JP3712440B2 - 捺染乃至印刷用表面処理剤、被印刷材および被捺染材 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、捺染乃至印刷用表面処理剤、被印刷材および被捺染材に関し、さらに詳しくは、各種の基材を処理することにより、基材の表面特性、例えば吸水性、印刷特性、捺染特性等を改良することができる捺染乃至印刷用表面処理剤、ならびに水性インクでの印刷あるいは水性染料での捺染が可能で、湿度の影響を受けて印刷ないし捺染特性が低下することのない被印刷材および被捺染材に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
ポリエステル、アクリル、ナイロン等の合成高分子は一般に疎水性であり、これらに対する水性染料や水性インクの親和性、浸透性は極めて低い。このため、例えばポリエステル製のフィルムに、インクジエットプリンター等により印刷を施そうとしても、水性インクがフィルムの表面に定着しないので、解像度良く印刷することが困難である。
【0003】
このような疎水性基材の水性インク等に対する親和性を改善する方法として、SiO2 やCaO等の微粒子を親水性のバインダー、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシ澱粉、カルボキシメチルセルロースなどに分散させたものを疎水性基材の表面に塗布する方法や、疎水性基材の表面をシランカップリング剤により処理する方法が知られている。これらの方法によると、水性インクに対する印刷性をある程度改善することができる。
【0004】
しかしながら、これらの方法による改善効果は未だ十分ではなかった。また、シランカップリング剤による改質においては、シランカップリング化合物が極めて高価であることから、疎水性基材の改質にコストがかかり、製造される印刷用フィルム等の印刷用材も必然的に高価になるという問題があった。さらに、得られた印刷用材の表面は極めて湿気に敏感になることから、フィルムの表面に素手で触れると手の湿気により指紋跡が付着したり、印刷特性を長期間保持することができないなど、取扱い上の問題があった。さらに、シランカップリング剤による処理をすると透明基材の透明性が損なわれるので、例えば水性インクによる印刷が可能ではあっても、透明性に優れたOHP用フィルムを製造することができないという問題点もあった。
【0005】
また、合成高分子の繊維布、シート等の捺染においても同様な問題があった。すなわち、合成高分子の繊維布等に水性染料を用いて捺染を施すことは困難であり、高い染色濃度で複雑な図柄を解像度良く捺染することができないという問題があった。
【0006】
捺染においては、従来、低分子のノニオンやアニオンによる浸透剤を用いて予め合成繊維布を処理することにより、前記合成繊維布に対する捺染糊の浸透性を向上させる方法が知られている。しかしながら、前記浸透剤は容易に布表面から脱落し、染料のにじみ出しが生じることから、模様のせん鋭度や解像度が著しく低下してしまうという問題があった。また、特開昭54−93176号公報には、特定の捺染助剤を添加した捺染糊を用いて捺染を行う旨が開示されている。しかしながら、この場合にも前記浸透剤を用いた方法と同様の問題があった。
【0007】
この発明はこのような事情に基づいて完成された。すなわち、この発明の目的は、前記従来における問題点を解決することにある。この発明の目的は、各種の基材を処理することにより、疎水性基材の表面特性、例えば吸水性、印刷特性、捺染特性等を改善することができる捺染乃至印刷用表面処理剤(以下において、単に「表面処理剤」と称することがある。)を提供することにある。
【0008】
さらに、この発明の目的は、インクジェットプリンター等により水性インクによる高解像度の高速印刷が可能である被印刷材(なお、以下において「印刷用材」と称することがある。)を提供することにあり、また、水性染料との親和性、印捺性、均染性、鮮鋭度等に優れ、複雑な模様の図柄の捺染にも好適に用いることができる被捺染材(なお、以下において「捺染用材」と称することがある。)を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、次の一般式(1)
【0010】
【化1】
【0011】
(ただし、R1 は水素原子またはメチル基を示し、R2 は水素原子または低級アルキル基を示す。)で表されるモノマーと、
分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能なモノマーとを繰り返し単位として、前記一般式(1)で示されるモノマーと分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能なモノマーとを、共重合組成中に50重量%以上で有する共重合体を含有してなることを特徴とする捺染乃至印刷用表面処理剤であり、
請求項2に記載の発明は、分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能な前記モノマーが、分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基および重合可能な二重結合を有するモノマーである前記請求項1に記載の捺染乃至印刷用表面処理剤であり、
請求項3に記載の発明は、分子中に少なくとも2モルのオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能な前記モノマーが、次の一般式(2)
【0012】
【化2】
【0013】
(ただし、R3 は水素原子またはメチル基を示し、R4 は水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基を示す。nは2以上の整数である。)で表わされるモノマーである前記請求項1または2に記載の捺染乃至印刷用表面処理剤であり、
請求項4に記載の発明は、分子中に少なくとも2モルのオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能な前記モノマーが、次の一般式(3)
【0014】
【化3】
【0015】
(ただし、R3 は水素原子またはメチル基を示し、R4 は水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基を示し、R5 は炭素数1〜6のアルキレン基を示す。Aは、ジイソシアネート化合物におけるNCO基間の構造を示す。mは、2以上の整数である。)で表されるモノマーのいずれかである前記請求項1に記載の捺染乃至印刷用表面処理剤であり、
請求項5に記載の発明は、分子中に少なくとも2モルのオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能な前記モノマーが、ポリオキシエチレングリコールとジイソシアネート化合物とを反応させて得られるNCO末端を有するウレタンプレポリマーと、前記一般式(1)で示されるアクリレートまたはメタクリレートとを反応させて得られるモノマーであることを特徴とする前記請求項1に記載の捺染乃至印刷用表面処理剤であり、
請求項6に記載の発明は、前記請求項1〜5のいずれかに記載の捺染乃至印刷用表面処理剤により印刷基材の表面を処理されてなる被印刷材であり、
請求項7に記載の発明は、前記請求項1〜5のいずれかに記載の捺染乃至印刷用表面処理剤により捺染基材の表面を処理されてなる被捺染材である。
【0016】
以下、これらの発明について詳細に説明する。
【0017】
(1)表面処理剤
前記一般式(1)で示されるモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等を挙げることができる。これらの中でも、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。なお、一般式(1)中、R2 としての低級アルキル基としては炭素数1〜5の低級アルキル基が好ましく、中でもメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が好ましい。一般式(1)のR2 として最も好ましいのは水素原子である。
【0018】
前記分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能なモノマーとしては、例えば分子中に2個以上のオキシアルキレン基、例えばオキシエチレン基、オキシプロピレン基等を有するモノアクリレートまたはモノメタクリレートを好適に採用することができる。これらの中でも、分子中に少なくとも2個のオキシエチレン基を有するモノアクリレートが好ましい。
【0019】
これらの分子中におけるオキシアルキレン基の存在する態様としては、2個以上のオキシアルキレン基が連続して存在する態様であっても良いし、他の構造を介在させて離れた状態で存在する態様であっても良い。また、分子中にオキシエチレン基およびオキシプロピレン基のいずれか一方を2個以上有していても良いし、オキシエチレン基およびオキシプロピレン基の両方を有し、合計のモル数が2個以上であっても良い。
【0020】
このモノマー分子中のオキシアルキレン基の数は、2個以上であれば特に制限はないが、通常2〜50個であり、好ましくは3〜30個であり、特に好ましくは3〜20個である。オキシアルキレン基の数がこの範囲内であると、低表面エネルギー性の合成高分子製の基材表面に特に優れた浸透性、親和性を付与することができ、水性インクないし水性染料による印刷性または捺染性に特に優れる。
【0021】
前記分子中に少なくとも2個のオキシエチレン基を有するモノマーの例としては、前記一般式(2)で表わされるモノアクリレートまたはモノメタクリレート、前記一般式(3)で表わされるモノアクリレートまたはモノメタクリレート等を挙げることができる。
【0022】
さらに、前記分子中に少なくとも2個のオキシエチレン基を有するモノマーとして、次の一般式(4)
【0023】
【化4】
【0024】
(ただし、R3 は水素原子またはメチル基を示し、R4 は水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基を示す。Aは、後述するジイソシアネート化合物におけるNCO基間の構造を示す。nは、2以上の整数である。)で表されるモノマーも好適に採用することができる。
【0025】
前記一般式(2)〜(4)中でR4 で表示される基の内、アルキコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等の低級アルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基が好ましい。前記一般式(2)〜(4)中でR4 で表示される基の内、フェノキシ基としては、置換基を有しないフェノキシ基であっても良いし、水酸基、低級アルキル基等の置換基を有するフェノキシ基であっても良い。
【0026】
前記一般式(3)または(4)中のnは、通常2〜30であり、好ましくは3〜25であり、特に好ましくは3〜20である。nがこのような範囲内であると、疎水性基材に特に優れた吸水性、浸透性を与えることができる。
【0027】
前記一般式(2)で示されるモノマーは、たとえばアクリル酸またはメタクリル酸と一般式H−(O−CH2 CH2 )n −R4 (ただし、R4 およびnは前記と同様の意味を表わす。)で示されるポリオキシエチレン化合物と反応させることにより得ることができる。
前記一般式(3)で示されるモノマーは、たとえばアクリル酸またはメタクリル酸と一般式H−(O−CH2 CH2 )n −R4 (ただし、R4 およびnは前記と同様の意味を表わす。)で示されるポリオキシエチレン化合物と後述するジイソシアネート化合物とを反応させて得られるNCO末端を有するウレタンプレポリマーと、たとえば前記一般式(1)で表わされるアクリレートまたはメタクリレートとを反応させることにより得ることができる。
【0028】
前記一般式(4)で示されるモノマーは、たとえばアクリル酸またはメタクリル酸と一般式H−(O−CH2 CH2 )n −R4 (ただし、R4 およびnは前記と同様の意味を表わす。)で示されるポリオキシエチレン化合物と後述するジイソシアネート化合物とを反応させて得られるNCO末端を有するウレタンプレポリマーであるイソシアネート化合物と、アクリル酸またはメタクリル酸とを反応させることにより得ることができる。
【0029】
前記ジイソシアネート化合物としては、たとえばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、ビス(2−イソシアネートエチル)カーボネート、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート等の炭素数(NCO基中の炭素を除く。以下同じ。)が2〜12の脂肪族ポリイソシアネート;たとえばイソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート等の炭素数が4〜15の脂環族ポリイソシアネート;たとえばキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート等の炭素数8〜12の芳香脂肪族ポリイソシアネート;IPDIおよびHDIの三量化物;たとえばトリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフチレンジイソシアネート等の炭素数6〜20の芳香族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0030】
前記ポリオキシエチレン化合物たとえばポリオキシエチレングリコールとジイソシアネート化合物との反応は、ウレタンプレポリマーを製造するための、それ自体従来公知の反応条件で行うことができる。
【0031】
この発明における、分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能なモノマーとして、次の一般式(5)で示されるモノマーも好適に採用することができる。
【0032】
【化5】
【0033】
(ただし、前記式中、R6 およびR7 はそれぞれ低級アルキル基であり、それらは同一であっても相違していても良く、またpは10以下の整数を表す。)
上記一般式(5)で示されるモノマーとしては、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等を挙げることができる。
【0034】
この発明においては、分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能なモノマーとして、前記一般式(2)で表されるモノマー、前記一般式(3)で表されるモノマー、および前記一般式(4)で表されるモノマーを好適例として挙げることができる。
【0035】
これら好適例として挙げられるモノマーは、化学構造が比較的自由に設計できるウレタン化合物と組み合わせることにより、モノマーの水への親和性や皮膜強度、基材への親和性を調整することができるという利点を有するので表面処理剤として有利である。
【0036】
この発明の表面処理剤が含有する共重合体は、前記一般式(1)で表わされるモノマー(以下「モノマー(A)」と称することがある。)と前記分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能なモノマー(以下「モノマー(B)」と称することがある。)とを、所望により他のモノマーを加えて反応させることにより得ることができる。
【0037】
他のモノマーが共重合成分として配合されていると、モノマー(A)およびモノマー(B)のみからなる共重合体に比べて、基材表面への親和性、皮膜の柔軟性、皮膜強度、吸水性がより改善される場合がある。
【0038】
この場合におけるモノマー(A)およびモノマー(B)の比率には、特に制限はないが、モノマー(A)とモノマー(B)との合計に対してモノマー(A)の含有量が20〜90重量%、好ましくは35〜75重量%であり、モノマー(B)の含有量が80〜10重量%、好ましくは65〜25重量%である。
【0039】
モノマー(A)とモノマー(B)との比率が前記範囲内であると、疎水性基材の表面改質効果に優れ、例えば疎水性基材の表面に水性染料、水性インクに対する十分な浸透性、親和性を付与することができる。したがって、この表面処理剤で印刷用基材を処理して得られる印刷用材の表面特性は、特に水性インクを用いた印刷に適するようになり、この表面処理剤で捺染用基材を処理して得られる捺染用材の表面特性は、特に水性染料を用いた捺染に適するようになる。
【0040】
この発明における共重合体は、前記モノマー(A)およびモノマー(B)の外に、この発明の目的を阻害しない限り、他のモノマー(C)を含有していても良い。
【0041】
前記他のモノマー(C)としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等を挙げることができる。
【0042】
共重合体中に他のモノマー(C)が共重合成分として含有されている場合には、共重合成分の含有割合は、前記モノマー(A)および前記モノマー(B)はその合計が50重量%以上、好ましくは60重量%以上であり、前記他のモノマー(C)の含有量は50重量%未満、好ましくは40重量%未満である。
【0043】
この発明の表面処理剤は、この発明の目的を達成することのできる限り、前記モノマー(A)とモノマー(B)とを有する共重合体をどのような割合で含有していても良いのであるが、前記共重合体の含有割合は少なくとも50重量%であり、好ましくは50〜95重量%であり、さらに好ましくは50〜90重量%である。前記共重合体の含有割合が、この範囲内であると、特に疎水性基材の表面特性改質効果に優れる。
【0044】
この発明においては、表面処理剤中に前記共重合体が100重量%の割合で含まれていても良い。この場合は、表面処理剤は前記モノマー(A)とモノマー(B)とを有する共重合体そのものになる。この共重合体を100重量%の割合で含有する表面処理剤は溶媒その他の添加剤を含んでいない固形状ないしペースト状物である。したがって、このウレタン樹脂を100重量%の割合で含有する表面処理剤は、保存性が良い。前記固形状ないしペースト状の表面処理剤は、適当な溶媒で適当な濃度に希釈して使用することもできる。
【0045】
この発明の表面処理剤は、前記モノマー(A)とモノマー(B)とを有する共重合体の外に、この発明の目的を阻害しない範囲で他の添加剤等を含有していても良い。
【0046】
前記添加剤としては、たとえば加水分解防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防黴剤、無機化合物の粉末などを挙げることができる。加水分解を防止するための加水分解防止剤として、たとえばカルボジイミド系スタバクゾール1、PCD(Bayer 社製)、4−t−ブチルカテコール、アゾジカルボナミッド、アゾジカルボキシリック酸エステル、脂肪酸アマイドなどを挙げることができる。酸化による劣化を防止するための酸化防止剤としては、たとえばBHT、Irganox 1010、Irganox 1076、Cyanox 1790 、Irganox 259 、DLTDP、DSTDP、Santonox R、Irganox 1035、TPP等を挙げることができる。紫外線の照射による劣化を防止するための紫外線吸収剤としては、たとえばViosorb 100 、Viosorb 130 、Viosorb 120 、Cyasorb UV-24 、Tinuvin P 、Tinuvin 320 、Tinuvin 327 、Viosorb 510 、Uvinul 400、Uvinul D-50 、Bayer 317 等を挙げることができる。黴発生を防止するための防黴剤としては、たとえばペンタクロロフェノール、ペンタクロロフェノールラウレート、銅−8−ヒドロキシキノリン、ビス(トリ−n−ブチルチン)などを挙げることができる。前記無機化合物としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、酸化マグネシウム等を挙げることができる。
【0047】
前記添加剤を配合する場合、その含有量は通常0.05〜5重量%であり、好ましくは0.2〜3重量%である。
【0048】
この表面処理剤は、作業性を向上させるために、溶媒を含有してなるのが好ましい。溶媒を含有することにより、刷毛塗り、スプレー塗布、パディング処理、バーコータによる塗布、ディッピング処理等を作業性良く行うことができる。溶媒としては、水および/または有機溶媒を使用することができる。
【0049】
溶媒として使用する水としては、たとえば蒸留水、イオン交換水、あるいはアンモニア水を挙げることができる。
【0050】
有機溶媒としては、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールを初めとする各種のアルコール類、アセトン、ケトン、メチルプロピルケトンなどの低級アルキルケトンを初めとする各種のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の単環芳香族炭化水素を初めとする芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド等のアミド系溶剤およびn−ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系溶剤等を挙げることができる。
【0051】
これらの中でも、蒸留水、イオン交換水、アンモニア水などの水、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールを初めとする各種のアルコール類、アセトン、ケトン、メチルプロピルケトンなどの低級アルキルケトンを初めとする各種のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の単環芳香族炭化水素が好ましく、特にイオン交換水、アンモニア水、メタノール、エタノール、プロパノール、ベンゼン、トルエン、およびキシレンよりなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0052】
水および水に混和する有機溶媒を水系溶媒と称するのであるが、前記モノマー(A)とモノマー(B)とを有する共重合体と水系溶媒との混合物である表面処理剤は、それを製造、保管、使用の際に火災の危険がなくて安全である。
【0053】
前記モノマー(A)とモノマー(B)とを有する共重合体と溶媒との混合物である表面処理剤は、前記モノマー(A)およびモノマー(B)の含有量、ならびに溶媒の種類等によって一概に決定することができないのであるが、エマルジョン状態または溶液状態になっている。
【0054】
エマルジョン状態の表面処理剤および水溶液状態にすることのできる水溶性の表面処理剤は、有機溶剤を使用せずに疎水性基材、例えば印刷用基材、捺染用基材等の疎水性材に塗布することができるので、作業環境を好適にすることができ、しかも取り扱いが容易になる。溶液状態の表面処理剤は、低表面エネルギー性の合成高分子製材に塗布すると、均一な塗布膜を容易に形成することができるという利点を有する。
【0055】
−表面処理剤による表面処理−
この発明の表面処理剤を用いて基材を処理する方法としては、基材の少なくとも表面に、この発明の表面処理剤に由来する皮膜あるいは薄膜を形成することができる限り特に制限はない。
【0056】
たとえば、表面処理剤に十分な流動性がある場合には、そのまま基材の表面に塗布し、流動性がない場合には、各種の溶媒で希釈して粘度を調整してから基材の表面に塗布することにより各種基材の表面処理を行うことができる。
【0057】
この場合における塗布の方法にも特に制限はなく、従来公知の方法、例えば刷毛塗り、スプレー塗り、パディング処理、バーコータによる塗布、ディッピングなどの手段を採用して行うことができる。
【0058】
また、塗布後の乾燥は、自然乾燥させても良いし、熱風、冷風を吹きつけて乾燥する方法、減圧乾燥する方法等を採用しても良い。
【0059】
この発明の表面処理剤を用いて処理する基材としては、ポリエステル、アクリル、ナイロン等の合成高分子製の疎水性基材を挙げることができる。また、疎水性基材の形状等には特に制限はなく、繊維布であっても良く、フィルム、シートであっても良い。
【0060】
−印刷用材−
この発明の印刷用材は、上記表面処理剤により印刷用基材に表面処理を行うことにより製造することができる。
【0061】
印刷用基材として、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル、アセテート樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の合成高分子製のフィルムやシート、または通常の天然パルプ由来の繊維を主成分とする中性または酸性の上質紙、中質紙、再生紙コート紙、アート紙、それ自体従来公知のフィルムまたはシート状物を特に制限なく採用することができる。
【0062】
表面処理材による処理は、上述した通り、特に制限なく塗布等により行うことができる。
【0063】
この発明の印刷用材は、その表面の水性インクに対する親和性が改善されており、水性インクや水溶性塗料を使用した印刷に好適に使用することができる。特にインクジェットプリンターによる印刷にも好適に使用することができ、高い解像度の鮮明な印刷が可能である。また、高速印刷にも適している。
【0064】
さらに、水性インクの定着性も良く、手で触れることによる色落ちや、長期間の保存による色あせも極めて少ない。
【0065】
−捺染用材−
この発明の捺染用材は、上記表面処理剤により捺染用基材に表面処理を行うことにより製造することができる。
【0066】
捺染用基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル、アセテート樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の合成高分子製の繊維布、フィルム、シートを採用することができる。
【0067】
表面処理材による処理については、上記印刷用材におけるのと同様である。
【0068】
この発明の捺染用材は、その表面の水性インクに対する親和性が改善されており、水性染料等を使用した捺染にも好適に使用することができる。すなわち、高い解像度の鮮明な捺染が可能である。また、染料の定着性も良く、手で触れることによる色落ちや、長期間の保存による色あせも極めて少ない。
【0069】
【実施例】
(1)印刷試験
(実施例1)
2−ヒドロキシエチルメタクリレート80重量部と、次式(6)
【0070】
【化6】
【0071】
で表わされる化合物20重量部とを、イソプロピルアルコール200重量部に溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を加えて、65℃で4時間反応させることにより、共重合物を含有する反応液を得た。その反応液をそのまま表面処理剤とした。
【0072】
得られた表面処理剤を、厚み70μmのポリステルフィルムに、50μのアプリケーターで塗工し、100℃で2分間乾燥させることにより、印刷用フィルムを得た。
【0073】
−外観および指紋の付着性−
この印刷用フィルムについて、その外観および指紋の付着性を次のようにして評価し、その評価結果を表1に示した。
【0074】
<印刷用フィルムの外観>
印刷前の印刷用フィルムを目視により観察し、その透明具合を判断した。
【0075】
<指紋の付着性>
印刷前の印刷用フィルムの表面処理剤塗布面に親指の腹を20秒間押し付けた後、指紋の付着状態を目視により観察し、以下の基準に従って評価した。
【0076】
○;指紋が全く残らない
△;薄く指紋跡が残る
×;指紋跡が明瞭に残る。
【0077】
−解像度、乾燥性および耐擦過性−
得られた印刷用フィルムに対し、カラージェットプリンター(エプソン社製、MACHJET COLOR、型番MJ−700V2C)によりカラー印刷を行った。印刷後の印刷用フィルムについて、その解像度、乾燥性および耐擦過性を次のようにして評価し、その評価結果を表1に示した。
【0078】
<解像度>
印刷後の印刷用フィルムの状態を目視することにより観察し、以下の基準に従って解像度の評価を行った。
【0079】
○;印字パターンに、にじみがなく、パターン間の境界線が明瞭である。
【0080】
△;印字パターンに、にじみがあり、パターン間の境界線が不明瞭である。
【0081】
×;印字パターンのはじきがある。
【0082】
<乾燥性>
印刷終了より30秒後、および印刷終了より3分間後に、印刷用フィルムの印刷面を布で拭き、インクが色落ちするか否かを調べ、以下の基準に従って乾燥性の評価を行った。
【0083】
○;30秒後には色落ちせず、乾燥性に極めて優れる
△;30秒後には色落ちするが、3分間後には色落ちがない
×;3分間後においても色落ちが著しい。
【0084】
<耐擦過性>
印刷後、5分間放置して乾燥させた後、印刷面を爪で引っ掻き、このときのインクないし表面処理剤の剥れ易さを調べることにより耐擦過性を評価した。耐擦過性の評価は以下の基準に従って行った。
【0085】
○;強く引っ掻いても殆ど剥れず、極めて耐擦過性に優れる
△;簡単には剥れないが強く引っ掻くことにより剥れが生じる
×;簡単に剥れ落ち、耐擦過性に極めて劣る。
【0086】
(実施例2)
実施例1における表面処理剤に代えて、以下の反応液を表面処理剤として用いた他は、実施例1におけるのと同様にして印刷用フィルムを作成した。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、結果を表1に示した。
【0087】
2−ヒドロキシエチルメタクリレート90重量部と、次式(7)
【0088】
【化7】
【0089】
で表わされる化合物10重量部と、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム3重量部と、ノニルフェノールのエチレンオキサイド7モル付加物2重量部と、イオン交換水150重量部とを含有するプレエマルジョン溶液を予め調製した。
【0090】
イオン交換水50重量部に、過酸化カリウム0.5重量部および酸性亜硫酸カリウム0.05重量部を加え、撹拌しながら65℃まで昇温し、これに前記プレエマルジョン溶液を滴下しながら重合反応を行わせた。滴下終了後さらに180分間重合反応を継続して得られた反応液。
【0091】
(実施例3)
実施例1における表面処理剤に代えて、以下の反応液を表面処理剤として用いた他は、実施例1におけるのと同様にして印刷用フィルムを作成した。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、結果を表1に示した。
【0092】
2−ヒドロキシエチルアクリレート95重量部と、次式(8)
【0093】
【化8】
【0094】
で表わされる化合物5重量部とを、メタノール200重量部に溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を加えて、65℃で4時間反応させて得られた反応液。
【0095】
(実施例4)
実施例1における表面処理剤に代えて、以下の反応液を表面処理剤として用いた他は、実施例1におけるのと同様にして印刷用フィルムを作成した。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、結果を表1に示した。
【0096】
2−ヒドロキシエチルアクリレート90重量部と、ブタノールのエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物にヘキサメチレンジイソシアネートを常法に従って反応させ得られたウレタンプレポリマーと2−ヒドロキシエチルアクリレートとを反応させて得られた化合物10重量部とを、メタノール200重量部に溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を加えて、65℃で4時間反応させて得られた反応液。
【0097】
(実施例5)
実施例1における表面処理剤に代えて、以下の反応液を表面処理剤として用いた他は、実施例1におけるのと同様にして印刷用フィルムを作成した。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、結果を表1に示した。
【0098】
2−ヒドロキシエチルメタクリレート85重量部と、メチルメタクリレート5重量部と、前記一般式(7)で表わされる化合物5重量部と、前記式(8)で表される化合物5重量部とを、メタノール200重量部に溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3重量を加えて、65℃で4時間反応させて得られた反応液。
【0099】
(実施例6)
実施例1における表面処理剤に代えて、以下の反応液を表面処理剤として用いた他は、実施例1におけるのと同様にして印刷用フィルムを作成した。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、結果を表1に示した。
【0100】
2−ヒドロキシエチルアクリレート85重量部と、メチルアクリレート5重量部と、ブタノールのエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物にヘキサメチレンジイソシアネートを常法に従って反応させて得られたウレタンプレポリマーと2−ヒドロキシエチルアクリレートとをウレタン反応により反応させて得られた化合物10重量部とを、メタノール200重量部に溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を加えて、65℃で4時間反応させて得られた反応液。
【0101】
(実施例7)
実施例1における表面処理剤に代えて、以下の希釈反応液を表面処理剤として用いた他は、実施例1におけるのと同様にして印刷用フィルムを作成した。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、結果を表1に示した。
【0102】
2−ヒドロキシエチルメタクリレート85重量部と、ブチルアクリレート5重量部と、ブチルメタクリレート5重量部と、前記式(7)で表わされる化合物5重量部と、前記式(8)で表される化合物5重量部とを、メタノール100重量部に溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を加え、これを65℃で4時間反応させて得らえるところの、共重合体を含有する反応液に、前記式(8)で表される化合物の添加量と同モル量のアンモニア水を添加し、さらに水100重量部を加えて希釈して得た希釈反応液。
【0103】
(比較例1)
実施例1における表面処理剤に代えて、以下の反応液を表面処理剤として用いた他は、実施例1におけるのと同様にして印刷用フィルムを作成した。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、結果を表1に示した。
【0104】
メチルメタクリレート100重量部を酢酸エチル200重量部に溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を加えて、65℃で4時間反応させて得られた反応液。
【0105】
(比較例2)
実施例1における表面処理剤に代えて、以下の反応液を表面処理剤として用いた他は、実施例1におけるのと同様にして印刷用フィルムを作成した。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、結果を表1に示した。
【0106】
2−ヒドロキシエチルメタクリレート100重量部を、メタノール200重量部に溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を加えて、65℃で4時間反応させて得られた反応液。
【0107】
(比較例3)
ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製、PVA−117)の10%水溶液10重量部と、平均粒子径が約10μmである多孔質のシリカビーズを20%含有するスラリー10重量部とを混合して表面処理剤を調整した。
【0108】
この表面処理剤を、実施例1において使用したものと同一種類の厚み70μmのポリステルフィルムに、50μのアプリケーターで塗工し、100℃で3分間乾燥させることにより、印刷用フィルムを得た。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、評価結果を表1に示した。
【0109】
(比較例4)
ポリアクリル酸(分子量5万)の30%水溶液70重量部と、ポリオキシレンオキサイド(分子量1万)30重量部とを混合して得られた表面処理剤を用いる他は比較例3と同様にして印刷用フィルムを製造し、その印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価した。その結果を表1に示した。
【0110】
【表1】
【0111】
上記実施例および比較例の結果から、この発明の表面処理剤によると、被処理物の透明性を損なうことなく表面の改質を行うことができることが分かる。また、この発明の表面処理剤により処理されてなる印刷用材は、水性インクに対する親和性が向上していることが分かる。したがって、この発明に係る印刷用材の表面に水性インキで印刷あるいは印字を行うと、水性インキののりが良くて良好な印刷状態もしくは良好な印字状態が得られる。また、シランカップリング剤を含有する表面処理剤により処理した場合のように処理面に触れても指紋が付着することがなく、取扱い性にも優れる。さらに、この発明の表面処理剤により処理されてなる印刷用材は、耐擦過性にも極めて優れ、良好な表面特性を有することが分かる。
【0112】
(2)捺染試験
−捺染用布の製造−
前記実施例1〜7、比較例1または比較例2における反応液または反応希釈液をそれぞれ10g/リットル含有してなる捺染前処理剤1a〜7a,8a,9a、および20g/リットル含有してなる捺染前処理剤1b〜7b,8b,9bを、ポリエステル製布の表面に次の条件にて[1dip、1nip、80%絞り、100℃で2分間乾燥、160℃で2分間熱固定]、塗布し、乾燥することによりポリエステル製捺染用布を得た。また、同様にしてナイロン製捺染布を得た。
【0113】
なお、表2において、捺染用布の種類として、aは前記捺染前処理剤1a〜9aによって処理したポリエステル製捺染布およびナイロン製捺染布を意味し、bは前記捺染前処理剤1b〜9bによって処理したポリエステル製捺染布およびナイロン製捺染布を意味している。
【0114】
また、比較例3は、捺染前処理剤を使用しなかった外はこの捺染試験における実施例1と同様にして行ったものである。
【0115】
−捺染糊の調製−
以下の組成を有する4種類の捺染糊A〜Dを調製した。
【0116】
[捺染糊A]
ファインガムHES(5%水溶液、第一工業製薬(株)製)を70%およ
びソルビトーゼC−5(5%水溶液、松谷化学工業(株)製)を30%含
有する溶液・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50部
染料Sumikaron Blue S-BG (住友化学工業(株)製)・・・・3部
尿素・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10部
酒石酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.3部
濃染剤(IPサーモスP-26、一方社油脂工業(株))・・・・・・・2部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34.7部
[捺染糊B]
ダックアルギンNSP−H
(5%水溶液、(株)紀文フードケミファ製)・・・・・50部
染料Dianix Navy Blue ER-Fs conc
(三菱化成ヘキスト(株)製)・・・・・・・・・・・・・3部
尿素・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10部
酒石酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.3部
濃染剤(IPサーモスP-26、一方社油脂工業(株))・・・・・・・2部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34.7部
[捺染糊C]
ファインガムHMT
(5%水溶液、第一工業製薬(株)製)・・・・・・・・50部
染料Dianix Red A2B-Fs conc
(三菱化成ヘキスト(株)製)・・・・・・・・・・・・・3部
尿素・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10部
酒石酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.3部
濃染剤(IPサーモスP-26、一方社油脂工業(株))・・・・・・・2部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34.7部
[捺染糊D]
ダックアルギンNSPH(5%水溶液、(株)紀文フードケミファ製)を
70%およびインダルカAGBV(5%水溶液、Cesalpina 社製)を30
%含有する溶液・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50部
染料Sumikaron Cyanine GR(住友化学工業(株)製)・・・・3部
尿素・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5部
ゾルバー56(染料溶解剤、一方社油脂工業(株)製)・・・5部
硫酸アンモニウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35部
−捺染布の製造−
上記捺染糊A〜Cを上記ポリエステル製捺染用布に、120メッシュの紗にて印捺し、120℃で90秒乾燥し、170℃で7分間蒸熱した。その後、次の水洗条件[浴比1:20、トライポンP−60を2g/リットル、ハイドロサルファイトを2g/リトッル、および水酸化ナトリウムを2g/リットルを80℃で20分処理した後]にて水洗し、乾燥することによりポリエステル製捺染布を製造した。
【0117】
また、上記捺染糊Dを上記ナイロン製捺染用布に、120メッシュの紗にて印捺し、120℃で90秒乾燥し、100℃で30分間蒸熱した。その後、次の水洗条件[浴比1:20、ビスノールRKの2g/リットルを60℃で20分処理した後]にて水洗し、乾燥することによりナイロン製捺染布を製造した。
【0118】
得られたポリエステル製捺染布およびナイロン製捺染布につき、以下の項目に関して評価を行った。その結果を表1に示した。
【0119】
<染着性>
捺染前処理剤で処理していないポリエステル製布に前記捺染糊A〜Cを用いて捺染したもの、および捺染前処理剤で処理していないナイロン製布に前記捺染糊Dを用いて捺染したものを基準布とした。これらの内、各実施例における捺染布と同じ素材で同じ捺染糊で捺染した基準布の染着性を100%とし、これに対する各実施例における捺染布の染着性を百分率で示した。たとえば、実施例の捺染布の染着性が110%である場合は基準布よりも10%染色濃度が高く染着性が向上していることを意味する。
【0120】
<浸透性>
各実施例における捺染布を目視により観察し、以下の基準にて染料の浸透性を評価した。
【0121】
◎;染色むらが無く、裏面の染色濃度が高い状態、
○;捺染面の染色むらは無いが、裏面の染色濃度が低い状態、
△;捺染面にわずかに染色むらがある状態、
×;捺染面に染色むらがある状態。
【0122】
<シャープ性>
シャープ性判定用のパターンを用いて捺染した各実施例における捺染布を目視により観察し、以下の基準にて評価した。すなわち、捺染前処理剤で処理していないポリエステル製布にシャープ性判定用のパターンおよび前記捺染糊A〜Cを用いて捺染したもの、および捺染前処理剤で処理していないナイロン製布にシャープ性判定用のパターンおよび前記捺染糊Dを用いて捺染したもの基準布とした。これらの内、各実施例における捺染布と同じ素材で同じ捺染糊で捺染した基準布のシャープ性を基準にして、各実施例における捺染布のシャープ性を以下の基準にて相対的に評価した。
【0123】
○;基準布のシャープ性よりも優れたシャープ性である、
△;基準布のシャープ性と同等のシャープ性である、
×;基準布のシャープ性よりもシャープ性が劣る、
××;基準布のシャープ性よりも著しくシャープ性が劣る。
【0124】
【表2】
【0125】
上記捺染試験の結果から、この発明の表面処理剤により処理してなる捺染用材に水性染料を用いて捺染を行うと、水性染料ののりが良くて良好な捺染状態が得られる。この発明の捺染用材は、その表面特性である水性染料との親和性、浸透性が洗濯等によっても容易に低下しない。また、この発明の捺染物は、水性染料のにじみ出しや、いわゆる「目むき」現象を生じることがなく、高い鮮鋭度で捺染された複雑な図柄を安定に保持することができることがわかる。
【0126】
【発明の効果】
この発明によると、基材特に合成高分子製等の疎水性基材の表面に良好な吸水性、水性インキや水性染料に対する良好な親和性を付与することのできる表面処理剤を提供することができる。
【0127】
この発明によると、吸水性および印刷適性あるいは捺染適性に優れた印刷用剤および捺染溶剤を提供することができる。
【0128】
さらに、この発明の表面処理剤は、疎水性基材の表面の吸水性を向上させることから、樹脂成形体やガラス、鏡面等に防曇製を付与することも可能である。
【産業上の利用分野】
この発明は、捺染乃至印刷用表面処理剤、被印刷材および被捺染材に関し、さらに詳しくは、各種の基材を処理することにより、基材の表面特性、例えば吸水性、印刷特性、捺染特性等を改良することができる捺染乃至印刷用表面処理剤、ならびに水性インクでの印刷あるいは水性染料での捺染が可能で、湿度の影響を受けて印刷ないし捺染特性が低下することのない被印刷材および被捺染材に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
ポリエステル、アクリル、ナイロン等の合成高分子は一般に疎水性であり、これらに対する水性染料や水性インクの親和性、浸透性は極めて低い。このため、例えばポリエステル製のフィルムに、インクジエットプリンター等により印刷を施そうとしても、水性インクがフィルムの表面に定着しないので、解像度良く印刷することが困難である。
【0003】
このような疎水性基材の水性インク等に対する親和性を改善する方法として、SiO2 やCaO等の微粒子を親水性のバインダー、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシ澱粉、カルボキシメチルセルロースなどに分散させたものを疎水性基材の表面に塗布する方法や、疎水性基材の表面をシランカップリング剤により処理する方法が知られている。これらの方法によると、水性インクに対する印刷性をある程度改善することができる。
【0004】
しかしながら、これらの方法による改善効果は未だ十分ではなかった。また、シランカップリング剤による改質においては、シランカップリング化合物が極めて高価であることから、疎水性基材の改質にコストがかかり、製造される印刷用フィルム等の印刷用材も必然的に高価になるという問題があった。さらに、得られた印刷用材の表面は極めて湿気に敏感になることから、フィルムの表面に素手で触れると手の湿気により指紋跡が付着したり、印刷特性を長期間保持することができないなど、取扱い上の問題があった。さらに、シランカップリング剤による処理をすると透明基材の透明性が損なわれるので、例えば水性インクによる印刷が可能ではあっても、透明性に優れたOHP用フィルムを製造することができないという問題点もあった。
【0005】
また、合成高分子の繊維布、シート等の捺染においても同様な問題があった。すなわち、合成高分子の繊維布等に水性染料を用いて捺染を施すことは困難であり、高い染色濃度で複雑な図柄を解像度良く捺染することができないという問題があった。
【0006】
捺染においては、従来、低分子のノニオンやアニオンによる浸透剤を用いて予め合成繊維布を処理することにより、前記合成繊維布に対する捺染糊の浸透性を向上させる方法が知られている。しかしながら、前記浸透剤は容易に布表面から脱落し、染料のにじみ出しが生じることから、模様のせん鋭度や解像度が著しく低下してしまうという問題があった。また、特開昭54−93176号公報には、特定の捺染助剤を添加した捺染糊を用いて捺染を行う旨が開示されている。しかしながら、この場合にも前記浸透剤を用いた方法と同様の問題があった。
【0007】
この発明はこのような事情に基づいて完成された。すなわち、この発明の目的は、前記従来における問題点を解決することにある。この発明の目的は、各種の基材を処理することにより、疎水性基材の表面特性、例えば吸水性、印刷特性、捺染特性等を改善することができる捺染乃至印刷用表面処理剤(以下において、単に「表面処理剤」と称することがある。)を提供することにある。
【0008】
さらに、この発明の目的は、インクジェットプリンター等により水性インクによる高解像度の高速印刷が可能である被印刷材(なお、以下において「印刷用材」と称することがある。)を提供することにあり、また、水性染料との親和性、印捺性、均染性、鮮鋭度等に優れ、複雑な模様の図柄の捺染にも好適に用いることができる被捺染材(なお、以下において「捺染用材」と称することがある。)を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、次の一般式(1)
【0010】
【化1】
【0011】
(ただし、R1 は水素原子またはメチル基を示し、R2 は水素原子または低級アルキル基を示す。)で表されるモノマーと、
分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能なモノマーとを繰り返し単位として、前記一般式(1)で示されるモノマーと分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能なモノマーとを、共重合組成中に50重量%以上で有する共重合体を含有してなることを特徴とする捺染乃至印刷用表面処理剤であり、
請求項2に記載の発明は、分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能な前記モノマーが、分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基および重合可能な二重結合を有するモノマーである前記請求項1に記載の捺染乃至印刷用表面処理剤であり、
請求項3に記載の発明は、分子中に少なくとも2モルのオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能な前記モノマーが、次の一般式(2)
【0012】
【化2】
【0013】
(ただし、R3 は水素原子またはメチル基を示し、R4 は水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基を示す。nは2以上の整数である。)で表わされるモノマーである前記請求項1または2に記載の捺染乃至印刷用表面処理剤であり、
請求項4に記載の発明は、分子中に少なくとも2モルのオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能な前記モノマーが、次の一般式(3)
【0014】
【化3】
【0015】
(ただし、R3 は水素原子またはメチル基を示し、R4 は水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基を示し、R5 は炭素数1〜6のアルキレン基を示す。Aは、ジイソシアネート化合物におけるNCO基間の構造を示す。mは、2以上の整数である。)で表されるモノマーのいずれかである前記請求項1に記載の捺染乃至印刷用表面処理剤であり、
請求項5に記載の発明は、分子中に少なくとも2モルのオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能な前記モノマーが、ポリオキシエチレングリコールとジイソシアネート化合物とを反応させて得られるNCO末端を有するウレタンプレポリマーと、前記一般式(1)で示されるアクリレートまたはメタクリレートとを反応させて得られるモノマーであることを特徴とする前記請求項1に記載の捺染乃至印刷用表面処理剤であり、
請求項6に記載の発明は、前記請求項1〜5のいずれかに記載の捺染乃至印刷用表面処理剤により印刷基材の表面を処理されてなる被印刷材であり、
請求項7に記載の発明は、前記請求項1〜5のいずれかに記載の捺染乃至印刷用表面処理剤により捺染基材の表面を処理されてなる被捺染材である。
【0016】
以下、これらの発明について詳細に説明する。
【0017】
(1)表面処理剤
前記一般式(1)で示されるモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等を挙げることができる。これらの中でも、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。なお、一般式(1)中、R2 としての低級アルキル基としては炭素数1〜5の低級アルキル基が好ましく、中でもメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が好ましい。一般式(1)のR2 として最も好ましいのは水素原子である。
【0018】
前記分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能なモノマーとしては、例えば分子中に2個以上のオキシアルキレン基、例えばオキシエチレン基、オキシプロピレン基等を有するモノアクリレートまたはモノメタクリレートを好適に採用することができる。これらの中でも、分子中に少なくとも2個のオキシエチレン基を有するモノアクリレートが好ましい。
【0019】
これらの分子中におけるオキシアルキレン基の存在する態様としては、2個以上のオキシアルキレン基が連続して存在する態様であっても良いし、他の構造を介在させて離れた状態で存在する態様であっても良い。また、分子中にオキシエチレン基およびオキシプロピレン基のいずれか一方を2個以上有していても良いし、オキシエチレン基およびオキシプロピレン基の両方を有し、合計のモル数が2個以上であっても良い。
【0020】
このモノマー分子中のオキシアルキレン基の数は、2個以上であれば特に制限はないが、通常2〜50個であり、好ましくは3〜30個であり、特に好ましくは3〜20個である。オキシアルキレン基の数がこの範囲内であると、低表面エネルギー性の合成高分子製の基材表面に特に優れた浸透性、親和性を付与することができ、水性インクないし水性染料による印刷性または捺染性に特に優れる。
【0021】
前記分子中に少なくとも2個のオキシエチレン基を有するモノマーの例としては、前記一般式(2)で表わされるモノアクリレートまたはモノメタクリレート、前記一般式(3)で表わされるモノアクリレートまたはモノメタクリレート等を挙げることができる。
【0022】
さらに、前記分子中に少なくとも2個のオキシエチレン基を有するモノマーとして、次の一般式(4)
【0023】
【化4】
【0024】
(ただし、R3 は水素原子またはメチル基を示し、R4 は水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基を示す。Aは、後述するジイソシアネート化合物におけるNCO基間の構造を示す。nは、2以上の整数である。)で表されるモノマーも好適に採用することができる。
【0025】
前記一般式(2)〜(4)中でR4 で表示される基の内、アルキコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等の低級アルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基が好ましい。前記一般式(2)〜(4)中でR4 で表示される基の内、フェノキシ基としては、置換基を有しないフェノキシ基であっても良いし、水酸基、低級アルキル基等の置換基を有するフェノキシ基であっても良い。
【0026】
前記一般式(3)または(4)中のnは、通常2〜30であり、好ましくは3〜25であり、特に好ましくは3〜20である。nがこのような範囲内であると、疎水性基材に特に優れた吸水性、浸透性を与えることができる。
【0027】
前記一般式(2)で示されるモノマーは、たとえばアクリル酸またはメタクリル酸と一般式H−(O−CH2 CH2 )n −R4 (ただし、R4 およびnは前記と同様の意味を表わす。)で示されるポリオキシエチレン化合物と反応させることにより得ることができる。
前記一般式(3)で示されるモノマーは、たとえばアクリル酸またはメタクリル酸と一般式H−(O−CH2 CH2 )n −R4 (ただし、R4 およびnは前記と同様の意味を表わす。)で示されるポリオキシエチレン化合物と後述するジイソシアネート化合物とを反応させて得られるNCO末端を有するウレタンプレポリマーと、たとえば前記一般式(1)で表わされるアクリレートまたはメタクリレートとを反応させることにより得ることができる。
【0028】
前記一般式(4)で示されるモノマーは、たとえばアクリル酸またはメタクリル酸と一般式H−(O−CH2 CH2 )n −R4 (ただし、R4 およびnは前記と同様の意味を表わす。)で示されるポリオキシエチレン化合物と後述するジイソシアネート化合物とを反応させて得られるNCO末端を有するウレタンプレポリマーであるイソシアネート化合物と、アクリル酸またはメタクリル酸とを反応させることにより得ることができる。
【0029】
前記ジイソシアネート化合物としては、たとえばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、ビス(2−イソシアネートエチル)カーボネート、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート等の炭素数(NCO基中の炭素を除く。以下同じ。)が2〜12の脂肪族ポリイソシアネート;たとえばイソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート等の炭素数が4〜15の脂環族ポリイソシアネート;たとえばキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート等の炭素数8〜12の芳香脂肪族ポリイソシアネート;IPDIおよびHDIの三量化物;たとえばトリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフチレンジイソシアネート等の炭素数6〜20の芳香族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0030】
前記ポリオキシエチレン化合物たとえばポリオキシエチレングリコールとジイソシアネート化合物との反応は、ウレタンプレポリマーを製造するための、それ自体従来公知の反応条件で行うことができる。
【0031】
この発明における、分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能なモノマーとして、次の一般式(5)で示されるモノマーも好適に採用することができる。
【0032】
【化5】
【0033】
(ただし、前記式中、R6 およびR7 はそれぞれ低級アルキル基であり、それらは同一であっても相違していても良く、またpは10以下の整数を表す。)
上記一般式(5)で示されるモノマーとしては、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等を挙げることができる。
【0034】
この発明においては、分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能なモノマーとして、前記一般式(2)で表されるモノマー、前記一般式(3)で表されるモノマー、および前記一般式(4)で表されるモノマーを好適例として挙げることができる。
【0035】
これら好適例として挙げられるモノマーは、化学構造が比較的自由に設計できるウレタン化合物と組み合わせることにより、モノマーの水への親和性や皮膜強度、基材への親和性を調整することができるという利点を有するので表面処理剤として有利である。
【0036】
この発明の表面処理剤が含有する共重合体は、前記一般式(1)で表わされるモノマー(以下「モノマー(A)」と称することがある。)と前記分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能なモノマー(以下「モノマー(B)」と称することがある。)とを、所望により他のモノマーを加えて反応させることにより得ることができる。
【0037】
他のモノマーが共重合成分として配合されていると、モノマー(A)およびモノマー(B)のみからなる共重合体に比べて、基材表面への親和性、皮膜の柔軟性、皮膜強度、吸水性がより改善される場合がある。
【0038】
この場合におけるモノマー(A)およびモノマー(B)の比率には、特に制限はないが、モノマー(A)とモノマー(B)との合計に対してモノマー(A)の含有量が20〜90重量%、好ましくは35〜75重量%であり、モノマー(B)の含有量が80〜10重量%、好ましくは65〜25重量%である。
【0039】
モノマー(A)とモノマー(B)との比率が前記範囲内であると、疎水性基材の表面改質効果に優れ、例えば疎水性基材の表面に水性染料、水性インクに対する十分な浸透性、親和性を付与することができる。したがって、この表面処理剤で印刷用基材を処理して得られる印刷用材の表面特性は、特に水性インクを用いた印刷に適するようになり、この表面処理剤で捺染用基材を処理して得られる捺染用材の表面特性は、特に水性染料を用いた捺染に適するようになる。
【0040】
この発明における共重合体は、前記モノマー(A)およびモノマー(B)の外に、この発明の目的を阻害しない限り、他のモノマー(C)を含有していても良い。
【0041】
前記他のモノマー(C)としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等を挙げることができる。
【0042】
共重合体中に他のモノマー(C)が共重合成分として含有されている場合には、共重合成分の含有割合は、前記モノマー(A)および前記モノマー(B)はその合計が50重量%以上、好ましくは60重量%以上であり、前記他のモノマー(C)の含有量は50重量%未満、好ましくは40重量%未満である。
【0043】
この発明の表面処理剤は、この発明の目的を達成することのできる限り、前記モノマー(A)とモノマー(B)とを有する共重合体をどのような割合で含有していても良いのであるが、前記共重合体の含有割合は少なくとも50重量%であり、好ましくは50〜95重量%であり、さらに好ましくは50〜90重量%である。前記共重合体の含有割合が、この範囲内であると、特に疎水性基材の表面特性改質効果に優れる。
【0044】
この発明においては、表面処理剤中に前記共重合体が100重量%の割合で含まれていても良い。この場合は、表面処理剤は前記モノマー(A)とモノマー(B)とを有する共重合体そのものになる。この共重合体を100重量%の割合で含有する表面処理剤は溶媒その他の添加剤を含んでいない固形状ないしペースト状物である。したがって、このウレタン樹脂を100重量%の割合で含有する表面処理剤は、保存性が良い。前記固形状ないしペースト状の表面処理剤は、適当な溶媒で適当な濃度に希釈して使用することもできる。
【0045】
この発明の表面処理剤は、前記モノマー(A)とモノマー(B)とを有する共重合体の外に、この発明の目的を阻害しない範囲で他の添加剤等を含有していても良い。
【0046】
前記添加剤としては、たとえば加水分解防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防黴剤、無機化合物の粉末などを挙げることができる。加水分解を防止するための加水分解防止剤として、たとえばカルボジイミド系スタバクゾール1、PCD(Bayer 社製)、4−t−ブチルカテコール、アゾジカルボナミッド、アゾジカルボキシリック酸エステル、脂肪酸アマイドなどを挙げることができる。酸化による劣化を防止するための酸化防止剤としては、たとえばBHT、Irganox 1010、Irganox 1076、Cyanox 1790 、Irganox 259 、DLTDP、DSTDP、Santonox R、Irganox 1035、TPP等を挙げることができる。紫外線の照射による劣化を防止するための紫外線吸収剤としては、たとえばViosorb 100 、Viosorb 130 、Viosorb 120 、Cyasorb UV-24 、Tinuvin P 、Tinuvin 320 、Tinuvin 327 、Viosorb 510 、Uvinul 400、Uvinul D-50 、Bayer 317 等を挙げることができる。黴発生を防止するための防黴剤としては、たとえばペンタクロロフェノール、ペンタクロロフェノールラウレート、銅−8−ヒドロキシキノリン、ビス(トリ−n−ブチルチン)などを挙げることができる。前記無機化合物としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、酸化マグネシウム等を挙げることができる。
【0047】
前記添加剤を配合する場合、その含有量は通常0.05〜5重量%であり、好ましくは0.2〜3重量%である。
【0048】
この表面処理剤は、作業性を向上させるために、溶媒を含有してなるのが好ましい。溶媒を含有することにより、刷毛塗り、スプレー塗布、パディング処理、バーコータによる塗布、ディッピング処理等を作業性良く行うことができる。溶媒としては、水および/または有機溶媒を使用することができる。
【0049】
溶媒として使用する水としては、たとえば蒸留水、イオン交換水、あるいはアンモニア水を挙げることができる。
【0050】
有機溶媒としては、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールを初めとする各種のアルコール類、アセトン、ケトン、メチルプロピルケトンなどの低級アルキルケトンを初めとする各種のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の単環芳香族炭化水素を初めとする芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド等のアミド系溶剤およびn−ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系溶剤等を挙げることができる。
【0051】
これらの中でも、蒸留水、イオン交換水、アンモニア水などの水、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールを初めとする各種のアルコール類、アセトン、ケトン、メチルプロピルケトンなどの低級アルキルケトンを初めとする各種のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の単環芳香族炭化水素が好ましく、特にイオン交換水、アンモニア水、メタノール、エタノール、プロパノール、ベンゼン、トルエン、およびキシレンよりなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0052】
水および水に混和する有機溶媒を水系溶媒と称するのであるが、前記モノマー(A)とモノマー(B)とを有する共重合体と水系溶媒との混合物である表面処理剤は、それを製造、保管、使用の際に火災の危険がなくて安全である。
【0053】
前記モノマー(A)とモノマー(B)とを有する共重合体と溶媒との混合物である表面処理剤は、前記モノマー(A)およびモノマー(B)の含有量、ならびに溶媒の種類等によって一概に決定することができないのであるが、エマルジョン状態または溶液状態になっている。
【0054】
エマルジョン状態の表面処理剤および水溶液状態にすることのできる水溶性の表面処理剤は、有機溶剤を使用せずに疎水性基材、例えば印刷用基材、捺染用基材等の疎水性材に塗布することができるので、作業環境を好適にすることができ、しかも取り扱いが容易になる。溶液状態の表面処理剤は、低表面エネルギー性の合成高分子製材に塗布すると、均一な塗布膜を容易に形成することができるという利点を有する。
【0055】
−表面処理剤による表面処理−
この発明の表面処理剤を用いて基材を処理する方法としては、基材の少なくとも表面に、この発明の表面処理剤に由来する皮膜あるいは薄膜を形成することができる限り特に制限はない。
【0056】
たとえば、表面処理剤に十分な流動性がある場合には、そのまま基材の表面に塗布し、流動性がない場合には、各種の溶媒で希釈して粘度を調整してから基材の表面に塗布することにより各種基材の表面処理を行うことができる。
【0057】
この場合における塗布の方法にも特に制限はなく、従来公知の方法、例えば刷毛塗り、スプレー塗り、パディング処理、バーコータによる塗布、ディッピングなどの手段を採用して行うことができる。
【0058】
また、塗布後の乾燥は、自然乾燥させても良いし、熱風、冷風を吹きつけて乾燥する方法、減圧乾燥する方法等を採用しても良い。
【0059】
この発明の表面処理剤を用いて処理する基材としては、ポリエステル、アクリル、ナイロン等の合成高分子製の疎水性基材を挙げることができる。また、疎水性基材の形状等には特に制限はなく、繊維布であっても良く、フィルム、シートであっても良い。
【0060】
−印刷用材−
この発明の印刷用材は、上記表面処理剤により印刷用基材に表面処理を行うことにより製造することができる。
【0061】
印刷用基材として、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル、アセテート樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の合成高分子製のフィルムやシート、または通常の天然パルプ由来の繊維を主成分とする中性または酸性の上質紙、中質紙、再生紙コート紙、アート紙、それ自体従来公知のフィルムまたはシート状物を特に制限なく採用することができる。
【0062】
表面処理材による処理は、上述した通り、特に制限なく塗布等により行うことができる。
【0063】
この発明の印刷用材は、その表面の水性インクに対する親和性が改善されており、水性インクや水溶性塗料を使用した印刷に好適に使用することができる。特にインクジェットプリンターによる印刷にも好適に使用することができ、高い解像度の鮮明な印刷が可能である。また、高速印刷にも適している。
【0064】
さらに、水性インクの定着性も良く、手で触れることによる色落ちや、長期間の保存による色あせも極めて少ない。
【0065】
−捺染用材−
この発明の捺染用材は、上記表面処理剤により捺染用基材に表面処理を行うことにより製造することができる。
【0066】
捺染用基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル、アセテート樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の合成高分子製の繊維布、フィルム、シートを採用することができる。
【0067】
表面処理材による処理については、上記印刷用材におけるのと同様である。
【0068】
この発明の捺染用材は、その表面の水性インクに対する親和性が改善されており、水性染料等を使用した捺染にも好適に使用することができる。すなわち、高い解像度の鮮明な捺染が可能である。また、染料の定着性も良く、手で触れることによる色落ちや、長期間の保存による色あせも極めて少ない。
【0069】
【実施例】
(1)印刷試験
(実施例1)
2−ヒドロキシエチルメタクリレート80重量部と、次式(6)
【0070】
【化6】
【0071】
で表わされる化合物20重量部とを、イソプロピルアルコール200重量部に溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を加えて、65℃で4時間反応させることにより、共重合物を含有する反応液を得た。その反応液をそのまま表面処理剤とした。
【0072】
得られた表面処理剤を、厚み70μmのポリステルフィルムに、50μのアプリケーターで塗工し、100℃で2分間乾燥させることにより、印刷用フィルムを得た。
【0073】
−外観および指紋の付着性−
この印刷用フィルムについて、その外観および指紋の付着性を次のようにして評価し、その評価結果を表1に示した。
【0074】
<印刷用フィルムの外観>
印刷前の印刷用フィルムを目視により観察し、その透明具合を判断した。
【0075】
<指紋の付着性>
印刷前の印刷用フィルムの表面処理剤塗布面に親指の腹を20秒間押し付けた後、指紋の付着状態を目視により観察し、以下の基準に従って評価した。
【0076】
○;指紋が全く残らない
△;薄く指紋跡が残る
×;指紋跡が明瞭に残る。
【0077】
−解像度、乾燥性および耐擦過性−
得られた印刷用フィルムに対し、カラージェットプリンター(エプソン社製、MACHJET COLOR、型番MJ−700V2C)によりカラー印刷を行った。印刷後の印刷用フィルムについて、その解像度、乾燥性および耐擦過性を次のようにして評価し、その評価結果を表1に示した。
【0078】
<解像度>
印刷後の印刷用フィルムの状態を目視することにより観察し、以下の基準に従って解像度の評価を行った。
【0079】
○;印字パターンに、にじみがなく、パターン間の境界線が明瞭である。
【0080】
△;印字パターンに、にじみがあり、パターン間の境界線が不明瞭である。
【0081】
×;印字パターンのはじきがある。
【0082】
<乾燥性>
印刷終了より30秒後、および印刷終了より3分間後に、印刷用フィルムの印刷面を布で拭き、インクが色落ちするか否かを調べ、以下の基準に従って乾燥性の評価を行った。
【0083】
○;30秒後には色落ちせず、乾燥性に極めて優れる
△;30秒後には色落ちするが、3分間後には色落ちがない
×;3分間後においても色落ちが著しい。
【0084】
<耐擦過性>
印刷後、5分間放置して乾燥させた後、印刷面を爪で引っ掻き、このときのインクないし表面処理剤の剥れ易さを調べることにより耐擦過性を評価した。耐擦過性の評価は以下の基準に従って行った。
【0085】
○;強く引っ掻いても殆ど剥れず、極めて耐擦過性に優れる
△;簡単には剥れないが強く引っ掻くことにより剥れが生じる
×;簡単に剥れ落ち、耐擦過性に極めて劣る。
【0086】
(実施例2)
実施例1における表面処理剤に代えて、以下の反応液を表面処理剤として用いた他は、実施例1におけるのと同様にして印刷用フィルムを作成した。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、結果を表1に示した。
【0087】
2−ヒドロキシエチルメタクリレート90重量部と、次式(7)
【0088】
【化7】
【0089】
で表わされる化合物10重量部と、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム3重量部と、ノニルフェノールのエチレンオキサイド7モル付加物2重量部と、イオン交換水150重量部とを含有するプレエマルジョン溶液を予め調製した。
【0090】
イオン交換水50重量部に、過酸化カリウム0.5重量部および酸性亜硫酸カリウム0.05重量部を加え、撹拌しながら65℃まで昇温し、これに前記プレエマルジョン溶液を滴下しながら重合反応を行わせた。滴下終了後さらに180分間重合反応を継続して得られた反応液。
【0091】
(実施例3)
実施例1における表面処理剤に代えて、以下の反応液を表面処理剤として用いた他は、実施例1におけるのと同様にして印刷用フィルムを作成した。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、結果を表1に示した。
【0092】
2−ヒドロキシエチルアクリレート95重量部と、次式(8)
【0093】
【化8】
【0094】
で表わされる化合物5重量部とを、メタノール200重量部に溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を加えて、65℃で4時間反応させて得られた反応液。
【0095】
(実施例4)
実施例1における表面処理剤に代えて、以下の反応液を表面処理剤として用いた他は、実施例1におけるのと同様にして印刷用フィルムを作成した。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、結果を表1に示した。
【0096】
2−ヒドロキシエチルアクリレート90重量部と、ブタノールのエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物にヘキサメチレンジイソシアネートを常法に従って反応させ得られたウレタンプレポリマーと2−ヒドロキシエチルアクリレートとを反応させて得られた化合物10重量部とを、メタノール200重量部に溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を加えて、65℃で4時間反応させて得られた反応液。
【0097】
(実施例5)
実施例1における表面処理剤に代えて、以下の反応液を表面処理剤として用いた他は、実施例1におけるのと同様にして印刷用フィルムを作成した。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、結果を表1に示した。
【0098】
2−ヒドロキシエチルメタクリレート85重量部と、メチルメタクリレート5重量部と、前記一般式(7)で表わされる化合物5重量部と、前記式(8)で表される化合物5重量部とを、メタノール200重量部に溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3重量を加えて、65℃で4時間反応させて得られた反応液。
【0099】
(実施例6)
実施例1における表面処理剤に代えて、以下の反応液を表面処理剤として用いた他は、実施例1におけるのと同様にして印刷用フィルムを作成した。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、結果を表1に示した。
【0100】
2−ヒドロキシエチルアクリレート85重量部と、メチルアクリレート5重量部と、ブタノールのエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物にヘキサメチレンジイソシアネートを常法に従って反応させて得られたウレタンプレポリマーと2−ヒドロキシエチルアクリレートとをウレタン反応により反応させて得られた化合物10重量部とを、メタノール200重量部に溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を加えて、65℃で4時間反応させて得られた反応液。
【0101】
(実施例7)
実施例1における表面処理剤に代えて、以下の希釈反応液を表面処理剤として用いた他は、実施例1におけるのと同様にして印刷用フィルムを作成した。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、結果を表1に示した。
【0102】
2−ヒドロキシエチルメタクリレート85重量部と、ブチルアクリレート5重量部と、ブチルメタクリレート5重量部と、前記式(7)で表わされる化合物5重量部と、前記式(8)で表される化合物5重量部とを、メタノール100重量部に溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を加え、これを65℃で4時間反応させて得らえるところの、共重合体を含有する反応液に、前記式(8)で表される化合物の添加量と同モル量のアンモニア水を添加し、さらに水100重量部を加えて希釈して得た希釈反応液。
【0103】
(比較例1)
実施例1における表面処理剤に代えて、以下の反応液を表面処理剤として用いた他は、実施例1におけるのと同様にして印刷用フィルムを作成した。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、結果を表1に示した。
【0104】
メチルメタクリレート100重量部を酢酸エチル200重量部に溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を加えて、65℃で4時間反応させて得られた反応液。
【0105】
(比較例2)
実施例1における表面処理剤に代えて、以下の反応液を表面処理剤として用いた他は、実施例1におけるのと同様にして印刷用フィルムを作成した。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、結果を表1に示した。
【0106】
2−ヒドロキシエチルメタクリレート100重量部を、メタノール200重量部に溶解し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を加えて、65℃で4時間反応させて得られた反応液。
【0107】
(比較例3)
ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製、PVA−117)の10%水溶液10重量部と、平均粒子径が約10μmである多孔質のシリカビーズを20%含有するスラリー10重量部とを混合して表面処理剤を調整した。
【0108】
この表面処理剤を、実施例1において使用したものと同一種類の厚み70μmのポリステルフィルムに、50μのアプリケーターで塗工し、100℃で3分間乾燥させることにより、印刷用フィルムを得た。この印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価し、評価結果を表1に示した。
【0109】
(比較例4)
ポリアクリル酸(分子量5万)の30%水溶液70重量部と、ポリオキシレンオキサイド(分子量1万)30重量部とを混合して得られた表面処理剤を用いる他は比較例3と同様にして印刷用フィルムを製造し、その印刷用フィルムについて実施例1におけるのと同様に評価した。その結果を表1に示した。
【0110】
【表1】
【0111】
上記実施例および比較例の結果から、この発明の表面処理剤によると、被処理物の透明性を損なうことなく表面の改質を行うことができることが分かる。また、この発明の表面処理剤により処理されてなる印刷用材は、水性インクに対する親和性が向上していることが分かる。したがって、この発明に係る印刷用材の表面に水性インキで印刷あるいは印字を行うと、水性インキののりが良くて良好な印刷状態もしくは良好な印字状態が得られる。また、シランカップリング剤を含有する表面処理剤により処理した場合のように処理面に触れても指紋が付着することがなく、取扱い性にも優れる。さらに、この発明の表面処理剤により処理されてなる印刷用材は、耐擦過性にも極めて優れ、良好な表面特性を有することが分かる。
【0112】
(2)捺染試験
−捺染用布の製造−
前記実施例1〜7、比較例1または比較例2における反応液または反応希釈液をそれぞれ10g/リットル含有してなる捺染前処理剤1a〜7a,8a,9a、および20g/リットル含有してなる捺染前処理剤1b〜7b,8b,9bを、ポリエステル製布の表面に次の条件にて[1dip、1nip、80%絞り、100℃で2分間乾燥、160℃で2分間熱固定]、塗布し、乾燥することによりポリエステル製捺染用布を得た。また、同様にしてナイロン製捺染布を得た。
【0113】
なお、表2において、捺染用布の種類として、aは前記捺染前処理剤1a〜9aによって処理したポリエステル製捺染布およびナイロン製捺染布を意味し、bは前記捺染前処理剤1b〜9bによって処理したポリエステル製捺染布およびナイロン製捺染布を意味している。
【0114】
また、比較例3は、捺染前処理剤を使用しなかった外はこの捺染試験における実施例1と同様にして行ったものである。
【0115】
−捺染糊の調製−
以下の組成を有する4種類の捺染糊A〜Dを調製した。
【0116】
[捺染糊A]
ファインガムHES(5%水溶液、第一工業製薬(株)製)を70%およ
びソルビトーゼC−5(5%水溶液、松谷化学工業(株)製)を30%含
有する溶液・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50部
染料Sumikaron Blue S-BG (住友化学工業(株)製)・・・・3部
尿素・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10部
酒石酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.3部
濃染剤(IPサーモスP-26、一方社油脂工業(株))・・・・・・・2部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34.7部
[捺染糊B]
ダックアルギンNSP−H
(5%水溶液、(株)紀文フードケミファ製)・・・・・50部
染料Dianix Navy Blue ER-Fs conc
(三菱化成ヘキスト(株)製)・・・・・・・・・・・・・3部
尿素・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10部
酒石酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.3部
濃染剤(IPサーモスP-26、一方社油脂工業(株))・・・・・・・2部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34.7部
[捺染糊C]
ファインガムHMT
(5%水溶液、第一工業製薬(株)製)・・・・・・・・50部
染料Dianix Red A2B-Fs conc
(三菱化成ヘキスト(株)製)・・・・・・・・・・・・・3部
尿素・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10部
酒石酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.3部
濃染剤(IPサーモスP-26、一方社油脂工業(株))・・・・・・・2部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34.7部
[捺染糊D]
ダックアルギンNSPH(5%水溶液、(株)紀文フードケミファ製)を
70%およびインダルカAGBV(5%水溶液、Cesalpina 社製)を30
%含有する溶液・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50部
染料Sumikaron Cyanine GR(住友化学工業(株)製)・・・・3部
尿素・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5部
ゾルバー56(染料溶解剤、一方社油脂工業(株)製)・・・5部
硫酸アンモニウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35部
−捺染布の製造−
上記捺染糊A〜Cを上記ポリエステル製捺染用布に、120メッシュの紗にて印捺し、120℃で90秒乾燥し、170℃で7分間蒸熱した。その後、次の水洗条件[浴比1:20、トライポンP−60を2g/リットル、ハイドロサルファイトを2g/リトッル、および水酸化ナトリウムを2g/リットルを80℃で20分処理した後]にて水洗し、乾燥することによりポリエステル製捺染布を製造した。
【0117】
また、上記捺染糊Dを上記ナイロン製捺染用布に、120メッシュの紗にて印捺し、120℃で90秒乾燥し、100℃で30分間蒸熱した。その後、次の水洗条件[浴比1:20、ビスノールRKの2g/リットルを60℃で20分処理した後]にて水洗し、乾燥することによりナイロン製捺染布を製造した。
【0118】
得られたポリエステル製捺染布およびナイロン製捺染布につき、以下の項目に関して評価を行った。その結果を表1に示した。
【0119】
<染着性>
捺染前処理剤で処理していないポリエステル製布に前記捺染糊A〜Cを用いて捺染したもの、および捺染前処理剤で処理していないナイロン製布に前記捺染糊Dを用いて捺染したものを基準布とした。これらの内、各実施例における捺染布と同じ素材で同じ捺染糊で捺染した基準布の染着性を100%とし、これに対する各実施例における捺染布の染着性を百分率で示した。たとえば、実施例の捺染布の染着性が110%である場合は基準布よりも10%染色濃度が高く染着性が向上していることを意味する。
【0120】
<浸透性>
各実施例における捺染布を目視により観察し、以下の基準にて染料の浸透性を評価した。
【0121】
◎;染色むらが無く、裏面の染色濃度が高い状態、
○;捺染面の染色むらは無いが、裏面の染色濃度が低い状態、
△;捺染面にわずかに染色むらがある状態、
×;捺染面に染色むらがある状態。
【0122】
<シャープ性>
シャープ性判定用のパターンを用いて捺染した各実施例における捺染布を目視により観察し、以下の基準にて評価した。すなわち、捺染前処理剤で処理していないポリエステル製布にシャープ性判定用のパターンおよび前記捺染糊A〜Cを用いて捺染したもの、および捺染前処理剤で処理していないナイロン製布にシャープ性判定用のパターンおよび前記捺染糊Dを用いて捺染したもの基準布とした。これらの内、各実施例における捺染布と同じ素材で同じ捺染糊で捺染した基準布のシャープ性を基準にして、各実施例における捺染布のシャープ性を以下の基準にて相対的に評価した。
【0123】
○;基準布のシャープ性よりも優れたシャープ性である、
△;基準布のシャープ性と同等のシャープ性である、
×;基準布のシャープ性よりもシャープ性が劣る、
××;基準布のシャープ性よりも著しくシャープ性が劣る。
【0124】
【表2】
【0125】
上記捺染試験の結果から、この発明の表面処理剤により処理してなる捺染用材に水性染料を用いて捺染を行うと、水性染料ののりが良くて良好な捺染状態が得られる。この発明の捺染用材は、その表面特性である水性染料との親和性、浸透性が洗濯等によっても容易に低下しない。また、この発明の捺染物は、水性染料のにじみ出しや、いわゆる「目むき」現象を生じることがなく、高い鮮鋭度で捺染された複雑な図柄を安定に保持することができることがわかる。
【0126】
【発明の効果】
この発明によると、基材特に合成高分子製等の疎水性基材の表面に良好な吸水性、水性インキや水性染料に対する良好な親和性を付与することのできる表面処理剤を提供することができる。
【0127】
この発明によると、吸水性および印刷適性あるいは捺染適性に優れた印刷用剤および捺染溶剤を提供することができる。
【0128】
さらに、この発明の表面処理剤は、疎水性基材の表面の吸水性を向上させることから、樹脂成形体やガラス、鏡面等に防曇製を付与することも可能である。
Claims (7)
- 分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能な前記モノマーが、分子中に少なくとも2個のオキシアルキレン基および重合可能な二重結合を有するモノマーである前記請求項1に記載の捺染乃至印刷用表面処理剤。
- 分子中に少なくとも2モルのオキシアルキレン基を有するラジカル重合可能な前記モノマーが、ポリオキシエチレングリコールとジイソシアネート化合物とを反応させて得られるNCO末端を有するウレタンプレポリマーと、前記一般式(1)で示されるアクリレートまたはメタクリレートとを反応させて得られるモノマーであることを特徴とする前記請求項1に記載の捺染乃至印刷用表面処理剤。
- 前記請求項1〜5のいずれかに記載の捺染乃至印刷用表面処理剤により印刷基材の表面を処理されてなる被印刷材。
- 前記請求項1〜5のいずれかに記載の捺染乃至印刷用表面処理剤により捺染基材の表面を処理されてなる被捺染材。
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- 1995-04-17 JP JP09107995A patent/JP3712440B2/ja not_active Expired - Fee Related
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