JP3783431B2 - ハイブリッド車の故障診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイブリッド車の故障診断装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、エンジン(例えば、ガソリンエンジン)を搭載した自動車においては、燃料タンク内の燃料の一部が蒸発して燃料ベーパ(蒸発燃料)となるが、この燃料ベーパをそのまま大気中に排出すると、大気汚染を招くとともに、燃料資源の逸失となる。そこで、通常、自動車には、燃料タンク内で発生した燃料ベーパを吸気通路に回収(導入)し、燃料として活用するために、蒸発燃料回収系統が設けられる。
【0003】
かかる蒸発燃料回収系統においては、普通、燃料タンク内の上部空間部と吸気通路とを連通するパージ通路(蒸発燃料回収通路)が設けられ、該パージ通路に、燃料ベーパを吸着するキャニスタが介設されている。また、キャニスタには、先端が大気に開放された大気開放通路が設けられている。そして、キャニスタよりも吸気通路側のパージ通路には、該パージ通路を開閉するパージ弁が介設されている。かくして、燃料タンク内で発生した燃料ベーパは、まずキャニスタに吸着され、キャニスタに吸着された燃料ベーパは、パージ弁が開かれたときに、大気開放通路からキャニスタに導入された空気によってパージ通路を介して吸気通路にパージされる。
【0004】
しかしながら、かかる蒸発燃料回収系統においては、パージ弁の作動不良あるいは、パージ通路の破損などといった異常ないしは故障が生じることがある。そこで、一般に蒸発燃料回収系統には、かかる異常ないしは故障の有無を診断する故障診断装置が設けられる。そして、かかる故障診断装置としては、吸気通路内の吸気負圧を蒸発燃料回収系統に導入し、その圧力変化に基づいて蒸発燃料回収系統の異常ないしは故障の有無を判定するようにしたものが広く用いられている(例えば、特開平5−256214号公報参照)。
【0005】
また、一般にエンジンにおいては、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)、NOx(窒素酸化物)等の大気汚染物質が三元触媒等の排気ガス浄化触媒によって浄化されるようになっているが、かかる排気ガス浄化触媒は、高温化、触媒毒による被毒等により劣化して触媒活性が低下することがある。そこで、近年、排気ガス浄化触媒の劣化の有無を判定(診断)する故障診断装置、例えば触媒コンバータの上流側と下流側にそれぞれO2センサ(酸素センサ)を設け、両O2センサの検出値から求められる反転比に基づいて排気ガス浄化触媒の劣化の有無を判定するようにした故障診断装置が用いられている。なお、ここで「反転比」とは、一定時間内における、上流側O2センサのリッチ・リーンの反転回数Aと、下流側O2センサのリッチ・リーンの反転回数Bとの比A/Bで定義される数値である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、地球温暖化の防止等の観点から、自動車のCO2排出量の削減が求められている。そこで、動力源として、エンジン(例えば、ガソリンエンジン)と電気モータとを用いて燃費性能を高めるようにしたハイブリッド車が注目を集めている。かかるハイブリッド車においては、エンジンは、比較的高効率状態で稼働するので、燃費性能が大幅に高められ、ひいてはCO2排出量が大幅に削減される。
【0007】
そして、かかるハイブリッド車においても、通常、燃料ベーパの大気中への放出を防止するために、普通のガソリンエンジン車と同様に蒸発燃料回収系統とその故障診断装置とが設けられる。しかしながら、ハイブリッド車においては、エンジンが停止されて電気モータのみで走行することが多いので、蒸発燃料回収系統に吸気負圧を導入して故障診断を行う場合、該故障診断を実行すべき時期ないしはタイミングを設定するのが困難であるといった問題がある。また、ハイブリッド車においては、前記のとおりエンジンを比較的高効率で稼働させる関係上、吸気負圧が発生しにくいので、蒸発燃料回収系統の故障診断がますますむずかしくなるといった問題がある。
【0008】
また、ハイブリッド車においても排気ガス浄化触媒が設けられるが、この場合エンジンは、大半、低回転・高負荷領域で運転されるので、反転比による排気ガス浄化触媒の劣化の判定に適した運転状態、すなわち排気ガス量が中程度の状態となることが非常に少なく、なかなか故障診断を行うことができないといった問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、蒸発燃料回収系統の故障ないしは異常、さらには排気ガス浄化触媒の劣化を的確かつ容易に診断することができるハイブリッド車の故障診断装置を提供することを解決すべき課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明の第1の態様にかかるハイブリッド車の故障診断装置は、(a)それぞれ駆動輪を駆動することができるエンジン(例えば、ガソリンエンジン)と電動式の駆動モータとが設けられ、車両運転状態(バッテリ充電状態を含む)に応じて駆動輪の駆動形態(駆動源)を変更しつつ走行するようになっているハイブリッド車の故障診断装置であって、(b)燃料タンクと、該燃料タンクとエンジンの吸気通路とを連通する蒸発燃料回収通路(パージ通路)とを備えた蒸発燃料回収系統と、(c)吸気通路内の負圧を蒸発燃料回収系統に導入し、該負圧導入による蒸発燃料回収系統内の圧力変化に基づいて、蒸発燃料回収系統の異常判定(故障診断)を行う異常判定手段と、(d)車両運転開始後においてエンジンが燃料タンク内の燃料蒸発量が少ない最初のエンジン運転中に異常判定手段が蒸発燃料回収系統の異常判定を実行できるよう(蒸発燃料回収系統に負圧を導入できるよう)、エンジンを異常判定に適した吸気負圧の大きい所定の異常判定運転状態で運転させる異常判定制御手段とが設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
このハイブリッド車の故障診断装置によれば、基本的には燃費効率向上の観点から高負荷運転が行われ、蒸発燃料回収系統の故障診断に適した運転状態が得にくいハイブリッド車においても、エンジンの運転継続時間が比較的短く燃料タンク内の燃料の温度が高くなっていないため、燃料蒸発量が少なくかつ吸気負圧が大きい、蒸発燃料回収系統の故障診断に適した運転状態で、該故障診断を行うことができる。したがって、燃費性能を高めつつ、蒸発燃料回収系統の故障ないしは異常を的確かつ容易に判定することができる。
【0012】
上記ハイブリッド車の故障診断装置において、異常判定運転状態としては、例えば、エンジンが中回転・中負荷領域(吸気負圧が大きく、エンジンが安定する領域)で運転される状態があげられる。また、エンジン温度が所定の基準温度より高いときに実空燃比が目標空燃比となるよう、エンジンへの燃料供給量をフィードバック制御(O2フィードバック制御)する空燃比制御手段が設けられている場合は、異常判定運転状態として、空燃比制御手段によるフィードバック制御が実行可能な状態があげられる。この場合、ハイブリッド車のような制約の多い運転条件下でも、パージによる実空燃比の変動を抑制しつつ、蒸発燃料回収系統の故障診断をより的確に実行することができる。
【0013】
上記ハイブリッド車の故障診断装置においては、エンジンが、車両高負荷運転時(例えば、急加速時、高速走行時等)又はバッテリ充電量減少時に運転されるようになっているのが好ましく、この運転時にはエンジンが高効率となるように(例えば、低回転・高負荷)制御されるのがより好ましい。このようにすれば、エンジンが運転される機会が少ないハイブリッド車であるのにもかかわらず、蒸発燃料回収系統の故障診断が確実に行われる。
【0014】
上記ハイブリッド車の故障診断装置においては、エンジンが異常判定運転状態にある場合において車両高負荷運転が検出されたときには、吸気負圧を増大させる異常判定運転状態が維持(優先)されるのが好ましい。このようにすれば、エンジン出力を十分に確保することができ、かつ負圧発生モードが少ないのにもかかわらず、蒸発燃料回収系統の故障診断を確実に行うことができる。
【0015】
上記ハイブリッド車の故障診断装置においては、異常判定制御手段が、車両運転開始後において所定期間内(例えば、燃料蒸発量が少ないうち)にエンジンの運転を強制的に開始させて異常判定を行うようになっているのが好ましい。なお、上記所定期間は、外気温、車速等に応じて設定するのが好ましい。このようにすれば、燃料蒸発量が少ないときに蒸発燃料回収系統の故障診断を行うことができ、該故障診断の精度が高められる。
【0016】
上記ハイブリッド車の故障診断装置においては、異常判定制御手段が、車両運転中に車両高負荷運転が検出されたときにはエンジンに高効率運転を開始させる一方、車両高負荷運転が終了した場合でも、エンジン温度が上記所定の基準温度となるまでエンジンに運転を継続させて異常判定を行うようになっているのが好ましい。このようにすれば、エンジンの暖機運転を利用して、蒸発燃料回収系統の故障診断を行うことができる。
【0017】
上記ハイブリッド車の故障診断装置において、エンジンの排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒と、該排気ガス浄化触媒の劣化判定を行う触媒劣化判定手段とが設けられている場合は、触媒劣化判定手段が、異常判定制御手段による蒸発燃料回収系統への負圧の導入が終了した後もエンジンに運転を継続させ、排気ガス浄化触媒の温度が所定温度以上となった後で劣化判定を行うようになっているのが好ましい。このようにすれば、蒸発燃料回収系統の故障診断を利用して、排気ガス浄化触媒の劣化診断を的確かつ容易に行うことができる。
【0018】
上記ハイブリッド車の故障診断装置においては、エンジン出力を電力に変換することができるエンジンモータとバッテリとが設けられ、エンジンモータが、異常判定制御手段によって異常判定が行われているときに、エンジン出力を電力に変換してバッテリを充電するようになっているのが好ましい。このようにすれば、バッテリの充電が促進される。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。まず、本発明にかかる故障診断装置を備えたハイブリッド車の概略構成を説明する。
図1に示すように、ハイブリッド車Wには、その動力源として、エンジン1と駆動モータ2とが設けられている。ここで、エンジン1は、ガソリンを燃料として用いて駆動力(トルク)を生成するようになっている。また、駆動モータ2は、バッテリ3から供給される電力をエネルギ源として駆動力(トルク)を生成するようになっている。ここで、バッテリ3は、エンジン1により回転駆動されるエンジンモータ4によって適宜充電される。なお、エンジンモータ4は、エンジン1の起動時にはバッテリ3から通電されてエンジン1を起動(クランキング)する。
【0021】
ここで、駆動モータ2及びエンジンモータ4は、いずれも通電されたときには回転してトルクを出力する一方、力学的に回転駆動されたときには発電する直流モータであり、したがって両者は本質的には同一の機能を有している。ただ、駆動モータ2は、主としてバッテリ3からの通電により該ハイブリッド車Wの駆動トルクを出力するために用いられる一方、従として減速時に発電(回生)してバッテリ3を充電するためにも用いられ、他方エンジンモータ4は、主としてエンジン1により回転駆動されて発電しバッテリ3を充電するために用いられる一方、従としてバッテリ3から通電されてエンジン駆動用トルクを出力するためにも用いられるのに過ぎない。
【0022】
そして、このハイブリッド車Wにおいては、エンジン1の駆動力は、順に、トルクコンバータ5(T/C)と、クラッチ6と、自動変速機7(A/T)と、差動機構8(ディファレンシャル装置)とを介して左右の駆動輪9、10に伝達されるようになっている。なお、自動変速機7から差動機構8への駆動力の伝達は、ギヤトレイン11の一部を介して行われる。
【0023】
他方、駆動モータ2の駆動力は、ギヤトレイン11と、差動機構8とを介して駆動輪9、10に伝達されるようになっている。ここで、バッテリ3は、後で説明するように、エンジンモータ4又は駆動モータ2(回生時)によって充電される一方、駆動モータ2(場合によってはエンジンモータ4)に放電して該駆動モータ2を駆動するようになっているが、該電力制御(充電、放電の切り替えを含む)は、システムコントローラ14(コンピュータ)によって制御される電力コントローラ15によって行われるようになっている。
【0024】
ここで、エンジン1の排気ガスは、排気通路12を介して大気中に排出されるようになっている。そして、排気通路12には、排気ガス中の大気汚染物質(例えば、HC、CO、NOx等)を浄化するために、三元触媒を用いた触媒コンバータ13が介設されている。
また、システムコントローラ14は、ハイブリッド車Wの各種制御を行うようになっているが、このシステムコントローラ14には、アクセルペダル16の踏み込み量α(アクセル開度α)、ブレーキペダル17の踏み込みの有無、車速V、エンジン水温Tw、バッテリの充電状態ないしはバッテリ電圧、吸入空気量Qa、エンジン回転数Ne、スロットル開度Tv、排気ガス中のO2濃度(実空燃比)等の各種制御情報が入力されるようになっている。
【0025】
次に、エンジン1ないしはその付属装置の具体的な構成を説明する。
図2に示すように、エンジン1に燃料燃焼用の空気を供給するために吸気通路20(吸気系統)が設けられ、この吸気通路20には、大気中から空気を取り入れるために共通吸気通路21が設けられている。この共通吸気通路21には、吸入空気(吸気通路20に導入された空気)の流れ方向(図2中では左向き)にみて、上流側から順に、吸入空気中のダスト等を除去するエアクリーナ22と、吸入空気量を検出するエアフローセンサ23と、吸入空気を絞るスロットル弁24とが設けられている。そして、共通吸気通路21の下流端は吸入空気の流れを安定させるサージタンク25(容積部)に接続されている。
【0026】
サージタンク25には、エンジン1の各気筒(図示せず)にそれぞれ吸入空気を供給する複数(1つのみ図示)の独立吸気通路26が接続され、各独立吸気通路26にはそれぞれ、吸入空気中に燃料を噴射(供給)する燃料噴射弁27が設けられている。また、エンジン1の排気ガスを排出する排気通路12には、触媒コンバータ13のやや上流側に配置される上流側O2センサ28(酸素センサ)と、触媒コンバータ13のやや下流側に配置される下流側O2センサ29(酸素センサ)とが設けられている。
【0027】
上流側O2センサ28及び下流側O2センサ29は、それぞれ、実空燃比(実際の空燃比)が理論空燃比(A/F=14.7、λ=1)よりもリッチであるかリーンであるかによって出力(電圧)が大きく変化するセンサであって、例えば0〜1Vの出力範囲において、しきい電圧VB(概ね0.4V)を境として出力電圧が大きく変化する。なお、出力電圧が高い方がリッチであり、低い方がリーンである。
【0028】
ここで、上流側O2センサ28は、主として、実空燃比が理論空燃比となるように燃料噴射弁27からの燃料噴射量をフィードバック制御(O2フィードバック制御)するために用いられる。また、両O2センサ28、29は、後で詳しく説明するように、反転比に基づいて三元触媒(排気ガス浄化触媒)の劣化判定を行うために用いられる。なお、各O2センサ28、29には、それぞれ、活性温度を確保するための電気ヒータが内蔵されている。
【0029】
以下、エンジン1の燃料噴射弁27に燃料(ガソリン)を供給するための燃料供給系統の構成を説明する。この燃料供給系統には、燃料を貯留する燃料タンク31が設けられ、この燃料タンク31内の燃料は、燃料ポンプ32によって、燃料供給通路33を介して燃料噴射弁27に供給されるようになっている。そして、燃料噴射弁27で噴射されなかった余剰の燃料は、燃料還流通路34を介して燃料タンク31に戻されるようになっている。なお、燃料供給通路33には燃料中の異物を除去する燃料フィルタ35が介設され、また燃料還流通路34には、吸気圧に応じて燃料の供給圧力を調整するプレッシャレギュレータ36が介設されている。
【0030】
以下、燃料タンク31内で発生した燃料ベーパ(蒸発燃料)を吸気通路20に回収(導入)して、燃料として活用するための蒸発燃料回収系統(蒸発燃料供給経路)を説明する。この蒸発燃料回収系統(燃料タンク31を含む)には、燃料タンク31の上部空間部とサージタンク25(吸気通路20)とを連通するパージ通路37(蒸発燃料回収通路)が設けられ、このパージ通路37には燃料ベーパを吸着するキャニスタ38が介設されている。ここで、燃料ベーパの流れ方向(図2中では概ね右向き)にみて、キャニスタ38より上流側のパージ通路37(以下、これを「上流側パージ通路37」という)には、燃料タンク31内の圧力(以下、これを「タンク内圧」という)を検出する圧力センサ39と、該上流側パージ通路37を開閉する制御弁40(PCTVバルブ)とが設けられている。なお、上流側パージ通路37の上流端近傍において燃料タンク31内には、転倒時等において上流側パージ通路37への液体燃料の流入を防止するためのロールオーバーバルブ41が設けられている。他方、キャニスタ38より下流側のパージ通路37(以下、これを「下流側パージ通路37」という)には、該下流側パージ通路37を開閉するパージ弁43(パージバルブ)が設けられている。
【0031】
また、キャニスタ38には、先端が大気に開放された大気開放通路44が設けられている。そして、この大気開放通路44には、キャニスタ側から先端側に向かって順に、該大気開放通路44を開閉する大気開放弁45(CDCVバルブ)と、該大気開放通路44を介してキャニスタ38に導入される空気に含まれるダストを除去するエアフィルタ46とが設けられている。
【0032】
ところで、ハイブリッド車Wには、前記のとおり、駆動源として、エンジン1と駆動モータ2とが設けられ、これらの駆動形態(稼働形態)は、該ハイブリッド車Wの運転状態に応じて好ましく変更されるようになっているが、以下該ハイブリッド車Wにおける具体的な駆動形態を、適宜図3〜図8を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する駆動形態は単なる例示であって、本発明はかかる駆動形態に限定されるものでないのはもちろんである。
【0033】
(1)発進時
図3に示すように、発進時には原則的に、クラッチ6が解放されてエンジン1が停止する一方、バッテリ3から駆動モータ2に電力が供給され、該駆動モータ2が力行する。このとき、駆動輪9、10は、駆動モータ2のみによって駆動される。なお、エンジンモータ4は、エンジン1が停止し、かつバッテリ3から電力が供給されないので、何ら活動しない(停止する)。
【0034】
但し、図4に示すように、急発進時には、バッテリ3から駆動モータ2に電力が供給されて駆動モータ2が力行するとともに、クラッチ6が締結されかつエンジン1が起動されて高出力運転を行う。さらに、バッテリ3からエンジンモータ4にも電力が供給され、エンジンモータ4も力行する。かくして、駆動輪9、10は、エンジン1と、駆動モータ2と、エンジンモータ4とによって強力に駆動される。
【0035】
(2)エンジン起動時
図5に示すように、エンジン起動時には、クラッチ6が解放され、バッテリ3からエンジンモータ4に電力が供給され、エンジンモータ4が力行する。このとき、エンジンモータ4によってエンジン1が起動(クランキング)される。なお、駆動モータ2は停止している(但し、走行中にエンジン1が起動される場合は停止していない)。
【0036】
(3)減速時
図6に示すように、減速時には、エンジン1は停止し、クラッチ6が解放される。このとき、駆動モータ2が駆動輪9、10によって逆駆動され、駆動輪9、10の駆動力が駆動モータ2に回生される。かくして、駆動モータ2は発電し、この電力によりバッテリ3が充電される。
【0037】
(4)急加速時
急加速時には、前記の図4に示すように、バッテリ3から駆動モータ2に電力が供給されて駆動モータ2が力行するとともに、エンジン1が高出力運転を行う。このとき、バッテリ3からエンジンモータ4にも電力が供給され、エンジンモータ4も力行する。かくして、駆動輪9、10は、エンジン1と、駆動モータ2と、エンジンモータ4とによって強力に駆動される。
【0038】
(5)定常走行時
低負荷での定常走行時には、前記の図3に示すように、原則的には、クラッチ6が解放されてエンジン1が停止する一方、バッテリ3から駆動モータ2に電力が供給され、駆動モータ2が力行する。このとき、駆動輪9、10は、駆動モータ2のみによって駆動される。なお、エンジンモータ4は何ら活動しない。
但し、エンジン冷機時又はバッテリ充電量低下時には、クラッチ6が締結されてエンジン1は運転を行い、このときエンジンモータ4はエンジン1によって回転駆動されて発電し、この電力によりバッテリ3が充電される。
【0039】
図7に示すように、中負荷での定常走行時には、エンジン1が高効率運転を行い、バッテリ3から駆動モータ2へは電力が供給されない。このとき、駆動輪9、10は、エンジン1のみによって駆動され、駆動モータ2は無出力状態となる。なお、エンジンモータ4はエンジン1によって回転駆動されて発電し、この電力によりバッテリ3が充電される。
【0040】
高負荷での定常走行時には、前記の図4に示すように、バッテリ3から駆動モータ2に電力が供給されて駆動モータ2が力行するとともに、エンジン1が高出力運転を行う。このとき、バッテリ3からエンジンモータ4にも電力が供給され、エンジンモータ4も力行する(但し、運転状態により発電する場合もある)。かくして、駆動輪9、10は、エンジン1と、駆動モータ2と、エンジンモータ4とによって強力に駆動される。
【0041】
(6)停車時
停車時には、原則的には、クラッチ6が解放されてエンジン1は停止し、かつ駆動モータ2も停止する(バッテリ3から駆動モータ2に電力が供給されない)。なお、エンジンモータ4は、エンジン1が停止し、かつバッテリ3から電力が供給されないので、何ら活動しない(停止する)。
但し、図8に示すように、エンジン冷機時又はバッテリ充電量低下時には、エンジン1は運転を行い、このときエンジンモータ4はエンジン1によって回転駆動されて発電し、この電力によりバッテリ3が充電される。
【0042】
前記のとおり、エンジン1には、燃料タンク31内で発生した燃料ベーパを吸気通路20に回収するために蒸発燃料回収系統が設けられているが、以下この蒸発燃料回収系統における燃料ベーパの回収手順の一例を説明する。
この蒸発燃料回収系統においては、通常時は、制御弁40と大気開放弁45とが開かれる一方、パージ弁43が閉じられる。このとき、燃料タンク31の上部空間部(以下、これを「タンク空間部」という)は、基本的には、上流側パージ通路37とキャニスタ38と大気開放通路44とを介して大気と連通する。かくして、燃料タンク31内の燃料が蒸発(気化)するなどしてタンク内圧が高まると、該圧力によりタンク空間部内の燃料ベーパを含む空気は、順に、上流側パージ通路37とキャニスタ38と大気開放通路44とを介して大気中に放出される。その際、燃料ベーパはキャニスタ38に吸着(捕集)されるので、結局大気中へは空気のみが放出される。
【0043】
そして、キャニスタ38に適度な量(例えば、飽和吸着量の70%程度)の燃料ベーパが吸着され、あるいは吸着されていると推測され、かつエンジン1が運転を行っているとき(燃料カット運転を含む)には、制御弁40が閉じられる一方、パージ弁43と大気開放弁45とが開かれる。このとき、サージタンク25は、下流側パージ通路37とキャニスタ38と大気開放通路44とを介して大気と連通する。かくして、サージタンク25内の負圧によって、大気中の空気が、順に、大気開放通路44とキャニスタ38と下流側パージ通路37とを介してサージタンク25に吸入される。その際、キャニスタ38に吸着されている燃料ベーパがキャニスタ38から離脱してサージタンク25にパージされる。そして、サージタンク25内にパージされた燃料ベーパは、この後エンジン1で燃料として活用される(燃焼する)。
【0044】
ところで、この蒸発燃料回収系統においては、ときには各種弁40、43、45の作動不良、あるいはパージ通路37等の破損などといった故障ないしは異常が生じることがある。そこで、このハイブリッド車Wでは、蒸発燃料回収系統の故障ないしは異常を判定(診断)するために、適宜故障診断を行うようになっている。以下、この故障診断手法を具体的に説明する。
【0045】
まず、この蒸発燃料回収系統の故障診断の基本概念を説明する。この故障診断においては、基本的には、吸気通路20(サージタンク25)内の負圧を蒸発燃料回収系統に導入し、該負圧導入による蒸発燃料回収系統内の圧力変化に基づいて、蒸発燃料回収系統の故障ないしは異常を判定するようにしている。以下、より具体的な故障診断手法を説明する。
図9に示すように、この故障診断は、パージ弁43と大気開放弁45とを開く一方、制御弁40を閉じて燃料ベーパのパージを行っているときに実施するようにしている。すなわち、まずパージ中において、適当な時点t1で、大気開放弁45を閉じる一方、制御弁40を開いて故障診断を開始する。なお、パージ弁43は開いたままにしておく。
【0046】
これにより、サージタンク25内の負圧が蒸発燃料回収系統に導入され、タンク内圧が次第に低下する(負圧が高くなる)。そして、タンク内圧が所定の基準圧力(例えば、−200mmAqゲージ(水柱))まで低下し(時点t2)、さらにタンク内圧が若干低下した時点t3でパージ弁43を閉じる。これにより、パージ弁43よりも燃料タンク側の蒸発燃料回収系統は、大気とは遮断されて密閉状態となる。この後、タンク空間部内への負圧の伝播の遅れ等に起因して、圧力センサ39によって検出されるタンク内圧は若干上昇する(戻る)。
【0047】
ここで、タンク内圧の上記上昇がほぼ終了した時点t4におけるタンク内圧を、第1タンク内圧値TP1として記憶する。そして、第1タンク内圧値TP1を検出した時点t4から所定の測定時間(例えば、30秒)を経過した時点t5におけるタンク内圧を、第2タンク内圧値TP2として記憶する。また、この時点t5で制御弁40を閉じ、次に大気開放弁45を開く。なお、パージ弁43は閉じたままにしておく。この後、適当な時間が経過した時点t6でパージ弁43を開き、キャニスタ38に吸着されている燃料ベーパのパージを再開する。
【0048】
このような過程において、まず故障診断開始後にタンク内圧が実質的に上記基準圧力(例えば、−200mmAqゲージ)まで低下するのに要した時間、すなわち時点t1から時点t4までの経過時間(t4−t1)に基づいて、パージ通路37の接続不良、大気開放弁45の開固着(開きぱなし)等に起因する重度の漏れ故障(ラージリーク)の有無が判定される。すなわち、時間(t4−t1)が、予め設定された基準時間(例えば、30秒)よりも長いときには、ラージリークがあるものと判定される。また、時点t1以後においてタンク内圧が基準圧力まで低下しないときにも、ラージリークがあるものと判定される。なお、上記時間(t4−t1)を、(t3−t1)あるいは(t2−t1)としてもよい。
【0049】
次に、第2タンク内圧値TP2と第1タンク内圧値TP1の差圧(TP2−TP1)、すなわち時点t4から時点t5までの期間(測定時間)におけるタンク内圧上昇度合いに基づいて、パージ通路37の軽微な破損等に起因する軽度の漏れ故障(スモールリーク)の有無が判定される。すなわち、差圧(TP2−TP1)が、予め設定されたしきい値よりも大きいとき、例えば第2タンク内圧値TP2がSP2よりも高いときには、パージ通路37内の負圧を適正に維持することができないスモールリークがあるものと判定される。
なお、時点t5から時点t6までの期間においてタンク内圧上昇度合いが所定の基準値より大きいときには、制御弁40が開固着(開きぱなし)しているものと判定される。
【0050】
ところで、前記のとおり、触媒コンバータ13内の三元触媒(排気ガス浄化触媒)は、高温化(熱劣化)、触媒毒による被毒等により劣化してその触媒活性が低下することがある。そこで、このハイブリッド車Wでは、三元触媒の劣化の有無ないしは劣化度合いを判定するための劣化診断(すなわち、故障診断)を行うようにしているが、以下この劣化診断の診断手法を説明する。
【0051】
この三元触媒の劣化診断においては、エンジン1が劣化診断に適した所定の運転状態にあるとき、例えばエンジン1が中程度の排気ガス量(中排気ガス量)となるように運転され(すなわち、低回転・中負荷ないしは中回転・中負荷状態)、三元触媒の温度がその活性化温度以上であり、かつ空燃比(燃料噴射量)のO2フィードバック制御が行われているときに、上流側及び下流側の両O2センサ28、29によって検出される実空燃比(排気ガス中のO2濃度)の、一定期間内における反転比に基づいて、三元触媒の劣化の有無ないしは劣化度合いを判定するようにしている。なお、反転比とは、上記一定期間(以下、これを「反転比検出期間」という)内における、上流側O2センサ28のリッチ・リーンの反転回数Aと、下流側O2センサ29の反転回数Bとの比A/Bである。
【0052】
図10に示すように、空燃比(燃料噴射量)のO2フィードバック制御が行われているときには、両O2センサ28、29の出力は、それぞれ、反転比検出期間内においてリッチ・リーンの反転を繰り返すが、三元触媒が正常であれば、上流側O2センサ28の反転回数Aがかなり多いので、反転比(A/B)は非常に大きな値となる。他方、三元触媒の劣化が進むにつれて、下流側O2センサ29の反転回数Bが多くなるので反転比(A/B)は次第に小さくなる。そこで、この実施の形態では、三元触媒の排気ガス浄化率が正常状態の60%(これに限定されるものではない)にまで低下した場合に相当する反転比をしきい値(以下、これを「劣化判定しきい値」という)とし、実際の反転比がこの劣化判定しきい値より大きければ三元触媒は正常状態であると判定し、劣化判定しきい値以下であれば劣化状態であると判定するようにしている。
【0053】
図11に示すように、反転比と、三元触媒の排気ガス浄化率との関係は、三元触媒(触媒コンバータ13)を通過する排気ガスの流量(排気ガス量)に応じてかなり異なったものとなる。なお、図11中では、Z1→Z2→Z3→Z4の順で、排気ガス量が多くなっている。したがって、排気ガス浄化率が同一であっても、排気ガス量が多いときほど反転比(A/B)が小さくなる。かくして、曲線Z3あるいは曲線Z4で示されるように、排気ガス量が比較的多い状態では、三元触媒の正常状態と劣化状態とを区別すべき排気ガス浄化率(例えば、60%)付近では、反転比の変化に対する排気ガス浄化率の変化が極めて大きく、劣化判定しきい値を設定するのが極めてむずかしくなる。また、曲線Z1で示されるように、排気ガス量が比較的少ない状態でも、三元触媒の正常状態と劣化状態とを区別すべき排気ガス浄化率(例えば、60%)付近では、反転比の変化に対する浄化率の変化が極めて大きく、劣化判定しきい値を設定するのが極めてむずかしくなる。
【0054】
これに対して、曲線Z2で示されるように、排気ガス量が中程度のときは、三元触媒の正常状態と劣化状態とを区別すべき排気ガス浄化率(例えば、60%)付近では、反転比の変化に対する排気ガス浄化率の変化が直線的でかつ緩やかであり、劣化判定しきい値を設定するのが極めて容易となる。このため、この実施の形態では、排気ガス量が中程度の状態に対応させて、劣化判定しきい値THBを設定している。したがって、排気ガス量が中程度のとき、すなわちエンジン1が中回転・中負荷のときでなければ、三元触媒の劣化判定を正確に行うことが困難である。
【0055】
ところで、このハイブリッド車Wでは、前記の蒸発燃料回収系統の異常診断及び三元触媒の劣化診断(以下では、これらを「故障診断」と総称する)はシステムコントローラ14によって行われるが、以下、図12〜図18に示すフローチャートに従って、このシステムコントローラ14による具体的な故障診断及びこれに付随する各種制御の制御手順を説明する。なお、システムコントローラ14は、特許請求の範囲に記載された「異常判定手段」と「異常判定制御手段」と「空燃比制御手段」と「触媒劣化判定手段」とを含むハイブリッド車Wの総合的な制御装置である。
【0056】
まず、図12〜図14を参照しつつ、該故障診断におけるメインルーチンである運転モード設定ルーチンの処理手順を説明する。
図12〜図14に示すように、この運転モード設定ルーチンでは、まずステップS1で、ハイブリッド車制御システムを起動するスタートスイッチがオンされたか否かが判定され、スタートスイッチがオンされていなければ(NO)、このステップS1が繰り返し実行される。すなわち、スタートスイッチがオンされるまで待機する。他方、ステップS1でスタートスイッチがオンされたと判定された場合は(YES)、ステップS2で、アクセル開度α、バッテリ充電状態ないしはバッテリ電圧、車速V、エンジン水温、吸入空気量等の各種制御情報が入力される。
【0057】
次に、ステップS3で、例えば図19に示すような基本運転モードマップを用いて、ハイブリッド車Wの基本運転モードが設定される。
図19に示すように、この基本運転モードマップでは、領域R1で示す低出力域(概ね、時速20〜30km/時以下)では、クラッチ6が開放されてエンジン1が停止され、駆動輪9、10は駆動モータ2のみによって駆動される。但し、バッテリ3の充電量が所定の基準値以下となったときには、エンジン1が運転される。そして、領域R2で示す中出力域では、クラッチ6が締結されてエンジン1が高効率モード(例えば、低回転・高負荷)で運転され、かつ駆動モータ2が通電され、駆動輪9、10はエンジン1及び駆動モータ2によって駆動される。領域R3で示す高出力域では、クラッチ6が締結されてエンジン1が高出力モード(例えば、高回転・高負荷)で運転され、かつ駆動モータ2が通電され、駆動輪9、10はエンジン1及び駆動モータ2によって強力に駆動される。
【0058】
ここで、エンジン1は、高効率となるよう、スロットル開度と燃料噴射量と自動変速機7の変速段とを制御することにより、低回転・高負荷域で運転されるようになっている。なお、スタートスイッチがオンされたときには、所定期間は必ずエンジン1を運転し、エンジン1の始動性を向上させるようにしてもよい。
【0059】
次に、ステップS4で、故障モニタ(蒸発燃料回収系統及び三元触媒の故障診断プロセス)が終了しているか否か、すなわち後で説明するモニタ終了フラグFmfが1であるか否かが判定される。そして、故障モニタが終了していれば(YES)、ステップS5で該ハイブリッド車Wが、現在設定されている運転モードで運転され、この後ステップS2に復帰して、この運転モード設定ルーチンが続行される。
【0060】
他方、ステップS4で、故障モニタが終了していないと判定された場合は(NO)、ステップS6でエンジンオンモードであるか否か、すなわち基本運転マップによればエンジン1を運転すべきモードであるか否かが判定される。ここで、エンジンオンモードであれば(YES)、ステップS7〜S9で、それぞれ、パージモニタフラグFparmが1であるか否かと、触媒温度上昇フラグFcatupが1であるか否かと、触媒モニタフラグFcatmが1であるか否かとが判定される。
【0061】
ここで、パージモニタフラグFparmは、パージモニタ(蒸発燃料回収系統の故障診断プロセス)が開始されたときに1がセットされる一方、パージモニタ中にラージリーク判定が終了したときに0にリセットされるフラグである。触媒温度上昇フラグFcatupは、エンジン1が触媒温度上昇モードで運転されているときに1がセットされるフラグである。触媒モニタフラグFcatmは、触媒モニタ(三元触媒の劣化診断プロセス)が実行されているときには1がセットされるフラグである。
【0062】
ステップS7〜S9で、それぞれ、Fparm≠1、Fcatup≠1、Fcatm≠1であると判定された場合(ステップS7〜S9がすべてNO)、すなわち今回から故障モニタを開始すべき場合は、まずステップS10でエンジン1に水温上昇モード(エンジン温度上昇モード)が設定され、続いてステップS11で水温上昇フラグFtwupに1がセットされる。この水温上昇フラグFtwupは、エンジン1に水温上昇モードが設定されているときに1がセットされるフラグである。この水温上昇モードでは、エンジン1が低回転・高負荷領域で運転される。
【0063】
このようにエンジン1が水温上昇モードで運転される場合でも、ハイブリッド車Wの運転状態が図19中の領域R1にあり、したがって本来的にはエンジン1が駆動輪9、10を駆動する必要がないとき(後で説明するステップS15経由でこのステップS10が実行された場合)には、クラッチ6を解放(オフ)してエンジン1の駆動力が駆動輪9、10に伝達されないようにする。
【0064】
なお、ステップS7でFparm=1であると判定された場合は(YES)、すでにパージモニタモードが設定されているので、後で説明するステップS13にスキップしてパージモニタモードが継続される。また、ステップS8でFcatup=1であると判定された場合は(YES)、すでに触媒温度上昇モードが設定されているので、後で説明するステップS22にスキップして触媒温度上昇モードが継続される。さらに、ステップS9でFcatm=1であると判定された場合は(YES)、すでに触媒モニタモードが設定されているので、後で説明するステップS26にスキップして触媒モニタモードが継続される。
【0065】
次に、ステップS12で、エンジン水温(エンジン温度)が基準温度(所定値)以上であるか否かが判定される。この運転モード設定ルーチンでは、エンジン水温が基準温度より低いときには正確な故障モニタを行うことが困難であるので、故障モニタは実行しないようにしている。このステップS12で、エンジン水温が基準温度より低いと判定された場合は(NO)、故障モニタを実施できる状態ではないので、ステップS5で該ハイブリッド車Wが、現在設定されている運転モードで運転され、この後ステップS2に復帰して、該運転モード設定ルーチンが続行される。
【0066】
他方、ステップS12でエンジン水温が基準温度以上であると判定された場合は(YES)、故障モニタが実行される。すなわち、まずステップS13でハイブリッド車Wが車両高負荷運転モードであるか否かが判定され、車両高負荷運転モードであれば(YES)、さらにステップS14でバッテリ充電量が基準充電量(所定値)より低いか否かが判定される。ここで、バッテリ充電量が基準充電量より低ければ(YES)、つまり車両高負荷運転時であってかつバッテリ充電量が低下(減少)しているときには、故障モニタを実行することは好ましくないので、故障モニタは中止される。この場合、ステップS5で該ハイブリッド車Wが、現在設定されている運転モードで運転され、この後ステップS2に復帰して、該運転モード設定ルーチンが続行される。
【0067】
ステップS13とステップS14とで、車両高負荷運転時かつバッテリ充電量低下時ではないと判定された場合は(ステップS13〜S14の少なくとも一方がNO)、故障モニタが実行される。まず、ステップS19で、エンジン1にパージモニタ・ラージリークモードが設定される。このパージモニタ・ラージリークモードでは、エンジン1は、パージモニタに適した低回転・中負荷領域で運転され、十分な吸気負圧が発生させられる。そして、このようにエンジン1がパージモニタ・ラージリークモードで運転される場合でも、ハイブリッド車Wの基本運転状態が図19中の領域R1にあり、したがって本来的にはエンジン1が駆動輪9、10を駆動する必要がないときには、クラッチ6を解放(オフ)してエンジン1の駆動力が駆動輪9、10に伝達されないようにする。なお、ハイブリッド車Wが低速(例えば、10km/h以下)で走行している場合は、クラッチ6を締結(オン)し、自動変速機7を好ましく制御しつつ、てエンジン1と駆動モータ2とで駆動輪9、10を駆動するようにしてもよい。
【0068】
次に、ステップS20で、ラージリーク判定が終了したか否かが判定され、終了していなければ(NO)、該ラージリーク判定を継続するために、ステップS5で該ハイブリッド車Wが、現在設定されている運転モードで運転され、この後ステップS2に復帰して、該運転モード設定ルーチンが続行される。
他方、ステップS20で、ラージリーク判定が終了したと判定された場合は(YES)、ステップS21でパージモニタフラグFparmが0にリセットされた後、ステップS22以下で三元触媒の劣化診断が開始される。なお、ラージリーク判定の手順ないしは手法は前記のとおりである。
【0069】
この三元触媒の劣化診断においては、まずステップS22で、エンジン1に触媒温度上昇モードが設定される。このとき、パージモニタでは、スモールリーク判定が行われる。なお、スモールリーク判定の手順ないしは手法は前記のとおりである。このハイブリッド車Wでは、排気ガス量が中程度であり、三元触媒の温度(触媒温度)がその活性化温度以上であり、かつ空燃比のO2フィードバック制御が行われているときに三元触媒の劣化判定を行うようにしている。そこで、このように劣化診断が開始されたときには、まずステップS22でエンジン1に、低回転・高負荷で運転する触媒温度上昇モードを設定して、触媒温度を高めるようにしている。
【0070】
なお、このようにエンジン1が触媒温度上昇モードで運転される場合でも、ハイブリッド車Wの運転状態が図19中の領域R1にあり、したがって本来的にはエンジン1が駆動輪9、10を駆動する必要がないとき(後で説明するステップS17経由でこのステップS22が実行された場合)には、クラッチ6を解放(オフ)してエンジン1の駆動力が駆動輪9、10に伝達されないようにする。
【0071】
次に、ステップS23で、触媒温度上昇フラグFcatupに1がセットされる。続いて、ステップS24で触媒温度が推定される。ここで、触媒温度の推定は、例えば、スタートスイッチがオンされた後で最初にエンジン1が始動されたときのエンジン水温と、その後のエンジン運転時間の積算値あるいは吸入空気量の積算値とに基づいて、よく知られた方法で行われる。具体的には、例えば、上記エンジン水温の一次関数(正の相関)である値aと、エンジン運転時間又は吸入空気量の積算値の一次関数(正の相関)である値bの和(a+b)等で触媒温度を推定することができる。なお、温度センサを用いて触媒温度を実測してもよい。
【0072】
そして、ステップS25で、ステップS24で推定された触媒温度が所定値以上であるか否かが判定される。この所定値は、三元触媒の活性化温度付近に設定される。このステップS25で、触媒温度が所定値未満であると判定された場合は(NO)、まだ三元触媒の劣化判定を実施できる状態になっていないので、ステップS5で該ハイブリッド車Wが、現在設定されている運転モードで運転され、この後ステップS2に復帰して、該運転モード設定ルーチンが続行される。
【0073】
他方、ステップS25で、触媒温度が所定値以上であると判定された場合は(YES)、ステップS26で、エンジン1に触媒モニタモードが設定され、続いてステップS27で触媒モニタフラグFcatmに1がセットされる。この触媒モニタモードでは、エンジン1は、三元触媒の劣化判定に適した中程度の排気ガス量となる低回転・中負荷領域(ないしは、中回転・中負荷領域)で運転される。そして、このようにエンジン1が触媒モニタモードで運転される場合でも、ハイブリッド車Wの基本運転状態が図19中の領域R1にあり、したがって本来的にはエンジン1が駆動輪9、10を駆動する必要がないとき(後で説明するステップS18を経由してこのステップS26が実行された場合)には、クラッチ6を解放(オフ)してエンジン1の駆動力が駆動輪9、10に伝達されないようにする。なお、ハイブリッド車Wが低速(例えば、10km/h以下)で走行している場合は、クラッチ6を締結(オン)し、自動変速機7を好ましく制御しつつ、てエンジン1と駆動モータ2とで駆動輪9、10を駆動するようにしてもよい。この後、ステップS5で該ハイブリッド車Wが、現在設定されている運転モードで運転され、この後ステップS2に復帰して、該運転モード設定ルーチンが続行される。
【0074】
ところで、前記のステップS6で、エンジンオンモードでないと判定された場合は(NO)、ステップS15〜S18で、それぞれ、水温上昇フラグFtwupが1であるか否かと、パージモニタフラグFparmが1であるか否かと、触媒温度上昇フラグFcatupが1であるか否かと、触媒モニタフラグFcatmが1であるか否かとが判定される。
【0075】
ステップS15〜S18で、それぞれ、Ftwup≠1、Fparm≠1、Fcatup≠1、Fcatm≠1であると判定された場合(ステップS15〜S18がすべてNO)、すなわち故障モニタは終了していないものの該故障モニタを実行するとができない状態にある場合は、ステップS5で該ハイブリッド車Wが、現在設定されている運転モードで運転され、この後ステップS2に復帰して、該運転モード設定ルーチンが続行される。
【0076】
ステップS15で、Ftwup=1であると判定された場合は(YES)、エンジン1はすでに水温上昇モードとなっっているので、ステップS10にスキップして水温上昇モードが続行される。
ステップS16で、Fparm=1であると判定された場合は(YES)、エンジン1はすでにパージモニタモードとなっているので、ステップS13にスキップしてパージモニタモードが続行される。
ステップS17で、Fcatup=1であると判定された場合は(YES)、エンジン1はすでに触媒温度上昇モードとなっっているので、ステップS22にスキップして触媒温度上昇モードが続行される。
ステップS18で、Fcatm=1であると判定された場合は(YES)、エンジン1はすでに触媒モニタモードとなっっているので、ステップS26にスキップして触媒モニタモードが続行される。
【0077】
つまり、ステップS15〜S18のいずれかでYESとなった場合は、基本運転マップではエンジン1の運転が停止されるべき状態にあるのにもかかわらず、そのステップに該当するモニタを継続するために(途中で放棄しないよう)、前記のそれぞれのステップにスキップして、エンジン1の運転が継続される。これにより、各モニタの精度が高められる。
【0078】
図20に、この運転モード設定ルーチンが実行された場合における、車速(車両負荷)及びエンジン負荷の時間に対する変化特性の一例を示す。なお、この例では、蒸発燃料回収系統への負圧導入時間は概ね20〜30秒であり、触媒モニタに要する時間は概ね2〜3分である。
図20において、グラフH1は車速を示し、グラフH2は時刻t10で故障モニタが開始された場合におけるエンジン負荷を示し、グラフH3は故障モニタが行われない場合におけるエンジン負荷を示している
【0079】
以下、図15〜図18を参照しつつ、エンジン1の燃料噴射と蒸発燃料回収系統及び三元触媒の故障診断とを制御するエンジン制御ルーチンの処理手順を説明する。なお、このエンジン制御ルーチンは、所定のクランク角となる毎に実行される。
図15〜図18に示すように、このエンジン制御ルーチンでは、まずステップS31で、吸入空気量Qa、エンジン水温Tw、実空燃比A/F等の各種データ(制御情報)が入力される。
【0080】
次に、ステップS32で今回設定すべき運転モードが読み込まれ、続いてステップS33でエンジン1が運転中であるか否かが判定される。なお、エンジン1の始動時には、制御弁40及びパージ弁43は閉じられ、大気開放弁45は開かれる。そして、ステップS33でエンジン1が運転中でないと判定された場合は(NO)、エンジン1を制御する必要がないので今回のルーチンは終了する。
【0081】
ステップS33でエンジン1が運転中、あるいはエンジン運転指令入力中であると判定された場合は(YES)、ステップS34とステップS35とで、それぞれ、高効率モード(例えば、低回転・高負荷モード)が設定されているか否かと、触媒温度上昇モードが設定されているか否かとが判定される。
そして、高効率モードが設定されていなければ(ステップS34でNO)、ステップS41〜S53(以下、これを便宜上「パージモニタルーチン」という)が実行される。なお、このパージモニタルーチンのステップS45で、パージモニタラージリークモードでないと判定された場合は、ステップS68〜S77(以下、これを便宜上「触媒モニタルーチン」という)が実行される。また、高効率モードが設定されかつ触媒温度上昇モードが設定されていれば(ステップS34及びステップS35の両方でYES)、ステップS54〜S67(以下、これを便宜上「触媒温度上昇ルーチン」という)が実行される。いずれでもなければ(ステップS34でYES、ステップS35でNO)、ステップS36〜S40(以下、これを便宜上「基本運転ルーチン」という)が実行される。
【0082】
以下、基本運転ルーチン(ステップS36〜S40)を説明する。この基本運転ルーチンでは、まずステップS36でエンジン1に高効率モードが設定される。すなわち、低回転・高負荷となるようにスロットル開度と燃料噴射量とが設定される。この場合、スロットル開度は、所定開度TV1に設定される。また、燃料噴射量は、吸入空気量Qaとエンジン回転数Neとに基づいて、実空燃比A/Fが理論空燃比(A/F=14.7)となるように設定される。具体的には、例えば、吸入空気量Qaとエンジン回転数Neとに基づいて算出される基本噴射量(k・Qa/Ne)と、空燃比偏差(実空燃比−目標空燃比)に比例するフィードバック補正量とを加算して最終的な燃料噴射量(実際の燃料噴射量)を設定する。
【0083】
そして、ステップS37でスロットル弁24が駆動され、続いてステップS38で噴射時期であるか否かが判定される。ここで、噴射時期でなければ(NO)、噴射時期となるまでこのステップS38が繰り返し実行され(噴射時期となるまで待機し)、噴射時期となったときに(YES)、ステップS39で燃料噴射弁27から燃料が噴射される。
【0084】
次に、ステップS40でパージ弁43の開度が設定され、今回のルーチンが終了する。なお、パージ弁43の開度は、空燃比が理論空燃比となるように、すなわち空燃比が変動しないように、フィードバック補正量に基づいて好ましく設定される。
【0085】
以下、パージモニタルーチン(ステップS41〜S53)を説明する。このパージモニタルーチンでは、まずステップS41で、十分な吸気負圧が得られるよう、エンジン1に低回転・中負荷モード(少なくとも、中負荷モード)が設定される。すなわち、エンジン1が低回転・中負荷状態となるようにスロットル開度と燃料噴射量とが設定される。この場合、スロットル開度は、基本運転ルーチンのスロットル開度TV1よりは小さい所定の開度TV2に設定される。なお、燃料噴射量の設定方法は基本運転ルーチンの場合と同様である。
【0086】
そして、ステップS42でスロットル弁24が駆動され、続いてステップS43で噴射時期であるか否かが判定される。ここで、噴射時期でなければ(NO)、噴射時期となるまでこのステップS43が繰り返し実行され、噴射時期となったときに(YES)、ステップS44で燃料噴射弁27から燃料が噴射される。
【0087】
次に、ステップS45で、パージモニタ・ラージリークモードであるか否かが判定され、パージモニタ・ラージリークモードでなければ(NO)、すなわちラージリーク判定が終了していれば、後で説明する触媒モニタルーチン(ステップS68〜S77)が実行される。他方、ステップS45でパージモニタ・ラージリークモードであると判定された場合は(YES)、ステップS46〜S53でラージリーク判定が行われる。まず、ステップS46でタンク内圧Pが検出され、ステップS47で制御弁40(TPCV弁)及びパージ弁43が開かれる一方、大気開放弁45が閉じられる。つまり、蒸発燃料回収系統に吸気負圧が導入される。
【0088】
そして、ステップS48で、第1タイマカウンタT1が1だけインクリメントされる。この第1タイマカウンタT1は、蒸発燃料回収系統に吸気負圧が導入された時点からタンク内圧Pが実質的に基準圧力P10(例えば、−200mmAqゲージ)まで低下するまでの経過時間をカウントするためのタイマカウンタである。
【0089】
次に、ステップS49で、第1タイマカウンタT1のカウント値が基準時間T10(例えば、30秒)以上であるか否かが判定される。ここで、T1≧T10であれば(YES)、すなわち蒸発燃料回収系統内の圧力がなかなか下がらない場合は、ステップS53でラージリークがあるものと判定(異常判定)され、ワーニング(警報)が出力される。この後、ステップS52でラージリーク判定終了フラグがセットされる。
【0090】
ステップS49で、T1<T10であると判定された場合は(NO)、ステップS50でタンク内圧Pが基準圧力P10以上であるか否かが判定され、P≧P10であれば(YES)、まだタンク内圧Pが基準圧力P10まで低下していないので、今回のルーチンは終了する(エンジン制御が続行される)。他方、ステップS50で、P>P10であると判定された場合は(NO)、タンク内圧Pが基準時間T10内に基準圧力P10より低くなっているので、ステップS51でラージリークはないものと判定(正常判定)される。この後、ステップS52でラージリーク判定終了フラグがセットされる。
【0091】
以下、触媒温度上昇ルーチン(ステップS54〜S67)を説明する。なお、この触媒温度上昇ルーチンでは、蒸発燃料回収系統のスモールリーク判定が行われる。この触媒温度上昇ルーチンでは、まずステップS54で、エンジン1に高効率モードが設定される。すなわち、エンジン1が低回転・高負荷状態となるようにスロットル開度と燃料噴射量とが設定される。この場合、スロットル開度及び燃料噴射量の設定方法は、基本運転ルーチンの場合と同様である。
【0092】
そして、ステップS55でスロットル弁24が駆動され、続いてステップS56で噴射時期であるか否かが判定される。ここで、噴射時期でなければ(NO)、噴射時期となるまでこのステップS56が繰り返し実行され、噴射時期となったときに(YES)、ステップS57で燃料噴射弁27から燃料が噴射される。
【0093】
次に、ステップS58で、パージ弁43が閉じられる、なお、制御弁40(TPCV弁)は開かれたままであり、大気開放弁45は閉じられたままである。つまり、パージ弁43より燃料タンク側の蒸発燃料回収系統が大気と遮断されて密閉される。続いて、ステップS59で、スモールリークフラグFS/Lが1であるか否かが判定される。このスモールリークフラグFS/Lはスモールリーク判定プロセスが開始されたときに1がセットされ、スモールリーク判定が終了したときに0にリセットされるフラグである。
【0094】
ステップS59で、FS/L≠1であると判定された場合(NO)、すなわち今回からスモールリーク判定プロセスが開始される場合は、ステップS60で現時点のタンク内圧Pが初期圧P2として記憶される。なお、FS/L=1であれば(YES)、ステップS60をスキップする。
【0095】
次に、ステップS61で、スモールリークフラグFS/Lに1がセットされ、続いてステップS62で第2タイマカウンタT2が1だけインクリメントされる。この第2タイマカウンタT2は、蒸発燃料回収系統のスモールリーク判定を行うべき一定の測定時間T20(例えば、30秒)をカウントするためのタイマカウンタである。
【0096】
次に、ステップS63で、第2タイマカウンタT2のカウント値が上記測定時間T20以上であるか否かが判定される。ここで、T2<T20であれば(NO)、まだ測定時間T20が経過していないので、今回のルーチンを終了する(エンジン制御を続行する)。他方、ステップS63でT2≧T20であると判定された場合は(YES)、スモールリークの有無の判定を下すべき時点に達しているので、ステップS64で、現時点におけるタンク内圧Pと前記の初期圧P2の差圧(P−P2)がしきい値ΔP20以上であるか否かが判定される。ここで、(P−P2)<ΔP20であれば(NO)、蒸発燃料回収系統内の負圧は維持されているので、ステップS65でスモールリークはないものと判定(正常判定)される。この後、ステップS67でスモールリークフラグFS/Lが0にリセットされる。
【0097】
他方、ステップS64で、(P−P2)≧ΔP20であると判定された場合は(YES)、蒸発燃料回収系統に空気が漏れ込んでいるので、スモールリークがあるものと判定(異常判定)され、ワーニング(警報)が出力される。この後、ステップS67でスモールリークフラグFS/Lが0にリセットされる。
【0098】
以下、触媒モニタルーチン(ステップS68〜S77)を説明する。この触媒モニタルーチンでは、まずステップS68で、触媒モニタ条件が成立しているか否かが判定される。ここで、触媒モニタ条件としては、例えば、両O2センサ28、29が活性化されていること、エンジン水温Twが所定値以上であること、蒸発燃料回収系統に故障がないことなどがあげられる。そして、触媒モニタ条件が成立していれば(YES)、ステップS69で上流側O2センサ28の反転比検出期間内におけるリッチ・リーンの反転回数Aがカウントされ、続いてステップS70で下流側O2センサ29の反転比検出期間内におけるリッチ・リーンの反転回数Bがカウントされる。
【0099】
次に、ステップS71で、上流側O2センサ28の反転回数Aが所定の基準値A0以上であるか否かが判定される。なお、基準値A0は、例えば、カウント時間が反転比検出期間に一致するような値に設定される。そして、ステップS71でA<A0であると判定された場合は(NO)、まだ反転比を算出することができないので、ステップS77にスキップしてスモールリークフラグFS/Lが1であるか否かが判定される。ここで、FS/L≠1であれば(NO)、今回のルーチンを終了する。他方、FS/L≠1であれば(YES)、触媒温度上昇ルーチンのステップS58にスキップする。これは、触媒温度上昇モード開始後、短時間でこのモードが終了したときでも、スモールリーク判定プロセスが終了していなければ該スモールリーク判定を継続させるためである。
【0100】
他方、ステップS71でA≧A0であると判定された場合は(YES)、反転比を算出することが可能な状態となっているので、ステップS72で反転比HR(=A/B)が算出される。続いて、ステップS73で、反転比HRが所定値(劣化判定しきい値)以上であるか否かが判定される。ここで、反転比HRが所定値以上であれば(YES)、ステップS74で三元触媒が正常であると判定される。他方、ステップS73で、反転比HRが所定値未満であると判定された場合は(NO)、ステップS75で三元触媒が異常であると判定され、ワーニング(警報)が出力される。この後、ステップS76で判定終了フラグFmfに1がセットされ、今回のルーチンを終了する。なお、判定終了フラグFmfは、触媒モニタが終了したときに1がセットされるフラグである。
【0101】
この実施の形態においては、蒸発燃料回収系統の異常判定を、車両運転開始後において、エンジン1が最初に運転される際にこの運転期間中に実行できるようにしている。しかしながら、このようにせず、車両運転開始後にエンジン1の暖機運転を実行し(エンジン水温が所定温度以上となるまでエンジン1を運転させる)、所定の短い時間だけエンジン1を停止させた後、エンジン1を強制始動させて、蒸発燃料回収系統の異常判定を実行するようにしてもよい。
【0102】
なお、この実施の形態のハイブリッド車Wはクラッチ6を有し、車両走行状態に応じてクラッチ6を接続・解放(遮断)制御するようにしているが、このようにせず、エンジン1と駆動モータ2とを直結するか、あるいは変速機構を介して直結するように構成したハイブリッド車においても、この実施の形態の故障診断装置は適応可能である。
【0103】
以上、この故障診断手法によれば、ハイブリッド車Wないしはエンジン1の燃費性能を大幅に高めつつ、蒸発燃料回収系統の異常及び三元触媒(排気ガス浄化触媒)の劣化を的確かつ容易に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態にかかるハイブリッド車の概略構成を示す模式図である。
【図2】 図1に示すハイブリッド車のエンジン及びその燃料系統のシステム構成図である。
【図3】 図1に示すハイブリッド車の発進時又は低負荷定常走行時における駆動形態を示す模式図である。
【図4】 図1に示すハイブリッド車の急発進時、急加速時又は高負荷定常走行時における駆動形態を示す模式図である。
【図5】 図1に示すハイブリッド車のエンジン起動時における駆動形態を示す模式図である。
【図6】 図1に示すハイブリッド車の減速時における駆動形態を示す模式図である。
【図7】 図1に示すハイブリッド車の中負荷定常走行時における駆動形態を示す模式図である。
【図8】 図1に示すハイブリッド車の停車充電時における駆動形態を示す模式図である。
【図9】 蒸発燃料回収系統の故障診断時における各種状態を示すタイムチャートである。
【図10】 O2センサの出力反転の様子を示す図である。
【図11】 出力反転回数比と浄化率との関係の、排気ガス量に対する依存性を示す図である。
【図12】 蒸発燃料回収系統及び排気ガス浄化触媒の故障診断にかかる運転モード設定ルーチンのフローチャートの一部である。
【図13】 蒸発燃料回収系統及び排気ガス浄化触媒の故障診断にかかる運転モード設定ルーチンのフローチャートの一部である。
【図14】 蒸発燃料回収系統及び排気ガス浄化触媒の故障診断にかかる運転モード設定ルーチンのフローチャートの一部である。
【図15】 エンジン制御ルーチンのフローチャートの一部である。
【図16】 エンジン制御ルーチンのフローチャートの一部である。
【図17】 エンジン制御ルーチンのフローチャートの一部である。
【図18】 エンジン制御ルーチンのフローチャートの一部である。
【図19】 基本運転モードの、車速及びアクセル開度に対する特性を示す図である。
【図20】 故障モニタを行った場合における車速及びエンジン負荷の時間に対する変化特性を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
W…ハイブリッド車、1…エンジン、2…駆動モータ、3…バッテリ、4…エンジンモータ、5…トルクコンバータ、6…クラッチ、7…自動変速機、8…差動機構、9…左側の駆動輪、10…右側の駆動輪、11…ギヤトレイン、12…排気通路、13…触媒コンバータ、14…システムコントローラ、15…電力コントローラ、16…アクセルペダル、17…ブレーキペダル、20…吸気通路、21…共通吸気通路、22…エアクリーナ、23…エアフローセンサ、24…スロットル弁、25…サージタンク、26…独立吸気通路、27…燃料噴射弁、28…上流側O2センサ、29…下流側O2センサ、31…燃料タンク、32…燃料ポンプ、33…燃料供給通路、34…燃料還流通路、35…燃料フィルタ、36…プレッシャレギュレータ、37…パージ通路、38…キャニスタ、39…圧力センサ、40…制御弁、41…ロールオーバーバルブ、43…パージ弁、44…大気開放通路、45…大気開放弁、46…エアフィルタ。
Claims (10)
- それぞれ駆動輪を駆動することができるエンジンと電動式の駆動モータとが設けられ、車両運転状態に応じて上記駆動輪の駆動形態を変更しつつ走行するようになっているハイブリッド車の故障診断装置であって、
燃料タンクと、該燃料タンクと上記エンジンの吸気通路とを連通する蒸発燃料回収通路とを備えた蒸発燃料回収系統と、
上記吸気通路内の負圧を上記蒸発燃料回収系統に導入し、該負圧導入による上記蒸発燃料回収系統内の圧力変化に基づいて、上記蒸発燃料回収系統の異常判定を行う異常判定手段と、
車両運転開始後において上記エンジンが燃料タンク内の燃料蒸発量が少ない最初のエンジン運転中に上記異常判定手段が上記蒸発燃料回収系統の異常判定を実行できるよう、上記エンジンを異常判定に適した吸気負圧の大きい所定の異常判定運転状態で運転させる異常判定制御手段とが設けられていることを特徴とするハイブリッド車の故障診断装置。 - 上記異常判定運転状態が、上記エンジンが中回転・中負荷領域で運転される状態であることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車の故障診断装置。
- エンジン温度が所定の基準温度より高いときに実空燃比が目標空燃比となるよう、上記エンジンへの燃料供給量をフィードバック制御する空燃比制御手段が設けられていて、
上記異常判定運転状態が、上記空燃比制御手段によるフィードバック制御が実行可能な状態であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車の故障診断装置。 - 上記エンジンが、車両高負荷運転時又はバッテリ充電量減少時に運転されるようになっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のハイブリッド車の故障診断装置。
- 上記エンジンが、上記運転時には高効率となるように制御されることを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車の故障診断装置。
- 上記エンジンが上記異常判定運転状態にある場合において車両高負荷運転が検出されたときには、上記異常判定運転状態が維持されることを特徴とする請求項4又は5に記載のハイブリッド車の故障診断装置。
- 上記異常判定制御手段が、車両運転開始後において所定期間内に上記エンジンの運転を強制的に開始させて異常判定を行うようになっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のハイブリッド車の故障診断装置。
- 上記異常判定制御手段が、車両運転中に車両高負荷運転が検出されたときには上記エンジンに高効率運転を開始させる一方、上記車両高負荷運転が終了した場合でも、エンジン温度が上記所定の基準温度となるまで上記エンジンに運転を継続させて異常判定を行うようになっていることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1つに記載のハイブリッド車の故障診断装置。
- 上記エンジンの排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒と、該排気ガス浄化触媒の劣化判定を行う触媒劣化判定手段とが設けられ、
上記触媒劣化判定手段が、上記異常判定制御手段による上記蒸発燃料回収系統への負圧の導入が終了した後も上記エンジンに運転を継続させ、上記排気ガス浄化触媒の温度が所定温度以上となった後で劣化判定を行うようになっていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載のハイブリッド車の故障診断装置。 - エンジン出力を電力に変換することができるエンジンモータとバッテリとが設けられ、
上記エンジンモータが、上記異常判定制御手段によって異常判定が行われているときに、エンジン出力を電力に変換して上記バッテリを充電するようになっていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載のハイブリッド車の故障診断装置。
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