JP3668342B2 - ポリエチレン系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、剛性と耐衝撃性のバランスが良く、耐熱性に優れ射出成形に好適なポリエチレン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
食料品や種々の日用雑貨品用の容器などにおいては、内容物が充填された時や荷重がかかった時に容易に変形せず構造物としての形状を維持するだけの剛性が要求される。構造物としての剛性は材料固有の剛性と構造物の形状に左右される。
特にコストダウンのために構造物の肉厚を薄くした場合には構造物としての剛性が低くなるために剛性の高い材料を使用する必要がある。一方、肉厚が薄くなると構造物としての強度が低下するため、耐衝撃性に優れた材料を使用する必要がある。また肉厚が薄くなることにより、射出成形を行う場合に充填圧力が高くなって残留ひずみやフローマークが発生しやすくなるため、流動性に優れた材料を使用する必要がある。しかも高温での使用が可能なように耐熱性が要求されている。従来、このような用途には各種ポリエチレン系材料が使用されてきたがいずれも以下のような問題点をもっている。
高圧法によって製造される低密度ポリエチレンでは剛性が低く耐熱性も十分ではない。またいわゆるチグラー系触媒によって製造される線状ポリエチレンでは成形性が悪く、密度を高くすることにより剛性を高くすることができるが、耐衝撃性が悪くなる。ポリプロピレン系材料をブレンドすることにより剛性や成形性を改良することもできるが、耐衝撃性が不十分である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決することにあり、特に剛性と耐衝撃性のバランスに優れる射出成形に好適なポリエチレン系樹脂組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的に沿って鋭意検討した結果、狭い分子量分布と適度な広さの組成分布を有し、市販のメタロセン触媒により重合された極めて狭い組成分布を有するものとは異なるエチレン(共)重合体にポリプロピレン系重合体を配合することにより、剛性と耐熱性のバランスに優れる射出成形に好適なポリエチレン系樹脂組成物が得られることを見いだした。
またさらに、これらの組成物を部分架橋することにより、より優れた衝撃強度を有する組成物が得られることを見出した。
【0005】
すなわち、本発明は、第1に、樹脂成分が実質上下記の(A)および(B)のみからなることを特徴とするポリエチレン系樹脂組成物である:
(A)下記(a)〜(f)を満足するエチレン(共)重合体98〜50重量%、
(a)密度 0.86〜0.97g/cm3
(b)メルトフローレート(MFR) 0.01〜100g/10min
(c)分子量分布(Mw/Mn) 1.5〜4.5
(d)組成分布パラメーターCb 2.00以下
(e)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分の量
X(重量%)と密度dおよびMFRが
イ)d−0.008×logMFR≧0.93の場合
X<2.0
ロ)d−0.008×logMFR<0.93の場合
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008×logMFR)2+2.0
(f)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数である、および
(B)プロピレン系重合体2〜50重量%未満。
【0006】
本発明は、第2に、上記(A)エチレン(共)重合体が少なくとも共役二重結合を持つ有機環状化合物および周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒の存在下に、エチレンを単独重合するかまたはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合することにより得られるエチレン(共)重合体であることを特徴とする第1に記載されたポリエチレン系樹脂組成物である。
【0007】
本発明は、第3に、第1または第2に記載の(A)エチレン(共)重合体98〜50重量%および(B)プロピレン系重合体2〜50重量%未満からなる組成物を部分架橋させて得られることを特徴とするポリエチレン系樹脂組成物である。
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の(A)エチレン(共)重合体はエチレン単独重合体、あるいはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンより選ばれた一種以上との共重合体を含むものである。この炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、好ましくは炭素数3〜12のものであり、具体的にはプロピレン、ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1などが挙げられる。また、これらのα−オレフィンの含有量は、合計で通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下の範囲で選択されることが望ましい。
【0009】
本発明の(A)エチレン(共)重合体の密度(a)は、0.86〜0.97g/cm3 、好ましくは0.88〜0.945g/cm3 、より好ましくは0.895〜0.93g/cm3 の範囲である。密度が0.86g/cm3 未満では剛性、耐熱性が劣り、0.97g/cm3 以上では耐衝撃性、耐環境応力劣化(ESCR)が十分でない。
【0010】
本発明の(A)エチレン(共)重合体のMFR(b)は0.01〜100g/10min、好ましくは0.1〜40g/10min、さらに好ましくは0.5〜30g/10minの範囲にあることが望ましい。なおMFRが0.01g/10min未満では成形加工性が劣り、100g/10minを超えると耐衝撃性、耐環境応力劣化などの機械的強度が低下する。
【0011】
該エチレン(共)重合体の分子量分布Mw/Mn(c)の算出方法は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、この比Mw/Mnを求めるものである。
本発明のエチレン(共)重合体のMw/Mnは1.5〜4.5であり、好ましくは2.0〜3.0、さらに好ましくは2.2〜2.9の範囲にあることが望ましい。Mw/Mnが1.5未満では成形加工性が劣り、4.5以上では耐衝撃性が劣る。
【0012】
本発明のエチレン(共)重合体の組成分布パラメーターCb(d)は2.00以下であり、共重合体の場合には1.08〜2.00の範囲、好ましくは1.10〜1.80、さらに好ましくは1.12〜1.70の範囲にあることが望ましい。Cb値が2.00以上では、耐衝撃性、耐環境応力劣化性の悪化や、成形品のべたつき、熱収縮が大きくなる恐れがある。また共重合体においてはCb値が1.08未満では耐熱性が低下する恐れがある。
【0013】
前記、該エチレン(共)重合体の組成分布パラメーターCbの測定法は下記の通りである。
【0014】
試料に耐熱安定剤を加え、ODCBに試料濃度が0.2重量%となるように135℃で加熱溶解する。この加熱溶液を、けい藻土(セライト545)を充填したカラムに移送し充満後0.1℃/minで25℃まで冷却し、試料をセライト表面に析出沈着する。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を5℃きざみに120℃まで段階的に昇温しながら、各温度において、試料を溶解した溶液を採取する。この溶液を冷却後メタノールで試料を再沈後、ろ過、乾燥し、各溶出温度における試料を得る。この分別された試料の重量分率および分岐度(炭素数1000個あたりの分岐数)を測定する。分岐度の測定は13C−NMRにより求める。
【0015】
このような方法で30℃から90℃で採取した各フラクションについては次のような、分岐度の補正を行う。すなわち、溶出温度に対して測定した分岐度をプロットし、相関関係を最小自乗法で直線に近似し、検量線を作成する。この近似の相関係数は十分大きい。この検量線により求めた値を各フラクションの分岐度とする。なお、溶出温度95℃以上で採取したフラクションについては溶出温度と分岐度に必ずしも直線関係が成立しないのでこの補正は行わない。
【0016】
次にそれぞれのフラクションの重量分率wi を、溶出温度5℃当たりの分岐度bi の変化量(bi −bi-1 )で割って相対濃度ci を求め、分岐度に対して相対濃度をプロットし、組成分布曲線を得る。この組成分布曲線を一定の幅で分割し、次式より組成分布パラメーターCbを算出する。
【数1】
ここで cj とbj はそれぞれj番目の区分の相対濃度と分岐度である。組成分布パラメーターCbは試料の組成が均一である場合に1.0となり、組成分布が広がるに従って値が大きくなる。
【0017】
なお、エチレン・α−オレフイン共重合体の組成分布を記述する方法は多くの提案がなされている。例えば特開昭60−88016号では、試料を溶剤分別して得た各分別試料の分岐数に対して、累積重量分率が特定の分布(対数正規分布)をすると仮定して数値処理を行い、重量平均分岐度(Cw)と数平均分岐度(Cn)の比を求めている。この近似計算は、試料の分岐数と累積重量分率が対数正規分布からずれると精度が下がり、市販のLLDPEについて測定を行うと相関係数R2 はかなり低く、値の精度は充分でない。このCw/Cnと本発明のCbとは、定義および測定方法が異なる。
【0018】
本発明の(A)エチレン(共)重合体の、25℃におけるODCB可溶分量X(e)は、エチレン(共)共重合体に含まれる高分岐度成分および低分子量成分の割合を示すものであり、耐熱性の低下や成形品表面のベタツキあるいは強度の低下の原因となるため少ないことが望ましい。ODCB可溶分の量は、共重合体全体のα−オレフィンの含有量および平均分子量、すなわち密度とMFRに影響される。従って、前記ODCB可溶分の量X(重量%)は密度dとMFRの関係が、d-0.008 ×logMFR≧0.93を満たす場合は2重量%未満、好ましくは1重量%未満、さらに好ましくは0.5重量%未満であることが望ましい。
また、dとMFRの関係が、d-0.008 ×logMFR<0.93を満たす場合は X<9.8 ×103 ×(0.9300 −d +0.008 ×log MFR)2+2.0の関係を満足し、好ましくはX<7.4 ×103 ×(0.9300 −d +0.008 ×log MFR)2+1.0、さらに好ましくはX<5.6 ×103 ×(0.9300 −d +0.008 ×log MFR)2+0.5の範囲であることが望ましい。
密度、MFRとODCB可溶分の量が上記の関係を満たすことは、共重合体全体に含まれているα−オレフィンが遍在していないことを示している。
【0019】
なお、前記の25℃におけるODCB可溶分量Xは、下記の方法により測定する。
すなわち試料0.5gを20mlのODCBに加え135℃で2時間加熱し、試料を完全に溶解した後、25℃まで冷却する。この溶液を25℃で一晩放置後、テフロン製フィルターでろ過してろ液を採取する。試料溶液であるろ液を赤外分光器によりメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm-1付近の吸収ピーク強度を測定し、あらかじめ作成した検量線によりろ液中の試料濃度を算出する。この値より、25℃におけるODCB可溶分を求める。
【0020】
本発明のエチレン(共)重合体が、エチレン・α−オレフィン共重合体の場合は連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において、ピークが複数個ある(f)ことが必要であり、さらにその高温側のピークが85℃から100℃の間に存在することが特に好ましい。このピークが存在することにより、融点が高くなりまた結晶化度が上昇し成形体の耐熱性および剛性が向上する。本発明の代表的な共重合体の溶出温度−溶出量曲線を図1に示す通りであり、図2のいわゆるメタロセン触媒による共重合体の溶出温度−溶出量曲線とは明確に相違している。
【0021】
本発明にかかわるTREFの測定方法は下記の通りである。試料に耐熱安定剤を加え、ODCBに試料濃度0.05重量%となるように135℃で加熱溶解する。この加熱溶液5mlを、ガラスビーズを充填したカラムに注入した後、0.1℃/minの冷却速度で25℃まで冷却し、試料をガラスビーズ表面に沈着する。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を50℃/hrの一定速度で昇温し、各温度において溶液に溶解可能な試料を順次溶出させる。この際、溶剤中の試料濃度はメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm-1に対する吸収を赤外検出器で連続的に検出される。この濃度から、溶出温度−溶出量曲線を得ることができる。
TREF分析は極少量の試料で、温度変化に対する溶出速度の変化を連続的に分析出来るため、分別法では検出出来ない比較的細かいピークの検出が可能である。
【0022】
本発明の(A)エチレン(共)重合体の製造法は、前記(a)〜(f)の条件を満たす(共)重合体が得られれば、特に制限はないが、好ましくは少なくとも共役二重結合を持つ有機環状化合物および周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒の存在下に、エチレンを単独重合するかまたはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合することが望ましい。具体的には以下のE1〜E4からなる触媒を用いて重合することが望ましい。
すなわち、E1:一般式Me1 R1 p R2 q (OR3 )r X1 4-p-q-r で表される遷移金属化合物化合物(式中Me1 は周期律表第IV族の遷移金属を示し、R1 およびR3 は各々炭素数1〜24の炭化水素基を示し、R2 は2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、またはジベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子などの誘導体を示し、X1 はハロゲン原子を示し、p、qおよびrは各々0≦p<4、0≦q<4、0≦r<4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たす整数である)、E2:一般式Me2 R4 m (OR5 )n X2 z-m-n で表される化合物(式中Me2 は周期律表第I〜III 族元素を示し、R4 およびR5 は各々炭素数1〜24の炭化水素基を示し、X2 はハロゲン原子または水素原子(ただし、X2 が水素原子の場合はMe2 は周期律表第III 族元素の場合に限る)を示し、zはMe2 の価数を示し、mおよびnは各々0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである)、E3:共役二重結合を持つ有機環状化合物、およびE4:有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物および、またはホウ素化合物を相互に接触させて得られる触媒である。
【0023】
上記触媒成分(E1)の一般式Me1 R1 p R2 q (OR3 )r X1 4-p-q-r で表される化合物の式中Me1 は好ましくはジルコニウム、チタン、ハフニウムを示す。これらの遷移金属の種類は限定されるものではなく、複数を用いることもできるが、得られる共重合体の耐候性に優れる点でジルコニウムが含まれることが特に好ましい。R1 およびR3 は各々炭素数1〜24、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。R2 は2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、またはジベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子などの誘導体を示す。X1 はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子を示し、p、qおよびrは各々0≦p<4、0≦q<4、0≦r<4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たす整数である。
【0024】
上記触媒成分(E1)の化合物の例としては、テトラメチルジルコニウム、テトラエチルジルコニウム、テトラベンジルジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、トリプロポキシモノクロロジルコニウム、ジプロポキシジクロロジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、トリブトキシモノクロロジルコニウム、ジブトキシジクロロジルコニウム、テトラブトキシチタン、テトラブトキシハフニウムなどが挙げられ、これらを2種以上混合して用いても差し支えない。
【0025】
また、前記2,4−ペンタンジオナト配位子またはその誘導体の具体例としては、テトラ(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム、トリ(2,4−ペンタンジオナト)クロライドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジベンジルジルコニウム、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジネオフィルジルコニウム、テトラ(ジベンゾイルメタナト)ジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム等が挙げられる。これらを2種以上混合して用いても差し支えない。
【0026】
上記触媒成分(E2)の一般式Me2 R4 m (OR5 )n X2 z-m-n で表される化合物の式中Me2 は周期律表第I〜III 族元素を示し、具体的にはリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムなどである。R4 およびR5 は各々炭素数1〜24、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。X2 はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子または水素原子を示すものである。ただし、X2 が水素原子の場合はMe2 はホウ素、アルミニウムなどに例示される周期律表第III 族元素の場合に限るものである。また、zはMe2 の価数を示し、mおよびnは各々0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである。
【0027】
上記触媒成分(E2)の化合物の例としては、メチルリチウム、エチルリチウムなどの有機リチウム化合物;ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライドなどの有機マグネシウム化合物;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などの有機亜鉛化合物;トリメチルボロン、トリエチルボロンなどの有機ボロン化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物等の誘導体が挙げられる。
【0028】
上記触媒成分(E3)の共役二重結合を持つ有機環状化合物としては、環状で共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素化合物;前記環状炭化水素化合物が部分的に1〜6個の炭化水素残基(典型的には、炭素数1〜12のアルキル基またはアラルキル基)で置換された環状炭化水素化合物;共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物;前記環状炭化水素基が部分的に1〜6個の炭化水素残基またはアルカリ金属塩(ナトリウムまたはリチウム塩)で置換された有機ケイ素化合物が含まれる。特に好ましくは分子中のいずれかにシクロペンタジエン構造をもつものが望ましい。
【0029】
上記の好適な化合物としては、シクロペンタジエン、インデン、アズレンまたはこれらのアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシまたはアリールオキシ誘導体などが挙げられる。また、これらの化合物がアルキレン基(その炭素数は通常2〜8、好ましくは2〜3)を介して結合(架橋)した化合物も好適に用いられる。
【0030】
環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式で表示することができる。
AL SiR4-L
ここで、Aはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基で例示される環状炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜24、好ましくは1〜12の炭化水素残基または水素を示し、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジル基などのアラルキル基が挙げられる。Lは1≦L≦4、好ましくは1≦L≦3である。
【0031】
上記成分(E3)の有機環状炭化水素化合物の具体例としては、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、1,3−ジメチルシクロペンタジエン、インデン、4−メチル−1−インデン、4,7−ジメチルインデン、シクロヘプタトリエン、メチルシクロヘプタトリエン、シクロオクタテトラエン、アズレン、フルオレン、メチルフルオレンのような炭素数7〜24のシクロポリエンまたは置換シクロポリエン、モノシクロペンタジエニルシラン、ビスシクロペンタジエニルシラン、トリスシクロペンタジエニルシラン、モノインデニルシラン、ビスインデニルシラン、トリスインデニルシラン等が挙げられる。
【0032】
触媒成分(E4)の有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物としては、通常アルミノキサンと称される変性有機アルミニウムがあり、分子中に通常1〜100個、好ましくは1〜50個のAl−O−Al結合を含有する。また、変性有機アルミニウム化合物は線状、環状のいずれでもよい。
【0033】
有機アルミニウムと水との反応は通常不活性炭化水素中で行われる。該不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族、脂環族または芳香族炭化水素が好ましい。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は通常0.25/1〜1.2/1、好ましくは0.5/1〜1/1であることが望ましい。
【0034】
触媒成分(E4)のホウ素化合物としては、例えば、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0035】
本発明では上記触媒成分(E1)〜(E4)を相互に接触させることにより得られる触媒を、無機担体および/または粒子状ポリマー担体(E5)に接触させて重合反応に用いることもできる。
【0036】
前記(E5)の無機物担体および/または粒子状ポリマー担体としては、炭素物質、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩またはこれらの混合物あるいは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。該無機物担体に用いることができる好適な金属としては、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
具体的にはSiO2 、Al2 O3 、MgO、ZrO2 、TiO2 、B2 O3 、CaO、ZnO、BaO、ThO2 等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO2 −Al2 O3 、SiO2 −V2 O5 、SiO2 −TiO2 、SiO2 −V2 O5 、SiO2 −MgO、SiO2 −Cr2 O3 等が挙げられる。これらの中でもSiO2 およびAl2 O3 からなる群から選択された少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。
また、有機化合物としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用でき、具体的には、粒子状のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリノルボルネン、各種天然高分子およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0037】
上記無機物担体および/または粒子状ポリマー担体は、このまま使用することもできるが、好ましくは予備処理としてこれらの担体を有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物などに接触処理させた後に成分(E5)として用いることもできる。
【0038】
前記(A)エチレン(共)重合体は、気相法、スラリー法、溶液法等で製造され、その際一段重合法、多段重合法など特に限定されるものではない。
【0039】
本発明の(B)プロピレン系重合体としては、ポリプロピレン単独重合体、プロピレンとα−オレフィンのブロック共重合体、プロピレンとα−オレフィンのランダム共重合体等があり、プロピレンと炭素数2〜8(但し炭素数3を除く)のα−オレフィンの1種または2種以上との共重合体、中でも特にプロピレン・エチレンブロック共重合体が剛性と耐衝撃強度を要求される用途には好ましいものである。該プロピレン系重合体は、公知技術によりチグラー・ナッタ型触媒を用いて重合される。
【0040】
プロピレン・エチレンブロック共重合体はエチレン含量は0.5〜15重量%が好ましい。このブロック共重合体は曲げ弾性率と衝撃強度のバランスを要求される場合に特に好ましく用いられる。
【0041】
プロピレン・エチレンランダム共重合体のα−オレフィンとして用いられるエチレンやブテン−1の含量はそれぞれ1〜15重量%が好ましい。α−オレフィンの含量が1重量%未満の場合は衝撃強度が十分ではない。また、α−オレフィンの含量が15重量%を超える場合は剛性が低くなる虞が生じる。
【0042】
プロピレン単独重合体は高い弾性率と耐熱性を特に重視する用途に用いられる。
【0043】
前記(B)プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は通常0.1〜70g/10min、好ましくは0.5〜60g/10minのものが用いられる。MFRが0.1g/10min未満の場合は流動性が悪く成形が難しくなる。また70g/10minを超える場合は衝撃強度が弱く不適当である。これらのMFRは重合された重合体を有機過酸化物とともに加熱分解し調製したものであっても差し支えない。
【0044】
本発明の(A)エチレン(共)重合体98〜50重量%、(B)プロピレン系重合体2〜50重量%未満からなる組成物をさらに架橋剤を添加して部分架橋することにより、より衝撃強度に優れた組成物が得られる。
【0045】
本発明に用いられる架橋剤としては、通常有機過酸化物が用いられる。具体的には2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、(t−ブチルパーオキシ)ジイソブチルベンゼン、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシドベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、p−クロルベンゾイルパーオキシドなどが挙げられる。また架橋剤を使用しても良い。具体的には液状ポリブタジエン、ジビニルベンゼン、エチレンジメタクリレート、ジアリールフタレートなどを挙げることができる。
【0046】
これらの架橋剤の使用量は樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部、好ましくは0.03〜1重量部である。0.01重量部未満では衝撃強度の改良効果が充分ではなく、2重量部を超えると架橋が進行しすぎて流動性が低下する。
【0047】
部分架橋物を製造する方法としては、任意の公知技術が使用できる。代表的な例は、上記組成物に架橋剤を添加して機械的な混練を行う方法であり、一軸および二軸押出機、バンバリーミキサー、各種ニーダー、ロールなどを用いて部分架橋させることができる。溶融混練の温度は一般に300℃以下であり、好ましくは使用する架橋剤の半減期が1分以下となる温度で、通常100〜300℃である。また架橋剤を含浸等により混合した後、熱あるいは放射線によって部分架橋してもよい。
【0048】
本発明においては、発明の特性を本質的に損なわない範囲において、必要に応じて、カーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ、金属繊維、炭素繊維などの各種フィラーや酸化防止剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、紫外線吸収剤、分散剤などの公知の添加剤や、フィラーの分散を助け、柔軟性や弾性を増す目的でパラフィン系、ナフテン系あるいは芳香族系の植物油などを配合してもよい。また部分架橋を行う場合には、架橋の前後、ないし架橋時(特に混練時)に上記添加剤を必要に応じ配合してもよい。
【0049】
【実施例】
次に実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお本実施例に用いた試験法は以下の通りである。
【0050】
【0051】
(エチレン・α−オレフィン共重合体の重合)
固体触媒の調製
窒素下で電磁誘導撹拌機付き触媒調製器(No.1)に精製トルエンを加え、ついでジプロポキシジクロロジルコニウム(Zr(OPr)2 Cl2 )28gおよびメチルシクロペンタジエン48gを加え、0℃に系を保持しながらトリデシルアルミニウムを45gを滴下し、滴下終了後、反応系を50℃に保持して16時間撹拌した。この溶液をA液とする。次に窒素下で別の撹拌器付き触媒調製器(No.2)に精製トルエンを加え、前記A溶液と、ついでメチルアルミノキサン6.4molのトルエン溶液を添加し反応させた。これをB液とする。
次に窒素下で撹拌器付き調製器(No.1)に精製トルエンを加え、ついであらかじめ400℃で所定時間焼成処理したシリカ(富士デビソン社製、グレード#952、表面積300m2 /g)1400gを加えた後、前記B溶液の全量を添加し、室温で攪拌した。ついで窒素ブローにて溶媒を除去して流動性の良い固体触媒粉末を得た。これを触媒Cとする。
【0052】
試料A1、A2の重合
連続式の流動床気相法重合装置を用い、重合温度70℃、全圧20kgf/cm2 Gでエチレンとブテン−1の共重合を行った。前記触媒Cを連続的に供給して重合を行ない、系内のガス組成を一定に保つため、各ガスを連続的に供給しながら重合を行った。なお、試料量が足りない場合はこれらの操作を繰り返して必要量を得た。
また、生成した共重合体の物性は以下の通りである。
【0053】
試料A3の重合
コモノマーとしてヘキセン−1を用いてA1の重合と全く同様にして重合し試料A3を得た。なお、生成した共重合体の物性は以下の通りである。
【0054】
使用したポリプロピレンは以下の通り
(B1)プロピレン・エチレンブロック共重合体(BPPと称す)
MFR:10g/10min.、エチレン含有量:7.8重量%
(B2)プロピレン・単独重合体(HPPと称す)
MFR:10g/10min.
(B3)プロピレン・エチレンランダム共重合体(RPPと称す)
MFR:8g/10min.、エチレン含有量:4.3重量%
他のエチレン・α−オレフィン共重合体
(A4)低密度線状ポリエチレン(LLDPEと称す)
四塩化チタン、トリエチルアルミニウム触媒を用いて気相法にてエチレンとブテン−1を共重合して得た。(MFR:10.0g/ 10min.、密度0.920g/cm3 、ODCB可溶分7.8重量%)
【0055】
(実施例1〜7)
表1に示したように(A)エチレン・α−オレフィン共重合体、(B)プロピレン系重合体に酸化防止剤としてチバガイギー(株)製イルガノックス10100.1重量%、チバガイギー(株)製イルガフォス168 0.05重量%、酸吸収剤としてステアリン酸カルシウム0.08重量%を加えヘンシェルミキサーで約30秒間混合した後、一軸押出機で200℃でペレット化し、その後射出成形を行った。結果を合わせて表1に示す。
【0056】
(実施例8)
(A)成分として(A1)80重量%、(B)成分として(B1)20重量%、酸化防止剤としてチバガイギー(株)製イルガノックス1010 0.1重量%、チバガイギー(株)製イルガフォス168 0.05重量%、酸吸収剤としてステアリン酸カルシウム0.08重量%、架橋剤として日本油脂(株)製パーブチルP0.1重量%を加えヘンシェルミキサーで約30秒間混合した後、30mmφの二軸押出機で210℃で押し出しとともに部分架橋を行った。その後射出成形をし物性測定を行った。
組成物はMFR:7.9g/10min.、曲げ弾性率4,500kgf/cm2 、アイゾット衝撃強さ(−30℃):11.0kgf・cm/cm2 、熱変形温度:55℃、スパイラルフロー:440mmであり、曲げ弾性率と衝撃強度のバランスがよい組成物である。
【0057】
(比較例1)
(A)成分としてエチレン・α−オレフィン共重合体(A4)を用い実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。曲げ弾性率が低い(柔らかい)割にはアイゾット衝撃値が低い。
【0058】
(比較例2)
上記比較例1にて使用したエチレン・α−オレフィン共重合体(A4)を用いその他は実施例2と同様の操作を行った。結果を表2に示す。アイゾット衝撃値が低い。
【0059】
(比較例3)
(A)成分として(A1)を用い(B)成分を添加せず実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。耐熱性、剛性が劣る。
【0060】
(比較例4)
(A)成分を配合せず(B)成分として(B1)を使用し実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。アイゾット衝撃値が極めて低い。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【発明の効果】
分子量分布が狭く、組成分布が適度な広さを有する特定のエチレン(共)重合体にプロピレン系重合体を配合することにより、剛性と衝撃強度のバランスの良い組成物を提供することが可能となる。また該組成物をさらに部分架橋することにより、より耐衝撃性に優れた組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の(A)成分のエチレン共重合体の代表的なTREF曲線。
【図2】メタロセン触媒によるエチレン共重合体のTREF曲線。
Claims (3)
- 樹脂成分が実質上下記の(A)および(B)のみからなることを特徴とするポリエチレン系樹脂組成物:
(A)下記(a)〜(f)を満足するエチレン(共)重合体98〜50重量%、
(a)密度 0.86〜0.97g/cm3
(b)メルトフローレート(MFR) 0.01〜100g/10min
(c)分子量分布(Mw/Mn) 1.5〜4.5
(d)組成分布パラメーターCb 2.00以下
(e)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分の量
X(重量%)と密度dおよびMFRが
イ)d−0.008×logMFR≧0.93の場合
X<2.0
ロ)d−0.008×logMFR<0.93の場合
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008×logMFR)2+2.0
(f)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数である、および
(B)プロピレン系重合体2〜50重量%未満。 - 前記(A)エチレン(共)重合体が少なくとも共役二重結合を持つ有機環状化合物および周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒の存在下に、エチレンを単独重合するかまたはエチレンと炭素数3〜20のα−オフィンとを共重合することにより得られるエチレン(共)重合体であることを特徴とする請求項1記載のポリエチレン系樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載の(A)エチレン(共)重合体98〜50重量%および(B)プロピレン系重合体2〜50重量%未満からなる組成物を部分架橋させて得られることを特徴とするポリエチレン系樹脂組成物。
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