本発明は高い電気機械変換効率を有する水晶振動子、水晶ユニット、水晶発振器とそれらの製造方法に関する。特に、水晶振動子は輪郭モードで振動する輪郭水晶振動子で、幅縦水晶振動子、長さ縦水晶振動子、ラーメモード水晶振動子と曲げモード水晶振動子に関する。詳細には、小型化、高精度、耐衝撃性、低廉化などの要求の強い携帯機器用、情報通信機器用、計測機器用、及び民生機器用などの電子機器の基準信号源として最適な新形状、新カット、新電極構成の輪郭水晶振動子とそれを具えた水晶ユニット、水晶発振器とそれらの製造方法に関する。
例えば、Z板水晶を用いた基本波モードで振動する輪郭水晶振動子の一つである長さ縦モード水晶振動子がよく知られている。この従来の水晶振動子は振動部、接続部と支持部とを具えて構成され、一体に形成されている。しかし、振動部の側面が化学的エッチング法で形成され、その側面の上に電極が対抗して配置されている。そのために、電極間のx軸方向の電界が一様でなく、等価直列抵抗R
1が大きくなるという問題があった。更に、電界方向と同じ方向に接続部が設けられ、且つ、振動部の中央部にあるので、x軸(幅)方向の電界が振動部の中央部で働かない。それ故、電気機械変換効率が悪くなる。その結果、R
1が大きく、品質係数Q値が小さくなるという問題があった。また、他の輪郭水晶振動子の一つである曲げ水晶振動子では、小型化した曲げ水晶振動子をケース等の固定部に固定すると振動部のエネルギー損失が大きくなると言う問題があった。これらの問題は振動子の小型化に於いて大きな障害となる。即ち、R
1が小さく、Q値が大きく、小型及び/又は、高周波数の水晶振動子が実現できないという問題があった。同時に、その振動子を用いた水晶ユニットと水晶発振器の特性が良くないという問題もあった。
特開平2−75213号公報 特開平2−79509号公報 特開平2−132909号公報 特開平2−132911号公報 特開平2−132914号公報 特開平3−195111号公報 特開平5−22070号公報 特開平6−268462号公報 特開平2−186815号公報 特開平3−192911号公報 特開昭56−65517号公報 国際公開番号WO00/44092 「水晶振動子とその応用デバイス」電子情報通信学会論文誌C−I Vol.J82−C−INo.12pp.667−682 1999年12月 古賀逸策著「圧電気と高周波」、オーム者 昭和13年 「矩形板状水晶振動子の短辺振動とその周波数温度係数」、電気学会雑誌、56巻579号 昭和11年10月 品田敏雄著「水晶発振子の理論と実際」、オーム社 昭和42年8月
解決しようとする問題点は、輪郭水晶振動子の電気機械変換効率が悪く、等価直列抵抗R1が大きく、品質係数Q値が小さくなるという点、及び小型化による輪郭水晶振動子の固定による振動部のエネルギー損失が大きくなることである。同時に、前記振動子を用いた水晶ユニットと水晶発振器の特性が良くない点である。このようなことから、超小型で、等価直列抵抗R1が小さく、品質係数Q値が高くなるような新形状、新カットで、電気機械変換効率が高くなる電極構成と形状から成る輪郭水晶振動子とそれを具えた水晶ユニットと水晶発振器が所望されていた。
本発明は、以下の方法で従来の課題を有利に解決した水晶振動子とそれを具えた水晶ユニット、水晶発振器とそれらの製造方法を提供することを目的とするものである。
即ち、本発明の水晶振動子の第1の態様は、基部とその基部に接続された振動部を備えて構成される水晶振動子で、前記水晶振動子の振動部と基部の各々は上面とそれに対抗する下面と側面とを有し、前記水晶振動子は曲げモードで振動する曲げ水晶振動子で、前記基部の側面は少なくとも第1側面と第2側面とを有し、前記第1側面に1個の振動部が接続されていて、前記曲げ水晶振動子の振動部の幅と長さと厚み方向を、それぞれ水晶の結晶軸であるx軸(電気軸)とy軸(機械軸)とz軸(光軸)方向に一致させ、電気軸x軸を回転軸として、角度θx=−20°〜+20°回転し、更に、機械軸y軸の回転後の新軸y′軸を回転軸として、角度θy=−10°〜+10°回転した角度を前記曲げ水晶振動子は有し、前記曲げ水晶振動子の圧電定数e12の絶対値が0.123C/m2〜0.18C/m2の範囲内にある水晶振動子である。
本発明の水晶振動子の第2の態様は、第1の態様において、第2側面は第1側面に対抗して設けられ、前記第2側面に1個の振動部が接続されている水晶振動子である。
本発明の水晶振動子の第3の態様は、第1の態様又は第2の態様において、曲げモードで振動する曲げ水晶振動子の基部に突出部が接続され、前記突出部は曲げ水晶振動子を収納するケースと蓋とを備えて構成される水晶ユニットのケース、又は蓋の固定部にマウントされている水晶振動子である。
本発明の水晶振動子の第4の態様は、第1の態様から第3の態様のいずれかにおいて、基部の第1側面に接続された振動部の側面は、第1側面とそれに対抗する第2側面とを有し、前記振動部の第1側面に第1電極が、前記振動部の第2側面に第2電極が配置され、かつ、第1電極と第2電極が接続され、前記振動部の上面とそれに対抗する下面に各々1個の溝が設けられ、上面の溝に第3電極が、下面の溝に第4電極が配置され、かつ、第3電極と第4電極が接続されていて、前記第1電極の極性と前記第3電極の極性が異なる水晶振動子である。
本発明の水晶ユニットの第1の態様は、基部とその基部に接続された振動部を備えた水晶振動子と、その水晶振動子を収納するケースと蓋とを備えて構成される水晶ユニットで、第1の態様に記載の水晶振動子を備えた水晶ユニットである。
本発明の水晶ユニットの第2の態様は、基部とその基部に接続された振動部を備えた水晶振動子と、その水晶振動子を収納するケースと蓋とを備えた水晶ユニットで、第4の態様に記載の水晶振動子を備えた水晶ユニットである。
本発明の水晶発振器の第1の態様は、基部とその基部に接続された振動部を備えて構成される水晶振動子と、その水晶振動子を収納するケースと蓋とを備えて構成される水晶ユニットと、CMOSインバータとコンデンサと抵抗とを備えて構成される水晶発振器で、第1の態様に記載の水晶振動子を備えて構成される水晶発振器である。
本発明の水晶発振器の第2の態様は、基部とその基部に接続された振動部を備えて構成される水晶振動子と、その水晶振動子を収納するケースと蓋とを備えて構成される水晶ユニットと、CMOSインバータとコンデンサと抵抗とを備えて構成される水晶発振器で、第4の態様に記載の水晶振動子を備えた水晶発振器である。
本発明の水晶振動子の製造方法の第1の態様は、基部とその基部に接続された振動部を備えて構成される水晶振動子で、前記水晶振動子の振動部は上面とそれに対抗する下面と、第1側面とそれに対抗する第2側面とを備えて構成され、前記水晶振動子の基部は上面とそれに対抗する下面と側面とを備えて構成され、前記水晶振動子は曲げモードで振動する曲げ水晶振動子で、前記基部の側面は少なくとも第1側面と第2側面とを備えて構成され、前記基部の第1側面に1個の振動部が接続されている曲げ水晶振動子の製造方法であって、基部とその基部に接続された1個の振動部を形成するためのエッチング工程にて、水晶ウエハをエッチングによって曲げモードで振動する曲げ水晶振動子を形成する工程と、第1側面とそれに対抗する第2側面とを有する振動部の第1側面に第1電極を、前記振動部の第2側面に第2電極を配置する工程と、前記振動部の第1側面の第1電極と第2側面の第2電極を接続する工程と、曲げ水晶振動子の発振周波数を調整する工程と、を有し、前記曲げ水晶振動子の振動部の幅と長さと厚み方向を、それぞれ水晶の結晶軸であるx軸(電気軸)とy軸(機械軸)とz軸(光軸)方向に一致させ、電気軸x軸を回転軸として、角度θx=−20°〜+20°回転し、更に、機械軸y軸の回転後の新軸y′軸を回転軸として、角度θy=−10°〜+10°回転した角度を前記曲げ水晶振動子は有し、前記曲げ水晶振動子の圧電定数e12の絶対値が0.123C/m2〜0.18C/m2の範囲内にある水晶振動子の製造方法である。
本発明の水晶振動子の製造方法の第2の態様は、第1の態様において、振動部の上面と下面に、各々1個の溝を形成するためのエッチング工程と、振動部の上面の溝に第1電極と極性の異なる第3電極を、下面の溝に第3電極と接続される第4電極を配置する工程とを有し、前記溝の内少なくとも1個の溝を形成するエッチング工程は、基部とその基部に接続された1個の振動部を備えた曲げ水晶振動子を形成するためのエッチング工程の後に行われる水晶振動子の製造方法である。
本発明の水晶ユニットの製造方法の第1の態様は、基部とその基部に接続された振動部を備えた水晶振動子と、その水晶振動子を収納するケースと蓋とを備えた水晶ユニットの製造方法で、第1の態様に記載の水晶振動子の製造方法を備えた水晶ユニットの製造方法である。
本発明の水晶ユニットの製造方法の第2の態様は、基部とその基部に接続された振動部を備えた水晶振動子と、ケースと蓋とを備えた水晶ユニットの製造方法で、第2の態様に記載の水晶振動子の製造方法を備えた水晶ユニットの製造方法である。
本発明の水晶発振器の製造方法の第1の態様は、基部とその基部に接続された振動部を備えた水晶振動子と、その水晶振動子を収納するケースと蓋とを備えた水晶ユニットと、CMOSインバータとコンデンサと抵抗とを備えて構成される水晶発振器の製造方法で、第1の態様に記載の水晶振動子の製造方法を備えた水晶発振器の製造方法である。
本発明の水晶発振器の製造方法の第2の態様は、第1の態様において、振動部の上面と下面の各面に、各々1個の溝を形成するためのエッチング工程にて、前記水晶ウエハをエッチングする工程と、振動部の上面の溝に第1電極と極性の異なる第3電極を、下面の溝に第3電極と接続される第4電極を配置する工程と、を有し、前記溝の内少なくとも1個の溝を形成するエッチング工程と、基部とその基部に接続された1個の振動部を備えた曲げ水晶振動子を形成するためのエッチング工程とは別々の工程である水晶発振器の製造方法である。
本発明の水晶発振器の製造方法の第3の態様は、第1の態様において、振動部の上面と下面の各面に、各々1個の溝を形成するためのエッチング工程にて、前記水晶ウエハをエッチングする工程と、振動部の上面の溝に第1電極と極性の異なる第3電極を、下面の溝に第3電極と接続される第4電極を配置する工程と、を有し、前記溝の内少なくとも1個の溝を形成するエッチング工程と、基部とその基部に接続された1個の振動部を備えた曲げ水晶振動子を形成するためのエッチング工程とは同じ工程である水晶発振器の製造方法である。
このように、本発明の輪郭水晶振動子とそれを具えた水晶ユニットと水晶発振器、及びそれらの製造方法を提供することにより、次の如き著しい効果が得られる。
(1)輪郭水晶振動子を駆動する圧電定数が非常に大きいので、電気機械変換効率が良くなる。その結果、主振動の等価直列抵抗Rnの小さい、品質係数Q値の高い、しかも超小型の輪郭水晶振動子とそれを具えた水晶ユニッと水晶発振器を得ることができる。
(2)振動部の対抗面に互いに異極となる電極が配置されることにより、電界が電極に対して垂直に働く。その結果、電気機械変換効率が良くなるので、主振動の等価直列抵抗Rnの小さい、品質係数Q値の高い輪郭水晶振動子とそれを具えた水晶ユニットと水晶発振器が得られる。
(3)輪郭水晶振動子を粒子法及び/又は化学的エッチング法によって形成できるので、量産性に優れ、1枚の水晶ウエハ上に多数個の振動子を一度にバッチ処理にて形成でき、安価な輪郭水晶振動子が実現できる。と同時に、安価な水晶ユニットと水晶発振器が実現できる。
(4)輪郭水晶振動子は振動部と接続部と支持部とを具えて構成されるので、ケース、又は蓋などの固定部へのマウントによる振動エネルギー損失が小さくなり、その結果、主振動の等価直列抵抗Rnの小さい、Q値の高い、且つ、耐衝撃性に優れた水晶ユニットと水晶発振器が得られる。
(5)等価直列抵抗Rnの小さい超小型の輪郭水晶振動子が搭載されるので、超小型の水晶ユニットと水晶発振器が高品質で実現できる。
以下、本発明の実施例を図面に基づき具体的に述べる。
図1は本発明の輪郭モードで振動する水晶振動子で、幅縦モードで振動する幅縦水晶振動子を形成するのに用いられる水晶板1のカット角とその座標系との関係である。座標系は原点O、電気軸x、機械軸y、光軸zからなりO−xyzを構成している。まず、x軸に垂直な水晶板、いわゆる、X板水晶を考える。このとき、X板水晶の各寸法である幅W0、長さL0、及び厚みT0はそれぞれy軸、z軸、及びx軸方向に一致している。
次に、このX板水晶をx軸の廻りに角度θx=−25°〜+25°回転し、更に、y軸の新軸y′軸の廻りに角度θy=−30°〜+30°回転される。このとき、x軸の新軸はx′軸に、z軸は2軸の廻りに回転されるので、新軸z″と成る。そして、本発明の幅縦水晶振動子は前記した回転水晶板から形成される。本実施例では、幅縦水晶振動子が形成される水晶板のカット角について述べたが、本発明の振動子のカット角はこれに限定されるものでなく、形成された幅縦水晶振動子が前記した角度を有する振動子であれば良く、本発明はそれらの振動子をも包含するものである。例えば、水晶板の面内回転をしないで、振動子形成に用いるマスク等で面内回転を行うものである。
更に詳述するならば、幅縦水晶振動子の厚み方向を電気軸x軸方向に、幅方向を機械軸y軸方向に、長さ方向をz軸方向にそれぞれ一致させ、前記幅縦水晶振動子を最初に厚み方向の軸(x軸)を回転軸として角度θx回転させ、次に、幅方向の軸(機械軸y軸の回転後の新軸y′軸)を回転軸として角度θy回転させ、角度θxと角度θyがそれぞれθx=−25°〜+25°、θy=−30°〜+30°を有するように幅縦水晶振動子は形成される。
図2は本発明の実施例1の水晶振動子で、輪郭モードで振動する輪郭水晶振動子の一つである、幅縦モードで振動する幅縦水晶振動子の上面図(a)と側面図(b)である。幅縦水晶振動子2は振動部3、接続部6、9とマウント部8、11をそれぞれ含む支持部7、10を具えて構成されている。更に、支持部7と支持部10にはそれぞれ穴7aと穴10aが設けられている。更に詳述するならば、第一接続部6と第二接続部9は振動部3の長さ方向の反対に位置する端部に設けられている。即ち、一方の第一支持部7は第一接続部6を介して振動部3に接続されていて、他方の第二支持部10は第二接続部9を介して振動部3に接続されている。また、振動部3の上面と下面には電極4と電極5が対抗して配置され、それらの電極は異極となるように構成されている。即ち、一対の電極が配置され、対称の幅縦モードで振動するように構成されている。更に、電極4は一方の第二接続部9を介して第二マウント部11にまで延在して配置されている。また、電極5は他方の第一接続部6を介して第一マウント部8にまで延在して配置されている。本実施例では、振動部3に配置された電極4と電極5は互いに異なる方向に延在してマウント部まで配置されているが、同方向に延在するように配置しても振動子として同じ特性が得られる。本実施例の振動子はマウント部8、11が振動子を収納するユニット(パッケージ)のケース、又は蓋等の固定部に接着剤や半田によって固定される。
更に、振動部3は幅W0、長さL0、及び厚みT0の寸法を有し、幅W0、長さL0、及び厚みT0はそれぞれy′軸、z″軸、及びx′軸方向と一致している。すなわち、x′軸に垂直な面となる振動部3の上面と下面に電極4と電極5が配置されている。又、電極4に対抗する電極5は異極となるように構成されている。即ち、一対の電極が振動部に配置されている。更に、振動部3の長さL0は幅W0より大きく、厚みT0は幅W0より小さくなるように設計される。即ち、幅縦振動モードと長さ縦振動モードとの結合を無視できるほどに小さく、且つ、振動部の電極面積を大きくして、主振動の等価直列抵抗Rnの小さい幅縦水晶振動子を得るためには、幅W0と長さL0の比W0/L0は0.8より小さく、且つ、電界Exを大きくして、主振動の等価直列抵抗Rnの小さい幅縦水晶振動子を得るためには、厚みT0と幅W0との比T0/W0は0.85より小さくすることが必要である。実際のこれらの寸法の決定は幅縦水晶振動子に要求される特性によって決まる。通常、厚みT0は0.23mm以下に、好ましくは、0.01mm〜0.18mmの範囲にあるように設計される。又、一対の電極構成では、幅W0は0.03mmより大きく、好ましくは、0.03mm〜0.96mmの範囲内にある。更に、幅方向に分割されたn対(n=1,3,5,・・・:奇数)の電極構成では、幅W0は0.03nmmより大きく、好ましくは、(0.03〜0.96)nmmの範囲内にある。
更に詳述するならば、幅縦水晶振動子の共振周波数は幅寸法W0に反比例し、他の寸法(長さ、厚み、接続部と支持部)には殆ど依存しない。それ故、幅W0を小さくすることにより、小型で、高周波数化が図れる。また、前記した寸法の関係から不要振動と他の振動モードとの結合のない単一振動モードで振動する幅縦水晶振動子が得られる。と同時に、厚み方向に電界がかかるように振動部に対抗する電極を配置することにより、幅縦水晶振動子の基本波モード振動と高調波モード振動(オーバートンモード振動)の振動次数が圧電定数に依存しなくなる。即ち、基本波モード振動と高調波モード振動の振動次数が圧電定数に依存しないように振動部とその上に配置される電極との構成がなされる。それ故、本発明の幅縦水晶振動子の共振周波数は圧電定数に依存しないので、振動子の設計が非常に容易になると言う著しい効果を有する。
次に、本発明の輪郭水晶振動子(幅縦水晶振動子、長さ縦水晶振動子、曲げ水晶振動子)を駆動するのに必要な圧電定数e12の値について説明する。この圧電定数e12の値が大きいほど、電気機械変換効率は高くなることを示している。本実施例の角度θx=−25°〜+25°、θy=−30°〜+30°のとき、振動部の対抗する面に配置された対抗電極の間の圧電定数e12の絶対値は0.095C/m2より大きい値を有する。又、角度θx=−20°〜+20°、θy=−10°〜+10°のとき、圧電定数e12の絶対値は0.123〜0.18C/m2の範囲内にある。特に、この値は従来のNS−GTカット水晶振動子を駆動する圧電定数e21の絶対値0.1C/m2より著しく大きくなる。また、上記の関係は後述される長さ縦水晶振動子と曲げ水晶振動子にも適用される。
すなわち、本実施例の幅縦水晶振動子は高い電気機械変換効率を有するので、主振動の等価直列抵抗Rnの小さい、品質係数Q値の高い、しかも、超小型の幅縦水晶振動子を得ることができる。
今、図2の電極4と電極5の間に交番電圧を印加すると、電界Exは図2の側面図(b)の実線と点線の矢印で示したように厚み方向に交互に働く。その結果、振動部3は幅方向に伸縮する振動をすることになる。即ち、電界方向に対して垂直方向に振動する、いわゆる横効果型の幅縦水晶振動子を得ることができる。この主(幅縦)振動の共振周波数は圧電定数に依存しない振動子である。また、本発明の幅縦水晶振動子は、電界方向に対して平行に振動するKTカット幅縦水晶振動子とは異なる振動子である。と同時に、KTカット水晶振動子はその振動次数が圧電定数に依存する、いわゆる縦効果型の振動子である。即ち、共振周波数が圧電定数に依存する振動子である。
図3は本発明の実施例2の水晶振動子で、輪郭モードで振動する幅縦水晶振動子28の上面図(a)と下面図(b)である。幅縦水晶振動子28は、振動部29、接続部30、35、及びフレーム31,32、33、34を具えて構成されている。更に、振動部29は一方の接続部30を介してフレーム31に接続され、フレーム31の両端部はフレーム32、33に接続されている。更に、振動部29は他方の接続部35を介してフレーム36に接続され、その両端部はフレーム32、33に接続されている。又、フレーム32にはマウント部34が、フレーム33にはマウント部38が設けられている。即ち、本実施例では、フレームとマウント部からなる部分を支持部と呼ぶ。詳細には、フレーム31の一部とフレーム32とフレーム36の一部とマウント部34からなる部分を第一支持部と言い、フレーム31の一部とフレーム33とフレーム36の一部とマウント部38からなる部分を第二支持部と言う。
更に、振動部29の上面と下面には異極で対抗する電極37と電極39が配置されている。そして、電極37は一方の接続部35を介してマウント部34にまで延在して配置され、マウント部34に一方の電極端子となる電極が形成されている。又、電極39は他方の接続部30とフレーム31を介してフレーム33のマウント部38にまで延在して配置され、マウント部38に他方の電極端子となる電極が形成されている。すなわち、2電極端子を形成する。本実施例以外の電極配置法としては実施例1で述べた方法を本実施例でも含むものである。
更に、振動部29は幅W0、長さL0と厚みT0(図示されていない)の寸法を有し、これらの寸法とx′軸、y′軸とz″軸との関係は実施例1で述べた通りである。また振動部29の長さL0は幅W0より大きく、厚みT0は幅W0より小さくなるように設計される。具体的な関係については実施例1で述べたのと同じである。更に、上記実施例の幅縦水晶振動子の振動部と接続部と支持部(第一支持部と第二支持部)とは一体に形成されている。
このような幅縦水晶振動子の形成によって、すでに実施例1で述べたように、量産性に優れた安価な幅縦水晶振動子が得られる。同時に、衝撃に対して強い幅縦水晶振動子が実現できる。更に、マウント部が接続部とフレームを介して設けられているので、幅縦モードの振動を抑圧することなく、圧電的に容易に引き起こすことができる。それ故、主振動の等価直列抵抗Rnの小さい、Q値の高い、しかも超小型の幅縦水晶振動子が得られる。
また、上記実施例1と実施例2の水晶振動子では、基本波モード振動の幅縦水晶振動子の電極配置について述べたが、次に、高調波モード振動の幅縦水晶振動子の電極配置について説明する。振動部の上面と下面にはそれぞれ複数個の電極が配置されている。また、上面と下面の幅方向に隣接する電極は異極となるように配置され、且つ、上面と下面に配置された対抗電極は異極となるように配置される。一実施例として、振動部の幅方向の上下面に3分割された電極が配置され、厚み方向に対抗して異極の電極が配置されているとき、本実施例の電極配置では主振動が3次高調波モード振動の幅縦水晶振動子が得られる。
更に詳述するならば、本実施例では三対の電極を構成している。本発明の電極構成は前記実施例の3対に限定されるものでなく、対称モードを使用する場合にはn対(n=1,3,5,7,9・・・)と奇数対の電極構成をも包含するものである。詳細には、奇数対の電極構成では、奇数次の幅縦モードで振動し、これが主振動となる。例えば、一対の電極構成では、基本波モード振動が主振動となる。また、三対の電極構成では、3次高調波(3次オーバートーン)モード振動が主振動となる。本発明では、幅縦モードで振動し、主振動以外の振動を副振動と呼ぶ。そして、主振動の等価直列抵抗をRn、副振動の等価直列抵抗をRfと言う。更に、周波数温度特性の2次曲線の頂点温度を室温付近に設定するためには、本実施例の幅縦水晶振動子の角度θxと寸法比(W0/L0)と電極対数n(=1,3,5,・・・:奇数)との関係は、[20(W0/(nL0))−25]°<θx<[20(W0/(nL0))−5]°で与えられる。
上記実施例1と実施例2の幅縦水晶振動子では、振動部の幅W0は長さ方向に同じ幅W0を有するが、本発明の幅縦水晶振動子はこれに限定されるものでなく、振動部の幅が長さ方向に異なる部分を有しても良い。例えば、振動部に幅W0より大きい幅Wt(>W0)を有する部分、即ち、突出部分を振動部の幅の両端部にそれぞれ少なくとも1個設けても良い。詳細には、突出部分であるδW−Wt−W0は振動部の質量効果として働く。更に詳細には、振動部の幅W0の端部に重りとなる突出部分を中立線に対して対称に設けても良い。即ち、中立線に対して幅方向に対称に重りとなる突出部分が振動部の両端部に設けられている。
一例として、振動部の幅の両端部に重りとなる突出部分がそれぞれ1個中立線に対称に設けられている。又は、長さ方向の中央部を含む位置で幅の両端部に重りとなる突出部分がそれぞれ1個設けられている。又は、少なくとも、幅の片側に複数個の重りとなる突出部分が設けられている。加えて、これらの突出部分がフレームを介して接続されていても良い。このような構成により、スプリアス振動(不要振動)を抑えることができる。若しくは、振動部の中央部(端部からL0/2の位置)の幅W0より小さい幅We(<W0)を端部に設けても良い。又、幅Wtと幅Weは通常振動部の中立線(幅の端部からW0/2の位置で長さ方向にある直線)に対して対称になるように形成される。更に、突出部に周波数調整用の重りを配置し、この重りの除去により周波数調整される。或いは、この突出部に重りを付加して周波数調整しても良い。上記内容は以下に述べる長さ縦水晶振動子にも適用できる。
図4は本発明の実施例3の水晶振動子で、輪郭モードで振動する輪郭水晶振動子の一つである、長さ縦モードで振動する長さ縦水晶振動子の上面図(a)と側面図(b)である。長さ縦水晶振動子62は振動部63、接続部66、69とマウント部68、81をそれぞれ含む支持部67、80を具えて構成されている。更に、支持部67と支持部80にはそれぞれ穴67aと穴80aが設けられている。詳細には、第一接続部66と第二接続部69は振動部63の幅方向の反対に位置する端部に設けられている。即ち、一方の第一支持部67は第一接続部66を介して振動部63に接続されていて、他方の第二支持部80は第二接続部69を介して振動部63に接続されている。また、振動部63の上面と下面には電極64と電極65が対抗して配置され、それらの電極は異極となるように構成されている。即ち、一対(n=1,n:奇数の電極対数)の電極が配置されている。更に、電極64は一方の第二接続部69を介して第二マウント部81にまで延在して配置されている。また、電極65は他方の第一接続部66を介して第一マウント部68にまで延在して配置されている。本実施例では、振動部63に配置された電極64と電極65は互いに異なる方向に延在してマウント部まで配置されているが、同方向に延在するように配置しても良い。また、本実施例の振動子はマウント部68、81がケース又は蓋の固定部に接着剤や半田によって固定される。本実施例では、第一接続部と第二接続部が対抗して一対設けられているが、本発明はこれに限定されるものでなく、複数対の接続部を対抗して設けても良い。即ち、少なくとも第一接続部と第二接続部が設けられている。
次に、長さ縦水晶振動子のカット角について説明する。水晶の結晶軸x軸(電気軸)、y軸(機械軸)とz軸(光軸)とする。まず、x軸に垂直な水晶板、いわゆる、X板水晶を考える。このとき、X板水晶の各寸法である長さL0、幅W0と厚みT0はそれぞれy軸、z軸、及びx軸方向に一致している。更に、このX板水晶をx軸の廻りに角度θx=−25°〜+25°回転し、更に、y軸の新軸y′軸の廻りに角度θy=−30°〜+30°回転される。このとき、x軸の新軸はx′軸に、z軸は2軸の廻りに回転されるので、新軸はz″と成る。本実施例の長さ縦水晶振動子は前記した回転水晶板から形成される。即ち、振動部63の長さL0、幅W0と厚みT0はそれぞれy′軸、z″軸、及びx′軸方向と一致している。ここで、θx=0°とθy=0°のときには、y′軸、z″軸とx′軸はそれぞれy軸、z軸とx軸に一致し、また、θx≠0°とθy=0°のときには、y′軸、z″軸とx′軸はそれぞれy′軸、z′軸とx軸に一致することは言うまでもない。
本実施例では、長さ縦水晶振動子の形成に用いる水晶板のカット角について述べたが、本発明の振動子のカット角はこれに限定されるものでなく、形成された長さ縦水晶振動子が前記した角度を有する振動子であれば良く、本発明はそれらの振動子をも包含するものである。例えば、水晶板の面内回転をしないで、振動子形成に用いるマスク等で面内回転を行うものである。
更に詳述するならば、長さ縦水晶振動子の厚み方向を電気軸x軸方向に、長さ方向を機械軸y軸方向に、幅方向を光軸z軸方向にそれぞれ一致させ、前記長さ縦水晶振動子を最初に厚み方向の軸(x軸)を回転軸として角度θx回転させ、次に、長さ方向の軸(y軸の回転後の新軸y′軸)を回転軸として角度θy回転させ、前記角度θxとθyがそれぞれθx=−25°〜+25°、θy=−30°〜+30°を有するように長さ縦水晶振動子は形成される。これらのカット角の組み合わせにより、広い温度範囲に亙って周波数温度特性の頂点温度を任意に設定することができる。
更に、形状について詳述するならば、x′軸に垂直な面となる振動部63の上面と下面に電極64と電極65が配置されている。又、電極64に対抗する電極65は異極となるように構成されている。更に、振動部63の長さL0は幅W0と厚みT0より大きく、通常は、厚みT0は幅W0より小さくなるように設計される。即ち、長さ縦モード振動とすべりモードにより引き起こされる屈曲モード振動との結合を無視できるほどに小さく、且つ、振動部の電極面積を大きくして、主振動の等価直列抵抗Rnの小さい長さ縦水晶振動子を得るためには、幅W0と長さL0の比W0/L0は0.8より小さく、且つ、x軸方向の電界Exを大きくして、等価直列抵抗Rnの小さい長さ縦水晶振動子を得るためには、厚みT0と幅W0との比T0/W0は0.85より小さくすることが好ましい。実際のこれらの寸法の決定は長さ縦水晶振動子に要求される特性によって決まる。通常、厚みT0は0.23mm以下に設計される。好ましくは、0.01mmから0.18mmの範囲内にある。また、長さL0は基本波モード振動の周波数が大略10MHz以下の周波数を得るために、0.25mm以上にある。好ましくは、7.5mmから0.25mmの範囲内にある。更に、周波数を大略20MHzまで高くするには、長さL0を約0.125mmまで小さくすれば良い。
詳細には、周波数温度特性の2次曲線の頂点温度を室温付近に設定するためには、本実施例の長さ縦水晶振動子の角度θxと寸法比(W0/L0)と電極対数n(=1,3,5,7・・・:奇数)との関係は、[20n(W0/L0)−5.5]°<θx<[20n(W0/L0)+6.5]°でえられる角度θxの選択によって達成できる。また、長さ縦水晶振動子の共振周波数は長さ寸法L0に反比例し、他の寸法(幅、厚み、接続部と支持部)には殆ど依存しない。それ故、長さ寸法L0を小さくすることにより、小型で、高周波数化が図れる。また、前記した寸法の関係から不要振動のない単一振動モードで振動する長さ縦水晶振動子が得られる。と同時に、厚み方向に電界がかかるように振動部に電極を配置することにより、長さ縦水晶振動子の基本波モードと高調波(オーバートーン)モードの振動次数が圧電定数に依存しなくなる。即ち、基本波モード振動と高調波モード振動の振動次数が圧電定数に依存しないように振動部の面に対抗して極性の異なる電極が配置される。それ故、本発明の長さ縦水晶振動子の共振周波数は圧電定数に依存しないので、振動子の設計が非常に容易になると言う著しい効果を有する。
次に、本実施例の長さ縦水晶振動子を駆動するのに必要な圧電定数e12の値について説明する。この圧電定数e12の値が大きいほど、電気機械変換効率は高くなる。本実施例の長さ縦水晶振動子の圧電定数e12の絶対値は0.095C/m2より大きくなる。特に、角度θx=−20°〜+20°、θy=−10°〜+10°のとき、圧電定数e12の絶対値は0.123〜0.18C/m2の範囲内にある。即ち、輪郭水晶振動子の一つである本実施例の長さ縦水晶振動子は高い電気機械変換効率を有するので、主振動の等価直列抵抗Rnの小さい、品質係数Q値の高い、しかも、超小型の長さ縦水晶振動子を得ることができる。
今、図4の電極64と電極65の間に交番電圧を印加すると、電界Exは図4の側面図(b)の実線と点線の矢印で示したように厚み方向に交互に働く。その結果、振動部63は長さ方向に伸縮する振動をすることになる。即ち、電界方向に対して垂直方向に振動する、いわゆる横効果型の長さ縦水晶振動子を得ることができる。この主(長さ縦)振動の共振周波数は圧電定数に依存しない振動子である。
図5は本発明の実施例4の水晶振動子で、長さ縦水晶振動子72の上面図である。長さ縦水晶振動子72は振動部73、接続部76、79、支持部77、90、フレーム78、91と固定部95とを具えて構成されている。支持部77は接続部76を介して振動部73に接続されている。更に、支持部77はフレーム78を介して固定部95に接続されている。同様に、支持部90は接続部79を介して振動部73に接続されている。更に、支持部90はフレーム91を介して固定部95に接続されている。また、支持部77には穴77aが、支持部90には穴90aが設けられている。振動部73の上面には電極74が、下面にも電極(図示されていない)が配置されていて、上面と下面の電極は極性が異なるように配置される。本実施例では、電極74は接続部79と支持部90とフレーム91を介して固定部95の端部95aまで延在している。これに対して、下面の電極は接続部76と支持部77とフレー厶78を介して、更に、固定部95の側面を介して固定部95の端部95bまで延在している。即ち、2電極端子構造を形成している。
更に詳述するならば、第一接続部76と第二接続部79は振動部73の端部の互いに反対の位置に設けられている。そして、振動部73は第一接続部76と第一支持部77と第一フレーム78を介して固定部95に接続されている。同様に、振動部73は第二接続部79と第二支持部90と第二フレーム91を介して固定部95に接続されている。
このように長さ縦水晶振動子を形成することにより、振動子の強度をより強くすることができる。その結果、振動子の固定部を接着剤や半田によりケース又は蓋の固定部、あるいはリード線に固定できるので、量産での作業性に優れ、工数を削減することができる。すなわち、安価な長さ縦水晶振動子を得ることができる。同時に、衝撃に対して強い長さ縦水晶振動子が実現できる。更に、支持部に穴が設けられているので、長さ縦モードを圧電的に容易に引き起こすことができる。それ故、主振動の等価直列抵抗Rnの小さい、Q値の高い超小型の長さ縦水晶振動子が得られる。
図6は本発明の実施例5の水晶振動子で、長さ縦水晶振動子82の上面図である。長さ縦水晶振動子82は振動部83、接続部86、89、フレーム88、89と固定部105とを具えて構成されている。フレーム88の一端部は接続部86を介して振動部83に接続されている。更に、フレーム88の他端部は固定部105に接続されている。同様に、フレーム101の一端部は接続部89を介して振動部83に接続されている。更に、フレーム101の他端部は固定部105に接続されている。また、振動部83の上面には電極84が、下面にも電極(図示されていない)が配置されていて、上面と下面の電極は極性が異なるように配置される。本実施例では、電極84は接続部89とフレーム101を介して固定部105の端部105aまで延在している。これに対して、下面の電極は接続部86とフレーム88を介して、更に、固定部105の側面を介して固定部105の端部105bまで延在している。即ち、2電極端子構造を形成している。
更に詳述するならば、第一接続部86と第二接続部89は振動部83の端部の互いに反対の位置に設けられている。そして、振動部83は第一接続部86と第一フレーム88を介して固定部105に接続されている。同様に、振動部83は第二接続部89と第二フレーム101を介して固定部105に接続されている。
このように長さ縦水晶振動子を形成することにより、振動子の強度をより強くすることができる。その結果、振動子の固定部を接着剤や半田によりケース又は蓋の固定部、あるいはリード線に固定できるので、量産での作業性に優れ、工数を削減することができる。すなわち、安価な長さ縦水晶振動子を得ることができる。同時に、衝撃に対して強い長さ縦水晶振動子が実現できる。上記実施例3から実施例5の水晶振動子では、振動部は1個設けられているが、複数個の振動部を設けても良い。この場合には、各振動部の先端部又は先端部付近は接続部を介して接続され、各振動部が同位相で振動するように電極が各振動部に配置される。即ち、各振動部の片側又は両側の先端部又は先端部付近で接続される。
また、上記実施例3から実施例5の水晶振動子では、基本波モード振動の長さ縦水晶振動子の電極配置について述べたが、次に、高調波モード振動の長さ縦水晶振動子の電極配置について説明する。
図7は本発明の実施例6の水晶振動子で、長さ縦水晶振動子の上面図である。長さ縦水晶振動子50は振動部51、接続部52、55、及びマウント部54、57をそれぞれ含む支持部53、56を具えて構成されている。更に、支持部53と支持部56にはそれぞれ穴53aと穴56aが設けられている。そして、振動部51の上面と下面にはそれぞれ複数個の電極が配置されている。又、上面、及び下面の幅方向に隣接する電極は異極となるように構成されている。且つ、上面と下面に配置された対抗電極は異極となるように構成されている。本実施例では上面に電極58,59,60が配置され、図示されていないが、下面には電極58a,59a,60aが配置されている。本実施例の電極配置では3次高調波モード振動(3次オーバートーン)の長さ縦水晶振動子が得られる。
更に詳述するならば、電極58とそれに隣接する電極59は異極に、さらに、電極58とそれに対抗する電極58a(図示されていない)は異極となるように構成されている。電極58とそれとは異極となる電極58aで一対の電極を構成している。全く同様に、電極59とそれに隣接する電極58、60は異極に、更に、電極59とそれに対抗する電極59a(図示されていない)は異極となるように構成されている。電極59とそれとは異極となる電極59aで一対の電極を構成している。更に電極60とそれに隣接する電極59は異極に、さらに、電極60とそれに対抗する電極60a(図示されていない)は異極となるように構成されている。電極60とそれとは異極となる電極60aで一対の電極を構成している。又、本実施例では、上面の電極58と電極60は接続電極58bを介して接続されている。更に、下面の電極58aと電極60aは接続電極58c(図示されていない)を介して接続されている。本実施例では、接続電極は振動部の上面と下面に設けられているが、振動部の側面に設けても良い。
更に、上面の同極となる電極58、60は一方の接続部52を介してマウント部54にまで延在して配置されている。又、電極59は他方の接続部55を介してマウント部57にまで延在して配置されている。更に、下面の電極59aは一方の接続部52を介してマウント部54にまで延在して配置されている。又、下面の同極となる電極58a、60aは他方の接続部55を介してマウント部57にまで延在して配置されている。図7の説明から明らかなように、一方の接続部と支持部の上下面には同極となる電極が振動部から延在して配置され、他方の接続部と支持部の上下面には同極となる電極が振動部から延在して配置されている。それ故、一方の電極58,60、59aは同極になるように配置、接続され、他方の電極58a、59,60aは同極となるように配置、接続され、それらは互いに異極となる2電極端子構造を形成している。
更に詳述するならば、本実施例では三対の電極を構成している。本発明の電極構成は前記実施例の3対に限定されるものでなく、対称モードを使用する場合にはn対(n=1,3,5,7,9・・・)と奇数対の電極構成をも包含するものである。詳細には、奇数対の電極構成では、奇数次の長さ縦モードで振動し、これが主振動となる。例えば、一対の電極構成では、基本波モード振動が主振動となる。また、三対の電極構成では、3次高調波(オーバートーン)モード振動が主振動となる。本発明では、長さ縦モードで振動し、主振動以外の振動を副振動と呼ぶ。換言するならば、輪郭モードで振動し、主振動以外の振動を副振動と言う。そして、輪郭モードで振動する主振動の等価直列抵抗をRn、副振動の等価直列抵抗をRfと言う。
次に、振動部の幅W0、長さL0、厚みT0と電極との関係について述べる。上記実施例では、三対の電極を構成している。それ故、対抗する面の電界Exを大きくし、主振動の等価直列抵抗Rnの小さい長さ縦水晶振動子を得るためには、厚みT0と幅W0との関係はT0/W0が0.85より小さくする必要がある。又、長さ縦モード振動と屈曲モード振動との結合を無視できるほどに小さく、且つ、電極面積を大きくし、主振動の等価直列抵抗Rnの小さい長さ縦水晶振動子を得るためには、幅W0と長さL0との関係は3W0/L0が0.8より小さくする事が必要である。
上記実施例では三対の電極構成の場合について説明したが、n対(n=5,7,9、・・・)と奇数対の電極構成では、主振動がn次高調波モードの長さ縦水晶振動子が得られる。この場合、前記した優れた特性を有する水晶振動子を得るには、厚みT0と幅W0との関係はT0/W0が0.85より小さく、且つ、幅W0と長さL0との関係はnW0/L0が0.8より小さくする必要がある。
このように、上記実施例の長さ縦水晶振動子は、特に、振動部の電極の配置の仕方を工夫することにより、主振動の等価直列抵抗Rnが副振動の等価直列抵抗Rfより小さくすることができる。と同時に、周波数温度特性に優れた超小型の高調波モードの長さ縦水晶振動子を実現することができる。更に、長さ縦水晶振動子を含む輪郭水晶振動子の周波数は振動次数mに比例するので、高周波数化が可能になる。また、主振動の等価直列抵抗Rnの小さい輪郭水晶振動子を実現するために、振動次数mと電極対数nとの関係はm=nとなるように通常は構成される。なお、上記実施例で詳細に述べた電極構成は実施例4と実施例5の水晶振動子の振動子形状にも適用できるものである。
更に、上記実施例の輪郭水晶振動子は、振動部と接続部と支持部とを具えて構成されているように複雑な形状をしている。又、本発明のカット角を有する輪郭水晶振動子を化学的エッチング法によって加工した場合、その加工速度が極めて遅いのが実状である。換言するならば、水晶の分子間の結合エネルギーが非常に大きいために、化学的エッチング法ではそのエッチング速度が極めて遅く、特に、このような複雑な形状を有する振動子を上手く加工できないのが実状である。それ故、本発明の輪郭水晶振動子の加工は、物理的、あるいは機械的な方法を用いて行われ、前記振動子は一体に形成される。即ち、質量を有する粒子を水晶板に物理的、あるいは機械的方法で衝突させ、それにより水晶板の原子、分子を飛散させて振動子の形状を加工するものである。例えば、イオン化した原子、分子、又はブラスト加工用の粒子を用いる。ここではこの方法を粒子法と呼ぶ。この方法は化学的エッチング法による加工法とは異なる方法であると同時に、加工速度が極めて早いのが特長である。外形形状の加工時間が非常に短縮されるので安価な振動子を提供することができる。
図8は本発明の実施例7の水晶振動子で、ラーメモード水晶振動子130の上面図である。ラーメモード水晶振動子(以下、ラーメ水晶振動子と言う)130は振動部131、接続部132、133と支持部134、135とを具えて構成されている。支持部134は接続部132を介して振動部131に接続されている。更に、支持部134には穴134aとマウント部134bが設けられている。同様に、支持部135は接続部133を介して振動部131に接続されている。更に、支持部135には穴135aとマウント部135bが設けられている。
また、図示されていないが振動部131の上面と下面には極性が異なる電極が一対対抗して配置されている。詳細には、振動部の一方の電極と他方の電極はそれぞれマウント部134b、135bのどちらか一方のマウント部まで延在して配置されている。即ち、2電極端子構造を形成している。更に詳述するならば、本実施例では一対の電極を構成している。本発明の電極構成は前記実施例の一対に限定されるものでなく、対称モードを使用する場合にはn対(n=1,3,5,・・・)と奇数対の電極構成をも包含するものである。詳細には、奇数対の電極構成では、奇数次のラーメモードで振動し、これが主振動となる。例えば、一対の電極構成では、基本波モード振動が主振動となる。また、三対の電極構成では、3次高調波(オーバートーン)モード振動が主振動となる。本発明では、ラーメモードで振動し、主振動以外の振動を副振動と呼ぶ。換言するならば、輪郭モードで振動し、主振動以外の振動を副振動と言う。そして、輪郭モードで振動する主振動の等価直列抵抗をRn、副振動の等価直列抵抗をRfと言う。
更に、破線138は正方形の形状の輪郭線を示し、本実施例のラーメ水晶振動子130では、振動部131の角の部分136、137と接続部132、133と接続される振動部の角の部分が切り取られている。本実施例では、振動部の角の部分4箇所が切り取られている。しかし、本発明はこれに限定されるものでなく、対抗する2箇所の角の部分が切り取られていれば良い。
このようにラーメ水晶振動子を形成することにより、輪郭寸法に依存するスプリアス振動(不要振動)を容易に取り除くことができる。と同時に、振動部の対角線の寸法が小さくなるので、小型のラーメ水晶振動子が実現できる。
図9は本発明の実施例8の水晶振動子で、ラーメモード水晶振動子140の上面図である。ラーメモード水晶振動子(以下、ラーメ水晶振動子と言う)140は振動部141、接続部142、143と支持部144、145とを具えて構成されている。支持部144は接続部142を介して振動部141に接続されている。更に、支持部144には穴144aとマウント部144bが設けられている。同様に、支持部145は接続部143を介して振動部141に接続されている。更に、支持部145には穴145aとマウント部145bが設けられている。また、図示されていないが振動部141の上面と下面には極性が異なる電極が対抗してn対配置されている。詳細には、振動部の一方の電極と他方の電極はそれぞれマウント部144b、145bのどちらか一方のマウント部まで延在して配置されている。即ち、2電極端子構造を形成している。
更に、破線146は正方形の形状の輪郭線を示し、本実施例のラーメ水晶振動子140では、振動部141が円板の形状している。本実施例では、振動部が円板の形状をしているが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば、楕円の形状、又は多角形の形状をも包含するものである。
このようにラーメ水晶振動子を形成することにより、輪郭寸法に依存するスプリアス振動(不要振動)を容易に取り除くことができる。と同時に、振動部が円板形状、又は楕円形状、又は多角形状であるので、小型のラーメ水晶振動子が実現できる。また、上記実施例7と実施例8の水晶振動子は粒子法、又は化学的エッチング法によって形成される。
次に、ラーメ水晶振動子のカット角について説明する。y軸に垂直な水晶板、いわゆる、Y板水晶を考える。このY板水晶をx軸の廻りに角度θx=+34°〜+38°、又は角度θx=−48°〜−53°回転し、更に、y軸の新軸y′軸の廻りに角度θy=±(40°〜50°)回転される。特に、大略θx=36°、θy=±45°のとき、LQ1Tカットと呼ばれ、大略θx=−50°、θy=±45°のとき、LQ2Tカットと呼ばれる。このとき、x軸の新軸はx′軸に、z軸は2軸の廻りに回転されるので、新軸z″と成る。そして、本発明のラーメ水晶振動子は前記した回転水晶板から形成される。本実施例では、ラーメ水晶振動子が形成される水晶板のカット角について述べたが、本発明の振動子のカット角はこれに限定されるものでなく、形成されたラーメ水晶振動子が前記した角度を有する振動子であれば良く、本発明はそれらの振動子をも包含するものである。例えば、水晶板の面内回転をしないで、振動子形成に用いるマスク等で面内回転を行うものである。
更に、本実施例のラーメ水晶振動子を駆動するのに必要な圧電定数e21の値について説明する。この圧電定数e21の値が大きいほど、電気機械変換効率は高くなる。本実施例のラーメ水晶振動子の圧電定数e21の絶対値は0.041〜0.12C/m2を有する。即ち、輪郭水晶振動子の一つである本実施例のラーメ水晶振動子は十分に高い電気機械変換効率を有するので、主振動の等価直列抵抗Rnの小さい、品質係数Q値の高い、しかも、超小型のラーメ水晶振動子を得ることができる。
図10は本発明の実施例9の水晶振動子で、輪郭モードで振動する輪郭水晶振動子の一つである、曲げモードで振動する曲げ水晶振動子の上面図である。曲げ水晶振動子150は振動部152、153と基部151を具えて構成されている。更に、基部151には基部から突出する突出部154と突出部155が設けられている。そして、基部151とその基部から突出した振動部152,153とは一体に形成されている。また、振動部152の上下面には溝156と溝159(図11(a)参照)が設けられている。即ち、第1振動部152の上面と下面には各々1個の溝が設けられ、本実施例では中立線158を挟むように溝が設けられている。同様に、振動部153の上下面には溝157と溝160(図11(b)参照)が設けられている。即ち、第2振動部153の上面と下面には各々1個の溝が設けられ、本実施例では中立線158を挟むように溝が設けられている。詳細には、第1振動部152と第2振動部153は基部151に対称になるように形成されている。また、振動子150は突出部154,155で接着剤や半田等で収納するケース、又は蓋の固定部にマウントされる。本実施例では、突出部は基部の側面に2個設けられているが、1個でも良い。また、1個の突出部は基部の片側に並列に設けられた複数個の振動部、例えば、2個の振動部の間に設けても良い。
図11は図10の振動部152のA−A′断面図(a)と振動部153のB−B′断面図(b)を示す。断面図(a)では、振動部152の上面の溝156には電極163が、下面の溝159には電極164が配置、接続されている。また、振動部152の両側面には電極161,162が配置、接続されている。即ち、振動部152の側面と溝の側面に電極が対抗して配置されていて、対抗して配置された電極は互いに極性が異なるように配置されている。また、本実施例の水晶振動子は実施例1と実施例3で示した水晶振動子と同じカットの角度θxとθyを有する。即ち、最初に振動部の幅W、長さLと厚みtの方向をx軸(電気軸)、y軸(機械軸)とz軸(光軸)方向にそれぞれ一致させ、次に、x軸の廻りに角度θx=−25°〜+25°回転させ、更に、y軸の新軸y′軸の廻りに角度θy=−30°〜+30°の範囲内で回転して得られる。それ故、幅W,長さLと厚みtの方向はx′軸、y′軸とz″軸の方向にそれぞれ一致する。また、角度θy=0のときには、x′軸とx″軸はそれぞれx軸とz′軸に一致することは言うまでもない。
本実施例では、電極161,162に正の電圧が、電極163,164に負の電圧が印加されたときの振動部内部に発生する電界E12を示し、前記角度での圧電定数e12の絶対値は0.095C/m2より大きい値を持つ。特に、角度θx=−20°〜+20°で、角度θy=−10°〜+10°のときには、圧電定数e12の絶対値は0.123〜0.18C/m2の範囲内にある。詳細には、振動部の側面の電極に対抗して電極が配置され、その電極間の圧電定数e12の絶対値は0.123〜0.18C/m2の範囲内にある。同時に、前記角度の選択により周波数温度特性の頂点温度を任意に設定できる。
同様に、断面図(b)では、振動部153の上面の溝157には電極167が、下面の溝160には電極168が配置、接続されている。また、振動部153の両側面には電極165,166が配置、接続されている。即ち、振動部153の側面と溝の側面に電極が対抗して配置されていて、対抗して配置された電極は互いに極性が異なるように配置されている。本実施例では、電極165,166に正の電圧が、電極167,168に負の電圧が印加されたときの振動部内部に発生する電界E12を示し、そのときの圧電定数e12の絶対値は0.123〜0.18C/m2の範囲内にある。詳細には、振動部の側面の電極に対抗して電極が配置され、対抗電極は極性が異なり、且つ、その対抗電極間の圧電定数e12の絶対値は0.123〜0.18C/m2の範囲内にある。
図12は本発明の実施例10の水晶振動子で、曲げモードで振動する曲げ水晶振動子170の上面図である。曲げ水晶振動子170は振動部172、173と基部171を具えて構成されている。更に、基部171には基部から突出する突出部176と突出部177が設けられている。そして、基部171とその基部から突出した振動部172,173とは一体に形成されている。また、振動部172の上下面には溝174と溝178(図示されていない)が設けられている。即ち、第1振動部172の上面と下面には各々1個の溝が設けられている。同様に、振動部173の上下面には溝175と溝179(図示されていない)が設けられている。即ち、第2振動部173の上面と下面には各々1個の溝が設けられている。詳細には、第1振動部172と第2振動部173は基部171に対称になるように形成されている。また、振動子170は突出部176,177で接着剤や半田等で収納するケース、又は蓋の固定部にマウントされる。
詳細には、振動部172、173は振動部の長さLと振動部の幅Wを有し、基部171は基部の長さLkと基部の幅Wkを有する。また、振動部172、173には振動部の幅Wより大きい幅W4(>W)を有する部分が設けられ、幅W4の振動部に接続される部分の長さL5と幅W4の先端部が長さL4を有するように形成される。更に、溝174、175の溝の長さL2と溝幅W2と部分幅W1、W3が振動部172、173に設けられている。更に詳細には、W2≧W1、W3を満足するように形成され、W2は0.085mm以下に、好ましくは、W2=0.015mm〜0.069mmの範囲内にある。また、W1及び/又は、W3は0.015mm未満の寸法を有する。更に、溝幅W2と振動部の幅Wとの比W2/Wは1より小さく、好ましくは、W2/W=0.35〜0.95の範囲内にある。加えて、溝の最も深いところの厚みをt1、振動部の厚みをtとすると、溝の厚みt1と振動部の厚みtとの比t1/tは0.79以下に形成される。特に、t1=0のときは、溝は貫通孔となり、本発明の溝はこの貫通孔をも包含するものである。即ち、本発明の曲げ水晶振動子には振動部に貫通孔を含む溝が形成されている。
更に、幅W4と幅Wとの比(W4/W)はW4/W=1.1〜5.3の範囲内にあり、振動部の長さLはL=0.68mm〜2.1mmの範囲内にある。また、長さL5はL5=0.05mm〜L/2mmの範囲内に、長さL4はL4=L5〜(L+Lk/4)の範囲内にある。加えて、基部の長さLkは0.56mm以下に、好ましくは、Lk=0.045mm〜0.5mm未満の範囲内にある。更に、基部の幅Wkは0.6mm以下に、好ましくは、Wk=0.2mm〜0.55mmの範囲内にある。また、溝の長さL2は1.5mm以下に、好ましくは、L2=0.42mm〜1.29mmの範囲内にある。ここで言う溝の長さL2とは、幅の比W2/Wが0.35〜0.95の範囲内にあり、且つ、厚みの比t1/tは0.79以下にある溝の長さで、溝の電極が溝の長さより短く配置されているときには、溝の電極の長さが溝の長さになる。更に、溝の長さと振動部との長さの比(L2/L)はL2/L=0.36〜0.8の範囲内にある。また、振動部の幅WはW=0.05mm〜0.2mmの範囲内に、更に、W/Lは0.039〜0.098の範囲内にある。好ましくは、0.039〜0.094の範囲内にある。
このように曲げ水晶振動子の形状と寸法を構成することにより、著しい効果を有する。即ち、振動部の自由端部である先端部付近により幅の大きい部分を振動部に設けるので、先端部付近は重りの効果として働く。それ故、同じ共振周波数でも振動部の長さを短くでき、小型化ができる。と同時に、振動部に貫通孔を含む溝を設け、且つ、振動部の幅と溝との関係、及び振動部の長さと溝との関係により、主振動の等価直列抵抗Rnの小さい曲げ(屈曲)水晶振動子が実現できる。本実施例では、振動部の溝の長さ方向の一つの側面とそれに対抗する側面に極性の異なる一対の電極が配置されている。それ故、主振動は基本波モードの曲げ振動で、高調波モードの曲げ振動が副振動になる。
上記実施例9と実施例10の水晶振動子では、振動部は基部に対して互いに反対側に設けられているが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば、基部に対して片側のみに複数個の振動部を形成しても良い。一例として、第1振動部と第2振動部が基部に接続され、振動部が並列(音叉形状)となるように基部の片側のみに振動部が形成されている。この場合、第1振動部と第2振動部の上面と下面に各々1個の溝が設けられ、第1振動部の上下面の溝に配置された電極と第2振動部の両側面に配置された電極とが接続され、第1振動部の両側面に配置された電極と第2振動部の上下面の溝に配置された電極とが接続されている。即ち、2電極端子を形成している。又は、第1振動部と第2振動部に各々1個の貫通孔が設けられ、第1振動部の貫通孔の両側面に配置された電極と第2振動部の両側面に配置された電極とが接続され、第1振動部の両側面に配置された電極と第2振動部の貫通孔の両側面に配置された電極とが接続されている。この場合も2電極端子を形成している。このように電極を接続し、2電極間に交番電圧を印加することにより、逆相の基本波モード振動で、且つ、対称モードの曲げ振動を引き起こすことができる。なお、本実施例の曲げモード水晶振動子の基準周波数は10kHz〜200kHzの範囲内にあり、特に、基準周波数が32.768kHzに適用される。
図13は本発明の実施例1の水晶ユニットの断面図である。水晶ユニット110は表面実装型のケース112と蓋114と輪郭水晶振動子113から構成されている。ケース112の両側に固定部が設けられていて、本実施例では、上記実施例の水晶振動子で述べた両端固定の輪郭水晶振動子113が収納され、その振動子のマウント部が接着剤等により固定部で固定されている。更に、図示されていないが、ケース112の下面には少なくとも2分割された電極が設けられていて、振動子113の各電極と接続されている。即ち、2電極端子構造を形成している。
図14は本発明の実施例2の水晶ユニットの断面図である。水晶ユニット120は表面実装型のケース122と蓋124と輪郭水晶振動子123から構成されている。ケース122の片側に固定部が設けられていて、本実施例では、上記実施例の水晶振動子で述べた輪郭水晶振動子123が収納され、その振動子のマウント部が接着剤等により片側の固定部で固定されている。更に、図示されていないが、ケースl22の下面には少なくとも2分割された電極が設けられていて、振動子123の各々の電極と接続されている。即ち、2電極端子構造を形成している。また、振動子は真空中で封止されている。
図15は本発明の実施例1の水晶発振器を構成する水晶発振回路図の一例である。本実施例では、水晶発振回路181は増幅器(CMOSインバータ)182、帰還抵抗184、ドレイン抵抗187、コンデンサー185,186と輪郭水晶振動子183から構成されている。即ち、水晶発振回路181は、増幅器182と帰還抵抗184から成る増幅回路188とドレイン抵抗187、コンデンサー185,186と輪郭水晶振動子183から成る帰還回路189から構成されている。詳細には、本実施例の水晶発振器は、増幅回路188と帰還回路189から構成され、増幅回路は少なくとも増幅器から構成され、帰還回路は少なくとも輪郭水晶振動子とコンデンサーから構成されている。又、本実施例の水晶発振器に用いられる水晶振動子については既に図1から図12で詳述されている。
図16は図15の帰還回路図を示す。今、輪郭水晶振動子の角周波数ωm、ドレイン抵抗187の抵抗をRd、コンデンサー185、186の容量をCg、Cd、水晶のクリスタルインピーダンスをRem、帰還回路のドレイン側の入力電圧をV1,ゲート側の出力電圧をV2とすると、帰還率βmはβm=|V2|m/|V1|mで定義される。但し、mは輪郭モード振動の振動次数を表す。例えば、m=1のとき、基本波モード振動(1次高調波モード振動)、m=2のとき、2次高調波モード振動、m=3のとき、3次高調波モード振動である。即ち、m=nのとき、n次高調波モード振動である。ここでは、単にn次モード振動と言う。又、n対の電極構成で、n次モードで振動する輪郭モード振動を主振動と言い、その他のモードで振動する輪郭モード振動を副振動と言う。更に、負荷容量CLはCL=CgCd/(Cg+Cd)で与えられ、Cg=Cd=CgdとRd>>Rmとすると、帰還率βmはβm=1/(1+kCL 2)で与えられる。但し、kはωm、Rd、Remの関数で表される。又、Remは近似的に等価直列抵抗Rmに等しくなる。
このように、帰還率βmと負荷容量CLとの関係から、負荷容量CLが小さくなると、n次モード振動の共振周波数の帰還率はそれぞれ大きくなる。それ故、例えば、一端部固定、他端部自由の曲げ水晶振動子では負荷容量CLが小さくなると、基本波モード振動よりも高調波モード振動の方が発振し易くなる。その理由は高調波モード振動の最大振動振幅が基本波モード振動の最大振動振幅より小さいために、発振持続条件である振幅条件と位相条件を同時に満足するためである。
本発明の水晶発振器は、消費電流が少なく、しかも、出力周波数が高い周波数安定性(高い時間精度)を有する水晶発振器を提供することを目的としている。それ故、消費電流を少なくするために、本実施例では、負荷容量CLは20pF以下を用いる。より消費電流を少なくするには、消費電流は負荷容量に比例するので、CL=10pF以下が好ましい。又、副振動の周波数を抑え、n対の電極構成で主振動がn次モードの振動する発振器の出力信号が主振動の発振周波数を得るために、αn/αf>βf/βnとαnβn>1を満足するように本実施例の水晶発振回路は構成される。好ましくは、αn/αf>1.12を満たすように構成される。但し、αn、αfは主振動と副振動の増幅回路の増幅率で、βn、βfは主振動と副振動の帰還回路の帰還率である。
換言するならば、増幅回路の主振動の増幅率αnと副振動の増幅率αfとの比が帰還回路の副振動の帰還率βfと主振動の帰還率βnとの比より大きく、かつ、主振動の増幅率αnと主振動の帰還率βnの積が1より大きくなるように構成される。即ち、消費電流の少ない、出力信号が主振動の発振周波数である水晶発振器が実現できる。更に、高い周波数安定性については後述される。又、出力信号はバッファ回路を介して出力される。
又、本実施例の水晶発振回路を構成する増幅回路の増幅部は負性抵抗−RLmでその特性を示すことができる。m=1のとき基本波モード振動(1次モード振動)の負性抵抗で、m=nのときn次モード振動の負性抵抗である。即ち、n=2,3,4,5・・・・のとき、2次、3次、4次、5次・・・モード振動の負性抵抗の値である。本実施例の水晶発振器は、増幅回路の主振動の負性抵抗の絶対値|−RLn|と主振動の等価直列抵抗Rnとの比が増幅回路の副振動の負性抵抗の絶対値|−RLf|と副振動の等価直列抵抗Rfとの比より大きくなるように発振回路が構成されている。即ち、|−RLn|/Rn>|−RLf|/Rfを満足するように回路は構成されている。好ましくは、|−RLn|/Rn|/Rn>1.12と|−RLf|/Rf<1を満たすように構成される。このように水晶発振回路を構成することにより、副振動の発振起動が抑えられ、その結果、主振動の発振起動が得られるので主振動の発振周波数が出力信号として得られる。同時に、消費電流の少ない水晶発振器が実現できる。
また、輪郭水晶振動子の誘導性と電気機械変換効率と品質係数を表すフイガーオブメリットMmは品質係数Qm値と容量比rmとの比(Qm/rm)によって定義され(m=1のとき基本波モード振動、m=2のとき2次モード振動、m=3のとき3次モード振動)、輪郭水晶振動子の並列容量に依存しない機械的直列共振周波数fsと並列容量に依存する直列共振周波数frの周波数差ΔfはフイガーオブメリットMmに反比例し、その値Mmが大きい程Δfは小さくなる。従って、Mmが大きい程、輪郭水晶振動子の共振周波数は並列容量の影響を受けないので、輪郭水晶振動子の周波数安定性は良くなる。即ち、時間精度の高い輪郭水晶振動子が得られる。
詳細には、前記した輪郭水晶振動子の振動子形状と電極と振動子寸法の構成により、n対の電極構成によって、主振動がn次モードで振動する輪郭水晶振動子のフイガーオブメリットMnが副振動のフイガーオブメリットMfより大きくなる。即ち、Mn>Mfとなる。一例として、振動部が並列に基部の片側に接続され、逆相の基本波モード振動の基準周波数が32.768kHzの曲げ水晶振動子で、振動部の寸法の関係がW2/W=0.5、t1/t=0.34、W/L=0.0828のとき、良品の曲げ水晶振動子のM1とM2はそれぞれM1>60とM2<30となる。即ち、高い誘導性と電気機械変換効率の良い(等価直列抵抗Rnの小さい)、品質係数の大きい基本波モードで振動する曲げ(屈曲)水晶振動子を得ることができる。その結果、基本波モード振動の周波数安定性が2次高調波モード振動の周波数安定性より良くなると共に、2次高調波モード振動を抑圧することができるという著しい効果を有する。本発明の輪郭水晶振動子では、通常、Mnは45より大きく、Mfは32以下になるように振動部の電極は構成、配置される。但し、Mnは主振動のフイガーオブメリットである。その結果、主振動の周波数安定性が副振動の周波数安定性より良くなると共に、副振動を抑圧することができる。従って、上記実施例の輪郭水晶振動子から構成される水晶発振器は主振動の発振周波数が出力信号として得られ、かつ、高い周波数安定性(優れた時間精度)を有する。
次に、本発明の水晶振動子と水晶ユニットと水晶発振器の製造方法について述べる。本実施例の水晶振動子では、まず、輪郭水晶振動子の一つである幅縦水晶振動子と長さ縦水晶振動子の製造方法について述べる。まず、幅縦水晶振動子では、幅縦水晶振動子の厚み方向を電気軸x軸方向に、長さ方向を光軸z軸方向に、幅方向を機械軸y軸方向にそれぞれ一致させ、また、長さ縦水晶振動子では、長さ縦水晶振動子の厚み方向を電気軸x軸方向に、長さ方向を機械軸y軸方向に、幅方向をz軸方向にそれぞれ一致させる。次に、前記幅縦水晶振動子、又は、前記長さ縦水晶振動子を最初に厚み方向の軸を回転軸として角度θx=−25°〜+25°回転させ、次に、幅縦水晶振動子では幅方向の軸を回転軸として、長さ縦水晶振動子では長さ方向の軸を回転軸として角度θy=−30°〜+30°回転させる、と同時に、幅縦水晶振動子と長さ縦水晶振動子は振動部と接続部と支持部とを具えて構成され、接続部は少なくとも第一接続部と第二接続部とを有し、振動部の幅寸法は長さ寸法より小さく、厚み寸法より大きい幅縦水晶振動子と長さ縦水晶振動子の外形形状が水晶板にフォトリソグラフィ法と粒子法により形成される。本実施例では、粒子法による加工を示したが、水晶板の厚みが非常に薄いときには、化学的エッチング法にて前記振動子の形状を加工できるので、本実施例の幅縦水晶振動子と長さ縦水晶振動子の加工に化学的エッチング法を用いても良い。即ち、本実施例の振動子は粒子法と化学的エッチング法の内の少なくとも一つの方法を用いて形成される。
次に、振動部の上下面には極性の異なる少なくとも一対の電極が対抗して配置される。更に詳述するならば、幅縦モードで振動する幅縦水晶振動子と長さ縦モードで振動する長さ縦水晶振動子がそれぞれ対称モードで振動するとき、振動部にn対の電極(n=1,3,5・・:奇数)が配置される。本粒子法による加工では水晶ウエハ内に一度に多数個の振動子が形成される。次に、曲げ水晶振動子の製造方法について述べる。曲げ水晶振動子は半導体の技術を用いたフオトリソグラフィ法とエッチング法によって形成される。まず、研磨加工あるいはポリッシュ加工された水晶ウエハの上下面に金属膜(例えば、クロムそしてその上に金)をスパッタリング法、又は、蒸着法により形成する。次に、その金属膜の上にレジストが塗布される。そして、フオトリソ工程とエッチング工程により、それらレジストと金属膜が曲げ水晶振動子の振動部と基部を残して除去された後、エッチング法により、振動部と基部を具えた振動子の外形形状が形成される。そして外形形状を形成した後にレジストと金属膜は剥離される。この外形形状を形成するときに、基部に突出部を一緒に形成しても良い。更に、外形形状の面上に前記工程で示した金属膜とレジストが再び塗布され、フオトリソ工程とエッチング法により、振動部又は振動部と基部に溝が形成される。
次に、溝を有する振動子の外形形状に金属膜とレジストが再び塗布されて、フオトリソ工程により、電極が形成される。即ち、振動部の側面の電極と溝の側面の電極は極性が異なるように対抗して配置される。本実施例では、第1振動部と第2振動部は基部に対して対称に形成される。この場合、第1振動部と第2振動部の上下面に溝が各々1個形成され、各溝の電極は同極となるように配置、接続され、各溝に対抗して極性の異なる電極が振動部に配置、接続されている。さらに他の実施例では、第1振動部と第2振動部が基部に接続され、並列(音叉形状)となるように基部の片側のみに振動部が形成されている。この場合、第1振動部と第2振動部の上面と下面に各々1個の溝が設けられ、第1振動部の上下面の溝に配置された電極と第2振動部の両側面に配置された電極とが接続され、第1振動部の両側面に配置された電極と第2振動部の上下面の溝に配置された電極とが接続されている。即ち、2電極端子を形成している。又は、第1振動部と第2振動部に各々1個の貫通孔が設けられ、第1振動部の貫通孔の両側面に配置された電極と第2振動部の両側面に配置された電極とが接続され、第1振動部の両側面に配置された電極と第2振動部の貫通孔の両側面に配置された電極とが接続されている。この場合も2電極端子を形成している。また、貫通孔の場合には、振動部に複数個の貫通孔を形成しても良い。このように電極を接続し、2電極間に交番電圧を印加することにより、逆相の基本波モード振動で、且つ、対称モードの曲げ振動を引き起こすことができる。本実施例では、外形形状の形成の後に溝を振動部又は振動部と基部に形成しているが、本発明は前記実施例に限定されるものではなくて、まず、溝を形成してから外形形状を形成してもよい。又は、外形形状と溝とを同時に形成しても良い。
上記実施例の輪郭水晶振動子の製造工程により、水晶ウエハには多数個の輪郭水晶振動子が形成されている。それ故、次の工程では、このウエハの状態で、最初の周波数調整がレーザ、又はイオンエッチング法(スパッタリング法)、又は蒸着にて行われる。と共に、ウエハの状態で良振動子か不良振動子かの検査が行われる。もし不良振動子が在るときには、不良振動子はマーキングされるか、又はウエハから取り除かれるか、又はコンピュタに記憶される。また、曲げ水晶振動子の工程では10kHz〜200kHzの基準周波数に対して、周波数偏差は−9000PPM〜+5000PPMの範囲内にあるように周波数調整がなされる。一例として、基準周波数が32.768kHzである。
更に、次の工程では、形成された上記輪郭水晶振動子は表面実装型のケース、又は蓋に接着材あるいは半田等で固定される。その固定後に、第2回目の周波数調整がレーザ、又はイオンエッチング法(スパッタリング法)、又は蒸着にて行われる。本工程では、出力される発振の周波数偏差が基準周波数に対して−100PPM〜+100PPMの範囲内にあるように発振周波数が調整される。又、本発明での固定後に周波数調整が行われるということは、固定後すぐに周波数調整しても良いし、あるいは固定後にケースと蓋を接続した後に周波数調整をしても良い。即ち、固定後にいかなる工程を入れても、その後に周波数調整をすれば良く、本発明はこれらを全て包含するものである。又、ケースと蓋を接続した後の周波数調整はガラスを介してレーザで行われる。
尚、第3回目の周波数調整がなされるときには、前記2回目の周波数調整による周波数偏差は基準周波数に対して−950PPM〜+950PPMの範囲内にあるように周波数調整がなされる。又、上記実施例では、前記ウエハの状態で、最初の周波数調整を行い、それと共に、不良振動子はマーキングされるかウエハから取り除かれているが、本発明はこれに限定されるものでなく、本発明は水晶ウエハにできた多数個の輪郭水晶振動子をウエハの状態で検査し、良振動子か不良振動子かを検査する工程を含めば良い。即ち、不良振動子はマーキングされるか、ウエハから取り除かれるか、コンピュタに記憶される。このような工程を含むことにより、不良振動子を早く見つけることができ、次工程に流れないので、歩留まりを上げることができる。即ち、安価な輪郭水晶振動子を得ることができる。
更に、周波数調整後に、前記振動子はケースと蓋となるユニットに真空中で収納され、水晶ユニットが得られる。蓋がガラスで構成されているときには、収納後、第3回目の周波数調整がレーザにて行われる。本工程では、出力される発振の周波数偏差は基準周波数に対して−50PPM〜+50PPMの範囲内にあるように発振周波数が調整される。本実施例では、周波数調整は3回の別々の工程で行われるが、少なくとも1回、又は少なくとも2回の別々の工程で行えば良い。例えば、1回の工程では、第1回と第3回の周波数調整はしなくても良い。また、少なくとも2回の別々の工程では、第3回目の工程の周波数調整はしなくても良い。更に次の工程では、前記した輪郭水晶振動子の2電極端子が増幅器とコンデンサと抵抗素子に電気的に接続される。換言するならば、増幅回路はCMOSインバータと帰還抵抗素子からなり、帰還回路は輪郭水晶振動子とドレイン抵抗素子とゲート側のコンデンサとドレイン側のコンデンサからなるように接続される。即ち、水晶発振器が構成される。又、前記第2回目、又は第3回目の周波数調整は水晶発振回路を水晶ユニット内に収納した後に行っても良い。
次に、水晶ユニットについて詳述すると、ガラスやセラミック等からなるケースとガラスや金属からなる蓋が接合部材(金属やガラス)を用いて真空中あるいは窒素の雰囲気中で接合される。上記実施例では、輪郭水晶振動子をケース、又は蓋に接着材や半田等で固定した後に周波数調整をしている。そして、その時の周波数偏差が振動子の基準周波数に対して通常は+/−100ppm以内になるように、発振周波数は調整される。また、ケースあるいは蓋に穴を設けて、当該ケースと当該蓋とを接合部材を用いて接合した後に、周波数を調整して、その後にこの穴を真空中で金属やガラスを溶融して封止しても良い。この時、熱源としてレーザや赤外線が用いられる。また、穴の形状は直径が異なるように少なくとも一つの階段部を有する形状であってもよい。換言するならば、穴の断面形状で示した時に、直径の異なるいわゆる階段部を有する形状である。更に、穴の封止後に振動子の発振周波数をレーザにて調整しても良い。
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものではなく、例えば、本発明の水晶発振器に用いられる輪郭水晶振動子の支持部の形状は実施例1から実施例8で述べた形状に限定されるものでなく、本発明の支持部の形状は、接続部を介して振動部と接続されるいかなる形状をも包含するものである。
更に、実施例1〜実施例10の輪郭水晶振動子の主振動での容量比rnは副振動の容量比rfより小さくなるように構成されている。このような構成により、同じ負荷容量CLの変化に対して、主振動で振動する輪郭水晶振動子の周波数変化が副振動で振動する輪郭水晶振動子の周波数変化より大きくなる。即ち、主振動の方が副振動より周波数の可変範囲を広くとることができる。さらに詳細には、負荷容量CL=20pF付近では、そのCL値が1pF変わると、主振動の周波数変化は副振動の周波数変化より大きくなる。それ故、主振動では、負荷容量CLの可変量が小さくても、周波数の可変範囲を広くできるという著しい効果を有する。これにより、コンデンサの可変容量の範囲を小さくできるので、用いるコンデンサの数を少なくできる。その結果、安価な水晶発振器が得られる。また、上記各実施例の輪郭水晶振動子の主振動での容量比rnは大略60から490の範囲内にあり、容量比rfは530より大きい値を有する。
また、輪郭水晶振動子の主振動と副振動の容量比rn、rfはそれぞれrn=C0/Cn、rf=C0/Cfで与えられる。但し、C0は電気的等価回路の並列容量で、CnとCfは等価回路の主振動と副振動の等価容量である。即ち、C0は輪郭水晶振動子の2電極端子間の容量である。更に、輪郭水晶振動子の主振動と副振動の品質係数はQn値とQf値で与えられる。そして、前記各実施例の輪郭水晶振動子は、主振動で振動する共振周波数の並列容量による依存性が副振動で振動する共振周波数の並列容量による依存性より小さく成るように構成される。すなわち、rn/2Qn 2<rf/2Qf 2を満たすように振動部に電極が配置、構成される。この構成により、主振動で振動する共振周波数の並列容量による影響が無視できるほど極めて小さくなるので、高い周波数安定性を有する主振動で振動する輪郭水晶振動子が得られる。又、本発明では、rn/2Qn 2とrf/2Qf 2をそれぞれSnとSfと置き、SnとSfをそれぞれ主振動と副振動の周波数安定係数と呼ぶ。そして、その値が小さい程周波数安定性は良くなる。又、Sn=rn/2Qn 2とSf=rf/2Qf 2で与えられる。
本発明の水晶振動子と水晶ユニットと水晶発振器は超小型で、高い周波数安定性を有するので、特に、超小型で、高い周波数安定性を必要とする携帯機器や民生機器等に適用できる。
本発明の輪郭モードで振動する水晶振動子で、幅縦モードで振動する幅縦水晶振動子を形成するのに用いられる水晶板のカット角とその座標系との関係である。
本発明の実施例1の水晶振動子で、輪郭モードで振動する輪郭水晶振動子の一つである、幅縦モードで振動する幅縦水晶振動子の上面図(a)と側面図(b)である。
本発明の実施例2の水晶振動子で、幅縦水晶振動子の上面図(a)と下面図(b)である。
本発明の実施例3の水晶振動子で、輪郭モードで振動する輪郭水晶振動子の一つである、長さ縦モードで振動する長さ縦水晶振動子の上面図(a)と側面図(b)である。
本発明の実施例4の水晶振動子で、長さ縦水晶振動子の上面図である。
本発明の実施例5の水晶振動子で、長さ縦水晶振動子の上面図である。
本発明の実施例6の水晶振動子で、長さ縦水晶振動子の上面図である。
本発明の実施例7の水晶振動子で、ラーメ水晶振動子の上面図である。
本発明の実施例8の水晶振動子で、ラーメ水晶振動子の上面図である。
本発明の実施例9の水晶振動子で、輪郭モードで振動する輪郭水晶振動子の一つである、曲げモードで振動する曲げ水晶振動子の上面図である。
図10の振動部のA−A′断面図(a)と振動部のB−B′断面図(b)を示す。
本発明の実施例10の水晶振動子で、曲げモードで振動する曲げ水晶振動子の上面図である。
本発明の実施例1の水晶ユニットの断面図である。
本発明の実施例2の水晶ユニットの断面図である。
本発明の実施例1の水晶発振器を構成する水晶発振回路図の一例である。
図15の帰還回路図である。
符号の説明
W0 振動部の幅
L0 振動部の長さ
T0 振動部の厚み
θx,θy 角度