JP3700391B2 - 画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等の画像形成装置に係り、特に、複数のロール間に張架されて回転し、ベルト外周面にトナー像や用紙等を保持して搬送する無端状のベルト部材を備えた画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の画像形成装置としては、例えば、ベルト部材として中間転写ベルトを使用した中間転写方式のカラー画像形成装置がある。これは、電子写真プロセス等によりトナー像が形成される像担持体(例えば感光体ドラム)の転写部で接触して回転するように中間転写ベルトを複数のロール間に張架して配設したものであり、前記像担持体上に形成される複数のトナー像を一旦中間転写ベルトの同じ位置に重ね合わせるように一次転写した後、その中間転写ベルト上に転写された多重のトナー像を用紙に対し一括して二次転写するものである。そして、用紙上に転写された多重のトナー像は、その後定着装置により定着されてカラー画像となる。
【0003】
この他、ベルト部材を備えた画像形成装置としては、用紙を担持して複数の画像形成ユニットの転写部を通過させるように搬送する用紙搬送転写ベルトを使用した、いわゆるタンデムタイプのカラー画像形成装置もある。これは、各色成分のトナー像を個々に形成するため画像形成ユニットを複数並べて配置し、その各画像形成ユニットの転写部で接触して回転するように用紙搬送転写ベルトを複数のロール間に張架して配設したものであり、その用紙搬送転写ベルトに吸着して担持した用紙を各画像形成ユニットの転写部を通過させるように搬送することにより、各画像形成ユニットで形成される各トナー像を同じ用紙に順次重ね合わせるように転写し、最後に定着させてカラー画像とするものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような中間転写ベルトや用紙搬送転写ベルト等に代表されるベルト部材100を使用したカラー画像形成装置においては、図9に示すように、そのベルト部材100の一部表面に貼着部材120が貼り付けられることがあり、このような貼着部材120が貼り付けられている場合には、ベルト部材100を取りまく環境条件が変化すると(特に高湿になると)、貼着部材120が貼り付けられている周辺のベルト部材100領域にベルト面が波打つように変形したうねりEが発生することがある。
【0005】
例えば、同図に示されるように、ベルト部材100の片寄り走行や蛇行を防ぐ観点から、ベルト部材100を所定の張力がかかるように張架する複数のロールの一部端部にベルト部材100の一端部を突き当てながら走行させるための円盤状の規制板130を設け、その規制板130に付き当てられるベルト部材100の端部にそって補強の目的で補強用テープ140を貼り付ける場合がある。この場合、そのベルト部材100が高湿等の環境下におかれると、特にベルト部材100の補強用テープ140の周辺部にうねりEが発生することがある。また、このようなうねりは、高温等の環境下になった場合においても発生し得ることが確認されている。さらに、その貼着部材120としては、前記した補強用テープの他にも、例えば、ベルト部材100の走行タイミング等の制御に使用する基準信号を取り出すために光学式センサにより検知される検知用マーク(フィルム片状のもの)150や、ベルト部材100のつなぎ目に貼りつける接合用テープ160等があるが、これらの各貼着部材が貼りつけられている場合においても、前記したようなうねりが同様に発生することがある。
【0006】
これらのうねりは、そのいずれも、複数のロール間に所定の張力がかけられた状態で張架されたベルト部材100の一部に貼着部材がある場合に、そのベルト部材と貼着部材が互いの物性が相違することに起因して発生しているものと推測される。
【0007】
しかも、このような貼着部材の存在に起因して発生するうねりは、一旦発生した後に放置しておくと、その後、ベルト部材100を取りまく湿度環境が平常な状態にもどったときや、あるいはベルト部材100にかける張力が軽減又は除去されたときであっても、消失することなく残存してしまう傾向がある。また、このようなうねりは、ベルト部材が前記した中間転写ベルトや用紙搬送転写ベルトのように厚さが例えば0.3mm以下程度のきわめて薄いものである場合に、顕著に発生する傾向もある。
【0008】
そして、このようなうねりが発生した場合には、ベルト部材100の平滑性が保たれなくなるため、うねりの発生部分に相当する部位ではトナー像の転写等が正常になされず画像が抜けたり、あるいはずれたり、あるいは画像の濃度や色調がばらつく等の画像欠陥が発生するという不具合がある。
【0009】
ちなみに、特開平3−106736号公報には、シート搬送装置におけるシート搬送ベルトを長期間放置したときにそのベルトに発生する永久変形を防止し、その変形に伴い発生する画質劣化を防止するための画像形成装置として、かかるベルトの停止時にそのベルトにかかるテンションを回転動作時よりも多段階的に弱くすることができる機構を備えたものが示されている。
【0010】
しかし、この公報に示される画像形成装置では、シート搬送ベルトにかけるテンションを特定の時期に単に弱めるのみであるため、その搬送ベルトに前述したような補強用貼着テープ等の貼着部材が貼りつけられた場合には、その貼着部材の存在に起因するうねりの発生を防止することは期待できず、しかも、そのうねりが一旦発生すると、前述したようにうねりが消失せず残存してしまう可能性が強い。さらに、この画像形成装置におけるベルト部材にかけるテンションを可変設定するための機構を、湿度等の環境条件を検知した情報に基づいて動作させるように構成して採用することも考えられるが、その場合には、その機構等がより煩雑なものとなる上に高価なものとなってしまう。
【0011】
本発明は以上の事情に鑑みなされたものであり、その課題とするところは、環境条件、特に湿度条件が変動した際に、貼着部材が貼りつけられているベルト部材に発生することがあるうねりをより簡便かつ的確に防止し、かかるうねりに起因する画像欠陥のない良好な画像を形成することができる画像形成装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の画像形成装置は、複数のロール間に張架されて回転し、ベルト外周面に少なくともトナー像又は用紙を保持して搬送するベルト部材を備え、そのベルト部材の一部領域には貼着部材が貼りつけられている画像形成装置において、前記ベルト部材及び貼着部材として、その双方の吸水率あるいは吸湿膨張係数が互いに同一の又は近似した関係になるように構成したものを使用しているものである。
【0013】
この手段において、ベルト部材は、前述したようなトナー像を保持して搬送する中間転写ベルトや、トナー像が転写される用紙を保持して搬送する用紙搬送転写ベルトであるが、その他にも、例えば単に用紙を搬送するための用紙搬送ベルト等であってもよい。また、このベルト部材は、主にそのベルト厚さが比較的薄いものが対象となる。
【0014】
また、貼着部材は、ベルト部材に必要に応じて貼りつける部材であれば特に制約されるものではなく任意である。例えば、前記したような補強用テープ、検知用マーク、接合用テープ等である。この貼着部材は、通常、ベルト部材とほぼ同程度の厚さからなるものである。ベルト部材の厚さに比べて数十倍以上の厚さからなる貼着部材では、前記したようなうねりが発生することがほとんどない。また、この貼着部材は、通常ベルト部材の外周面側の非画像形成領域に貼りつけるものが対象となるが、ベルト部材の内周面側の非画像形成領域に貼りつけるものであってもよい。
【0015】
そして、このようなベルト部材と貼着部材は、その双方の吸水率あるいは吸湿膨張係数が互いに同一の又は近似した関係になるように構成される。
【0016】
ここで、吸水率は、JIS K 6911/7209の測定方法に準拠した方法により測定して得られるものであり、試験片の蒸留水への浸せき前後における質量変化量を百分率で表したものである。なお、上記JIS規格の測定方法では、測定試料として直径φ50±1mm,厚さ3±0.2mmの円盤形状のものを使用することを規定しているが、この発明においては、ベルト部材が比較的うすいものであって上記規格の厚さ寸法の条件を満たすことができない場合には、上記規格の円盤形状の試料と同じ体積となる寸法形状にしたものを試料として使用して測定を行っている。一方、吸湿膨張係数は、一定温度(23℃)下において試料を相対湿度を20%RHから80%RHまで順次変化させた環境下においたとき、その試料の長手方向(MD)における長さの変化量を測定し、単位「/%RH」として表されるものである。
【0017】
ちなみに、この吸水率と吸湿膨張係数とは、吸水率がいわば試験片が吸収した水分量を初めの質量に対する割合で示しているのに対し、吸湿膨張係数がいわば単位湿度あたりの試料の長さの変化割合を示していることから、うねりの問題からとらえた場合、吸湿膨張係数の方が本発明の特徴を示すのに適している。
【0018】
この吸水率あるいは吸湿膨張係数が近似した関係とは、吸収率の場合には、両部材の各吸水率が1:0.2〜1:1.5程度の関係にあることをいい、吸湿膨張係数の場合であれば、両部材の吸湿膨張係数が約±50%の範囲内におさまる程度の関係をいう。例えば、吸湿膨張係数を例にあげて具体的に説明すると、その一方の部材の吸湿膨張係数が1×10-14 /%RHであるとき、その他方の部材の吸湿膨張係数がその約±50%の範囲となる(0.5〜1.5)×10-14 /%RHである関係をいう。また、ベルト部材と貼着部材は、この吸水率あるいは吸湿膨張係数に加えて、その双方の熱膨張係数が互いに同一の又は近似した関係になるように構成されたものであれば、より望ましい。以上のような物性の関係からなるベルト部材と貼着部材とは、互いに同じ材料を用いて構成されることが一般的であるが、互いに異なる材料を用いて構成されるものであっても構わない。
【0019】
このような画像形成装置によれば、そのベルト部材とそのベルト部材に貼り付けられた貼着部材との吸水率あるいは吸湿膨張係数がほぼ同じ関係にあるため、高湿等の環境下になった場合であっても、そのベルト部材と貼着部材が互いに近似した膨張(変形)度合いを示すので、両者間にひずみが発生しにくくなり、結果的に、ベルト部材の貼着部材周辺部にうねりが発生しないか又は発生しにくくなる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
◎実施の形態1
[装置全体の構成及びその動作]
図1は、本発明の一実施形態に係る、中間転写ベルトを備えたカラー複写機を示す概要図である。この複写機は、大別すると、原稿の画像を読み取る画像読取部1と、その画像読取部1にて得られる画像情報に基づいてトナー像を形成して用紙上に出力する画像出力部2とで概略構成されている。
【0022】
画像読取部1では、原稿台であるプラテン10に載せられた原稿(図示省略)に、そのプラテン10の下面側にそって移動する原稿照明用ランプ11から光が照射され、原稿からの反射光が移動ミラーユニット12、レンズ13,固定ミラー14を介してCCD等の電荷結合素子15に入射される。電荷結合素子15は、その入射光を赤(R)、緑(G)及び青(B)の各色に同時に分解してR,G,Bの電気信号に変換し、その各電気信号を画像処理回路16に入力する。画像処理回路16は、R,G,Bの電気信号をこれらと補色の関係にあるイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)及びブラック(K)の各色の画像信号に処理して画像メモリに蓄積する。この複写機にプリンタ機能等の他の機能を付加する場合には、例えば、外部の機器等からの画像情報を入力するための外部入力部を設ければよい。図中の1aはプラテンカバー又は自動原稿送り装置を示す。
【0023】
一方、画像出力部2では、光書込制御装置20が前記画像処理回路16に蓄積されている画像信号を所定のタイミングで読みだして光ビーム書込装置21に出力する。光ビーム書込装置21は、入力された画像信号を光(レーザ)ビームLBに変調し、そのレーザビームLBをポリゴンミラー21aによって偏向した後に、矢印a方向に回転する像担持体としての感光体ドラム22に走査し、これにより感光体ドラム22に各色に対応した静電潜像を書き込む。図中の符号23は、その静電潜像の書き込みに先立って感光ドラム22の外周面を均一に帯電させる帯電器である。
【0024】
感光ドラム22に書き込まれた静電潜像は、感光体ドラム22の周囲に配設される現像装置24によって直ちに現像される。現像装置24は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)及びブラック(K)の各色のトナーをそれぞれ収容して供給する4つの現像器を有するロータリー方式のものであり、静電潜像に対応する色のトナーを収容する現像器を感光ドラム22に対向する位置まで回転移動させて当該トナーを感光ドラム22側に供給するようになっている。
【0025】
このようにして感光ドラム22上に形成されたトナー像は、感光ドラム22の転写位置(一次転写部)に接触又は近接した状態で回転するように配設されるベルト部材としての中間転写ベルト30に静電的に一次転写される。図中の符号25は、トナーとは逆の極性のバイアス電圧が印加されるコロナ放電式の一次転写器、26は一次転写後の感光ドラム22の表面に残留して付着するトナー等を除去するクリーニング装置である。
【0026】
中間転写ベルト30は、駆動ロール31と複数の回転自在な従動ロール32,33,34に張架されており、その駆動ロール31によって感光ドラム22の回転方向と同一方向(矢印b方向)へ同一の速度で回転するようになっている。複数の従動ロール(32〜34)のうちロール32は、テンション用ロールであり、図示しないバネ等の付勢機構により矢印c方向に付勢されており、これにより中間転写ベルト30のたわみを防止するようになっている。図中の符号35は、支持ロール(バックアップロール)33にトナーと同じ極性のバイアス電圧が印加される電極ロール、36は支持ロール33に対し接離可能に配設され、その支持ロール33との間で(ベルト30を介して)二次転写部となるニップ部を形成する二次転写ロール、37は中間転写ベルト30に対し接離可能に配設され、そのベルト30上に残留して付着するトナー等を除去するクリーニング装置である。ちなみに、二次転写ロール36とクリーニング装置37は、二次転写が実行される時期にのみ支持ロール33又はベルト30にそれぞれ当接するように設定されている。
【0027】
また、中間転写ベルト30の回転動作方式としては、この複写機においては、一定速度で一方向に回転させる一定速往動方式を採用しているが、用紙の種類に応じて二次転写時に回転速度を変化させるスキップ往動方式や、ベルト上の一次転写領域を繰り返して使用するためリターン(復動)させる往復動作(クイックリターン)方式を採用してもよい。
【0028】
このようにして中間転写ベルト30上に転写されたトナー像は、二次転写ロール36と支持ロール33とのニップ部(二次転写部)に送り込まれる用紙Pに二次転写される。この際、用紙Pは、給紙トレイ40上に積層された状態で収容されており、給紙ロール41により1枚ずつ取り出された後に、複数の搬送ロール対42が配された用紙搬送路を経由してレジストロール43まで搬送され、そのレジストロール43により所定のタイミングで上記ニップ部に送りこまれるようになっている。転写終了後の中間転写ベルト30の表面は、その転写の実行時期に合わせてベルト30に当接するクリーニング装置37によって清掃される。
【0029】
中間転写ベルト30からトナー像が転写された用紙Pは、その二次転写部の下流側に配設される用紙搬送用ベルト44により搬送されて定着装置45に送りこまれ、その定着装置45内で圧接した状態で回転する加熱ロールと加圧ロールによって挟持搬送されることにより、トナー像の用紙上への定着が行われる。これにより、用紙P上に所定の画像が形成(コピー)される。定着終了後の用紙Pは、排出ロール46により装置外へ排出され、例えば図示しない収容トレイ上に収容される。
【0030】
この複写機では、カラーコピー(カラー画像の形成)が実行されるときには、まず、感光体ドラム22上に原稿画像情報に応じた各色成分のトナー像が順次形成されると同時に、それら各トナー像が一次転写部において中間転写ベルト30の同じ位置(領域)に順次重ね合わせられるように転写され、その後、中間転写ベルト30上に多重転写されたトナー像が二次転写部において用紙Pに一括して転写されるようになっている。一方、白黒コピー(つまり単色画像の形成)が実行されるときには、感光体ドラム22上に所望の色の単色トナー像が形成された後、一次転写部において中間転写ベルト30に転写され、その後、その中間転写ベルト30上の単色トナー像が直ちに二次転写部において用紙Pに転写されるようになっている。
【0031】
[中間転写ベルトに関する詳細な構成]
ところで、この複写機においては、中間転写ベルト30の走行安定化対策として、図2や図3に示すように、駆動ロール31及びテンション用ロール32の片側端部に対し、各ロール31,32の径よりも少し大きめの径からなる円盤状の規制板47,48を取り付けているとともに、この規制板47,48が配設されている側となる中間転写ベルト30の端部に対し、貼着部材5としての補強用テープ50をその端縁部にそってベルト全周にわたって貼り付けている。
【0032】
中間転写ベルト30は、基本的には、各種の合成樹脂又はゴム材料からなる基材にカーボンブラック等の導電剤を適量配合させ、例えば、厚さが0.05〜0.15mm程度のシート(フィルム)形状に成形したものを無端状のベルト形態にしたものである。また、このベルト30は、その体積抵抗率が106 〜1016Ωcmの範囲に調整されている。基材の合成樹脂材料としては、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート等が使用される。基材のゴム材料としては、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム等が使用される。
【0033】
この実施形態では、例えば、その中間転写ベルト30として、ポリイミドにカーボンブラックを配合して、厚さが0.1mmで体積抵抗率が1010Ωcmのフィルムとしたものをベルト状にしたものを使用している。また、この中間転写ベルト30は、その吸湿膨張係数が1×10-4/%RHであり、また、その熱膨張係数が5×10-5/℃である。ここで、熱膨張係数は、熱機械分析(TMA)測定法を用いて測定したものである。
【0034】
貼着部材5としての補強用テープ50は、基本的に、合成樹脂又はゴム材料を、導電剤等の他の材料を含有させることなく、幅が5〜15mm程度で厚さが0.05〜0.5mm程度のシート(フィルム)形状に成形したものが使用される。合成樹脂材料としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等が使用される。この補強用テープ50は、所定の粘着剤等を用いて中間転写ベルト30に張り付けられる。
【0035】
この実施形態では、補強用テープ50として、幅が10mmで厚さが0.3mmのポリイミドからなるものを使用している。このポリイミドからなる補強用テープ50の吸湿膨張係数は0.8×10-4/%RHであって、これは中間転写ベルト30のそれと近似した関係にある。そして、この補強用テープ50は、その裏面に合成樹脂系の粘着剤を200μm程度の厚さに塗布した後、中間転写ベルト30の一端部にそって全周にわたって貼り付けている。
【0036】
また、この実施形態では、図2に示すように、中間転写ベルト30のつなぎ目となる外周面に、そのベルト30を構成する同じカーボンブラック入りのポリイミド(厚さ0.1mm)からなる接合用テープ51を、貼着部材5として貼り付けている。さらに、中間転写ベルト30の所定位置には、補強用テープ50を構成する同じポリイミドフィルム(テープ)の表面側にアルミニウムをめっきした小片からなる光学検知用マーク(片)52を、同じく貼着部材5として貼り付けている。これらのテープ51及びマーク52におけるポリイミドの吸湿膨張係数はいずれも0.8×10-4/%RHであって、これは中間転写ベルト30のそれと近似した関係にある。
【0037】
このような構成からなる中間転写ベルト30を備えた複写機では、その中間転写ベルト30は、2本のロール31,32に取り付けられた係合板47,48に当接しながら回転するため、片寄り走行や蛇行することなく安定して回転する。これにより、中間転写ベルト30の走行状態が不安定になることにより誘発される画質劣化が防止され、良好な画像形成が確保される。
【0038】
次に、上記構成からなる複写機を用いて以下のようなうねり発生試験と画像試験を行った。
【0039】
すなわち、図1や図2に示すように、中間転写ベルト30を5kgfの張力(テンション)で張架するように設定した画像形成装置を、常温常湿(20℃,50%RH)の環境から高温高湿(30℃,85%RH)の環境下に24時間放置した後、その中間転写ベルト30にうねりが発生しているか否かを調べた。その結果、そのベルト30には、補強用テープ50の周辺部はもちろんのこと、接合用テープ51や検出用テープ52の周辺部、さらには他のベルト領域にもうねりが発生していなかった。
【0040】
また、上記の画像形成装置を常温常湿の環境にもどした後に、テスト用のカラーコピーを実行したところ、得られたカラー画像には画像ぬけや色ずれ、色調むら等の画像欠陥がなく、実用上において何ら問題のない高品質なカラー画像が得られた。
【0041】
比較のために、補強用テープ50として、前記した実施形態のポリイミドからなるものに代えて、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる幅10mm、厚さ0.2mmのものを前記中間転写ベルト30に貼り付けた後、前記したようなうねり発生試験と画像試験を同様にして行った。なお、このPETからなる補強用テープ50における吸湿膨張係数は1×10-5/%RHである。
【0042】
その結果、中間転写ベルト30のうちPETからなる補強用テープ50の周辺部に振幅(最上部と最下部の高低差)が2〜3mm程度のうねりが発生していることが確認された。また、その後、常温常湿の環境にもどしたり、あるいは中間転写ベルト30にかけている張力を解除したところ、先に発生したうねりは消失せず残ったままであった。さらに、このうねりの発生した状態の中間転写ベルト30を使用してテスト用のカラーコピーを実行したところ、得られた画像にはそのうねりの発生部分に対応する部位に画像ぬけ(白ぬけ)が発生していることが確認された。
【0043】
以上のことから、本実施形態の中間転写ベルト30と補強用テープ50等の貼着部材5のように同じポリイミドにて構成されているもの同士を使用した場合には、高湿等の環境下になった場合でも、そのベルト30にうねりが発生しないのに対し、比較例のように貼着部材5を例えばポリエチレンテレフタレートにて構成されるものに代えた場合には、高湿等の環境下になるとそのベルト30における貼着部材5の周辺部にうねりが発生することがわかる。
【0044】
これは、特に中間転写ベルト30の吸湿膨張係数K30と補強用テープ50等の貼着部材5の吸湿膨張係数k50とが、本実施形態の場合にはほぼ近似した関係(その係数の差が20%)になっているのに対し(K30=1×10-4/%RH、K50=0.8×10-4/%)、比較例の場合にはある程度異なっていること(K30は同じであるが、K50がK50=1×10-5/%RHとなり、このK50は前記実施形態の場合と比べると1桁程度異なっている)に起因しているものと推測される。ちなみに、中間転写ベルト30と貼着部材5との熱膨張係数については、本実施形態の場合と比較例の場合のいずれも互いに近似した関係にある。
【0045】
◎実施の形態2
前記実施形態1におけるポリイミドからなる補強用テープ50の吸湿膨張係数K50を0.5×10-4/%RHに変更した以外は実施形態1と同じ構成の複写機とした。なお、この場合、中間転写ベルト30の吸湿膨張係数K50については、何も変更せず実施形態1の場合と同じ値(1×10-4/%RH)とした。
【0046】
この複写機を用いて実施形態1と同じうねり発生試験と画像試験を行ったところ、1mm程度のきわめて小さいうねりが発生している部分がわずか確認された。また、得られた画像は、画像密度の薄いコピーの場合には通常の画像ぬけ等のない良好なものであったが、画像密度の濃いコピーの場合には、前記うねりに対応する部分にかすかに白抜けが発生した。このことから、1mmを超えるレベルのうねりが発生すると、白抜け等の画像不良も発生しやすくなることが判明した。また、さらに、中間転写ベルト30および補強用テープ50の各吸湿膨張係数がこの実施形態のように少なくとも50%以内の差の関係となる程度に互いに近似していれば、うねりに起因した白抜け等の画像不良も発生しにくくなることも判明した。
【0047】
次に、中間転写ベルト30の吸湿膨張係数K30を変化させたときのうねりの発生度合い(うねりの振幅:前述したような高低差)について調べた。すなわち、この試験では、中間転写ベルト30の張力を7kgfとし、28℃,85%RHの環境下に24時間放置した後に、常温常湿に戻してから、そのベルト30に発生するうねりの振幅を測定した。また、貼着部材5の補強用テープ50としては実施形態1の比較例として例示したPETからなるものを使用した(このテープ50の吸湿膨張係数K50は1×10-5/%RHであり、一定とした)。一方、中間転写ベルト30を構成するポリイミドの物性を変更すること(具体的には、ポリマー粒子の種類や組成を変更すること)によりその吸湿膨張係数K30の値を適宜変化させた。この試験で得られた結果を図4に示す。
【0048】
図4の結果から、中間転写ベルト30の吸湿膨張係数K30と貼着部材5の吸湿膨張係数K50との差が(0〜0.5)×10-4/%の範囲内にあるときは、うねりが発生しないか、あるいは発生しても実用上は問題にならないきわめて小さいもの(うねりの振幅が1mm以下)であることがわかる。
【0049】
◎他の実施形態
中間転写ベルト30の走行安定化対策としては、前記した実施形態1の構成に代えて、図5に示すように、中間転写ベルト30の内周面の一端部に帯状の走行ガイド部材(リブ)6をベルト全周にわたって貼りつけ、そのガイド部材6の内側端部を各ロール31〜34の端部31aに同心円状に取り付けた係合板49に突き当てた状態でベルトを回転させるようにするとともに、その中間転写ベルト30のガイド部材が貼りつけられている側の外周面側に補強用テープ53を(貼着部材5として)貼り付けるように構成してもよい。
【0050】
ここで、上記中間転写ベルト30としては、前記実施形態1のものと同じ材質からなる無端状(シームレスタイプ)のベルトを使用している。また、上記ガイド部材6は、硬度70°のポリウレタンゴムからなる幅5mm、厚さ1mmの帯状のものを使用し、それをエポキシ系の接着剤を用いて中間転写ベルト30一端部の内周面に貼り付けている。また、上記係合板49としては、ポリアセタールからなる厚さ2mmで中心部に中心穴が開設された円盤状のものを、その中心穴を介して各ロールの軸38から差し込んでロール端部に固定している。
【0051】
そして、補強用テープ53は、前記実施形態1のものと同じポリイミドからなる幅が10mmで厚さが0.3mmのフィルム状物を使用し、それを図5に示すようにベルト30の端部にそって所定の粘着剤にて貼りつけている。すなわち、補強用テープ53は、その半分が走行ガイド部材6と上下に重なり合った状態で配設されているとともに、その残り半分がベルト中央側に延長した状態で配設されている。また、この補強用テープ53の吸湿膨張係数は1.2×10-4/%RHであり、これは中間転写ベルト30のそれと近似した関係にある。なお、この実施形態では、中間転写ベルト30に対して実施形態1のような接合用テープ51や検出用マーク52を貼り付けていない。
【0052】
このような中間転写ベルト30の走行安定化対策を採用した場合には、中間転写ベルト30は、走行ガイド部材6がロール31,32の係合板49に突き当てられながら回転するため、片寄り走行や蛇行することなく安定して回転する。これにより、中間転写ベルト30の不安定走行による画質劣化が発生することなく、良好な画像形成が可能である。
【0053】
また、この走行安全対策を採用した場合には、その中間転写ベルト30の走行ガイド部材6と対応する外周面部分に補強用テープ53が貼りつけられているため、中間転写ベルト30の端部が走行ガイド部材6のベルト中央側端部Qを境に折れ曲がった状態になることはない。すなわち、補強用テープ53が設けられていない場合には、図7に例示するように、中間転写ベルト30にはロール31等からベルト面に対して垂直な方向(図中の矢印方向)にテンションFがかかるため、補強用テープ53が貼り付けられているベルト30の部分が境界部Qを境にして内側に折れ曲がった状態になってしまうのである(同図(b))。そして、このように折れ曲がったベルト部分には応力が集中するためその部分が損傷しやすくなり、さらには走行ガイド部材6の側面が係合板49に面接触しなくなってロールに乗り上げやすくなる等の不具合が発生する。この点、補強用テープ53を設けた場合には、そのガイド部材6とベルトの境界部Qが補強用テープ53により補強されることにより、その境界部Qに集中する応力に対する耐久性が向上し、折れ曲がりにくくなるのである。
【0054】
さらに、前記したうねり発生試験と画像試験を行ったところ、その補強用テープ53の周辺部となる中間転写ベルト領域等には特にうねりの発生が見られず、また、うねりによる画質劣化の発生も確認されなかった。なお、この際、走行ガイド部材6は、ベルト30やテープ53に比べて十分に厚いものであるため、高湿による膨張変形がほとんどなく、うねりの発生要因にはならない。
【0055】
このような補強用テープ53は、少なくとも、走行ガイド部材6のベルト中央側端部(境界部Qに相当)を境にしてベルト中央側及び端部側にまたがるような状態で配設すればよい。また、補強用テープ53は、必要に応じて、図6に例示するように走行ガイド部材6のベルト中央側端部付近の厚さをその他の部分に比べて厚くした断面形状からなる形態としてもよい。
【0056】
また、前記した実施形態では、中間転写ベルト30を備えた装置を例にあげて説明したが、この他にも、例えば、図8に示すような用紙搬送転写ベルト60の装置に適用してもよい。
【0057】
図8に例示する画像形成装置は、ブラック(K),イエロー(Y),マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色のトナー像をそれぞれ形成する4つの画像形成ユニット3k,3y,3m,3cをこの順に並べて配置し、この各画像形成ユニット3の転写部(感光体ドラムの転写部)に用紙Pを通過させるように搬送する用紙搬送転写ベルト60を配設したタンデムタイプのカラー画像形成装置である。各画像形成ユニット3は、そのいずれも、前記した実施形態に係る複写機と同様に、矢印方向に回転する感光体ドラム22(k,y,m,c)を備え、その感光体ドラム22の周囲に、帯電器23、現像装置24(単色用のもの)、転写器25及びクリーニング装置26等をこの順に配設したものである。また、この各画像形成ユニット3の転写部で接触して矢印方向に回転するように用紙搬送転写ベルト60を複数のロール61,62,63,64間に張架して配設したものである。図5中の45は定着装置、65は用紙吸着用ロール、66はベルト50の除電装置、67はベルト60のクリーニング装置である。そして、この画像形成装置においては、図示しない給紙部から搬送される用紙Pを、用紙搬送転写ベルト60に吸着して担持した状態で各画像形成ユニット3の転写部を通過させるように搬送することにより、各画像形成ユニット3で形成される各トナー像を同じ用紙Pに順次重ね合わせるように転写し、しかる後、ベルト60から剥離してから定着装置45に送り込むことにより、用紙P上のトナー像を定着させてカラー画像を得るようになっている。
【0058】
このような用紙搬送転写ベルト60を備えた画像形成装置においては、そのベルト60及びそのベルトに貼りつける貼着部材5(補強用テープ50,53、接合用テープ51、検出用マーク52等)の双方の吸水率あるいは吸湿膨張係数が同一か若しくは近似した関係になるように設定すればよい。これにより、前述した実施形態における中間転写ベルト30と同様に、用紙搬送転写ベルト60の貼着部材5の周辺部に不要なうねりが発生することがなく、画像ぬけ等のない良好なカラー画像を得ることができる。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の画像形成装置は、環境条件、特に湿度条件が変動した場合であっても、ベルト部材の貼着部材が貼りつけられている部分の周辺にうねりが発生しにくくなる。そして、このうねりの発生防止効果は、ベルト部材及び貼着部材として、特にその双方の吸湿膨張係数が互いに同一の又は±50%の範囲内におさまる程度の関係になるように構成したものを使用することにより得られるため、貼着部材に起因して発生するうねりを不要なコストアップを招くことなく、より簡便かつ的確に防止することができる。しかも、そのうねりに起因する画像ぬけ等の画像欠陥が発生することも防止でき、良好な画像形成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概要図である。
【図2】 中間転写ベルトと貼着部材との関係を示す要部斜視図である。
【図3】 中間転写ベルトとロールとの関係を示す要部説明図である。
【図4】 中間転写ベルトの吸湿膨張係数を変化させた場合におけるその膨張係数とうねりの振幅との関係を示す図である。
【図5】 本発明の他の実施形態に係る画像形成装置の中間転写ベルトとロールとの関係を要部説明図である。
【図6】 補強用テープの他の形態例を示す要部説明図である。
【図7】 図6の補強用テープがない場合の構成例と折れ曲がり現象を示す要部説明図である。
【図8】 用紙搬送ベルトを備えた画像形成装置の構成例を示す概要図である。
【図9】 従来技術において発生するうねりを示す要部斜視図である。
【符号の説明】
5…貼着部材、30…中間転写ベルト(ベルト部材)、31,32,33,34…複数のロール、50,53…補強用テープ、51…接合用テープ、52…検出用マーク、60…用紙搬送ベルト(ベルト部材)、P…用紙。
Claims (1)
- 複数のロール間に張架されて回転し、ベルト外周面に少なくともトナー像又は用紙を保持して搬送するベルト部材を備え、そのベルト部材の一部領域には貼着部材が貼りつけられている画像形成装置において、
前記ベルト部材及び貼着部材として、その双方の吸湿膨張係数が互いに同一の又は±50%の範囲内におさまる程度の関係になるように構成したものを使用していることを特徴とする画像形成装置。
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