JP3793011B2 - トーコレクトブッシュおよびそれを用いたサスペンション機構 - Google Patents

トーコレクトブッシュおよびそれを用いたサスペンション機構 Download PDF

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、自動車のサスペンションブッシュの一種であるトーコレクトブッシュとそれを用いたサスペンション機構に係り、特に、トーションビーム式リジットアクスル型のサスペンション機構に用いられて、左右のトレーリングアームのボデー側への取付部位に装着される新規な構造のトーコレクトブッシュと、かかるトーコレクトブッシュを採用することによって実現される、車両の操縦安定性や乗心地などのチューニング特性に優れた新規な構造のサスペンション機構に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、自動車におけるトーションビーム式リジットアクスル型のサスペンション機構において、トーションビームで連結された左右のトレーリングアームのボデー側への取付部位に装着されるサスペンションブッシュの一種として、特開平9−104212号公報や特開平11−247914号公報,特開平11−257396号公報,特開2000−74117号公報等に開示されているように、インナ軸金具の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出するインナ側傾斜部を設けると共に、アウタ筒金具の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出し、インナ側傾斜部に対して略平行な対向面で離隔して対向位置するアウタ側傾斜部を形成する一方、それらインナ軸金具とアウタ筒金具の径方向対向面間に本体ゴム弾性体を介在せしめて両金具を弾性連結せしめると共に、インナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間に介装されてそれらを弾性的に連結するコンプレッションゴムを、かかる本体ゴム弾性体と一体的に形成した構造のトーコレクトブッシュが、知られている。かくの如き構造のトーコレクトブッシュは、その中心軸(インナ軸金具およびアウタ筒金具の中心軸)が車両横方向となり、インナ側およびアウタ側の傾斜部の突出する軸直角方向が車両前後方向となる状態で自動車に装着されることとなり、その特性が、自動車の走行時におけるトレーリングアーム、延いては車輪の変位に大きな影響を及ぼすことから、目的とする車両の乗心地や操縦安定性が発揮されるように、トーコレクトブッシュの特性がチューニングされる。
【0003】
そして、このようなトーションビーム式サスペンション機構において目的とする特性は、車両の乗心地と操縦安定性の高次元での両立であり、一般に、車両の乗心地の向上のために車両前後方向のばね定数を柔らかく設定しつつ、コーナリング荷重の入力時におけるサスペンション部材の車両前後方向における変位を抑えて横力ステアによるオーバステアを防止乃至は軽減することにより車両の走行安定性を向上させることが重要とされる。
【0004】
ところで、従来のトーコレクトブッシュでは、その設計および特性評価に際して、専ら、中心軸方向および軸直角方向でのばね特性と荷重−変位特性だけが考慮されていた。即ち、乗心地の設計や評価を、軸直角方向でのばね特性の柔らかさに基づいて行う一方、操縦安定性の設計や評価を、中心軸方向でのばね特性の硬さと、中心軸方向への入力に伴う軸直角方向の変位量(トーコレクト量)の抑制に基づいて行っていたのである。
【0005】
そのために、従来構造のトーコレクトブッシュにおいては、前記公報等にも記載されているように、単に、インナ軸部材とアウタ筒部材の径方向対向面間を弾性連結する本体ゴム弾性体に対して、車両前後方向となる軸直角方向でインナ軸部材を挟んで対向位置する両側部分にそれぞれ軸方向に延びる一対のスリットを形成することにより、車両前後方向のばね特性を柔らかく設定する一方、車両横方向となる軸方向では、インナ軸部材とアウタ筒部材の相対変位量を弾性的に制限するストッパ手段を設けて軸方向の高ばね特性を確保すると共に、コンプレッションゴムで弾性連結されたインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部における互いに平行な傾斜面の傾斜角度を調節することにより、中心軸方向でのばね特性の硬さと、中心軸方向への入力に伴う軸直角方向の変位量(トーコレクト量)を調節していたに過ぎなかったのである。
【0006】
しかしながら、このような従来構造のトーコレクトブッシュでは、サスペンション機構への装着状態下での荷重入力方向と、かかる方向への荷重入力に伴う変位特性が直接には考慮されていなかったのであり、そのために、前述の如き車両の乗心地と操縦安定性を高次元で両立させるようなブッシュ特性の最適チューニングを、トーコレクトブッシュ、延いてはサスペンション機構の全体を把握して行うことが難しかったのである。
【0007】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、サスペンション機構への装着状態下で発揮される乗心地と操縦安定性を、各個別でなく全体としてとらえることにより、それら乗心地と操縦安定性の両方の要求特性をより高次元で両立して達成することの出来る、新規な構造のトーコレクトブッシュと、それを用いた新規な構造のサスペンション機構を提供することにある。
【0008】
すなわち、本発明者は、サスペンション機構への装着状態下におけるトーコレクトブッシュの荷重−変位特性をFEM(有限要素法)等を用いて詳細に検討した結果、かかるトーコレクトブッシュの設計に際しては、弾性主軸の方向と弾性主軸方向のばね定数を考慮することが有効であり、特に、上述のように、乗心地と操縦安定性の最適バランスを実現するためには、中心軸に対する弾性主軸の傾斜角度(主軸角度)を、外力の入力方向に応じて調節し、その上で、圧縮方向となる弾性主軸Iと剪断方向となる弾性主軸IIでのばね定数の比(主軸ばね比)の値を大きく設定することが有効である、との新たな知見を得たのである。即ち、このようなチューニングをトーコレクトブッシュに施すことにより、結果として、サスペンション部材の車両前後方向におけるボデーに対する支持ばね特性を柔らかくして優れた乗心地を確保しつつ、コーナリング時にサスペンション部材を略車両横方向に変位させて、オーバステアを抑制し、より好適には弱いアンダステア特性を付与することで、良好な操縦安定性を与えることが可能となる、との知見を得たのである。
【0009】
そして、更に多数の実験と検討を重ねた結果、中心軸に対する弾性主軸の傾斜角度(主軸角度)を、外力の入力方向に応じて調節し、その上で、圧縮方向となる弾性主軸Iと剪断方向となる弾性主軸IIでのばね定数の比(主軸ばね比)の値を大きく設定することを実現する一つの具体的構成として、インナ側傾斜部の突出する径方向でインナ軸部材を挟んだ両側において、インナ側傾斜部の突出する側に位置せしめられた第一のスリットと、インナ側傾斜部の反対側に位置せしめられた第二のスリットの各周方向幅寸法を、相対的に特定の関係を持って設定することが極めて有効であるとの知見を得たのであり、以て、かかる知見に基づいて、本発明が完成されるに至ったのである。
【0010】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0011】
すなわち、本発明の第一の態様は、インナ軸部材と、その外方に離隔配置されたアウタ筒部材を、それらの径方向対向面間に介装された本体ゴム弾性体で連結すると共に、該インナ軸部材の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出するインナ側傾斜部を設ける一方、前記アウタ筒部材の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出し、該インナ側傾斜部に対して離隔して対向位置せしめられたアウタ側傾斜部を設けて、それらインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間にコンプレッションゴムを介在せしめたトーコレクトブッシュにおいて、
前記インナ側傾斜部の突出方向となる径方向で前記インナ軸部材を挟んだ両側に位置して、それぞれ周方向に広がって、該インナ軸部材と前記アウタ筒部材の間を軸方向に延びる第一のスリットと第二のスリットを設けると共に、該インナ軸部材を挟んで該インナ側傾斜部の突出側に位置せしめられた該第一のスリットの周方向幅寸法を、該インナ軸部材を挟んで反対側に位置せしめられた該第二のスリットの周方向幅寸法よりも大きくして、且つ、該インナ軸部材および該アウタ筒部材の中心軸と該インナ側傾斜部および該アウタ側傾斜部が突出する径方向線とを含む一平面内において、かかる平面内に位置せしめられた圧縮方向の弾性主軸Iにおける、該中心軸に対する傾斜角度を、自動車への装着状態下でコーナリングに際して及ぼされる横方向荷重による外力の入力方向における、該中心軸に対する傾斜角度よりも大きく設定したことを、特徴とする。
【0012】
このような本態様に従う構造とされたトーコレクトブッシュにおいては、インナ軸部材とアウタ筒部材の間に介装された本体ゴム弾性体において、インナ側傾斜部の突出する径方向でインナ軸部材を挟んで両側に第一および第二のスリットが形成されていることから、それら第一のスリットと第二のスリットの対向方向、即ち、車両前後方向のばね特性を軟らかくすることが出来る。
【0013】
また、特に、インナ側傾斜部が突出する径方向側に形成された第一のスリットの周方向幅寸法を大きくする一方、反対側に形成された第二のスリットの周方向幅寸法を小さくしたことにより、大きな幅寸法の第一のスリットによって圧縮方向となる弾性主軸Iと剪断方向となる弾性主軸IIでのばね定数の比(主軸ばね比)の値を大きく設定しつつ、小さな幅寸法の第二のスリットによってゴム弾性体のボリュームを大きく確保することが出来る。そして、それによって、本体ゴム弾性体に大きなボリュームを設定して耐久性や耐荷重性能を十分に確保しつつ、本体ゴム弾性体における軸直角方向のばね定数を小さく設定して目的とする大きな主軸ばね比を、効率的に得ることが可能となるのである。
【0014】
それ故、本態様に従う構造とされたトーコレクトブッシュにおいては、良好なる耐久性と、車両前後方向での柔らかいばね特性とを、何れも有利に確保しつつ、主軸ばね比を大きく設定して、コーナリングに際しての車両横方向荷重の入力時における横力ステアを抑えることが出来るのであり、以て、十分な耐久性のもとに、乗心地と操縦安定性を高度に両立させることが可能となるのである。
【0015】
ここにおいて、スリットの周方向幅寸法は、インナ軸部材の中心軸回りにおけるスリットの周方向長さであり、この周方向長さは、インナ軸部材の中心軸回りにおけるスリットの中心角によって決定される。換言すれば、インナ軸部材の中心からスリットの周方向両端部に延ばした2本の接線の為す角度によって、スリットの周方向幅寸法が決定される。また、その角度は、望ましくは、第一のスリットと第二のスリットの何れも45〜100度とされると共に、第一のスリットと第二のスリットの角度の差が、5〜30度とされる。
【0016】
また、本態様においては、圧縮方向の弾性主軸Iと剪断方向の弾性主軸IIが、横方向荷重による外力の入力方向を挟んだ両側に設定されることとなり、且つ、圧縮方向の弾性主軸Iが横方向荷重による外力の入力方向よりも車両前後方向に大きく傾斜して設定されると共に、剪断方向の弾性主軸IIが横方向荷重による外力の入力方向よりも車両横方向に大きく傾斜して設定されることとなる。従って、横方向荷重による外力の入力に際して、インナ軸部材とアウタ筒部材が相対変位せしめられる方向(変位方向)が、かかる外力の入力方向に対して、ばね特性が柔らかい弾性主軸方向II側、即ち車両横方向に傾斜せしめられることとなるのであり、その結果、コーナリングに際しての車両横方向荷重の入力時にインナ軸部材とアウタ筒部材が、より一層中心軸方向に近い方向に変位せしめられて、操縦安定性の更なる向上が図られ得るのである。
【0017】
また、本発明の第の態様は、前記第一の態様に従うトーコレクトブッシュにおいて、前記インナ側傾斜部および前記アウタ側傾斜部の突出方向に対して直交する径方向で前記インナ軸部材を挟んだ両側に位置して、該インナ軸部材と該アウタ筒部材の径方向対向面間をそれぞれ軸方向に延びる一対の第三のスリットを設けると共に、該第三のスリットを、該インナ軸部材回りの周方向で、前記第一のスリットよりも前記第二のスリット側に偏倚せしめたことを、特徴とする。このような本態様においては、第三のスリットを設けたことにより、車両上下方向のばね特性を軟らかくすることが可能となる。また、第三のスリットを第一のスリットよりも第二のスリット側に偏倚させたことにより、第三のスリットの周方向両側においてインナ軸部材とアウタ筒部材を弾性連結するゴム弾性体の脚部の周方向厚さ寸法が略均一化される。それによって、応力集中が軽減乃至は防止されて、本体ゴム弾性体の耐久性が向上される。
【0018】
ここにおいて、第三のスリットの周方向偏倚量は、第一のスリットの内周側壁面と第三のスリットの内周側壁面の間に形成されて径方向に直線的に延びる第一の脚部と、第二のスリットの内周側壁面と第三のスリットの内周側壁面の間に形成されて径方向に直線的に延びる第二の脚部との、周方向の肉厚寸法が互いに略同じになるように設定されることが望ましい。換言すれば、第三のスリットは、第一のスリットの内周側壁面と第二のスリットの内周側壁面との周方向間の略中央部分に位置して形成されることが望ましい。
【0019】
また、本発明の第の態様は、前記第一又は第二の態様に従う構造とされたトーコレクトブッシュにおいて、前記第一のスリットおよび前記第二のスリットの各外周側において、前記アウタ筒部材の内周面上で径方向内方に向かって突出する弾性ストッパを設けて、該弾性ストッパに対する前記インナ軸部材の当接によって、それらインナ軸部材とアウタ筒部材の径方向での相対的変位量を緩衝的に制限するストッパ機構を形成したことを、特徴とする。このような本態様においては、車両前後方向の荷重が入力された際に、インナ軸部材がアウタ筒部材に対して弾性ストッパを介して緩衝的に当接せしめられることとなる。それ故、インナ軸部材とアウタ筒部材の径方向での相対的変位量が、かかるストッパ機構によって緩衝的に制限され得るのである。なお、本態様において、弾性ストッパは、本体ゴム弾性体によって一体的に形成されて、アウタ筒部材に形成されることが望ましく、それによって、弾性ストッパを本体ゴム弾性体と同時に容易に形成することが可能となる。
【0020】
また、本発明は、左右のトレーリングアームをトーションビームで連結したサスペンション部材を、自動車のボデーに対して揺動可能に防振連結せしめたサスペンション機構において、サスペンション部材における車両前方側の左右両側部分に対して、前記本発明の第一乃至第の何れかの態様に係る構造とされたトーコレクトブッシュをそれぞれ装着せしめて、それらのトーコレクトブッシュを介して、該サスペンション部材をボデーに防振連結すると共に、かかる左右両側のトーコレクトブッシュの中心軸を車両左右方向に向けて、且つインナ側およびアウタ側の傾斜部を車両中央側に位置せしめたサスペンション機構も、特徴とする。
【0021】
このような本発明に従う構造とされたサスペンション機構においては、各トーコレクトブッシュにおける前述の如き特性に基づいて、車両コーナリング時におけるサスペンション部材の外力による変位を、車両横方向に近い方向に向かわせて横力ステアをより一層抑えることが出来るのであり、それによって、良好なる車両の走行安定性を、車両の乗心地を確保しつつ達成することが可能となるのである。
【0022】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0023】
先ず、図1〜4には、本発明の一実施形態としてのトーコレクトブッシュ10が、示されている。このトーコレクトブッシュ10は、インナ軸部材としての内筒金具12とアウタ筒部材としての外筒金具14が、互いに径方向に離隔して配されていると共に、それら内外筒金具12,14間に本体ゴム弾性体16が介装されて、両金具12,14が弾性的に連結された構造を有している。
【0024】
より詳細には、内筒金具12は、小径の円筒形状を有しており、軸方向一方(図1中の左方)の端部近くには、略平板形状の固定プレート18が固着されている。この固定プレート18は、プレス金具等の剛性部材で形成されており、略扇形の平板形状を有しており、扇形の中心部分には、円弧形状の嵌着用切欠20が設けられている。そして、嵌着用切欠20に対して内筒金具12が挿通され、嵌着用切欠20が内筒金具12に溶着されることによって、固定プレート18が内筒金具12に固着されている。
【0025】
そこにおいて、固定プレート18は、内筒金具12から離れるに従って幅広となる略扇形状を有しており、内筒金具12の中心軸22に対して外方に傾斜した平面上において、径方向一方(図1,2中の上方)の側に向かって斜めに突出せしめられており、かかる固定プレート18が中心軸22に対して傾斜した略平坦な傾斜面とされている。更に、固定プレート18は、その中心部分の幅寸法(図2中の左右方向寸法)が、内筒金具12の外径寸法と外筒金具14の内径寸法の略中間程度にされていると共に、その突出先端部の最も大きな幅寸法が、外筒金具14の内径寸法に略近い大きさとされている。なお、固定プレート18の突出先端面(外周面)は、内筒金具12の中心軸22を略中心とする円弧形状とされている。
【0026】
また一方、外筒金具14は、大径の円筒形状を有しており、内筒金具12に外挿されることにより、内筒金具12の径方向外方に離隔して同軸的に配設されている。なお、外筒金具14の軸方向長さは、内筒金具12よりも短くされており、内筒金具12の軸方向両端部分が外筒金具14から軸方向外方に突出せしめられている。また、外筒金具14の軸方向一方(図1中の左方)の開口周縁部には、径方向外方に突出して周方向に連続して延びるフランジ状部24が一体形成されている。
【0027】
そして、このフランジ状部24の周上の一部分(図1,2中の上側部分)は、径方向外方に延長されていると共に、軸方向外方に傾斜せしめられており、それによって、内筒金具12に突設された固定プレート18に対して斜め軸方向に離隔し、該固定プレート18に対して対向位置する傾斜板対向部26が形成されており、傾斜板対向部26が、外筒金具14の中心軸28に対して傾斜した略平坦な傾斜面とされている。
【0028】
なお、このことから明らかなように、本実施形態では、内筒金具12の固定プレート18によってインナ側傾斜部が構成されている一方、外筒金具14の傾斜板対向部26によってアウタ側傾斜部が構成されている。また、傾斜板対向部26は、その突出先端面30が、固定プレート18よりも大径の円弧状面とされていると共に、その周方向長さが、固定プレート18よりも十分に大きくされており、固定プレート18の周方向両側に張り出して位置せしめられている。また、本実施形態では、固定プレート18と傾斜板対向部26の各対向面32,34によって、相互に対向位置する傾斜面が構成されている。
【0029】
さらに、本体ゴム弾性体16は、全体として略厚肉の円筒形状を有しており、内筒金具12と外筒金具14の径方向対向面間の略全体に亘って介在せしめられている。そして、本体ゴム弾性体16の内外周面が、内筒金具12の外周面と外筒金具14の内周面にそれぞれ加硫接着されることにより、本体ゴム弾性体16が、それら内外筒金具12,14を有する一体加硫成形品として形成されている。
【0030】
また、本体ゴム弾性体16は、固定プレート18と傾斜板対向部26の対向面32,34間にも延び出しており、以て、それら固定プレート18と傾斜板対向部26の対向面32,34間の全体に亘って充填されたコンプレッションゴム36が、本体ゴム弾性体16と一体的に形成されている。更に、本体ゴム弾性体16は、コンプレッションゴム36が位置しない部分でも、内筒金具12の外周面に沿って固定プレート18まで軸方向に延び出しており、以て、固定プレート18の外周面を被覆する被覆ゴム38が、本体ゴム弾性体16と一体的に形成されている。
【0031】
また、本体ゴム弾性体16には、固定プレート18や傾斜板対向部26が突出する径方向で内筒金具12を挟んだ両側において、固定プレート18が突出する側に第一のスリット40が、その反対側に第二のスリット42が、それぞれ、内外筒金具12,14間を軸方向に延びるように形成されている。更にまた、これら第一及び第二のスリット40,42の対向方向に略直交する径方向で内筒金具12を挟んだ両側には、内外筒金具12,14間を軸方向に延びる一対の第三のスリット44,44が形成されている。なお、第一及び第二のスリット40,42と第三のスリット44,44は、何れも、コンプレッションゴム36とは反対側(図1中の右側)の軸方向端面に開口して、略一定の断面形状で軸方向に直線的に形成されている。特に、固定プレート18側に形成された第一のスリット40は、固定プレート18に近接する軸方向深さで形成されていると共に、第二のスリット42は、本体ゴム弾性体16を軸方向に貫通して形成されている。また、一対の第三のスリット44,44は、僅かな薄膜状の軸方向底部46,46を残しているが、実質的には貫通した軸方向深さをもって形成されている。これにより、第一及び第二のスリット40,42および一対の第三のスリット44,44の対向位置する各径方向のばね特性が、十分に軟らかく設定されている。
【0032】
さらに、第一及び第二のスリット40,42と一対の第三のスリット44,44は、何れも、その断面形状において、外筒金具14側から内筒金具12側に向かって径方向内方に行くに従って次第に周方向幅寸法が小さくなる、換言すれば径方向外方に行くに従って次第に周方向幅寸法が大きくなる略扇形断面形状を有している。なお、これら第一及び第二のスリット40,42と第三のスリット44は、何れも、実質的に内筒金具12の外周面から外筒金具14の内周面まで至る径方向寸法を有しており、これら第一及び第二のスリット40,42と第三のスリット44が形成された部分の内外筒金具12,14の表面には、本体ゴム弾性体16の成形時における型開閉性等の理由で形成された薄肉ゴム層だけが存在しているに過ぎない。また、本実施形態では、第一のスリット40と第二のスリット42の何れも、それら両スリット40,42の対向方向に直交する径方向幅寸法(図3中のLa,Lb)が、内筒金具12の外径寸法よりも大きく設定されている。
【0033】
ここにおいて、本実施形態では、第一のスリット40の周方向幅寸法が、第二のスリット42の周方向幅寸法よりも大きくされている。この第一及び第二のスリット40,42の周方向幅寸法とは、内筒金具12の中心:Oと内筒金具12の中心:Oから第一及び第二のスリット40,42の各内周側壁面48,50に延ばした接線52,54の接点:A,Bとの距離を半径とする扇形の円弧部分の長さのことをいっており、この円弧部分の長さは、扇形の中心角によって決定される。要するに、内筒金具12の中心:Oから第一及び第二のスリット40,42の各内周側壁面48,50に延ばした2本の接線52,54の為す角度:αa,αbによって、第一及び第二のスリット40,42の周方向幅寸法が決定されるのであり、本実施形態においては、αaが80度、αbが70度とされており、以て、第一のスリット40の周方向幅寸法が、第二のスリット42の周方向幅寸法よりも大きくされている。
【0034】
そして、本体ゴム弾性体16に対して、第一及び第二のスリット40,42と一対の第三のスリット44,44が形成されることにより、本体ゴム弾性体16には、互いに周方向に隣接する第一のスリット40と第三のスリット44の間を径方向に延びて内筒金具12と外筒金具14を連結する二本の脚部構造の第一の径方向連結部56と、第二のスリット42と第三のスリット44の間を径方向に延びて内筒金具12と外筒金具14を連結する二本の脚部構造の第二の径方向連結部58が、それぞれ形成されているのである。
【0035】
また、一対の第三のスリット44,44の周方向幅寸法は、互いに同じとされている。更に、第三のスリット44は、第一のスリット40と第二のスリット42の周方向の略中央部分に形成されており、第一及び第二の径方向連結部56,58の周方向厚さ寸法が、略同じとされている。即ち、本実施形態では、一対の第三のスリット44,44が、第一のスリット40よりも第二のスリット42側に偏倚されて形成されているのである。具体的には、第三のスリット44の周方向両端部に接する接線64,66の内、第一のスリット40側の接線64は、固定プレート18の突出する径方向に直交する径方向線68に対して、傾斜角度:βa(本実施形態では、20度)を有するが、第二のスリット42側の接線66は、径方向線68に対して上記βaよりも大きい傾斜角度:βb(本実施形態では、27度)を有している。換言すれば、各第三のスリット44は、径方向線68に対して左右対称とされていないのである。そして、互いに周方向に隣接する第一のスリット40と第三のスリット44の各周方向端部壁面48,60は、第一の径方向連結部56の周方向の中心を通る径方向線70に対して略左右対称とされており、また、互いに周方向に隣接する第二のスリット42と第三のスリット44の各周方向端部壁面50,62も、第二の径方向連結部58の周方向の中心を通る径方向線72に対して略左右対称とされている。換言すれば、第一及び第二の径方向連結部56,58は、それぞれ径方向線70,72に対して略左右対称とされている。
【0036】
さらに、第一及び第二のスリット40,42には、それぞれ、外周側壁面の周方向略中央部分から径方向内方に向かって突出する略台形断面の弾性ストッパ74が、突設されている。そして、内筒金具12と外筒金具14が、弾性ストッパ74を挟んで相互に接近方向に変位せしめられた際に、弾性ストッパ74が内筒金具12側と外筒金具14側の間で圧縮変形せしめられることにより、それら内外筒金具12,14の相対変位量が緩衝的に制限されるようになっている。ここにおいて、弾性ストッパ74は、本体ゴム弾性体16と一体成形されてゴム弾性体で形成されており、本体ゴム弾性体16の軸直角方向断面において、その周方向幅寸法および高さ寸法が、それぞれ第一及び第二のスリット40,42よりも小さくされている。そして、軸直角方向に大きな荷重が入力された際、弾性ストッパ74の突出先端部が第一及び第二のスリット40,42の内周側壁面48,50を介して内筒金具12側に当接せしめられることにより、内外筒金具12,14の径方向の相対変位量を緩衝的に制限するストッパ機構が構成されている。
【0037】
ところで、上述の如き構造とされたトーコレクトブッシュ10においては、予め目的とする形状で内外筒金具12,14を形成した後、それらの間で本体ゴム弾性体16とコンプレッションゴム36を加硫成形して接着することによって製造することも可能であるが、望ましくは、目的寸法よりも大径の外筒金具14を用いて、内外筒金具12,14間に本体ゴム弾性体16とコンプレッションゴム36を加硫成形して接着せしめた後、外筒金具14に対して絞り加工等の縮径加工を施すことにより目的とする形状寸法とされることとなり、それによって、本体ゴム弾性体16やコンプレッションゴム36に対して予圧縮が加えられる。
【0038】
具体的には、例えば、図5に示されているように、外筒金具(14)の筒壁部の外径寸法が目的とする寸法よりも全体的に大径とされた成形金具14′を採用する。
【0039】
そして、これら内筒金具12と成形金具14′を所定のゴム加硫成形型内にセットして、本体ゴム弾性体16とコンプレッションゴム36を同時に一体加硫成形すると共に、内筒金具12と成形金具14′に加硫接着することによって、一体加硫成形品76を得る。その後、成形金具14′に対して八方絞り等の縮径加工を施すことによって、図1〜4に示されている如き、目的とする形状と寸法を有するトーコレクトブッシュ10を得ることが出来るのである。なお、特に本実施形態においては、図1に示されているように、外筒金具14の軸方向中間部分だけを所定長さに亘って大径部とした段付形状とされており、外筒金具14の圧入等によるサスペンション部材の装着作業性の向上が図られている。
【0040】
而して、このような構造とされたトーコレクトブッシュ10は、図6に示されているように、例えば、左右両側の車輪を支持する一対のトレーリングアーム78,78を車幅方向に延びるトーションビーム80で相互に連結固定せしめたトーションビーム式サスペンション機構に対して、一対が組み付けられる。即ち、その左右両側のトレーリングアーム78,78の各車両前端部分に形成された車両横方向に延びる装着孔に対して、外筒金具14を圧入固定する一方、内筒金具12をロッド等を介してボデーに固定することにより、図6において、その左右方向が車両左右方向で、上下方向が車両前後方向となる状態で装着される。また、各トレーリングアーム78の先端部分において、内筒金具12の固定プレート18と外筒金具14の傾斜板対向部26が、それぞれ、車両幅方向で内方に位置し、且つ車両の斜め前方に向かって突出せしめられるように、車両中央を前後方向に延びる対称軸(中央線):X−Xを挟んで、互いに対称的に装着される。
【0041】
すなわち、このような装着状態下においては、車両のコーナリング時に、タイヤ82,82から車両横方向に及ぼされる向心力:fによって、各トーコレクトブッシュ10に対して、中心軸に対して入力角度:θzだけ傾斜した方向で、内外筒金具12,14間に外力:Fが及ぼされることとなる。そして、かかる外力:Fによって、本体ゴム弾性体16とコンプレッションゴム36が弾性変形せしめられることにより、内外筒金具12,14が、相対的に変位せしめられて、サスペンション部材84の全体に、車両ボデーに対する相対的な変位が生ぜしめられることとなる。
【0042】
そこにおいて、かかるトーコレクトブッシュ10においては、図7に示されるように、その弾性主軸I,IIが、マウント中心軸86および軸直角方向線88に対して、それぞれ、所定角度:γaだけ傾斜して設定されており、それら両弾性主軸I,IIの方向に設定されたばね特性に基づいて、優れた操縦安定性が発揮されるようになっている。
【0043】
より具体的には、マウント中心軸86と軸直角方向線88を含む略水平な平面内において、ばね定数が最も大きくなる圧縮方向の弾性主軸Iと、ばね定数が最も小さくなる剪断方向の弾性主軸IIが、互いに直交して発現されることとなるが、それらは、何れも、マウント中心軸86および軸直角方向線88に対して、所定角度:γaだけ傾斜して設定されている。特に、本実施形態においては、弾性主軸Iのマウント中心軸86に対する傾斜角度:γaが、外力:Fのマウント中心軸86に対する傾斜角度:γb(なお、γbは、図6におけるθzに等しい)よりも大きく設定されている。換言すれば、弾性主軸Iよりもコーナリング時の外力:Fのマウント中心軸86に対する傾斜角度:γbの方が車両横方向に近づく方向に傾斜して設定されている。それ故、外力:Fの分力が弾性主軸Iと弾性主軸IIの各方向側に近づく方向に生ぜしめられるのであるが、これらは、外力:Fの入力方向を挟んだ両側に位置せしめられており、特に、弾性主軸I側の分力の方向が、外力:Fの入力方向よりも車両後方側に傾斜している一方、弾性主軸II側の分力の方向が、外力:Fの入力方向よりも車両前方側に傾斜している。しかも、剪断側の弾性主軸IIの方が、圧縮側の弾性主軸Iよりもばね定数が十分に小さく設定されている。
【0044】
それ故、外力:Fの弾性主軸II側の分力:F(II)と弾性主軸I側の分力:F(I)の比の値:F(II)/F(I)が、外力:Fによって生ぜしめられる内外筒金具12,14の相対的変位量:Sの弾性主軸IIに沿った方向の成分:δdと弾性主軸Iに沿った方向の成分:δcの比の値:δd/δcよりも、小さくされる。その結果、図7に示されているように、変位:Sのマウント中心軸86に対する傾斜角度:γcが、外力:Fの入力方向よりも車両横方向側に傾斜せしめられて、γc<γbとされ、以て、コーナリング時の横方向荷重に伴う内外筒金具12,14の変位方向が、外力:Fの入力方向よりも水平方向とされるようになっている。特に望ましくは、外力:Fの入力時に、マウント中心軸86の方向に生ぜしめられる弾性変形量:δaの方が、軸直角方向線88の方向に生ぜしめられる弾性変形量:δbより大きくなるようにされる。
【0045】
ここにおいて、外力:Fの入力時における変位:Sの方向は、マウント中心軸86の方向に生ぜしめられる弾性変形量:δaおよび軸直角方向線88の方向に生ぜしめられる弾性変形量:δbで表される。以下に、これらの弾性変形量:δa,δbの値を求める計算方法を示す。
【0046】
先ず、圧縮(弾性主軸I)側の弾性変形量:δc(mm)および剪断(弾性主軸II)側の弾性変形量:δd(mm)は、外力:F(N),弾性主軸Iのマウント中心軸86に対する傾斜角度:γa(度),外力:Fのマウント中心軸86に対する傾斜角度:γb(度),弾性主軸Iのばね定数:Ks1(N/mm)および弾性主軸IIのばね定数:Ks2(N/mm)を用いて、次のように表すことが出来る。
δc=(F×cos(γa−γb))/Ks1・・・(1)
δd=(F×sin(γa−γb))/Ks2・・・(2)
【0047】
また、変位:Sのマウント中心軸86に対する傾斜角度:γc(度)は、弾性主軸Iのマウント中心軸86に対する傾斜角度:γa(度),圧縮(弾性主軸I)側の弾性変形量:δc(mm)および剪断(弾性主軸II)側の弾性変形量:δd(mm)を用いて、次のように表すことが出来る。
γc=γa−(tan-1(δd/δc))・・・(3)
【0048】
そして、マウント中心軸86の方向に生ぜしめられる弾性変形量:δa(mm)および軸直角方向線88の方向に生ぜしめられる弾性変形量:δb(mm)は、変位:Sのマウント中心軸86に対する傾斜角度:γc(度),圧縮(弾性主軸I)側の弾性変形量:δc(mm)および剪断(弾性主軸II)側の弾性変形量:δd(mm)を用いて、次のように表すことが出来る。
δa=√(δc2 +δd2 )×cos(γc)・・・(4)
δb=√(δc2 +δd2 )×sin(γc)・・・(5)
【0049】
この(4),(5)式により、δaおよびδbを求めることが可能となる。そして、δaの値がδbの値より大きくなるように、且つ、δbの値が0に近づくようにチューニングすれば、目的とする特性を有するトーコレクトブッシュ10を得ることが出来る。
【0050】
その結果、コーナリング時において、横方向荷重が入力された際のトーコレクトブッシュ10の弾性変位によってサスペンション部材84に生ぜしめられるオーバステア方向の変位が抑制されて、車両の優れた操縦安定性が発揮され得るのである。
【0051】
しかも、圧縮側の高ばね定数の弾性主軸Iの方向は、車両前後方向に対して所定角度:θdだけ横方向に傾斜せしめられていることから、前後方向のばね特性も十分に柔らかく確保され得るのであり、それによって、優れた乗心地も発揮され得るのである。
【0052】
また、上述の説明からも明らかなように、コーナリング時において、横方向荷重が入力された際のトーコレクトブッシュ10の弾性変位によってサスペンション部材84に生ぜしめられるオーバステア方向の変位を抑制して操縦安定性を向上させるためには、トーコレクトブッシュ10の主軸ばね比を大きく設定することが有効である。ここにおいて、かかる主軸ばね比は、第一のスリット40の周方向幅寸法を大きくすることによって、有利に確保することが出来る。即ち、第一のスリット40の周方向幅寸法:αaを大きくすることによって、主軸ばね比を大きく設定し、以て、コーナリングに際しての荷重入力時において、サスペンション部材84のオーバステア方向への変位を抑制せしめて、より一層横方向に近い方向に変位せしめることが可能となるのである。
【0053】
さらに、本実施形態においては、第一のスリット40の周方向幅寸法:αaに比して、第二のスリット42の周方向幅寸法:αbが小さく設定されていることから、第一のスリット40によって車両前後方向での軟らかいばね特性と大きな主軸ばね比を充分に確保しつつ、本体ゴム弾性体16(第一および第二の径方向連結部56,58)のボリュームを有利に確保することが出来るのであり、それによって、目的とするばね特性と耐久性が高度に両立して達成可能となる。
【0054】
加えて、本実施形態では、一対の第三のスリット44,44が、第一のスリット40よりも第二のスリット42側に偏倚せしめられて、第一及び第二の径方向連結部56,58の周方向幅寸法が略同じに設定されていることから、何れか一方の径方向連結部への応力や変形の偏りが軽減乃至は防止されて、一層優れた耐久性と耐荷重性能を得ることが出来るのである。
【0055】
従って、上述の如き構造とされたトーコレクトブッシュ10においては、優れた耐久性と、車両前後方向での柔らかいばね特性とを、何れも有利に確保しつつ、コーナリングに際しての車両横方向荷重の入力時に内筒金具12と外筒金具14の弾性変位に起因するオーバステア傾向を抑制乃至は防止し、好適には弱いアンダーステア特性を付与せしめることにより、走行安定性を向上させることが出来るのであり、以て、十分な耐久性のもとに、乗心地と操縦安定性を高度に両立させることが可能となるのである。
【0056】
以上、本発明の一実施形態としてのトーコレクトブッシュについて詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでない。
【0057】
例えば、インナ軸部材とアウタ筒部材は、装着状態下に及ぼされる静的荷重等を考慮して、装着前の非荷重入力状態下で軸直角方向で偏心位置せしめられていても良い。
【0058】
また、軸方向と軸直角方向の入力荷重に対して分力作用を発揮する傾斜面の形状や大きさ等は、要求特性に応じて適宜に変更,設定されるものであって、何等、限定されるものではない。
【0059】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0060】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされたトーコレクトブッシュにおいては、インナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の突出する側に形成された第一のスリットの周方向幅寸法を、インナ軸部材を挟んで第一のスリットと反対側に形成された第二のスリットの周方向幅寸法より大きく設定したことにより、本体ゴム弾性体の耐久性や耐荷重性能を有利に確保しつつ、圧縮方向となる弾性主軸Iと剪断方向となる弾性主軸IIでのばね定数の比(主軸ばね比)の値を大きく設定することが可能となるのであり、それ故、自動車のサスペンション機構に採用することによって、車両の乗心地と操縦安定性を高次元で両立させることが出来るのである。
【0061】
また、本発明に従う構造とされたサスペンション機構においては、サスペンション部材の車両ボデーに対する車両前後方向での支持ばね特性が柔らかく設定され得ると共に、コーナリングに際して車両横方向の荷重が入力された際には、サスペンション部材の車両前後方向への変位、延いては横力ステアが抑えられ得ることから、車両の乗心地と操縦安定性を高次元で両立させることが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としてのトーコレクトブッシュの縦断面図である。
【図2】図1に示されたトーコレクトブッシュの左側端視図である。
【図3】図1に示されたトーコレクトブッシュの右側端視図である。
【図4】図3におけるIV−IV断面図である。
【図5】図1に示されたトーコレクトブッシュの絞り加工前の縦断面図である。
【図6】図1に示されたトーコレクトブッシュのサスペンション部材への装着状態を示す概略図である。
【図7】図6に示された右側のトーコレクトブッシュに作用する力を示す図である。
【符号の説明】
10 トーコレクトブッシュ
12 内筒金具
14 外筒金具
16 本体ゴム弾性体
18 固定プレート
26 傾斜板対向部
36 コンプレッションゴム
40 第一のスリット
42 第二のスリット

Claims (4)

  1. インナ軸部材と、その外方に離隔配置されたアウタ筒部材を、それらの径方向対向面間に介装された本体ゴム弾性体で連結すると共に、該インナ軸部材の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出するインナ側傾斜部を設ける一方、前記アウタ筒部材の軸方向一方の端部において、軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出し、該インナ側傾斜部に対して離隔して対向位置せしめられたアウタ側傾斜部を設けて、それらインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間にコンプレッションゴムを介在せしめたトーコレクトブッシュにおいて、
    前記インナ側傾斜部の突出方向となる径方向で前記インナ軸部材を挟んだ両側に位置して、それぞれ周方向に広がって、該インナ軸部材と前記アウタ筒部材の間を軸方向に延びる第一のスリットと第二のスリットを設けると共に、該インナ軸部材を挟んで該インナ側傾斜部の突出側に位置せしめられた該第一のスリットの周方向幅寸法を、該インナ軸部材を挟んで反対側に位置せしめられた該第二のスリットの周方向幅寸法よりも大きくして、且つ、該インナ軸部材および該アウタ筒部材の中心軸と該インナ側傾斜部および該アウタ側傾斜部が突出する径方向線とを含む一平面内において、かかる平面内に位置せしめられた圧縮方向の弾性主軸Iにおける、該中心軸に対する傾斜角度を、自動車への装着状態下でコーナリングに際して及ぼされる横方向荷重による外力の入力方向における、該中心軸に対する傾斜角度よりも大きく設定したことを特徴とするトーコレクトブッシュ。
  2. 前記インナ側傾斜部および前記アウタ側傾斜部の突出方向に対して直交する径方向で前記インナ軸部材を挟んだ両側に位置して、該インナ軸部材と該アウタ筒部材の径方向対向面間をそれぞれ軸方向に延びる一対の第三のスリットを設けると共に、該第三のスリットを、該インナ軸部材回りの周方向で、前記第一のスリットよりも前記第二のスリット側に偏倚せしめた請求項1に記載のトーコレクトブッシュ。
  3. 前記第一のスリットおよび前記第二のスリットの各外周側において、前記アウタ筒部材の内周面上で径方向内方に向かって突出する弾性ストッパを設けて、該弾性ストッパに対する前記インナ軸部材の当接によって、それらインナ軸部材とアウタ筒部材の径方向での相対的変位量を緩衝的に制限するストッパ機構を形成した請求項1又は2に記載のトーコレクトブッシュ。
  4. 左右のトレーリングアームをトーションビームで連結したサスペンション部材を、自動車のボデーに対して揺動可能に防振連結せしめたサスペンション機構において、
    前記サスペンション部材における車両前方側の左右両側部分に対して、請求項1乃至の何れかに記載のトーコレクトブッシュをそれぞれ装着せしめて、それらのトーコレクトブッシュを介して、該サスペンション部材を前記ボデーに防振連結すると共に、かかる左右両側のトーコレクトブッシュの中心軸を車両左右方向に向けて、且つ前記インナ側およびアウタ側の傾斜部を車両前後方向に突出せしめて、車両中央を前後方向に延びる中央線を挟んで左右両側で対称となるように配設せしめたことを特徴とするサスペンション機構。
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