JP3782485B2 - カーボンブラックの表面改質処理方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、カーボンブラックの水、有機溶剤あるいは有機高分子といった媒体に対する分散性を改善するための表面改質処理方法に関するものであり、特に、表面改質に使用されるポリマー成分の適用範囲が広く、かつ比較的少量の使用により十分な表面改質を行なうことのできる表面改質処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カーボンブラックは、そのまま単独で使用されるよりも、着色、補強、充填等といった機能を付与する目的で、種々の用途における各種組成物中に添加されて使用される場合が多い。
【0003】
しかしながらこのような固体微粒子、特にその一次粒子径がサブミクロン以下であるカーボンブラックの多くは、粒子間の凝集力に比べて他の物質、例えば、水、有機溶剤あるいは有機高分子といったものとの親和力が弱く、二次凝集を生じやすい。従って、上記したような各種組成物においてより優れた特性を得ようとする場合、該カーボンブラックをいかに均一に分散させるかが問題となる。
【0004】
この問題を解決するために、カーボンブラックの表面を各種の界面活性剤や樹脂で被覆して、固体状または液状の媒体との親和力を高めることにより、カーボンブラックを均一に混合または分散する方法が数多く検討されている。
【0005】
例えば、重合性単量体をカーボンブラック共存中で重合させることによりカーボンブラックグラフトポリマーを得る方法が知られており、重合性単量体の種類を適当に選択することにより、親水性および/または親油性を適宜、変えることができるため、近年注目を浴びている。このカーボンブラックグラフトポリマーを製造する方法としては、例えば特公昭42−22047号、特公昭44−3826号、特公昭45,−17284号、米国特許3557040号により開示されているが、これらの方法で得られるカーボンブラックグラフトポリマーの収率は数%〜10数%と低く、大半はビニル系ホモポリマーの形で存在し、カーボンブラックの表面処理効率は極めて悪いものであった。このため、他の物質との親和性は期待した程に改良されず、混合又は分散条件によっては分散状態が異なる場合が多々あった。
【0006】
また、特公平6−27269号には、カーボンブラックと、1分子当り1〜2個のエポキシ基および/またはチオエポキシ基を分子内に有する重合体とを50〜250℃の温度条件下に攪拌混合して反応させることによりカーボンブラックグラフトポリマーを製造する方法が開示されている。この方法によれば、重合体の分子内に存在する反応性基がカーボンブラックの表面官能基と極めて効率良く反応し、各種物質への分散性が優れたカーボンブラックグラフトポリマーが得られるものであった。このようにカーボンブラックと反応性ポリマーとを溶融混練して、固体微粒子表面にポリマー鎖をグラフト化することにより改質したものは、良好な分散性を得ることができる有望なものである。
【0007】
しかしながら、このようにカーボンブラックと反応性ポリマーを溶融混練、例えばニーダー、ボールミル等で混練する場合、カーボンブラックに対する反応性ポリマーの配合比率を低くすると、カーボンブラック表面全体を均一にポリマーグラフト鎖で被覆することが困難となるため、必然的に得られる表面改質処理カーボンブラックにおけるカーボンブラックの含有量が少なくなり、必要とされるカーボンブラック本来の特性が減殺されてしまう場合が少なくなかった。また、例えば、反応性ポリマーの分子量が低いものであったり、1分子当り反応性基の数が多いものであると、グラフト化が十分に行なわれなかったり、あるいはゲル化が生じたりするというように、使用可能な反応性ポリマーに関し、例えば官能基数、分子量などといった制限が多いものであり、また所望の分散液を得るためにはこのような溶融混練操作の後さらに分散媒液に分散させる操作が必要となるためにプロセスとして複雑なものとなるといった問題が残るものであった。
【0008】
一方、このような二次凝集を起こすカーボンブラックの分散液を得るのに、分散媒液に適当な分散安定剤を添加し、物理的な攪拌によって分散処理を行なうことも公知の技術である。均一な分散には、巨視的混合と同時に小規模な乱れ運動に基づく微視的混合も考慮する必要があり、従来、このような分散液を得る装置としては、被処理流体を収容するベッセルの形状、攪拌子の形状、数および配置位置あるいはその回転速度、邪魔板ないし仕切板の配置の有無、さらに、ベッセル内部に導入されるボールないしビーズといった分散媒体の使用、その形状、材質等において、それぞれ工夫を凝らした各種の湿式分散処理装置ないし湿式粉砕処理装置が提唱されている。
【0009】
このなかで、一般に、攪拌子と分散媒体を併用するタイプのものは、比較的良好な分散状態を形成できるものとして現在多くの分野で使用されている。このタイプに属する分散処理装置としては、例えば特公昭59−22577号、特公平2−27018号、特開平2−68151号、特開平3−101820号、特公平7−12441号、特公平7−4552号、特開平4−326934号、特公平6−73620号、特開平5−38425号、特開平4−281855号、特開平6−351号、特開平6−212896号、特開平6−210148号、特開平式6−134271号等に開示がある。
【0010】
しかしながら、このような湿式分散処理装置ないし湿式粉砕処理装置を用いてのカーボンブラックの分散液の調製は、該処理装置にて常温下でカーボンブラックを分散媒液と攪拌混合して行なわれるものであり、攪拌混合によって生じる物理的な外力によって分散状態を形成しているものであるために、得られる分散液の安定性は十分なものとは言えず、また分散処理に長持間を要するといった問題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、カーボンブラックの水、有機溶剤あるいは有機高分子といった媒体に対する分散性を改善するための表面改質処理方法を提供することを目的とするものである。本発明はまた、表面改質に使用されるポリマー成分の適用範囲が広く、かつ比較的少量の使用により十分な表面改質を行なうことのできる表面改質処理方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記諸目的は、カーボンブラックと、前記カーボンブラックの表面に存在する官能基と反応し得る反応性基を有する反応性ポリマーとを、該カーボンブランク100重量部当り5〜500重量部の割合で分散媒液中に配合し、被処理流体を内部に収容するためのベッセルと、該ベッセル内部において回転する攪拌子と、該ベッセル内部に収容された被処理流体を加熱するための加熱装置および該ベッセル内部に収容された直径0.05〜20mmの多数の粒状分散媒体を有してなる湿式分散処理装置において50〜250℃の温度に加熱して分散処理することを特徴とするカーボンブラックの表面改質処理方法によって達成される。
【0013】
【0014】
【0015】
本発明の表面改質処理方法においては、該粒状分散媒体の該ベッセルへの充填割合は、該ベッセルの有効容積の20〜90%であることが好ましい。
【0016】
【0017】
本発明の表面改質処理方法においては、反応性ポリマーの有する反応性基が、エポキシ基、チオエポキシ基、アジリジン基およびオキサゾリン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種または2種以上のものであるものを用いることが望ましい。
【0018】
本発明の表面改質処理方法においては、反応性ポリマーが、芳香環を主骨格成分としかつ前記反応性基を分子内に有するセグメントと、前記分散媒液に親和性を有するセグメントとを少なくとも有するブロックないしグラフトポリマーであることが望ましい。
【0019】
【作用】
このように本発明は、カーボンブラックと、前記カーボンブラックの表面に存在する官能基と反応し得る反応性基を有する反応性ポリマーとを、分散媒液中に配合し、加熱下に分散処理することによりカーボンブラックの表面改質処理を行なうものであり、分散媒液中に存在するカーボンブラックは、分散処理における攪拌等により物理的なトルク力を受け、二次凝集状態より解砕され一次粒子として分散媒液中に存在することとなるが、この際に分散系が加熱状態にあるため、カーボンブラック表面の官能基と反応性ポリマーの反応性基が容易に反応しグラフト化される。しかも、このカーボンブラックと反応性ポリマーとの反応は分散媒液中において生じるものであるから、カーボンブラックと反応性ポリマーとを溶融混練した場合と比較して、系全体において比較的均一に生じかつより穏やかに進行すると思われ、カーボンブラックに対する反応性ポリマーの配合割合が低い場合であっても、1分子当りの反応性基数が比較的多い反応性ポリマーを用いた場合であっても良好な表面改質処理がなされる。また、このような分散媒液中における分散処理時においては、分子量の低い反応性ポリマーに対しても十分なトルク力が加わるためか、溶融混練により反応させた場合と異なり、良好な表面処理がなされるものであった。このように、本発明の方法においては、従来知られる溶融混練による反応の場合におけるように多量の反応性ポリマーを必要としないばかりでなく、この反応性ポリマーに関する制限も少なく、カーボンブラックの表面性状を種々の要望に応じて適宜変更可能である。
【0020】
なお、本発明の方法を実施した結果得られるカーボンブラックの分散液は、カーボンブラックの表面改質がなされ、分散媒液に対する親和性が改善されるため、均一かつ安定した分散性を有するものとなるために、そのままで各種の用途に適用できるが、もちろん分散媒液より分離して各種用途に用いることも可能である。
【0021】
また、本発明でいう上記したカーボンブラックへの反応性ポリマーの「グラフト化」とは、ドネ(Jean−Baptiste Donnet) らがその著書「カーボンブラック」(1978年5月1日 (株)講談社発行)にて定義しているように、カーボンブラックのような基質に対する重合体の不可逆的な付加のことである。
【0022】
不可逆的な付加反応を行うことによりカーボンブラック表面部分に対し重合体部分を化学結合させることができ、これにより両者を確実に結合させることができる。「グラフト化」に用いることができる付加反応には、求電子付加反応、ラジカル付加反応、求核付加反応、付加環化反応がある。
【0023】
以下、本発明を実施態様に基づきより詳細に説明する。
【0024】
本発明に係るカーボンブラックの表面改質方法において、処理対象となるカーボンブラックとしては、後述するような反応性ポリマーの反応性基と反応し得るような官能基を有するものであれば特に限定されるものではない。
【0025】
このうち顔料、特に無機顔料、例えば、カーボンブラック、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、消石灰、水酸化マグネシウム、ベンガラ、セメント、アルミナ、ジルコニア、シリカ、炭化珪素、窒化珪素等、および磁性粉に対して有用な処理法であり、更には、カーボンブラックに対してである。
【0026】
カーボンブラックとしては、その表面に官能基としてカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を有するものであればよく、例えばファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等のいずれの種類のものを用いることができ、通常の市販品をそのまま使用できるが、カーボンブラックのpHが高いと、該カーボンブラックと、反応性ポリマーの有する反応性基、例えば、エポキシ基、チオエポキシ基等との反応性が低くなるために、カーボンブラックとしてはpHが6未満、好ましくはpH1〜5の範囲のものが望ましい。中性あるいは塩基性のカーボンブラックを酸化処理することにより得られたものも好適に用いることができる。なお、カーボンブラックのpHの試験法はJIS K 6211によるものである。
【0027】
一方、本発明において使用される反応性ポリマーは、このようなカーボンブラックの表面官能基と反応し得る反応性基を有するものであればよいが、例えば反応性基としては、例えば、エポキシ基、チオエポキシ基、アジリジン基およびオキサゾリン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種のものを有するものであることが望ましく、これらの反応性基を分子内に有するビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリエーテル等の重合体である。
【0028】
このような反応性ポリマーを得る方法としては、例えば、
(1)前記の反応性基を分子内に有する重合性単量体(以下、単量体aと称する。)を、必要によりその他の重合性単量体(以下、単量体bと称する。)と共に、重合する方法、
(2)前記の反応性基を分子内に有する化合物(以下、化合物cと称する。)を、該化合物cと反応し得る基を有する重合体(以下、重合体dと称する。)に反応させて前記反応性基を重合体dに導入する方法、
(3)前記反応性基以外の反応性基を分子内に有する重合体(以下、重合体eと称する。)を用い、これを公知の方法により該反応性基を有する重合体(A)に変換させる方法等を挙げることができるが、このうち好ましくは(1)の方法である。
【0029】
上記(1)の方法において使用できる単量体aとしては、
【0030】
【化1】
【0031】
【化2】
【0032】
【化3】
【0033】
【化4】
【0034】
【化5】
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
【化8】
【0038】
【化9】
【0039】
【化10】
【0040】
【化11】
【0041】
【化12】
【0042】
【化13】
【0043】
(但し、これらの式中のR1は水素またはメチル基を示し、nは0または1〜20の整数である。)等の式で表されるエポキシ基含有重合性単量体類;
【0044】
【化14】
【0045】
【化15】
【0046】
【化16】
【0047】
【化17】
【0048】
【化18】
【0049】
【化19】
【0050】
【化20】
【0051】
【化21】
【0052】
【化22】
【0053】
【化23】
【0054】
【化24】
【0055】
【化25】
【0056】
【化26】
【0057】
(但し、これらの式中のR1およびnはエポキシ基含有重合性単量体の場合と同様である。)等で表わされるチオエポキシ基含有重合性単量体類;
【0058】
【化27】
【0059】
【化28】
【0060】
【化29】
【0061】
【化30】
【0062】
【化31】
【0063】
【化32】
【0064】
【化33】
【0065】
【化34】
【0066】
【化35】
【0067】
【化36】
【0068】
【化37】
【0069】
【化38】
【0070】
【化39】
【0071】
【化40】
【0072】
【化41】
【0073】
【化42】
【0074】
【化43】
【0075】
【化44】
【0076】
【化45】
【0077】
【化46】
【0078】
【化47】
【0079】
【化48】
【0080】
【化49】
【0081】
【化50】
【0082】
【化51】
【0083】
【化52】
【0084】
【化53】
【0085】
【化54】
【0086】
【化55】
【0087】
【化56】
【0088】
【化57】
【0089】
【化58】
【0090】
【化59】
【0091】
【化60】
【0092】
【化61】
【0093】
【化62】
【0094】
【化63】
【0095】
【化64】
【0096】
【化65】
【0097】
【化66】
【0098】
【化67】
【0099】
【化68】
【0100】
【化69】
【0101】
【化70】
【0102】
【化71】
【0103】
【化72】
【0104】
【化73】
【0105】
【化74】
【0106】
【化75】
【0107】
【化76】
【0108】
【化77】
【0109】
【化78】
【0110】
【化79】
【0111】
【化80】
【0112】
等で表されるアジリジン基含有重合性単量体類;
2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−エチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4,5−ジメチル−2−オキサゾリンなどのオキサゾリン基含有重合性単量体類;N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシブチルアクリルアミド、N−ヒドロキシイソブチルアクリルアミド、N−ヒドロキシ−2−エチルヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシシクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシプチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシイソブチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシ−2−エチルヘキシルメタクリルアミド、N−ヒドロキシシクロヘキシルメタクリルアミドなどのN−ヒドロキシアルキルアミド基含有重合性単量体類;を挙げることができ、これらの群から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
【0113】
(1)の方法において必要により使用できる単量体bとしては、単量体aと共重合し得るものであれば特に限定されず、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル等のアクリル酸あるいはメタクリル酸系モノマー;エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリルニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0114】
(1)の方法により反応性基を有する反応性ポリマーを得るには、単量体aを、必要により単量体bと共に、従来公知の重合方法、例えば塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、沈殿重合法、溶液重合法等によって重合すればよい。
【0115】
(2)の方法において使用できる化合物cとしては、例えば、
(2−1)前記反応性基の1種を分子内に2個以上有する化合物、
(2−2)前記反応性基の2種以上を分子内に有する化合物、
(2−3)前記反応性基の1種以上と前記反応性基以外の基とを分子内に有する化合物
等を挙げることができる。但し(2−3)項に記載の前記反応性基以外の基とはアジリジン基、オキサゾリン基、N−ヒドロキシアルキルアミド基、エポキシ基およびチオエポキシ基以外のものであって、かつ後述の重合体(d)に含まれる基を反応し得るものであり、例えばイソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ビニル基、ハロゲン基がこれに該当するものである。
【0116】
(2)の方法における重合体(d)とは、前記(2−1)〜(2−3)項に記載した化合物cと反応し得る基を有するビニル系重合体、ポリエステル、ポリエーテル等である。化合物(c)と反応し得る基としては、例えばヒドロキシル基(フェノール性ヒドロキシル基を含む)、カルボキシル基、キノン基、アミノ基、エポキシ基等を挙げることができ、これらの基を有する重合体(d)はラジカル重合、重縮合等の公知の重合手段で容易に得ることができる。
【0117】
(2)の方法により反応性基を有する反応性ポリマーを得るには、化合物(c)と重合体(d)とを前記反応性基の少なくとも1個が未反応で残存する条件を選択して反応すればよい。
【0118】
(3)の方法における重合体(e)は、アジリジン基、オキサゾリン基、N−ヒドロキシアルキルアミド基、エポキシ基またはチオエポキシ基に変換できる基、例えばビニル基、カルボキシル基、クロルヒドリン基、グリコール基等を分子内に有する重合体で、これらは従来公知の方法により容易にアジリジン基、オキサゾリン基、N−ヒドロキシアルキルアミド基、エポキシ基および/またはチオエポキシ基を有する反応性ポリマーとすることができる。
【0119】
さらに、本発明に用いられる反応性ポリマーとしては、当該反応性ポリマーを結合させようとするカーボンブラックに対して親和性の高い部位(A)と、このカーボンブラックを分散させようとする目的媒体に対する親和性の高い部位(B)とを有するように分子設計されたものが、良好な結合性および表面改質性の双方を得る上から望ましく、このような異なる特性の部位(セグメント)を有するブロックないしグラフトポリマーとしたものが望ましい。そしてカーボンブラックに対して親和性の高いセグメントAのみに反応性基を存在させる。なお、ブロックないしグラフトポリマーとしては、単純なA−B型などのみならず、B−A−B型といったより高度な交互ブロック型、複数のBセグメントがAセグメントにグラフトしてなる櫛形などといったものも含まれる。
【0120】
具体的には、前記Aセグメントはその骨格が炭素−炭素結合を主とするもの、より好ましくは、例えばポリスチレン系などのように芳香環を主骨格成分としかつ前記したような反応性基を分子内に有するものとし、一方、前記Bセグメントは、Aセグメントよりも炭素−炭素結合の少ない、特に芳香環の少ない骨格構造、例えばポリシロキサン系、あるいはエーテル結合、エステル結合等の炭素−炭素結合以外の結合を多く含むものとすることが望ましい。
【0121】
本発明において用いられる反応性ポリマーの分子量としては、前記したように比較的広範囲なものを使用することができ、例えば、数平均分子量が1000〜1000000、より好ましくは5000〜100000程度のものとすることができる。
【0122】
また、反応性ポリマーの1分子当りに有する反応性基の数としても、前記したように比較的広範囲なものを使用することができ、例えば、1分子当りに平均して1〜50コ、より好ましくは1〜20コ程度のものとすることができる。
【0123】
本発明の表面処理方法において、これらのカーボンブラックおよび反応性ポリマーを配合する分散媒液としては、特に限定されるものではなく、水溶性または非水溶性の各種のものを使用することができ、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル等のグリコールないしその誘導体類;グリセロール、グリセロールモノエチルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等のグリセロールないしその誘導体類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;流動パラフィン、デカン、デセン、メチルナフタレン、デカリン、ケロシン、ジフェニルメタン、トルエン、ジメチルベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、シクロヘキサン、部分水添されたトリフェニル等の炭化水素類、ポリジメチルシロキサン、部分オクチル置換ポリジメチルシロキサン、部分フェニル置換ポリジメチルシロキサン、フルオロシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロジフェニル、クロロジフェニルメタン等のハロゲン化炭化水素類、ダイルロル(ダイキン工業(株)製)、デムナム(ダイキン工業(株)製)等のふっ化物類、安息香酸エチル、安息香酸オクチル、フタル酸ジオクチル、トリメリット酸トリオクチル、セバシン酸ジブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ドデシル等のエステル化合物類などが、カーボンブラックの種類、得ようとする分散液の用途等に応じて適宜選択して使用される。
【0124】
また、カーボンブラックとのグラフト化反応を阻害しない範囲において、従来公知のモノマー、ポリマー、各種安定剤などを添加してもかまわない。
【0125】
本発明の表面改質処理方法は、上記したような分散媒液に対し、カーボンブラックおよび反応性ポリマーを配合し、これを加熱下で分散処理を行なうことにより行なわれるものであるが、カーボンブラックに対する反応性ポリマーの配合割合としては、使用される反応性ポリマーの種類、得ようとする製品の用途等に応じて左右されるものであるため、一概には規定できないが、カーボンブラック100重量部に対し、反応性ポリマー5〜500重量部、より好ましくは20〜200重量部程度とすることが望ましい。すなわち、反応性ポリマーが5重量部未満であると、カーボンブラックの表面性状を十分に改質することが困難となる虞れがあり、一方500重量部を越えると、カーボンブラック表面に結合する反応性ポリマーの量が多くなり、本来的に要求されるカーボンブラックの特性を損なう虞れがあるためである。
【0126】
また、攪拌混合時における加熱温度も、使用される反応性ポリマーの種類等によっても左右されるため、一概には規定できないが、50〜250℃、好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜220℃程度が適当である。すなわち、加熱温度が50℃未満であると反応性ポリマーの反応性基とカーボンブラック表面の官能基との反応が十分に進行せず、逆に250℃を越えると反応が急激なものとなり制御が困難となるためである。
【0127】
さらに分散処理において、カーボンブランクに加わる剪断応力としては、カーボンブラックの種類等によっても左右されるため、特に限定されるものではないが、102Pa以上、好ましくは103Pa以上、特に好ましくは104Pa以上とすることが望まれる。
【0128】
このような適当な剪断応力を加えながら加熱下において分散処理するために、本発明においては、この分散処理は、好ましくは、被処理流体を内部に収容するためのベッセル、このベッセル内部において回転する攪拌子、ベッセル内部に収容された被処理流体を加熱するための加熱装置、および、ベッセル内部に収容された複数の粒状分散媒体を有してなる湿式分散処理装置によって行なわれる。
【0129】
攪拌子とビーズ等の粒状分散媒体を併用して攪拌ないし解砕を行なう湿式分散処理装置ないし湿式粉砕処理装置は、公知のものとして数多く知られているが、本発明においては、このような処理装置に、被処理流体を加熱するための加熱装置を付加するという装置構成として用いるものである。以下、その構成例を示す。
【0130】
図1および図2は、それぞれ、本発明に係るカーボンブラックの表面改質処理方法に使用される湿式分散処理装置の一実施態様の構成を模式的に示す断面図である。
【0131】
図1示す実施態様の湿式分散処理装置は、軸線が略水平方向に位置してなる円筒型閉塞容器体からなるベッセル1を備えた横型の処理装置である。このベッセル1の外壁面における左右の円盤状端面部のうちの一方(図中左側、以下左側端面部と称する。)の中心部には回転軸挿通孔が設けられており、この挿通孔を通じて、回転軸2がベッセル外部よりベッセル内部空間へとベッセルの軸線に沿って液密に挿通されている。そして、この回転軸2のベッセル内部空間に位置する部位には、円盤状の複数の攪拌子3がそれぞれ所定間隔離間されてこの回転軸2に略垂直な方向に沿って取付けられており、一方ベッセル外部においてこの回転軸2は図示しない駆動装置に連結されている。またベッセル1の外壁面における円筒状周面部の前記左側端面部近傍でかつ上方に位置する部位には、流体導出口14が設けられ、一方、反対側の端面部(以下、右側端面部と称する。)の近傍でかつ下方に位置する部位には逆止弁12を備えた流体導入口13が設けられており、これにより同装置は連続処理方式のものとされている。そして、ベッセル1の内部空間内には、粒状分散媒体として多数の球状ビーズ4が充填されており、前記流体導出口14の近傍には、前記球状ビーズ4は通過できないが、分散液ないしはカーボンブラックは通過することのできる間隙15cを有する媒体セパレータ15が配置されている。前記媒体セパレータ15の間隙15cは、ベッセル1の軸線にそれぞれ略垂直な方向に配置された、円環状の固定板部15aと、回転円盤部15bとの間に形成されるものであり、この固定板部15aの外周は全周にわたりベッセルの内周面(円筒状周面部)に接続され、一方、回転円盤部15bは、前記攪拌子3の場合と同様に回転軸2に取付けられている。
【0132】
しかして、このベッセル1の壁面外周には加熱装置としてリボンヒーター11が巻装されており、ベッセル1内部空間に収容される被分散液を加熱することができる構成とされている。なお、ベッセル1の右側端面部には、ベッセル内部に収容される流体の温度を測定するための熱電対5が取付けられている。
【0133】
この装置において、流体導入口13よりベッセル1内部空間に導入された被処理流体、すなわち、例えば、二次凝集状態にあるカーボンブラック、分散媒液およびカーボンブラックの表面官能基と反応し得る反応性基を有する反応性ポリマーからなる配合物は、流体導出口14より導出されるまでの間に、攪拌子3の回転およびこの回転による充填された球状ビーズ4の個々の回転・旋回、相互の接触・衝突等を伴なう流動運動によって生じる剪断力を受けると共に、リボンヒーター11による加熱を受け、解砕され個々に分離した一次粒子となったカーボンブラックが、分散媒液中に均一に分散されていくと同時に、当該カーボンブラック表面の官能基と反応性ポリマーの反応性基との反応が効率よくなされ、最終的に流体導出口14からは取出される分散液は、取出し直後の分散状態が良好であるのみならず、その分散状態を長持間安定して維持するものとなる。
【0134】
また、図2に示す実施態様の湿式分散処理装置は、軸線が略鉛直方向に位置してなる上端が開口された円筒型容器体本体1aと前記開口を覆う蓋体1bからなるベッセル1を備えた縦型のバッチ式の処理装置である。このベッセル1の蓋体1bの中心部には回転軸挿通孔が設けられており、この挿通孔を通じて、回転軸2がベッセル外部よりベッセル内部空間へとベッセルの軸線に沿って挿通されている。そして、この回転軸2のベッセル内部空間に位置する部位には、ピン状の複数の攪拌子3aが、ベッセルの軸線方向においてそれぞれ所定間隔離間されて多段に、かつ、ベッセルの軸線に略垂直な面において回転軸を中心として放射状に広がるように取付けられている。一方、ベッセル1の内周側面には、ベッセルの軸線方向において前記攪拌子3aと相互に干渉しない位置に多段に(つまり、ちょうど2つの櫛のそれぞれの櫛歯が噛合うごとく配置する。)、かつベッセルの軸線に略垂直な面において内周側面より回転軸に向い放射状に収束するようにピン状の複数の固定子3bが取付けられおり、一種のいわゆる邪魔板として作用する。なお、回転軸2はベッセルの外部において図示しない駆動装置に連結されている。そして、ベッセル1の内部空間内には、前記図1に示す実施態様におけると同様に、分散媒体として多数の球状ビーズ4が充填されている。
【0135】
しかして、このベッセル1の円筒型容器体本体1a壁面外周には、加熱ジャケット6が形成されており、この加熱ジャケット6は、加熱ヒータ9を備えた熱媒タンク8と、途中に熱媒循環ポンプ7を配してなる循環管路により連結されており、循環する熱媒によって、ベッセル1内部空間に収容される被分散液を加熱することができる構成とされている。
【0136】
この装置において、ベッセル1内部空間に装填された被処理流体、すなわち、例えば、二次凝集状態にあるカーボンブラック、分散媒液およびカーボンブラックの表面官能基と反応し得る反応性基を有する反応性ポリマーからなる配合物は、所定時間の攪拌処理により、攪拌子3aの回転およびこの回転する攪拌子3aと固定子3bの存在によりもたらされる充填された球状ビーズ4の個々の回転・旋回、相互の接触・衝突等を伴なう流動運動によって生じる剪断力を受けると共に、加熱ジャケット6による加熱を受け、解砕され個々に分離した一次粒子となったカーボンブランクが、分散媒液中に均一に分散されていくと同時に、当該カーボンブラック表面の官能基と反応性ポリマーの反応性基との反応が効率よくなされ、所定時間経過後に得られる分散液は、取出し直後の分散状態が良好であるのみならず、その分散状態を長持間安定して維持するものとなる。
【0137】
以上は、湿式分散処理装置の構成を図示した実施態様に基づき説明したが、この装置において、ベッセル内の被処理流体を加熱するための加熱装置としては、ベッセル内の被処理流体を有効に加熱できるものである限り、任意の様式のものとすることができ、上記したような熱媒循環方式、リボンヒーター以外にも、例えば、セラミックスヒーターないし赤外加熱方式、高周波誘導加熱方式、コイルヒーター等各種のものを採用することが可能であり、またその配置位置としても上記実施態様におけるようにベッセルの外周に配置するもののみならず、攪拌子の回転に支障を来さない限りベッセルの内部空間に配置することも可能であり、加熱装置を、例えば、ベッセル内面、攪拌子ないし回転軸、あるいは固定子ないし邪魔板に組付けるといったことも可能である。このうち、装置の構造あるいは温度制御の面からベッセルの外周部に加熱装置を配置するのが好ましい。
【0138】
また、この装置において、加熱装置以外の湿式分散処理装置の基本的構成、例えば、連続式ないしバッチ式、ベッセルの材質、形状、攪拌子の材質、形状ないし配置位置、分散媒体の材質、形状および粒径等についても特に限定されるものではなく、得ようとする分散液ないし処理される固体微粒子の反応性等の化学的性質および比重、粒度等の物理的性質等に応じて、適宜選択可能である。
【0139】
ベッセルとしては、アルミナ、ジルコニア、ステアタイト、窒化珪素、炭化珪素、タングステンカーバイト等の各種セラミックス、各種ガラス、鋼、クロム鋼、ハステロイ等のニッケル系合金などの各種金属等を一種あるいは2種以上用いて構成される、横置ないし縦置の、例えば、円筒型、円錐型、半円筒型、例えば特公平2−27018号に開示されるものあるいはダイアモンドファインミル(三菱重工業株式会社製)等におけるような断面W字ないしコの字型のもの、さらには例えば特公平6−73620号に開示されるもののように内部に分散媒体を収容してなるベッセル(攪拌子を備えたないし攪拌子がベッセル壁面の一部を形成する)をその内外の流体(分散液)流通を可能なものより大きな容器体内部に配置したものなど、各種の様式のものとすることができる。
【0140】
また攪拌子としては、ベッセルと同様、アルミナ、ジルコニア、ステアタイト、窒化珪素、炭化珪素、タングステンカーバイト等の各種セラミックス、各種ガラス、鋼、クロム鋼、ハステロイ等のニッケル系合金などの各種金属等が適宜選択される。なお、この材質はベッセルの材質と異なっていても何等さしつかえない。また、形状としては、例えば、上記した円盤状(デスク型)、ピン型以外に、デスクタービン型、ファンタービン型、プロペラ型、螺旋軸翼型、螺旋帯翼型、ゲート型、アンカー型、円筒状、パドル型といった各種の形状のもの、さらにはこれらに通液性の孔を形成するなどの改良を付したものなどを、単一であるいは多段に配することが可能である。また、この攪拌子の形状に応じて、適当な形状を有する邪魔板ないし固定子を設けることが可能である。さらにこのような攪拌子を形成する回転軸は、ベッセルと共軸的に配するもののみならず、ベッセルの中心軸より変位させて、あるいは2軸もしくは多軸に配置することも可能である。
【0141】
さらに、粒状分散媒体としては、処理されるカーボンブラックの種類、ベッセルないし攪拌子の形態等に応じて、適宜変更可能であり、アルミナ、ジルコニア、ステアタイト、窒化珪素、炭化珪素、タングステンカーバイドなどの各種セラミックス、各種ガラス、鋼、クロム鋼、ハステロイ等のニッケル系合金などの各種金属から構成される球状、円筒状、回転楕円体状等の形状のものが用いられ得るが、このうち、特にアルミナ、ジルコニア、鋼およびクロム鋼などの材質から構成される球状のビーズで、通常、直径0.05〜20mm程度、より好ましくは0.1〜5mmのものが望ましい。また、これらの粒状分散媒体のベッセルへの充填割合は、ベッセルないし攪拌子の形態等によっても左右されるものであるため、限定されるものではないが、例えばベッセルの有効容積の20〜90%、より好ましくは30〜80%とされる。なお、充填割合が極端に少ないと、二次凝集状態にある固体微粒子の十分な解砕、およびカーボンブラックと反応性ポリマーとの反応等が十分なものとはならず、一方充填割合が極端に多いと分散媒体の磨耗によるコンタミネーションの増大を引き起こす虞れがある。
【0142】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。なお、以下合成例、実施例および比較例中の「部」は、すべて重量による。
【0143】合成例1 撹拌機、不活性ガス導入管、還流冷却管および温度計を備えたフラスコにポリビニルアルコール(PVA−205、 クラレ(株)製)0.1部を溶解した脱イオン水200部を仕込んだ。そこへ予め調整しておいたスチレン97部およびグリシジルメタクリレート3部からなる重合性単量体にベンゾイルパーオキサイド8部を溶解した混合物を仕込み、高速で攪拌して均一な懸濁液とした。次いで窒素ガスを吹込みながら80℃に加熱し、この温度で5時間攪拌を続けて、重合反応を行った後、冷却しで重合体懸濁液を得た。この重合体懸濁液を瀘過、洗浄した後乾燥して反応性基としてエポキシ基を有する重合体を得た。
【0144】実施例1 図2に示すような構成を有する装置(ベッセル内容量1.2リットル)に、直径1mmのジルコニア製ビーズ2kgを充填し、合成例1で得られた重合体10部、トルエン360部およびカーボンブラックMA−100R(三菱化成工業(株)製)30部を仕込んだ。ついで予め加熱しておいた熱媒を循環させることにより、ベッセル内部を160℃に昇温し、ディスクの外周速度10m/sで2時間運転を行った後冷却し、ジルコニア製ビーズを分離して顔料分散液(1)を得た。
【0145】
得られた顔料分散液(1)をNo.2瀘紙を用いて瀘過したところ、瀘紙通過率は99%で、瀘紙上には未分散カーボンブラックは見られなかった。
【0146】
また顔料分散液(1)を10日間静置したところ、沈降は見られなかった。
【0147】比較例1 合成例1で得られた重合体10部とカーボンブラックMA−100R(三菱化成工業(株)製)20部をラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて160℃、100rpmの条件下に混練して反応させた後冷却し、トルエン70重量部に分散させ、比較用顔料分散液(1)を得た。
【0148】
得られた比較顔料分散液(1)を実施例1と同様の方法で評価したところ、瀘紙通過率は75%で、瀘紙上に未分散カーボンブラックが多量に残存していた。
【0149】
また比較用顔料分散液(1)を10日間静置したところ、大半が沈降していた。
【0150】比較例2 加熱装置を有しない以外は実施例1で用いたものと同様の構成を有する装置(ベッセル内容量1.2リットル)に、直径1mmのジルコニア製ビーズ2kgを充填し、アルミニウムカップリング剤ブレンアクトAL−M(味の素(株)製)5部、トルエン365部およびカーボンブラックMA−100R(三菱化成工業(株)製)30部を仕込んだ。ついでディスクの外周速度10m/sで2時間運転を行った後、ジルコニア製ビーズを分離して比較用顔料分散液(2)を得た。
得られた比較顔料分散液(2)を実施例1と同様の方法で評価したところ、瀘紙通過率は90%で、瀘紙上に未分散カーボンブラックが残存していた。
【0151】
また比較用顔料分散液(2)を10日間静置したところ、一部沈降が見られた。実施例2 実施例1と同様の装置に、直径1mmのジルコニア製ビーズ2kgを充填し、o−クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂(住友化学(株)製、ESCN−195X、エポキシ当量198)40部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート280部、カーボンブラックMA−100R(三菱化成工業(株)製)80部を仕込んだ。ついで予め加熱しておいた熱媒を循環させることにより、ベッセル内部を200℃に昇温し、ディスクの外周速度10m/sで3時間運転を行った後冷却し、ジルコニア製ビーズを分離して顔料分散液(2)を得た。
【0152】
得られた顔料分散液(2)をNo.2瀘紙を用いて瀘過したところ、瀘紙通過率は99%で、瀘紙上にはゲル化したカーボンブラックは見られなかった。
【0153】
また顔料分散液(2)を10日間静置したところ、沈降は見られなかった。
【0154】比較例3 実施例2と同様な組成、即ち、o−クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂10部、カーボンブラックMA−100R(三菱化成工業(株)製)20部とを、比較例1と同様に、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて200℃、100rpmの条件下に混練して反応させた後冷却し、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート70重量部を加え、比較用顔料分散液(3)を得た。
【0155】
得られた比較用顔料分散液(3)を実施例1と同様の方法で評価したところ、大半が瀘紙上に未分散カーボンブラックやゲル化したカーボンブラック等として残存した。また比較用分散液(3)は、すぐに沈降が生じた。
【0156】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のカーボンブラックの表面改質処理方法は、カーボンブラックと、前記カーボンブラックの表面に存在する官能基と反応し得る反応性基を有する反応性ポリマーとを、分散媒液中に配合し、加熱下に分散処理することを特徴とするものであるので、解砕され個々に分離した一次粒子となったカーボンブラックが、分散媒液中に均一に分散されていくと同時に、当該カーボンブラック表面の官能基と反応性ポリマーの反応性基との反応が効率よくなされ、反応性ポリマーがカーボンブラック表面にグラフト化されるため、カーボンブラックの各種媒体に対する親和性を確実にかつ簡便な操作にて改善することができ、また得られる分散液自体も、分散安定性が非常に優れたものとなる。さらに、本発明の方法は、多量の反応性ポリマーを必要としないばかりでなく、この反応性ポリマーに関する分子量、反応基数などといった制限も少なく、本来的に必要とされるカーボンブラックの特性を損なうことなく、カーボンブラックの表面性状を種々の要望に応じて適宜変更可能である。
【0157】
また本発明において、前記分散処理が、被処理流体を内部に収容するためのベッセルと、該このベッセル内部において回転する攪拌子と、該ベッセル内部に収容された被処理流体を加熱するための加熱装置およびベッセル内部に収容された多数の粒状分散媒体を有してなる湿式分散処理装置において行なわれるものであるので、より確実にかつ容易な操作にて表面改質を行なうことができる。
【0158】
本発明において、固体微粒子100重量部に対し、反応性ポリマー5〜500重量部を添加するものであると、本来的に必要とされるカーボンブラックの特性にほとんど影響を及ぼすことなく、カーボンブラックの表面性状を良好に改質できる。
【0159】
本発明において、攪拌混合時における加熱温度が50〜250℃であると、安定してかつ制御性よく反応を進行させることができる。
【0160】
【0161】
本発明において、反応性ポリマーの有する反応性基が、エポキシ基、チオエポキシ基、アジリジン基およびオキサゾリン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種または2種以上のものであると、より確実に反応性ポリマーをカーボンブラック表面に結合させることができ、より優れた表面改質処理効果を得ることができる。
本発明において、反応性ポリマーが、芳香環を主骨格成分としかつ前記反応性基を分子内に有するセグメントと、前記分散媒液に親和性を有するセグメントとを少なくとも有するブロックないしグラフトポリマーであると、例えばカーボンブラックに対し、より確実に反応性ポリマーをカーボンブラック表面に結合させることができると同時に、各種の媒体に対するより優れた親和性をカーボンブラックに対し付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るカーボンブラックの表面改質処理方法において用いられる湿式分散処理装置の一実施態様の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】 本発明に係るカーボンブラックの表面改質処理方法において用いられる湿式分散処理装置の別の実施態様の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1…ベッセル
2…回転軸
3、3a…攪拌子
3b…固定子
4…分散媒体(球状ビーズ)
5…熱電対
6…加熱ジャケット
7…熱媒循環ポンプ
8…熱媒タンク
9…加熱ヒータ
11…リボンヒーター
13…流体導入口
14…流体導出口
Claims (4)
- カーボンブラックと、前記カーボンブラックの表面に存在する官能基と反応し得る反応性基を有する反応性ポリマーとを、該カーボンブラック100重量部当り5〜500重量部の割合で、分散媒液中に配合し、被処理流体を内部に収容するためのベッセルと、該ベッセル内部において回転する攪拌子と、該ベッセル内部に収容された被処理流体を加熱するための加熱装置および該ベッセル内部に収容された直径0.05〜20mmの多数の粒状分散媒体を有してなる湿式分散処理装置において50〜250℃の温度に加熱して分散処理することを特徴とするカーボンブラックの表面改質処理方法。
- 該粒状分散媒体の該ベッセルへの充填割合は、該ベッセルの有効容積の20〜90%である請求項1に記載のカーボンブラックの表面改質方法。
- 該反応性ポリマーの有する反応性基が、エポキシ基、チオエポキシ基、アジリジン基およびオキサゾリン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種または2種以上のものである請求項1または2に記載のカーボンブラックの表面改質処理方法。
- 該反応性ポリマーが、芳香環を主骨格成分としかつ前記反応性基を分子内に有するセグメントと、前記分散媒液に親和性を有するセグメントとを少なくとも有するブロックないしグラフトポリマーである請求項1〜5のいずれか一つに記載のカーボンブラックの表面改質処理方法。
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