JP3746078B2 - ポリフェノール配糖体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ポリフェノール配糖体に関し、さらに詳細には配糖化することで安定性および呈味性を改良した新規ポリフェノール配糖体とその製造方法並びに前記ポリフェノール配糖体からなるフェノールオキシダーゼ活性阻害剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェノール類は、コレステロール上昇抑制作用(特公平2−44449号公報),抗菌作用(特開平2−276562号公報),抗酸化作用(特公平1−44234号公報),抗腫瘍作用(特開昭60−190719号公報),血圧上昇抑制作用および酵素活性阻害作用(特開平3−133928号公報)などの生理活性作用を示し、その有効成分はガロカテキン、カテキン−3−O−ガレートおよびガロカテキン−3−O−ガレートの1種またはこれらの混合物であることが知られている。
【0003】
しかしながら、これらの物質は温度や光に対して不安定であり、着色しながら変化してしまう性質を持っているばかりでなく、強い収斂性をもつ渋味成分であることから、呈味性が著しく損なわれ、食品をはじめ各種分野への利用を考える上で大きな欠点となっている。さらに、これらのポリフェノール類は、色素の生成や野菜,果汁などの食品の褐変に関与するフェノールオキシダーゼの阻害剤として作用するが、その一方ではポリフェノール類自体がそれら酵素の基質ともなり着色してしまうという欠点を持っている。
【0004】
最近、カテキン配糖体をメラニン色素の生成に関与するチロシナーゼの阻害剤として皮膚外用剤に利用する方法(特開平4−273890号公報)が開発されている。しかしながら、カテキンは上述したコレステロール上昇抑制作用,抗菌作用,抗酸化作用,抗腫瘍作用や血圧上昇抑制作用などの生理活性作用においてガロカテキン、カテキン−3−O−ガレートやガロカテキン−3−O−ガレートに比べ、その生理活性が著しく弱く、また場合によっては活性を持たないなど必ずしも満足し得るものではない。
【0005】
したがって、カテキン配糖体においても強い生理活性を期待することはできない。また、カテキン類とグルコース−1−リン酸あるいはシュークロースとの混合液にシュークロースホスホリラーゼを作用させることにより、易溶性や色沢安定性を付与したカテキン類配糖体の製造方法(特開平5−176786号公報)が開発され、(−)−エピカテキンガレート、(−)−エピガロカテキンや(−)−エピガロカテキンガレートも例示されている。しかし、この方法ではカテキン類に1分子のグルコース残基だけが結合しているため、これら物質の持つ強い渋みや収斂性を十分に改善しているとはいい難く、またこのグルコース残基の結合位置が3’位であるため、特にエピガロカテキンやエピガロカテキンガレート型の物質に対しては十分な安定性の向上が図れるかどうかは疑問である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、強い生理活性作用を有するポリフェノール類の光、pHあるいは熱安定性の向上とフェノールオキシダーゼによる着色(他の化合物への変化)を防止し、またその呈味性を改善することによって、これら物質の持つ本来の機能性を食品、化粧品、医薬品などの広い分野で十分に活用することに関し、さらにはフェノールオキシダーゼに対する阻害能をより効果的に発揮させることに関して有効なポリフェノール化合物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、強い生理活性作用を有するポリフェノール類の4’位を配糖化し、光,pHおよび熱安定性に優れ、しかもその呈味性を十分に改善し、さらにはフェノールオキシダーゼに対する阻害能をより効果的に発揮させる方法について鋭意研究を行った結果、これらのポリフェノール類とデキストリン、サイクロデキストリン、澱粉もしくはこれらの混合物にバチルス・ステアロサーモフィラス由来のサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させることによってポリフェノール類の4’位に特異的に配糖化できることを見出した。本発明はかかる知見により完成したのである。
【0008】
すなわち、本発明は下記の一般式1〜3で表されるポリフェノール配糖体を提供するものである。
【0009】
【化4】
【0010】
(式中、Xはα -D−グルコピラノース残基あるいは重合度2〜10のα -マルトオリゴ糖残基を示し、R1〜R5はそれぞれ独立に水素、α -D−グルコピラノース残基あるいは重合度2〜10のα -マルトオリゴ糖残基を示す。)
【0011】
【化5】
(式中、Xはα -D−グルコピラノース残基あるいは重合度2〜10のα -マルトオリゴ糖残基を示し、R1〜R3はそれぞれ独立に水素、α -D−グルコピラノース残基あるいは重合度2〜10のα-マルトオリゴ糖残基を示す。)
【0012】
【化6】
【0013】
(式中、Xはα -D−グルコピラノース残基あるいは重合度2〜10のα -マルトオリゴ糖残基を示し、R1〜R3およびR5はそれぞれ独立に水素、α -D−グルコピラノース残基あるいは重合度2〜10のα-マルトオリゴ糖残基を示す。)
【0014】
さらに、本発明は、(A)ガロカテキン、カテキン−3−O−ガレート、ガロカテキン−3−O−ガレートおよびこれら化合物を少なくとも2種類以上含むポリフェノール類混合物のうちのいずれかと(B)デキストリン、サイクロデキストリン、澱粉およびこれら化合物を少なくとも2種類以上含む混合物のうちのいずれかにバチルス・ステアロサーモフィラス由来のサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させることによりポリフェノール配糖体を得ることを特徴とする上記ポリフェノール配糖体の製造方法を提供すると共に、当該ポリフェノール配糖体からなるフェノールオキシダーゼ活性阻害剤および当該ポリフェノール配糖体からなる熱、光またはpHに対する安定化剤および呈味性改善剤を提供するものである。
【0015】
本発明におけるポリフェノールの基本骨格を一般式4に示すが、この構造式においてベンゾピラン環の2位と3位はそれぞれR配置またはS配置のいずれであってもよい。すなわち、ガロカテキンでは、(+)あるいは(−)−ガロカテキンおよび(+)あるいは(−)−エピガロカテキン、カテキンガレートでは(+)あるいは(−)−カテキンガレートおよび(+)あるいは(−)−エピカテキンガレート、ガロカテキンガレートでは(+)あるいは(−)−ガロカテキンガレートおよび(+)あるいは(−)−エピガロカテキンガレートを挙げることができる。
【0016】
【化7】
【0017】
前記一般式1〜3で表されるポリフェノール配糖体の製造方法に関しては特に限定するものではなく、化学合成法,植物組織培養細胞法や微生物菌体を用いる方法などが考えられるが、ポリフェノール類の安定性や呈味性を著しく改善するためには、これらのポリフェノール類の1種あるいは2種以上の混合物にデキストリン、サイクロデキストリン、澱粉あるいはこれらの混合物を添加し、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)由来のサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させる方法が好適である。
【0018】
酵素反応条件としては、反応のpHを3〜8、好ましくはpH4.5〜6.0とし、反応温度を20〜70℃、好ましくは40〜65℃とするのがよく、基質濃度としてポリフェノール類を0.1〜20w/w%(以下、本明細書では特に断らない限りw/w%を単に%と省略する。)、好ましくは2〜10%、デキストリン、サイクロデキストリン、澱粉あるいはこれらの混合物を1〜40%、好ましくは10〜30%含む反応液を用いるのがよい。また、酵素量や反応時間については、上記反応条件に合わせ最適に設定することができる。
【0019】
このようにしてポリフェノール配糖体を生成せしめた反応溶液はそのまま使用することができるが、さらにグルコアミラーゼ処理を行うことにより、グルコシル糖化合物とすることもできる。これらの反応溶液は、必要に応じてシロップや粉末化を行った後、使用することもできる。
また、さらに高純度のポリフェノール配糖体が望まれる場合には、多孔性合成吸着剤、例えば三菱化成工業株式会社製の商品名、ダイアイオンHP−10,ダイアイオンHP−20,ダイアイオンHP−40やローム・アンド・ハース(Rohm & Haas) 社製の商品名、アンバーライトXAD−1, アンバーライトXAD−4,アンバーライトXAD−7,アンバーライトXAD−8などを用いてポリフェノール配糖体と夾雑物との吸着性の違いを利用して精製すればよい。例えば、ポリフェノール配糖体やポリフェノール類と遊離の糖類を分離する必要があるときには、反応溶液を多孔性合成吸着剤を充填したカラムに通液すればポリフェノール化合物は吸着し、遊離の糖類は吸着されずに溶出する。次いで、吸着されたポリフェノール配糖体などのポリフェノール類を、低級アルコール液、例えば50v/v%エタノール水溶液などで溶出し、この溶出液を濃縮してシロップ化、さらには乾燥、粉末化して採取できる。さらに、ポリフェノール配糖体と未反応のポリフェノール類との分離を必要とする場合には、これらの化合物の極性の差を利用して、酢酸エチルなどの有機溶媒相に未反応のポリフェノール類を移して除去することもできる。さらに必要ならば、ポリフェノール配糖体をクロマトグラフィーなどの方法によって特定の画分を採取して利用することもできる。
【0020】
以上に述べたようにして得られる本発明のポリフェノール配糖体は、従来のポリフェノール類とは違って苦味,渋味,えぐみや収斂性などの嫌味がほとんどなく、また光,pHや熱安定性にも優れ、その精製の程度や純度を問わず、そのままであるいは他の素材と共に含有せしめて食品、医薬部外品、化粧品、医薬品などの広い分野に自由に用いることができる。
【0021】
また、本発明のポリフェノール配糖体は、体内のα−アミラーゼ、α−グルコシダーゼなどの作用により容易に元のポリフェノール類に戻ることから、その薬効を懸念すること無く、ポリフェノール類本来の、例えばコレステロール上昇抑制作用,生体内抗酸化作用などの生理活性機能を発揮できるため、健康増進食品、健康維持食品、健康快復食品などとして有利に利用できる。
【0022】
本発明のポリフェノール配糖体を利用するに際しては、例えば調味料、和菓子、洋菓子、氷菓子、シロップ類、果実加工品、野菜加工品、漬物類、畜肉製品、魚肉製品、珍味類、缶・ビン詰類、酒類、清涼飲料、即席飲食物などの食品類、タバコ、練り歯磨き、口紅、リップクリーム、内服薬、トローチ、肝油ドロップ、口中清涼剤、口中香錠、うがい薬など各種固形状、ペースト状、液状の嗜好品、化粧品、医薬品などの組成物に0.01%以上、望ましくは0.1%以上含有せしめるのが望ましい。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、かかる説明によって本発明がなんら制限されるものではない。
実施例1
α−サイクロデキストリン(株式会社林原生物化学研究所製)100gと(−)−エピガロカテキン(三井農林株式会社製)5gを10mM塩化カルシウムを含む0.1M酢酸緩衝液(pH5.5)500mlに溶解後、バチルス・ステアロサーモフィラス由来のサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製)をα−サイクロデキストリングラム当たり1000単位加え、50℃で24時間反応させた。
【0024】
次いで、UF膜濾過により酵素を除去後、この反応液に0.1M酢酸緩衝液(pH4.5)1000mlとリゾプス・ニベウス由来のグルコアミラーゼ(生化学工業株式会社製)を固形物グラム当たり50単位加え、40℃で20時間反応を行った。酵素をUF膜を用いて取り除いた後、得られた反応液を水で平衡化したダイアイオンHP−10(三菱化成工業株式会社製)1000mlを充填したカラムに吸着させた。カラムを脱イオン水3000mlで洗浄後、50v/v%メタノール水溶液1000ml、次いで100v/v%メタノール2000mlを用いて溶出し吸着画分を回収した。
溶出液を減圧濃縮してメタノールを除去し、500mlの蒸留水に溶解した。この溶液を酢酸エチル500mlで7回洗浄し、未反応の(−)−エピガロカテキンを除去した。次いで、この水溶液画分をダイアイオンHP−20(三菱化成工業株式会社製)SSカラム2500mlに展開し、蒸留水で十分に洗浄後、25v/v%メタノール水溶液8000mlで溶出して2000mlづつを分画した。さらに、50v/v%メタノール溶液5Lで溶出した。これらの画分についてHPLCで分析を行いエピガロカテキン配糖体を含む画分AおよびBを得た。
【0025】
これらの画分については、分取用HPLCで分離を行い、A画分からエピガロカテキン配糖体1、B画分からエピガロカテキン配糖体2を得た。これらの配糖体はHPLC分析で単一ピークを示した。
【0026】
分析用HPLC条件
カラム:カプセルパック AG-120 ODS S-5 (4.6×250mm)
移動相:アセトニトリル:酢酸エチル:0.05v/v%燐酸水=12:1:87
流 速:0.7ml/min
検 出:UV 280nm(40℃)
分取用HPLC条件
カラム:カプセルパック ODS AG-120 S-5 (20×250mm)
移動相:A画分;0.05v/v%燐酸水を含む10v/v%メタノール水溶液
B画分;0.05v/v%燐酸水を含む15v/v%メタノール水溶液
流 速:8ml/min
検 出:UV 280nm(室温)
【0027】
それぞれ各エピガロカテキン配糖体の収量は、1が282mg、2が590mgであった。これらの配糖体1と2をNMRおよびMSによる機器分析で解析した結果、下記の構造を持つものであると決定した。また、機器分析の結果も併せて列記した。なお、参考としてエピガロカテキン配糖体2の1H−NMRスペクトル,13C −NMRスペクトルおよびマススペクトルを図1,図2および図3にそれぞれ示した。
【0028】
【化8】
【0029】
(−)−エピガロカテキン−7,4’−O−ジ−α−D−グルコピラノシド(エピガロカテキン配糖体1)
1H-NMR(ppm, methanol(d4)-D2O) 2.79(1H,dd,H-4a), 2.87(1H,dd,H-4b), 3.45-3.92(11H,ring H,Glc×2), 4.20(1H,m,H-3), 4.26(1H,m,H-5"'), 4.83(1H,s,H-2), 5.05(1H,d,H-1"', JH−1”’,H−2”’ =4 Hz), 5.41(1H,d,H-1", JH−1” , H−2” =4Hz), 6.26(1H,d,H-8), 6.31(1H,d,H-6), 6.60(2H,d,H-2',6')
13C-NMR(ppm, methanol(d4)-D2O) 28.5(C-4), 60.5(C-6'"), 62.3(C-6"), 64.5(C-3), 68.1(C-4"), 69.8(C-4'"), 71.6(C-2"), 72.0(C-2'"), 73.1(C-3'"), 73.6(C-5"'), 75.1(C-5"), 78.2(C-2), 95.6(C-8), 96.7(C-6), 98.0(C-1"), 101.5(C-4a), 105.6(C-1'"), 107.9(C-2',6'), 137.9(C-1'), 134.9 (C-4'), 150.8(C-3',5'), 155.6(C-8a), 156.3(C-5), 156.5(C-7)
FAB-MS(pos.)
m/z =631=(M+H)+ , 分子量630
【0030】
【化9】
【0031】
(−)−エピガロカテキン−4’−O−α−D−グルコピラノシド(エピガロカテキン配糖体2)
1H-NMR(ppm, methanol(d4)-D2O) 2.72(1H,dd,H-4a), 2.87(1H,dd,H-4b), 3.44-3.93(5H,ring H Glc), 4.22(1H,m,H-3), 4.25(1H,m,H-5"), 4.80(1H,s,H-2), 5.08(1H,d,H-1", JH−1”,H−2” =4.1Hz), 5.96(1H,d,H-8), 5.98(1H,d,H-6), 6.58(2H,d,H-2',6')
13C-NMR(ppm, methanol(d4)-D2O) 29.9(C-4), 62.8(C-6"), 65.0(C-3), 68.0(C-4"), 71.6(C-2"), 74.0(C-3"), 75.6(C-5"), 80.3(C-2), 96.9(C-8), 97.2(C-6), 100.9(C-4a), 106.0(C-1"), 108.0(C-2',6'), 135.5(C-4'), 138.5(C-1'), 152.0(C-3',5'), 157.7(C-8a), 158.1(C-7), 158.5(C-5)
FAB-MS(pos.)
m/z =469=(M+H)+ , 分子量468
【0032】
実施例2
(−)−エピカテキンガレート(三井農林株式会社製)を用いて実施例1に示した方法に準じて酵素反応を行った後、ダイアイオンHP−10(三菱化成工業株式会社製)を用いて未反応の糖を除去した。吸着画分をメタノール水溶液を用いて溶出させ減圧濃縮後、分取用HPLCに供し、エピカテキンガレート配糖体1(1.14g)を得た。この配糖体は、上記条件(実施例1)によるHPLC分析で単一のピークを示した。
【0033】
分取用HPLC条件
カラム:カプセルパック AG-120 ODS S-5 (50×500mm)
移動相:0.05v/v%燐酸水を含む20v/v%メタノール水溶液;40min
0.05v/v%燐酸水を含む23v/v%メタノール水溶液;90min
流 速:120ml/min
検 出:UV 280nm(室温)
【0034】
この配糖体をNMRおよびMSによる機器分析で解析した結果、下記の構造を持つものであると決定した。また、機器分析の結果も併せて列記した。
【0035】
【化10】
【0036】
(−)−エピカテキンガレート−4’−O−α−D−グルコピラノシド(エピカテキンガレート配糖体1)
1H-NMR(ppm, DMSO-d6) 2.71(1H,dd,H-4a), 2.94(1H,dd,H-4b), 3.21-3.61(6H,ring H,Glc), 5.02(1H,d,H-1''', JH−1’’’,H−2’’’ =3.8 Hz), 5.07(1H,s,H-2), 5.34(1H,m,H-3), 5.83(1H,d,H-8), 5.94(1H,d,H-6), 6.72(1H,dd,H-6'),6.77(1H,d,H-2'), 6.84(2H,s,H-2",6"), 7.14(1H,d,H-5')
13C-NMR(ppm, DMSO-d6) 25.5(C-4), 60.2(C-6'''), 68.0(C-3), 69.4(C-4'''),71.9(C-2'''), 73.0(C-5'''), 73.2(C-3'''), 76.3(C-2), 94.3(C-8), 95.5(C-6), 97.0(C-4a), 100.0(C-1'''), 108.5(C-2",6"), 115.1(C-5'), 116.0(C-2'),118.9(C-1"), 121.1(C-6'), 129.5(C-1'), 138.5(C-4"), 144.5(C-4'), 145.3(C-3",5"), 146.6(C-3'), 155.4(C-8a), 156.4(C-7), 156.4(C-5), 165.0(C-7")
FAB-MS(pos.)
m/z =605=(M+H)+ , 分子量604
【0037】
実施例3
(−)−エピガロカテキンガレート(三井農林株式会社製)を用いて実施例2に準じて同様の操作を行い、エピガロカテキンガレート配糖体1(375mg)および2(960mg)を得た。これらの配糖体をNMRおよびMSによる機器分析で解析した結果、下記の構造を持つものであると決定した。また、機器分析の結果も併せて列記した。
【0038】
【化11】
【0039】
(−)−エピガロカテキンガレート−7,4’−O−ジ−α−D−グルコピラノシド(エピガロカテキンガレート配糖体1)
1H-NMR(ppm, methanol(d4)-D2O) 2.94(1H,dd,H-4a), 3.08(1H,dd,H-4b),3.43-3.92(11H,ring H,Glc ×2), 4.17(1H,m,H-5"'), 5.02(1H,d,H-1"', JH−1”’,H−2”’ =4Hz), 5.06(1H,s, H-2), 5.50(1H,d ,H-1"",JH−1””,H−2”” =3.5Hz), 5.51(1H,m,H-3), 6.38(1H,d, H-8), 6.38(1H,d,H-6), 6.61(2H,d,H-2',6'), 7.02(2H,s,H-2",6")
13C-NMR(ppm, methanol(d4)-D2O) 27.7(C-4), 62.7(C-6'"), 63.1(C-6""), 70.5(C-3), 71.7(C-4'"), 72.3(C-4""), 74.1(C-2'"), 74.2(C-2""), 74.7(C-3'"),75.9(C-5'"), 75.7(C-3""), 75.7(C-5""), 79.6(C-2), 98.4(C-8), 99.1(C-6),99.9(C-4a), 106.3(C-1'"), 102.9(C-1""), 108.0(C-2'), 111.1(C-6'), 111.2(C-2",6"), 122.0(C-1"), 135.4(C-1'), 135.8(C-4'), 136.7(C-4"), 147.1(C-3",5"), 152.0(C-3',5'), 157.9(C-8a), 158.5(C-5), 158.9(C-7), 168.1(C-7")
FAB-MS(pos.)
m/z =783=(M+H)+ , 分子量782
【0040】
【化12】
【0041】
(−)−エピガロカテキンガレート−4’−O−α−D−グルコピラノシド(エピガロカテキンガレート配糖体2)
1H-NMR(ppm, methanol(d4)-D2O) 2.83(1H,dd,H-4a), 2.99(1H,dd,H-4b), 3.30-3.86(5H,ring H,Glc), 4.14(1H,m,H-5"'), 4.99(1H,d,H-1'", JH−1”’,H−2”’ =3.8Hz), 5.00(1H,s,H-2), 5.53(1H,m,H-3), 5.95(2H,s,H-6,8), 6.56(2H,s,H-2',6'), 6.93(2H,s,H-2",6")
13C-NMR(ppm, methanol(d4)-D2O) 27.7(C-4), 63.0(C-6'"), 70.6(C-3), 71.8(C-4'"), 74.1(C-2'"), 75.7(C-3'"), 76.0(C-5'"), 79.2(C-2), 96.7(C-8), 97.4(C-6), 100.2(C-4a), 106.4(C-1'"), 107.8(C-2',6'), 111.0(C- 2",6"), 122.1(C-1"), 135.9(C-4'), 138.0(C-1'), 140.7(C-4"), 147.1(C-3",5"), 152.3(C-3',5'), 157.8(C-8a), 158.7(C-5,7), 168.4(C-7")
FAB-MS(pos.)
m/z =621=(M+H)+ , 分子量620
【0042】
実施例4
上記の実施例で得られたポリフェノール類配糖体のフェノールオキシダーゼ(シグマ社製)に対する阻害効果を調べた。すなわち、1.0mM(+)−カテキンおよび0.1mMポリフェノールあるいはそれらの配糖体を含むクエン酸リン酸緩衝液0.84mlにフェノールオキシダーゼ(170,000単位/8.4ml)0.06mlを加え、30℃で反応を行った。
酵素活性の測定は、400nmにおける吸光度の増加を経時的に追跡し、その初速度から酵素活性を求めた。また、対照として(+)−カテキン配糖体1((+)−カテキン−3’−O−α−D−グルコピラノシド)および(+)−カテキン配糖体2((+)−カテキン−4’−O−α−D−グルコピラノシド)を用いた。なお、(+)−カテキン配糖体1は特開平4−273890号公報に開示されている方法に準じて、また(+)−カテキン配糖体2は(+)−カテキンを用いて実施例1の方法に準じて、それぞれ調製した。
【0043】
結果を第1表に示した。表から明らかなように、本発明のポリフェノール配糖体は、本酵素に対して従来のポリフェノール類とほぼ同程度の阻害効果を示し、対照として用いた2種類の(+)−カテキン配糖体に比べ優れた阻害能を有していた。
【0044】
【表1】
第1表
【0045】
実施例5
前記実施例で得たポリフェノール配糖体の光に対する安定性を調べた。すなわち、試料を1mMとなるように蒸留水に溶解し、その5mlをキャップ付き試験管に入れた。これを紫外線カーボンアーク耐光試験機(スガ製作所製)にセットし、40℃で10時間光照射(主波長380nm)後、試料溶液のスペクトルを分光光度計により測定しその着色度を評価した。なお、光照射前の試料溶液をコントロールとして用いた。図4には可視部吸収域(400〜700nm)の吸光度の積算値を用いて着色度を評価した結果を示した。これらの結果から、当該ポリフェノール配糖体は配糖化していないものに比較し光安定性に優れていることが明らかとなった。
このように、本発明のポリフェノール配糖体は溶液状態においても安定性に優れていることから、各種用途に利用することができるものである。
【0046】
実施例6
(−)−エピガロカテキンあるいは(−)−エピガロカテキンガレートとデキストリン(商品名:パインデックス#1、松谷化学株式会社製)の混合溶液にサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを実施例1に示した方法に準じて反応させた。反応液をダイアイオンHP−10(三菱化成株式会社製)に供し、蒸留水で十分洗浄することにより未反応の糖類,緩衝液や酵素を除去後、配糖化物を50〜100V/V%のエタノール水溶液で溶出した。次いで、減圧濃縮によりエタノールを除去後、水を加えて200mlとした。この溶液を等量の酢酸エチルで5回洗浄し、未反応のポリフェノールを除去した。なお、HPLC分析において未反応のポリフェノールが除去されていることを確認した。
【0047】
このようにして得られた配糖体の収量は、(−)−エピガロカテキン5gから23.4g、(−)−エピガロカテキンガレート5gから14.8gであった。紫外線吸収の測定結果(分子吸光係数)から、これらのポリフェノールには1分子当たり平均で6〜8個のグルコースが結合しているものと考えられた。
【0048】
次に、これらの配糖体の渋味の強さをパネル員15名による官能検査によって調べた。その結果を第2表に示した。表から明らかなように、(−)−エピガロカテキンや(−)−エピガロカテキンガレートでは100〜200ppmで渋みを感じ始めるのに対し、配糖体では1000ppmでも渋みは感じられず、2000ppmでわずかに収斂性を感じ始めるようになった。
このように、ポリフェノール配糖体は従来のポリフェノール類に比べ非常に呈味性が改善された物質である。したがって、本発明のポリフェノール配糖体は、食品,嗜好品,化粧品,医薬品等を問わずその呈味を味わうことのできるすべての物品に応用できるものである。
【0049】
【表2】
第2表
【0050】
実施例7
ゼリー菓子
(−)−エピガロカテキンあるいは(−)−エピガロカテキンガレート20gとデキストリン(商品名:パインデックス#1、松谷化学株式会社製)200gを1mM塩化カルシウムを含む水1000mlに溶解後、実施例1の方法に準じてサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させた。酵素を加熱失活させた後、不溶物を濾過により除去した。この濾液をスプレードライ装置により乾燥させ粉末210g(収率約95%)を得た。
【0051】
カップリングシュガー(登録商標、株式会社林原生物化学研究所製)126g,オリゴメイト50(商品名、ヤクルト薬品工業株式会社製)136g,乳糖6g,アスパルテーム(商品名、味の素株式会社製)0.3g,前記の方法で調製した(−)−エピガロカテキンガレート配糖体含有粉末10gおよび水150gを混合後、攪拌しつつ加熱溶解させた。この溶液にペクチン4.5gを徐々に加えて溶解後、50%クエン酸溶解3.3g,1/5濃縮レモン果汁6g,天然色素0.1gおよびレモンフレーバー0.2gを加えて十分に混合し、この溶液を型に流し込み室温で12時間放冷して固化させペクチンゼリーを作成した。
本品は、ポリフェノール類特有の着色や渋味もなく風味に優れたゼリー菓子である。また、ポリフェノール類の機能性を有するゼリー菓子として好適である。
【0052】
実施例8
粉末乳酸発泡飲料
1カップ当たり砂糖2.7g,ビタミンC0.6g,発泡剤(重曹)0.6g,酸味料(クエン酸)0.6g,粉末発酵乳0.5g,粉末香料(グレープフルーツ)0.2gおよび実施例7で調製した(−)−エピガロカテキンガレート配糖体含有粉末0.6gを均一に混合して粉末乳糖発泡飲料を試作した。
本品を冷水180mlに溶かして飲んだところ、さわやかな味と香りをもつ飲み易い飲料てあった。また、本品はポリフェノール類本来の、例えばコレステロール上昇抑制作用,血糖値上昇抑制作用,抗酸化作用などの機能性を有する飲み易い粉末乳酸発泡飲料である。
【0053】
実施例9
化粧用クリーム
スクワラン23g,ステアリン酸5g,ベヘニルアルコール0.8g,モノステアリン酸ポリエチレングリコール2g,自己乳化型モノステアリン酸グリセリン2.5g,酸化チタン2.5gおよびパラオキシ安息香酸メチル0.05gを加熱溶解後80℃とし、これにアラントイン0.1g,1,3−ブチレングリコール2g,パラオキシ安息香酸メチル0.15g,実施例7で調製した(−)−エピガロカテキン配糖体含有粉末1gおよび精製水を加熱溶解して80℃としたものを加え、混合乳化した。よく攪拌しながら30℃まで冷却後、容器に充填し製品とした。
本品は、ポリフェノール類特有の着色がなく肌になじみ易い化粧用クリームである。また、ポリフェノール類本来の、例えば抗酸化作用,紫外線吸収作用などの機能性を有する化粧用クリームである。
【0054】
実施例10
錠剤
乳糖77g,実施例7で調製した(−)−エピガロカテキン配糖体含有粉末25g,アスパルテーム0.5g,シュガーエステル0.7g,1/5濃縮レモン果汁2g,ビタミンC5g,ビタミンE粉末0.2g,β−カロチン粉末0.2gおよび粉末レモンフレーバー1gを均一に混合後、1錠500mg,直径10mm,錠剤の厚さ3.2mmに打錠した。
本品は、渋味がなく風味のよい錠剤である。また、ポリフェノール類本来の、例えばコレステロール上昇抑制作用,血糖値上昇抑制作用,抗酸化作用などの機能性を有する飲み易い錠剤である。
【0055】
【発明の効果】
本発明のポリフェノール配糖体は、光,pHあるいは熱などに対する安定性に優れているだけでなく、従来のポリフェノール類のもつ強い渋味や収斂性を効果的に改善することができ、さらにフェノールオキシダーゼに対して十分な阻害効果を有していることから食品、嗜好品、化粧品、医薬部外品、医薬品など各種組成物に応用可能な化合物である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(−)−エピガロカテキン配糖体2の1H−NMRスペクトルを示す。
【図2】(−)−エピガロカテキン配糖体2の13C −NMRスペクトルを示す。
【図3】(−)−エピガロカテキン配糖体2のマススペクトルを示す。
【図4】 ポリフェノール配糖体の着色度を示すグラフである。
Claims (6)
- (A)ガロカテキン、カテキン−3−O−ガレート、ガロカテキン−3−O−ガレートおよびこれら化合物を少なくとも2種類以上含むポリフェノール類混合物のうちのいずれかと(B)デキストリン、サイクロデキストリン、澱粉およびこれら化合物を少なくとも2種類以上含む混合物のうちのいずれかにバチルス・ステアロサーモフィラス由来のサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させることによりポリフェノール配糖体を得ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリフェノール配糖体の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のポリフェノール配糖体からなるフェノールオキシダーゼ活性阻害剤。
- 飲食物、嗜好品、化粧品、医薬部外品、医薬品またはそれらの原料として用いられるものである、請求項5記載のフェノールオキシダーゼ活性阻害剤。
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