JP3829619B2 - トーコレクトブッシュおよびそれを用いたサスペンション機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、自動車のサスペンションブッシュの一種であるトーコレクトブッシュとそれを用いたサスペンション機構に係り、特に、トーションビーム式リジットアクスル型のサスペンション機構に用いられて、左右のトレーリングアームのボデー側への取付部位に装着される新規な構造のトーコレクトブッシュと、かかるトーコレクトブッシュを採用することによって実現されるサスペンション機構に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、自動車におけるトーションビーム式リジットアクスル型のサスペンション機構において、トーションビーム(ツイストビームとも言う)で連結された左右のトレーリングアームのボデー側への取付部位に装着されるサスペンションブッシュの一種として、特開平9−104212号公報や特開平11−247914号公報,特開平11−257396号公報,特開2000−74117号公報等に開示されているように、インナ軸金具の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出するインナ側傾斜部を設けると共に、アウタ筒金具の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出し、インナ側傾斜部に対して略平行な対向面で離隔して対向位置するアウタ側傾斜部を形成する一方、それらインナ軸金具とアウタ筒金具の径方向対向面間に本体ゴム弾性体を介在せしめて両金具を弾性連結せしめると共に、インナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間に介装されてそれらを弾性的に連結するコンプレッションゴム弾性体を、かかる本体ゴム弾性体と一体的に形成した構造のトーコレクトブッシュが、知られている。
【0003】
かくの如き構造のトーコレクトブッシュは、その中心軸(インナ軸金具およびアウタ筒金具の中心軸)が車両横方向となり、インナ側およびアウタ側の傾斜部の突出する軸直角方向が車両前後方向となる状態で自動車に装着されることとなり、車両のコーナリング時に及ぼされる横方向荷重に対して、コンプレッションゴム弾性体の分力作用が発揮されて、サスペンション部材の車両前後方向での変位量が抑えられることにより、横力ステアによるオーバステアを防止乃至は軽減せしめて車両の走行安定性を向上せしめることが可能となる。
【0004】
ところで、従来構造のトーコレクトブッシュでは、前記公報等にも記載されているように、コンプレッションゴム弾性体が、インナ軸金具に対する車両前後方向の一方の側だけに配設されていることから、ブレーキング時等の車両後方に向かう荷重入力時と、段差乗越時等の車両前方に向かう荷重入力時では、かかるコンプレッションゴム弾性体が、それらの何れか一方の荷重入力時には主に圧縮変形せしめられる一方、それらの他方の荷重入力時には主に引張変形せしめられることとなる。
【0005】
そのために、入力荷重が小さい領域では、車両の前後方向の何れの入力荷重に対しても略同じ線形の荷重−撓み特性が発揮され得るが、過大な荷重入力時には、コンプレッションゴム弾性体が圧縮変形せしめられる側に対して、コンプレッションゴム弾性体が引張変形せしめられる側の方が撓み量が大きくなってしまうという問題があった。そして、コンプレッションゴム弾性体の引張変形量が大きくなることによって、亀裂等が発生するおそれがあり、耐久性に悪影響が及ぼされるおそれがあったのである。
【0006】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、車両の前後方向の入力荷重に対して、入力荷重が小さい領域での線形的な荷重−撓み特性を確保しつつ、過大な荷重入力時におけるコンプレッションゴム弾性体の引張変形量を緩衝的に制限して、耐久性を向上させることの出来る、新規な構造のトーコレクトブッシュと、それを用いた新規な構造のサスペンション機構を提供することにある。
【0007】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0008】
すなわち、本発明の第一の態様は、インナ軸部材と、その外方に離隔配置されたアウタ筒部材を、それらの径方向対向面間に介装された本体ゴム弾性体で連結すると共に、該インナ軸部材の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出するインナ側傾斜部を設ける一方、アウタ筒部材の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出し、該インナ側傾斜部に対して離隔して対向位置せしめられるアウタ側傾斜部を設けて、それらインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間にコンプレッションゴム弾性体を介在せしめたトーコレクトブッシュにおいて、前記インナ側傾斜部の突出方向となる径方向で前記インナ軸部材を挟んだ両側に位置して、該インナ軸部材と前記アウタ筒部材の間を軸方向に延びる第一のスリットと第二のスリットを設けると共に、それら第一のスリットと第二のスリットにおいて、それぞれ、インナ軸部材側とアウタ筒部材側の少なくとも何れか一方の側から他方の側に向かって突出して該他方の側に対して所定距離を隔てて対向位置するストッパゴムを形成し、且つ該インナ軸部材に対してインナ側傾斜部の突出方向側に位置せしめられた該第一のスリットのストッパゴムのボリュームよりも、該インナ軸部材に対してインナ側傾斜部の突出方向と反対側に位置せしめられた該第二のスリットのストッパゴムのボリュームを大きくすると共に、該第一のスリットよりも該第二のスリットを、該インナ軸周りの周方向で大きな幅寸法とすると共に、該第一のスリットに形成されたストッパゴムの周方向幅寸法よりも該第二のスリットに形成されたストッパゴムの周方向幅寸法を大きくして、更に、該インナ側傾斜部の突出方向に直交する径方向で該インナ軸部材を挟んだ両側に位置して、該インナ軸部材と該アウタ筒部材の間を軸方向に延びる一対の第三のスリットを設けると共に、それら第三のスリットを、該インナ軸部材の周方向で、該第二のスリットよりも該第一のスリット側に偏倚せしめたことを特徴とする。
【0009】
このような本態様に従う構造とされたトーコレクトブッシュにおいては、コンプレッションゴム弾性体が圧縮変形せしめられる径方向に過大な荷重が入力された際に、第一のスリットに突設されたストッパゴムを介してインナ軸部材とアウタ筒部材が当接することとなる一方、コンプレッションゴム弾性体が引張変形せしめられる径方向に過大な荷重が入力された際に、第二のスリットに突設されたストッパゴムを介してインナ軸部材とアウタ筒部材が当接することとなる。そこにおいて、第二のスリットに突設されたストッパゴムが、第一のスリットに突設されたストッパゴムよりも大きなボリュームで形成されていることから、第一のスリット側のストッパゴムよりも、第二のスリット側のストッパゴムの方が、同一荷重作用時におけるストッパゴムの発生応力が小さくされ得る。
【0010】
それ故、第一のスリット側のストッパゴムよりも第二のスリット側のストッパゴムの方が、大きな耐荷重性能を発揮し得ると共に、インナ軸部材およびアウタ筒部材の径方向での相対的変位量をより有効に制限し得るのであり、その結果、コンプレッションゴム弾性体が引張変形せしめられる径方向の荷重入力時において、コンプレッションゴム弾性体が圧縮変形せしめられる径方向の荷重入力時よりも、ストッパゴムによる緩衝的な変形量制限機能がより有効に発揮され得ることとなる。そして、それによって、コンプレッションゴム弾性体が引張変形せしめられる径方向の荷重入力時においても、コンプレッションゴム弾性体が圧縮変形せしめられる径方向の荷重入力時と同様に、大荷重入力時に非線形的にばね定数が立ち上がるような荷重−撓み特性が発揮されて、インナ軸部材とアウタ筒部材の相対的な変位量の緩衝的な制限機能が有効に発揮され得るのであり、コンプレッションゴム弾性体の耐久性も有利に確保され得るのである。
【0011】
なお、本態様において、ストッパゴムのボリュームは、インナ軸部材とアウタ筒部材の径方向の相対的変位によってそれら両部材間で直接的に圧縮変形せしめられる部分の容積をいう。また、第一および第二のスリットやストッパゴムの具体的形状は特に限定されるものでなく、トーコレクトブッシュに要求される防振特性等を考慮して適宜に設定され得る。更にまた、第一および第二のスリットにおける各ストッパゴムは、インナ軸部材側とアウタ筒部材側の何れの側から突出形成されていても良く、或いは、インナ軸部材側とアウタ筒部材側の両方から互いに対向方向に突出して相互に当接される分割構造のストッパゴムを採用することも可能であるが、ボリュームと支持面積を容易に且つ有利に確保するためには、周方向長さを確保し易いアウタ筒部材側からインナ軸部材側に向かって突出形成することが望ましい。また、アウタ筒部材側からインナ軸部材側に向かって突出するストッパゴムを採用する場合には、一層大きな緩衝作用が発揮されるように、ストッパゴムの周方向中央部分がインナ軸部材に当接するより前に、該ストッパゴムの周方向両端部分が第一及び第二のスリットの周方向両側壁部を構成する本体ゴム弾性体に対して当接せしめられるようにすることが望ましい。
【0012】
更にまた、本態様におけるコンプレッションゴム弾性体は、車両への装着状態下でインナ軸部材とアウタ筒部材の間への軸方向荷重入力により圧縮変形せしめられてトーコレクト機能を発揮するものであり、インナ軸部材とアウタ筒部材の間に荷重が入力されていない車両装着前の状態下では、アウタ筒部材の絞り加工等による圧縮力(予圧縮)がコンプレッションゴム弾性体に及ぼされている必要はない。
また、本態様のトーコレクトブッシュにおいては、第二のスリット側のストッパゴムのボリュームを、周方向幅寸法を大きくすることによって有利に確保することが出来るのであり、また、そのようにストッパゴムの周方向幅寸法を大きく設定した場合でも、スリットの周方向幅寸法が大きくされていることから、ストッパゴムの本体ゴム弾性体への不要な干渉が防止されて、トーコレクトブッシュのばね特性への悪影響も回避され得る。なお、第二のスリット側のストッパゴムにおけるストッパ機能によって、第二のスリット側のストッパゴムの当接側での荷重―撓み特性と第一のスリット側のストッパゴムの当接側での荷重―撓み特性との同一化をより有利に達成するためには、第一のスリットと第二のスリットの周方向幅寸法差およびそれら第一のスリット側と第二のスリット側の各ストッパゴムの周方向幅寸法を、それぞれ10度以上とすることが望ましい。
更に、本態様のトーコレクトブッシュにおいては、第三のスリットを設けたことにより、車両上下方向のばね特性を軟らかくすることが可能となる。また、第三のスリットを第二のスリットよりも第一のスリット側に偏倚させたことにより、第三のスリットの周方向両側においてインナ軸部材とアウタ筒部材を弾性連結するゴム弾性体の脚部の周方向厚さ寸法が略均一化され、本体ゴム弾性体の耐久性が有利に確保され得る。
ここにおいて、第三のスリットの周方向偏倚量は、第一のスリットの内周側壁面と第三のスリットの内周側壁面の間に形成されて径方向に直線的に延びる第一の脚部と、第二のスリットの内周側壁面と第三のスリットの内周側壁面の間に形成されて径方向に直線的に延びる第二の脚部との、周方向の肉厚寸法が互いに略同じになるように設定されることが望ましい。換言すれば、第三のスリットは、好適には、第一のスリットの内周側壁面と第二のスリットの内周側壁面との周方向間の略中央部分に位置して形成される。
【0013】
また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に従う構造とされたトーコレクトブッシュにおいて、前記第一のスリットに形成されたストッパゴムよりも前記第二のスリットに形成されたストッパゴムを、前記インナ軸部材の軸方向の長さ寸法で大きくしたことを、特徴とする。このような本態様のトーコレクトブッシュにおいては、第二のスリット側のストッパゴムのボリュームを、ストッパ荷重の入力方向に直交する平面への投影面積を大きくすることによって確保することが出来るのであり、それによって、インナ軸部材とアウタ筒部材におけるストッパ荷重の支持面積も大きくされることから、第二のスリット側のストッパゴムにおいて、インナ軸部材とアウタ筒部材の径方向相対変位量の緩衝的な制限作用が一層有利に発揮され得る。
【0017】
また、本発明の第の態様は、前記第一又は第二の態様に従う構造とされたトーコレクトブッシュにおいて、前記第一のスリットに形成されたストッパゴムにおける突出高さとかかる突出方向での当接面間距離を、前記第二のスリットに形成されたストッパゴムにおける突出高さとかかる突出方向での当接面間距離と、略同じにしたことを特徴とする。このような本態様のトーコレクトブッシュにおいては、車両前後両方向での荷重−撓み特性が、一層有利に近似され得ることとなり、通常走行状態下で入力される荷重領域において、車両前後両方向で何れも線形的な荷重−撓み特性が安定して発現され得るのである。
【0018】
また、本発明の第の態様は、前記第一乃至第の何れかの態様に従う構造とされたトーコレクトブッシュにおいて、前記第一のスリットおよび第二のスリットに形成されたストッパゴムを、何れも、前記本体ゴム弾性体によって一体形成したことを特徴とする。このような本態様のトーコレクトブッシュにおいては、第一及び第二のスリットにおける各ストッパゴムを、本体ゴム弾性体の成形と同時に容易に形成することが出来るのであり、しかも、ストッパゴムへの局部的な応力集中も回避されて、より優れた耐久性を得ることが可能となる。
【0019】
また、本発明の第の態様は、前記第一乃至第の何れかの態様に従う構造とされたトーコレクトブッシュにおいて、前記第一および第二のスリットを、何れも、前記インナ軸部材の外径寸法よりも大きな径方向幅寸法で形成したことを特徴とする。このような本態様のトーコレクトブッシュにおいては、車両前後方向の荷重入力時における本体ゴム弾性体の圧縮/引張応力が軽減されて車両前後方向での更なる低ばね化が実現されると共に、第一及び第二のストッパゴムのボリュームを周方向で有利に確保することが可能となって、本体ゴム弾性体における車両前後方向での過大な変形も有利に制限され得るのである。
【0020】
また、本発明は、左右のトレーリングアームをトーションビームで連結したサスペンション部材を、自動車のボデーに対して揺動可能に防振連結せしめたサスペンション機構において、前記サスペンション部材における車両前方側の左右両側部分に対して、前記本発明の第一乃至第の何れかの態様に従う構造とされたトーコレクトブッシュをそれぞれ装着せしめて、それらのトーコレクトブッシュを介して、該サスペンション部材を前記ボデーに防振連結すると共に、かかる左右両側のトーコレクトブッシュの中心軸を車両左右方向に向けて、且つ前記コンプレッションゴムが車両前方側に位置する状態で配設されるようにしたサスペンション機構も、特徴とする。
【0021】
このような本発明に従う構造とされたサスペンション機構においては、各トーコレクトブッシュにおける前述の如き特性に基づいて、車両コーナリング時におけるサスペンション部材の外力による変位を、車両横方向に近い方向に向かわせて横力ステアをより一層抑えることが出来るのであり、それによって、良好なる車両の走行安定性を、車両の乗心地を確保しつつ達成することが可能となるのである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0023】
先ず、図1〜4には、本発明の一実施形態としてのトーコレクトブッシュ10が、示されている。このトーコレクトブッシュ10は、インナ軸部材としての内筒金具12とアウタ筒部材としての外筒金具14が、互いに径方向に離隔して配されていると共に、それら内外筒金具12,14間に本体ゴム弾性体16が介装されて、両金具12,14が弾性的に連結された構造を有している。
【0024】
より詳細には、内筒金具12は、ストレートな小径の円筒形状を有しており、軸方向一方(図1中の左方)の端部近くには、略平板形状の固定プレート18が固着されている。この固定プレート18は、プレス金具等の剛性部材で形成されており、中央部分に貫設された円形の嵌着用孔20において内筒金具12に外挿されて、内筒金具12の軸方向一方の端部近くに溶着されている。
【0025】
そして、固定プレート18は、内筒金具12よりも僅かに大きな幅寸法で、該内筒金具12を挟んだ径方向両側に延び出しており、径方向一方(図1,2中の上方)の側の延出部分が、インナ側傾斜部としての傾斜板部22とされている。この傾斜板部22は、内筒金具12から離れるに従って次第に幅広となる略扇形状を有しており、内筒金具12の中心軸24に対して外方に傾斜して軸方向斜め外方に向かって突出せしめられている。
【0026】
また、固定プレート18は、その中心部分より長手方向他方(図1,2中の下方)の端部にかけて、内筒金具12よりも僅かに大きい略一定の幅寸法(図2中の左右方向寸法)で延出形成されており、それによって、略平板形状のストッパ部26が形成されている。
【0027】
なお、固定プレート18における傾斜板部22およびストッパ部26の各外周縁部は、何れも、内筒金具12の中心軸24を中心として外筒金具14の外径寸法よりも僅かに大きな円弧形状とされている。また、固定プレート18の幅方向両側縁部と傾斜板部22の外周縁部には、内筒金具12の軸方向外方に向かって屈曲せしめられた補強リブ28が一体形成されている。また、傾斜板部22の周方向幅寸法は、その内周縁部において内筒金具12の外径寸法よりも僅かに大きくされていると共に、その外周縁部において外筒金具14の外径寸法と略同じとされている。
【0028】
また一方、外筒金具14は、大径の円筒形状を有しており、内筒金具12に外挿されることにより、内筒金具12の径方向外方に離隔して内筒金具12と同一中心軸上に配されている。なお、外筒金具14の軸方向長さは、内筒金具12よりも短くされており、内筒金具12の軸方向両端部分が外筒金具14から軸方向外方に突出せしめられている。また、外筒金具14の軸方向一方(図1中の左方)の開口周縁部には、径方向外方に突出して周方向に連続して延びるフランジ状部30が一体形成されている。
【0029】
そして、フランジ状部30の周上の一部分(図1,2中の上側部分)には、アウタ側傾斜部としての傾斜板対向部32が形成されている。この傾斜板対向部32は、フランジ状部30の径方向外方に延長されていると共に、外筒金具14の軸方向外方に傾斜せしめられており、それによって、かかる傾斜板対向部32が、内筒金具12に固着された固定プレート18における傾斜板部22に対して斜め軸方向に離隔し、傾斜板部22に対して外周側に位置して対向位置せしめられていると共に、該傾斜板対向部32の内周面が、外筒金具14の中心軸と同一である内筒金具12の中心軸24に対して傾斜した略平坦な傾斜面とされている。
【0030】
また、傾斜板対向部32は、その突出先端面34が、傾斜板部22よりも大径の円弧状面とされていると共に、その周方向長さが、傾斜板部22よりも十分に大きくされており、傾斜板部22の径方向外方と周方向両側に張り出して位置せしめられている。なお、このことから明らかなように、本実施形態では、傾斜板部22の対向面36および傾斜板対向部32の対向面38によって、相互に対向位置する傾斜面が構成されている。
【0031】
さらに、本体ゴム弾性体16は、全体として略厚肉の円筒形状を有しており、内筒金具12と外筒金具14の径方向対向面間に介在せしめられている。そして、本体ゴム弾性体16の内外周面が、内筒金具12の外周面と外筒金具14の内周面に対してそれぞれ加硫接着されることにより、本体ゴム弾性体16が、それら内外筒金具12,14を有する一体加硫成形品として形成されている。
【0032】
また、本体ゴム弾性体16は、傾斜板部22と傾斜板対向部32の対向面36,38間にも延び出しており、以て、それら傾斜板部22と傾斜板対向部32の対向面36,38間の全体に亘って充填されたコンプレッションゴム弾性体としてのコンプレッションゴム40が、本体ゴム弾性体16と一体的に形成されている。
【0033】
更にまた、固定プレート18のストッパ部26には、軸方向内面上に突出する緩衝ゴム42が加硫接着されて形成されており、該緩衝ゴム42の突出先端面が、外筒金具14のフランジ状部30に対して、軸方向で所定の間隙44を隔てて対向位置せしめられている。この間隙44によって、緩衝ゴム42に対する応力集中が回避されるようになっている。なお、本実施形態では、緩衝ゴム42が、本体ゴム弾性体16によって一体成形されていると共に、固定プレート18の全体が、本体ゴム弾性体16と一体成形された薄肉のカバーゴム層46が被着形成されている。
【0034】
また、本体ゴム弾性体16には、傾斜板部22や傾斜板対向部32が突出する径方向で内筒金具12を挟んだ両側において、傾斜板部22が突出する側に第一のスリットとしての第一のすぐり部48が形成されている一方、その反対側に第二のスリットとしての第二のすぐり部50が形成されている。更にまた、これら第一及び第二のすぐり部48,50の対向方向に直交する径方向で内筒金具12を挟んだ両側には、一対の第三のスリットとしての第三のすぐり部52,52が形成されている。これら第一及び第二のすぐり部48,50と一対の第三のすぐり部52,52は、何れも、コンプレッションゴム40と反対側(図1中の右側)の軸方向端面に開口して、略一定の断面形状で内外筒金具12,14間を軸方向に直線的に延びるようにして形成されている。なお、第一及び第二のすぐり部48,50は、固定プレート18に略達する深さで、本体ゴム弾性体16を実質的に貫通して形成されている。また、一対の第三のすぐり部52,52は、図4にも示されているように、僅かな薄膜状の軸方向底部54,54を残しているが、実質的には貫通した軸方向深さをもって形成されている。これにより、第一及び第二のすぐり部48,50および一対の第三のすぐり部52,52の対向位置する各径方向のばね特性が、十分に軟らかく設定されている。
【0035】
さらに、第一及び第二のすぐり部48,50と一対の第三のすぐり部52,52は、何れも、その断面形状において、外筒金具14側から内筒金具12側に向かって径方向内方に行くに従って次第に周方向幅寸法が小さくなる略扇形断面形状を有している。なお、これら第一及び第二のすぐり部48,50と第三のすぐり部52は、何れも、実質的に内筒金具12の外周面から外筒金具14の内周面まで至る径方向寸法を有しており、これら第一及び第二のすぐり部48,50と第三のすぐり部52が形成された部分の内外筒金具12,14の表面には、本体ゴム弾性体16の成形時における型開閉性等の理由で形成された薄肉ゴム層だけが存在しているに過ぎない。また、本実施形態では、第一のすぐり部48と第二のすぐり部50の何れも、それら両すぐり部48,50の対向方向に直交する径方向幅寸法(図3中のLa,Lb)が、内筒金具12の外径寸法よりも大きく設定されている。
【0036】
ここにおいて、本実施形態では、第一のすぐり部48と第二のすぐり部50の各径方向寸法が、略内外筒金具12,14の径方向対向面間距離に等しくされていると共に、第二のすぐり部50の周方向幅寸法が、第一のすぐり部48の周方向幅寸法よりも大きくされている。この第一及び第二のすぐり部48,50の周方向幅寸法とは、内筒金具12の中心:Oと内筒金具12の中心:Oから第一及び第二のすぐり部48,50の各内周側壁面56,58に延ばした接線60,62の接点A,Bとの距離を半径とする扇形の円弧部分の長さのことであり、この円弧部分の長さは扇形の中心角によって決定される。要するに、内筒金具12の中心:Oから第一及び第二のすぐり部48,50の各内周側壁面56,58に延ばした2本の接線60,62の為す角度αa,αbによって、第一及び第二のすぐり部48,50の周方向幅寸法が決定されるのであり、特に本実施形態においては、αa<αb,αb−αa=12(度)とされている。
【0037】
そして、本体ゴム弾性体16に対して、第一及び第二のすぐり部48,50と一対の第三のすぐり部52,52が形成されることにより、本体ゴム弾性体16には、互いに周方向に隣接する第一のすぐり部48と第三のすぐり部52,52の間を、それぞれ径方向に延びて内筒金具12と外筒金具14を連結する二本の脚部構造の第一の径方向連結部64,64と、互いに周方向に隣接する第二のすぐり部50と第三のすぐり部52,52の間を、それぞれ径方向に延びて内筒金具12と外筒金具14を連結する二本の脚部構造の第二の径方向連結部66,66が、各々形成されている。
【0038】
また、一対の第三のすぐり部52,52は、互いに同一形状とされている。更に、第三のすぐり部52は、第一のすぐり部48と第二のすぐり部50の周方向の略中央部分に形成されており、第一の径方向連結部64,64と第二の径方向連結部66,66の各周方向の厚さ寸法が、略同一とされている。即ち、本実施形態では、一対の第三のすぐり部52,52が、第二のすぐり部50よりも第一のすぐり部48側に偏倚して形成されているのである。
【0039】
具体的には、内筒金具12の中心:Oから第三のすぐり部52の両内周側壁面72に対してそれぞれ延ばした接線68,70において、第一のすぐり部48側の接線68は、傾斜板部22の突出方向に直交する径方向線74に対して、傾斜角度:βaを有する一方、第二のすぐり部50側の接線70は、傾斜板部22の突出方向に直交する径方向線74に対して、上記βaよりも小さい傾斜角度:βbを有している。即ち、第三のすぐり部52は、径方向線74に対して非対称的とされている。なお、本実施形態では、βa>βb,βa―βb=5(度)とされている。
【0040】
また、第一の径方向連結部64,64および第二の径方向連結部66,66は、何れも、外周側より内周側の方が周方向に幅広とされた略一定の断面形状で軸方向にストレートに延びている。
【0041】
さらに、第一のすぐり部48および第二のすぐり部50には、各外周側壁面の周方向略中央部分から径方向内方に向かって突出する略台形形状のストッパゴムとしての第一の弾性ストッパ88および第二の弾性ストッパ90が、突設されている。これら第一及び第二の弾性ストッパ88,90は、本体ゴム弾性体16と一体成形されることによってゴム弾性体で形成されており、何れも、略一定の台形断面形状をもって、各すぐり部48,50内で、外筒金具14の内周面から径方向内方に向かって内筒金具12側に突出して、軸方向に略直線的に延びるようにして形成されている。また、特に本実施形態においては、第二の弾性ストッパ90の周方向幅寸法が、第一の弾性ストッパ88よりも大きくされている一方、第一及び第二の弾性ストッパ88,90の高さ寸法が、互いに略同一とされている。これにより、第一の弾性ストッパ88の突出先端面と第一のすぐり部48の内周面との径方向対向面間距離が、第二の弾性ストッパ90の突出先端面と第二のすぐり部50の内周面との径方向対向面間距離と、略等しくされている。
【0042】
具体的には、第一及び第二の弾性ストッパ88,90の周方向幅寸法は、各すぐり部48,50の周方向幅寸法に対して略同比率(本実施形態では、略3/5〜4/5)で小さく設定されていることにより、第二の弾性ストッパ90の周方向幅寸法が第一の弾性ストッパ88よりも大きくされている。また、第一及び第二の弾性ストッパ88,90の高さ寸法は、各すぐり部48,50の径方向寸法よりも小さくされている。これにより、第二のすぐり部50に突設された弾性ストッパ90の方が、第一のすぐり部48に突設された弾性ストッパ88よりも、内外筒金具12,14間で径方向の相対的変位によって直接的に圧縮変形される部分の容積、換言すれば弾性ストッパのボリュームが大きくされているのである。
【0043】
そして、内筒金具12と外筒金具14が、第一及び第二の弾性ストッパ88,90を挟んで相互に接近方向に変位せしめられた際に、各弾性ストッパ88,90の突出先端面が内筒金具12側に突出せしめられて、それら弾性ストッパ88,90がそれぞれ内筒金具12側と外筒金具14側の間で圧縮変形せしめられることにより、それら両金具12,14の相対変位量が緩衝的に制限されるようになっている。これにより、軸直角方向に大きな荷重が入力された際に、内外筒金具12,14の径方向の相対変位量を緩衝的に制限するストッパ機構が構成されている。
【0044】
ところで、上述の如き構造とされたトーコレクトブッシュ10においては、予め目的とする形状で内外筒金具12,14を形成した後、それらの間で本体ゴム弾性体16やコンプレッションゴム40,緩衝ゴム42を加硫成形して加硫接着することにより製品とすることも可能であるが、望ましくは、目的寸法よりも大径の外筒金具14を用いて、内外筒金具12,14間に本体ゴム弾性体16やコンプレッションゴム40,緩衝ゴム42を加硫成形して加硫接着せしめた後、外筒金具14に対して絞り加工等の縮径加工を施すことにより目的とする形状寸法に調整することによって製品とされることとなり、それによって、本体ゴム弾性体16や、更には必要に応じてコンプレッションゴム40にも、予圧縮を加えることが可能となって、耐久性の向上が図られ得る。
【0045】
具体的には、例えば、図5に示されているように、外筒金具(14)の筒壁部の外径寸法が目的とする寸法よりも全体的に大径とされた成形金具14′(外筒金具14)を用意する。そして、これら内筒金具12および成形金具14′を所定のゴム加硫成形型内にセットして、本体ゴム弾性体16やコンプレッションゴム40,緩衝ゴム42を同時に一体加硫成形すると共に、両金具12,14′に加硫接着することによって、一体加硫成形品92を形成する。その後、成形金具14′に対して八方絞り等の縮径加工を施すことにより、図1〜4に示されているような目的とする形状寸法を有するトーコレクトブッシュ10を製造することが出来るのである。なお、特に本実施形態においては、図1に示されている如き、外筒金具14の軸方向中間部分だけを所定長さに亘って大径部とした段付形状とされており、外筒金具14の圧入等によるサスペンション部材への装着作業性の向上が図られている。
【0046】
而して、このような構造とされたトーコレクトブッシュ10は、図6に示されているように、例えば、車両の左右両側の車輪を支持する一対のトレーリングアーム94,94を車幅方向(車両左右方向)に延びるトーションビーム96で相互に連結固定せしめたトーションビーム式サスペンション機構98に対して、一対が組み付けられる。即ち、その左右両側のトレーリングアーム94,94の各車両前端部分に形成された車幅方向に延びる装着孔に対して、外筒金具14を圧入固定する一方、内筒金具12をロッド等を介して車両ボデーに固定することにより、図6において、その左右方向が車両左右方向で、上下方向が車両前後方向となる状態で装着される。また、各トレーリングアーム94の先端部分において、内筒金具12の傾斜板部22と外筒金具14の傾斜板対向部32が、それぞれ、車両左右方向で内方に位置し、且つ車両の斜め前方に向かって突出せしめられるように、車両中央を前後方向に延びる対称軸(中央線):X−Xを挟んで、互いに対称的に装着される。
【0047】
そして、車両のコーナリング(本実施形態では、左コーナ)走行に際して、タイヤ100,100から車両左右方向に及ぼされる向心力:fによって、各トーコレクトブッシュ10に対して、中心軸24に対して所定の入力角度:θzだけ傾斜した方向で、内外筒金具12,14間に外力:Fが及ぼされることとなる。そして、かかる外力:Fによって、本体ゴム弾性体16やコンプレッションゴム40等が弾性変形せしめられることにより、内外筒金具12,14が、相対的に変位せしめられて、トーションビーム式サスペンション機構98に、車両ボデーに対する相対的な変位が生ぜしめられることとなる。
【0048】
すなわち、このような装着状態下においては、トーコレクトブッシュ10の中心軸24方向が、車両横方向とされている一方、第一及び第二のすぐり部48,50が対向位置せしめられた径方向が、車両前後方向とされていると共に、それに直交する径方向、換言すれば一対の第三のすぐり部52,52が対向位置せしめられた径方向が、車両上下方向とされている。これにより、車両横方向の入力荷重に対しては、主に剪断変形が生ぜしめられる一方、車両前後方向および車両上下方向の入力荷重に対しては、主に圧縮/引張変形が生ぜしめられることとなり、以て、車両前後方向および車両上下方向のばね剛性を大きく確保しつつ、車両横方向のばね特性を柔らかく設定することが可能とされている。
【0049】
さらに、本実施形態では、第一及び第二のすぐり部48,50内に形成されている各弾性ストッパ88,90が、車両前後方向の荷重入力時に、第一及び第二のすぐり部48,50の内周側壁面56,58を介して内筒金具12側に当接されることにより、内外筒金具12,14の径方向相対変位量に対して緩衝効果が発揮されることとなる。
【0050】
そこにおいて、本実施形態では、第一の弾性ストッパ88よりも第二の弾性ストッパ90の方が、大きなボリュームで形成されていることから、車両前後方向の大きな荷重入力時においても、第二の弾性ストッパ90のばね定数の立ち上がりが大きくされて、有効なストッパ機能が発揮され得る。その結果、コンプレッションゴム40が引張変形せしめられる径方向の荷重入力時において、コンプレッションゴム40が圧縮変形せしめられる径方向の荷重入力時における第一の弾性ストッパ88による緩衝的な変位量制限機能よりも、第二の弾性ストッパ50による緩衝的な変形量制限機能がより有効に発揮され得るのであり、それによって、コンプレッションゴム40の引張変形側における内外筒金具12,14の相対的変位量が有利に制限されることとなる。
【0051】
なお、上述の如きサスペンション機構98に取り付けられるトーコレクトブッシュ10の荷重―撓み特性を実測した結果を、実施例として図7に示す。なお、かかる実験に際しては、第一及び第二のすぐり部48,50が対向位置する径方向、換言すれば車両前後方向を荷重入力方向とし、かかる方向に及ぼした荷重をロードセルを用いて測定すると共に、荷重が及ぼされた際の内外筒金具12,14の軸直角方向の相対変位量を差動変圧器等の変位計を用いてX−Yレコーダで記録することによって実施した。また、本実施例の比較例として、第一及び第二のすぐり部とそれら内部に形成される第一及び第二の弾性ストッパを、何れも同一の形状と大きさに設定した従来構造のトーコレクトブッシュについても同様な実験を行い、その測定結果を図7に併せて示す。
【0052】
図7に示された測定結果から明らかなように、実施例のトーコレクトブッシュ10では、入力荷重が小さい通常入力範囲内において略線形的な荷重―撓み特性が発揮される一方、内外筒金具12,14間で第一及び第二の弾性ストッパ88,90が圧縮変形せしめられることにより内外筒金具12,14の相対的変位量が緩衝的に制限されることとなり、コンプレッションゴム40の圧縮側と引張側の両方向で略同じ荷重―撓み特性が発揮されることが認められる。そして、本実施例のトーコレクトブッシュ10において、コンプレッションゴム40の引張側においても良好なる荷重―撓み特性が発揮されることは、比較例の測定結果と比較することによっても明らかである。
【0053】
従って、上述の如き構造とされたトーコレクトブッシュ10においては、コンプレッションゴム40が圧縮変形せしめられる径方向だけでなく引張変形せしめられる径方向でも荷重―撓み特性が有利に発揮され得るのであり、それによって、コンプレッションゴム40の耐久性も有利に確保され得るのである。
【0054】
それ故、本実施形態のトーコレクトブッシュ10においては、優れた耐久性と、車両前後方向での柔らかいばね特性とを、何れも有利に確保しつつ、コーナリングに際しての車両左右方向の荷重の入力時に、内外筒金具12,14の弾性変位に起因するオーバステア傾向を抑制乃至は防止し、好適には弱いアンダステア特性を付与せしめることにより、走行安定性を向上させることが出来るのであり、以て、十分な耐久性のもとに、乗心地と操縦安定性を高度に両立させることが出来るのである。
【0055】
しかも、本実施形態においては、第一の弾性ストッパ88と第二の弾性ストッパ90が、本体ゴム弾性体16における内外筒金具12,14の連結部分よりも軸方向に延長形成されていることから、それら両弾性ストッパ88,90の耐荷重性能や耐久性が一層向上されている。
【0056】
さらに、本実施形態においては、第一のすぐり部48および第一の弾性ストッパ88と第二のすぐり部50および第二の弾性ストッパ90の突出高さを略同じにしたことにより、車両前後方向での荷重―撓み特性が、相互に近似され得ることとなり、車両装着状態下で通常走行時に入力される荷重領域において、車両前後方向で何れも線形的な荷重―撓み特性が安定して発現され得る。
【0057】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0058】
例えば、内筒金具12と外筒金具14は、装着状態下で及ぼされる静的荷重等を考慮して、装着前の非荷重入力状態下で軸直角方向で偏心配置されていても良い。
【0059】
また、前記実施形態では、内筒金具12のストッパ部26に突設された緩衝ゴム42と外筒金具14のフランジ状部30の間に間隙44が設けられていたが、かかる間隙44は必ずしも設ける必要はなく、ばね定数のチューニングやゴム弾性体の耐久性等に応じて、ストッパ部26とフランジ状部30を緩衝ゴム42で弾性的に連結することも可能である。
【0060】
さらに、内筒金具12におけるストッパ部26は、必ずしも設ける必要はなく、略扇形状の傾斜板部22部分のみからなる固定プレート18等を採用しても良い。
【0061】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【0062】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされたトーコレクトブッシュにおいては、コンプレッションゴムが引張変形せしめられる径方向の荷重入力時に作用せしめられる第二のスリット内のストッパゴムのボリュームを、コンプレッションゴムが圧縮変形せしめられる径方向の荷重入力時に作用せしめられる第一のスリット内のストッパゴムのボリュームよりも大きく設定したことにより、変形量が大きくなり易いコンプレッションゴムの引張方向において、インナ軸部材とアウタ筒部材の相対的変位量が有利に制限され得ることとなり、それによって、通常の荷重領域での線形的な荷重―撓み特性を確保しつつ、優れた耐久性と耐荷重性能が実現され得るのである。
【0063】
また、このようなトーコレクトブッシュを備えた本発明に従う構造のサスペンション機構においては、車両前後方向での安定した作動特性が、広い荷重領域に亘り、優れた耐久性をもって発揮され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としてのトーコレクトブッシュの縦断面図である。
【図2】図1における左側面図である。
【図3】図1における右側面図である。
【図4】図3におけるIV―IV断面図である。
【図5】図1に示されたトーコレクトブッシュの縮径加工が施される前の縦断面図である。
【図6】図1に示されたトーコレクトブッシュのサスペンション機構への装着状態を示す概略図である。
【図7】本実施例におけるトーコレクトブッシュの荷重―撓み特性の測定結果を、比較例と共に示すグラフである。
【符号の説明】
10 トーコレクトブッシュ
12 内筒金具
14 外筒金具
16 本体ゴム弾性体
22 傾斜板部
32 傾斜板対向部
40 コンプレッションゴム
48 第一のすぐり部
50 第二のすぐり部
88 第一の弾性ストッパ
90 第二の弾性ストッパ

Claims (6)

  1. インナ軸部材と、その外方に離隔配置されたアウタ筒部材を、それらの径方向対向面間に介装された本体ゴム弾性体で連結すると共に、該インナ軸部材の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出するインナ側傾斜部を設ける一方、アウタ筒部材の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出し、該インナ側傾斜部に対して離隔して対向位置せしめられるアウタ側傾斜部を設けて、それらインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間にコンプレッションゴム弾性体を介在せしめたトーコレクトブッシュにおいて、
    前記インナ側傾斜部の突出方向となる径方向で前記インナ軸部材を挟んだ両側に位置して、該インナ軸部材と前記アウタ筒部材の間を軸方向に延びる第一のスリットと第二のスリットを設けると共に、それら第一のスリットと第二のスリットにおいて、それぞれ、インナ軸部材側とアウタ筒部材側の少なくとも何れか一方の側から他方の側に向かって突出して該他方の側に対して所定距離を隔てて対向位置するストッパゴムを形成し、且つ該インナ軸部材に対してインナ側傾斜部の突出方向側に位置せしめられた該第一のスリットのストッパゴムのボリュームよりも、該インナ軸部材に対してインナ側傾斜部の突出方向と反対側に位置せしめられた該第二のスリットのストッパゴムのボリュームを大きくすると共に、
    該第一のスリットよりも該第二のスリットを、該インナ軸周りの周方向で大きな幅寸法とすると共に、該第一のスリットに形成されたストッパゴムの周方向幅寸法よりも該第二のスリットに形成されたストッパゴムの周方向幅寸法を大きくし、更に、
    該インナ側傾斜部の突出方向に直交する径方向で該インナ軸部材を挟んだ両側に位置して、該インナ軸部材と該アウタ筒部材の間を軸方向に延びる一対の第三のスリットを設けると共に、それら第三のスリットを、該インナ軸部材の周方向で、該第二のスリットよりも該第一のスリット側に偏倚せしめたことを特徴とするトーコレクトブッシュ。
  2. 前記第一のスリットに形成されたストッパゴムよりも前記第二のスリットに形成されたストッパゴムを、前記インナ軸部材の軸方向の長さ寸法で大きくした請求項1に記載のトーコレクトブッシュ。
  3. 前記第一のスリットに形成されたストッパゴムにおける突出高さとかかる突出方向での当接面間距離を、前記第二のスリットに形成されたストッパゴムにおける突出高さとかかる突出方向での当接面間距離と、略同じにした請求項1又は2に記載のトーコレクトブッシュ。
  4. 前記第一のスリットおよび第二のスリットに形成されたストッパゴムを、何れも、前記本体ゴム弾性体によって一体形成した請求項1乃至の何れかに記載のトーコレクトブッシュ。
  5. 前記第一および第二のスリットを、何れも、前記インナ軸部材の外径寸法よりも大きな径方向幅寸法で形成した請求項1乃至の何れかに記載のトーコレクトブッシュ。
  6. 左右のトレーリングアームをトーションビームで連結したサスペンション部材を、自動車のボデーに対して揺動可能に防振連結せしめたサスペンション機構において、
    前記サスペンション部材における車両前方側の左右両側部分に対して、請求項1乃至の何れかに記載のトーコレクトブッシュをそれぞれ装着せしめて、それらのトーコレクトブッシュを介して、該サスペンション部材を前記ボデーに防振連結すると共に、かかる左右両側のトーコレクトブッシュの中心軸を車両左右方向に向けて、且つ前記コンプレッションゴムが車両前方側に位置する状態で配設したことを特徴とするサスペンション機構。
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