JP3818833B2 - はんだ槽 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い温度の溶融はんだや錫リッチの溶融はんだそして腐食性のフラックスに対して、耐浸食性の強いはんだ槽を実現する技術に関する。
【0002】
従来の耐腐食性が強いとされているステンレス製のはんだ槽を使用しても、溶融はんだの温度が300℃を越えると喰われによる浸食が生じる。また、錫リッチのはんだ、例えば鉛フリーはんだにおいては、300℃以下においても同様の浸食が生じやすい。さらに、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)フリーフラックス等の塩素含有量の多いフラックスでは、その酸によりはんだ槽が浸食され腐食する。
【0003】
これらに原因する腐食・浸食は、はんだ槽の寿命を著しく短くする。そのため、耐浸食性のはんだ槽が求められている。
【0004】
【従来の技術】
電子部品を搭載したプリント配線板のフロー式はんだ付けを行う場合は、通常はその被はんだ付け面に予めフラックスを塗布しておいて(フラックス塗布工程)、続いてこのプリント配線板をその被はんだ付け部の温度が約100℃程度の温度になるように予備加熱し(予備加熱工程)、その後に溶融はんだとこのプリント配線板の被はんだ付け面とを接触させ、これによりこの被はんだ付け面の被はんだ付け部に溶融はんだを供給してはんだ付けが行われる(はんだ付け工程)。いわゆるフロー式はんだ付け方法の標準的なはんだ付け手順である。
【0005】
はんだ付け工程においては、通常はんだ槽に収容された溶融はんだの噴流波を形成しておいて、この噴流波にプリント配線板の被はんだ付け部を接触させてはんだ付けが行われる。
【0006】
図7を参照して、従来のはんだ槽を説明する。
【0007】
図7は、従来のはんだ槽を説明するための図で、図7(a)は、はんだ槽の縦断面図、(b)は、(a)のフランジ管部分の拡大図である。
【0008】
すなわち、ステンレス製の容器2に孔(透孔)12を設けて、この孔12にステンレス製のフランジ管6を嵌合してその一端を容器2の内面側において溶接部20で溶接し、このフランジ管6にステンレス製のシース10のシーズヒータ13を嵌合して前記フランジ管6の他端側(容器2の外面側)において溶接部20で溶接して構成されている。図7(b)に示す溶接部20はこれらの溶接箇所を示してあり、それぞれステンレス相互が溶接されている。
【0009】
これにより、フランジ管6とシーズヒータ13のシース10とを同じ端部位置の同心円周において溶接することができるようになり、肉厚の薄いシーズヒータ13のシース10を容易かつ堅牢に容器2に固定することができる。また、溶接部20の密封性も良好に保持することができる。また、シーズヒータ13のシース10よりも肉厚の厚いフランジ管6を容器2に溶接する構成であるので、容器2とフランジ管6との溶接も容易かつ堅牢で密封性良く固定することができる。
【0010】
なお、ステンレス製のシース10のシーズヒータ13は、このステンレス製のシース10内にヒータ線14を設け、その周囲に熱伝導率が高く耐熱性の耐熱絶縁材15を充填して構成され、このステンレス製のシース10の端部に封口部材16とヒータ線14への接続用の端子17を設けて構成されている。また、図7(a)において、18ははんだを示す。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
高温環境で使用される電子装置のはんだ付け、例えばプリント配線板のはんだ付けには、例えばはんだ付け時のはんだ温度が300℃以上の高温はんだが使用されている。
【0012】
また、鉛の毒性が環境や人体に与える負荷の大きさから鉛フリーはんだが使用されるようになってきているが、主にその主成分が錫である錫リッチの鉛フリーはんだが使用されている。
【0013】
さらに、フラックス中のVOCが光化学スモッグ発生の原因になったり発ガン性がある等のことから、VOCを含まないVOCフリーフラックスが使用されるようになってきている。その代表的なものは、塩素含有量の多い水溶性フラックスである。
【0014】
一方で、今まで耐腐食性が強いとされているステンレス製の容器を使用しても、溶融したはんだの温度が300℃を越えると溶融したはんだによりはんだ槽が喰われて浸食が生じる。また、錫リッチのはんだ例えば鉛フリーはんだにおいては、300℃以下においても同様の浸食が生じやすい。特には、錫含有率が85重量%以上の錫リッチのはんだにおいて浸食が顕著に進行するようになる。これは、溶融したはんだの錫中にステンレス材のニッケルが溶出しやすくなるからである。さらに、VOCフリーフラックス等の塩素含有量の多いフラックスでは、その酸によりはんだ槽が浸食される。
【0015】
これらのことは、はんだ槽内のはんだを加熱して溶融状態に保持するシーズヒータにおいても同様である。すなわち、通常はシーズヒータのシースにはステンレス材が使用されているからである。
【0016】
そして、これらに原因する浸食は、はんだ槽の寿命を著しく短くする。そのため、耐浸食性のはんだ槽が求められいる。
【0017】
本発明の目的は、高温はんだや錫リッチの鉛フリーはんだ、そして、塩素含有量の多いフラックス等の腐食性や浸食性の高い部材を使用しても、長期間にわたって安定かつ安全にはんだ付け作業を行うことができるはんだ槽を実現することにある。
【0024】
【問題を解決するための手段】
(1)溶融したはんだを収容する容器を備えたはんだ槽であって、ステンレス材により前記容器を構成する。他方で、前記容器にシーズヒータを設けるための透孔を設け、チタン層とステンレス層とから成るクラッド材を使用して一端側に前記チタン層を他端側に前記ステンレス層を有するように構成したフランジ管を前記透孔に嵌合して前記容器の内面で前記容器と前記フランジ管のステンレス層とを溶接して固定し、チタン製のシースにより構成されたシ―ズヒータを前記フランジ管に嵌合して前記フランジ管のチタン層とシーズヒータのチタン製のシースとを溶接して固定するように構成する。
【0025】
この構成により、ステンレス材により構成された容器に、チタン製のシースにより構成されたシーズヒータを設けることが可能となる。したがって、チタン製のシースにより構成したシーズヒータを使用するので溶融はんだよりも一層高温であるシーズヒータの浸食も防止することができるようになる。
【0026】
その結果、溶融はんだの温度が300゜C以上ではないが、錫−鉛共晶はんだのはんだ付け温度(約245゜C程度)よりも高く、被はんだ付けワークに塗布されるフラックスにも塩素が含有されていないような場合に、溶融はんだの温度よりも高温のシーズヒータの浸食を抑止することができる。すなわち、このような個別の解決課題に対応したはんだ槽を低コストで実現することができる。
【0027】
(2)さらに前記(1)の構成において、ステンレス材により構成された容器の内面にセラミックス層が形成されて成るように構成する。
【0028】
これにより、セラミックス層を形成した容器にチタン製のシースのシーズヒータを設けることが可能となる。
【0029】
これにより、強浸食性の溶融はんだ、すなわち錫の含有率が85重量%以上の錫リッチのはんだ、特に鉛を含まない鉛フリーはんだに対して、長期間にわたって安定にはんだ槽の機能を果たすことができるようになる。また、チタン製のシースのシーズヒータが使用可能となり、高温はんだに対する耐腐食性を高めることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
先ず参考までに、耐腐食性がステンレスよりも優れているチタン層を有するチタンとステンレスのクラッド材を使用して容器を構成する技術について参考−1と参考−2において解説し、その後にステンレスの容器にチタンのシーズヒータをフランジ管を介して溶接して設けるという本発明にかかるはんだ槽の実施例について説明する。
【0031】
〔参考−1〕図1は、本発明の参考−1のはんだ槽の構成を説明するための図で、図1(a)は、はんだ槽の縦断面図、(b)は、(a)のフランジ管部分の拡大図である。
【0032】
すなわち、チタンとステンレスのクラッド材を使用してその内面側がチタン層1aで外面側がステンレス層1bとなるように溶融したはんだ18の容器1を構成し、フランジ管4を取り付けるための透孔12を設ける。なお、このようなクラッド材は圧延法や溶接法、爆着法、鋳ぐるみ法、等々の方法により製造されている。なお、図7で説明したその他の符号の説明は省略する。
【0033】
この容器1にフランジ管4を設ける構成は図7に示す従来例と同様であるが、チタン製のフランジ管4を使用し、容器1の内面におけるチタン層1aとフランジ管4とのチタン相互を溶接部20aで溶接し、このフランジ管4にチタン製のシース9のシーズヒータ13aを嵌合して、フランジ管4の外側の端部の同心円周部分においてチタン相互を溶接して固定する構成である。図1(b)に溶接部20aが示してある。
【0034】
これにより、溶融したはんだ18に接触する容器1内面および溶融したはんだ18に接触しこの溶融したはんだ18よりも高温となるシーズヒータ13aをチタン材により構成することが可能となる。
【0035】
すなわち、チタン材はステンレス材よりも耐腐食性が一層高いので、高温はんだや錫リッチの鉛フリーはんだおよび塩素含有量の多いフラックスが塗布された被はんだ付けワークを使用してはんだ付け作業を行っても、浸食はほとんど進行することがなく、長期間にわたって安定にはんだ槽の機能を果たすことができる。
【0036】
しかも、チタン材の脆性をステンレス層1bのステンレス材が備える強靭性により補強して堅牢な容器を実現することができる。また、容器1のチタン層1aおよびチタン製のフランジ管4そしてチタン製のシース9の全てがチタン相互の溶接により固定できるので、シーズヒータ13aを容易かつ堅牢に容器1に固定することが可能となり、堅牢なはんだ槽を容易に製造することができる。
【0037】
〔参考−2〕図2は、本発明の参考−2のはんだ槽の構成を説明するための図で、図2(a)は、はんだ槽の縦断面図、(b)は、(a)のフランジ管部分の拡大図である。また、図3は、フランジ管の製作手段を説明するための図である。
【0038】
すなわち、容器1は、前記参考−1と同様にチタンとステンレスのクラッド材を使用してその内面側がチタン層1aで外面側がステンレス層1bとなるように溶融したはんだ18を収容する容器1を構成し、フランジ管5を取り付けるための透孔12を設ける。
【0039】
そして、フランジ管5は、クラッド材を使用し、図2(b)に示すように容器1の内面におけるチタン層1aとフランジ管5のチタン層5aとを相互に溶接部20aで溶接し、このフランジ管5にステンレス製のシース10のシーズヒータ13を嵌合して、フランジ管5の外側の端部の同心円周部分においてフランジ管5のステンレス層5bとシーズヒータ13のステンレス製のシース10相互を溶接部20で溶接して固定する構成である。これにより、チタン層1aを有する容器1にステンレス製のシース10のシーズヒータ13を堅牢に固定することができる。
【0040】
なお、図2に示すようなチタン層5aとステンレス層5bとからなるクラッド材製のフランジ管5は、図3に示すようにして得ることができる。すなわち、ステンレス層8bとチタン層8aとからなるクラッド材(例えば、爆着クラッド鋼)8を縦方向にパイプ状に打ち抜いたり、あるいは切削加工することにより得ることができる。
【0041】
以上のようにしてはんだ槽を構成することにより、高温はんだや錫リッチの鉛フリーはんだ、塩素含有量の多いフラックスが塗布された被はんだ付けワークを使用してはんだ付け作業を行っても、浸食はほとんど進行することがなく、長期間にわたって安定にはんだ槽の機能を果たすことができるはんだ槽を得ることができる。
【0042】
なお、この参考−2では、ステンレス製のシース10のシーズヒータ13を使用するので、溶融したはんだ18の温度はそれ程には高くはないが(例えば、250゜C〜300゜C程度)、塩素含有量の多いフラックスが塗布された被はんだ付けワークのはんだ付け作業を行うような場合のはんだ槽として好適である。
【0043】
また、前記参考−1と同様に、堅牢な容器を実現することができるとともに、そのシース10が容器1の内面とは異なる材質のシーズヒータ13を容易かつ堅牢に容器1に固定することが可能となり、堅牢なはんだ槽を容易に製造することができる。
【0044】
〔実施形態例−1〕図4を参照して、本発明にかかるはんだ槽の実施形態例−1を説明する。図4は、本発明の実施形態例−1のはんだ槽の構成を説明するための図で、図4(a)は、はんだ槽の縦断面図、(b)は、(a)のフランジ管部分の拡大図である。
【0045】
すなわち、容器2は、図7に示す従来例と同様にステンレス材を使用して構成したものであるが、シーズヒータは、チタン製のシース9を使用したシーズヒータ13aを使用して構成したものである。
【0046】
そのため、フランジ管5にもクラッド材を使用し、図4(b)に示すように容器2の内面においてこのステンレス製の容器2とフランジ管5のステンレス層5bとを相互に溶接部20で溶接し、このフランジ管5にチタン製のシース9のシーズヒータ13aを嵌合して、フランジ管5の外側の端部の同心円周部分においてフランジ管5のチタン層5aとシーズヒータ13aのチタン製のシース9相互を溶接部20aで溶接して固定する構成である。
【0047】
これにより、ステンレス製の容器2にチタン製のシース9のシーズヒータ13aを固定することができる。なお、クラッド材を使用したフランジ管5については、参考−2において説明した部材と同様にして得ることができる。
【0048】
以上のようにしてはんだ槽を構成することにより、溶融したはんだ18の温度はそれ程には高くはないが(例えば、250℃〜300℃程度であるが、通常使用されてきた錫−鉛共晶はんだの使用温度245℃程度よりも高い場合)、溶融したはんだの温度よりも温度の高いシーズヒータの浸食が,心配されるような場合に、耐久性の高いはんだ槽を得ることができる。
【0049】
例えば、必要とされるヒータ電力を多数のシーズヒータにより供給するように設計可能な場合は、シーズヒータの温度は溶融はんだの温度に対してそれ程には高くはならないが、1本あるいは少数のシーズヒータにより供給するように設計する場合にはシーズヒータの温度がかなり高くなる。
【0055】
〔実施形態例−2〕図6を参照して、本発明にかかるはんだ槽の実施形態例−2を説明する。図6は、本発明の実施形態例−2のはんだ槽の構成を説明するための図で、図6(a)は、はんだ槽の縦断面図、(b)は、(a)のフランジ管部分の拡大図である。
【0056】
すなわち、本実施形態例−2は、図4に示す実施形態例−1の容器2の内面にセラミックス材を塗布する等してセラミックス層21を形成して構成したはんだ槽である。
【0057】
したがって、高温はんだや錫リッチの鉛フリーはんだ(例えば、錫の含有率が85重量%以上の鉛フリーはんだ)対して極めて耐浸食性の高いはんだ槽を実現することができる。また、塩素含有量の多いフラックスが塗布されたプリント配線板のはんだ付け作業を行う場合においても、はんだ槽の容器2が浸食されることもなく。極めて安定したはんだ槽を得ることができる。その結果、長期間にわたって安定にはんだ槽の機能を果たすことができるようになる。
【0058】
また、チタン層5aおよびステンレス層5bとから成るクラッド材により構成したフランジ管5を使用することにより、セラミックス層21を形成した容器2にチタン製のシース9のシーズヒータ13aを堅牢に設けることが可能となり、耐浸食性が高く、温度の高いシーズヒータ13aを設けることができるようになる。なお、図5に示すはんだ槽は参考−3を解説するもので、容器2やシーズヒータ13およびその固定構造は図7で示す従来例と同様であるが、容器2の内面およびシーズヒータ13の表面にセラミックス材を塗布する等してセラミックス層21を形成して構成したはんだ槽である。図5(a)は、はんだ槽の縦断面図、(b)は、(a)のフランジ管部分の拡大図を示している。
【0059】
【発明の効果】
以上のように本発明にかかるはんだ槽によれば、はんだ槽に対して浸食性の高い条件ではんだ付け作業を行うような場合、すなわち、従来から通常使用されてきた錫−鉛共晶はんだの使用温度(通常約245℃程度)を越えた高い温度の溶融したはんだを使用する場合や、錫の含有率が高く85重量%を越えるようなはんだを使用するような場合、特には錫の含有率が高く85重量%を越えるような鉛フリーはんだを使用するような場合、また、塩素含有量の多いフラックス(例えば、水溶性フラックス等のVOCフリーフラックス)をプリント配線板等の被はんだ付けワークに塗布してはんだ付けを行うような場合において、耐浸食性が高く長期間に渡って安定かつ安全にその機能を果たすはんだ槽を実現することができようになる。
【0060】
その結果、環境負荷の少ない鉛フリーはんだやVOCフリーフラックスを使用して、生活の必須のインフラとなった、特にプリント配線板等の電子装置のはんだ付け作業を安定して行うことができるようになる。また、環境負荷や人体に対する毒性の低い部材を使用して安心してはんだ付け作業を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考−1のはんだ槽を説明するための図である。
【図2】参考−2のはんだ槽を説明するための図である。
【図3】フランジ管の製作手段を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態例−1のはんだ槽を説明するための図である。
【図5】参考−3のはんだ槽を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態例−2のはんだ槽を説明するための図である。
【図7】従来のはんだ槽を説明するための図である。
Claims (2)
- 溶融したはんだを収容する容器を備えたはんだ槽であって、
ステンレス材により前記容器を構成し、
前記容器にシーズヒータを設けるための透孔を設け、
チタン層とステンレス層とから成るクラッド材を使用して一端側に前記チタン層を他端側に前記ステンレス層を有するように形成したフランジ管を前記透孔に嵌合して前記容器の内面で前記容器と前記フランジ管のステンレス層とを溶接して固定し、
チタン製のシースにより構成されたシーズヒータを前記フランジ管に嵌合して前記フランジ管のチタン層と前記シーズヒータのチタン製のシースとを溶接して固定すること、
を特徴とするはんだ槽。 - ステンレス材により構成された容器の内面にセラミックス層が形成されていること、
を特徴とする請求項1記載のはんだ槽。
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