JP3749917B2 - 水晶発振器の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は屈曲モードで振動する音叉腕と音叉基部から成る音叉形状の水晶振動子と増幅器とコンデンサーと抵抗から構成される水晶発振器とその製造方法に関する。特に、小型化、高精度化、耐衝撃性、低廉化の要求の強い情報通信機器用の基準信号源として最適な水晶発振器で、新形状、新電極構成及び最適寸法を有する超小型の音叉形状の屈曲水晶振動子から構成され、基本波モード振動の周波数が出力信号である水晶発振器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の水晶発振器は増幅器とコンデンサーと抵抗と音叉腕の上下面と側面に電極が配置された音叉型屈曲水晶振動子から成る水晶発振器がよく知られている。図9には、この従来例の発振器に用いられている音叉形状の屈曲水晶振動子200の概観図を示す。図9において水晶振動子200は2本の音叉腕201,202と音叉基部230とを具えている。図10には図9の音叉腕の断面図を示す。図10に示すように、励振電極は音叉腕の上下面と側面に配置されている。音叉腕の断面形状は一般的には長方形をしている。一方の音叉腕の断面の上面には電極203が下面には電極204が配置されている。側面には電極205と206が設けられている。他方の音叉腕の上面には電極207が下面には電極208が、更に側面には電極209,210が配置され2電極端子H−H′構造を成している。今、H−H′間に直流電圧を印加すると電界は矢印方向に働く。その結果、一方の音叉腕が内側に曲がると他方の音叉腕も内側に曲がる。この理由は、x軸方向の電界成分Exが各音叉腕の内部で方向が反対になるためである。交番電圧を印加することにより振動を持続することができる。又、特開昭56−65517と特開2000−223992(P2000−223992A)では、音叉腕に溝を設け、且つ、電極構成について開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
音叉形状の屈曲水晶振動子では、電界成分Exが大きいほど損失等価直列抵抗R1が小さくなり、品質係数Q値が大きくなる。しかしながら、従来から使用されている音叉形状の屈曲水晶振動子は、図10で示したように、各音叉腕の上下面と側面の4面に電極を配置している。そのために電界が直線的に働かず、かかる音叉型屈曲水晶振動子を小型化させると、電界成分Exが小さくなってしまい、損失等価直列抵抗R1が大きくなり、品質係数Q値が小さくなるなどの課題が残されていた。又、前記課題を解決する方法として、例えば、特開昭56−65517では音叉腕に溝を設け、且つ、溝の構成と電極構成について開示している。しかしながら、溝の構成、寸法と振動モード並びに基本波モード振動での等価直列抵抗R1と2次高調波モード振動での等価直列抵抗R2との関係及びフィガーオブメリットMについては全く開示されていない。と同時に、前記溝を設けた振動子を従来の回路に接続し、水晶発振回路を構成すると、基本波振動モードの出力信号が衝撃や振動などの影響で出力信号が2次高調波振動の周波数に変化、検出される等の問題が発生していた。このようなことから、衝撃や振動を受けても、それらの影響を受けない2次高調波振動を抑えた基本波モードで振動する音叉形状の屈曲水晶振動子を具えた水晶発振器が所望されていた。と同時に、水晶発振器の消費電流を低減するために、負荷容量CLを小さくすると2次高調波モードの振動がし易くなり、基本波モード振動の出力周波数が得られない等の課題が残されていた。それ故、基本波モードで振動する超小型で、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値が高くなるような新形状で、電気機械変換効率の良い溝の構成と電極構成を有する音叉形状の屈曲水晶振動子を具え、出力信号が基本波モード振動の周波数である水晶発振器が所望されていた。更に、時間精度の良い水晶発振器を得るために、高い周波数安定性を持つ音叉形状の屈曲水晶振動子を具えた水晶発振器が所望されていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の方法で従来の課題を有利に解決した屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子を具えた水晶発振器とその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
即ち、本発明の水晶発振器の製造方法の第1の態様は、水晶振動子とCMOSインバータとコンデンサーと抵抗素子とを備えて構成される水晶発振器の製造方法であって、前記水晶発振器は、CMOSインバータと帰還抵抗を備えた増幅回路と、屈曲モードで振動する水晶音叉腕と水晶音叉基部を備えた水晶屈曲音叉振動子とコンデンサーと抵抗とを備えた帰還回路を備えて構成される水晶発振回路を備えて構成されていて、水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された水晶音叉腕とを形成するための第1のエッチング工程において、水晶ウエハをエッチングによって屈曲モードで振動する水晶屈曲音叉振動子を形成する工程と、前記水晶音叉腕の各々の音叉腕の対抗する上下面の各面に段差部を有する溝を各々1個形成するための第1のエッチング工程と異なる第2のエッチング工程において、前記水晶ウエハをエッチングする工程と、前記水晶音叉腕の溝の段差部の上に第1の電気的極性を有する第1電極と、前記水晶音叉腕の側面の上に第2の電気的極性を有する第2電極を、第1の電気的極性と第2の電気的極性とが異極性となるように第1電極と第2電極を配置する工程と、音叉腕に溝を有する前記水晶屈曲音叉振動子を収納するケースに固定する工程と、水晶屈曲音叉振動子とケースと蓋とを備えた水晶ユニットを構成するために、前記水晶屈曲音叉振動子を前記ケースと前記蓋を用いて封止する工程と、音叉腕に溝を有する前記水晶屈曲音叉振動子をCMOSインバータと帰還抵抗を備えた増幅回路と前記水晶屈曲音叉振動子を備えた帰還回路のコンデンサーと抵抗に電気的に接続する工程と、を有し、これらの工程は順次行われると共に、前記水晶音叉腕の上下面に設けられた各々1個の溝は、その溝の溝幅W2と水晶音叉腕幅Wとの比(W2/W)が、0.35〜0.95の範囲内に、かつ、前記溝の厚みt1と音叉腕の厚みtとの比(t1/t)が、0.01〜0.79の範囲内にあり、水晶音叉腕に溝を有する前記屈曲音叉水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さく、かつ、基本波モード振動のフイガーオブメリットM1が2次高調波モード振動のフイガーオブメリットM2より大きい水晶発振器の製造方法である。
【0006】
本発明の水晶発振器の製造方法の第2の態様は、幅と厚みと長さとを有する音叉腕は第1音叉腕と第2音叉腕を備えて構成され、前記第1音叉腕と前記第2音叉腕の上下面に各々1個の溝が設けられ、前記溝は各音叉腕の厚み方向に対抗して設けられ、前記溝を有する水晶屈曲音叉振動子は、第1電極端子と第2電極端子を備えて構成され、前記第1電極端子は、第1音叉腕の上下面の溝の段差部に配置された第1電極と第2音叉腕の側面に配置された第2電極から構成され、かつ、上下面の溝の段差部に配置された前記第1電極と第2音叉腕の側面に配置された前記第2電極とが接続され、前記第2電極端子は、第1音叉腕の側面に配置された第2電極と第2音叉腕の上下面の溝の段差部に配置された第1電極から構成され、かつ、側面に配置された前記第2電極と第2音叉腕の上下面の溝の段差部に配置された前記第1電極とが接続されていて、前記溝の厚み方向に対抗する2つの面に各溝の段差部の電極と接続される電極が配置され、前記第1電極端子と前記第2電極端子間に直流電圧を印加したときに、第1音叉腕と第2音叉腕の上下面の溝の厚み方向に対抗する2つの面に配置された電極間に発生する厚み方向の電界が、前記電極間に存在しない第1の態様に記載の水晶発振器の製造方法である。
【0007】
【作用】
このように、本発明は屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子を具えた水晶発振器で、しかも、音叉形状の溝と電極の構成を改善し、増幅回路と帰還回路との関係を示すことにより、2次高調波振動を抑え、基本波振動モードで振動する周波数を出力する水晶発振器を得る事ができる。
【0008】
加えて、音叉腕の中立線を挟んだ中央部に溝を設け、且つ、電極を配置し、溝の寸法の最適化を図る事により、等価直列抵抗R1が小さく、Q値が高く、電気機械変換効率の良い屈曲モードで振動する超小型の音叉形状の屈曲水晶振動子が得られる。と同時に、帰還回路の負荷容量を小さくできる。その結果、消費電流の少ない水晶発振器が得られる。
【0009】
【本発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づき具体的に述べる。
図1は本発明の水晶発振器を構成する水晶発振回路図の一実施例である。水晶発振回路1は増幅器(CMOSインバータ)2、帰還抵抗4、ドレイン抵抗7、コンデンサー5,6と音叉形状の屈曲水晶振動子3から構成されている。このような回路素子から本実施例の水晶発振回路は構成されている。即ち、水晶発振器を構成する水晶発振回路1は増幅回路8と帰還回路9から構成されている。又、本発明の水晶発振器に用いられる屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子は図3から図6で詳述される。
【0010】
図2は図1の帰還回路図を示す。今、屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子の角周波数をωi、ドレイン抵抗7の抵抗をRd、コンデンサー5、6の容量をCg、Cd、水晶のクリスタルインピーダンスをRei,入力電圧をV1,出力電圧をV2とすると、帰還率βはβ=|V2|/|V1|で定義される。但し、iは屈曲振動モードの振動次数を表し、例えば、i=1のとき、基本波モード振動、i=2のとき、2次高調波モード振動、i=3のとき、3次高調波モード振動である。更に、負荷容量CLはCL=CgCd/(Cg+Cd)で与えられ、Cg=Cd=CgsとRd>>Reiとすると、帰還率βはβ=1/(1+kCL 2)で与えられる。但し、kはωi、Rd、Reiの関数で表される。又、Reiは近似的に等価直列抵抗Riに等しくなる。
【0011】
このように、帰還率βと負荷容量CLとの関係から明らかなように、負荷容量CLが小さくなると、基本波振動モードと高調波振動モードの共振周波数の帰還率はそれぞれ大きくなることが良く分かる。それ故、負荷容量CLが小さくなると、基本波モード振動よりも2次高調波モード振動の方が発振し易くなる。その理由は2次高調波モード振動の最大振動振幅が基本波モード振動の最大振動振幅より小さいために、発振持続条件である振幅条件と位相条件を同時に満足するためである。
【0012】
本発明の水晶発振器は、消費電流が少なく、しかも、出力周波数が基本波モード振動の周波数である水晶発振器を提供することを目的としている。それ故、消費電流を少なくするために、負荷容量CLは7pF以下を用いる。より消費電流を少なくするには、消費電流は負荷容量に比例するので、CL=6pF以下が好ましい。ここで言う、容量Cg、Cdは回路の浮遊容量を含んだ数値である。また、2次高調波モードの振動を抑え、発振器の出力信号が基本波モード振動の周波数を得るために、α1/α2>β2/β1とα1β1>1を満足するように本実施例の発振回路は構成される。但し、α1、α2は基本波モード振動と2次高調波モード振動の増幅回路の増幅率で、β1、β2は基本波モード振動と2次高調波モード振動の帰還回路の帰還率である。
【0013】
換言するならば、増幅回路の基本波モード振動の増幅率α1と2次高調波モード振動の増幅率α2との比が帰還回路の2次高調波モード振動の帰還率β2と基本波モード振動の帰還率β1との比より大きく、かつ、基本波モード振動の増幅率α1と基本波モード振動の帰還率β1の積が1より大きくなるように構成される。このように構成することにより、消費電流の少ない、出力信号が基本波モード振動の周波数である水晶発振器が実現できる。尚、前記周波数とは、屈曲水晶振動子の基準周波数、又はそれの分周された周波数である。
【0014】
又、本実施例の水晶発振回路を構成する増幅回路の増幅部は負性抵抗−RLiでその特性を示すことができる。i=1のとき基本波モード振動の負性抵抗で、i=2のとき2次高調波モード振動の負性抵抗である。本実施例の水晶発振器は、増幅回路の基本波モード振動の負性抵抗の絶対値|−RL1|と基本波モード振動の等価直列抵抗R1との比が増幅回路の2次高調波モード振動の負性抵抗の絶対値|−RL2|と2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2との比より大きくなるように発振回路が構成されている。即ち、|−RL1|/R1>|−RL2|/R2を満足するように構成されている。このように水晶発振回路を構成することにより、2次高調波モード振動の発振起動が抑えられ、その結果、基本波モード振動の発振起動が得られるので基本波モード振動の周波数が出力信号として得られる。
【0015】
図3は本発明の第1実施例の水晶発振器に用いられる屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子10の外観図とその座標系を示すものである。座標系O、電気軸x、機械軸y、光軸zからなるO−xyzを構成している。本実施例の音叉形状の屈曲水晶振動子10は音叉腕20、音叉腕26と音叉基部40とから成り、音叉腕20と音叉腕26は音叉基部40に接続されている。更に、音叉腕20の上面には中立線を挟んで溝21が設けられ、又、音叉腕26の上面にも音叉腕20と同様に溝27が設けられるとともに、さらに、音叉基部40に溝32と溝36とが設けられている。なお、角度θは、x軸廻りの回転角であり、通常0〜10°の範囲で選ばれる。
【0016】
図4は、図3の音叉形状の屈曲水晶振動子10の音叉基部40のD−D′断面図を示す。図4では図3の水晶振動子の音叉基部40の断面形状並びに電極配置について詳述する。音叉腕20と連結する音叉基部40には溝21,22が設けられている。同様に、音叉腕26と連結する音叉基部40には溝27,28が設けられている。更に、溝21と溝27との間には更に溝32と溝36とが設けられている。又、溝22と溝28との間にも溝33と溝37とが設けられている。そして、溝21と溝22には電極23,24が、溝32,33,36,37には電極34,35,38,39が、溝27と溝28には電極29,30が配置され、音叉基部40の両側面には電極25,31が配置されている。さらに詳述すると、溝の側面に電極が配置され、前記電極に対抗して極性の異なる電極が配置されている。
【0017】
また、音叉形状の屈曲水晶振動子10は厚みtを有し、溝は厚みt1を有している。ここで言う厚みt1は溝の一番深いところの厚みを言う。その理由は水晶は異方性の材料のために、化学的エッチング法では各結晶軸の方向によりエッチングスピードが異なる。それ故、化学的エッチング法では溝の深さが図4に示した一様な形状に加工するのが極めて難しいためである。本実施例では、溝の厚みt1と音叉腕又は音叉腕と音叉基部の厚みtとの比(t1/t)が0.01〜0.79となるように溝が音叉腕又は音叉腕と音叉基部に形成されている。特に、音叉基部の歪みを大きくするために、音叉基部の溝の厚みと音叉基部の厚みの比を0.01〜0.025にする事が好ましい。このように形成することにより、音叉腕又は音叉腕と音叉基部の溝側面電極とそれに対抗する側面の電極との間の電界Exが大きくなる。すなわち、電気機械変換効率の良い屈曲振動子が得られる。即ち、容量比の小さい音叉形状の屈曲水晶振動子が得られる。更に、本実施例では、音叉基部の溝と溝との間にさらに溝32,33,36,37が設けられているので、その電界強度はより一層大きくなり、より電気機械変換効率が良くなる。又、本実施例では、音叉基部40の上面に溝32,36が、下面に溝33,37が設けられているが、片面にのみ設けても良い。
【0018】
更に、電極25,29,30,34,35は一方の同極に、電極23,24,31,37,38,39は他方の同極になるように配置されていて、2電極端子構造E−E′を構成する。即ち、z軸方向に対抗する溝電極は同極に、且つ、x軸方向に対抗する電極は異極になるように構成されている。今、2電極端子E−E′に直流電圧を印加(E端子に正極、E′端子に負極)すると電界Exは図4に示した矢印のように働く。電界Exは水晶振動子の側面と溝内の側面とに配置された電極により電極に垂直に、即ち、直線的に引き出されるので、電界Exが大きくなり、その結果、発生する歪の量も大きくなる。従って、音叉形状の屈曲水晶振動子を小型化させた場合でも、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子が得られる。
【0019】
図5は図3の音叉形状の屈曲水晶振動子10の上面図を示すものである。図5では溝21,27の配置及び寸法について特に詳述する。音叉腕20の中立線41を挟むようにして溝21が設けられている。他方の音叉腕26も中立線42を挟むようにして溝27が設けられている。更に、本実施例の音叉形状の屈曲水晶振動子10では、音叉基部40の、溝21と溝27との間に挟まれた部分にも溝32と溝36とが設けられている。それら溝21,27及び溝32,36を設けたことで、音叉形状の屈曲水晶振動子10には、先に述べたように、電界Exが図4に示した矢印のように働き、電界Exは水晶振動子の側面と溝内の側面とに配置された電極により電極に垂直に、即ち、直線的に引き出され、特に音叉基部の電界Exが大きくなり、その結果、発生する歪の量も大きくなる。このように、本実施例の音叉形状の屈曲水晶振動子10の形状と電極構成とは、音叉型屈曲水晶振動子を小型化した場合でも電気的諸特性に優れた、即ち、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い水晶振動子が実現できる。
【0020】
更に、部分幅W1、W3と溝幅W2とすると、音叉腕20,26の腕幅WはW=W1+W2+W3で与えられ、通常はW1とW3の一部又は全部がW1=W3となるように構成される。又、溝幅W2はW2≧W1,W3を満足する条件で構成される。更に具体的に述べると、本実施例では、溝幅W2と音叉腕幅Wとの比(W2/W)が0.35〜0.95で、溝の厚みt1と音叉腕の厚みt又は音叉腕と音叉基部の厚みtとの比(t1/t)が0.01〜0.79となるように溝が音叉腕に形成されている。このように形成することにより、音叉腕の中立線41と42を基点とする慣性モーメントが大きくなる。即ち、電気機械変換効率が良くなるので、等価直列抵抗R1の小さい、Q値の高い、しかも、容量比の小さい音叉形状の屈曲水晶振動子を得る事ができる。
【0021】
これに対して、溝21および溝27の長さl1について本実施例では、溝21,27が音叉腕20,26から音叉基部40の長さl2にまで延在し、基部の溝の長さl3となるような寸法とされている。それ故、音叉腕20,26に設けられた溝の長さは(l1−l3)で与えられ、R1の小さい振動子を得るために、(l1−l3)/(l−l2)が0.4〜0.8の値を有する。更に、音叉形状の屈曲水晶振動子10の全長lは要求される周波数や収納容器の大きさなどから決定される。と共に、基本波モードで振動する良好な音叉形状の屈曲水晶振動子を得るためには、溝の長さl1と全長lとの間には密接な関係が存在する。
【0022】
すなわち、音叉腕20,26又は音叉腕20,26と音叉基部40に設けられた溝の長さl1と音叉形状の屈曲水晶振動子の全長lとの比(l1/l)が0.2〜0.78となるように溝の長さは設けられる。このように形成する理由は、特に、不要振動である2次高調波振動(基本波周波数の約6.3倍の周波数)を抑圧する事ができると共に基本波モード振動の周波数安定性を高めることができる。それ故、基本波モードで容易に振動する良好な音叉形状の屈曲水晶振動子が実現できる。さらに詳述するならば、基本波モードで振動する音叉形状の屈曲水晶振動子の等価直列抵抗R1が2次高調波振動での等価直列抵抗R2より小さくなる。即ち、R1<R2となり、増幅器(CMOSインバータ)、コンデンサ、抵抗、本実施例の音叉形状の屈曲水晶振動子等から成る水晶発振器において、振動子が基本波モードで容易に振動する良好な水晶発振器が実現できる。又、溝の長さl1は音叉腕の長さ方向に分割されていても良く、その中の少なくとも1個が前記辺比(l1/l)を満足すれば良い。
【0023】
また、この実施例では、音叉基部40は図5中、振動子10の長さl2の下側部分全体とされ、又、音叉腕20及び音叉腕26は、図5中、振動子10の長さl2の部分から上側の部分全体とされている。本実施例では音叉の叉部は矩形をしているが、本発明は前記形状に限定されるものではなく、音叉の叉部がU字型をしていても良い。この場合も矩形の形状と同じように、音叉腕と音叉基部との寸法の関係は前記関係と同じである。更に、本実施例では、溝は音叉腕と音叉基部に設けられているが、本発明はこれに限定されるものでなく、音叉腕にのみ溝を設けても良く、同様の効果が得られる。この場合、溝の長さl3=0となる。尚、本発明で言う溝の長さl1とは、音叉腕に設けられた溝で、溝の厚みt1と音叉腕の厚みtとの比(t1/t)が0.01〜0.79で、溝幅W2と音叉腕幅Wとの比(W2/W)が0.35〜0.95となるように構成された溝の長さである。と共に、更に、前記音叉腕に設けられた溝が、音叉基部にまで延在する場合には、音叉基部の溝の厚みと音叉基部の厚みの比が0.01〜0.025の範囲内にある溝の長さl3を含む長さがl1である。
【0024】
換言するならば、音叉形状の音叉腕の中立線を挟んだ幅方向中央部の上下面に各々少なくとも1個の溝が長さ方向に設けられ、前記溝の両側面に電極が配置され、前記溝側面の電極とその電極に対抗する音叉腕側面の電極とが互いに異極となるように電極を構成し、音叉腕に生ずる慣性モーメントが大きくなるように前記各々少なくとも1個の溝の内少なくとも1個の溝幅W2と音叉腕幅Wとの比(W2/W)が0.35〜0.95で、前記溝の厚みt1と音叉腕の厚みtとの比(t1/t)が0.01〜0.79であると共に、更に、前記音叉腕又は前記音叉腕と前記音叉基部に設けられた溝の長さl1と前記音叉形状の水晶振動子の全長lとの比(l1/l)が0.2〜0.78の範囲内に有るように溝が形成されている。
【0025】
を満足するように構成され、間隔W4は0.05mm〜0.35mmで、溝幅W2は0.03mm〜0.068mmの値を有する。このように構成する理由は超小型の屈曲水晶振動子で、かつ、音叉形状と音叉腕の溝をフオトリソグラフィ技術を用いて別々(別々の工程)に形成でき、更に、基本波モード振動の周波数安定性が2次高調波モード振動の周波数安定性より高くすることができる。この場合、振動子の厚みtは0.05mm〜0.12mmの水晶ウエハが用いられる。
【0026】
更に詳述するならば、屈曲水晶振動子の誘導性と電気機械変換効率と品質係数を表すフイガーオブメリットMiは品質係数Qi値と容量比riの比(Qi/ri)によって定義され(i=1のとき基本波振動、i=2のとき2次高調波振動、i=3のとき3次高調波振動)、屈曲水晶振動子の機械的直列共振周波数fsと並列容量を含む直列共振周波数frの差ΔfはフイガーオブメリットMiに反比例し、その値Miが大きい程Δfは小さくなる。従って、Miが大きい程、屈曲水晶振動子の共振周波数は並列容量の影響を受けないので、屈曲水晶振動子の周波数安定性は良くなる。
【0027】
例えば、基本波モード振動の周波数が32.768kHzの場合、前記音叉形状と溝とその寸法の構成により、基本波モード振動のフイガーオブメリットM1が2次と3次高調波モード振動のフイガーオブメリットM2、M3より大きくなる。本実施例では、M1、M2、M3はそれぞれM1>50、M2<30、M3<18となる。即ち、高い誘導性と電気機械変換効率の良い(等価直列抵抗R1の小さい)、品質係数の大きい基本波モードで振動する屈曲水晶振動子を得ることができる。その結果、基本波モード振動の周波数安定性が2次と3次高調波モード振動の周波数安定性より良くなると共に、2次と3次高調波モード振動を抑圧することができる。また、本発明の基本波モード振動の基準周波数は10kHz〜200kHzが用いられる。本実施例では、溝幅W2は0.03mm〜0.068mmであるが、溝幅W2を0.12mmまで大きくする事により、より大きいM1を得ることができる。
【0028】
図6は本発明の第2実施例の水晶発振器に用いられる屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子45の上面図である。音叉形状の屈曲水晶振動子45は、音叉腕46,47と音叉基部48とを具えて構成されている。即ち、音叉腕46,47の一端部が音叉基部48に接続されている。本実施例では、音叉基部48に切り欠き部53、54が設けられている。又、音叉腕46、47には中立線51、52を挟んで溝49、50が設けられている。更に、本実施例では溝49、50は音叉腕46、47の一部に設けられていて、溝49、50はそれぞれ幅W2と長さl1を有する。更に詳述するならば、溝の面積S=W2×l1で示し、Sは0.025〜0.12mm2の値を有するように構成される。このように溝の面積を構成する理由は化学的エッチング法による溝の形成が容易で、しかも、電気機械変換効率が良くなる溝の形成ができる。と同時に、基本波モード振動の品質係数Q値の高い屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子が得られる。その結果、出力信号が基本波モード振動の周波数である水晶発振器が実現できる。
【0029】
上記溝の面積Sでは、溝と音叉腕を別々の工程で加工できる。しかし、音叉腕とそれに設けられた溝を同時に加工するには、音叉腕の厚みtと溝幅W2と音叉腕の間隔W4と面積Sを最適寸法にする必要が有る。即ち、音叉腕の厚みtが0.06mm〜0.15mmのとき、溝幅W2が0.02mm〜0.068mmの範囲内に、更に、面積Sは0.023mm2〜0.088mm2の範囲内にあり、間隔W4は0.05mm〜0.35mmとなるように構成される。このように構成する理由は水晶の結晶性を利用し、その結晶性から貫通穴でない溝(音叉腕の長さ方向に分割された溝を含む)と音叉形状を同時に形成することができる。また、図6には示されていないが、音叉腕46,47の下面にも溝49,50と対抗する位置に溝が設けられている。
【0030】
更に、音叉基部48に設けられた切り欠き部53、54の音叉部側の幅寸法はW5で与えられ、切り欠き部53、54の端部側の寸法はW6で与えられる。そして、音叉基部48の端部側で表面実装型のケースや円筒型のケースに半田や接着剤によって固定されるとき、振動子の振動エネルギーの損失を小さくするには、
振動部のエネルギー損失を小さくすることができる。図6で示されている音叉腕の腕幅W、部分幅W1、W3、溝幅W2と間隔W4及び溝の長さl1と音叉振動子の全長lとの関係は図5で述べられているので、ここでは省略する。
【0031】
図7は本発明の第3実施例の水晶発振器に用いられる水晶ユニットの断面図である。水晶ユニット170は音叉形状の屈曲水晶振動子70、ケース71と蓋72を具えて構成されている。更に詳述するならば、振動子70はケース71に設けられた固定部74に導電性接着剤76や半田によって固定される。又、ケース71と蓋72は接合部材73を介して接合される。本実施例では、振動子70は図3と図6で詳細に述べられた屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子10、45の内の一個と同じ振動子である。又、本実施例の水晶発振器では回路素子は水晶ユニットの外側に接続される。即ち、音叉形状の屈曲水晶振動子のみがユニット内に収納されている。この時、屈曲水晶振動子は真空中のユニット内に収納されている。
【0032】
更に、ケースの部材はセラミックスかガラス、蓋の部材は金属かガラス、そして、接合部材は金属か低融点ガラスでできている。又、本実施例で述べられた振動子とケースと蓋との関係は以下に述べられる図8の水晶発振器にも適用される。
【0033】
図8本発明の第4実施例の水晶発振器の断面図を示す。水晶発振器190は水晶発振回路とケース91と蓋92を具えて構成されている。本実施例では、水晶発振回路はケース91と蓋92から成る水晶ユニット内に収納されている。又、水晶発振回路は音叉形状の屈曲水晶振動子90と帰還抵抗を含む増幅器98とコンデンサー(図示されていない)とドレイン抵抗(図示されていない)を具えて構成されていて、増幅器98はCMOSインバータが用いられる。
【0034】
更に、本実施例では、振動子90はケース91に設けられた固定部94に接着剤96や半田によって固定される。これに対して、増幅器98はケース91に固定されている。また、ケース91と蓋92は接合部材93を介して接合されている。本実施例の振動子90は図3と図6で詳細に述べられた音叉形状の屈曲水晶振動子10、45の中の振動子が用いられる。
【0035】
次に、本発明の水晶発振器の製造方法について述べる。上記音叉形状の屈曲水晶振動子は半導体の技術を用いたフオトリソグラフィ法と化学的エッチング法によって形成される。まず、研磨加工あるいはポリッシュ加工された水晶ウエハの上下面に金属膜(例えば、クロムそしてその上に金)をスパッタリング法又は蒸着法により形成する。次に、その金属膜の上にレジストが塗布される。そして、フオトリソ工程により、それらレジストと金属膜が音叉形状を残して除去された後、化学的エッチング法により、音叉腕と音叉基部を具えた音叉形状が形成される。この音叉形状を形成するときに、音叉基部に切り欠き部を形成しても良い。更に、音叉形状の面上に前記工程で示した金属膜とレジストが塗布され、フオトリソ工程と化学的エッチング法により、音叉腕又は音叉腕と音叉基部に溝が形成される。
【0036】
次に、溝を有する音叉形状に金属膜とレジストが再び塗布されて、フオトリソ工程により、電極が形成される。即ち、音叉腕の側面の電極と溝の側面の電極は極性が異なるように対抗して配置される。さらに詳述するならば、第1の音叉腕の側面電極と第2の音叉腕の溝の電極は同極に、第1の音叉腕の溝の電極と第2の音叉腕の側面電極は同極に構成され、第1の音叉腕の溝の電極と側面電極は極性が異なるように構成される。即ち。2電極端子が振動子に形成される。その結果、2電極端子に交番電圧を印加する事により、音叉腕は逆相で屈曲振動する。本実施例では、音叉形状の形成の後に溝を音叉腕又は音叉腕と音叉基部に形成しているが、本発明は前記実施例に限定されるものではなくて、まず、溝を形成してから音叉形状を形成してもよい。又は、音叉形状と溝を同時に形成しても良い。更に、この工程での溝の寸法等については前記した寸法と同じであり既に述べられているので、ここでは省略する。
【0037】
この実施例の工程により、水晶ウエハには多数個の音叉形状の屈曲水晶振動子が形成されている。それ故、次の工程では、このウエハの状態で、最初の周波数調整がレーザ又はプラズマエッチング又は蒸着にて行われる。と共に、不良振動子はマーキングされるかウエハから取り除かれる。また、本工程では10kHz〜200kHzの基準周波数に対して、周波数偏差は−9000PPM〜+5000PPMの範囲内にあるように周波数調整がなされる。更に、次の工程では、形成された振動子は表面実装型のケース又は円筒型のケースのリード線に接着材あるいは半田等で固定される。その固定後、第2回目の周波数調整がレーザ又はプラズマエッチング又は蒸着にて行われる。本工程では、周波数偏差は−50PPM〜+50PPMの範囲内にあるように周波数調整がなされる。
【0038】
更に、周波数調整後、前記振動子はケースと蓋となるユニットに真空中で収納される。蓋がガラスで構成されているときには、収納後、第3回目の周波数調整がレーザにて行われる。本工程では、周波数偏差は−30PPM〜+30PPMの範囲内にあるように周波数調整がなされる。本実施例では、周波数調整は3回行われるが、少なくとも2回行えば良い。例えば、第3回目の周波数調整はしなくても良い。更に次の工程では、前記した振動子の2電極端子が増幅器とコンデンサと抵抗に電気的に接続される。換言するならば、増幅回路はCMOSインバータと帰還抵抗からなり、帰還回路は音叉形状の屈曲水晶振動子とドレイン抵抗とゲート側のコンデンサとドレイン側のコンデンサからなるように接続される。又、前記第3回目の周波数調整は水晶発振回路を構成後に行っても良い。
【0039】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものではなく、上記第1実施例から第4実施例の水晶発振器に用いられる音叉形状の屈曲水晶振動子では、音叉腕又は音叉腕と音叉基部に溝を設けているが、例えば、音叉腕に貫通穴(t1=0)を設けてもよい。又は、音叉基部に溝と貫通穴を設けても良い。又、本実施例の音叉腕に設けられた溝に連結する音叉基部の溝を貫通穴になるように構成してもよく、溝又は貫通穴の側面に電極を配置し、その電極と対抗する側面に前記電極と極性の異なる電極を配置することにより、既に述べられたのと同様な効果が得られる。
【0040】
更に、本実施例で示された図4では、音叉腕と音叉基部に大略同じ深さの溝を設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、音叉基部に全て溝を設け、叉部の下側の溝の厚みとその両側の溝の厚みを変えても良い。即ち、異なる厚みを有する溝を設けても良い。一例として、音叉基部の中央部の溝の厚みをその両側の溝の厚みより小さく、あるいは大きくなるように形成しても良い。他の例としては、音叉腕に設けられた溝の深さを変えても良い。特に、複数個の音叉形状の屈曲水晶振動子が接続部を介して音叉基部で接続され、且つ、それらの振動子が電気的に並列に接続されるときには、各振動子の音叉腕の溝の厚み(深さ)を変えることにより、各振動子の頂点温度を変えることができ、周波数温度特性の改善ができる。
【0041】
更に、第1実施例〜第4実施例の水晶発振器とそれに用いられる音叉形状の屈曲水晶振動子について述べてきたが、これらの実施例の水晶発振器に用いられる水晶振動子はケースと蓋とから構成される、いわゆるユニット内に収納され、水晶ユニットを構成する。即ち、ケースに設けられた固定部に導電性接着剤又は半田等によって固定部に本実施例の振動子は固定され、さらに、ケースと蓋とは接合部材を介して接合されていて、ケース内は真空になるように構成されている。このように構成することにより、等価直列抵抗R1の小さい、超小型の水晶ユニットを実現することができる。
【0042】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の水晶発振器を提供する事により多くの効果が得られることを述べたが、その中でも特に、次の如き著しい効果が得られる。
(1)音叉基部に複数個の溝を設け、且つ、それらの側面に極性の異なる電極が配置されているので、電界が垂直に働く。その結果、電気機械変換効率が良くなるので、等価直列抵抗R1が小さく、品質係数Q値の高い音叉形状の屈曲水晶振動子を具えた水晶発振器が得られる。
(2)溝幅と音叉腕幅の寸法と溝の厚みと音叉腕の厚みの寸法との関係の最適化を図ることにより、2次慣性モーメントが大きくなる。即ち、等価直列抵抗R1の小さい、Q値の高い、しかも、容量比の小さい音叉形状の屈曲水晶振動子を具えた水晶発振器が実現できる。
(3)音叉形状の振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さく、かつ、基本波モード振動のフイガーオブメリットM1が2次高調波モード振動のフイガーオブメリットM2より大きい振動子を具えて水晶発振器は構成され、更に、増幅回路と帰還回路を具えて構成される前記水晶発振器の増幅回路の基本波モード振動の負性抵抗の絶対値|−RL1|と基本波モード振動の等価直列抵抗R1との比が増幅回路の2次高調波モード振動の負性抵抗の絶対値|−RL2|と2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2との比より大きくなるように構成されているので、負荷容量が小さくても、水晶発振器の出力信号は、基本波モード振動の周波数が出力として得られると共に、消費電流の少ない水晶発振器が実現できる。
(4)更に、増幅回路の基本波モード振動の増幅率α1と2次高調波モード振動の増幅率α2との比が帰還回路の2次高調波モード振動の帰還率β2と基本波モード振動の帰還率β1との比より大きく、かつ、前記基本波モード振動の増幅率α1と前記基本波モード振動の帰還率β1の積が1より大きくなるように構成されているので、負荷容量が小さくても、2次高調波モード振動を抑えることができ、その結果、水晶発振器の出力信号は、基本波モード振動の周波数が出力として得られると共に、消費電流の少ない水晶発振器が実現できる。
(5)音叉形状と溝をフォトリソグラフィ法と化学的エッチング法によって形成でき、量産性に優れ、更に1枚の水晶ウェハ上に多数個の振動子を一度にバッチ処理にて形成できるので、安価な音叉形状の屈曲水晶振動子が得られる。と同時に、それを具えた安価な水晶発振器が実現できる。
(6)基本波モード振動のフイガーオブメリットM1が2次高調波モード振動のフイガーオブメリットM2より大きい振動子を具えて水晶発振器は構成されるので、出力信号が基本波モード振動の周波数が得られると共に、高い周波数安定性を有する水晶発振器が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の水晶発振器を構成する水晶発振回路図の一実施例である。
【図2】 図1の帰還回路図を示す。
【図3】 本発明の第1実施例の水晶発振器に用いられる屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子の外観図とその座標系を示す。
【図4】 図3の音叉形状の屈曲水晶振動子の音叉基部のD−D′断面図を示す。
【図5】 図3の音叉形状の屈曲水晶振動子の上面図を示す。
【図6】 本発明の第2実施例の水晶発振器に用いられる屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子の上面図である。
【図7】 本発明の第3実施例の水晶発振器に用いられる水晶ユニットの断面図である。
【図8】 本発明の第4実施例の水晶発振器の断面図を示す。
【図9】 従来の音叉形状の屈曲水晶振動子の斜視図とその座標系を示す。
【図10】 図9の音叉形状水晶振動子の音叉腕の断面図である。
【符号の説明】
1 増幅回路
9 帰還回路
V1 入力電圧
V2 出力電圧
20,26,46,47音叉腕
W2 溝幅
W 音叉腕の腕幅
W1,W3 音叉腕の部分幅
W4 音叉腕の間隔
l1 溝の長さ
l2 音叉基部の長さ
l 音叉形状の屈曲水晶振動子の全長
t 音叉腕又は音叉腕と音叉基部の厚み
t1 溝の厚み
Claims (2)
- 水晶振動子とCMOSインバータとコンデンサーと抵抗素子とを備えて構成される水晶発振器の製造方法であって、前記水晶発振器は、CMOSインバータと帰還抵抗を備えた増幅回路と、屈曲モードで振動する水晶音叉腕と水晶音叉基部を備えた水晶屈曲音叉振動子とコンデンサーと抵抗とを備えた帰還回路を備えて構成される水晶発振回路を備えて構成されていて、
水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された水晶音叉腕とを形成するための第1のエッチング工程において、水晶ウエハをエッチングによって屈曲モードで振動する水晶屈曲音叉振動子を形成する工程と、
前記水晶音叉腕の各々の音叉腕の対抗する上下面の各面に段差部を有する溝を各々1個形成するための第1のエッチング工程と異なる第2のエッチング工程において、前記水晶ウエハをエッチングする工程と、
前記水晶音叉腕の溝の段差部の上に第1の電気的極性を有する第1電極と、前記水晶音叉腕の側面の上に第2の電気的極性を有する第2電極を、第1の電気的極性と第2の電気的極性とが異極性となるように第1電極と第2電極を配置する工程と、
音叉腕に溝を有する前記水晶屈曲音叉振動子を収納するケースに固定する工程と、
水晶屈曲音叉振動子とケースと蓋とを備えた水晶ユニットを構成するために、前記水晶屈曲音叉振動子を前記ケースと前記蓋を用いて封止する工程と、
音叉腕に溝を有する前記水晶屈曲音叉振動子をCMOSインバータと帰還抵抗を備えた増幅回路と前記水晶屈曲音叉振動子を備えた帰還回路のコンデンサーと抵抗に電気的に接続する工程と、を有し、これらの工程は順次行われると共に、
前記水晶音叉腕の上下面に設けられた各々1個の溝は、その溝の溝幅W2と水晶音叉腕幅Wとの比(W2/W)が、0.35〜0.95の範囲内に、かつ、前記溝の厚みt1と音叉腕の厚みtとの比(t1/t)が、0.01〜0.79の範囲内にあり、
水晶音叉腕に溝を有する前記水晶屈曲音叉振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さく、かつ、基本波モード振動のフイガーオブメリットM1が2次高調波モード振動のフイガーオブメリットM2より大きいことを特徴とする水晶発振器の製造方法。 - 幅と厚みと長さとを有する音叉腕は第1音叉腕と第2音叉腕を備えて構成され、前記第1音叉腕と前記第2音叉腕の上下面に各々1個の溝が設けられ、前記溝は各音叉腕の厚み方向に対抗して設けられ、前記溝を有する水晶屈曲音叉振動子は、第1電極端子と第2電極端子を備えて構成され、前記第1電極端子は、第1音叉腕の上下面の溝の段差部に配置された第1電極と第2音叉腕の側面に配置された第2電極から構成され、かつ、上下面の溝の段差部に配置された前記第1電極と第2音叉腕の側面に配置された前記第2電極とが接続され、前記第2電極端子は、第1音叉腕の側面に配置された第2電極と第2音叉腕の上下面の溝の段差部に配置された第1電極から構成され、かつ、側面に配置された前記第2電極と第2音叉腕の上下面の溝の段差部に配置された前記第1電極とが接続されていて、前記溝の厚み方向に対抗する2つの面に各溝の段差部の電極と接続される電極が配置され、前記第1電極端子と前記第2電極端子間に直流電圧を印加したときに、第1音叉腕と第2音叉腕の上下面の溝の厚み方向に対抗する2つの面に配置された電極間に発生する厚み方向の電界が、前記電極間に存在しないことを特徴とする請求項1に記載の水晶発振器の製造方法。
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