JP3725370B2 - 生理用タンポン - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は膣内に挿入して経血を吸収させる生理用タンポンに関する。
【０００２】
【従来の技術】
近年、生理用タンポンとして、種々の製品が開発されている。例えば、特開平１−１４６５４８号には、親水性繊維からなる吸収体と、親水性繊維の混入された疎水性シートで形成された外層からなる生理用タンポンが開示されている。また、特開平３−１４６０５８号には、円柱状の高圧縮されたコアと外側の襞とからなるタンポンが開示されている。さらに、特開平５−６８６９５号では、繊維密度が高いシートと繊維密度が低いシートを組み合せ、円柱状に成形したときに繊維密度が低いシートが表面に部分的に現れるようにしたタンポンが開示されている。これらのタンポンは、吸収性繊維素材が圧縮されて円柱状に形成され、使用時においては経血を吸収することによって圧縮が解除される。その結果、タンポンは膨張して膣腔を閉塞し、その後連続して排出される経血を吸収する。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
しかし経血は粘性が高いので、従来のタンポンでは経血がタンポンの中心部へ移行しにくく、タンポンの表面で経血が滞留してしまう。そのため、経血の吸収速度が遅く、圧縮されたタンポンの嵩が回復されるためには時間がかかる。また多量の経血が排出された場合、タンポンで吸収しきれず、或いはタンポンの膨張速度が遅く膣腔を閉塞しきれず、結果、経血の漏れが生じることがある。また、従来のタンポンでは経血がタンポンの中心部へ移行しにくいため、中心部の吸収体が有効に活用されていない。さらに、タンポンの表面に経血が滞留するので、使用後において取り出されたタンポンは見た目が悪く、使用者に不快感を与えることがある。
【０００４】
本発明の目的は上記課題を解決するためのものであり、吸収速度が速く且つ膨張速度も速いタンポンを提供することにある。
【０００５】
本発明の更なる目的は、吸収体を有効に利用することができるタンポンを提供することにある。
【０００６】
本発明の他の目的は、使用後のタンポンの表面の色残りが少なく、不快感を与えにくいタンポンを提供することにある。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
第１の本発明は、吸収性繊維素材を有する吸収層と前記吸収層を覆う疎水性の透液層とからなる平坦状の吸収体が用いられ、前記平坦状の吸収体が円柱状に成形されてなる生理用タンポンにおいて、
前記平坦状の吸収体を形成している前記吸収層では、平坦な表面に開口し吸収層の内部に延びる小凹部が複数形成されており、
前記小凹部は前記吸収層の対向する２つの表面から内部に向かってほぼ垂直に形成されており、一方の表面から形成された小凹部と他方の表面から形成された小凹部との間の繊維密度が、吸収層の他の部分の繊維密度よりも高いことを特徴とするものである。
【０００８】
本発明の生理用タンポンの平坦状の吸収体は、吸収層とその表面の疎水性の透液層とからなるが、この平坦状の吸収体が円柱状に形成されると、円柱表面に透液層が現れるのみならず円柱の内部にも吸収層の平坦な表面と透液層とが入り込む。そして、第１の本発明の生理用タンポンでは、吸収層の平坦な表面に複数の小凹部が形成されているため、この小凹部は円柱表面のみならず、円柱の内部にも分散して配置されることになる。よって、経血が円柱表面に開口する小凹部から吸収層の内部へ速やかに吸収されるのみならず、前記透液層に導かれて円柱の内部に浸透した経血も円柱内部の小凹部から吸収層へ速やかに吸収される。また、粘性の高い経血であっても、小凹部に取り込ませることによりそれらは容易に吸収される。これらの結果、タンポン全体として経血の吸収速度が速くなり、タンポンは迅速に膨張して膣腔を閉塞できる。
【０００９】
本発明では、円柱状に形成された状態で、前記複数の小凹部の周辺部分の繊維密度が、吸収層の他の部分の繊維密度よりも高いことが好ましい。
【００１１】
第２の本発明は、吸収性繊維素材を有する吸収層と前記吸収層を覆う疎水性の透液層とからなる平坦状の吸収体が用いられ、前記平坦状の吸収体が円柱状に成形されてなる生理用タンポンにおいて、
前記平坦状の吸収体を形成している前記吸収層は、吸収層の層表面の繊維密度よりも層中心部の繊維密度の方が高く、この吸収体を円柱状にした円柱体の内部に、繊維密度の高い前記層中心部と前記層表面とが交互に配置されていることを特徴とするものである。
【００１２】
第３の本発明は、吸収性繊維素材を有する吸収層と前記吸収層を覆う疎水性の透液層とからなる平坦状の吸収体が用いられ、前記平坦状の吸収体が円柱状に成形されてなる生理用タンポンにおいて、
前記平坦状の吸収体を形成している前記吸収層では、吸収層の層表面の繊維の太さよりも層中心部の繊維の太さが細く、この吸収体を円柱状にした円柱体の内部に、細い繊維で形成された前記層中心部と太い繊維で形成された前記層表面とが交互に配置されていることを特徴とするものである。
【００１３】
第２と第３の本発明の吸収層では、表面の低密度層または太い繊維の層は経血の透過性が高く、そして中心の高密度層または細い繊維の層へ経血が導かれやすいものとなっている。この高密度層または細い繊維の層が、円柱状のタンポンの全域に広がっており、しかも円柱状のタンポンの表面のすぐ内側に高密度層または細い繊維の層が位置するため、経血の浸透が速く、迅速に膨張でき膣腔を閉塞できる。
【００１４】
第２と第３の発明では、前記平坦状の吸収体において、前記繊維密度の高い領域若しくは前記繊維の太さが小さい領域が、前記吸収層の層中心部で平坦方向へ面状または線状の広がりを有することが好ましい。
【００１５】
この構成では、前記繊維密度の高い領域若しくは前記繊維の太さが小さい領域において、経血が前記面状または線状に沿ってタンポン全域に広がるように導かれやすくなり、タンポン全体の経血の吸収容量を大きくできる。
【００１６】
第３の発明の場合、前記吸収層中心の繊維の太さの平均が０．５〜３デニールで、層表面の繊維の太さの平均が２〜６デニールであることが好ましい。
【００１７】
さらに、第２と第３の発明では、前記平坦状の吸収体を形成している前記吸収層では、平坦な表面に開口し、吸収層の内部の繊維密度が高い領域まで若しくは吸収層の内部の細い繊維が存在する領域まで延びる小凹部が複数形成されていることが好ましい。
【００１８】
【発明の実施の形態】
図１は第１の実施の形態のタンポンが円柱状に成形される前の状態を示す吸収体の斜視図、図２は図１に示した吸収体により円柱状に成形された第１の実施の形態のタンポンを示す斜視図、図３は図１のＩＩＩ―ＩＩＩ線の断面図、図４は図３の部分拡大断面図、図５は図２のＶ―Ｖ線の断面図である。
【００１９】
図２に示す本発明の第１の実施の形態のタンポン１は、図１に示すような平坦状の吸収体２が、図５の断面図に示すように、略Ｍ字形状に曲げられて円柱状に圧縮成形されたものである。この吸収体２は、図３の断面図に示すように、主に親水性繊維素材で構成された吸収層と、その表面を覆う疎水性の透液層とで形成されている。
【００２０】
吸収層２０は、吸収性繊維素材、例えばレーヨン、コットンなどの親水性繊維からなる繊維ウェッブである。ただし、吸収層２０には親水性繊維と共に疎水性繊維や、親水化処理が施された疎水性繊維が混入されていても良い。また、吸収層２０には高吸水性ポリマーなど、吸水機能を持った化合物が混入されていても良い。
【００２１】
吸収層２０は、好ましくは目付７００〜１０００ｇ／ｍ2、厚みが０．０７〜０．０９ｃｍ程度の繊維ウェッブを複数枚、例えば５〜９枚程度重ね、結果、厚み２０ｔが好ましくは０．４〜０．７ｃｍ程度とされたもので形成される。ただし、吸収層２０は一枚の繊維ウェッブによって形成されていても良い。
【００２２】
吸収体２の吸収層２０の上下両面には、図３の断面図及び図４の拡大断面図に示すように、平坦な表面に開口し吸収層２０の内部へ延びる複数の小凹部３が形成されている。図１に示すように、小凹部が透液層２６を透かして見えているとおり、吸収層２０の表面全面にわたって複数個形成されている。
【００２３】
小凹部３は、吸収層２０にエンボス加工を施すことによって得ることができる。例えば表面に多数の凸部が設けられているロール間若しくは加圧板間に挟んで加圧する。またはニードルを用いて加圧形成する。エンボス処理はロールまたは加圧板あるいはニードルを加熱することなく、あるいは若干加熱して行われる。このように、吸収層２０を加圧することにより小凹部３を形成すると、図４の拡大図に示すように、小凹部３の周辺２０ａにおける繊維密度が高くなる。
【００２４】
小凹部３の深さ３ｔは、１〜５ｍｍが好ましく、さらに好ましくは２〜３ｍｍである。また、吸収層２０表面における小凹部３の開孔直径３ｄは０．５〜１．０ｍｍが好ましい。さらにまた、小凹部３の形成密度は、１〜１０個／ｃｍ2が好ましく、更に好ましくは２〜３個／ｃｍ2である。
【００２５】
吸収層２０の上下の二つの面において小凹部３が形成される場合、一方の面の小凹部３ａと他方の面の小凹部３ｂとが対向するように設けられることが好ましい。なお、図４では小凹部３ａ、３ｂはＸ方向へ少しずれて対向しているが、このように小凹部３ａ、３ｂは完全に対向していなくてもよい。このように一方の面の小凹部３ａと他方の面の小凹部３ｂとがほぼ対向するように設けられると、二つの面から対向するように設けられた小凹部３ａ、３ｂの間２０ｂにおける繊維密度が高くなる。そして、小凹部３は吸収層２０の上下の全面にわたって設けられているので、結果、吸収層２０の厚み方向（Ｚ方向）における中央（以下中央部という）では密度が比較的高く、表面層は中央部に比べて密度が低いものとなりやすい。
【００２６】
例えば、前記のような好ましい目付、密度、厚みをもつ繊維ウェッブを重ねて前記好ましい厚み（０．４〜０．７ｍｍ）を持った吸収層をエンボス加圧またはニードル加圧し、結果、好ましくは吸収層２０の厚み方向における中央部付近（厚み方向の中心Ｏ−Ｏを挟んで、０．５〜１．５ｍｍの厚さにわたって）で密度０．４０〜０．６０ｇ／ｃｍ3、目付が５００〜７００ｇ／ｍ2、さらに吸収層２０の表面付近（吸収層２０の二つの面の表面からそれぞれ１．５〜２．５ｍｍの厚さにわたって）で密度０．０５〜０．２０ｇ／ｃｍ3、目付が１００〜２００ｇ／ｍ2とする。なお、エンボス加圧またはニードル加圧の直後は、吸収層２０の全体としての厚み２０ｔは殆ど変化しない。
【００２７】
以上のようにして得られる小凹部３が形成された吸収層２０を、疎水性の透液層２６でその表面を覆って吸収体２を得る。透液層２６は、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの疎水性繊維で形成されたスパンレース、エアースルー、ポイントボンド、スパンボンド、サーマルボンド不織布、或いは多数箇所開孔されたそれらの不織布、或いは多孔質のプラスチックシートなどで形成される。なお、この実施の形態においては吸収層２０のみに小凹部３が形成されているが、吸収層２０をこの透液層２６で覆った後、吸収体２の表面にエンボス処理が施されて小凹部３が形成されていても良い。
【００２８】
以上のようにして得られた吸収体２は図１に示すように矢羽形状に切断されており、その後、Ｙ方向に沿って図５の断面図に示すように三つ折りにして、吸収体２の体積が１／３程度になるまで圧縮して（例えば圧縮前の体積が１２ｃｍ3程度のものを４ｃｍ3程度になるまで圧縮し）円柱状に成形し、図２に示すタンポン１を得る。このとき、吸収体２に水分を与えて圧縮すると、繊維どうしが水素結合するので、圧縮後タンポン１の嵩が元に戻りにくくなる。そして、吸収層２０が経血を吸収すると、繊維どうしの水素結合がはずれ、圧縮されていた嵩が元に戻るように膨張し、膣腔が閉塞される。
【００２９】
得られたタンポン１の直径は１１〜１３ｍｍ程度であり、Ｙ方向への全長（紐５を含まない）は５ｃｍ程度のものである。また、タンポン１の全体の密度は０．３０〜０．５０ｇ／ｃｍ3となることが好ましい。なお、圧縮成形においては、前記述べた吸収層２０の密度勾配の関係（吸収層２０の中央Ｏ―Ｏ付近においては密度が高く、表面近辺においては中央付近より密度が低い）が壊れないようにすることが好ましい。例えば、前記小凹部３の形成後における好ましい中央部付近の密度及び表面付近の密度が、円柱状に圧縮成形後にはそれぞれ０．５０〜０．７５ｇ／ｃｍ3、０．１５〜０．６０ｇ／ｃｍ3程度となることが好ましい。
【００３０】
そして、本発明のタンポンにおいては通常のタンポンのように、使用後においてタンポンを膣腔からひきだすときに使用する紐５が、図１に示すように吸収体２の中央線２ｃで縫い込まれて接合されており、この紐５は圧縮成形後は図２に示すようにタンポン１の後端部１ｅから延びるようになる。
【００３１】
以上のようにして得られたタンポン１では、経血がタンポン１の表面の透過層２６を通過し、吸収層２０に多数形成された小凹部３へと導かれ、吸収層２０の表面及び小凹部３において吸収される。特に、前記述べたように吸収層２０の小凹部３付近２０ａの密度は高くなっているため、経血は小凹部３へと強く導かれ、吸収層の中央部へと移行しやすくなる。また、経血が高粘性のものであっても、小凹部３へ取り込ませることができる。そして、円柱状のタンポン１の内部にも吸収層２０の表面が入り込んでいるので、小凹部３は円柱状のタンポン１の円柱表面のみならず、その内側および円柱の中心１ｃに広く均一に分散されている。経血がタンポン１の記号１ａで示す部分から、透液層２６に沿って円柱の内部に浸透したとき、円柱内部の小凹部３から吸収層２０の内部に速やかに吸収される。
【００３２】
また、このタンポン１の吸収層２０は、円柱状に圧縮成形した後においても、吸収体の表面付近より中央部付近の方が密度が高く、またこの中央部は、円柱状のタンポンに広く存在している。よって、タンポン１のどの部分においても、経血が密度の高い吸収層２０の中央部へと移行しやすいものとなっている。
【００３３】
これらの結果、本発明のタンポン１では、経血は吸収層２０の表面のみならず、その中央部で吸収され、且つタンポン１の中心部１ｃにおいても吸収されるので、吸収層２０を有効に活用でき、且つ経血の吸収速度も速くなる。したがって、タンポン１の膨張速度も早いものとなり、膣腔を短時間で閉塞させることができる。また、経血が吸収層の中央部へと導かれるため、タンポン１の表面（吸収層２０の表面）に経血が滞留しにくく、使用後において使用者に与えられる不快感を減らすことができる。
【００３４】
なお、実施の形態では吸収層２０の表面に小凹部３を加圧して形成しているが、例えば多数の凸部が形成された面上に繊維ウェッブを形成させたもの、すなわちあらかじめ小凹部３が形成された繊維ウェッブを吸収層２０として用いても良い。
【００３５】
図６は、第２の実施の形態のタンポンが円柱状に成形される前の状態を示す吸収体の断面図、図７は図６に示した吸収体が円柱状に圧縮成形された第２の実施の形態のタンポンを示す断面図である。図６に示す吸収体２Ａの吸収層２０Ａは、表面層２１と、表面層より繊維密度の高い中心層２２とで構成されている。それぞれの層は前記吸収層２０と同様に吸収性繊維素材で形成されている。
【００３６】
中心層２２と表面層２１との密度の差は、密度が異なる繊維ウェッブを重ねることにより得ることができる。例えば、好ましくは、中心層２２を密度０．４０〜０．６０ｇ／ｃｍ3、目付が５００〜７００ｇ／ｍ2、厚み０．５〜１．５ｍｍの繊維ウェッブとし、表面層２１を密度０．０５〜０．２０ｇ／ｃｍ3、目付が１００〜２００ｇ／ｍ2、厚み１．５〜２．５ｍｍ程度である繊維ウェッブとし、中心層２２を２枚の表面層２１で挟む。その結果、得られる吸収層２０Ａは厚みが０．４〜０．７ｃｍ程度のものである。このように、密度勾配を設けることにより、経血が低密度の表面層２１より中心層２２へと移行しやすくなる。
【００３７】
なお、好ましくは吸収層２０Ａにも第１の実施の形態のように小凹部３が形成される。小凹部３は吸収層２０Ａの表面から厚み方向へ（Ｚ方向）向かってほぼ垂直に形成されており、その先端は中心層２２まで達している。よって、小凹部３へと導かれた経血はさらに容易に吸収層２０Ａの中心層２２へと移行する。ただし、第２の実施の形態においては小凹部３を形成しなくても、中心層２２と表面層２１とに密度勾配が設けられているので、経血の吸収速度は十分速いものとなる。
【００３８】
そして、第１の実施の形態と同様に、この吸収層２０Ａの表面を透液層２６で覆い吸収体２Ａとし、さらに吸収体２Ａを図１及び図５に示すように成形してタンポン１Ａを得ることができる。得られたタンポン１Ａは、経血を引付ける中心層が全体に広がっているので、全体として経血の吸収速度が早く、膨張速度も早い。また、経血は中心層２２へと移行しやすいので、タンポン表面に色残りが少なく、使用後に使用者に不快感を感じさせにくい。
【００３９】
さらに本発明の第３の実施の形態として、第２の実施の形態のように図６に示す中心層２２と表面層２１とのそれぞれの密度を変える代わりに、中心層２２を構成する繊維の太さを、表面層２１を構成する繊維の太さより小さくすることができる。繊維の太さが細い場合、毛細管現象により経血を引き付けて保持しやすい。したがって、中心層２２と表面層２１とを構成する繊維ウェッブの繊維密度が互いに同じであっても、中心層２２を構成する繊維が表面層２１を構成する繊維より細い場合、経血は表面層２１から中心層２２へと導かれる。
【００４０】
例えば、中心層２２の繊維の太さの平均が０．５〜３デニールで、表面層２１の太さの平均が２〜６デニールであることが好ましい。そして、実施例２と同様に小凹部３が形成される場合、小凹部の先端は中心層２２まで延びていることが好ましい。
【００４１】
なお、第３の実施の形態においても、第２の実施例のように中心層２２と表面層２１との繊維ウェッブの密度を変えても良い。その場合、中心層２２と表面層２１とに第２の実施例のように大きな密度差を設けなくても、中心層２２と表面層２１との機能差を発揮させることができる。
【００４２】
その他、本発明のタンポンは前記第１〜３の実施の形態で述べた平坦な吸収体を様々な方法で円柱状に成形することができる。例えば図８に示すように、矩形形状の吸収体２Ｂの中央部に紐５をつけ、その部分がタンポン１Ｂの後端部となるように吸収体２Ｂを矢印の方へ曲げ、図９（Ａ）に示すように絞り成形する。その後に吸収体２Ｂの先部周辺端部を丸め込むように圧縮形成して、図９（Ｂ）に示すタンポン１Ｂを得ることができる。
【００４３】
さらに、図１０に示すように、図１に示すような平坦な吸収体２Ｃを渦巻き状に丸めてタンポン１Ｃを形成してもよい。
【００４４】
【実施例】
本発明の第１の実施の形態のタンポンを、次のようにして形成した。レーヨンからなる坪量９５０ｇ／ｍ2、厚み５ｍｍの繊維ウェッブを用意した。この繊維ウェッブの表面全体をポリエチレンテレフタレートで形成された坪量１２ｇ／ｍ2のスパンボンド不織布を覆って吸収体を得た。吸収体の上下二つの面を、表面に凸部が４個／ｃｍ2の密度で形成されているニードルで挟み圧縮し、吸収体の表面に小凹部を形成した。このとき、厚みは変らず５ｍｍ、中央部近辺（約１ｍｍの厚さにわたって）の密度は０．１２５ｇ／ｃｍ3、上下二つの面の表面近辺（各約２ｍｍの厚さにわたって）の密度は０．４５ｇ／ｃｍ3であった。その後、図５に示すように略Ｍ字形状に圧縮成形させて図２に示すようなタンポンを得た。このタンポンの縦寸法は５ｃｍ、直径は１２ｍｍ、全体の密度は０．４０ｇ／ｃｍ3であった。このタンポンについてその吸収性能を調べるために以下の試験を行なった。
【００４５】
（吸収量）タンポンで吸収可能な人工血液の量を測定した。
（吸収倍率）タンポン自体の重量に対して吸収できる人工経血の量を計算し、倍率表示した。
【００４６】
（吸収性能試験）タンポンをゴムチューブ中に入れて密着させ、ゴムチューブの外側からタンポンに均一に圧力（２００ｍ／ｑ）がかかるようにし、ゴムチューブの上部より注射器を用いて人工経血を２ｃｃ、６ｃｃまたは１０ｃｃ一気に注入する。注入開始から吸収し終わるまでの時間を測定する。
【００４７】
なお、比較例として小凹部を設けていないタンポンについても同様に試験を行なった。比較例のタンポンは目付９５０ｇ／ｍ2、厚み５ｍｍ、密度０．１９ｇ／ｃｍ3の平坦な吸収層を実施例と同様に透液層で覆い、円柱状に圧縮成形したものである。
【００４８】
【表１】
【００４９】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のタンポンでは、タンポンを形成する吸収体の中央部へと経血が導かれやすいので、経血の吸収速度が早く、タンポンの膨張速度もはやい。また、吸収体の表面だけではなく内部までも有効に活用できる。
【００５０】
さらに、本発明のタンポンではタンポンの表面に経血が滞留しないため、使用後にタンポン表面において色残りが少なく、使用者に不快感を与えにくい。
【００５１】
また、小凹部が形成される場合、小凹部に粘性の高い経血を取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】第１の実施の形態のタンポンが円柱状に成形される前の状態を示す吸収体の斜視図
【図２】第１の実施の形態のタンポンを示す斜視図
【図３】図１のＩＩＩ―ＩＩＩ線の断面図
【図４】図３の部分拡大断面図
【図５】図２のＶ―Ｖ線の断面図
【図６】第２の実施の形態のタンポンが円柱状に成形される前の状態を示す吸収体の断面図
【図７】第２の実施の形態のタンポンを示す断面図
【図８】本発明の他の実施の形態のタンポンの製造方法を説明する斜視図
【図９】（Ａ）は本発明の他の実施の形態のタンポンの製造方法を説明する斜視図、（Ｂ）は完成された他の実施の形態のタンポンの斜視図
【図１０】本発明のさらに他の実施の形態のタンポンの製造方法を説明する斜視図
【符号の説明】
１，１Ａ，１Ｂ，１Ｃ タンポン
１ｅ 端部
２，２Ａ，２Ｂ，２Ｃ 吸収体
２ｃ 中央線
３ 小凹部
５ 紐
２０，２０Ａ 吸収層
２０ａ，２０ｂ 密度の高い部分
２１ 表面層
２２ 中心層
２６ 透液層
【発明の属する技術分野】
本発明は膣内に挿入して経血を吸収させる生理用タンポンに関する。
【０００２】
【従来の技術】
近年、生理用タンポンとして、種々の製品が開発されている。例えば、特開平１−１４６５４８号には、親水性繊維からなる吸収体と、親水性繊維の混入された疎水性シートで形成された外層からなる生理用タンポンが開示されている。また、特開平３−１４６０５８号には、円柱状の高圧縮されたコアと外側の襞とからなるタンポンが開示されている。さらに、特開平５−６８６９５号では、繊維密度が高いシートと繊維密度が低いシートを組み合せ、円柱状に成形したときに繊維密度が低いシートが表面に部分的に現れるようにしたタンポンが開示されている。これらのタンポンは、吸収性繊維素材が圧縮されて円柱状に形成され、使用時においては経血を吸収することによって圧縮が解除される。その結果、タンポンは膨張して膣腔を閉塞し、その後連続して排出される経血を吸収する。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
しかし経血は粘性が高いので、従来のタンポンでは経血がタンポンの中心部へ移行しにくく、タンポンの表面で経血が滞留してしまう。そのため、経血の吸収速度が遅く、圧縮されたタンポンの嵩が回復されるためには時間がかかる。また多量の経血が排出された場合、タンポンで吸収しきれず、或いはタンポンの膨張速度が遅く膣腔を閉塞しきれず、結果、経血の漏れが生じることがある。また、従来のタンポンでは経血がタンポンの中心部へ移行しにくいため、中心部の吸収体が有効に活用されていない。さらに、タンポンの表面に経血が滞留するので、使用後において取り出されたタンポンは見た目が悪く、使用者に不快感を与えることがある。
【０００４】
本発明の目的は上記課題を解決するためのものであり、吸収速度が速く且つ膨張速度も速いタンポンを提供することにある。
【０００５】
本発明の更なる目的は、吸収体を有効に利用することができるタンポンを提供することにある。
【０００６】
本発明の他の目的は、使用後のタンポンの表面の色残りが少なく、不快感を与えにくいタンポンを提供することにある。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
第１の本発明は、吸収性繊維素材を有する吸収層と前記吸収層を覆う疎水性の透液層とからなる平坦状の吸収体が用いられ、前記平坦状の吸収体が円柱状に成形されてなる生理用タンポンにおいて、
前記平坦状の吸収体を形成している前記吸収層では、平坦な表面に開口し吸収層の内部に延びる小凹部が複数形成されており、
前記小凹部は前記吸収層の対向する２つの表面から内部に向かってほぼ垂直に形成されており、一方の表面から形成された小凹部と他方の表面から形成された小凹部との間の繊維密度が、吸収層の他の部分の繊維密度よりも高いことを特徴とするものである。
【０００８】
本発明の生理用タンポンの平坦状の吸収体は、吸収層とその表面の疎水性の透液層とからなるが、この平坦状の吸収体が円柱状に形成されると、円柱表面に透液層が現れるのみならず円柱の内部にも吸収層の平坦な表面と透液層とが入り込む。そして、第１の本発明の生理用タンポンでは、吸収層の平坦な表面に複数の小凹部が形成されているため、この小凹部は円柱表面のみならず、円柱の内部にも分散して配置されることになる。よって、経血が円柱表面に開口する小凹部から吸収層の内部へ速やかに吸収されるのみならず、前記透液層に導かれて円柱の内部に浸透した経血も円柱内部の小凹部から吸収層へ速やかに吸収される。また、粘性の高い経血であっても、小凹部に取り込ませることによりそれらは容易に吸収される。これらの結果、タンポン全体として経血の吸収速度が速くなり、タンポンは迅速に膨張して膣腔を閉塞できる。
【０００９】
本発明では、円柱状に形成された状態で、前記複数の小凹部の周辺部分の繊維密度が、吸収層の他の部分の繊維密度よりも高いことが好ましい。
【００１１】
第２の本発明は、吸収性繊維素材を有する吸収層と前記吸収層を覆う疎水性の透液層とからなる平坦状の吸収体が用いられ、前記平坦状の吸収体が円柱状に成形されてなる生理用タンポンにおいて、
前記平坦状の吸収体を形成している前記吸収層は、吸収層の層表面の繊維密度よりも層中心部の繊維密度の方が高く、この吸収体を円柱状にした円柱体の内部に、繊維密度の高い前記層中心部と前記層表面とが交互に配置されていることを特徴とするものである。
【００１２】
第３の本発明は、吸収性繊維素材を有する吸収層と前記吸収層を覆う疎水性の透液層とからなる平坦状の吸収体が用いられ、前記平坦状の吸収体が円柱状に成形されてなる生理用タンポンにおいて、
前記平坦状の吸収体を形成している前記吸収層では、吸収層の層表面の繊維の太さよりも層中心部の繊維の太さが細く、この吸収体を円柱状にした円柱体の内部に、細い繊維で形成された前記層中心部と太い繊維で形成された前記層表面とが交互に配置されていることを特徴とするものである。
【００１３】
第２と第３の本発明の吸収層では、表面の低密度層または太い繊維の層は経血の透過性が高く、そして中心の高密度層または細い繊維の層へ経血が導かれやすいものとなっている。この高密度層または細い繊維の層が、円柱状のタンポンの全域に広がっており、しかも円柱状のタンポンの表面のすぐ内側に高密度層または細い繊維の層が位置するため、経血の浸透が速く、迅速に膨張でき膣腔を閉塞できる。
【００１４】
第２と第３の発明では、前記平坦状の吸収体において、前記繊維密度の高い領域若しくは前記繊維の太さが小さい領域が、前記吸収層の層中心部で平坦方向へ面状または線状の広がりを有することが好ましい。
【００１５】
この構成では、前記繊維密度の高い領域若しくは前記繊維の太さが小さい領域において、経血が前記面状または線状に沿ってタンポン全域に広がるように導かれやすくなり、タンポン全体の経血の吸収容量を大きくできる。
【００１６】
第３の発明の場合、前記吸収層中心の繊維の太さの平均が０．５〜３デニールで、層表面の繊維の太さの平均が２〜６デニールであることが好ましい。
【００１７】
さらに、第２と第３の発明では、前記平坦状の吸収体を形成している前記吸収層では、平坦な表面に開口し、吸収層の内部の繊維密度が高い領域まで若しくは吸収層の内部の細い繊維が存在する領域まで延びる小凹部が複数形成されていることが好ましい。
【００１８】
【発明の実施の形態】
図１は第１の実施の形態のタンポンが円柱状に成形される前の状態を示す吸収体の斜視図、図２は図１に示した吸収体により円柱状に成形された第１の実施の形態のタンポンを示す斜視図、図３は図１のＩＩＩ―ＩＩＩ線の断面図、図４は図３の部分拡大断面図、図５は図２のＶ―Ｖ線の断面図である。
【００１９】
図２に示す本発明の第１の実施の形態のタンポン１は、図１に示すような平坦状の吸収体２が、図５の断面図に示すように、略Ｍ字形状に曲げられて円柱状に圧縮成形されたものである。この吸収体２は、図３の断面図に示すように、主に親水性繊維素材で構成された吸収層と、その表面を覆う疎水性の透液層とで形成されている。
【００２０】
吸収層２０は、吸収性繊維素材、例えばレーヨン、コットンなどの親水性繊維からなる繊維ウェッブである。ただし、吸収層２０には親水性繊維と共に疎水性繊維や、親水化処理が施された疎水性繊維が混入されていても良い。また、吸収層２０には高吸水性ポリマーなど、吸水機能を持った化合物が混入されていても良い。
【００２１】
吸収層２０は、好ましくは目付７００〜１０００ｇ／ｍ2、厚みが０．０７〜０．０９ｃｍ程度の繊維ウェッブを複数枚、例えば５〜９枚程度重ね、結果、厚み２０ｔが好ましくは０．４〜０．７ｃｍ程度とされたもので形成される。ただし、吸収層２０は一枚の繊維ウェッブによって形成されていても良い。
【００２２】
吸収体２の吸収層２０の上下両面には、図３の断面図及び図４の拡大断面図に示すように、平坦な表面に開口し吸収層２０の内部へ延びる複数の小凹部３が形成されている。図１に示すように、小凹部が透液層２６を透かして見えているとおり、吸収層２０の表面全面にわたって複数個形成されている。
【００２３】
小凹部３は、吸収層２０にエンボス加工を施すことによって得ることができる。例えば表面に多数の凸部が設けられているロール間若しくは加圧板間に挟んで加圧する。またはニードルを用いて加圧形成する。エンボス処理はロールまたは加圧板あるいはニードルを加熱することなく、あるいは若干加熱して行われる。このように、吸収層２０を加圧することにより小凹部３を形成すると、図４の拡大図に示すように、小凹部３の周辺２０ａにおける繊維密度が高くなる。
【００２４】
小凹部３の深さ３ｔは、１〜５ｍｍが好ましく、さらに好ましくは２〜３ｍｍである。また、吸収層２０表面における小凹部３の開孔直径３ｄは０．５〜１．０ｍｍが好ましい。さらにまた、小凹部３の形成密度は、１〜１０個／ｃｍ2が好ましく、更に好ましくは２〜３個／ｃｍ2である。
【００２５】
吸収層２０の上下の二つの面において小凹部３が形成される場合、一方の面の小凹部３ａと他方の面の小凹部３ｂとが対向するように設けられることが好ましい。なお、図４では小凹部３ａ、３ｂはＸ方向へ少しずれて対向しているが、このように小凹部３ａ、３ｂは完全に対向していなくてもよい。このように一方の面の小凹部３ａと他方の面の小凹部３ｂとがほぼ対向するように設けられると、二つの面から対向するように設けられた小凹部３ａ、３ｂの間２０ｂにおける繊維密度が高くなる。そして、小凹部３は吸収層２０の上下の全面にわたって設けられているので、結果、吸収層２０の厚み方向（Ｚ方向）における中央（以下中央部という）では密度が比較的高く、表面層は中央部に比べて密度が低いものとなりやすい。
【００２６】
例えば、前記のような好ましい目付、密度、厚みをもつ繊維ウェッブを重ねて前記好ましい厚み（０．４〜０．７ｍｍ）を持った吸収層をエンボス加圧またはニードル加圧し、結果、好ましくは吸収層２０の厚み方向における中央部付近（厚み方向の中心Ｏ−Ｏを挟んで、０．５〜１．５ｍｍの厚さにわたって）で密度０．４０〜０．６０ｇ／ｃｍ3、目付が５００〜７００ｇ／ｍ2、さらに吸収層２０の表面付近（吸収層２０の二つの面の表面からそれぞれ１．５〜２．５ｍｍの厚さにわたって）で密度０．０５〜０．２０ｇ／ｃｍ3、目付が１００〜２００ｇ／ｍ2とする。なお、エンボス加圧またはニードル加圧の直後は、吸収層２０の全体としての厚み２０ｔは殆ど変化しない。
【００２７】
以上のようにして得られる小凹部３が形成された吸収層２０を、疎水性の透液層２６でその表面を覆って吸収体２を得る。透液層２６は、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの疎水性繊維で形成されたスパンレース、エアースルー、ポイントボンド、スパンボンド、サーマルボンド不織布、或いは多数箇所開孔されたそれらの不織布、或いは多孔質のプラスチックシートなどで形成される。なお、この実施の形態においては吸収層２０のみに小凹部３が形成されているが、吸収層２０をこの透液層２６で覆った後、吸収体２の表面にエンボス処理が施されて小凹部３が形成されていても良い。
【００２８】
以上のようにして得られた吸収体２は図１に示すように矢羽形状に切断されており、その後、Ｙ方向に沿って図５の断面図に示すように三つ折りにして、吸収体２の体積が１／３程度になるまで圧縮して（例えば圧縮前の体積が１２ｃｍ3程度のものを４ｃｍ3程度になるまで圧縮し）円柱状に成形し、図２に示すタンポン１を得る。このとき、吸収体２に水分を与えて圧縮すると、繊維どうしが水素結合するので、圧縮後タンポン１の嵩が元に戻りにくくなる。そして、吸収層２０が経血を吸収すると、繊維どうしの水素結合がはずれ、圧縮されていた嵩が元に戻るように膨張し、膣腔が閉塞される。
【００２９】
得られたタンポン１の直径は１１〜１３ｍｍ程度であり、Ｙ方向への全長（紐５を含まない）は５ｃｍ程度のものである。また、タンポン１の全体の密度は０．３０〜０．５０ｇ／ｃｍ3となることが好ましい。なお、圧縮成形においては、前記述べた吸収層２０の密度勾配の関係（吸収層２０の中央Ｏ―Ｏ付近においては密度が高く、表面近辺においては中央付近より密度が低い）が壊れないようにすることが好ましい。例えば、前記小凹部３の形成後における好ましい中央部付近の密度及び表面付近の密度が、円柱状に圧縮成形後にはそれぞれ０．５０〜０．７５ｇ／ｃｍ3、０．１５〜０．６０ｇ／ｃｍ3程度となることが好ましい。
【００３０】
そして、本発明のタンポンにおいては通常のタンポンのように、使用後においてタンポンを膣腔からひきだすときに使用する紐５が、図１に示すように吸収体２の中央線２ｃで縫い込まれて接合されており、この紐５は圧縮成形後は図２に示すようにタンポン１の後端部１ｅから延びるようになる。
【００３１】
以上のようにして得られたタンポン１では、経血がタンポン１の表面の透過層２６を通過し、吸収層２０に多数形成された小凹部３へと導かれ、吸収層２０の表面及び小凹部３において吸収される。特に、前記述べたように吸収層２０の小凹部３付近２０ａの密度は高くなっているため、経血は小凹部３へと強く導かれ、吸収層の中央部へと移行しやすくなる。また、経血が高粘性のものであっても、小凹部３へ取り込ませることができる。そして、円柱状のタンポン１の内部にも吸収層２０の表面が入り込んでいるので、小凹部３は円柱状のタンポン１の円柱表面のみならず、その内側および円柱の中心１ｃに広く均一に分散されている。経血がタンポン１の記号１ａで示す部分から、透液層２６に沿って円柱の内部に浸透したとき、円柱内部の小凹部３から吸収層２０の内部に速やかに吸収される。
【００３２】
また、このタンポン１の吸収層２０は、円柱状に圧縮成形した後においても、吸収体の表面付近より中央部付近の方が密度が高く、またこの中央部は、円柱状のタンポンに広く存在している。よって、タンポン１のどの部分においても、経血が密度の高い吸収層２０の中央部へと移行しやすいものとなっている。
【００３３】
これらの結果、本発明のタンポン１では、経血は吸収層２０の表面のみならず、その中央部で吸収され、且つタンポン１の中心部１ｃにおいても吸収されるので、吸収層２０を有効に活用でき、且つ経血の吸収速度も速くなる。したがって、タンポン１の膨張速度も早いものとなり、膣腔を短時間で閉塞させることができる。また、経血が吸収層の中央部へと導かれるため、タンポン１の表面（吸収層２０の表面）に経血が滞留しにくく、使用後において使用者に与えられる不快感を減らすことができる。
【００３４】
なお、実施の形態では吸収層２０の表面に小凹部３を加圧して形成しているが、例えば多数の凸部が形成された面上に繊維ウェッブを形成させたもの、すなわちあらかじめ小凹部３が形成された繊維ウェッブを吸収層２０として用いても良い。
【００３５】
図６は、第２の実施の形態のタンポンが円柱状に成形される前の状態を示す吸収体の断面図、図７は図６に示した吸収体が円柱状に圧縮成形された第２の実施の形態のタンポンを示す断面図である。図６に示す吸収体２Ａの吸収層２０Ａは、表面層２１と、表面層より繊維密度の高い中心層２２とで構成されている。それぞれの層は前記吸収層２０と同様に吸収性繊維素材で形成されている。
【００３６】
中心層２２と表面層２１との密度の差は、密度が異なる繊維ウェッブを重ねることにより得ることができる。例えば、好ましくは、中心層２２を密度０．４０〜０．６０ｇ／ｃｍ3、目付が５００〜７００ｇ／ｍ2、厚み０．５〜１．５ｍｍの繊維ウェッブとし、表面層２１を密度０．０５〜０．２０ｇ／ｃｍ3、目付が１００〜２００ｇ／ｍ2、厚み１．５〜２．５ｍｍ程度である繊維ウェッブとし、中心層２２を２枚の表面層２１で挟む。その結果、得られる吸収層２０Ａは厚みが０．４〜０．７ｃｍ程度のものである。このように、密度勾配を設けることにより、経血が低密度の表面層２１より中心層２２へと移行しやすくなる。
【００３７】
なお、好ましくは吸収層２０Ａにも第１の実施の形態のように小凹部３が形成される。小凹部３は吸収層２０Ａの表面から厚み方向へ（Ｚ方向）向かってほぼ垂直に形成されており、その先端は中心層２２まで達している。よって、小凹部３へと導かれた経血はさらに容易に吸収層２０Ａの中心層２２へと移行する。ただし、第２の実施の形態においては小凹部３を形成しなくても、中心層２２と表面層２１とに密度勾配が設けられているので、経血の吸収速度は十分速いものとなる。
【００３８】
そして、第１の実施の形態と同様に、この吸収層２０Ａの表面を透液層２６で覆い吸収体２Ａとし、さらに吸収体２Ａを図１及び図５に示すように成形してタンポン１Ａを得ることができる。得られたタンポン１Ａは、経血を引付ける中心層が全体に広がっているので、全体として経血の吸収速度が早く、膨張速度も早い。また、経血は中心層２２へと移行しやすいので、タンポン表面に色残りが少なく、使用後に使用者に不快感を感じさせにくい。
【００３９】
さらに本発明の第３の実施の形態として、第２の実施の形態のように図６に示す中心層２２と表面層２１とのそれぞれの密度を変える代わりに、中心層２２を構成する繊維の太さを、表面層２１を構成する繊維の太さより小さくすることができる。繊維の太さが細い場合、毛細管現象により経血を引き付けて保持しやすい。したがって、中心層２２と表面層２１とを構成する繊維ウェッブの繊維密度が互いに同じであっても、中心層２２を構成する繊維が表面層２１を構成する繊維より細い場合、経血は表面層２１から中心層２２へと導かれる。
【００４０】
例えば、中心層２２の繊維の太さの平均が０．５〜３デニールで、表面層２１の太さの平均が２〜６デニールであることが好ましい。そして、実施例２と同様に小凹部３が形成される場合、小凹部の先端は中心層２２まで延びていることが好ましい。
【００４１】
なお、第３の実施の形態においても、第２の実施例のように中心層２２と表面層２１との繊維ウェッブの密度を変えても良い。その場合、中心層２２と表面層２１とに第２の実施例のように大きな密度差を設けなくても、中心層２２と表面層２１との機能差を発揮させることができる。
【００４２】
その他、本発明のタンポンは前記第１〜３の実施の形態で述べた平坦な吸収体を様々な方法で円柱状に成形することができる。例えば図８に示すように、矩形形状の吸収体２Ｂの中央部に紐５をつけ、その部分がタンポン１Ｂの後端部となるように吸収体２Ｂを矢印の方へ曲げ、図９（Ａ）に示すように絞り成形する。その後に吸収体２Ｂの先部周辺端部を丸め込むように圧縮形成して、図９（Ｂ）に示すタンポン１Ｂを得ることができる。
【００４３】
さらに、図１０に示すように、図１に示すような平坦な吸収体２Ｃを渦巻き状に丸めてタンポン１Ｃを形成してもよい。
【００４４】
【実施例】
本発明の第１の実施の形態のタンポンを、次のようにして形成した。レーヨンからなる坪量９５０ｇ／ｍ2、厚み５ｍｍの繊維ウェッブを用意した。この繊維ウェッブの表面全体をポリエチレンテレフタレートで形成された坪量１２ｇ／ｍ2のスパンボンド不織布を覆って吸収体を得た。吸収体の上下二つの面を、表面に凸部が４個／ｃｍ2の密度で形成されているニードルで挟み圧縮し、吸収体の表面に小凹部を形成した。このとき、厚みは変らず５ｍｍ、中央部近辺（約１ｍｍの厚さにわたって）の密度は０．１２５ｇ／ｃｍ3、上下二つの面の表面近辺（各約２ｍｍの厚さにわたって）の密度は０．４５ｇ／ｃｍ3であった。その後、図５に示すように略Ｍ字形状に圧縮成形させて図２に示すようなタンポンを得た。このタンポンの縦寸法は５ｃｍ、直径は１２ｍｍ、全体の密度は０．４０ｇ／ｃｍ3であった。このタンポンについてその吸収性能を調べるために以下の試験を行なった。
【００４５】
（吸収量）タンポンで吸収可能な人工血液の量を測定した。
（吸収倍率）タンポン自体の重量に対して吸収できる人工経血の量を計算し、倍率表示した。
【００４６】
（吸収性能試験）タンポンをゴムチューブ中に入れて密着させ、ゴムチューブの外側からタンポンに均一に圧力（２００ｍ／ｑ）がかかるようにし、ゴムチューブの上部より注射器を用いて人工経血を２ｃｃ、６ｃｃまたは１０ｃｃ一気に注入する。注入開始から吸収し終わるまでの時間を測定する。
【００４７】
なお、比較例として小凹部を設けていないタンポンについても同様に試験を行なった。比較例のタンポンは目付９５０ｇ／ｍ2、厚み５ｍｍ、密度０．１９ｇ／ｃｍ3の平坦な吸収層を実施例と同様に透液層で覆い、円柱状に圧縮成形したものである。
【００４８】
【表１】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のタンポンでは、タンポンを形成する吸収体の中央部へと経血が導かれやすいので、経血の吸収速度が早く、タンポンの膨張速度もはやい。また、吸収体の表面だけではなく内部までも有効に活用できる。
【００５０】
さらに、本発明のタンポンではタンポンの表面に経血が滞留しないため、使用後にタンポン表面において色残りが少なく、使用者に不快感を与えにくい。
【００５１】
また、小凹部が形成される場合、小凹部に粘性の高い経血を取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】第１の実施の形態のタンポンが円柱状に成形される前の状態を示す吸収体の斜視図
【図２】第１の実施の形態のタンポンを示す斜視図
【図３】図１のＩＩＩ―ＩＩＩ線の断面図
【図４】図３の部分拡大断面図
【図５】図２のＶ―Ｖ線の断面図
【図６】第２の実施の形態のタンポンが円柱状に成形される前の状態を示す吸収体の断面図
【図７】第２の実施の形態のタンポンを示す断面図
【図８】本発明の他の実施の形態のタンポンの製造方法を説明する斜視図
【図９】（Ａ）は本発明の他の実施の形態のタンポンの製造方法を説明する斜視図、（Ｂ）は完成された他の実施の形態のタンポンの斜視図
【図１０】本発明のさらに他の実施の形態のタンポンの製造方法を説明する斜視図
【符号の説明】
１，１Ａ，１Ｂ，１Ｃ タンポン
１ｅ 端部
２，２Ａ，２Ｂ，２Ｃ 吸収体
２ｃ 中央線
３ 小凹部
５ 紐
２０，２０Ａ 吸収層
２０ａ，２０ｂ 密度の高い部分
２１ 表面層
２２ 中心層
２６ 透液層
Claims (10)
- 吸収性繊維素材を有する吸収層と前記吸収層を覆う疎水性の透液層とからなる平坦状の吸収体が用いられ、前記平坦状の吸収体が円柱状に成形されてなる生理用タンポンにおいて、
前記平坦状の吸収体を形成している前記吸収層では、平坦な表面に開口し吸収層の内部に延びる小凹部が複数形成されており、
前記小凹部は前記吸収層の対向する２つの表面から内部に向かってほぼ垂直に形成されており、一方の表面から形成された小凹部と他方の表面から形成された小凹部との間の繊維密度が、吸収層の他の部分の繊維密度よりも高いことを特徴とする生理用タンポン。 - 前記複数の小凹部の周辺部分の繊維密度が、吸収層の他の部分の繊維密度よりも高い請求項１記載の生理用タンポン。
- 吸収性繊維素材を有する吸収層と前記吸収層を覆う疎水性の透液層とからなる平坦状の吸収体が用いられ、前記平坦状の吸収体が円柱状に成形されてなる生理用タンポンにおいて、
前記平坦状の吸収体を形成している前記吸収層は、吸収層の層表面の繊維密度よりも層中心部の繊維密度の方が高く、この吸収体を円柱状にした円柱体の内部に、繊維密度の高い前記層中心部と前記層表面とが交互に配置されていることを特徴とする生理用タンポン。 - 前記繊維密度の高い領域が、前記吸収層の層中心部で面状または線状の広がりを有する請求項３記載の生理用タンポン。
- 前記吸収層の表面に開口し吸収層の内部の繊維密度が高い領域まで延びる小凹部が複数形成されている請求項３または４に記載の生理用タンポン。
- 吸収性繊維素材を有する吸収層と前記吸収層を覆う疎水性の透液層とからなる平坦状の吸収体が用いられ、前記平坦状の吸収体が円柱状に成形されてなる生理用タンポンにおいて、
前記平坦状の吸収体を形成している前記吸収層では、吸収層の層表面の繊維の太さよりも層中心部の繊維の太さが細く、この吸収体を円柱状にした円柱体の内部に、細い繊維で形成された前記層中心部と太い繊維で形成された前記層表面とが交互に配置されていることを特徴とする生理用タンポン。 - 細い繊維で形成された領域が前記吸収層の層中心部で面状または線状の広がりを有する請求項６記載の生理用タンポン。
- 前記吸収層中心の繊維の太さの平均が０．５〜３デニールで、層表面の繊維の太さの平均が２〜６デニールである請求項６または７記載の生理用タンポン。
- 前記吸収層の表面に開口し吸収層の内部の細い繊維が存在する領域まで延びる小凹部が複数形成されている請求項６〜８のいずれかに記載の生理用タンポン。
- 平坦状の前記吸収体が、その両側縁部が互いに接近して前記吸収層が複数層に重なるように折り畳まれて円柱体が形成され、前記円柱体の外面から内部に向けて前記吸収体の表面が複数箇所で入り込んでいる請求項１ないし９のいずれかに記載の生理用タンポン。
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