JP3781945B2 - エンジン用ベアリングケース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのクランクシャフト支持用ベアリングを収容保持するためのベアリングケースに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、草刈機や動力噴霧機、発電機等の動力源として、OHV(頭上弁)型やOHC(頭上カム軸)型の汎用エンジンが広く用いられている。このような汎用エンジンでは一般に、クランクシャフトの支持はボールベアリング(以下、ベアリングと略記する)によって行われる。すなわち、クランクシャフトの両端にベアリングを配し、これらによってクランクシャフトを支持しているものが多い。
【0003】
また、ベアリングの保持は、クランクケースとそれに取り付けられたメインベアリングケース(以下、ベアリングケースと略記する)にて行われる。この際、一方側のベアリングは、クランクケース壁面に設けたベアリング保持部にて収容保持される。また、他方側のベアリングは、ベアリングケースに収容保持されるのが一般的である。
【0004】
図7は、従来のベアリングケースの構成を示す断面図である。従来のベアリングケース100では、図7に示すように、その側壁101の中央部にベアリング保持部102が突出形成されている。一方、ベアリングケース100の外周部は、クランクケースのカバー取付面とガスケットを介して接合されるクランクケース取付部(以下、取付部と略記する)103が形成されている。また、取付部103とベアリング保持部102との間には、肉抜部104が設けられている。そして、ベアリング保持部102に、図示しないボールベアリングを収容し、これによりクランクシャフトの一端側を保持している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、クランクシャフトには、爆発行程などの際に軸方向とは直角方向の力も作用する。このため、前記ベアリングには、回転方向の力の他にクランクシャフトと直角方向(径方向)の力も作用する。そして、図7のベアリングケース100では、この力をベアリング保持部102にて受けている。
【0006】
しかしながら、前記ベアリングケース100では、取付部103がベアリング保持部102に対してオーバーハングした形となっている。このため、ベアリング保持部102が径方向の力を受けると、ベアリング保持部102は基部から撓んで側壁101に歪みが生じる。また、取付部103には、径方向の力によるモーメントを受ける。そして、取付部103とクランクケースとの間には、このモーメントにより圧縮力や剪断力が働く。このため、両者の間に介装されたガスケットにはこれらの力が繰り返し付加され、それに応じてガスケットも繰り返し変形される。従って、ガスケットの損傷が進行し易く、ガスケット損傷によるオイル漏れが発生する恐れがあるという問題があった。
【0007】
特に、高回転、高出力化が進む今日では、ベアリング保持部102が受ける力がさらに大きくなる傾向がある。従って、図7のようなベアリングケースでは、この力に十分対抗できず、その改善が求められていた。
【0008】
本発明の目的は、メインベアリングケースの剛性アップと軽量化を図ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のエンジン用ベアリングケースは、エンジンのクランクケースに取り付けられ、前記エンジンのクランクシャフトを支持するベアリングを保持するためのベアリングケースであって、前記ベアリングを保持するベアリング保持部と、前記ベアリングケースの外周部に形成され、前記クランクケースと接合されるクランクケース取付部と、前記ベアリングケースの前記クランクケース側に形成され、少なくとも前記クランクシャフトの軸心より上側において、前記ベアリング保持部の内側面近傍と前記クランクケース取付部の内側面近傍との間に延在する壁状のリブ壁と、少なくとも前記クランクシャフトの軸心より上側において、前記クランクケース取付部の前記クランクケースとは反対側の面に、前記ベアリングケースの外周に沿って設けられる補強リブとを有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ベアリング保持部がクランクシャフトから径方向の力を受けても、この力をリブ壁によって受け止めることができ、従来のベアリングケースのように、ベアリング保持部が基部から撓むようなことがない。また、クランクケース取付部にモーメントが加わりにくくなり、クランクケース取付部の動きが抑えられる。従って、ベアリングケースの歪みやバタつきによるガスケットの損傷を防止でき、製品寿命や製品信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0011】
この場合、前記リブ壁を球面状の壁体に形成しても良く、これにより、アーチ状の壁面によりベアリング保持部を支持することができ、ベアリングケースの剛性をさらに向上することが可能となる。また、その分、リブ壁を薄くすることもでき、ベアリングケースの軽量化を図ることも可能となる。さらに、球面壁により、振動や作動音を効率良く吸収・抑制することができ、製品性能の向上も図られる。
【0012】
また、前記リブ壁を前記クランクシャフト軸心よりも上側に形成することにより、径方向の力の影響が少ない軸心下側のリブを省き、軸心下側の設計自由度の向上を図ることができる。
【0013】
加えて、前記ベアリングケースの前記クランクシャフト軸心より下側に、前記クランクケース側の面が開口し前記エンジンのオイルパンの一部を構成する空洞部を形成しても良い。これにより、オイルを貯留する容量を確保しつつベアリングケースの剛性強化を図ることが可能となる。
【0014】
一方、前記クランクケース取付部の前記クランクケースとは反対側の面に、前記ベアリングケースの外周に沿って補強リブが設けられており、これにより、ベアリングケースの面方向の剛性を確保することができる。
【0015】
また、前記クランクケース取付部に、前記ベアリングケースを前記クランクケースに固定するためのボルトを挿通する複数のボルト装着部を設け、前記補強リブを、前記ボルト装着部の間に形成するようにしても良い。さらに、前記補強リブを前記リブ壁の存在する部位に形成するようにしても良い。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態であるベアリングケースを使用したOHCエンジンの構成を示す説明図、図2は図1のエンジンにおけるシリンダ軸線方向の断面図である。
【0017】
図1のエンジンは、単気筒4サイクルガソリンエンジンであり、シリンダ軸線CLが天地方向に対し角度θだけ傾斜したいわゆる傾斜型のOHCエンジンとなっている。当該エンジンでは、エンジン本体1は、シリンダブロック2の下側にクランクケース3を一体に成形した構成となっており、鉄や、アルミニウム合金等の軽合金によって形成される。シリンダブロック2の上側には、アルミニウム合金製のシリンダヘッド4が取り付けられている。また、シリンダヘッド4の上側には、板金製若しくは合成樹脂製のロッカーカバー5が載置されている。
【0018】
クランクケース3は、その図1において右側の側面が大きく開口しており、メインベアリングケース取付面6となっている。メインベアリングケース取付面6には、アルミニウム合金製のメインベアリングケース(以下、ベアリングケースと略記する)7が取り付けられる。そしてこれにより、クランクケース3内にクランク室8が形成されると共に、その下部に潤滑オイル(以下、オイルと略記する)9が貯留されるオイルパン10が形成される。
【0019】
ベアリングケース7には、メインベアリング11aが圧入固定され、クランクシャフト12の一端側がそこで支持される。また、メインベアリング11aの外側にはオイルシール13aが圧入固定されている。
【0020】
図3はベアリングケース7の断面図、図4は図3のベアリングケースの左側面図、図5は同右側面図、図6は図5のA−A線に沿った断面図である。図3〜6に示すように、ベアリングケース7のほぼ中央には、メインベアリング11aを収容保持するためのベアリング保持部61が設けられている。また、ベアリングケース7の外周部には、クランクケース3のメインベアリングケース取付面6と接合されるクランクケース取付部(以下、取付部と略記する)62が形成されている。ベアリングケース7は、クランクケース3にボルトにて結合され、取付部62にはこのボルトを挿通するためのボルト装着部67が設けられている。なお、メインベアリングケース取付面6と取付部62との間には、図示しないガスケットが介設される。
【0021】
ここで、クランクシャフト12には、前述のように径方向に燃焼爆発力が加わる。そして、ベアリング保持部61には、メインベアリング11aを介してこの力が作用する。また、この力に対してはクランク中心からシリンダ方向、すなわち、専らベアリング保持部61の上方側が影響を受ける。そこで、本発明によるベアリングケース7では、ベアリング保持部61の上方内側に、ベアリング保持部61と取付部62の内側端部近傍同士を結ぶ球面壁を設け、これにより負荷を受けるようにしている。
【0022】
すなわち、図3に示すように、当該ベアリングケース7のクランクケース取付側の面には、クランクシャフト12の軸心よりも上方側にリブ壁63が設けられている。リブ壁63は、ベアリング保持部61の内側面61a近傍から、取付部62の内側面62a近傍にかけて延在しており、ベアリング保持部61と取付部62とを直結する形となっている。そして、図4において、放射状に延びるリブ64a,64bより上側の3個の面X,Y,Zはリブ壁63となっている。
【0023】
また、リブ壁63は、クランクシャフト軸心を中心とした大半径を有する球面の一部として形成されている。すなわち、リブ壁63は球面壁となっており、図4において手前側が膨らんだ状態となっている。
【0024】
そこで、ベアリング保持部61がクランクシャフト12から前述のような径方向の力を受けると、この力はリブ壁63に伝達され、ベアリング保持部61はリブ壁63によって支持される。このため、従来のベアリングケースのように、ベアリング保持部61が基部から撓むようなことがなく、ベアリングケース7の歪みを防止できる。また、取付部62にモーメントが加わりにくくなり、取付部62のバタつきが抑えられる。すなわち、ベアリングケース7の剛性向上を図ることができ、これにより、ガスケットの損傷を予防して製品寿命や製品信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0025】
さらに、当該ベアリングケース7では、リブ壁63が球面構造となっているため、アーチ状の壁面によりベアリング保持部61を支持する形となり、さらに剛性の向上が図られる。また、その分リブ壁63を薄くすることもでき、ベアリングケース7の軽量化を図ることも可能となる。さらに、球面壁により、振動や作動音を効率良く吸収・抑制することができ、製品性能の向上も図られる。
【0026】
一方、リブ64a,64bの下側の面P,Q,R側は、図3に示すように、空洞部65となっている。この空洞部65は、エンジンのクランクケース3側に開口しており、オイルパン10の一部となる。ベアリングケース7においては、前述のように、ベアリング保持部61の下方側は前記負荷の影響が小さく、リブ壁63を敢えて形成する必要はない。そこで、本発明では、この部分を上半分とは異なり空洞部65とし、オイル9を貯留する容量を確保しつつベアリングケース7の軽量化を図っている。なお、空洞部65を形成しなくとも油量を確保できる場合には、下側の面P,Q,Rもリブ壁63としても良い。
【0027】
また、本発明のベアリングケース7では、図5に示すように、取付部62の外側面62bの上半分に補強リブ66が形成されている。この補強リブ66は、ボルト装着部67のうち、リブ壁63が形成されている側にある4個(64a〜64d)の間を結ぶように配設されている。なお、補強リブ66をベアリングケース7の全周に亘って設けても良い。
【0028】
ここで、図7のような従来のベアリングケース100では、取付部103に沿って外周壁105が存在し、これがベアリングケース100の面方向の剛性(以下、面剛性と略記する)を担っている。ところが、当該ベアリングケース7のようにリブ壁63を形成すると、下半分は空洞部65の外周壁68によって面剛性が確保されるものの、上半部の面剛性はリブ壁63の板厚のみにて担うこととなり、面剛性が下半分に比して低下する。そこで、本発明のベアリングケース7では、リブ壁63が存在する部分について、取付部62の外側面62bに補強リブ66を設け、その面剛性を確保している。従って、本発明によるベアリングケース7では、クランクシャフト12に加わる前記直角方向の力に対抗しつつ、ケース自体の剛性をも確保できるようになっている。
【0029】
クランクケース3のメインベアリングケース取付面6と反対側の壁面14には、メインベアリング11bが圧入固定されている。そして、このメインベアリング11bによってクランクシャフト12の他端側が支持される。また、メインベアリング11bの外側にもオイルシール13bが配されており、両オイルシール13a,13bにより、オイルパン10に貯留されたオイル9がクランクシャフト12部分からクランクケース3外に漏出しないようになっている。
【0030】
壁面14からクランクケース3の外部に延伸したクランクシャフト12の端部には、フライホイール15および冷却ファン16が取り付けられている。この冷却ファン16は、クランクケース3の外側、筐体57の内側に配置され、クランクシャフト12と共に回転して筐体57外部から冷却風を導入する。そして、この導入した冷却風によりエンジン本体1やシリンダヘッド4等の冷却を行う。さらに、筐体57の外側には、リコイル装置17が配設されており、リコイルレバー17aを手動にて引っ張ることによりクランクシャフト12が回転され、エンジンが始動するようになっている。
【0031】
シリンダブロック2の内部にはシリンダボア18が形成されている。シリンダボア18内には、ピストン19が摺動自在に嵌合されている。シリンダボア18の上端側はシリンダヘッド4によって閉塞されており、ピストン19の頂面とシリンダヘッド4の底壁面20とにより燃焼室21が形成されている。なお、燃焼室21の上部には、吸気バルブ22や、図示しない排気バルブ、点火プラグ等が臨まされている。
【0032】
ピストン19には、ピストンピン23を介してコンロッド24の小端部25が回転自在に連結されている。また、コンロッド24の大端部26には、クランクシャフト12のクランクピン27が回転自在に連結されている。そしてこれにより、ピストン19の上下動に伴って、クランクシャフト12が回転する。
【0033】
一方、シリンダヘッド4内には、シリンダ軸線CL上に、クランクシャフト12と平行にカムシャフト28が配設されている。カムシャフト28は、動弁カム29とスプロケット31とが一体に形成した構成となっている。そして、調時動弁系30により、動弁カム29はクランクシャフト12と同期して駆動される。
【0034】
これに対しクランクシャフト12には、スプロケット32が固着されている。また、シリンダブロック2とシリンダヘッド4には、チェーン室50,51が形成されており、両スプロケット31,32の間は、これらのチェーン室50,51内に配設されたチェーン33にて連結されている。そして、これらのスプロケット31,32およびチェーン33により調時動弁系30が形成される。なお、スプロケット31の歯数は、スプロケット32の歯数の2倍となっており、クランクシャフト12が2回転すると動弁カム29が1回転するようになっている。また、チェーン33は、チェーンテンショナ55によって適宜張力が付与されている。
【0035】
動弁カム29にはカム面29aが形成されており、このカム面29aにはロッカーアーム34の一端側に形成されたスリッパ35が摺接している。ロッカーアーム34は、揺動式のものが吸気用と排気用に2個設けられている。これらのロッカーアーム34は、それぞれロッカーサポート59に支持されたロッカーシャフト36を中心として揺動自在に取り付けられている。ロッカーアーム34の他端側は、吸気バルブ22や図示しない排気バルブの先端部とアジャストスクリュウ56を介して接続されている。そして、動弁カム29によりロッカーアーム34が揺動すると、吸気バルブ22や排気バルブが駆動される。また、吸気バルブ22や排気バルブは、バルブスプリング37により閉弁方向に付勢されており、これにより、吸気バルブ22等が動弁カム29の回転に伴って開閉される。
【0036】
一方、調時動弁系30は、コンロッド24の大端部26に設けられたスクレーパ38によって潤滑される。スクレーパ38は、図2に示すように、大端部26の下側部材39から下方、すなわち、クランクシャフト12の径方向に延伸形成され、図2に一点鎖線にて示すような軌跡を描きつつ、クランクシャフト12の回転に伴って揺動運動する。そしてこれにより、オイルパン10に溜まったオイル9が掻き上げられ、スクレーパ38が油面40から出る際にオイル9がチェーン33に跳ねかけられ、調時動弁系30の潤滑が行われる。
【0037】
スクレーパ38は、略L字形の断面を有しており、底壁41と、底壁41の一端側に底壁41と一体に立設された側壁42とから構成されている。なお、本実施の形態では、底壁41と側壁42との間の角度αは90°に形成されているが、両者の角度は直角には限定されず、60°〜90°程度の間で適宜選択し得る。
【0038】
このようなスクレーパ38の揺動運動に伴い、底壁41によってオイル9が掻き上げられると共に、底壁41によって掻き上げられたオイル9が、側壁42に案内されて側壁42とは反対側に跳ね上げられる。すなわち、スクレーパ38の側方にもオイル9の飛沫が3次元的に斜めに跳ね上げられ、チェーンテンショナ55の根本部分近傍方向へ飛ばされる。また、その一部はクランクケース3の内壁に当たってチェーン33方向に跳ね返る。従って、スクレーパ38に対し、メインベアリングケース7側にオフセットして配置されたチェーン33にオイル9の飛沫をかけることができ、チェーン33にオイル9を確実に供給できる。
【0039】
このようにしてチェーン33に跳ねかけられたオイル9は、チェーン33の移動と共にシリンダヘッド4側に運ばれ、スプロケット31の潤滑も行われる。また、スプロケット32もチェーン33に付着したオイル9によって潤滑される。
【0040】
ところで、チェーン33に付着したオイル9は、その一部がシリンダヘッド4側にて遠心力によって振り飛ばされる。すなわち、チェーン33がスプロケット31に巻き付く際に、その一部がスプロケット31の円周方向に飛ばされチェーン33から分離する。当該エンジンでは、スプロケット31の上方にはロッカーカバー5が配設されており、オイル9の飛沫はロッカーカバー5の天井面53に当たる。そして、天井面53に付着したオイル9は、天井面53に沿って下方に流れ、チェーン室51,50を伝ってオイルパン10に戻される。
【0041】
また、ロッカーカバー5の天井面53の一部には、図1に示すように、凸部54が形成されており、天井面53に付着したオイル9がこの凸部54から滴下するようにもなっている。この凸部54は、動弁カム29とスリッパ35との摺接部の上方に位置しており、ここから滴下するオイル9によって前記摺接部が潤滑されるようになっている。
【0042】
シリンダヘッド4の内部にはさらに、チェーン室51とは別に気液分離室43が設けられている。また、ロッカーカバー5内には、この気液分離室43とリードバルブ44を介して連通した気液分離室45が形成されている。さらに、気液分離室45は、ブローバイ通路46を介してエアクリーナ47に接続されている。なお、エアクリーナ47は、気化器48を介してシリンダヘッド4内の吸気ポート49に接続されている。
【0043】
これらの気液分離室43,45は、クランク室8内に貯留されるブローバイガスをエアクリーナ47に還流させる際に、ブローバイガスに含まれるオイル9のミスト分を分離させるためのものである。当該エンジンでは、気液分離室43は、シリンダボア18とは別に形成されたチェーン室50に開口している。すなわち、シリンダブロック2のチェーン室50上端部には、ガス導入口52が設けられており、チェーン室50に流入したブローバイガスは、ガス導入口52を介して気液分離室43内に流入する。そして、気液分離室43内を流通することにより、その中のオイルミスト分が気液分離室43の壁面に付着し、ブローバイガスとオイルミストの分離が行われる。この際、気液分離室43内にて分離されたオイル分は、気液分離室43およびチェーン室50の壁面を伝ってオイルパン10に戻される。
【0044】
また、リードバルブ44を経てロッカーカバー5内に流入したブローバイガスは、さらに、気液分離室45内にてオイルミスト分の分離が行われる。つまり、気液分離室45に入ったブローバイガス中のオイルミスト分が、気液分離室45の壁面に付着し、さらに気液分離が行われる。なお、ロッカーカバー5の下面側には、図示しないオイルリターン孔が設けられており、気液分離室45の壁面に付着したオイル分は、そこからチェーン室51,50に流出し、チェーン室51,50の壁面を伝ってオイルパン10に戻される。
【0045】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0046】
たとえば、リブ壁63は球面壁となっているが、円錐状あるいはクランクケース取付面と平行な平面状の壁であっても良い。
【0047】
また、前述の実施の形態では、傾斜型エンジンに本発明を適用したものを示したが、シリンダ軸線が天地方向に沿って配置された通常のエンジンに本発明を適用することも勿論可能である。さらに、単気筒の空冷エンジンに本発明を適用した例を示したが、本発明を多気筒の空冷エンジンや、単気筒または多気筒の水冷エンジンに適用することも可能である。
【0048】
また、シリンダブロック2とクランクケース3を一体に形成した例を示したがこれらを分離形成することも可能であり、シリンダヘッド4とシリンダブロック2とを一体に形成するようにしても良い。加えて、調時動弁系30を、スプロケット31,32とチェーン33にて構成した例を示したが、これをコグプーリとコグベルトやタイミングプーリとタイミングベルトなど、他の公知の調時動弁系を適用することも可能である。なお、本発明において「回転」とは正逆両方向の円運動をを含む概念であり、一方向の円運動のみを意味するものではない。
【0049】
【発明の効果】
本発明のベアリングケースによれば、ベアリング保持部とクランクケース取付部との間にリブ壁を形成したことにより、ベアリング保持部が径方向の力を受けても、この力をリブ壁によって受け止めることが可能となる。すなわち、ベアリングケースの剛性を向上させることができ、ベアリング保持部の撓みや、クランクケース取付部にモーメントを抑えることが可能となる。従って、クランクケース取付部の動きが抑えられ、ベアリングケースの歪みやバタつきによるガスケットの損傷を防止でき、製品寿命や製品信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0050】
また、リブ壁を球面状の壁体に形成したことにより、ベアリングケースの剛性をさらに向上することが可能となると共に、その分、リブ壁を薄くすることができ、ベアリングケースの軽量化を図ることが可能となる。さらに、振動や作動音を効率良く吸収・抑制することが可能となり、製品性能の向上を図ることができる。
【0051】
さらに、ベアリングケースのクランクシャフト軸心より下側に、エンジンのオイルパンの一部を構成する空洞部を形成したことにより、オイルを貯留する容量を確保しつつベアリングケースの剛性強化を図ることが可能となる。
【0052】
加えて、クランクケース取付部の外側面に補強リブを形成したことにより、ベアリングケースの面方向の剛性を確保できる。特に、リブ壁の存在する部位に形成することにより、リブ壁と補強リブとによって面剛性を担うことができ、クランクケースの剛性強化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態であるベアリングケースを使用したOHCエンジンの構成を示す説明図である。
【図2】図1のエンジンにおけるシリンダ軸線方向の断面図である。
【図3】本発明によるベアリングケースの構成を示す断面図である。
【図4】図3のベアリングケースの左側面図である。
【図5】図3のベアリングケースの右側面図である。
【図6】図5のA−A線に沿った断面図である。
【図7】従来のベアリングケースの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
3 クランクケース
7 メインベアリングケース
10 オイルパン
11a,11b メインベアリング
61 ベアリング保持部
62 クランクケース取付部
63 リブ壁
65 空洞部
66 補強リブ
67 ボルト装着部
Claims (5)
- エンジンのクランクケースに取り付けられ、前記エンジンのクランクシャフトを支持するベアリングを保持するためのベアリングケースであって、
前記ベアリングを保持するベアリング保持部と、
前記ベアリングケースの外周部に形成され、前記クランクケースと接合されるクランクケース取付部と、
前記ベアリングケースの前記クランクケース側に形成され、少なくとも前記クランクシャフトの軸心より上側において、前記ベアリング保持部の内側面近傍と前記クランクケース取付部の内側面近傍との間に延在する壁状のリブ壁と、
少なくとも前記クランクシャフトの軸心より上側において、前記クランクケース取付部の前記クランクケースとは反対側の面に、前記ベアリングケースの外周に沿って設けられる補強リブとを有することを特徴とするエンジン用ベアリングケース。 - 請求項1記載のエンジン用ベアリングケースにおいて、前記リブ壁は、球面状の壁体に形成されてなることを特徴とするエンジン用ベアリングケース。
- 請求項1または2記載のエンジン用ベアリングケースにおいて、前記ベアリングケースの前記クランクシャフト軸心より下側に、前記クランクケース側の面が開口し前記エンジンのオイルパンの一部を構成する空洞部を形成したことを特徴とするエンジン用ベアリングケース。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジン用ベアリングケースにおいて、前記クランクケース取付部は、前記ベアリングケースを前記クランクケースに固定するためのボルトを挿通する複数のボルト装着部を有し、前記補強リブは、前記ボルト装着部の間に形成されることを特徴とするエンジン用ベアリングケース。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジン用ベアリングケースにおいて、前記補強リブは、前記リブ壁の存在する部位に形成されることを特徴とするエンジン用ベアリングケース。
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