JP3669664B2 - フライホイール組立体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フライホイール組立体、特に、第1フライホイールと第2フライホイールとをダンパー機構で連結したフライホイール組立体に関する。
【0002】
【従来の技術】
フライホイールは、例えば車両のエンジンのクランクシャフトの後端に取り付けられ、その慣性モーメントにより低速運転時の回転むらを防止する。また、フライホイールには始動用リングギアやクラッチが取り付けられる。
フライホイールを第1フライホイールと第2フライホイールとに分割し、その間にダンパー機構を設けて両フライホイールを回転方向に弾性的に連結したフライホイール組立体が知られている。ダンパー機構は両フライホイールが相対回転すると円周方向に圧縮される弾性部材を含んでいる。また、ダンパー機構には弾性部材と並列に作用する摩擦発生機構を備えたものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
エンジンは燃焼力をクランクシャフトによって回転力に変え駆動力を発生している。このとき燃焼力によってクランクシャフトは曲げられ、フライホイール組立体を曲げ方向に振動させる。すると、フライホイール組立体からの反力がエンジンブロックに伝わり、さらにエンジンマウントを介して車輌のボディに加振する。その結果エンジン加速時騒音が生じる。第2フライホイールは曲げ方向に振動しやすい。その理由は、第2フライホイールの内周部が軸受を介して第1フライホイールの突出部に支持されており、一般に軸受は曲げ方向への自由度が低いためである。
【0004】
本発明の目的は、フライホイール組立体において第2フライホイールへの曲げ振動伝達を抑制することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のフライホイール組立体は入力側回転体から出力側回転体にトルクを伝達するものであり、第1フライホイールと、第2フライホイールと、ダンパー機構と、フレキシブルプレートと、軸受とを備えている。第1フライホイールには入力側回転体からトルクが伝達される。第2フライホイールは、第1フライホイールの入力側回転体側と反対側に配置され、出力側回転体にトルクを伝達可能である。ダンパー機構は、第2フライホイールに対してトルクを伝達及び遮断可能に摩擦係合する摩擦連結部を外周側に有し、第1フライホイールと第2フライホイールとを円周方向に弾性的に連結する。フレキシブルプレートは、第1フライホイールと第2フライホイールの軸方向間に配置され、第2フライホイールを第1フライホイールに対して支持し、曲げ方向にたわみ可能である。軸受はフレキシブルプレートと第1及び第2フライホイールの少なくとも一方との間に配置されている。
【0006】
請求項1に記載のフライホイール組立体では、入力側回転体から第1フライホイールにトルクが伝達されると、トルクは、ダンパー機構を介して第2フライホイールに伝達され、さらに出力側回転体に伝達される。入力側回転体から第1フライホイールに曲げ振動が伝達されると、第1フライホイールと第2フライホイールとの軸方向間に配置されたフレキシブルプレートが曲げ方向にたわむ。そのため、曲げ振動はフレキシブルプレートにより絶縁・吸収され、第2フライホイールに伝達されにくい。
【0007】
請求項2に記載のフライホイール組立体では、請求項1において、第1フライホイールは第2フライホイール側に突出する突出部を中心に有しており、ダンパー機構は突出部と第2フライホイールとを円周方向に弾性的に連結している。軸受は、内輪が突出部の周囲に固定され、外輪がフレキシブルプレートの内周部に固定されている。フレキシブルプレートは外周部が第2フライホイールの外周部に固定されている。
【0008】
請求項3に記載のフライホイール組立体は、請求項1または2において、曲げ方向ダイナミックダンパーをさらに備えている。曲げ方向ダイナミックダンパーは、慣性体と、慣性体を第2フライホイールに対して曲げ方向に揺動可能に連結する弾性体とを有する。
請求項3に記載のフライホイール組立体では、フレキシブルプレートに曲げ方向ダイナミックダンパーを組み合わせることで、フレキシブルプレートのみのフライホイール組立体に比べて第2フライホイールの曲げ方向振動を低減できる。その理由は、フレキシブルプレートのみでは常用領域に残る曲げ振動の共振周波数付近の振動を曲げ方向ダイナミックダンパーによって低減できるからである。
【0009】
【発明の実施の形態】
第1実施形態
図1は本発明の一実施形態としての車両用フライホイール組立体1の動力伝達模式図であり、図2はフライホイール組立体1の部分縦断面概略図である。
図1において、フライホイール組立体1は、エンジン側のクランクシャフト2(入力側回転体)からトランスミッションから延びるメインドライブシャフト3(出力側回転体)にトルクを伝達する動力伝達機構であり、捩じり振動を減衰するためのダンパー機能及びトルクを断続するためのクラッチ機能を有している。フライホイール組立体1は、主に、第1フライホイール4と、第2フライホイール5と、両フライホイール4,5間に配置されたダンパー機構6とから構成されている。ダンパー機構6は、第1フライホイール4と第2フライホイール5に制限された範囲内で相対回転を許容するための弾性部材として機能するコイルスプリング9を含んでいる。
【0010】
フライホイール組立体1はさらに第1クラッチ7と第2クラッチ8とを備えている。第1クラッチ7は第1フライホイール4と第2フライホイール5との間に配置されており、さらに具体的にはダンパー機構と6と第2フライホイール5を連結している。第2クラッチ8は第2フライホイール5とメインドライブシャフト3との間に配置されている。
【0011】
また、図1には図示していないが、フライホイール組立体1は、第1及び第2クラッチ7,8を作動させるためのクラッチカバー組立体11(クラッチ作動機構)を有している。第1クラッチ7と第2クラッチ8は、クラッチカバー組立体11によりほぼ同時にトルク伝達を遮断可能である。第1クラッチ7と第2クラッチ8のトルク容量はほぼ同等に設定してもよいし、後述のようにあえて大きく異ならせてもよい。
【0012】
クランクシャフト2から第1フライホイール4にトルクが伝達されると、トルクはダンパー機構6及び第1クラッチ7を介して第2フライホイール5に伝達される。第2フライホイール5のトルクは第2クラッチ8を介してメインドライブシャフト3に出力される。エンジン側からトルク変動が伝達されると、第1フライホイール4と第2フライホイール5との間で相対回転が生じる。このとき、ダンパー機構6のコイルスプリング9が円周方向に圧縮され、捩じり振動を吸収・減衰する。
【0013】
次に、図2を用いてフライホイール組立体1の具体的な構造について説明する。図1におけるO−Oがフライホイール組立体1の回転軸線である。なお、図1において左側をエンジン側とし右側をトランスミッション側とする。
第1フライホイール4は円板状の肉厚の部材である。第1フライホイール4は内周側にトランスミッション側に延びる筒状部4a(突出部)を有している。筒状部4aには軸方向に貫通する複数の孔4bが形成されている。孔4bはねじ溝が切られていない孔である。第1フライホイール4の外周面にはリングギア31が固定されている。
【0014】
第2フライホイール5は第1フライホイール4と同様に円板状の肉厚の部材である。第2フライホイール5は、第1フライホイール4のトランスミッション側に所定の間隔をあけて配置されている。第2フライホイール5には中心孔が形成されており、その中心孔を通って筒状部4aがトランスミッション側に延びている。第2フライホイール5のトランスミッション側には、環状の平坦な摩擦面5aが形成されている。また、第2フライホイール5の外周端には、トランスミッション側に延びる複数の突出部5bが形成されている。
【0015】
次に、第2フライホイール5を第1フライホイール4に対して支持するための軸受17とフレキシブルプレート41を説明する。
第1軸受17は第1フライホイール4と第2フライホイール5とが相対回転する際に両者間の摩擦抵抗を低減するための部材である。第1軸受17は筒状部4aの外周面4dの周囲に配置されている。第1軸受17は内輪と外輪と両レース間に配置された複数の転動体から構成されている。第1軸受17の内輪は筒状部4aの外周面4dに固定されている。また、第1軸受17の内輪のエンジン側端面は第1フライホイール4に当接・支持されている。
【0016】
フレキシブルプレート41は第2フライホイール5を第1フライホイール4に対して支持する部材である。フレキシブルプレート41は、第1フライホイール4と第2フライホイール5との軸方向間に配置され、たとえば鉄板からなる比較的厚みの薄い円板状の部材である。フレキシブルプレート41の内周部は第1軸受17の外輪に固定され、外周部が第2フライホイール5の外周部に固定されている。フレキシブルプレート41は曲げ方向にたわみ可能であるため、第1フライホイール4と第2フライホイール5は相対的に揺動可能である。
【0017】
フレキシブルプレート41の取付け方法についてさらに詳細に説明すると、フレキシブルプレート41の内周端は、折り曲げられ、外輪の外周面及びエンジン側端面に当接している。さらに、フレキシブルプレート41の内周部には複数のリベット43を介して環状の固定用プレート42が固定されている。環状の固定用プレート42は外輪の外周面及びトランスミッション側端面に当接している。このように、フレキシブルプレート41は、固定用プレート42とともに第1軸受17の外輪に強く固定されている。フレキシブルプレート41の外周部は、複数のボルト44により第2フライホイール5のエンジン側面外周面に固定されている。
【0018】
以上に説明した第1軸受17及びフレキシブルプレート41により、第2フライホイール5は第1フライホイール4に対して相対回転可能に支持されている。第2フライホイール5は第1フライホイール4に対して所定範囲内で軸方向に移動可能であり、曲げ方向にも揺動可能である。なお、フレキシブルプレート41は円板形状以外に複数の腕が放射状に延びるスポーク形状であってもよいし、孔や切欠きが形成されていてもよい。
【0019】
第1フライホイール4の内周部には、メインドライブシャフト3の先端を相対回転自在に支持するための第2軸受18が配置されている。第2軸受18は筒状部4aの内周面4cとメインドライブシャフト3との間に配置されている。第2軸受18は、内輪と、外輪と、両レース間に配置された複数の転動体とから構成されている。第2軸受18の外輪は筒状部4aの内周面4cに固定されている。また、外輪のエンジン側面は第1フライホイール4に当接・支持されている。第2軸受18の内輪はメインドライブシャフト3の先端外周面に当接している。
【0020】
第1クラッチディスク組立体12は、第1フライホイール4から第2フライホイール5にトルクを伝達するための部材である。第1クラッチディスク組立体12は、主に、クラッチプレート19、リテーニングプレート20、ドライブプレート21及びコイルスプリング9から構成されている。クラッチプレート19及びリテーニングプレート20は筒状部4aと第2フライホイール5の内周縁との間に配置された環状のプレート部材である。クラッチプレート19とリテーニングプレート20は図示しないピン等により互いに固定されている。クラッチプレート19とリテーニングプレート20との軸方向間には環状のドライブプレート21が配置されている。ドライブプレート21の内周縁には筒状部4aの孔4bに対応する孔21aが形成されている。クランクボルト100はドライブプレート21の孔21a及び第1フライホイール4の孔4bを貫通してクランクシャフト2に形成されたねじ孔2aに螺合している。ドライブプレート21はコイルスプリング9が配置されるばね収容部21bを外周側に有している。コイルスプリング9はばね収容部21b内に配置されている。なお、クラッチプレート19及びリテーニングプレート22はコイルスプリング9の半径方向及び軸方向の移動を規制するとともに円周方向両端を支持する切起し部を有している。このようにして、コイルスプリング9はドライブプレート21からプレート19,20に対してトルク伝達可能になっている。クラッチプレート19の内周縁は筒状部4aの外周面4dの周りに配置されたブッシュ22,23により支持されている。クラッチプレート19には複数の第1リベット24を介して第1摩擦フェーシング25が固定されている。第1摩擦フェーシング25は、芯板と、芯板の両側に固定された摩擦フェーシングとから構成されている。第1摩擦フェーシング25は第2フライホイール5の摩擦面5aに近接して配置されている。
【0021】
以上に述べたように、第1クラッチディスク組立体12はコイルスプリング9からなるダンパー機構6を含んでいる。第1クラッチディスク組立体12すなわちダンパー機構6は第2フライホイール5のトランスミッション側に配置されており、言い換えると、それらは第1フライホイール4と第2フライホイール5との軸方向間に配置されていない。このような第1クラッチディスク組立体12及びダンパー機構6の配置により、後述のように、それらの交換が容易である。
【0022】
中間部材10は比較的肉厚の環状部材である。中間部材10は第1摩擦フェーシング25のトランスミッション側に配置されている。中間部材10の軸方向両端面は平坦な摩擦係合面となっている。中間部材10の外周側には複数の図示しない突出部が形成されている。この突出部は第2フライホイール5の突出部5bに係合しており、これにより中間部材10は第2フライホイール5に対して相対回転不能に、かつ、所定範囲内で軸方向に移動可能となっている。
【0023】
第2クラッチディスク組立体13は、第2フライホイール5からメインドライブシャフト3にトルクを伝達するための部材である。第2クラッチディスク組立体13は、主に、スプラインハブ26と、プレート27と、第2摩擦フェーシング28とから構成されている。スプラインハブ26は、軸方向に筒状に延びるボス部と、ボス部から外周側に延びるフランジ部とから構成されている。ボス部の内周側には、メインドライブシャフト3の外周面に形成されたスプライン歯に係合するスプライン孔が形成されている。この係合により、スプラインハブ26がメインドライブシャフト3に対して相対回転不能にかつ軸方向に移動自在となっている。スプラインハブ26のフランジには円板状のプレート27の内周端が複数の第3リベット37により固定されている。プレート27の外周端には複数の第2リベット29を介して第2摩擦フェーシング28が固定されている。第2摩擦フェーシング28の構成は第1摩擦フェーシング25と同様である。第2摩擦フェーシング28は、中間部材10のトランスミッション側面とプレッシャプレート15の押圧面15a(後述)との間に配置されている。プレート27には複数の孔27aが形成されており、これらの孔27aを通ってトランスミッション側の空気をダンパー機構6に供給可能である。
【0024】
クラッチカバー組立体11は、クラッチ作動機構として機能するものであり、クラッチカバー14、プレッシャプレート15及びダイヤフラムスプリング16から構成されている。
クラッチカバー14は外周端が第2フライホイール5の突出部5bにたとえばボルトで固定された環状の部材であり、第2フライホイール5の摩擦面5aの内周端付近まで延びている。プレッシャプレート15は、クラッチカバー14の内周側に配置された環状の部材である。プレッシャプレート15は、図示しないストラッププレートによりクラッチカバー14に固定され、クラッチカバー14に対して相対回転不能にかつ軸方向に移動可能になっている。ダイヤフラムスプリング16はクラッチカバー14とプレッシャプレート15との間に配置されている。ダイヤフラムスプリング16は、環状の弾性部16aと、弾性部16aから半径方向内側に延びる複数のレバー部16bとから構成されている。弾性部16aは内周端が2本のワイヤリング30を介してクラッチカバー14に揺動自在に支持されている。また、弾性部16aの外周部はプレッシャプレート15のトランスミッション側面に当接している。弾性部16aは、クラッチカバー14とプレッシャプレート15との間で軸方向に圧縮されており、プレッシャプレート15に対して第2フライホイール5の摩擦面5a側への付勢力を与えている。レバー部16bの先端付近には図示しないレリーズ機構が配置されている。レリーズ機構がレバー部16bをエンジン側に押すと、ダイヤフラムスプリング16からプレッシャプレート15への付勢力が解除される。
【0025】
以上に述べた構成をまとめると、第1摩擦フェーシング25とその両側の第2フライホイール5及び中間部材10とにより第1クラッチ7が構成され、第2摩擦フェーシング28とその両側の中間部材10及びプレッシャープレート15とにより第2クラッチ8が構成されていることになる。
次に動作について説明する。
【0026】
運転者がクラッチペダルを踏んでいない通常運転時には、レリーズ機構がダイヤフラムスプリング16を付勢していないため、ダイヤフラムスプリング16の弾性部16aがプレッシャプレート15に対して荷重を与えている。この状態で第1摩擦フェーシング25は第2フライホイール5と中間部材10との間に挟持され、第2摩擦フェーシング28は中間部材10とプレッシャプレート15との間で挟持される。すなわち、第1及び第2クラッチ7,8がともに連結された状態になる。このとき、第1フライホイール4のトルクは、ダンパー機構6、第1クラッチ7を介して第2フライホイール5に伝達され、さらに第2クラッチ8を介してメインドライブシャフト3側に出力される。
【0027】
クラッチ連結状態でエンジンのトルク変動がフライホイール組立体1に伝達されると、ダンパー機構6を間に介して第1フライホイール4と第2フライホイール5とが相対回転する。このとき、コイルスプリング9が円周方向に圧縮され、振動を吸収・減衰する。
運転者がクラッチペダルを踏むと、図示しないレリーズ機構がダイヤフラムスプリング16のレバー部16b先端をエンジン側に押す。すると、弾性部16aからプレッシャプレート15への荷重が解除され、プレッシャプレート15がトランスミッション側に移動する。この結果、第1クラッチ7及び第2クラッチ8が遮断される。この状態で第2フライホイール5は第1フライホイール4に対しても第2クラッチディスク組立体13に対しても切断された状態である。
【0028】
低回転数領域の捩じり振動共振点通過問題対策
エンジン始動時には運転者がクラッチペダルを踏むことにする。すると、前述のように、第1クラッチ7と第2クラッチ8が同時に遮断される。第2フライホイール5はエンジン側からもトランスミッション側からも動力的に切断される。このときダンパー機構6の出力側の慣性モーメントが小さくなるため、アイドル回転数以下で生じる共振を抑えることができる。
【0029】
さらに、第1クラッチ7のトルク容量を第2クラッチ8のトルク容量より小さくすることで、第1クラッチ7をトルクリミッタとして機能させてもよい。そのためには、第1摩擦フェーシング25の摩擦係数を第2摩擦フェーシング28に対して小さくする。この場合は、クラッチを連結していても低回転数領域の共振点過大トルク変動を減衰可能である。第2クラッチ8のトルク容量は従来のクラッチのトルク容量と同等である。第1クラッチ7のトルク容量はダンパー機構6のストッパートルクより小さい。これにより、フライホイール組立体1にダンパー機構のストッパートルクより大きな過大トルク変動が入力されたときに、第1クラッチ7が滑ることで捩じり振動を減衰する。ダンパー機構6は最大捩じり角度まで捩じれないため、大きな荷重が加わらず寿命が延びる。
【0030】
ダンパー交換作業
ダンパー機構6すなわち第1クラッチディスク組立体12を交換する際には、初めにクラッチカバー組立体11を第2フライホイール5から取り外す。次に、第2クラッチディスク組立体13及び中間部材10を取り外す。この状態でクランクボルト100を外すと、フライホイール組立体1の残りの部材をクランクシャフト2から取り外せるとともに、第1クラッチディスク組立体12(すなわちダンパー機構6)を両フライホイール4,5から取り外せる。このようにダンパー機構6が第2フライホイール5のトランスミッション側に配置されているため、ダンパー機構6の交換が容易になっている。
【0031】
また、ダンパー機構6と第2フライホイール5との連結は第1摩擦フェーシング25を介した摩擦係合であるため、取り外しが容易である。
曲げ振動対策
図3に本願における第2フライホイール5の曲げ振動特性を示す。点線が第2フライホイールを軸受のみを介して第1フライホイールに支持させた従来フライホイール組立体の特性である。実線が第2フライホイール5を第1軸受17及びフレキシブルプレート41を介して第1フライホイール4に支持させた本願フライホイール組立体1の特性である。
【0032】
従来の点線の特性では共振周波数が常用領域A内に存在する。本願の実線の特性では共振周波数が2つに分かれ、2つの共振周波数がともに従来の特性の共振周波数より振動レベル(第2フライホイール5の曲げ角)が低くなっている。また、2つの共振周波数は常用領域Aの高周波側と低周波側とにずれて形成されている。このように共振周波数を常用領域Aからずらすことで第2フライホイール5の曲げ振動を抑えている。
【0033】
本願発明のフライホイール組立体は前記実施形態の形状・構成に限定されない。またフライホイール組立体を構成する第1フライホイール、第2フライホイール及びダンパー機構も前記実施形態の形状・構成に限定されない。例えばダンパー機構は摩擦抵抗発生又は粘性抵抗発生機構を有していてもよいし、コイルスプリングの代わりに他のばねや弾性体を用いてもよい。
第2実施形態
図4に示すように、前記実施形態に示したフライホイール組立体1に曲げ方向ダイナミックダンパー50を付け加えてもよい。曲げ方向ダイナミックダンパー50は、フレキシブルプレート41とともに、第2フライホイール5の曲げ方向振動を低減させるための装置である。曲げ方向ダイナミックダンパー50は第2フライホイール5の外周部エンジン側に取り付けられている。曲げ方向ダイナミックダンパー50は、主に、質量体51と、プレート52とから構成されている。質量体51は、環状の比較的厚肉の部材であり、第2フライホイール5の外周部エンジン側面に近接して配置されている。質量体51の外周部にはリングギア55が固定されている。
【0034】
プレート52は環状の板金製部材であり、質量体51とフレキシブルプレート41の外周部との間に配置されている。プレート52は質量体51を曲げ方向に揺動可能になるように第2フライホイール5に連結するばね又は弾性体として機能している。プレート52の内周部は複数のリベット53により質量体51の内周部に固定されている。プレート52の外周部は、複数のボルト54によりフレキシブルプレート41の外周部とともに第2フライホイール5に固定されている。このようにして、質量体51はプレート52を介して第2フライホイール5に対して曲げ方向に揺動可能に支持されている。なお、質量体51においてボルト54の頭部に対応する位置には孔56が形成されている。孔56は曲げ方向ダイナミックダンパー50を第2フライホイール5に連結する際にボルト54が通る孔として機能する。また孔56は質量体51がフライホイール5に対して揺動する際にボルト54の頭部からの干渉を避けている。
【0035】
図5に、第2フライホイール5の曲げ振動特性を示す。点線が前記実施形態の特性であり、実線が本実施形態のものである。
点線の特性(第1実施形態、フレキシブルプレートのみ)では共振周波数が2つに分かれているものの、低周波側の共振周波数が常用領域Aに残っていることがある。
【0036】
実線の特性(第2実施形態、フレキシブルプレート+ダイナミックダンパー)では、曲げ方向ダイナミックダンパー50により、前述の低周波側の共振周波数が2つに分けられ、分けられた2つの共振周波数は前述の低周波側の共振周波数より低く振動レベルが低くなっている。特に新たに分けられた共振周波数の低周波側のものは常用領域Aから外れている。
【0037】
以上に述べたように、フレキシブルプレート41に曲げ方向ダイナミックダンパー50を組み合わせることで、常用領域Aに残った曲げ振動の共振周波数付近の振動を低減できる。
なお、曲げ方向ダイナミックダンパー50の構造は本実施形態に限定されない。ダイナミックダンパーを構成する弾性体は板ばねではなく他のばねやゴム等の弾性体であってもよい。
【0038】
また、曲げ方向ダイナミックダンパーは第2フライホイール以外の部材(例えば第1フライホイール)に設けることもできる。
【0039】
【発明の効果】
本発明に係るフライホイール組立体では、第2フライホイールが曲げ方向にたわみ可能なフレキシブプレートを介して第1フライホイールに支持されているため、曲げ振動はフレキシブルプレートにより絶縁・吸収され、第2フライホイールに伝達されにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態におけるフライホイール組立体の動力伝達模式図。
【図2】本発明の第1実施形態におけるフライホイール組立体の縦断面概略部分図。
【図3】第1実施形態における第2フライホイールの曲げ振動特性図。
【図4】第2実施形態におけるフライホイール組立体の縦断面概略部分図。
【図5】第2実施形態における第2フライホイールの曲げ振動特性図。
【符号の説明】
1 フライホイール組立体
2 クランクシャフト(入力側回転体)
3 メインドライブシャフト(出力側回転体)
4 第1フライホイール
5 第2フライホイール
6 ダンパー機構
9 コイルスプリング(弾性部材)
17 第1軸受
41 フレキシブルプレート
50 曲げ方向ダイナミックダンパー
Claims (3)
- 入力側回転体から出力側回転体にトルクを伝達するフライホイール組立体であって、
前記入力側回転体からトルクが伝達される第1フライホイールと、
前記第1フライホイールの前記入力側回転体側と反対側に配置され、前記出力側回転体にトルクを伝達可能な第2フライホイールと、
前記第2フライホイールに対してトルクを伝達及び遮断可能に摩擦係合する摩擦連結部を外周側に有し、前記第1フライホイールと前記第2フライホイールとを円周方向に弾性的に連結するダンパー機構と、
前記第1フライホイールと前記第2フライホイールの軸方向間に配置され、前記第2フライホイールを前記第1フライホイールに対して支持し、曲げ方向にたわみ可能なフレキシブルプレートと、
前記フレキシブルプレートと前記第1及び第2フライホイールの一方との間に配置された軸受と、
を備えたフライホイール組立体。 - 前記第1フライホイールは前記第2フライホイール側に突出する突出部を中心に有しており、前記ダンパー機構は前記突出部と前記第2フライホイールとを円周方向に弾性的に連結しており、
前記軸受は、内輪が前記突出部の周囲に固定され、外輪が前記フレキシブルプレートの内周部に固定されており、前記フレキシブルプレートは外周部が前記第2フライホイールの外周部に固定されている、
請求項1に記載のフライホイール組立体。 - 慣性体と、前記慣性体を前記第2フライホイールに対して曲げ方向に揺動可能に連結する弾性体とを有する曲げ方向ダイナミックダンパーをさらに備えた、
請求項1又は2に記載のフライホイール組立体。
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