JP3832785B2 - 着色顔料含有ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、着色顔料含有ポリエステルフィルムおよび各種家具類や建材、住宅機器等の表面材として装飾あるいは表面保護等の目的で貼着される化粧板または化粧シートに用いるポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の化粧板は、基材と柄印刷層との間に塩化ビニル樹脂シートが配した構成のものであった。しかしながら、塩化ビニル樹脂シートを合板、パーティクルボード、鋼板等の基材に接着した場合には、可塑剤が接着剤層に移行し、接着不良の原因になるとか、熱寸法安定性が悪く、熱による伸縮が生じシワの発生原因になるなどの問題がある。さらに近年、塩化ビニル樹脂シートは焼却時に塩素が発生し、酸性雨やダイオキシン発生の要因になるとも言われており、環境問題の観点からも塩化ビニル樹脂シートを使用しない化粧板に対する要望が強まっている。
【0003】
このような塩化ビニル樹脂シートの有する欠点を克服する材料として、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂などが候補として挙げられている。
ところで化粧板は、例えば、家具、建材、住宅機器等の表面材として使用されるため、その表面には、高意匠の絵柄模様が通常施される。そのため、絵柄のコントラストや陰影の微妙なコントラストを出すために色調管理が極めて重要である。
【0004】
一方、化粧板に用いられていた塩化ビニルや紙等は、元来その製造コストが低いため、家具や建材、住宅機器などの表面材として広く用いられるためには、安価に製造する技術が求められている。
ポリエステルフィルムを安価に製造するために、再生原料を使用することが通常行われているが、着色顔料を含有するポリエステルフィルムを再生して得られたポリエステルは、再生工程において色調が大幅に変化するため、再生ポリエステルを配合したポリエステルフィルムの色調もまた再生ポリエステルの配合量によって大きく変動し、実質的に配合することが困難である等の問題が生じている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実状に鑑みなされたもので、その解決課題は、原料コスト上の利点を有し、しかも色調が一定である着色顔料含有ポリエステルフィルムおよび化粧板または化粧シート用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、再生ポリエステルと新規ポリエステルとの使用割合を特定の範囲とし、かつ、有機系顔料の含有量および色度を特定範囲とすることによれば、上記課題が容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、着色顔料含有ポリエステルフィルムから得られる再生ポリエステル3〜70重量%とバージンポリエステル30〜97重量%とから構成されるフィルムであって、有機系着色顔料の含有量が10%未満であり、フィルム表面のb値が−5以上であり、且つ、下記式(1)で定義される色差が5.0以下であることを特徴とする化粧板または化粧シート用着色顔料含有二軸延伸ポリエステルフィルムに存する。
【0007】
【数1】
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の着色顔料を含有するポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸成分と、グリコール成分とからなるポリエステルを指し、特に繰り返し単位の80%以上がエチレンテレフタレート単位またはエチレン−2,6−ナフタレート単位または1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート単位を有するポリエステルが好適である。また、かかるポリエステルは他の第三成分が共重合されていてもよい。芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸以外に、例えば、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシエトキシ安息香酸等)等を用いることができる。グリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノール以外に、例えば、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の一種または二種以上を用いることができる。いずれにしても、本発明のポリエステルとは繰り返し単位の80%以上がエチレンテレフタレート単位またはエチレン−2,6−ナフタレン単位を有するポリエステルを指す。
【0009】
本発明の着色顔料含有ポリエステルフィルムは、原料コスト面での利点およびフィルム製造工程などから排出されるスクラップの処理量を減じるという環境への配慮から、原料ポリエステルとして、再生ポリエステルと新規ポリエステルとを使用する。
そして、上記の再生ポリエステルとして、着色顔料を含有するポリエステルフィルムの製造工程から排出される耳部フィルムなどが使用される。
【0010】
上記の着色顔料含有ポリエステルフィルムにおける、着色顔料として、まず、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の粒子が例示される。これらの粒子は、ポリエステル中での分散性や、化粧板または化粧シートの耐候性を向上させるため、アルミニウム、ケイ素、亜鉛などの酸化物等で表面処理されたものであってもよい。これら以外の無機系顔料としては、亜鉛華、鉛白、ベンガラ、カドミウム赤、黄鉛、コバルト青、コバルト紫、ジンククロメート等が例示される。また、フタロシアニン系、ジオキサジン系、アントラキノン系などの有機系顔料も使用できる。
【0011】
上記の顔料は、2種類以上含有させることもでき、その場合、少なくとも二酸化チタンを含有させることが好ましい。上記の顔料の平均粒径は、通常5.0μm以下、好ましくは0.01〜4.0μmの範囲から選択する。平均粒径が5.0μmを超える場合は、フィルムの表面が粗面化しすぎて印刷面の品質が低下したり、顔料がポリエステルフィルム表面から脱落しやすくなる傾向がある。
【0012】
顔料の含有量は、ポリエステルに対し、通常、0.1〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%とする。含有量が0.1未満の場合は、フィルム全体の隠蔽度が減少し、本来の顔料の色調が表現できなくなる場合がある。 30重量%を超える場合は、顔料がフィルム中で凝集して粗大突起を形成したり、フィルム強度が低下したりするため好ましくない。
【0013】
本発明の着色顔料含有ポリエステルフィルムは、有機系顔料の含有量が10重量%未満である。有機系顔料の含有量が10重量%以上であると、フィルムを再生ポリエステルチップとする際に、過乾燥や溶融押出の工程にて、有機系顔料の熱分解や熱劣化、特に昇華性のある顔料を用いると昇華による顔料の減量などが生じ、色調が大きく変化するため問題となる。有機系顔料の含有量は、好ましくは7重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満である。
【0014】
本発明において、顔料はポリエステルの重合反応中に添加してもよく、重合後、例えば二軸押出機を用いて顔料を混練・分散してマスターバッチとし、これを所定量配合してポリエステルフィルム中に含有させるなどの方法を採用することができる。
顔料の含有量を調節する方法としては、上記した方法で高濃度に顔料を含有するマスター原料を調製し、実質的に顔料を含有しない原料でマスター原料を希釈して顔料含有量を調節する方法が有効である。
【0015】
なお顔料は、必要に応じ、事前に解砕、分散、分級、濾過などの処理を施しておいてもよい。
本発明の着色顔料含有ポリエステルフィルムの色調をb値は−5以上である。本発明の着色顔料含有ポリエステルフィルムは、例えば、化粧シートまたは化粧板のベースフィルムとして好適に用いることができ、化粧シートまたは化粧板の表面印刷の色調に類似の色調を有することが望ましい。例えば、木目調印刷などを施した建材用化粧シートまたは化粧板へ用いられる場合、木目調印刷のb値は通常0以上であるから、ポリエステルフィルムのb値は−5以上とする必要があり、さらには0以上、特には20以上が好ましい。この場合、b値が−5未満では、ポリエステルの色調と化粧シートまたは化粧板の色調とが大きく異なるため、例えば化粧シートの表面に擦過による傷が入り、印刷層を破壊し、さらにはベースである着色顔料含有ポリエステルフィルムにまで達すると、傷部の色調と他の性状な部分の色調の差が大きくなるため、問題となる。
【0016】
本発明において、着色顔料含有ポリエステルフィルムから再生された原料の使用量は、全ポリエステルの合計量に対する割合として、3〜70重量%、好ましくは、5〜60重量%、さらに好ましくは10〜50重量%である。再生原料の使用量が3重量%未満の場合は、原料コストを減じる効果が乏しく、使用量が70重量%を超える場合は、色調調整が困難となる。なお、本発明において、再生原料とする着色顔料含有ポリエステルフィルムは、本発明のフィルムであっても、別種の着色顔料含有ポリエステルフィルムであってもよい。
【0017】
上記再生原料は、着色顔料含有ポリエステルフィルムの製造において、押出時の溶融シートのネックイン現象により厚化したり、クリップの噛み代として使用されるため、製品とはならず切断分離された部分から製造される。
通常、切断分離された部分のフィルムを粉砕し、これを乾燥したのち、単軸押出機にてストランド状に溶融押出した後、水中で冷却固化し、カッターにて切り取り、ペレット状に成型される。
【0018】
上記乾燥工程において、乾燥温度は100〜200℃、好ましくは130〜190℃、さらに好ましくは140〜185℃とする。乾燥温度が低いと含水率が低下せず、フィルム製造工程において新規原料と共に溶融押出した際、ポリエステルの加水分解により分子量が低下する。一方、乾燥温度が高すぎると、特に有機系着色顔料が昇華し、結果として着色顔料の含有量が変動することとなり、再生ポリエステルの色調変化が大きくなる傾向がある。
【0019】
本発明のフィルムは、下記式▲1▼で定義される色差が5.0以下、さらには4以下、特には3以下であることが好ましい。色差が大きいと、再生ポリエステルを含有しない初期のフィルムの色調と大きく異なる結果となる場合がある。
【0020】
【数2】
色差=((L−Lr)2 +(a−ar)2 +(b−br)2 )1/2 …▲1▼
(上記式中、L、aおよびbは再生ポリエステルとバージンポリエステルとから構成されるフィルムの色調であり、Lr、arおよびbrは再生ポリエステルの原料となる着色顔料含有ポリエステルフィルムの色調である)
【0021】
本発明の着色顔料含有ポリエステルフィルムの製造は、以下のようにして行うことができる。
すなわち、フィルム状に溶融押出された溶融シートを、回転冷却ドラム上で急冷固化して非晶質シートとし、このシートをまず70〜150℃、好ましくは75〜130℃の延伸温度にて2.0倍〜7.0倍、好ましくは2.4倍〜6倍の延伸倍率にて、前記非晶質シートを一方向(縦方向)に延伸する。かかる延伸には、ロールまたはテンター方式の延伸機を使用することができる。次いで、通常、70〜150℃、好ましくは80〜140℃の延伸温度にて、通常3.0〜6倍の延伸倍率にて、縦方向と直角方向(横方向)に延伸を行い、二軸延伸フィルムを得る。引き続き、110〜250℃にて、30%以内の伸張または弛緩または定長化で1秒〜5分間の熱処理を行い、寸法安定性を向上させる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法は以下に示すとおりである。また、実施例中および比較例中の成分比の「部」は全て「重量部」を示す。
(1)色調
カラーアナライザー(東京電色(株)製「TC−1800MKII型」)を使用し、JIS Z8722の方法に準じ、フィルムの色調(L、a、b)を測定し、L、a、b値をもって、色調の比較を行った。
【0023】
(2)ポリエステルのIV (dl/g)
ポリエステルに非相溶は他のポリマー成分および粒子を除去したポリエステル1gに対し、フェノール/テトラクロロエタン:50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(3)総合評価
色調変化が小さくかつコスト的に有利な場合を○、特に特性も優れる場合を◎、 色調変化またはコストのどちらかが不利な場合を×とした。
【0024】
実施例1
IVが0.65で、実質的に粒子を含有しないバージンポリエステルAに、平均粒径0.3μmのルチル型二酸化チタンを41%、平均粒径0.5μmの亜鉄酸亜鉛(ZnO・Fe2 O3 )を18%、平均粒径0.01μmのカーボンブラックを0.05%、ベント付き二軸押出機で混練・分散し、マスターバッチペレットBを作成した。
【0025】
これとは別に、ポリエステルAに、平均粒径3.5μmのシリカを3%、ベント付き二軸押出機で混練・分散し、マスターバッチペレットCを作成した。
ポリエステルAを66%、マスターバッチペレットBを16%、マスターバッチペレットCを18%それぞれ配合した後、180℃で2時間、乾燥し、単軸押出機を用いてフィルム状に溶融押出し、30℃の回転冷却ドラム上で成型して非晶質シートを得た。この際、静電密着法を採用した。引き続き、縦方向に83℃で、2.8倍、115℃にて4.0倍、熱固定温度を210℃として3.5秒間熱処理し、着色顔料含有ポリエステルフィルムDを得た。
【0026】
次に、ポリエステルフィルムDを粉砕処理した後、φ3mmのスクリーンを通過したフラフを180℃2時間乾燥後、単軸押出機を用いてストランド状に溶融押出し、水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、再生ポリエステルチップEを得た。
再生ポリエステルチップEを30%、ポリエステルAを46.2%、マスターバッチペレットBを11.2%、マスターバッチペレットCを12.6%、それぞれ配合した後、180℃で2時間乾燥した後単軸押出機でフィルム状に溶融押出し、上記と同様に二軸延伸および熱処理を施し、着色顔料含有ポリエステルフィルムFを得た。ポリエステルフィルムF中には、有機系顔料は含まれない。
得られた着色顔料含有ポリエステルフィルムの物性を下記表1に示す。色調の差はほとんど認められず、良好であった。
【0027】
実施例2
平均粒径0.3μmのルチル型二酸化チタンを60%、平均粒径0.01μmのカーボンブラックを0.1%とし、アントラキノンを3.7%、および平均粒径0.2μmの酸化鉄(Fe2 O3 )を1.9%、実施例1に示したポリエステルAに、ベント付き二軸押出機を用いて混練・分散し、マスターバッチペレットGを作成した。
【0028】
ポリエステルAを66.1%、マスターバッチペレットGを15.9%、マスターバッチペレットCを18%それぞれ配合した後、実施例1と同様にして180℃で2時間、乾燥し、単軸押出機を用いてフィルム状に溶融押出し、30℃の回転冷却ドラム上で成型して非晶質シートを得た。引き続き、縦方向に83℃で、2.8倍、115℃にて4.0倍、熱固定温度を210℃として3.5秒間熱処理し、着色顔料含有ポリエステルフィルムHを得た。
【0029】
次に、ポリエステルフィルムHを粉砕処理した後、φ3mmのスクリーンを通過したフラフを180℃で2時間乾燥後、単軸押出機を用いてストランド状に溶融押出し、水中で冷却した後ペレタイザーでカットし、再生ポリエステルチップIを得た。
再生ポリエステルチップIを30%、ポリエステルAを46.3%、マスターバッチペレットG11.1%、マスターバッチペレットCを12.6%、それぞれ配合した後、180℃で2時間乾燥し、単軸押出機でフィルム状に溶融押出し、上記と同様に二軸延伸および熱処理を施し、着色顔料含有ポリエステルフィルムJを得た。
得られた着色顔料含有ポリエステルフィルムの物性を表1に示す。色調の差はやや大きいが、コスト的には有利な着色顔料含有ポリエステルフィルムを得た。
【0030】
比較例1
実施例2において、再生ポリエステルチップEの配合比を75%とする以外は実施例1と同様の方法にて着色顔料含有ポリエステルフィルムKを得たが、色調の差が大きかった。
【0031】
比較例2
実施例1において、再生ポリエステルチップEの配合比を2%とする以外は実施例1と同様の方法にて着色顔料含有ポリエステルフィルムLを作成した。色調変化は極めて小さく良好であったが、再生原料を使用していないため、原料コスト面では不利である。
【0032】
実施例3
実施例1において、再生ポリエステルチップEの配合比を60%とする以外は実施例1ど同様の方法にて着色顔料含有ポリエステルフィルムMを作成した。原料コスト面で有利であり、かつ色調変化は小さく良好であった。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、原料コスト上の利点を有し、しかも色調が一定である着色顔料含有ポリエステルフィルムおよび化粧板または化粧シート用ポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は非常に大きい。
Claims (2)
- 着色顔料含有ポリエステルフィルムから得られる再生ポリエステル3〜70重量%とバージンポリエステル30〜97重量%とから構成されるフィルムであって、有機系着色顔料の含有量が10%未満であり、フィルム表面のb値が−5以上であり、且つ、下記式(1)で定義される色差が5.0以下であることを特徴とする化粧板または化粧シート用着色顔料含有二軸延伸ポリエステルフィルム。
- フィルム表面のb値が20以上である請求項1に記載の化粧板または化粧シート用着色顔料含有二軸延伸ポリエステルフィルム。
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