易に、電荷注入層を残した状態でパターン状に発光部を形成することができるからである。
【0012】
上記請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項4に記載するように、上記ドライエッチング法が、大気圧プラズマを用いる方法であることが好ましい。大気圧プラズマを用いることで、真空工程を無くすことができ、生産性の高いパターニングが可能となるからである。
【0013】
上記請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項5に記載するように、上記電荷注入層が、バッファー層であることが好ましい。バッファー層は、正孔注入層としての役割の他、基板を平坦にする目的で設けられるものであり、発光層と共に用いられる場合が多いからである。
【0014】
上記請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項6に記載するように上記電荷注入層が、膜厚に応じた特性の変化の少ない層であることが好ましい。本発明において、ドライエッチング法によりエッチングを行う際、電荷注入層を僅かにエッチングする可能性がある。このような電荷注入層のエッチングによる膜厚の変化により発光特性が大幅に変化しないようにするためである。
【0015】
本発明においてはまた、請求項7に記載するように、蛍光を発光する蛍光発光層をドライエッチングするためのドライエッチング装置において、上記蛍光発光層をドライエッチングするドライエッチング手段と、上記ドライエッチングされる蛍光発光層からの蛍光の強度を検出する検出手段と、上記検出手段からの信号に基づいて上記ドライエッチング手段のドライエッチング量を制御する制御手段とを有することを特徴とするドライエッチング装置を提供する。
【0016】
ドライエッチング手段に蛍光発光層が発する蛍光の強度を検出する手段および検出された蛍光強度に応じてドライエッチングを制御する手段を付加することにより、蛍光発光層のみ選択的にドライエッチングすることが可能となる。
【0017】
上記請求項7に記載された発明においては、請求項8に記載するように、上記ドライエッチング手段が、大気圧プラズマを用いるものであることが好ましい。
【0018】
大気圧プラズマを用いることで、真空工程を無くすことができ、生産性の高いパターニングが可能となるからである。
【0019】
本発明においてはまた、請求項9に記載するように、請求項7または請求項8に記載のドライエッチング装置を有し、かつ上記ドライエッチング装置により発光層をエッチングすることを特徴とするEL素子の製造装置を提供する。
【0020】
本発明は、EL素子を構成する発光層をドライエッチングによりエッチングする際に、発光層のみのエッチングを可能とするものであるので、例えば、発光層の下に形成されているバッファー層をエッチングすることなく、発光層のみをパターン状に形成することが可能となる。よって製造効率および材料面において有利にEL素子を製造することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のEL素子の製造方法、ドライエッチング装置およびそれを用いたEL素子の製造装置について説明する。
【0022】
I.EL素子の製造方法
本発明のEL素子の製造方法は、電荷注入層上に発光層が形成され、上記発光層表面の発光部が形成される位置にフォトレジスト層がパターン状に形成された状態で、上記フォトレジスト層が形成されていない領域の発光層をドライエッチング法により除去することにより表面にフォトレジスト層を有する発光部を形成する工程を有するEL素子の製造方法において、上記ドライエッチング法によるエッチング量を制御することにより、上記電荷注入層を残した状態で表面にフォトレジスト層を有する発光部を形成することを特徴とするものである。
【0023】
ここで、本発明における「電荷注入層」とは、発光層に電荷をバランス良く注入し、発光効率を向上させるために設けられる層であり、具体的には、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層およびバッファー層等が挙げられる。
【0024】
また、本発明において「発光層」とは、発光層形成用塗工液を塗布し、乾燥させることにより形成された層を意味し、「発光部」とは所定の位置に形成された発光層を意味するものとする。
【0025】
上述するように本発明のEL素子の製造方法は、ドライエッチングにより発光層をパターン状にエッチングする際に、ドライエッチングの対象物を選択できるようにするため、エッチング量を制御しながらドライエッチングを行うことを特徴とする。これにより、発光層のみをエッチングすることが可能となり、発光層の下に位置する電荷注入層は、発光層のエッチングの際、同時にエッチングされることが回避されるのである。従って、従来、複数の発光層をパターニングする際に、各発光層のパターニングごとに成膜し直す手間を要していた電荷注入層が、一度成膜した後は、同一のものを使用することができるため、電荷注入層の形成にかかる手間が省略でき、製造効率上有利であると共に、材料面においても無駄を少なくすることができるのである。
【0026】
このような利点を有する本発明のEL素子の製造方法における製造工程は、
基板と、上記基板上にパターン状に形成された電極層と、上記基板および上記電極層上に形成された電荷注入層とを少なくとも有する中間基板上に、発光層形成用塗工液を塗布して発光層を形成する発光層形成工程と、
上記発光層上にフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成し、これをパターン露光した後、現像することにより、発光部が形成される領域にフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、
上記フォトレジスト層がパターン状に形成された状態でドライエッチング法を用いてエッチングを行い、フォトレジスト層が形成されていない領域の発光層を除去することにより、表面にフォトレジスト層を有する発光部を形成するエッチング工程とを有するものであり、
上記エッチング工程では、ドライエッチング法によるエッチング量を制御することにより、上記電荷注入層を残した状態で表面にフォトレジスト層を有する発光部を形成することを特徴とするものである。
【0027】
ここで、「中間基板」とは、最終的にEL素子として製造される前の段階で、基板上に例えば電荷注入層までが形成されている場合や少なくとも一色の発光部が形成されているような基板を示すものである。
【0028】
上記本発明のEL素子の製造方法により、複数の発光部を有するEL素子を製造することが可能である。図1は、このような複数の発光部を有するEL素子を製造する方法において、3色の発光部を有する場合の本発明の製造方法の一例を図示したものである。以下、図1について各工程毎に説明する。
【0029】
まず、図1(a)に示すように、パターン状に形成された電極層2を有する基板1上にバッファー層3を成膜し、次いで前記バッファー層3上に第1発光層4を積層する(第1発光層形成工程)。次いで、第1発光層4上にポジ型のフォトレジストを塗布し、第1フォトレジスト層5を形成する。さらに、図1(b)に示すように、第1発光部が形成される位置のみ未露光部となるように、マスク6を介して、紫外線7をパターン露光する。次いで、現像、洗浄することにより、図1(c)に示すように、第1発光部が形成される領域上のみ第1フォトレジスト層5が残る(第1フォトレジスト層形成工程)。さらに、第1フォトレジスト層5が除去され、露出している第1発光層4をドライエッチング法により除去する。この際、第1発光層4が発する蛍光の蛍光強度を測定しながら、その蛍光強度の変化に応じて、エッチング量を制御することにより、図1(d)に示すように、バッファー層3を除去することなく第1発光層4のみをパターン状にエッチングすることができる。これにより、第1発光部4'が形成される(第1エッチング工程)。
【0030】
次いで、第2発光層のパターニングを行う。第1発光部4'が形成された基板1上に、図1(e)に示すように、第2発光層8を成膜し(第2発光層形成工程)、さらに、第2発光層8上にポジ型の第2フォトレジスト層5'を積層する。この第2フォトレジスト層5'に対して、第2発光部が形成される位置のみ未露光部となるようにマスク6を介して紫外線7をパターン露光し(図1(f)参照)、その後現像、洗浄することにより図1(g)に示すように、第2発光部が形成される位置のみ残存するように第2フォトレジスト層5'がパターニングされる(第2フォトレジスト層形成工程)。次いで、第2フォトレジスト層5'が除去され露出している第2発光層8をドライエッチング法により除去する。この際、第1発光層4のドライエッチング法によるエッチングと同様に、第2発光層8のみをエッチングするように、第2発光層8が発する蛍光の蛍光強度を測定し、その蛍光強度の変化に応じてエッチング量を制御する。これによりバッファー層3が第2発光層8と同時にエッチングされることが回避され、図1(h)に示すように、バッファー層3が除去されることなく、第2発光層8がパターン状に形成された第2発光部8'が形成される(第2エッチング工程)。
【0031】
さらに、第3発光層のパターニングを行う。まず、図1(i)に示すように、第1発光部4'および第2発光部8'が形成されている基板1上に、第3発光層9を成膜し(第3発光層形成工程)、さらに第3発光層9上にポジ型の第3フォトレジスト層5''を成膜する。次いで、図1(j)に示すように、第3発光部が形成される位置のみ未露光部となるようにマスク6を介して紫外線7をパターン露光し、その後、現像、洗浄することにより、図1(k)に示すように、第3発光部が形成される位置のみ第3フォトレジスト層5''が残る(第3フォトレジスト層形成工程)。さらに、第3フォトレジスト層5''が除去され、露出している第3発光層9をドライエッチング法により除去し、パターン状に形成された第3発光部9'を得る(第3エッチング工程)。この際のエッチングとしては、バッファー層をパターン状に形成する場合には、従来のドライエッチング法により第3発光層と共にエッチングすることによりパターン状にバッファー層を形成することができる。一方、バッファー層をパターン状としない場合には、第1エッチング工程および第2エッチング工程と同様に、エッチング量を制御することによりそのような形状にバッファー層を形成することができる。
【0032】
以下、本発明のEL素子の製造方法について、各工程ごとに詳細に説明する。
【0033】
A.発光層形成工程
本発明における発光層形成工程とは、基板と、上記基板上にパターン状に形成された電極層と、上記基板および上記電極層上に形成された電荷注入層とを少なくとも有する中間基板上に、発光層形成用塗工液を塗布して発光層を形成する工程である。
【0034】
上述したように、「中間基板」とは、最終的にEL素子として製造される前の段階の基板を示すものであり、例えば電荷注入層までが形成されている基板や、既に幾種類かの発光部のパターニングが終了している場合には、少なくとも一色の発光部を有する基板を示すものである。
【0035】
また、本工程は、中間基板上に発光層を成膜する工程であるが、例えば、図1に示すように、3色の発光部を有するEL素子を製造する場合には、具体的に第1発光層形成工程、第2発光層形成工程、第3発光層形成工程の各工程を示すものである。
【0036】
このような発光層形成工程において、本工程を構成する各々の層について詳細に説明する。
【0037】
(1)電荷注入層
本発明において電荷注入層とは、電荷すなわち電子または正孔を、発光層にバランス良く注入または輸送する役割を担う層を意味する。従って、このような働きをする層であれば特に限定はされない。具体的には、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層およびバッファー層等が挙げられる。その中でも、正孔注入層またはバッファー層であることが好ましい。一般的に、透明基板上にITO電極を設け、さらに、このITO電極上に、正孔注入層またはバッファー層を成膜し、さらに発光層が積層されている構成とする場合が多いからである。その中でも本発明においては、バッファー層であることが好ましい。バッファー層は、正孔注入層等としての機能を有し、かつ、発光層形成に際して必要な平坦性を確保することができるからである。
【0038】
さらに、本発明においては、このような電荷注入層は、厚み依存性の低い材料から形成されることが好ましい。本発明は、ドライエッチング法により発光層のみをエッチングすることを特徴とするものであるが、この際に、僅かに電荷注入層がエッチングされる可能性がある。このような場合に厚み依存性の高い材料からなる電荷注入層とすると、僅かな膜厚の変化でもその性質が変化し、発光効率を低下させる原因となるからである。
【0039】
以下、このような電荷注入層の具体的態様としてバッファー層について説明する。
【0040】
(バッファー層)
本発明でいうバッファー層とは、発光層に電荷の注入が容易に行われるように、陽極と発光層との間または陰極と発光層との間に設けられ、有機物、特に有機導電体などを含む層である。例えば、発光層への正孔注入効率を高めて、電極などの凹凸を平坦化する機能を有する導電性高分子とすることができる。
【0041】
本発明に用いられるバッファー層は、その導電性が高い場合、素子のダイオード特性を保ち、クロストークを防ぐためにパターニングされていることが望ましい。なお、バッファー層の抵抗が高い場合等はパターニングされていなくても良い場合もある。
【0042】
また、本発明においては、バッファー層は発光層の下に位置し、発光層はフォトリソグラフィー法によりパターニングされて形成されるので、バッファー層を形成する材料が、フォトレジスト溶媒および発光層形成に用いる溶媒に不溶であるものを選択することが好ましく、より好ましくはバッファー層を形成する材料が、フォトレジスト剥離液に不溶である材料を選択した場合である。
【0043】
このような本発明に用いられるバッファー層を形成する材料としては、具体的にはポリアルキルチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、トリフェニルアミン等の正孔輸送性物質の重合体、無機酸化物のゾルゲル膜、トリフルオロメタン等の有機物の重合膜、ルイス酸を含む有機化合物膜等が挙げられる。
その中でも、本発明においては、上述したように厚み依存性が低く、溶解性に関する条件を満足する材料であることが好ましい。このような材料としては、PEDOT/PSS複合体(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート等が挙げられる。また、成膜後に反応、重合あるいは焼成等により上記の条件を満たしても良い。
【0044】
また、本発明においてバッファー層を形成する際に用いられる溶媒としては、バッファー材料が分散または溶解していればよく、特に制限されるものではない。
【0045】
具体的には、水、メタノール、エタノールをはじめとするアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒が挙げられるが、この他でも条件を満たす溶媒であれば使用可能である。また、2種以上の溶媒を混合して用いても良い。
【0046】
このようなバッファー層の膜厚としては、0.01μm〜1.0μmの範囲内、この中でも0.01μm〜0.2μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲内の膜厚を有するバッファー層であれば、ドライエッチングの際に僅かにエッチングされても、バッファー層が除去されることがなく、バッファー層としての機能を充分に発揮することができるからである。
【0047】
(2)発光層
次に、発光層について説明する。本発明において発光層は、上記電荷注入層上に、発光層を形成する発光層形成用塗工液を塗布し、形成されるものである。
【0048】
このような発光層を形成する発光層形成用塗工液としては、通常発光層材料、溶媒およびドーピング剤等の添加剤により構成されるものである。なお、本発明においては、種類の異なる発光層を複数回にわたりフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることから、複数色の発光層が形成されるものである。以下これらの発光層を構成する材料について説明する。
【0049】
(a)発光材料
本発明に用いられる発光材料としては、蛍光を発する材料を含み発光するものであれば特に限定されない。発光層を形成する材料としては、発光機能と正孔輸送機能や電子輸送機能をかねていることができるが、好ましくは発光層を形成する材料が、後述するフォトレジスト溶媒、フォトレジスト現像液、およびフォトレジスト層を剥離する際に用いるフォトレジスト剥離液に不溶である材料である。また、この場合は、発光層をフォトリソグラフィー法によりパターニングする際に用いるフォトレジストが、発光層の形成に用いる溶媒に不溶の材料を用いることが好ましい。
【0050】
このような発光材料としては、色素系材料、金属錯体系材料、および高分子系材料を挙げることができる。
【0051】
(i)色素系材料
色素系材料としては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0052】
(ii)金属錯体系材料
金属錯体系材料としては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。
【0053】
(iii)高分子系材料
高分子系の材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体、金属錯体系発光材料を高分子化したもの等を挙げることができる。
【0054】
(b)ドーピング材料
発光層中に発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的でドーピングを行うことができる。このドーピング材料としては例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィレン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等を挙げることができ。
【0055】
(c)発光層形成用溶媒
発光層形成用の溶媒は、電荷注入層と用いる場合、発光層の成膜の際に電荷注入層と発光層材料が混合や溶解することを防ぎ、発光材料本来の発光特性を保つために電荷注入層を溶解しないことが望ましい。
【0056】
このような観点から、発光層形成用溶媒は電荷注入層材料に対する溶解度が25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましい。
【0057】
さらに発光層形成用溶媒は、2色目以降の発光層成膜の際に、フォトレジスト層と発光層材料が混合や溶解することを防ぎ、さらに、すでにパターニングされている発光層を保護するためにフォトレジストを溶解しないことが望ましい。
【0058】
このような観点から、発光層形成用溶媒はフォトレジストに対する溶解度が25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましい。例えば、電荷注入層が水系やDMF、DMSO、アルコール等の極性溶媒に溶解し、フォトレジストが一般的なノボラック系ポジレジストの場合、ベンゼン、トルエン、キシレンの各異性体およびそれらの混合物、メシチレン、テトラリン、p−シメン、クメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ブチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンの各異性体およびそれらの混合物等をはじめとする芳香族系溶媒、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、2−ブタノン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジグライム等をはじめとするエーテル系溶媒、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1−クロロナフタレン等のクロル系溶媒、シクロヘキサノン等が挙げられるが、この他でも条件を満たす溶媒であれば使用可能であり、2種以上の混合溶媒であっても良い。
【0059】
(3)電極層
本発明においては、電極層は通常EL素子に用いられるものであれば限定されず基板に先に設ける電極層を第1電極層、発光層および電荷注入層等の有機EL層形成後に設ける電極層を第2電極層と呼ぶことがある。これらの電極層は、陽極と陰極からなり、陽極と陰極のどちらか一方が、透明または、半透明であり、陽極としては、正孔が注入し易いように仕事関数の大きい導電性材料が好ましい。また、複数の材料を混合させてもよい。いずれの電極層も、抵抗はできるだけ小さいものが好ましく、一般には、金属材料が用いられるが、有機物あるいは無機化合物を用いてもよい。
【0060】
好ましい陽極材料としては、例えば、ITO、酸化イソジウム、金が挙げられる。好ましい陰極材料としては、例えばマグネシウム合金(MgAg他)、アルミニウム合金(AlLi、AlCa、AlMg他)、金属カルシウムおよび仕事関数の小さい金属が挙げられる。
【0061】
(4)基板
本発明に用いることができる基板としては、特に限定されるものではなく、通常EL素子に用いられているガラス等の基板であれば用いることができる。
【0062】
B.フォトレジスト層形成工程
本発明におけるフォトレジスト層形成工程とは、上記発光層上にフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成し、これをパターン露光した後、現像することにより、発光部が形成される領域にフォトレジスト層を形成する工程である。
【0063】
具体的に3色の発光層を有するEL素子を製造する際には、図1に示すように第1フォトレジスト層形成工程、第2フォトレジスト層形成工程、第3フォトレジスト層形成工程の各工程を示すものである。
【0064】
以下、フォトレジストを構成する材料およびフォトレジストをパターニングする際に用いるフォトレジスト現像液について説明する。
【0065】
(1)フォトレジスト
本発明において用いることができるフォトレジストは、ポジ型であってもネガ型であっても特に限定されるものではないが、発光層の形成に用いる溶媒に不溶であるものが好ましい。
【0066】
具体的に用いることができるフォトレジストとしては、ノボラック樹脂系、ゴム+ビスアジド系等を挙げることができる。
【0067】
(2)フォトレジスト溶媒
本発明においてフォトレジスト溶媒は、フォトレジスト層を成膜する際に、フォトレジストを溶解させ塗布する際に用いられる。このようなフォトレジスト溶媒としては、フォトレジスト層を成膜する際に発光層とフォトレジスト材料が混合や溶解することを防ぎ、本来の発光特性を保つために発光層を構成する材料が溶解しないものを用いることが望ましい。この点を考慮すると、本発明に用いることができるフォトレジスト溶媒としては、発光層の材料に対する溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましい。
【0068】
さらに、電荷注入層がバッファー層である場合には、バッファー層形成材料が水系の溶媒に溶解し、発光層が芳香族系等の無極性有機溶媒に溶解する場合に用いることができるフォトレジスト溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトンをはじめとするケトン類、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、をはじめとするセロソルブアセテート類、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルをはじめとするセロソルブ類、メタノール、エタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、シクロヘキサノールをはじめとするアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、シクロヘキサン、デカリン等が挙げられるが、この他でも条件を満たす溶媒であれば使用可能であり、2種以上の混合溶媒であっても良い。
【0069】
(3)フォトレジスト現像液
本発明においてフォトレジスト現像液は、フォトレジスト層をパターン状に形成する際に用いられるものである。このようなフォトレジスト現像液としては、上記発光層を構成する材料を溶解するものでなければ特に限定されるものではない。具体的には、一般的に使用されている有機アルカリ系現像液を使用できるが、そのほかに、無機アルカリ、またはレジストの現像が可能な水溶液を使用することができる。フォトレジスト層の現像を行った後は水で洗浄するのが望ましい。
【0070】
本発明に用いることができる現像液としては、発光層を構成する材料に対する溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g現像液)以下の現像液であることが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g現像液)以下の現像液を選択することである。
【0071】
C.エッチング工程
本発明におけるエッチング工程とは、パターン状に形成されたフォトレジスト層をマスクとしてドライエッチング法を用いてエッチングを行い、フォトレジスト層が形成されていない領域の発光層を除去することにより、表面にフォトレジスト層を有する発光部を形成する工程である。
【0072】
本発明においては、本工程でのドライエッチング法によるエッチング量を制御しながら行うことにより、エッチングの対象物を選択できるようにしたことを特徴とするものである。従って、本発明のドライエッチング法によれば、発光層のみがパターン状にエッチングされ、その下に位置する電荷注入層は、ドライエッチングにより除去されることが回避されるのである。よって、従来では、各発光層のパターニングごとに発光層と同時に成膜されてエッチングされていた電荷注入層を、一度成膜した後は、同一のものを使用することが可能となり、製造効率上有利であると共に、材料面においても無駄を少なくすることができるという利点を有する。
【0073】
具体的に3色の発光部を有するEL素子の製造方法においては、図1に示すように、第1エッチング工程、第2エッチング工程が該当する。複数の発光層を有するEL素子の場合に、最後の発光層をエッチングする工程、例えば、第3エッチング工程では、従来のように、発光層と共に電荷注入層をエッチングしても構わない。これにより電荷注入層をパターン状に形成することができるからである。一方、電荷注入層をパターン状に形成しないような場合には、第3エッチング工程においても、エッチング量を制御しながらドライエッチングを行う本工程としてもよい。
【0074】
このような利点を有する本発明のドライエッチング法としては、エッチング量を制御することにより、発光層のみをエッチングすることができる方法であれば特に限定されない。具体的には、発光層の膜厚およびエッチング速度の関係を予め計測することにより、時間制御によってエッチング量を制御する方法や、発光層から発せられる蛍光の蛍光強度を測定し、その蛍光強度の経時的な変化に応じてエッチング量を制御する方法等が挙げられる。この中でも、本発明においては、後者の方法であることが好ましい。
【0075】
後者の方法は蛍光強度に基づいてドライエッチング法を制御する方法である。この方法は、発光層から発生する蛍光の蛍光強度が、発光層の残存量に応じて変化することを利用している。すなわち、ドライエッチング法によるエッチングの進行に伴い、経時的に蛍光強度は変化し、最終的に発光層のみがエッチングされた時点では、ある一定の数値の蛍光強度を示すことになる。そこで、予め、このような蛍光強度の数値を特定しておき、そのような数値が計測された時点でエッチングを終了することにより、発光層のみを除去することが可能となるのである。
【0076】
さらに、本発明に用いられるドライエッチング法としては、ドライエッチングが、反応性イオンエッチングであることが好ましい。反応性イオンエッチングを用いることにより、発光層が化学的に反応を受け、分子量の小さい化合物となることにより、気化・蒸発して基板上から除去することができ、エッチング精度の高い、短時間の加工が可能となるからである。
【0077】
さらに、本発明においては上記ドライエッチング法において、大気圧プラズマを用いることが好ましい。大気圧プラズマを用いることで、通常真空装置が必要であるドライエッチングが大気圧下で行なうことができ、処理時間の短縮、およびコストの低減が可能となるからである。
【0078】
このようなドライエッチング法において用いる反応性ガスとしては、一般的に用いられている反応性ガスを使用することが可能である。しかしながら、本発明においては、発光層から発せられる蛍光の蛍光強度を測定しながら、ドライエッチング法によりエッチングするため、プラズマにより紫外光を発生する反応性ガスを用いることが好ましい。このような反応性ガスとしては、酸素単体または酸素を含むガス等を挙げることができる。このような反応性ガスを用いることにより、エッチングの際に、別に紫外光を照射しなくともよいからである。
【0079】
II.ドライエッチング装置
次に、本発明のドライエッチング装置について説明する。
【0080】
本発明のドライエッチング装置は、蛍光を発光する蛍光発光層をドライエッチングするためのドライエッチング装置において、上記蛍光発光層をドライエッチングするドライエッチング手段と、上記ドライエッチングされる蛍光発光層からの蛍光の強度を検出する検出手段と、上記検出手段からの信号に基づいて上記ドライエッチング手段のドライエッチング量を制御する制御手段とを有することを特徴とするものである。
【0081】
ここで、本発明における「蛍光発光層」とは、紫外光等を照射することにより蛍光を発する発光層を意味し、具体的には、EL素子の発光層等が挙げられる。
【0082】
このような手段を有するドライエッチング装置により、蛍光発光層をエッチングすると、蛍光発光層から発せられる蛍光強度を測定しながらドライエッチングを行うことが可能となる。従って、エッチングの進行に伴い経時的に変化する蛍光強度に応じてドライエッチング手段を制御することができるため、蛍光発光層のみをエッチングすることができるのである。
【0083】
以下、このような本発明のドライエッチング装置について各手段ごとに説明する。
【0084】
A.ドライエッチング手段
本発明におけるドライエッチング手段としては、通常用いられているドライエッチング装置を用いることが可能である。その中でも、反応性イオンエッチングによりエッチングを行うドライエッチング装置であることが好ましい。反応性イオンエッチングを用いることにより、蛍光発光層が化学的に反応を受け、分子量の小さい化合物となることにより、気化・蒸発して基板上から除去することができ、エッチング精度の高い、短時間の加工が可能となるからである。
【0085】
さらに、本発明においては、大気圧プラズマを用いるドライエッチング装置であることが好ましい。大気圧プラズマを用いることで、通常真空装置が必要であるドライエッチングが大気圧下で行なうことができ、処理時間の短縮、およびコストの低減が可能である。
【0086】
また、本発明におけるドライエッチング手段に使用する反応性ガスとしては、一般的に用いられているものを使用することが可能である。しかしながら、本発明においては、発光層から発する蛍光の蛍光強度を測定しながらドライエッチング手段によりエッチングを行うため、プラズマにより紫外光を発生する反応性ガスを用いることが好ましい。具体的には、酸素単体または酸素を含むガス等を挙げることができる。すなわち、このようなガスを反応性ガスとして用いることにより、ドライエッチングの際、紫外光を照射する手段を別に設けなくとも発光層から蛍光を発生させることが可能となるからである。
【0087】
B.検出手段
本発明における検出手段とは、ドライエッチングされる蛍光発光層からの蛍光の強度を検出する手段である。このような検出手段としては、発光層から発生する蛍光を検出することが可能な手段であれば特に限定はされない。具体的に本発明においては、蛍光を受光する受光手段であることが好ましい。蛍光を受光して検出する手段とすることにより、速やかに蛍光の強度の変化を測定することができるからである。
【0088】
また、上記ドライエッチング手段における反応性ガスが、プラズマにより紫外光を発生しないものである場合には、紫外光を照射する手段を別に設けることにより、発光層から蛍光を発生させることが可能である。
【0089】
C.制御手段
本発明における制御手段とは、上記検出手段からの信号に基づいて上記ドライエッチング手段のドライエッチング量を制御する手段である。
【0090】
このような制御手段としては、発光層から発生する蛍光の蛍光強度に応じてドライエッチング手段を制御することができる手段であれば特に限定されない。具体的には、上記検出手段により検出された蛍光の強度により、その変化に応じてドライエッチング手段を制御することにより蛍光発光層のみがエッチングされた時点でドライエッチングを停止させる手段等である。
【0091】
このような各手段を有するドライエッチング装置の一例を図示したものが図2である。すなわち、ドライエッチング手段10を有するチャンバー11と、前記チャンバー11内に設置された基板12をドライエッチング手段10によりエッチングする際に、基板12上に成膜されている蛍光発光層から発せられる蛍光を検出する受光手段13と、受光手段13により受光された蛍光の蛍光強度を算出し、その蛍光強度の変化に応じてドライエッチング手段10を制御する制御手段14とを示している。
【0092】
III.EL素子の製造装置
本発明のEL素子の製造装置は、上記ドライエッチング装置を有し、かつ上記ドライエッチング装置により発光層をエッチングすることを特徴とするものである。
【0093】
上記ドライエッチング装置は、蛍光を発する種々の蛍光発光層を有する素子等を製造する際において、蛍光発光層のみのエッチングを可能とするが、中でも、EL素子の発光層をドライエッチングによりエッチングする際に用いることが可能である。
【0094】
上記ドライエッチング装置をEL素子の発光層のエッチングに使用することにより、発光層の下に形成されている電荷注入層は除去されることなく、発光層のみをパターン状にエッチングすることができるのである。従って、従来、複数の発光層を有するEL素子を製造する際に、各発光層のパターニングごとに成膜し、エッチングしていた電荷注入層を、一度成膜した後は、同一のもの使用することが可能となり、製造効率を向上させると共に、材料的にも無駄を少なくすることができるのである。
【0095】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0096】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明する。
【0097】
(1色目の有機EL層の作製)
透明ガラス基板上に第1電極層として酸化インジウム錫(ITO)が形成されたガラス基板上に、正孔注入層塗布液(ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート:PEDT/PSS、バイエル社製Baytron P)をスピンコーティングにより全面に塗布、乾燥させ膜厚1500Åの第1正孔注入層を形成した。
【0098】
次に、第1発光層として、ポリパラフェニレンビニレン誘導体MEH−PPVの1wt%キシレン溶液を作製し、第1正孔注入層上にスピンコーティング法により全面に塗布、乾燥させて膜厚1000Åの第1発光層を成膜し、有機EL層を形成した。
【0099】
(1色目のフォトレジスト層の作製)
次に、第1発光層上にポジ型フォトレジスト(東京応化社製:OFPR−800)をスピンコーティング法により全面に塗布、乾燥させ膜厚1μmの第1フォトレジスト層を形成した。
【0100】
(1色目のパターニング)
次に、第1発光部に該当する部分が遮光部となるように作製されたフォトマスク(ライン幅(遮光部):85μm、スペース幅(透過部)215μm)を用いてアライメント露光機により紫外線照射を行った後、フォトレジスト現像液(東京応化社製:NMD−3)により露光部のフォトレジスト層を除去した。その後、スペクトル強度を計測しながら、酸素プラズマ装置によりドライエッチングを行った。この際、発光層が形成されていない基板のスペクトル強度を予め測定しておき、このスペクトル強度との差が15以下になったところでエッチングを停止した。次いで、フォトレジスト層が除去された部分の有機EL層の膜厚測定を行ったところ、発光層は完全に除去され、正孔注入層の膜厚は1400Åであった。
【0101】
(2色目有機EL層の形成)
残存したフォトレジスト層を剥離することなく第2発光層、さらにフォトレジスト層をウェットプロセスにより形成した。
【0102】
(2色目パターニング)
次に、上記フォトマスクを用いて1色目露光時と比較して、1ピッチ分(100μm)基板を横にずらし紫外線露光を行った後、フォトレジスト現像液(東京応化社製:NMD−3)により露光部のフォトレジスト層を除去した。その後、蛍光強度を計測しながら酸素プラズマ装置によりドライエッチングを行い、1色目の発光層のパターニングと同様に、差スペクトル強度が15以下になったところでエッチングを停止した。フォトレジスト層が除去された部分の有機EL層の膜厚測定を行ったところ、第2発光層は完全に除去され、正孔注入層の膜厚は1300Åであった。
【0103】
(3色目有機EL層の形成)
第1発光層および第2発光層上に残存するフォトレジスト層を剥離することなく第3発光層を形成し、さらに、第3発光層上にフォトレジスト層をウェットプロセスにより形成した。
【0104】
(3色目パターニング)
次に、上記フォトマスクを用いて2色目露光時と比較して、1ピッチ分(100μm)基板を横にずらし紫外線露光を行った後、フォトレジスト現像液(東京応化社製:NMD−3)により露光部のフォトレジスト層を除去した。その後、蛍光強度を計測しながら酸素プラズマ装置によりドライエッチングを行い、差スペクトル強度が15以下になったところから、さらに60秒間エッチングを行いエッチングを停止した。有機EL層の膜厚測定を行ったところ、画素間の有機EL層は完全に除去された。
【0105】
(フォトレジスト層剥離)
パターニング終了後、残ったフォトレジスト層をレジスト溶媒に室温で10分間浸漬し、フォトレジスト層だけを完全に除去し、ライン幅85μm、スペース幅15μmでパターニングされた有機EL層が形成された基板を得た。
【0106】
(評価)
パターニング終了後、直ちにフォトレジスト層を剥離し、さらに金属電極の形成を連続して行った。金属電極としては、カルシウムを1000Åの厚さで蒸着し、さらに、酸化保護膜として銀を2000Åの厚さで蒸着した。ITO電極側を正極、金属電極側を負極に接続し、ソースメーターにより直流電流を印可した。印可電圧が10V前後において波長580nmの発光が観察された。また、顕微鏡観察により発光部を観察したところ、幅85μmのラインが均一に発光していることを確認した。
【0107】
【発明の効果】
本発明によれば、ドライエッチング法により発光層をパターン状に除去する際、エッチング量を制御することにより、発光層の下に形成されている電荷注入層を除去することなく発光層のみをエッチングすることを可能とするものである。従って、従来、フルカラーのEL素子を製造する際には、各発光層のパターニングごとに電荷注入層を成膜し直していたが、本発明では、そのような複数回の成膜工程が一度で済むことから、製造効率上有利であるばかりでなく、材料面においても無駄を少なくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のEL素子の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明のドライエッチング装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 … 基板
2 … 電極層
3 … 電荷注入層
4 … 第1発光層
4' … 第1発光部
5 … 第1フォトレジスト層
5' … 第2フォトレジスト層
5'' … 第3フォトレジスト層
6 … マスク
7 … 紫外線
8 … 第2発光層
8' … 第2発光部
9 … 第3発光層
9' … 第3発光部

Claims (9)

  1. 電荷注入層上に発光層が形成され、前記発光層表面の発光部が形成される位置にフォトレジスト層がパターン状に形成された状態で、前記フォトレジスト層が形成されていない領域の発光層をドライエッチング法により除去することにより表面にフォトレジスト層を有する発光部を形成する工程と、
    前記発光部が形成された前記電荷注入層上に、前記発光層とは種類の異なる他の発光層をさらに形成する工程と、
    を有するエレクトロルミネッセント素子の製造方法において、
    前記ドライエッチング法によるエッチング量を制御することにより、前記フォトレジスト層が形成されていない位置の前記電荷注入層を残した状態で表面にフォトレジスト層を有する発光部を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  2. 基板と、前記基板上にパターン状に形成された電極層と、前記基板および前記電極層上に形成された電荷注入層とを少なくとも有する中間基板上に、発光層形成用塗工液を塗布して発光層を形成する発光層形成工程と、
    前記発光層上にフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成し、これをパターン露光した後、現像することにより、発光部が形成される領域にフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、
    前記フォトレジスト層がパターン状に形成された状態でドライエッチング法を用いてエッチングを行い、フォトレジスト層が形成されていない領域の発光層を除去することにより、表面にフォトレジスト層を有する発光部を形成するエッチング工程と、
    前記発光部が形成された前記電荷注入層上に、前記発光層とは種類の異なる他の発光層をさらに形成する他の発光層形成工程と、
    を有するエレクトロルミネッセント素子の製造方法において、
    前記エッチング工程では、ドライエッチング法によるエッチング量を制御することにより、前記フォトレジスト層が形成されていない位置の前記電荷注入層を残した状態で表面にフォトレジスト層を有する発光部を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  3. 前記ドライエッチング法によるエッチング量の制御が、ドライエッチングされる発光層の蛍光強度を検出し、検出された発光層の蛍光強度に基づいて行なわれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  4. 前記ドライエッチング法が、大気圧プラズマを用いる方法であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  5. 前記電荷注入層が、バッファー層であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  6. 前記電荷注入層が、当該電荷注入層の膜厚の変化によるエレクトロルミネッセント素子の発光特性の変化の少ない層であり、前記電荷注入層を形成する材料が、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネートであることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のエレクトロルミネセント素子の製造方法。
  7. 蛍光を発光する蛍光発光層をドライエッチングするためのドライエッチング装置において、
    前記蛍光発光層をドライエッチングするドライエッチング手段と、
    前記ドライエッチングされる蛍光発光層からの蛍光の強度を検出する検出手段と、
    前記検出手段からの信号に基づいて前記ドライエッチング手段のドライエッチング量を制御する制御手段と、
    を有することを特徴とするドライエッチング装置。
  8. 前記ドライエッチング手段が、大気圧プラズマを用いるものであることを特徴とする請求項7に記載のドライエッチング装置。
  9. 請求項7または請求項8に記載のドライエッチング装置を有し、かつ前記ドライエッチング装置により発光層をエッチングすることを特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造装置。
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